説明

感光性樹脂組成物、ブラックマトリクスおよびその製造方法、トランジスタアレイ基板およびその製造方法、並びに、カラーフィルタ基板およびその製造方法

【課題】パターニング精度を維持したまま高OD化させる。
【解決手段】ポジ型あるいはネガ型のフォトレジスト中にクロミズム特性を有する材料を含む感光性樹脂組成物を提供する。この感光性樹脂組成物は、加熱あるいは光照射等によってOD値を変化できる。したがって、パターニング工程後に加熱あるいは光照射等を行って高OD化させることによって、パターニング精度を高く維持すると共に、高OD化させたブラックマトリクスを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遮光膜形成用の感光性樹脂組成物、この感光性樹脂組成物を用いたブラックマトリクスおよびその製造方法、このブラックマトリクスを用いたトランジスタアレイ基板およびその製造方法、並びに、上記ブラックマトリクスを用いたカラーフィルタ基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TFT(Thin Film Transistor)を用いたTFT型液晶表示装置は、薄膜トランジスタアレイ基板(以下、TFTアレイ基板と言う)と、ブラックマトリクス(以下、BMと言う)およびカラーフィルタから構成されるカラーフィルタ基板と、の間に液晶が封入されて構成されている。そして、TFTアレイ基板側の各画素領域の画素電極とカラーフィルタ基板側の共通電極との間に印加される電界強度を制御することによって、各画素領域における液晶の配向状態を変えて光の透過率を変化させることによって画像を表示するようになっている。
【0003】
上記液晶表示装置においては、上記TFT型液晶表示装置の全表示画面に対する表示領域の割合、すなわち開口率の向上が求められており、各種配線による遮光面積の低減や、上記TFTアレイ基板と上記カラーフィルタ基板との貼り合わせ精度向上によるマージン分の遮光面積の低減等、の検討がなされている。そのうち、近年になって、上記TFTアレイ基板と上記カラーフィルタ基板との貼り合わせ精度を向上させる方法として、例えば特開平4‐253028号公報(特許文献1)に開示されたアクテイブマトリクス型液晶表示装置のごとく、上記カラーフィルタ層や上記BM部を上記TFTアレイ基板に一体形成した構造(CF on Array構造)が提案されるようになってきている。
【0004】
一方、こうした液晶表示装置が高コントラストの画像を維持するためには、カラーフィルタ材料の色純度を向上させると共に、混色を防止するため上記BMの光学濃度(Optical Density:以下、ODと言う)を高くする必要がある。上記BMには、クロムに代表される金属薄膜BMと樹脂BMとがあるが、コストの面や環境安全性の面から、近年はカーボンブラック等の顔料を含む樹脂BMにシフトしている。
【0005】
上記樹脂BMは、感光性樹脂組成物の溶液を塗布することによって薄膜(以下、レジスト膜と言う)を形成し、その後露光・現像工程によって所望の形状にすることによって形成される。ここで、上記レジスト膜は、その露光特性に従ってポジ型およびネガ型に分類される。例えば、ポジ型ブラックレジストとしては、例えば特開平7‐261015号公報(特許文献2)に開示されたレジスト組成物のようなものがある。
【0006】
上記ポジ型のレジスト膜は、塗布後、樹脂の露光部分のみの分子が切断されることによってアルカリ溶液に可溶となり、剥離される。一方、ネガ型のレジスト膜は、光が当たった所で重合が開始されるために、光が当たってない部分が剥離される。何れの場合にも、パターニング精度を確保するためには、レジスト膜の下部(底部)まで光を到達させる必要がある。ところが、高OD値が求められる上記BMの場合には、レジスト膜の下部まで光を到達させること自体が大きな課題になっている。
【0007】
この課題に対し、従来は、上記樹脂BMのうち、レジスト膜に対する表面への露光によって下部まで反応を進行させることが可能な上記ネガ型を中心に開発が行われている。高OD化対応の例としては、例えば、特許文献2に開示されている「ブラックマトリックス用色素を含むレジスト組成物」のように、上記カーボンブラックを樹脂コーティングさせることによって、分散性を向上させて上記樹脂BMに含まれるカーボンブラックの含有量を増加させる方法が提案されている。
【0008】
しかしながら、上記従来の特許文献2に開示された「ブラックマトリックス用色素を含むレジスト組成物」には、以下のような問題がある。すなわち、上記特許文献1に開示されたCF on Array構造のアクテイブマトリクス型液晶表示装置まで考慮した場合には、樹脂BM上部にも配線等の構造を形成させることが必要になる。したがって、BM特性としては、上述したOD増加に加え、さらに上面のパターニング精度の向上や誘電率の低下が求められる。しかしながら、従来のネガ型の樹脂BMにおいては、原理的に多階調のパターニングは不可能であり、上記CF on Array構造において要求される上記樹脂BM上部のパターニングには対応することができないという問題がある。
【0009】
一方、上記ポジ型BMの樹脂BMの場合には、上述したとおり、高OD化する程、レジスト膜の下部まで露光することができないために、パターニング精度を著しく低下してしまうと言う問題がある。
【特許文献1】特開平4‐253028号公報
【特許文献2】特開平7‐261015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明の課題は、パターニング精度を維持したまま高OD化させることができる感光性樹脂組成物、この感光性樹脂組成物を用いたBMおよびその製造方法、このBMを用いたトランジスタアレイ基板およびその製造方法、並びに、上記BMを用いたカラーフィルタ基板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明の遮光膜形成用の感光性樹脂組成物は、
アルカリ可溶性ノボラック樹脂とナフトキノンジアジド基含有化合物とを含むポジ型感光性樹脂組成物に、クロミズム特性を有する化合物を混合した
