説明

投写型映像表示装置及びこれを用いたマルチスクリーンシステム

【課題】光学系部品や照度センサに関する製品毎の特性のばらつき及び経時変化のばらつき、並びに、レンズシフトによる影響を受けることなく投写面の照度を一定に調整し得る投写型映像表示装置を提供する。
【解決手段】本装置は、レンズシフト装置、レンズシフト位置を検出する位置検出器を有するとともに、投写レンズ入射手前の迷光を受ける照度センサを有する。製品使用前に基準投写面における画面照度である画面照度初期値と照度センサにより測定される照度測定値であるセンサ照度初期値との相関を示す初期照度テーブル、及び、レンズシフトさせない場合とさせた場合との基準投写面における画面照度の比を示す照度テーブルを記憶する。ユーザが設定した画面照度設定値X2に対し、前記テーブルを使用してセンサ照度目標値Y3を算出する。センサ照度実測値Y4をこの目標値に近づけるように投写レンズから出射される光の明るさを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写型映像表示装置に関し、特に、投写面の照度調整を行えるようにした投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投写型映像表示装置において、従来、映像が投写されるスクリーン等の投写面の照度を調整する手段としては、測定器を用いて投写面の照度を測定し、この測定値に基づいて投写型映像表示装置から投写される映像光の明るさを調整するという方法が知られている。しかし、この方法では、ユーザが投写面付近までわざわざ赴き、投写面の照度を手動で計測しなければならないため、非常に手間が掛かるとともに、それに伴う複雑な作業が必要になるという問題があった。
【0003】
また、光源ランプは、使用時間の経過につれ、経時変化により性能が劣化して明るさが低下するため、投写面の照度が時間の経過とともに低下する。このため、時間の経過を見計らって時々投写面の照度をチェックする必要もあり、実用的でないという問題があった。
【0004】
そこで、これを解決するものとして特許文献1に記載のものが開発された。
特許文献1に記載のものは、投写面の照度と一定の関係にある、光源ランプから投写レンズまでの光路中の直接光又は間接光の明るさを測定して、この明るさを一定に調整することにより投写面の照度を一定に調整しようとするものである。すなわち、この特許文献1の場合には、光源ランプから投写レンズまでの光路中の直接光又は間接光の明るさを一定とすることにより、経時変化による光源ランプの輝度の低下を補正するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−37160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、投写面の照度は、一般に、光源ランプの経時変化によってのみ変化するのではなく、光学系部品の特性が製品毎にばらつくことや、これら光学系部品の経時変化も製品毎にばらつくことなどによっても変化する。特許文献1は、これら要素を何ら考慮していないため、なお改善の余地が残されている。
【0007】
例えば、液晶ライトバルブを構成する液晶パネルや偏光板は、経時変化により性能が劣化し、光の透過性が劣化する。したがって、光路中の直接光又は間接光の明るさを測定する位置が光ライトバルブの入射側であると、光ライトバルブを構成するこれら部品の性能劣化が測定照度に反映されない。また、前述の光源ランプから投写レンズまでの光路中の直接光又は間接光の明るさを測定する方式では、投写レンズをレンズシフトさせた場合に予定通りの投写面の照度を得ることができないという問題があった。さらに、複数の投写型映像表示装置を組み合わせて一つの映像を形成するマルチスクリーンシステムに適用する場合には、製品に取り付けられている光学系部品及び照度センサの性能のばらつきや経時変化のばらつき、照度センサの製品毎の僅かな取付状態の相違などにより、複数の投写面間で照度を均一にすることが難しいという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような従来技術における問題点を解決するものであって、光学系部品や照度センサの製品毎の特性のばらつき及び経時変化のばらつき、並びに、レンズシフトによる影響を受けることなく投写面の照度を一定に調整し得る投写型映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明に係る投写型映像表示装置は、投写レンズ入射手前の漏れ光を受ける照度センサと、レンズシフト装置と、レンズシフト位置を検出する位置検出器と、操作部とを