説明

崩壊監視システム

【課題】 低価格で、広範囲に亘って監視可能な崩壊監視システムを提供する。
【解決手段】 異常計測装置として機能する無線通信端末101の各通信範囲内に、他の無線通信端末102が存在すれば、各無線通信端末が基地局105と直接通信できない場合であっても、マルチホップ通信方式で、各通信端末で入手した情報を迅速に収集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、崩壊監視システムに係り、特に、山地、崖などの斜面の変形や崩壊などを検知するのに好適な、無線通信技術を用いた斜面崩壊監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
山岳地帯、丘陵地帯では、豪雨や、地震、火山活動により崩落や崩壊が多発している。また、大規模なトンネル工事や建築現場、老朽化した建造物においても常に崩落事故や崩壊事故の危険性をはらんでいる。これらの災害や事故による被害を最小限にとどめるためには、地滑りや崩壊等のおそれがある部分の状態を常に計測、監視し、異常をいち早く検知して、対策をとる必要がある。
【0003】
従来、例えば斜面の地滑り調査は、地表伸縮計や地盤傾斜計を用いて計測されていた。しかし、これらの計測機器を用いた場合には、1台の計測機器の計測範囲が狭いので、複数の機器を設置しなければならず、各計測機器の計測結果を短時間で収集、分析するのが困難であった。また、観測現場に設置した計測機器の測定結果を、衛星通信技術を利用して収集する方法もあるが、システム全体が大規模かつ高価格となり、普及に限界があった。
【0004】
上記解決策としては、各計測装置を無線端末として、例えば携帯式無線機を用いて、各計測装置から計測結果を直接監視装置に無線送信して情報を収集する方法がある。
【0005】
図7は、従来の斜面崩壊監視システムを示す図である。危険地域803には、複数の異常検出装置801が配置されている。異常検出装置は異常検出機構とデータ送信機構および電源供給機構を有し、アンテナを介して、遠隔地にある監視装置802と、個別に無線通信して情報を送信する。このような計測システムは、例えば特許文献1、特許文献2に示されている。
【0006】
また、異常計測手段として光ファイバを用い、公衆網を用いて情報を収集する方式も提案されている。
【0007】
図8は、従来の斜面崩壊監視システムを示す図である。山地700に任意間隔で歪みを検知する光ファイバ歪み計701,702,703が埋め込まれる。各光ファイバ歪み計701、702、703には伝送用の光ファイバ704が接続され、光ファイバ704の一端はBOTDRと呼ばれる光ファイバ歪分布計測装置705に接続されている。光ファイバ歪分布計測装置705で集められたデータは公衆網706を通じ、観測所707より遠隔監視をすることができる。このような計測システムは、例えば特許文献3に示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−149176号公報
【特許文献2】特開2003−185760号公報
【特許文献3】特開2002−5759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の計測システムは、異常検出装置で得られた情報を、携帯用無線機や公衆網を用いて、各異常検出装置から直接、監視装置に無線送信または光ファイバ伝送するために、異常検出装置の設置場所が限定される。すなわち、異常検出装置と監視装置の距離は、異常検出装置の無線通信範囲内もしくは光ファイバケーブルが届く範囲に限定され、広い範囲の監視には適さない。携帯式無線機(携帯電話)を用いた場合には、前記通信距離を伸ばすことは可能であるものの、消費電力量が多く、各測定機器に大容量の蓄電型電源を備えなければならず、計測機器自体が高価となるばかりではなく、容量によっては定期的なメンテナンスが必要になり、かつ計測可能期間が短くなる。また、光ファイバを用いた計測システムでは、システムが大がかりになる、もしくは設置やシステム価格が高くなるという問題がある。
【0010】
本発明の技術的課題は、低価格で、広範囲に亘って監視することができる崩壊監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の崩壊監視システムは、自立分散型無線ネットワークを構成する無線システムであって、異常計測装置として機能する複数の無線通信端末の各通信範囲内に、他の無線通信端末が存在すれば、各無線通信端末が監視装置と直接通信できない場合であっても、マルチホップ通信方式で、各通信端末で入手した情報を迅速に収集できる。