ことを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、露光特性を有するポジ型感光性樹脂組成物にクロミズム特性を有する化合物を混合したものを遮光膜形成用の感光性樹脂組成物として用いるので、上記感光性樹脂組成物を塗布して乾燥させてなるレジスト膜のパターニングを、上記クロミズム特性を有する化合物がクロミズム特性を発揮しない(つまりOD値が低い)状態で行うことによって、パターニング精度を高めることができる。さらに、その後、上記クロミズム特性を有する化合物にクロミズム特性を発揮させることによって、上記レジスト膜の高OD値化を図ることができる。
【0013】
したがって、この発明によれば、高パターニング精度を維持したまま高OD化を図ることが可能な遮光膜形成用の感光性樹脂組成物を提供することができる。
【0014】
また、この発明の遮光膜形成用の感光性樹脂組成物は、
高分子バインダー,光重合性モノマー,光重合開始剤および遮光性顔料を含有するネガ型感光性樹脂組成物に、クロミズム特性を有する化合物を混合した
ことを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、露光特性を有するネガ型感光性樹脂組成物にクロミズム特性を有する化合物を混合したものを遮光膜形成用の感光性樹脂組成物として用いるので、上記感光性樹脂組成物を塗布して乾燥させてなるレジスト膜のパターニングを、上記クロミズム特性を有する化合物がクロミズム特性を発揮しない(つまりOD値が低い)状態で行うことによって、パターニング精度を高めることができる。さらに、その後、上記クロミズム特性を有する化合物にクロミズム特性を発揮させることによって、上記レジスト膜の高OD値化を図ることができる。
【0016】
したがって、この発明によれば、高パターニング精度を維持したまま高OD化を図ることが可能な遮光膜形成用の感光性樹脂組成物を提供することができる。
【0017】
また、1実施の形態の感光性樹脂組成物では、
上記クロミズム特性を有する化合物は、サーモクロミック材料である。
【0018】
この実施の形態によれば、上記クロミズム特性を有する化合物のクロミズム特性を温度によって制御することができる。したがって、上記感光性樹脂組成物を塗布して乾燥させてなるレジスト膜のOD値を、上記レジスト膜の加熱温度を制御することによって、簡単に制御することができる。
【0019】
また、この発明のBMは、
上記遮光膜形成用の感光性樹脂組成物に対して、活性光線の照射および現像が行われてパターン化され、さらに物理的刺激が与えられて黒色化されて成る
ことを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、本BMは、高いパターニング精度を維持したまま高OD化を図ることが可能な遮光膜形成用の感光性樹脂組成物に対して、活性光線の照射及び現像が行われてパターン化され、さらに物理的刺激が与えられて黒色化されて得られる。したがって、目的とする形状寸法を有すると共に、高いOD値を有している。
【0021】
また、この発明のBMの製造方法は、
上記遮光膜形成用の感光性樹脂組成物を基板上に塗布した後乾燥し、
上記基板上に塗布された上記感光性樹脂組成物に活性光線を選択的に照射した後、アルカリ性水溶液で現像してパターンを形成し、
上記パターン化された上記感光性樹脂組成物に、物理的刺激を与えることによって黒色化する
ことを特徴としている。
【0022】
上記構成によれば、高パターニング精度を維持したまま高OD化を図ることが可能な遮光膜形成用の感光性樹脂組成物に対して、活性光線の選択的照射および現像が行われてパターンが形成され、さらに物理的刺激が与えられて黒色化される。したがって、高いOD値を呈するBMを、高いパターニング精度で形成することができる。
【0023】
また、この発明のトランジスタアレイ基板は、
基板上に、マトリクス状に形成された複数の画素電極と、
上記各画素電極の間に一方向に延在して配列されたゲート線と、
上記各画素電極の間に他方向に延在して配列されたソース線と、
上記各ゲート線と上記各ソース線との交差位置に配置されると共に、上記ゲート線に接続されたゲート電極と上記ソース線に接続されたソース電極と上記画素電極に接続されたドレイン電極とを有する複数のトランジスタと
を備え、
上記各トランジスタの上部および少なくとも上記各ゲート線を含む配線の上部と、少なくとも上記各ゲート線および上記各ソース線を含む配線と上記各画素電極との間とに、上記BMを配設した
ことを特徴としている。
【0024】
上記構成によれば、各トランジスタの上部および少なくとも各ゲート線を含む配線の上部と、少なくとも各ゲート線および各ソース線を含む配線と各画素電極との間とに、高いパターニング精度で成形されると共に、高いOD値を呈するBMを配設している。したがって、上記各トランジスタの上部と、少なくとも上記各ゲート線を含む配線の上部と、少なくとも上記各ゲート線および上記各ソース線を含む配線と上記各画素電極との間とを、高いOD値を有するBMによって確実に遮光することができる。さらに、上記BMは高いパターニング精度で成形されるため、パターニングを行う際のフォトマスクの位置合わせマージンを小さくすることができ、その分だけ開口率を向上することができる。
【0025】
また、この発明のカラーフィルタ基板は、
基板上に、マトリクス状に形成された複数のカラーフィルタと、
上記各カラーフィルタ上全面に形成された共通電極と
を備え、
上記各カラーフィルタの間に、上記BMを配設した
ことを特徴としている。
【0026】
上記構成によれば、各カラーフィルタの間に、高いパターニング精度で成形されると共に、高いOD値を呈するBMを配設している。したがって、上記各カラーフィルタ間を、高いOD値を有するBMによって確実に遮光することができる。さらに、上記BMは高いパターニング精度で成形されるため、パターニングを行う際のフォトマスクの位置合わせマージンを小さくすることができ、その分だけ開口率を向上することができる。
【0027】
また、この発明のトランジスタアレイ基板の製造方法は、
基板上に、金属膜を成膜して、ゲート線およびソース線と、上記ゲート線に接続されたゲート電極,上記ソース線に接続されたソース電極およびドレイン電極を有するトランジスタと、上記ドレイン電極に接続されたドレイン線と、のパターンを形成し、
