説明

履物

【課題】真空断熱材を靴底部に適用した履物において、耐湿性の問題と熱リークの問題を軽減でき経年にわたって高い断熱性を確保し得る履物を提供する。
【解決手段】対向する2つの伝熱面を有する板状の芯材32を多層構造でガスバリア性の外被材で覆って外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材31を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物であって、靴底部に適用する真空断熱材31は、靴底側の外被材のガスバリア層をアルミ蒸着34で、足裏側の外被材のガスバリア層がアルミ箔36であり、真空断熱材31の靴底側の面にカバー部材としてプラスチックフィルムを配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性を高めるため真空断熱材を適用した履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒冷地や低温作業時に使用される履物は、温かく、断熱性能の高いものが望まれている。これを実現するため、履物の靴底部に断熱材や、内装素材に空気層を保持できる長い毛足の生地が適用される。
【0003】
一方、断熱材として、限られたスペースの中で高い断熱性能を確保するため、真空断熱材を適用することがある。真空断熱材は、内部を低真空に保つためにガスを通し難い金属箔の層を含んだラミネートフィルムを一般的に使用する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−137557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、金属箔は熱伝導率が高いため、金属箔を伝わって熱が流れてしまい、真空断熱材の両面間に熱が流れやすくなるいわゆる熱リーク問題がある。
【0005】
また、金属箔の代わりに金属蒸着をガスバリア層に用いた場合は、金属箔と比べ水を通しやすく、耐湿性の点で劣る課題があった。
【0006】
本発明は、真空断熱材を靴底部に適用した履物において、耐湿性の問題と熱リークの問題を軽減でき経年にわたって高い断熱性を確保し得る履物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の履物は、対向する2つの伝熱面を有する板状の芯材を多層構造でガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物であって、前記芯材の一方の伝熱面を覆う前記外被材のガスバリア層が金属蒸着であり、前記芯材の他方の伝熱面を覆う前記外被材のガスバリア層が金属箔であり、前記真空断熱材は、金属蒸着をガスバリア層にした外被材側を靴底側に配設したのである。
【0008】
本発明では、芯材の一方の伝熱面を覆う外被材のガスバリア層に金属蒸着を用い、芯材の他方の伝熱面を覆う外被材のガスバリア層に金属箔を用いたので、両方の外被材のガスバリア層に金属箔を用いたものよりも、熱リークの問題を軽減できる。
【0009】
また、金属蒸着をガスバリア層にした外被材側を靴底側に配設したので、金属蒸着をガスバリア層にした外被材側を足裏側に配設した場合よりも、金属蒸着をガスバリア層にした外被材を通過して真空断熱材内に浸入する水の量を低減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、真空断熱材を靴底部に適用した履物において、耐湿性の問題と熱リークの問題を軽減でき経年にわたって高い断熱性を確保し得る履物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の請求項1に記載の履物の発明は、対向する2つの伝熱面を有する板状の芯材を多層構造でガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物であって、前記芯材の一方の伝熱面を覆う前記外被材のガスバリア層が金属蒸着であり、前記芯材の他方の伝熱面を覆う前記外被材のガスバリア層が金属箔であり、前記真空断熱材は、金属蒸着をガスバリア層にした外被材側を靴底側に配設したものである。
【0012】
金属蒸着は、箔の場合よりも厚みを薄く形成することが可能である。よって、外被材を伝わって真空断熱材の両面間に流れる熱を低減することが可能となり、断熱効果の低下を低減することができるので、保温効果の高い履物を提供することができる。
【0013】