有し、さらに、製品使用前にレンズシフトさせずに白色光を投写する状態において測定された、基準投写面の画面照度である画面照度初期値と、前記照度センサにより測定された測定値であるセンサ照度初期値との相関を示す初期照度テーブル、並びに、レンズシフトさせた場合とさせない場合との基準投写面における画面照度の測定値を対比した照度比とレンズシフト位置との相関を示す照度比テーブルを記憶した記憶部と、操作部から画面照度調整指令が出力されるとともに基準投写面における画面照度設定値が設定された場合に、この画面照度設定値を前記画面照度初期値とした場合のセンサ照度初期値を前記初期照度テーブルから算出してこれをセンサ照度設定値とし、さらに、このセンサ照度設定値を、位置検出器により測定されたレンズシフト位置に対応するように照度比テーブルに基づき補正してセンサ照度目標値とし、実際に光源ランプを点灯して白色光を投写したときに照度センサにより実測されるセンサ照度実測値がセンサ照度目標値に一致するように投写レンズから出射される光の明るさを調整する制御部とを有することを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、投写型映像表示装置を実際に使用する現場において、ユーザが操作部から画面照度調整指令を出力するとともに基準投写面における画面照度設定値を設定すると、記憶部に記憶されたテーブルを使用して機内に設置された照度センサにより実測されるべきセンサ照度目標値が算出される。算出されたセンサ照度目標値は、光学系部品の経時変化やその性能のばらつき、及びレンズシフト位置による影響を解消する明るさを得るために測定されるべきセンサ照度である。そして、照度センサにより実測されるセンサ照度実測値が、前記センサ照度目標値となるように投写レンズから出射される光の明るさが調整され、光学系部品の経時変化やその性能のばらつき、及びレンズシフト位置による影響を補償した一定の画面照度を得ることができる。なお、投写レンズから出射される光の明るさを調整する方法としては、光源ランプの出力を調整する、液晶パネルなどの光変調装置に出力される映像信号出力を調整する、光源ランプから投写レンズに至る光学系内に絞り装置を設けこの絞り装置の絞り度を調節するなどの方法を適用することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の投写型映像表示装置において、前記初期照度テーブルは、製品毎に測定されたデータに基づくものであり、前記制御部は、この製品毎の初期照度テーブルに基づき製品毎にセンサ照度設定値を算出することを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、初期照度テーブルに製品毎の性能のばらつきが織り込まれる。したがって、センサ照度設定値が製品毎に保有される初期照度テーブルを使用して算出されることにより、製品毎の初期性能のばらつき、製品毎の経時変化のばらつきを解消することができる。また、複数台の投写型映像表示装置を使用するマルチスクリーンシステムのような場合には、スクリーン相互間の明るさを一定に調整することが可能になる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の投写型映像表示装置において、投写型映像表示装置は、3板式液晶投写型映像表示装置であって、前記レンズシフト装置は、赤色光用、緑色光用、及び青色光用の光ライトバルブがクロスダイクロイックプリズムに一体化されたプリズムブロックを固定した状態として、投写レンズを上下左右に移動するものであり、前記照度センサは、プリズムブロックにおける投写レンズ側に取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、照度センサがプリズムブロックにおける投写レンズ側に取り付けられているので、光源ランプ以外の各種光学系部品の経時変化による影響、製品毎の初期性能や経時変化の相違による影響、レンズシフトによる影響などを織り込んで、投写レンズから出射される光の明るさを測定することができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の投写型映像表示装置において、前記初期照度テーブルは、光源ランプの最小出力時に照度センサにより測定された測定値であるセンサ照度初期値と、光源ランプの最大出力時に照度センサにより測定された測定値であるセンサ照度初期値とからなり、前記制御部は、前記初期照度テーブルとして記憶された前記二つのセンサ照度初期値から、補間方法によりセンサ照度設定値を算出するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、光源ランプの最小出力時に照度センサにより測定された測定値と、光源ランプの最大出力時に照度センサにより測定された測定値との両極の値を保有するのみで初期照度テーブルを構成することができる。