【0012】
また、自立分散型無線ネットワークによるマルチホップ通信方式は、例えば携帯式無線機に較べると、無線通信端末間の通信距離が非常に短いために、通信で消費する電力が極めて少ない。従って、大容量の電源が不要となり、無線通信端末の稼働寿命が格段に伸びる。なお、携帯式無線機の消費電力は1ワットから数ワットであるのに対して、マルチホップ通信方式を採用した場合は、数ミリワットから数十ミリワットである。
【0013】
本発明によれば、観測対象物の異常を検出するセンサ部を有している無線通信端末を含む無線通信端末群と、前記無線通信端末群が検出した情報を収集する基地局とからなる崩壊監視システムであって、前記無線通信端末群は、自立分散型無線ネットワークを構成してなることを特徴とする崩壊監視システムが得られる。
【0014】
本発明によれば、前記観測対象物の異常を検出するセンサ部を有している無線通信端末は、少なくとも電源部、センサ部、制御部、無線部、アンテナ部を有し、前記センサ部、前記制御部、前記無線部は前記電源部からの電力供給により動作し、前記センサが検出した情報を、前記制御部で演算処理し、前記無線部および前記アンテナ部を介して、前記基地局と通信することを特徴とする崩壊監視システムが得られる。
【0015】
本発明によれば、前記無線通信端末群と、前記基地局間は、無給電光伝送装置を介して接続されてなることを特徴とする崩壊監視システムが得られる。
【0016】
本発明によれば、前記無給電光伝送装置は、光源部と光電変換部と電源部からなる送信機と、前記無線通信端末群からの電波信号を受信するアンテナ部と前記信号を光信号に変換する受信センサ部からなる受信機と、光ファイバとから構成されてなり、前記光ファイバによって、前記光源部と前記受信センサ部間、および、前記光電変換部と前記受信センサ部間を接続していることを特徴とする崩壊監視システムが得られる。
【0017】
本発明によれば、前記無給電光伝送装置は、光源部と光電変換部と電源部からなる送信機と、光スイッチと、前記無線通信端末群からの電波信号を受信するアンテナ部と前記信号を光信号に変換する受信センサ部からなる複数の受信機と、光ファイバとから構成されてなり、前記光ファイバは前記光スィッチを介して、前記光源部と前記複数の受信機の受信センサ部間、および、前記光電変換部と前記複数の受信機の受信センサ部とを各々接続していることを特徴とする崩壊監視システムが得られる。
【0018】
本発明によれば、前記観測対象物の異常を検出するセンサ部は、加速度センサであることを特徴とする崩壊監視システムが得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、広い範囲での使用が可能で、システム全体として低価格である無線システムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、斜面や崖、構造物などの観測対象物の異常を検知し、迅速に情報を収集、伝達するもので、異常を検知するためのセンサを搭載した無線通信端末を、自立分散型無線ネットワークを構成して崩壊や崩落が予想される場所に配置する。前記無線通信端末は、観測対象物の異常、つまり、地表や建造物表面の移動や振動、衝撃などを検出し、これを情報として基地局に送信する。なお、各無線通信端末の通信距離は、数十メートルから数百メートルと比較的短いが、自立分散型無線ネットワークを構成しているので、直接基地局と通信できる範囲内に存在していなくとも、無線通信端末を経由するマルチホップ方式で情報を送受信しながら、最終的には、基地局に情報を送信することができる。
【0021】
なお、基地局が遠隔地にある場合や観測対象領域が点在する場合、地形や建造物の関係で通信障害が生じる場合には、観測対象物のある観測対象領域内に配された無線通信端末にはセンサを搭載するが、観測対象領域外であって、観測対象領域と基地局を結ぶ領域や、通信上必要と思われる領域に、センサを搭載しない無線通信端末を随時配置して、自立分散型無線ネットワークを構成しても、システムの低価格化を図る点でよい。
【0022】
また、無線通信端末群と基地局の間に、電源部を不要とする受信機と送信機からなる無給電光伝送装置を介在させることは、低価格で、広い観測対象領域を確保するのには好ましい。一般に、観測対象領域は電源設備に乏しい山岳地帯であることが多い。従って、例えば、山地斜面に無線通信端末を配置し、基地局との中継として、麓に、電源設備不要の受信機のみを配して、光ファイバを用いて送信機と接続した無給電光伝送装置を配するのが好ましい。