また、真空断熱材の片面の外被材が金属箔を含む構成であるので、ガスバリア性が高く内圧の上昇を低減することが可能となり、熱伝導率の上昇を低減することができる。よって、経年にわたって高い断熱性を確保し得る温かい履物を提供できる。
【0014】
本発明では、芯材の一方の伝熱面を覆う外被材のガスバリア層に金属蒸着を用い、芯材の他方の伝熱面を覆う外被材のガスバリア層に金属箔を用いたので、両方の外被材のガスバリア層に金属箔を用いたものよりも、熱リークの問題を軽減できる。
【0015】
また、靴底側に配設された真空断熱材の面は、靴底と接する。よって、真空断熱材の靴底側の面からの水の浸入を低減することができ、内圧の上昇を低減することが可能となるので、熱伝導率の上昇を低減することができる。よって、経年にわたって高い断熱性を確保し得る温かい履物を提供することができる。
【0016】
また、金属蒸着をガスバリア層にした外被材側を靴底側に配設したので、金属蒸着をガスバリア層にした外被材側を足裏側に配設した場合よりも、金属蒸着をガスバリア層にした外被材を通過して真空断熱材内に浸入する水の量を低減できる。
【0017】
また、請求項2に記載の履物の発明は、請求項1に記載の発明において、真空断熱材の靴底側の面にカバー部材を配設したものであり、真空断熱材の靴底側の面にカバー部材をつけることにより真空断熱材の靴底側の面からの水の浸入を低減することができる。よって、経年にわたって高い断熱性を確保し得る温かい履物を提供することができる。
【0018】
また、耐突き刺し性が向上するので履物の中に小石等の突起物が入っても外被材が傷つき難くなり、真空断熱材の内圧の上昇を低減することができるので熱伝導率の上昇を低減することができる。
【0019】
また、請求項3に記載の履物の発明は、請求項1または2に記載の発明において、芯材周囲の外被材の、前記外被材同士が熱溶着されたシール部の位置が、芯材の厚み方向では前記芯材の靴底側の伝熱面寄りの位置に設けてあるものであり、真空断熱材のシール部が靴底側の面に近づくので、より靴底と真空断熱材の間に空気が回り込み難くなる。よって、真空断熱材の靴底側の面からの水の浸入を低減することができ、内圧の上昇を低減することが可能となるので、熱伝導率の上昇を低減することができる。よって、経年にわたって高い断熱性を確保し得る温かい履物を提供することができる。
【0020】
また、請求項4に記載の履物の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、芯材と共に外被材で覆われる水分吸着材を有し、前記水分吸着材が土踏まずの位置に相当する箇所に配設されたものであり、真空断熱材の内部に侵入した水を水分吸着材で吸着することができるので、内圧の上昇を低減することができる。よって、熱伝導率の上昇を低減することができる。よって、経年にわたって高い断熱性を確保し得る温かい履物を提供することができる。また、水分吸着材を入れた箇所の厚みが厚くなるが、土踏まずの位置に入れることにより、履いた場合の違和感を緩和することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の履物の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、真空断熱材は、芯材の伝熱面と外被材との接触部分の少なくとも一部が熱溶着され、かつ前記芯材周囲の前記外被材同士が大気圧で密着する部分が前記芯材の周縁に沿うように熱溶着されているものであり、真空断熱材の形状を、略足型形状、及び履物の靴底部形状に合うように成形できる。よって快適な履き心地の履物を提供することができる。
【0022】
また、請求項6に記載の履物の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、真空断熱材の芯材が略足型形状であり、かつ前記芯材周囲に位置し外被材の間に前記芯材がなく前記外被材同士が熱溶着された非芯材部が略足型形状であるものであり、芯材の無い非芯材部を小さくでき有効断熱面積が大きくなる。よって、略足型形状、及び履物の靴底部形状に合うように成形しつつも、断熱性能を高められる。
【0023】
また、請求項7に記載の履物の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、真空断熱材の芯材が厚みが1mm以上5mm以下であるものであり、真空断熱材の芯材が1mm以上5mm以下と薄いことからスペース確保の難しい履物であっても真空断熱材を適用できる。
【0024】
なお、履物とは、短靴、長靴、ブーツ、サンダル、スリッパ、及びスキー靴等のスポーツ用の靴を含め、特に指定するものではない。また、履物の中敷きとは、前記履物の靴底部に装着して利用するものであり、基本的には、装着と取り外しが任意に実施できるものをさす。