したがって、初期照度テーブル作成工数が節減でき生産性を向上させることができる。なお、このような両極の値とその間を埋めるデータとを保持している場合と比較しても、精度に大きな差異のないことが実際データとして確認されている。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の投写型映像表示装置において、前記照度比テーブルは、レンズシフト位置を、上下方向には最大シフトさせた上下位置とシフトさせない中央位置との3段階とし、左右方向には最大シフトさせた左右位置とシフトさせない中央位置との3段階とした計9個とし、上下方向及び左右方向にシフトさせない中央の画面照度の測定値に対する他の各位置における画面照度の測定値の比を照度比として備えたテーブルであり、前記制御部は、前記照度比テーブルに記憶された照度比に基づき、前記算出されたセンサ照度設定値を補間演算により補正し、これをセンサ照度目標値とするように構成されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、照度比テーブルとして9点のレンズシフト位置における画面照度についての測定値をデータとして保有することにより、全てのレンズシフト位置に対応してセンサ照度目標値を補間演算して算出することができる。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複数の投写型映像表示装置を組み合わせ、各投写型映像表示装置から投写されるスクリーンで一つの画面が形成されることを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、マルチスクリーンシステムの各投写型映像表示装置から投写されるスクリーン間において、画面照度のばらつきを補償することができる。一般に、マルチスクリーンシステムでは、各投写型映像表示装置に使用される光源ランプ、ライトバルブなどの光学系部品の初期光学特性にばらつきがあり、さらに経時変化にもばらつきがあるため、各投写型映像表示装置対応のスクリーン間の画面照度にばらつきが生じやすい。しかし、本発明に係る投写型映像表示装置を用いることにより、このようなばらつきを補償することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る投写型映像表示装置によれば、投写型映像表示装置を実際に使用する現場において、画面照度調整指令が出力されるとともに画面照度設定値が設定されると、機内に設置された照度センサにより実測されるべきセンサ照度目標値が算出される。そして、照度センサにより実測されるセンサ照度実測値が、このセンサ照度目標値となるように投写レンズから出射される光の明るさが制御されることにより、光学系部品の経時変化やその性能のばらつき、及びレンズシフト位置による影響を補償した一定の画面照度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る投写型映像表示装置の光学系の系統図である。
【図2】同投写型映像表示装置における照度センサ取付位置の説明図であり、(a)は投写レンズがレンズシフトされていないとき、(b)は投写レンズが上方へレンズシフトされているとき、(c)は投写レンズが下方へレンズシフトされているとき、それぞれの状態説明図である。
【図3】同投写型映像表示装置における制御系の機能ブロック図である。
【図4】同投写型映像表示装置を複数台用いたマルチスクリーンシステムの一例を説明する説明図である。
【図5】同投写型映像表示装置における画面照度調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る投写型映像表示装置について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る投写型映像表示装置は、光学系を構成する光学部品として、光源ランプ1、インテグレータレンズ2、偏光変換素子3、集光レンズ4、ダイクロイックミラー5,6、反射ミラー7.8,9、液晶ライトバルブ10R,10G,10B、及びクロスダイクロイックプリズム11、投写レンズ12等を備えている。
【0024】