上記BMの製造方法によって、上記トランジスタ,上記ゲート線および上記ドレイン線の上部と、上記ゲート線と画素電極形成領域との間と、上記ドレイン線と上記画素電極形成領域との間とに、配設されるようにパターン化されると共に、黒色化されたBMを形成し、
導電透明膜を成膜し、パターニングを行うことによって、上記画素電極形成領域に画素電極を形成する
ことを特徴としている。
【0028】
上記構成によれば、トランジスタ,ゲート線およびドレイン線の上部と、上記ゲート線と画素電極との間と、上記ドレイン線と上記画素電極との間とに、高パターニング精度で成形されると共に、高いOD値を呈するBMが配設されている。したがって、上記トランジスタ,上記ゲート線および上記ドレイン線の上部と、上記ゲート線と上記画素電極との間と、上記ドレイン線と上記画素電極との間とを、高いOD値を有するBMで確実に遮光することができる。さらに、上記BMは高いパターニング精度で成形されるので、パターニングを行う際のフォトマスクの位置合わせマージンを小さくすることができ、その分だけ開口率を向上させることができる。
【0029】
また、この発明のトランジスタアレイ基板の製造方法は、
基板上に、金属膜を成膜して、ゲート線と、このゲート線に接続されたゲート電極,ソース電極およびドレイン電極を有するトランジスタと、上記ドレイン電極に接続されたドレイン線と、のパターンを形成し、
上記BMの製造方法によって、上記トランジスタ,上記ゲート線および上記ドレイン線の上部と、上記ゲート線と画素電極形成領域との間と、上記ドレイン線と上記画素電極形成領域との間とに、配設されるように、且つ、表面に上部ソース線形成用の溝とソース電極接続用の穴とが形成されるように、パターン化されると共に、黒色化されたBMを形成し、
上記BM表面の上記溝と上記穴とに金属を充填して、上記ソース電極に接続された上部ソース線を形成し、
導電透明膜を成膜し、パターニングを行うことによって、上記画素電極形成領域に画素電極を形成する
ことを特徴としている。
【0030】
上記構成によれば、トランジスタ,ゲート線およびドレイン線の上部と、上記ゲート線と画素電極との間と、上記ドレイン線と上記画素電極との間とに、高パターニング精度で成形されると共に、高いOD値を呈するBMが配設されている。したがって、上記トランジスタ,上記ゲート線および上記ドレイン線の上部と、上記ゲート線と上記画素電極との間と、上記ドレイン線と上記画素電極との間とを、高いOD値を有するBMによって確実に遮光することができる。さらに、上記BMは高いパターニング精度で成形されるので、形成時に多段階調露光を行うことにより、上記BMを、表面に上部ソース線形成用の溝とソース電極接続用の穴とが形成されるようにパターン化することができる。さらに、上記BMは高いパターニング精度で成形されるので、パターニングを行う際のフォトマスクの位置合わせマージンを小さくすることができ、その分だけ開口率を向上させることができる。
【0031】
また、この発明のカラーフィルタ基板の製造方法は、
基板上に、上記BMの製造方法によって、枠状にパターン化されると共に、黒色化されたBMを形成し、
上記BM内に顔料インクを塗布することによってカラーフィルタを形成し、
導電透明膜で成る対向電極を全面に形成する
ことを特徴としている。
【0032】
上記構成によれば、カラーフィルタの周囲を、高いパターニング精度で成形されると共に、高いOD値を呈するBMで、取り囲んでいる。したがって、上記カラーフィルタの周囲を、高いOD値を有する上記BMによって確実に遮光することができる。さらに、上記BMは高いパターニング精度で成形されるので、パターニングを行う際のフォトマスクの位置合わせマージンを小さくすることができ、その分だけ開口率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上より明らかなように、この発明の遮光膜形成用の感光性樹脂組成物は、露光特性を有する感光性樹脂組成物にクロミズム特性を有する化合物を混合したものを用いるので、上記遮光膜形成用の感光性樹脂組成物を塗布して乾燥させてなるレジスト膜のパターニングを、上記クロミズム特性を有する化合物がクロミズム特性を発揮しない(つまりOD値が低い)状態で行うことによって、パターニング精度を高めることができる。さらに、その後、上記クロミズム特性を有する化合物にクロミズム特性を発揮させることによって、上記レジスト膜の高OD値化を図ることができる。
【0034】
したがって、この発明によれば、パターニング精度を維持したまま高OD化を図ることが可能な遮光膜形成用の感光性樹脂組成物を提供することができる。
【0035】
また、この発明のBMおよびその製造方法は、パターニング精度を維持したまま高OD化を図ることが可能な遮光膜形成用の感光性樹脂組成物に対して、活性光線の照射および現像を行ってパターン化し、さらに物理的刺激を与えて黒色化してBMを得ている。したがって、当該BMは、目的とする形状寸法を有すると共に、高いOD値を有している。
【0036】
また、この発明のトランジスタアレイ基板は、各トランジスタの上部および少なくとも各ゲート線を含む配線の上部と、少なくとも各ゲート線および各ソース線を含む配線と各画素電極との間とに、高いパターニング精度で成形されると共に、高いOD値を呈するBMを配設しているので、上記各トランジスタの上部と、少なくとも上記各ゲート線を含む配線の上部と、少なくとも上記各ゲート線および上記各ソース線を含む配線と上記各画素電極との間とを、高いOD値を有するBMにより確実に遮光することができる。さらに、上記BMは高いパターニング精度で成形されるため、パターニングを行う際のフォトマスクの位置合わせマージンを小さくすることができ、その分だけ開口率を向上することができる。
【0037】
また、この発明のカラーフィルタ基板は、各カラーフィルタの間に、高いパターニング精度で成形されると共に、高いOD値を呈するBMを配設しているので、上記各カラーフィルタの間を、高いOD値を有するBMによって確実に遮光することができる。さらに、上記BMは高いパターニング精度で成形されるため、パターニングを行う際のフォトマスクの位置合わせマージンを小さくすることができ、その分だけ開口率を向上することができる。
【0038】