【0023】
また、広い観測対象領域を確保するためには、複数の自立分散型無線ネットワークを構成して、各自立分散型無線ネットワークに前記受信機を対応配置し、光スィッチを介して送信機に接続して、収集した情報を、該送信機から、基地局へ情報を送信するのも、より好ましい。
【0024】
さらに、基地局は、収集した情報を、公衆回線網をはじめとする一般に知られた方法で、観測所や、防災センター等の各種機関に送信するのがよい。
【0025】
前記無線通信端末に搭載するセンサは、傾斜センサ、加速度センサ、磁気センサ、各種歪みセンサ、地表伸縮計、地盤傾斜計等の、観測対象物の異常を検知するために一般的に用いるセンサや計測器であって、信号に変換可能な情報が得られるものであれば何を用いてもよいが、性能の点で加速度センサを用いるのが好ましい。また、センサや計測器には、必要に応じて信号変換手段を設け、変換した信号を送信してもよい。
【0026】
前記無線通信端末は、センサ機能や通信機能を阻害しない範囲で、設置場所の状態に応じて、防水手段や載置手段を設けてもよい。設置場所は、同様に、センサ機能や通信機能を阻害しない範囲で適宜選択するのがよい。無線通信端末の移動を防止し、正確な異常検知のために、必要に応じて、係止手段を設ける、穴を設けて埋設するなどの手段を適宜選択するのがよい。設置方法は、人手、空中散布など従来から知られた方法を適宜選択するのがよい。
【0027】
前記無線通信端末の駆動には、一般的な電源供給設備からの給電やあらかじめ設けた蓄電型電源を用いるのがよい。さらに、無線通信端末にソーラーパネルと蓄電器を設けて、太陽電池を電力供給源とするのは、メンテナンス不要、長期観測可能となるので、より好ましい。必要に応じて無線通信により給電する方式を採用してもよい。なお、本発明の崩壊監視システムは、自立分散型無線ネットワークを構成しているので、通信距離においても、携帯式電話機に比して、各無線通信端末の通信距離が短い。従って、各無線通信端末の消費電力も少なく、蓄電型電源の小容量化、長寿命化に貢献しているのみならず、太陽エネルギーによる電力供給で充分に駆動可能である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明する。
【0029】
(実施例1)
図2は、本発明の実施例を示す図で、センサを搭載した無線通信端末の構成を示す。無線通信機端末は、電源部200、センサ部201、制御部202、無線部203、アンテナ部204とから構成されている。センサ部201として加速度センサを用い、全体がサイズ3cm×3cm×3cmの筐体に収納されている。
【0030】
電源部200は太陽電池とリチウムイオン二次電池を組み合わせて構成しており、独立電源を構成しているので電池の充電、取替えが不要となる。センサ部201、制御部202、無線部203は電源部200からの電力供給により動作し、センサ部201が検知した振動、すなわち異常情報を、制御部202で演算処理を行い、無線部203でRF信号を生成し、アンテナ部204を介して、基地局側へ前記RF信号を送信する。
【0031】
制御部202は8bitマイクロコンピュータを用いている。A/Dポートが搭載されており、センサ部201から取得されるアナログ情報をデジタル情報に変換する機能を備えている。
【0032】
無線部203は、IEEE802.15.4準拠の204GHz帯用低電力トランシーバを用いることにより、低消費電力通信を行う。本無線通信端末の通信範囲は見通しで70m前後である。通信機能は、振動やずれ等の異常情報が検出されたときに起動し、基地局側に送信を行う。通常状態では、センサ部以外は待機モードに設定され、低消費電力化を図っている。
【0033】
センサ部201は容量変位型の2軸半導体加速度センサを用いている。MEMSタイプのセンサであり、800mV/Gの高感度特性を示し、消費電力は2mA程度である。
【0034】
図1は、本発明の実施例を示す図で、斜面崩壊監視システムの概略を示す。無線通信端末101、102、103、104は、山地100の斜面に約60m間隔で点在し、無線通信端末群を構成している。また、これらの無線通信端末は、図2に示す構成で、基地局105を含み、自立分散型無線ネットワークを構成している。基地局105は、無線通信端末群の点在する山地100の斜面下部に配された無線通信端末104から65m離れた場所に配され、各無線通信端末が検知した異常情報を収集する。なお、無線通信端末101、102、103、104は、山地100の斜面の表面土壌中に一部埋め込まれ、固定されている。