上記光学系においては、超高圧水銀ランプ等の光源ランプ1から白色光が出射される。光源ランプ1から出射された白色光は、インテグレータレンズ2により光量の分布が均一化されるとともに、偏光変換素子3により偏光方向が一方向に揃えられ、集光レンズ4により適宜収束される。そして、光源ランプ1から出射された白色光のうち、赤色光はダイクロイックミラー5を透過し、緑色光及び青色光はダイクロイックミラー5で反射される。次いで、緑色光はダイクロイックミラー6で反射され、反射された青色光はダイクロイックミラー6を透過する。このようにして光源ランプ1から出射された白色光から赤色光、青色光、及び緑色光が分離される。
【0025】
ダイクロイックミラー5を透過した赤色光は、反射ミラー7で反射されて赤色光用の液晶ライトバルブ10Rに導かれる。また、ダイクロイックミラー6で反射された緑色光は、緑色光用の液晶ライトバルブ10Gに導かれる。また、ダイクロイックミラー6を通過した青色光は、反射ミラー8,9で反射されて青色光用の液晶ライトバルブ10Bに導かれる。このようにして、赤色光、緑色光及び青色光は、液晶ライトバルブ10R,10G,10Bにおいて光変調されて出射される。そして、出射された変調光は、クロスダイクロイックプリズム11で合成されて映像光として投写レンズ12により拡大投写される。
【0026】
液晶ライトバルブ10R,10G,10Bは、詳しくは図示しないが、液晶パネル10r,10g,10b(符号は図3参照)や、この液晶パネル10r,10g,10bの入射側及び出射側に設けられた偏光板、光学補償板などにより構成されている。
【0027】
クロスダイクロイックプリズム11は、複数のプリズムを貼り合わせて形成された色合成プリズムであって、液晶ライトバルブ10R,10G,10Bにおいて変調された赤色光、緑色光及び青色光を合成する光学部品である。正六面体のクロスダイクロイックプリズム11は、液晶ライトバルブ10Rを透過した赤色光が入射する入射面と、液晶ライトバルブ10Gを透過した緑色光が入射する入射面と、液晶ライトバルブ10Bを透過した青色光が入射する入射面と、合成された映像光が出射される出射面とを備えている。
【0028】
投写レンズ12は、具体的には図示されていないが、投写レンズ12の光軸を左右方向及び上下方向に平行移動するように移動させるレンズシフト装置を付属している。このレンズシフト装置は、投写映像に台形歪みを生じさせずに、投影映像を所定範囲内で上下左右に移動させるものである。
【0029】
なお、上記光学系には、上記に説明した部品以外に、光源ランプ1から出射された光を伝達するためのリレーレンズや、液晶ライトバルブに入射する光を集光するための集光レンズ等が設けられているが、ここでは、これら光学部品の図示及びその説明を省略している。
【0030】
また、クロスダイクロイックプリズム11の入射面に対応して設けられる各液晶ライトバルブ10R,10G,10Bは、クロスダイクロイックプリズム11に対して支持部材を使用して一体的に固定されている。これにより、クロスダイクロイックプリズム11と各液晶ライトバルブ10R,10G,10Bとが相互の支持部材を介して一体化された、所謂プリズムブロック13を形成している。
【0031】
プリズムブロック13は、図2に図示されるように、投写レンズ12を支持する支持部材の近くに設けられ、クロスダイクロイックプリズム11の出射面が投写レンズ12と対向して設けられる構成となっている。また、プリズムブロック13を構成する上部の支持部材13aの投写ランプ側の水平方向の中央部には、クロスダイクロイックプリズム11で合成されて投写レンズ12に入射する手前の映像光から発生する迷光を受けるように、照度センサ14が設けられている。
【0032】
この迷光には、投写レンズ12に入射する映像光のうち投写レンズ12の入射面で反射される反射光が含まれる。投写レンズ12がレンズシフトされると、照度センサ14と投写レンズ12との距離が変化するため、照度センサ14に入射する反射光の光量が変化する。また、投写レンズ12がレンズシフトされると、プリズムブロック13から出射される光の光軸と、投写レンズ12の光軸とがずれるため、投写レンズ12に入射される光量が変化する。照度センサ14は、これら要素を考慮してプリズムブロック13の上部支持部材の水平方向の中央部に配置されている。
【0033】
例えば、投写レンズ12が上方へシフトされた場合は、図2(b)に示すように、投写レンズ12と照度センサ14との距離が近くなるため、照度センサ14による測定値が大きくなるとともに、クロスダイクロイックプリズム11の光軸と投写レンズ12の光軸とのずれにより、投写レンズ12に入射される光量は減少すると考えられる。また、投写レンズ12が下方へシフトされた場合は、図2(c)に示すように、投写レンズ12と照度センサ14との距離が遠くなるため、照度センサ14による測定値が小さくなるととともに、クロスダイクロイックプリズム11の光軸と投写レンズ12の光軸とのずれにより、投写レンズに入射される光量は減少すると考えられる。