また、この発明のトランジスタアレイ基板の製造方法は、トランジスタ,ゲート線およびドレイン線の上部と、上記ゲート線と画素電極との間と、上記ドレイン線と上記画素電極との間とに、高パターニング精度で成形されると共に、高いOD値を呈するBMを配設するので、上記トランジスタ,上記ゲート線および上記ドレイン線の上部と、上記ゲート線と上記画素電極との間と、上記ドレイン線と上記画素電極との間とを、高いOD値を有するBMによって確実に遮光することができる。さらに、上記BMは高いパターニング精度で成形されるので、パターニングを行う際のフォトマスクの位置合わせマージンを小さくすることができ、その分だけ開口率を向上させることができる。
【0039】
また、この発明のトランジスタアレイ基板の製造方法は、トランジスタ,ゲート線およびドレイン線の上部と、上記ゲート線と画素電極との間と、上記ドレイン線と上記画素電極との間とに、高パターニング精度で成形されると共に、高いOD値を呈するBMを配設するので、上記トランジスタ,上記ゲート線および上記ドレイン線の上部と、上記ゲート線と上記画素電極との間と、上記ドレイン線と上記画素電極との間とを、高いOD値を有するBMによって確実に遮光することができる。さらに、上記BMは高いパターニング精度で成形されるので、形成時に多段階調露光を行うことにより、上記BMを、表面に上部ソース線形成用の溝とソース電極接続用の穴とが形成されるようにパターン化することができる。また、上記BMは高いパターニング精度で成形されるので、パターニングを行う際のフォトマスクの位置合わせマージンを小さくすることができ、その分だけ開口率を向上させることができる。
【0040】
また、この発明のカラーフィルタ基板の製造方法は、カラーフィルタの周囲を、高いパターニング精度で成形されると共に、高いOD値を呈するBMで、取り囲んでいる。したがって、上記カラーフィルタの周囲を、高いOD値を有する上記BMによって確実に遮光することができる。さらに、上記BMは高いパターニング精度で成形されるので、パターニングを行う際のフォトマスクの位置合わせマージンを小さくすることができ、その分だけ開口率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0042】
先ず、材料定義について説明する。この発明における「材料」は、露光特性を有する材料と加熱あるいは光照射等によるクロミズム特性を有する材料との2つの材料から構成されている。
【0043】
ここで、上記「クロミズム特性」としては、光、熱、電界、溶媒、圧力、溶媒蒸気、イオン添加、溶液pH等、色変化を起こす要因毎に分類される。この中で、上記BMの製造法を考慮すると、本実施の形態において特に有効である材料は、光,熱および電界によるクロミズム特性を示す材料である。
【0044】
光によるクロミズム特性とは、光(主に紫外光)によって、シス‐トランス構造変化や結合変化が起こって色が変わる特性である。具体的な材料としては、スピロピラン化合物、インドリノスピロピラン化合物、フルギド化合物、ピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロナフトオキサジン化合物、スピロフェナンスロオキサジン化合物、ジアリールエテン化合物、クロメン化合物、および、これらのチオ体、スチルベン誘導体、アゾ化合物等、の有機材料が挙げられる。
【0045】
また、熱によるクロミズム特性とは、加熱することによって、分子配向が変化したり、加熱による液化によって反応が進んだりし、その結果色が変化する特性である。具体的には、金属酸化物材料、あるいは、ロイコ染料系、サリチリデンアニリン類、ポリチオフェン誘導体、テトラハロゲノ錯体、エチレンジアミン誘導体錯体、ジニトロジアンミン銅錯体、1,4‐ジアザシクロオクタン錯体、ヘキサメチレンテトラミン錯体、サルチルアルデヒド類錯体等、の有機材料が挙げられる。
【0046】
また、電界によるクロミズム特性とは、材料に電界を印加することによって、酸化還元反応が起こってカチオン化またはアニオン化して色が変化する特性である。具体的には、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンおよびその誘導体等、の高分子材料が挙げられる。
【0047】
次に、上記露光特性を有する材料としては、ポジ型およびネガ型の何れでもよいが、BM上面の加工性を向上させることを考慮すると、特にポジ型の露光特性を有する材料が含まれる組成物の方が、より大きな効果を発揮する。具体的に、ポジ型材料としては、ノボラック系樹脂とナフトキノンジアジド系化合物とから構成される一般的な材料を適用することができる。また、ネガ型材料であっても、高分子バインダー,光重合性モノマー,光重合開始剤および遮光性顔料から構成される一般的な材料を適用することができる。
【0048】
次に、混合材料の定義について説明する。この発明における組成物は、上述した露光特性を有する材料とクロミズム特性を有する材料とを混合することによって形成される。ここで、クロミズム特性を有する材料の最適な混合比は、材料毎に異なるが、変化後の色をより鮮明にすることを考慮すると、熱あるいは光の照射後に現れる色が照射前の状態に影響を与えない範囲内で、より濃度が高い方が好ましい。具体的には、30重量%までの範囲が特に好ましい。
【0049】
次に、基板定義について説明する。基板も一般的なものが選択可能であり、ガラスやプラスチック基板等を選択することができる。また、上記基板上に絶縁膜あるいは金属膜を形成したものを選択してもよい。
【0050】
次に、上記感光性樹脂組成物を用いたBM製造方法について説明する。この発明におけるBMは、何れも(1)溶液塗布工程,(2)乾燥工程,(3)露光・現像工程および(4)熱処理工程を経て、形成される。
【0051】
先ず、上記「溶液塗布工程」は、例えば、スピンコート法,バーコート法,LB法,ディップコート法およびインクジェット法等の一般的な手法によって、基板上に、上述した露光特性を有する材料とクロミズム特性を有する材料とを混合してなる樹脂組成物を塗布する工程である。ここで、塗布膜厚は、乾燥後で例えば0.5μm〜5μmになるように設定する。
【0052】