【0025】
また、真空断熱材とは、骨材となる気相比率の高い芯材を、ガスバリア性のフィルムや容器等の外被材で覆い内部を真空密封したものであり、内部を真空状態にすることにより、気体成分の熱伝導を低減させた断熱材をさす。
【0026】
真空断熱材の構成材料を説明すると、前記芯材に使用する材料は、気相比率90%前後の多孔体をシート状または板状に加工したものであり、工業的に利用できるものとして、発泡体、粉体、及び繊維体等がある。これらは、その使用用途や必要特性に応じて公知の材料を使用することができる。
【0027】
このうち、発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等の連続気泡体が利用できが、耐熱性の高いものが好ましい。
【0028】
粉体としては、無機系、有機系、及びこれらの混合物を利用できるが、工業的には、乾式シリカ、湿式シリカ、パーライト等を主成分とするものがより望ましい。
【0029】
繊維体としては、無機系、有機系、及びこれらの混合物が利用できるが、コストと断熱性能の観点から、無機繊維が有利である。無機繊維の一例としては、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール等、公知の材料を使用することができる。
【0030】
外被材に使用するラミネートフィルムには、金属箔や金属蒸着層を有するラミネートフィルムが適用でき、プラスチックラミネートフィルムを利用するのが、生産性やコストの面でメリットが大きい。
【0031】
以下、本発明による実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0032】
(実施の形態1)
本実施の形態において、履物として短靴を一例として説明する。図1は本発明の実施の形態1における靴の側面図、図2は本発明の実施の形態1における靴の断面図である。図3は本発明の実施の形態1における靴に適用した真空断熱材の断面図である。
【0033】
図1において、靴11は、足を包む部分の底部12と甲部13と前面部14と後面部15と側面部16とが、ゴム製の靴底17を接合して構成されている。図2に示すように底部12には、カバー部材としてプラスチックフィルム21、真空断熱材31、生地付きエラストマー22を積層して構成している。
【0034】
ここで、カバー部材(プラスチックフィルム21)は真空断熱材31と密着しているほうが望ましく、接着剤やテープ等の粘着物により密着固定されているのが望ましい。また、例としてプラスチックフィルムを挙げたが、複数の層から構成されたラミネートフィルムでも構わない。また、カバー部材(プラスチックフィルム21)として耐透湿性の部材、例えばシリコン、エポキシ等の材料を塗布することにより配設しても構わない。
【0035】
図3に示す真空断熱材31の構成は、略足型形状にカットされたグラスウール成形体からなる厚さ4mmの芯材32をガスバリア性のラミネートフィルムからなる外被材で覆いラミネートフィルム(外被材)の内部を減圧したものである。
【0036】
足裏側のラミネートフィルム(外被材)は、最外層から保護層である25μmのナイロンフィルム33、ガスバリア層であるアルミ蒸着34、熱溶着層である30μmのポリエチレン35と構成されている。靴底側のラミネートフィルム(外被材)は、最外層から保護層である25μmのナイロンフィルム33、ガスバリア層である6μmのアルミ箔36、熱溶着層である30μmのポリエチレン35と構成されている。ラミネートフィルム(外被材)は、特に、耐屈曲性の優れたものが望ましく、公知の材料が適用できる。
【0037】
更に、この真空断熱材31の真空封止方法について詳細に説明する。
【0038】
まず、芯材32形状に追従しやすいように弾性体を表層に貼り合わせた熱板を有する真空チャンバー内において、2枚のガスバリア性ラミネートフィルム(外被材)の間の略同一平面上に、複数の芯材32を離間して配置し、所定圧力迄減圧後、外被材間に芯材32がある部分を含めて加熱加圧して、対向する熱溶着層35同士を、間に芯材32がある部分を除いて、芯材32形状に沿うように熱溶着することで真空断熱材31を製造するものである。このような真空封止方法で真空断熱材31を成形すると、芯材32周囲に添うように熱溶着部37が形成されるため、外被材間に芯材32がない非芯材部がより小さくなる。
【0039】
以上のような構成により、本実施の形態1における靴11は、靴底部の殆どを覆う真空断熱材31の優れた断熱作用により、人体の発する体熱の保温や外気の遮断が効果的に行われ、寒冷な環境下において足部を温かく保つことができる。