【0034】
照度センサ14は、投写面の照度を一定にするという目的に照らし、最終出力の映像光の明るさ、すなわち、投写レンズ12から出射される光の明るさを検出することのできる位置として、上記のようにプリズムブロック13の上方の支持部材13aの投写レンズ12に近い位置に設けられている。ただし、この位置に設けただけでは、レンズシフトによる投写レンズ12からの反射光の増減による影響と、光源ランプ1の劣化による投写レンズ12への入射光量の減少による影響とを判別できないという問題がある。しかしながら、本発明においては、後述する画面照度調整方法により、この問題を解消している。
【0035】
次に、本投写型映像表示装置における映像信号を生成する信号処理系について図3の機能ブロック図に基づき説明する。
投写型映像表示装置における信号処理系は、図3のブロック図に示すように、制御部21、記憶部22、映像信号入力部23、映像信号処理部24、液晶パネル駆動部25、光源ランプ駆動部26、操作部27、位置検出器28等を備えている。
【0036】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)や各種データ等の一次記憶に用いられるRAM(Random Access Memory)等を備え、記憶部22に記憶された制御プログラム等を実行して、プロジェクタの動作を総括制御する。このために、制御部21は、それ自身に接続されている各部から入力される各種データを演算するとともに、演算結果を各部に出力する。また、制御部21は、操作部27からの操作指令に基づき画面照度を一定とするように投写レンズ12から出射される光の明るさを制御する。投写レンズ12から出射される光の明るさを制御する方法としては、光源ランプ1の出力を調整する、液晶ライトバルブ10R,10G,10Bに出力される映像信号出力を調整する、光源ランプ1から投写レンズ12に至る光学系内に絞り装置を設けこの絞り装置の絞り度を調節するなどの方法を適用することができる。
【0037】
記憶部22は、マスクROM(Read Only Memory)や、フラッシュメモリ等の不揮発メモリにより構成されている。記憶部22には、制御部21が実行する制御プログラムや、投写レンズ12から出射される光の明るさを制御するのに必要な初期照度テーブル22aやレンズシフト時の補正用の照度比テーブル22bなどが記憶されている。なお、初期照度テーブル22a及び照度比テーブル22bの詳細は後述する。
【0038】
映像信号入力部23には、入力端子23aを介し、各種映像再生機器からの映像信号が入力される。映像信号入力部23は、アナログPC、デジタルPC、ビデオ、テレビなどの各種映像再生機器からの投写映像信号に対応し得るようにアナログI/F、デジタルI/F、ビデオI/F、などの入力インターフェースを備えている。そして、映像信号入力部23に入力された映像信号は、A/D変換、デコード等の適宜の処理が行われてデジタル信号に変換されて映像信号処理部24へ出力される。
【0039】
映像信号処理部24は、映像信号入力部23から出力された映像信号を、1フレーム毎に付属のフレームメモリ(図示せず)に書き込むとともに、フレームメモリに記憶された映像を読み出す機能を有する。そして、映像信号処理部24は、制御部21の指示に基づき、入力された映像信号に対しスケーリング処理、ガンマ補正、輝度補正、台形歪み補正などの一般的な映像処理を行い、このように処理された映像信号を液晶パネル駆動部25へ出力する。
【0040】
液晶パネル駆動部25は、映像信号処理部24から出力された映像信号を、赤色光用、緑色光用及び青色光用の液晶パネル10r、10g、10bを駆動することのできる信号形態に変換する。また、この液晶パネル駆動部25においては、赤色光用、緑色光用及び青色光用の液晶パネル10r、10g、10bを駆動するための駆動パルスが同時に生成される。
【0041】
光源ランプ駆動部26は、電源部(図示せず)から入力された直流の電圧を、光源ランプ1を駆動するのに適した波形の電圧に変換するものであって、始動時あるいは定常動作時などに、それぞれに適した波形の電圧を出力する。また、投写レンズ12から出射される光の明るさを調整する方法として光源ランプ1の出力を調整する場合は、制御部21からの指示に基づき光源ランプ1を所定の出力で運転する。
【0042】
操作部27は、ユーザが機器を操作するために設けられたものであって、本体に取り付けられている操作キーによる操作とリモコン27aによる操作とを可能としている。また、操作部27は、本発明においては後述する画面照度調整処理の開始を指令するキー有する。