また、上記「乾燥工程」は、室温で数時間から数日間放置するか、または、温風ヒーター,赤外線ヒーターおよびホットプレート等によって数分から数時間で加熱することによって、溶剤除去を行う工程である。ここで、加熱する温度については、クロミック材料の反応が進まない程度が好ましく、例えば室温〜100℃の温度範囲である。
【0053】
また、上記「露光・現像工程」は、上記塗布膜を、フォトマスク等を介して、紫外線やエキシマレーザー光等の活性性エネルギー線で、照射エネルギー線量100mJ/cm2〜2000mJ/cm2の範囲で露光する。その後、例えば1質量%〜10質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液のようなアルカリ溶液を用いて、所望のパターンに現像する工程である。その場合に使用される露光装置および現像液については、一般的なものを適用することができる。
【0054】
また、上記「熱処理工程」は、上記パターンが形成された基板を、数分から数時間温風ヒーター,赤外線ヒーターおよびホットプレート等で加熱することによって、レジストパターンの耐久性を向上させ、クロミック材料の色変化を起こさせる工程である。ここで、加熱温度は、クロミック材料の色変化温度に合わせて選択することができ、例えば50℃〜200℃である。
【0055】
より詳細には、上記BM製造方法は、組成物に含まれるクロミック材料の特性によって例えば以下のように、適宜選択して用いられる。
【0056】
先ず、フォトクロミック材料を含む感光性樹脂組成物を用いたBM製造方法としては、例えば、
・上記(3)の「露光・現像工程」において、パターニングに必要な波長の紫外光入射によって露光および現像を行った後、続いて、(4)の「熱処理工程」において、色変化に必要な波長の紫外光を入射する方法。
・上記(3)の「露光・現像工程」および(4)の「熱処理工程」において、加熱することによって色変化を抑制しながら紫外光を照射して露光および現像を行った後に、昇温することによって熱処理を行い、そのまま基板を室温等に戻しながらさらに紫外光を照射する方法。
を適用することができる。
【0057】
前者の方法は、露光に必要な紫外光の波長が色変化に必要な波長よりも長波長側である場合に特に有用である。一方、後者の方法は、紫外光による色変化を熱によって戻すことができる材料(T‐type)に有用である。
【0058】
また、サーモクロミック材料あるいはエレクトロクロミック材料を含む感光性樹脂組成物を用いたBM製造方法としては、上記(4)の「熱処理工程」において加熱あるいは通電を行うことによって色変化させる方法を、適用することができる。
【0059】
・第1実施の形態
図1は、本実施の形態の感光性樹脂組成物を用いたBM製造方法における手順を示す基板の縦断面図である。尚、本実施の形態における上記感光性樹脂組成物は、ポジ型ブラックレジストにロイコ色素を混合したロイコ色素/ポジ型ブラックレジストである。
【0060】
先ず、上記感光性樹脂組成物として、ノボラック系ポジ型ブラックレジスト(JAS‐100:JSR株式会社製)中にカーボンブラックを1重量%混合したものに対して、ロイコ色素(山本化成製)を5重量%混合し、その後、顕色剤であるビスフェノールAをビスフェノールおよびロイコ色素のモル比が1:2になるように混合したものを用いる。
【0061】
続いて、以下の手順によって、BMの製造を行う。先ず、図1(a)に示すように、ガラス基板1上に、スピンコート法によって上述した感光性樹脂組成物2を塗布した後、80℃で5分間乾燥させることによって塗布膜を形成する。次に、図1(b)に示すように、感光性樹脂組成物2の上部(上方)に、中央部に半透明領域(透過率40%)4が配置され、半透明領域4の両側に遮光領域5が配置され、遮光領域5の両側が全透過領域6である3階調フォトマスク3を配置し、通常のリソグラフィー技術によって白抜き矢印で示すように露光し、アルカリ性水溶液を用いて現像する。
【0062】
こうすることによって、図1(c)に示すように、上記感光性樹脂組成物2が、3階調フォトマスク3の遮光領域5に対応する領域が略露光前の感光性樹脂組成物2の高さを保持し、3階調フォトマスク3の半透明領域4に対応する領域が透過率に応じた深さに窪んだ形状に成形される。その後、200℃で10分間熱処理を行うことによって、感光性樹脂組成物2における上記ロイコ色素と上記ビスフェノールAとを反応させて黒色化させ、図1(d)に示すようなBM7を形成する。
【0063】
こうして得られたBM7の遮光率を測定したところ、OD値で「2.5」であり、抵抗値は2.1×1011Ω/□である。また、ガラス基板1上に形成されたBM7は、ピンホールや色ムラ等のない優れたものであった。さらに、図1(d)において、3階調フォトマスク3の遮光領域5によって遮光された未露光部分8と、3階調フォトマスク3の半透明領域4を介して露光された半露光部分9と、の膜厚を測定した。その結果、夫々の膜厚は、1.1μmおよび0.6μmとであり、2階調の露光が達成されたことを確認した。
【0064】
〔比較例1:ポジ型ブラックレジストを用いたBM形成1〕
上記感光性樹脂組成物として、上記第1実施の形態の場合と同様に、ノボラック系ポジ型ブラックレジスト中にカーボンブラックを1重量%混合した材料を使用した。そして、上記第1実施の形態の場合と同様に、ガラス基板上に上記感光性樹脂組成物をスピンコート法によって塗布した後、80℃で5分間乾燥する。そして、通常のリソグラフィー技術による露光、アルカリ溶液による現像、200℃で10分間の熱処理、を順次行うことによってBMを形成する。このようにして得られたBMの遮光率を測定したところ、OD値で「0.6」であり、十分な遮光率を得ることができなかった。
【0065】
〔比較例2:ポジ型ブラックレジストを用いたBM形成2〕
上記ノボラック系ポジ型ブラックレジストに対するカーボンブラックの混合量を10重量%としたことを除き、上記比較例1と同様の方法でBMを形成した。こうして得られたBMの遮光率を測定したところ、OD値で「2.8」であり、十分な遮光率を得ることができた。しかしながら、半露光部分と未露光部分とのパターン(図1(d)参照)を形成することができなかった。
【0066】