【0040】
また、アルミ蒸着34はアルミ箔36の場合よりも厚みを薄く形成することが可能である。よって、外被材を伝わって真空断熱材31の両面間に流れる熱を低減することが可能となり、断熱効果の低下を低減することができるので、保温効果の高い履物を提供することができる。また、真空断熱材31の片面の外被材がアルミ箔36を含む構成であるので、ガスバリア性が高く内圧の上昇を低減することが可能となるので、熱伝導率の上昇を低減することができる。よって、経年にわたって高い断熱性を確保し得る温かい履物を提供できる。
【0041】
また、カバー部材(プラスチックフィルム21)をつけることにより真空断熱材31の面からの水の浸入を低減することができる。よって、経年にわたって高い断熱性を確保し得る温かい履物(靴11)を提供することができる。カバー部材(プラスチックフィルム21)を真空断熱材31に密着して配設している場合、さらに水の浸入を低減することができるのでよりよい。また、耐突き刺し性が向上するので履物(靴11)の中に小石等の突起物が入っても外被材が傷つき難くなり、真空断熱材31の内圧の上昇を低減することができるので熱伝導率の上昇を低減することができる。
【0042】
また、靴底側に配設された真空断熱材31の面は、靴底と接する。よって、真空断熱材31の靴底側の面からの水の浸入を低減することができ、内圧の上昇を低減することが可能となるので、熱伝導率の上昇を低減することができる。よって、経年にわたって高い断熱性を確保し得る温かい履物を提供することができる。
【0043】
また、履物の靴底部に適用した真空断熱材31の屈曲する方向は、片面側方向のみという特徴があり、歩行によって靴底側の外被材は伸ばされる方向に負荷が強くかかる。そのため靴底側のラミネートフィルムにアルミ蒸着34構成を配置することにより、アルミ箔36よりアルミ蒸着34の方が伸びやすいため、靴底側ラミネートフィルムのフィルムクラック等の発生を抑制することが可能となり、真空断熱材31の屈曲耐久性が向上する。
【0044】
本実施の形態の履物(靴11)は、対向する2つの伝熱面を有する板状の芯材32を、最外層から保護層(ナイロンフィルム33)、ガスバリア層(アルミ蒸着34またはアルミ箔36)、最内層に熱溶着層(ポリエチレン35)からなる多層構造でガスバリア性の外被材で覆って外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材31を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物(靴11)であって、芯材32の一方の伝熱面を覆う外被材のガスバリア層が金属蒸着(アルミ蒸着34)であり、芯材32の他方の伝熱面を覆う外被材のガスバリア層が金属箔(アルミ箔36)であり、真空断熱材31は、金属蒸着(アルミ蒸着34)をガスバリア層にした外被材側を靴底側に配設したものである。
【0045】
金属蒸着(アルミ蒸着34)は、金属箔(アルミ箔36)の場合よりも厚みを薄く形成することが可能である。よって、外被材を伝わって真空断熱材31の両面間に流れる熱を低減することが可能となり、断熱効果の低下を低減することができるので、保温効果の高い履物(靴11)を提供することができる。
【0046】
また、真空断熱材31の片面の外被材が金属箔(アルミ箔36)を含む構成であるので、ガスバリア性が高く内圧の上昇を低減することが可能となり、熱伝導率の上昇を低減することができる。よって、経年にわたって高い断熱性を確保し得る温かい履物(靴11)を提供できる。
【0047】
また、本実施の形態では、芯材32の一方の伝熱面を覆う外被材のガスバリア層に金属蒸着(アルミ蒸着34)を用い、芯材32の他方の伝熱面を覆う外被材のガスバリア層に金属箔(アルミ箔36)を用いたので、両方の外被材のガスバリア層に金属箔を用いたものよりも、熱リークの問題を軽減できる。
【0048】
また、金属蒸着(アルミ蒸着34)をガスバリア層にした外被材側を靴底側に配設したので、金属蒸着(アルミ蒸着34)をガスバリア層にした外被材側を足裏側に配設した場合よりも、金属蒸着(アルミ蒸着34)をガスバリア層にした外被材を通過して真空断熱材31内に浸入する水の量を低減できる。
【0049】
また、本実施の形態の履物(靴11)は、真空断熱材31の靴底側の面にカバー部材(プラスチックフィルム21)を配設したものであり、真空断熱材31の靴底側の面にカバー部材(プラスチックフィルム21)をつけることにより真空断熱材31の靴底側の面からの水の浸入を低減することができる。よって、経年にわたって高い断熱性を確保し得る温かい履物を提供することができる。