【0043】
次に、記憶部22に記憶される初期照度テーブル22aについて説明する。
初期照度テーブル22aは、使用開始前の投写型映像表示装置をレンズシフトさせない状態とし、光源ランプ1の出力を変化させてデータ測定用の基準投写面の画面照度を変化させながら、基準投写面の画面照度と照度センサ14により測定されるセンサ照度とを測定し、両者の相関を示めしたテーブルである。なお、このとき基準投写面に投写される光は白色光としている。
【0044】
基準投写面の照度測定は、社団法人日本工業事務機械工業会で制定する照度測定方法に基づき、基準投写面を9分割しそれぞれの中心部分の照度を測定し、その平均値に投写サイズの面積を乗じて算出される照度[lm]とする。なお、本明細書においては初期照度テーブル22aを作成するために測定される基準投写面の照度を、画面照度初期値X1としている。この基準投写面の照度測定は、機内の照度センサ14とは別の、テスト工程に使用される測定器により行われる。また、上記測定において照度センサ14により測定されるセンサ照度をセンサ照度初期値Y1としている。
【0045】
【表1】

表1は、このようにして測定された初期照度テーブル22aを作成するための基礎データの一例である。この表1においては、光源ランプ1の出力を変化させることにより画面照度初期値X1を9460[lm]から11990[lm]まで多段階に亘って変化させ、そのときの基準投写面の画面照度と照度センサ14により測定されるセンサ照度とを測定している。この表1においては、前述の定義の通り、画面照度初期値X1は測定された基準投写面の画面照度であり、センサ照度初期値Y1は照度センサ14により測定されたセンサ照度である。また、この表1においては、投写型映像表示装置である3台の製品A,B,Cについてそれぞれ測定している。
【0046】
このように、製品A,B,C毎にデータを取得し、製品A,B,C毎に初期照度テーブルを作成するのは、光学系部品及び照度センサ14の初期特性や経時変化が製品A,B,C毎にばらついていること、さらには、照度センサ14の取付状態も製品A,B,C毎にばらつくためである。そして、このようなばらつきを避けることが難しいため、製品A,B,C毎に経時変化を補償する必要があるとの考えに基づく。
【0047】
また、この表1においては、画面照度初期値X1の最小値p1及び最大値p2、並びに、これに対応するセンサ照度初期値Y1の最小値q1及び最大値q2のみをテーブルとして記憶し、この最小値q1及び最大値q2の間の数値を補間方法により算出した場合に、実際の測定値と整合するか確認のために算出している。表中の画面照度演算値X1cは、このようにして算出されたものである。
【0048】
すなわち、任意に選定される画面照度初期値X1に対する画面照度演算値X1cを、次式により算出している。
画面照度演算値X1c
=(センサ照度初期値Y1−q1)×(p2−p1)/(q2−q1)+p1
上式中、センサ照度初期値Y1は任意に選定された画面照度初期値X1に対応するセンサ照度初期値Y1である。また、この場合、表1からよく分かるように画面照度演算値X1cが概ね画面照度初期値X1に一致している。
【0049】
したがって、任意の画面照度初期値X1に対応するセンサ照度演算値Y1cも、同様に次式により補間演算して算出されるが、実際の測定値であるセンサ照度初期値Y1と略同一になることが確認された。これを次に具体的に説明する。
【0050】
センサ照度演算値Y1c
=(画面照度初期値X1−p1)×(q2−q1)/(p2−p1)+q1
上式中画面照度初期値X1は任意に選定されたものである。この結果から、例えば、目標とする画面照度、すなわち画面照度設定値X2を10000[lm]と設定した場合は、照度センサ14により測定されるべきセンサ照度初期値Y1が表2のセンサ照度演算値Y1cのようになればよいことが分かる。なお、表2には、画面照度設定値X2を10000[lm]と設定した場合に前記式から演算される画面照度演算値X1cをも記載している。
【0051】
【表2】

以上のことから、初期照度テーブル22aとしては、少なくとも画面照度初期値X1の最小値p1及び最大値p2、並びに、これに対応するセンサ照度初期値Y1の最小値q1及び最大値q2を備えていれば投写面の照度を均一化する目的に適応させることができる。
【0052】