【0035】
無線通信端末群の無線端末101、102、103、104は、自立分散型無線ネットワークを構築しているので、互いに、基地局105を介さずに通信可能である。すなわち、無線通信端末101が取得した異常情報は、例えば、無線通信端末102、無線通信端末104を経由して、いわゆるアドホック・マルチホップ通信を行い、基地局105に送信する。なお、この通信経路は、随時選択されるもので、無線通信端末101が送信した情報は、無線通信端末103、無線通信端末104を経由して基地局105に到達してもよく、さらに無線通信端末104のみを経由して、基地局105に到達してもよい。
【0036】
本実施例では、各無線通信端末は約60m間隔で配置したが、ある無線通信端末の通信範囲以内に、他の無線通信端末もしくは基地局が位置するよう配置すれば任意の間隔で設置してよい。なお、本実施例では、4台の無線通信端末を用いたが、各無線通信端末の通信距離や観測領域の大きさに応じて、適宜増減すればよい。
【0037】
無線通信端末101が検知した異常情報は、上記方法により、無線通信端末101の通信距離外に配置された基地局105に到達した。また、該異常情報は基地局105から、公衆網106を介して送信され、異常情報検知から1分以内で、50km離れた観測所107に送信された。
【0038】
また、太陽電池とリチウム二次電池からなる独立電源を用いているので、特段のメンテナンスを必要とせずに10ヶ月連続稼働した。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様に、図2に示す無線通信端末を3台と、図2に示す無線通信端末構成からセンサ部を除外した構成の無線通信端末を1台用意し、図1のように、山地100の斜面に設置した。なお、無線通信端末101、102、103は、図2に示した構成の無線通信端末、無線通信端末104は、センサ部を除外した無線通信端末とした。また、センサ部201には、加速度センサの代わりに傾斜センサを用い、電源部200には、充電されたリチウム二次電池を用いた。
【0040】
無線通信端末103が検知した異常情報は、無線通信端末101および無線通信端末102を経由し、地盤が堅牢な領域に配された無線通信端末104を介して基地局105に送信された。さらに、該異常情報は基地局105から、公衆網106を介して送信され、異常情報検知から1分以内で、100km離れた観測所107に送信された。
【0041】
(実施例3)
図3は、本発明の実施例を示す図で、斜面崩壊監視システムの概略を示す。実施例1で用いたものと同仕様の無線通信端末301、302、303、304は、山地300の斜面に約65m間隔で点在し、無線通信端末群を構成している。また、これらの無線通信端末は、図4に示す構成の無給電光伝送装置の受信機305を含み、自立分散型無線ネットワークを構成している。基地局308は、無線通信端末群の点在する山地300の斜面下部に配された受信機305から3km離れた地盤が堅牢かつ地崩れが発生しても、その影響を受けない場所に配され、各無線通信端末が検知した異常情報を収集する。なお、無線通信端末301、302、303、304は、山地300の斜面の表面土壌中に、楔状部材で係止され、固定されている。
【0042】
無給電光伝送装置の受信機305は、無線通信端末304から60m離れた地点に設置され、無給電光伝送装置の全長3kmの光ファイバ306を介して、無給電光伝送装置の送信機307に接続している。受信機305が受信した異常情報は、光ファイバ306を経由して送信機307に到達し、さらに基地局308から、公衆網309を介して、70km離れた観測所310に送信される。
【0043】
一般に基地局は、相当距離離れた観測所のような施設に公衆回線網を用いて、通信するのに充分な電源設備を必要とする。しかしながら、本システムが使用されうる地域には、そのような電源設備が整備されていない場合も多い。従って、本実施例では、電源設備不要の受信機を、観測対象領域の近傍に配し、光ファイバを用いて電源設備が整備された地域まで情報を伝達させた上で、基地局に送信した。なお、光ファイバの全長は適宜選択しうるが、機能性を考慮し、5km以内とするのが好ましい。
【0044】
図4は、本発明の実施例を示す図で、無給電光伝送装置の詳細を示す。送信機307は光源部406、光電変換機407、AC電源部409、RF出力口408から構成される。また、受信機305は受信アンテナ401と、受信センサ部402からなる受動回路のみで構成され、電源は搭載しない。
【0045】