【0050】
また、カバー部材(プラスチックフィルム21)により耐突き刺し性が向上するので履物(靴11)の中に小石等の突起物が入っても外被材が傷つき難くなり、真空断熱材31の内圧の上昇を低減することができるので熱伝導率の上昇を低減することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、真空断熱材31は、芯材32の伝熱面と外被材との接触部分の少なくとも一部が熱溶着され、かつ芯材32周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分が芯材32の周縁に沿うように熱溶着されているものであり、真空断熱材31の形状を、略足型形状、及び履物(靴11)の靴底部形状に合うように成形できる。よって快適な履き心地の履物(靴11)を提供することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、真空断熱材31の芯材32が略足型形状であり、かつ芯材32周囲に位置し外被材の間に芯材32がなく外被材同士が熱溶着された非芯材部が略足型形状であるものであり、芯材32の無い非芯材部を小さくでき有効断熱面積が大きくなる。よって、略足型形状、及び履物(靴11)の靴底部形状に合うように成形しつつも、断熱性能を高められる。
【0053】
また、真空断熱材31の芯材32が厚みが1mm以上5mm以下であると、芯材32が1mm以上5mm以下と薄いことからスペース確保の難しい履物(靴11)であっても真空断熱材31を適用できる。
【0054】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2における靴に適用した真空断熱材の断面図である。靴11の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0055】
図4に示す真空断熱材31の構成で実施の形態1と違う点は、芯材32周囲の外被材の、外被材同士が熱溶着されたシール部(熱溶着部37)の位置が、芯材32の厚み方向では芯材32の靴底側の伝熱面寄りの位置に設けてある点であり、真空断熱材31のシール部(熱溶着部37)が靴底側の面に近づくので、より靴底と真空断熱材31の間に空気が回り込み難くなる。よって、真空断熱材31の靴底側の面からの水の浸入を低減することができ、内圧の上昇を低減することが可能となるので、熱伝導率の上昇を低減することができる。よって、経年にわたって高い断熱性を確保し得る温かい履物(靴11)を提供することができる。
【0056】
なお、シール部(熱溶着部37)の位置の寄りは真空断熱材31全体において寄っているのが理想だが、少なくとも芯材32部の周囲において寄っていれば上記の効果は得られる。寄りの程度としては、真空断熱材31の全体厚みに占める、シール部(熱溶着部37)と真空断熱材31片面との距離が50%未満であればよい。40%未満であればさらに上記の効果が顕著に得られる。
【0057】
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3における靴に適用した真空断熱材の平面図、図6は本発明の実施の形態3における靴に適用した真空断熱材の断面図である。
【0058】
図5及び図6において、実施の形態1と異なる点は、真空断熱材31の内部に水分吸着材38を配設している点である。水分吸着材38は土踏まずの位置に相当する箇所に配設されている。
【0059】
一方、真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形したものを適用している。
【0060】
以上のような構成により、真空断熱材31の内部に侵入した水を吸着することができるので、内圧の上昇を低減することができる。よって、熱伝導率の上昇を低減することができるので、経年にわたって高い断熱性を確保し得る温かい履物を提供することができる。
【0061】
また、吸着材38を入れた箇所の厚みが厚くなるが、土踏まずにいれることにより、履いた場合の違和感を緩和することができる。
【0062】
(実施の形態4)
図7は本発明の実施の形態4における靴の中敷の断面図である。
【0063】
図7において、靴の中敷51は、真空断熱材31の表面(足裏側となる面)に生地付きエラストマー52を、裏面(靴底側となる面)にプラスチックフィルム53を貼り合わせて構成している。
【0064】
一方、真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形したものを適用している。