以上のように、本実施の形態においては、上記露光特性を有する材料としてノボラック系ポジ型ブラックレジスト中にカーボンブラックを1重量%混合したものを用い、上記サーモクロミック材料として5重量%のロイコ色素を用い、顕色剤としてビスフェノールAを用い、上記カーボンブラックが混合されたノボラック系ポジ型ブラックレジストとロイコ色素とビスフェノールAとを混合したものを感光性樹脂組成物2として用いる。
【0067】
そして、上記ガラス基板1上に上記感光性樹脂組成物2を塗布した後、上記ロイコ色素の反応が進まない温度である80℃で5分間乾燥させて塗布膜(レジスト膜)を形成している。したがって、形成されたレジスト膜は黒色化しておらず、次の3階調フォトマスク3を用いたリソグラフィー技術による露光の際に光が上記レジスト膜の下部まで十分に届くことができ、図1(c)に示すように、2階調の露光を達成することができるのである。
【0068】
その後、上記2階調の露光および現像によって精度良くパターン化された感光性樹脂組成物2に対して、上記ロイコ色素の反応を十分に進ませることができる温度である200℃で10分間熱処理を行うことによって、上記ロイコ色素と上記ビスフェノールAとを反応させて黒色化させるようにしている。したがって、得られたBM7の遮光率はOD値で「2.5」であり、十分な遮光率を得ることができる。
【0069】
このように、上記露光特性を有する材料と上記サーモクロミック材料とを混合したものを感光性樹脂組成物2として用いることによって、レジスト膜のパターニングをOD値が低い状態で行ってパターニング精度を高める一方、その後加熱によって高OD値化を図ることが可能になる。したがって、本実施の形態によれば、高パターニング精度を維持したまま高OD化を図ったBM7を得ることができるのである。
【0070】
また、上記露光特性を有する材料としてポジ型ブラックレジストを用いることによって多階調の露光を可能にすると共に、抵抗値は2.1×1011Ω/□であり高い値を得ることができる。したがって、本実施の形態によれば、上記「CF on Array構造」のアクテイブマトリクス型液晶表示装置を実現すること可能になる。
【0071】
・第2実施の形態
本実施の形態は、上記第1実施の形態におけるBM製造方法を用いることによって、上記ロイコ色素/ポジ型ブラックレジストを用いたTFTアレイ基板および液晶パネルを形成する方法に関する。
【0072】
図2は、本実施の形態によって形成されたTFTアレイ基板の平面図である。また、図3(a)は図2におけるA‐A’矢視断面図であり、図3(b)は図2におけるB‐B’矢視断面図であり、図3(c)は図2におけるC‐C’矢視断面図である。以下、図2および図3に従って本実施の形態を説明する。尚、本実施の形態におけるBM形成以外については、一例を示すものであって、本実施の形態に限定されるものではない。
【0073】
(基板準備)
先ず、ガラス基板11上に、スパッタ法によってアルミ等の金属膜を成膜し、フォトリソグラフィ法によってゲート線12および共通電極13を形成する。次に、窒化シリコン等から成る下部絶縁膜14を形成し、この下部絶縁膜14上に半導体膜(a‐Si,n+a‐Si)をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法によって成膜した後、フォトリソグラフィ法によって半導体膜15のパターンを形成する。その後、アルミ等の金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法によって、ソース電極16およびドレイン電極17と、ドレイン線18と、のパターンを形成する。その後、窒化シリコンから成る保護膜19のパターンを形成することによってBM形成前の基板を形成する。
【0074】
(BM形成)
図4は、本BM形成時におけるTFTアレイ基板の断面図である。すなわち、図4(a)は、BM形成時における図3(a)に相当する図である。また、図4(b)は、BM形成時における図3(b)に相当する図である。また、図4(c)は、BM形成時における図3(c)に相当する図である。
【0075】
先ず、上述した「基板準備」において形成された上記BM形成前の基板に上記第1実施の形態と同じ感光性樹脂組成物溶液をコーターを用いて塗布し、80℃で5分間乾燥させることによって塗布膜20’を形成する。続いて、図4に示すように、画素部および接続部に対応する領域21aが全透過であり、上部ソース配線形成部に対応する領域21bと領域21cとが透過率60%と透過率20%との2段階の透過率であり、その他の部分に対応する領域21dが遮光である4階調フォトマスク21を用いて、4階調露光を行う。そうした後に、アルカリ溶液で現像を行う。
【0076】
その結果、図5に示すようにパターニングされた上部絶縁膜20が形成される。尚、図5(a)は、BM形成後における図3(a)に相当する図である。また、図5(b)は、BM形成後における図3(b)に相当する図である。また、図5(c)は、BM形成後における図3(c)に相当する図である。その後、200℃で10分間熱処理を行うことによって、上記第1実施の形態の場合と同様に、上部絶縁膜20を黒色化させてBMを形成するのである。
【0077】
(TFTアレイ基板および液晶パネル形成)
先ず、上記黒色化された上部絶縁膜20のパターンをマスクとして、上記保護膜19をドライエッチングした後、溝部(上記接続部)22,23にインクジェット法によってメタルインクを塗布することによって、上部ソース線24を形成する。また、上記画素部にインクジェット法によって顔料インクを塗布することによって、カラーフィルタ(R)25とカラーフィルタ(G)26とカラーフィルタ(B)27とを形成する。
【0078】
その後、感光性樹脂からなるオーバーコート膜28を塗布し、ドレイン線18と画素電極29との接続箇所30を区画・形成するために、図3(b)に示すように、オーバーコート膜28に対して露光およびドライエッチングを行う。そうした後、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)等の導電透明膜を成膜し、この導電透明膜に対してフォトリソグラフィ法等によってパターニングを行うことによって、図3に示すように、画素電極29を形成する。
【0079】
以上の工程によって、上記TFTアレイ基板が形成される。
【0080】