送信機307と、受信機305は2本の光ファイバ306で接続され、一方の光ファイバ306は、送信機307の光源部406と、受信機305の受信センサ部402を接続し、さらに他方の光ファイバ306は、送信機307の光電変換機407と、受信機305の受信センサ部402を接続している。
【0046】
送信機307の光源部406から受信機305に向けて、光ファイバ306を通り、無変調光が送信される。受信機305の受信センサ部402は、無線通信端末からの送信信号を、アンテナ401を通じて受信し、その受信信号によって無変調光を変調し、送信機307の光電変換機407に向けて光ファイバ306を通って信号を送り返す。受信センサ部402はニオブ酸リチウム結晶を使用した光導波路をベースに構成されており、受信電波信号を光信号に直接変換する。
【0047】
送り返された変調光は送信機307の光電変換機407において電気信号に変換され、RF出力口408から基地局に送信される。前述のように、受信機305には電源設備が不要であるので、設置場所の制限が少なく、崩壊の恐れのある観測対象領域であっても、容易に設置することができる。
【0048】
従って、無線通信端末302が検知した異常情報は、無線通信端末304を経由し、受信機305に送信され、さらに光ファイバ306、送信機307を経由して基地局308に到達し、公衆網309を介して送信され、異常情報検知から1分以内で、100km離れた観測所310に送信された。
【0049】
(実施例4)
図6は、本発明の実施例を示す図で、斜面崩壊監視システムの概略を示す。実施例1で用いたものと同仕様の無線通信端末601〜604、611〜614、621〜624は、山地600、610、620の斜面に各々約70m間隔で点在し、3つの無線通信端末群を構成している。また、これらの無線通信端末は、図5に示す構成の無給電光伝送装置の受信機605、615、625を含み、各々自立分散型ネットワークを構成している。基地局631は、無線通信端末群の点在する山地の各斜面下部から4km離れた地盤が堅牢かつ地崩れが発生しても、その影響を受けない場所に配され、各無線通信端末が検知した異常情報を収集する。なお、無線通信端末601〜604、611〜614、621〜624は、山地600、610、620の斜面の表面土壌中に、おもりで係止され、固定されている。
【0050】
無給電光伝送装置の受信機605、615、625は、無線通信端末604、614、624から約65m離れた地点に設置され、無給電光伝送装置の全長4kmの光ファイバ606、616、626を介して、無給電光伝送装置の送信機650に接続している。受信機605、615、625が受信した異常情報は、光ファイバ606、616、626を経由して送信機650に到達し、さらに基地局631を経由し、公衆網632を介して、80km離れた観測所633に送信される。
【0051】
図5は、本発明の実施例を示す図で、光スイッチを用いた並列無給電光伝送装置の基本系統図である。
【0052】
送信機650は光源部517、光電変換機518、AC電源部521、RF出力口520、光スイッチ519から構成されている。また、受信機605、615、625は、図4に示した受信機305と同仕様で、電源を搭載しない受動回路のみから構成されており、光スイッチ519を介して送信機650と並列に接続されている。光スイッチ519を切り替える操作により、受信機605、615、625の受信信号を取得することができる。その他の動作、構成は図4と同仕様である。
【0053】
送信機650から光スイッチ519を介して、光ファイバ606、616、626を経由して、受信機605、615、625に無変調光を送信する。山地600、610、620に設置されたセンサ群からの送信情報は、それぞれ受信機605、615、625で送信機650から送られてきた無変調光に変調をかけて送信機650に送り返される。なお、送信機と受信機は、1:Nの関係で接続することができるので、システム全体の低価格化を推進することができる。
【0054】
従って、無線通信端末601が検知した異常情報は、無線通信端末604を経由し、受信機605に送信され、さらに光ファイバ606、送信機650を経由して基地局631に到達し、公衆網632を経由して送信され、異常情報検知から1分以内で、150km離れた観測所633に送信された。
【0055】
上記構成にすることにより、システム全体が低価格で、維持費用も節減でき、かつ、広範囲の観測対象領域を網羅する崩壊監視システムを構成することが可能となる。また、自立分散型無線ネットワークシステムの採用により、該システムを低価格かつ、容易に拡張することができる。