【0065】
以上のような構成により、靴の中敷51は、真空断熱材31の優れた断熱性能により、従来の靴の中敷きと変わらない厚さでありながら、高い保温性能を有している。
【0066】
このように、保温性能が高くても靴の中敷きが薄く、従来中敷きと寸法や外観が大幅に変わることがなく、かつ靴の形状や靴の種類等に左右されることなく使用することができる。
【0067】
更に、真空断熱材31に表装材を貼り付け、履き心地を高めた靴の中敷きとしているため、気候や気温に応じて装着と取り外しが任意に選択できる。更に、屈曲性と屈曲耐久性に優れていることから、履き心地や経済性にも優れた中敷きであり、幅広い用途が期待できる。
【0068】
なお、真空断熱材31の芯材32部厚みに関しては、厚みを厚くすることで、より保温性能の高い靴の中敷きが提供でき、より厳しい寒冷地での適用も期待できる。しかし、厚すぎる場合は歩行時に違和感を覚えるため、10mm以下が望ましく、更には5mm以下がより望ましい。逆に、薄すぎる場合は、断熱性能が不足したり、断熱性能の経年特性が低下するため、1mm以上が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明にかかる真空断熱材、及び真空断熱材を適用した履物と履物の中敷きは、優れた断熱性能を有する真空断熱材の適用により体熱の保温や冷気の遮断が効果的に行われると共に、真空断熱材は薄く形成しても断熱効果が高いので、本発明の実施の形態に示した靴に限らず、スリッパなど通常断熱性を有しない履物にも適用することもでき、これにより防寒性を確保し、快適性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態1における靴の側面図
【図2】本発明の実施の形態1における靴の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における靴に適用した真空断熱材の断面図
【図4】本発明の実施の形態2における靴に適用した真空断熱材の側面図
【図5】本発明の実施の形態3における靴に適用した真空断熱材の平面図
【図6】本発明の実施の形態3における靴に適用した真空断熱材の断面図
【図7】本発明の実施の形態4における靴に適用した中敷の断面図
【符号の説明】
【0071】
11 靴(履物)
21 プラスチックフィルム(カバー部材)
31 真空断熱材
32 芯材
33 保護層
34 アルミ蒸着(金属蒸着)
35 熱溶着層
36 アルミ箔(金属箔)
37 シール部(熱溶着部)
38 水分吸着材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの伝熱面を有する板状の芯材を多層構造でガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物であって、前記芯材の一方の伝熱面を覆う前記外被材のガスバリア層が金属蒸着であり、前記芯材の他方の伝熱面を覆う前記外被材のガスバリア層が金属箔であり、前記真空断熱材は、金属蒸着をガスバリア層にした外被材側を靴底側に配設した履物。
【請求項2】
真空断熱材の靴底側の面にカバー部材を配設した請求項1に記載の履物。
【請求項3】
芯材周囲の外被材の、前記外被材同士が熱溶着されたシール部の位置が、芯材の厚み方向では前記芯材の靴底側の伝熱面寄りの位置に設けてある請求項1または2に記載の履物。
【請求項4】
芯材と共に外被材で覆われる水分吸着材を有し、前記水分吸着材が土踏まずの位置に相当する箇所に配設された請求項1から3のいずれか一項に記載の履物。
【請求項5】
真空断熱材は、芯材の伝熱面と外被材との接触部分の少なくとも一部が熱溶着され、かつ前記芯材周囲の前記外被材同士が大気圧で密着する部分が前記芯材の周縁に沿うように熱溶着されている請求項1から4のいずれか一項に記載の履物。
【請求項6】
真空断熱材の芯材が略足型形状であり、かつ前記芯材周囲に位置し外被材の間に前記芯材がなく前記外被材同士が熱溶着された非芯材部が略足型形状である請求項1から5のいずれか一項に記載の履物。
【請求項7】
真空断熱材の芯材が厚みが1mm以上5mm以下である請求項1から6のいずれか一項に記載の履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−212529(P2008−212529A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57021(P2007−57021)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】