一方、別のガラス基板(図示せず)上にITO等の導電透明膜で成る対向電極(図示せず)を全面に製膜した対向電極基板(図示せず)を形成する。そして、上記対向電極基板と上記TFTアレイ基板とを、上記対向電極と画素電極29とが互いに対向するようにして貼り合わせる。その後、上記対向電極基板と上記TFTアレイ基板との間に液晶を注入することによって液晶パネルが形成される。
【0081】
以上のようにして作成された液晶パネルは、電流のリークがなく、均一な表示画像を再現することができるのである。
【0082】
上述したように、本実施の形態においては、上記TFTアレイ基板を構成する各TFT,各ゲート線12および各ドレイン線18の上部を覆って遮光する絶縁膜、および、各ゲート線12と各画素電極29との間と、各上部ソース線24と各画素電極29との間と、各ドレイン線18と各画素電極29との間と、各上部ソース線24と各ドレイン線18との間に、配設されて遮光し、混色を防止する絶縁膜を、上記第1実施の形態におけるBM製造方法によって形成された高パターニング精度を維持したまま高OD化を図ったBMよって構成している。したがって、各TFT,各ゲート線12および各ドレイン線18の上部を確実に覆って遮光すると共に、各配線と各画素電極29との間に配設されて確実に遮光することができる。
【0083】
さらに、上記BMをパターニングする際の4階調フォトマスク24の位置合わせマージンを小さくすることができ、その分だけ開口率を向上することができる。
【0084】
尚、本実施の形態においては、上記露光特性を有する材料としてポジ型ブラックレジストを用いて多階調露光を行うことによって、上記「CF on Array構造」のTFTアレイ基板を作成する場合について説明している。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、ソース線を基板上に形成する場合、画素電極をドレイン線を介さずにTFTのドレイン電極に直接接続する場合、カラーフィルタがない場合等、種々のTFTアレイ基板にも適用できることは言うまでもない。
【0085】
・第3実施の形態
〔参考例〕
先ず、参考例について説明する。上記感光性樹脂組成物として「COLOR MOSAIC CK(富士フィルム製)」を用い、次に説明する本実施の形態の場合と同様の方法によってBMを形成した。この場合に、作成されたBMの遮光率はOD値で「3.5」であり、抵抗値は2.8×1012Ω/□であった。
【0086】
次に、本実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記第1実施の形態におけるBM製造方法を用いることによって、上記ロイコ色素/ネガ型ブラックレジストを用いたBM,カラーフィルタ基板および液晶パネルを形成する方法に関する。
【0087】
上記感光性樹脂組成物として、「COLOR MOSAIC CK(富士フィルム製)」中に、ロイコ色素を15重量%混合した後、顕色剤であるクエン酸を、クエン酸およびロイコ色素のモル比が1:3になるように混合したものを使用した。
【0088】
先ず、コーターを用いて、ガラス基板上に、上記感光性樹脂組成物を塗布し、80℃で5分間乾燥させる。乾燥膜厚は1.5μmである。その後、ネガマスクを用いた露光および現像を行った後、200℃で10分間熱処理することによって、枠状にパターン化されると共に、黒色化されたBMを形成する。
【0089】
こうして得られたBMの遮光率を測定したところ、OD値で「4.5」であり、抵抗値は2.1×1012Ω/□であった。上記〔参考例〕と比較すると、本実施の形態によるBMは、高抵抗を維持したまま、遮光率を向上できることを確認できた。また、基板上に形成されたBMは、ピンホールや色ムラ等の無い優れたものであった。さらに、上記BMの枠内に顔料インクを塗布することによってカラーフィルタR,G,Bを形成した後、ITO等の導電透明膜で成る対向電極を全面に形成して上記カラーフィルタ基板が形成される。
【0090】
続いて、従来の形成方法に従って形成されたTFTアレイ基板と、上記形成されたカラーフィルタ基板とを、上記TFTアレイ基板の画素電極と上記カラーフィルタ基板の上記対向電極とを互いに対向させて貼り合わせた後、液晶を注入することによって液晶パネルが形成される。
【0091】
以上のようにして作成された液晶パネルは、電流のリークがなく、均一な表示画像を再現することができるのである。
【0092】
以上のごとく、本実施の形態においては、上記カラーフィルタ基板を構成する各カラーフィルタR,G,Bの周囲を枠状に取り囲んで遮光し、混色を防止する絶縁膜を、以下のようにして形成している。
【0093】
すなわち、上記露光特性を有する材料としてネガ型ブラックレジストを用い、上記サーモクロミック材料としてロイコ色素を用い、顕色剤としてクエン酸を用い、上記ネガ型ブラックレジストとロイコ色素とクエン酸とを混合したものを感光性樹脂組成物として用いる。そして、ガラス基板上に上記感光性樹脂組成物を塗布した後、上記ロイコ色素の反応が進まない温度である80℃で5分間乾燥させて塗布膜(レジスト膜)を形成している。したがって、形成された塗布膜は黒色化しておらず、次のネガマスクを用いた露光の際に光が上記塗布膜の下部まで十分に届くことができ、高いパターニング精度得ることができるのである。
【0094】
その後、上記精度良くパターン化された上記レジスト膜に対して、上記ロイコ色素の反応を十分に進ませることができる温度である200℃で10分間熱処理を行うことによって、上記ロイコ色素と上記クエン酸とを反応させて黒色化させるようにしている。したがって、得られたBMでなる上記遮光膜の遮光率はOD値で「2.5」となり、十分な遮光率を得ることができる。
【0095】
このように、パターニング精度を維持したまま高OD化を図ることができるBMによって、各カラーフィルタR,G,Bの周囲を遮光する遮光膜を形成するので、各カラーフィルタR,G,Bの周囲を確実に遮光することができる。さらに、上記レジスト膜をパターニングする際の上記ネガマスクの位置合わせマージンを小さくすることができ、その分だけ開口率を向上することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】この発明の感光性樹脂組成物を用いたBM製造方法における手順を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すBM製造方法を用いて形成されたTFTアレイ基板の平面図である。