【0056】
以上、実施例を用いて、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の崩壊監視システムにより、広範囲な地域、構造物、建造物の災害や事故防止システム、監視システムを簡便かつ低価格で構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例を示す図。
【図2】本発明の実施例を示す図。
【図3】本発明の実施例を示す図。
【図4】本発明の実施例を示す図。
【図5】本発明の実施例を示す図。
【図6】本発明の実施例を示す図。
【図7】従来の斜面崩壊監視システムを示す図。
【図8】従来の斜面崩壊監視システムを示す図。
【符号の説明】
【0059】
100,300,600,610,620,700 山地
101,102,103,104 無線通信端末
105,308,631 基地局
106,309,632,706 公衆網
107,310,633,707 観測所
200 電源部
201 センサ部
202 制御部
203 無線部
204 アンテナ部
301,302,303,304 無線通信端末
305,500,605,615,625 受信機
307,405,650 送信機
306 光ファイバ
402,507,508,509 受信センサ部
401,504,505,506 受信アンテナ
406,517 光源部
407,518 光電変換機
408,520 RF出力口
409,521 AC電源部
606,616,626,704 光ファイバ
519 光スイッチ
601,602,603,604 無線通信端末
611,612,613,614 無線通信端末
621,622,623,624 無線通信端末
701,702,703 光ファイバ歪み計
705 光ファイバ歪分布計測装置
801 異常検出装置
802 監視装置
803 危険地域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象物の異常を検出するセンサ部を有している無線通信端末を含む無線通信端末群と、前記無線通信端末群が検出した情報を収集する基地局とからなる崩壊監視システムであって、前記無線通信端末群は、自立分散型無線ネットワークを構成してなることを特徴とする崩壊監視システム。
【請求項2】
前記観測対象物の異常を検出するセンサ部を有している無線通信端末は、少なくとも電源部、センサ部、制御部、無線部、アンテナ部を有し、前記センサ部、前記制御部、前記無線部は前記電源部からの電力供給により動作し、前記センサが検出した情報を、前記制御部で演算処理し、前記無線部および前記アンテナ部を介して、前記基地局と通信することを特徴とする請求項1記載の崩壊監視システム。
【請求項3】
前記無線通信端末群と、前記基地局間は、無給電光伝送装置を介して接続されてなることを特徴とする請求項1記載の崩壊監視システム。
【請求項4】
前記無給電光伝送装置は、光源部と光電変換部と電源部からなる送信機と、前記無線通信端末群からの電波信号を受信するアンテナ部と前記信号を光信号に変換する受信センサ部からなる受信機と、光ファイバとから構成されてなり、前記光ファイバによって、前記光源部と前記受信センサ部間、および、前記光電変換部と前記受信センサ部間を接続していることを特徴とする請求項3記載の崩壊監視システム。
【請求項5】
前記無給電光伝送装置は、光源部と光電変換部と電源部からなる送信機と、光スイッチと、前記無線通信端末群からの電波信号を受信するアンテナ部と前記信号を光信号に変換する受信センサ部からなる複数の受信機と、光ファイバとから構成されてなり、前記光ファイバは前記光スィッチを介して、前記光源部と前記複数の受信機の受信センサ部間、および、前記光電変換部と前記複数の受信機の受信センサ部とを各々接続していることを特徴とする請求項3記載の崩壊監視システム。
【請求項6】
前記観測対象物の異常を検出するセンサ部は、加速度センサであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の崩壊監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−18126(P2007−18126A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197059(P2005−197059)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】