【図3】図2における断面図である。
【図4】BM形成時におけるTFTアレイ基板の断面図である。
【図5】BM形成後におけるTFTアレイ基板の断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1,11…ガラス基板、
2…感光性樹脂組成物、
3…3階調フォトマスク、
4…半透明領域、
5,21d…遮光領域、
6,21a…全透過領域、
7…BM、
8…未露光部分、
9…半露光部分、
12…ゲート線、
13…共通電極、
14…下部絶縁膜、
15…半導体膜、
16…ソース電極、
17…ドレイン電極、
18…ドレイン線、
19…保護膜、
20’…感光性樹脂組成物溶液の塗布膜、
20…上部絶縁膜、
21…4階調フォトマスク、
21b…透過率60%領域、
21c…透過率20%領域、
22,23…溝部(接続部)、
24…上部ソース線、
25…カラーフィルタ(R)、
26…カラーフィルタ(G)、
27…カラーフィルタ(B)、
28…オーバーコート膜、
29…画素電極、
30…ドレイン線と画素電極との接続箇所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性ノボラック樹脂とナフトキノンジアジド基含有化合物とを含むポジ型感光性樹脂組成物に、クロミズム特性を有する化合物を混合した
ことを特徴とする遮光膜形成用の感光性樹脂組成物。
【請求項2】
高分子バインダー,光重合性モノマー,光重合開始剤および遮光性顔料を含有するネガ型感光性樹脂組成物に、クロミズム特性を有する化合物を混合した
ことを特徴とする遮光膜形成用の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2に記載の感光性樹脂組成物において、
上記クロミズム特性を有する化合物は、サーモクロミック材料である
ことを特徴とする遮光膜形成用の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1あるいは請求項2に記載の遮光膜形成用の感光性樹脂組成物に対して、活性光線の照射および現像が行われてパターン化され、さらに物理的刺激が与えられて黒色化されて成る
ことを特徴とするブラックマトリクス。
【請求項5】
請求項1あるいは請求項2に記載の遮光膜形成用の感光性樹脂組成物を基板上に塗布した後乾燥し、
上記基板上に塗布された上記感光性樹脂組成物に活性光線を選択的に照射した後、アルカリ性水溶液で現像してパターンを形成し、
上記パターン化された上記感光性樹脂組成物に、物理的刺激を与えることによって黒色化する
ことを特徴とするブラックマトリクスの製造方法。
【請求項6】
基板上に、マトリクス状に形成された複数の画素電極と、
上記各画素電極の間に一方向に延在して配列されたゲート線と、
上記各画素電極の間に他方向に延在して配列されたソース線と、
上記各ゲート線と上記各ソース線との交差位置に配置されると共に、上記ゲート線に接続されたゲート電極と上記ソース線に接続されたソース電極と上記画素電極に接続されたドレイン電極とを有する複数のトランジスタと
を備え、
上記各トランジスタの上部および少なくとも上記各ゲート線を含む配線の上部と、少なくとも上記各ゲート線および上記各ソース線を含む配線と上記各画素電極との間とに、請求項4に記載のブラックマトリクスを配設した
ことを特徴とするトランジスタアレイ基板。
【請求項7】
基板上に、マトリクス状に形成された複数のカラーフィルタと、
上記各カラーフィルタ上全面に形成された共通電極と
を備え、
上記各カラーフィルタの間に、請求項4に記載のブラックマトリクスを配設した
ことを特徴とするカラーフィルタ基板。
【請求項8】
基板上に、金属膜を成膜して、ゲート線およびソース線と、上記ゲート線に接続されたゲート電極,上記ソース線に接続されたソース電極およびドレイン電極を有するトランジスタと、上記ドレイン電極に接続されたドレイン線と、のパターンを形成し、
請求項5に記載のブラックマトリクスの製造方法によって、上記トランジスタ,上記ゲート線および上記ドレイン線の上部と、上記ゲート線と画素電極形成領域との間と、上記ドレイン線と上記画素電極形成領域との間とに、配設されるようにパターン化されると共に、黒色化されたブラックマトリクスを形成し、
導電透明膜を成膜し、パターニングを行うことによって、上記画素電極形成領域に画素電極を形成する
ことを特徴とするトランジスタアレイ基板の製造方法。
【請求項9】
基板上に、金属膜を成膜して、ゲート線と、このゲート線に接続されたゲート電極,ソース電極およびドレイン電極を有するトランジスタと、上記ドレイン電極に接続されたドレイン線と、のパターンを形成し、
請求項5に記載のブラックマトリクスの製造方法によって、上記トランジスタ,上記ゲート線および上記ドレイン線の上部と、上記ゲート線と画素電極形成領域との間と、上記ドレイン線と上記画素電極形成領域との間とに、配設されるように、且つ、表面に上部ソース線形成用の溝とソース電極接続用の穴とが形成されるように、パターン化されると共に、黒色化されたブラックマトリクスを形成し、
上記ブラックマトリクス表面の上記溝と上記穴とに金属を充填して、上記ソース電極に接続された上部ソース線を形成し、
導電透明膜を成膜し、パターニングを行うことによって、上記画素電極形成領域に画素電極を形成する
ことを特徴とするトランジスタアレイ基板の製造方法。
【請求項10】
基板上に、請求項5に記載のブラックマトリクスの製造方法によって、枠状にパターン化されると共に、黒色化されたブラックマトリクスを形成し、
上記ブラックマトリクス内に顔料インクを塗布することによってカラーフィルタを形成し、
導電透明膜で成る対向電極を全面に形成する
ことを特徴とするカラーフィルタ基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−233476(P2008−233476A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72151(P2007−72151)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】