また、センサ照度演算値Y1cは、画面照度初期値X1を実現するために照度センサ14において検出されるべき測定値を示すことになるため、画面照度設定値X2が設定された場合投写レンズ12から出射される光の明るさを調節する際に目標とする照度センサ14により測定されるべきセンサ照度、すなわちセンサ照度設定値Y2を付与する。すなわち、後述する画面照度調整処理を開始するに当たり、設定される画面照度初期値X1は、この調整作業における画面照度の設定値となることから、これを画面照度設定値X2として取り扱う。また、この画面照度設定値X2に対応するセンサ照度演算値Y1cはレンズシフトしない場合に照度センサ14により測定されるべき目標のセンサ照度となることから、これをセンサ照度設定値Y2としている。
【0053】
次に、シフト補正用の照度比テーブル22bについて説明する。
照度比テーブル22bは、投写レンズ12をレンズシフトさせない場合とさせた場合との基準投写面における画面照度の測定値を対比した照度比と、レンズシフト位置との相関を表すデータを保有する。これは、レンズシフト装置により投写レンズ12をシフトさせたときの、投写面の照度への影響を補償し、レンズシフトさせた場合において投写面の照度を一定にするためには、レンズシフトさせない状態における画面照度設定値X2をどのように補正すればよいかのデータを得るためのものである。
【0054】
【表3】

表3は、その一例を示す。この表においては、レンズシフトさせない場合の基準投写面の画面照度の測定値に対する、レンズシフト位置を上下方向に及び左右方向に変化させた場合の基準投写面の画面照度の測定値の照度比、をデータ化したものである。測定されているレンズシフト位置は、最大シフトさせた上下位置とシフトさせない中央位置との3段階とし、左右方向には最大シフトさせた左右位置とシフトさせない中央位置との3段階とした計9ポイントである。なお、この9ポイントに含まれる上下方向及び左右方向の何れにもシフトさせない基準位置のデータは、前述のレンズシフトさせない場合の基準投写面における画面照度初期値X1に相当する。
【0055】
表3においては、上下方向及び左右方向の何れにも投写レンズ12をレンズシフトさせない基準位置における画面照度の測定値が9800lmであり、これを基準値、すなわち1として、各レンズシフト位置における画面照度の測定値とを対比させて照度比を算出している。この表から分かるように、投写レンズ12をレンズシフトさせると、プリズムブロック13の光軸と投写レンズ12の光軸にずれが生じるため、画面照度が低下している。
【0056】
次に、このテーブルを使用して、レンズシフトさせた場合に設定された画面照度設定値X2をどのように補正すればよいかについて、3台の投写型映像表示装置、すなわち、図4に示すように、製品A,B,Cを組み合わせ、各投写型映像表示装置から投写されるスクリーンで一つの画面を形成するマルチスクリーンシステムを具体例として説明する。
【0057】
ここでは、このマルチスクリーンシステムにおいては製品A,B,Cが台M上に並べられている。また、この例においては、台Mが段付きとなっており、図示のように、製品A,Bが同一高さ位置にあって左右に適宜の間隔をおいて並べられるとともに,製品Cは一段下方の位置に載置されている。なお、製品A,B間の左右方向の間隔と、製品B,C間の左右方向の間隔とは同程度とし、3台の投写型映像表示装置を組み合わせ、各製品A,B,Cから投写されるスクリーン31,32,33で一つの画面30が形成されるマルチスクリーンシステムの例を示している。このときの各製品A,B,Cのレンズシフト位置は表4に示されている通りとする。すなわち、製品Aは、上下方向のシフトはなく、左右方向については左方向に最大シフトされている。製品Bは、上下方向、左右方向いずれにもシフトされていない。また、製品Cは、上下方向については上方向に最大シフトされ、左右方向については右方向に最大シフトされている。
【0058】
このとき製品A,B.Cに適用される照度比は、表3から読み取れる。製品Aについては上下方向にはシフトがなく、左方向に最大シフトされているので、照度比が0.998であり、製品Cについては上方向に最大シフトされるとともに右方向に最大シフトされているので、照度比が0.960となる。なお、製品Bは、上下方向及び左右方向のいずれにもシフトされていないので照度比は1である。
【0059】
そこで、この照度比に基づき、レンズシフトさせないときのセンサ照度演算値Y1c及び画面照度演算値X1cを補正する。この補正計算は、表2に記載されているレンズシフトしないときのそれぞれの値をレンズシフト位置における照度比で割ったものであるので、表4のようになる。
【0060】
【表4】

このように算出される補正後のセンサ照度演算値Y1c及び画面照度演算値X1cは、図4に図示されるマルチスクリーンシステムにおいて、画面照度設定値X2を10000[lm]とした場合におけるレンズシフト補正後のセンサ照度目標値Y3と画面照度目標値X3とを付与することになる。すなわち、各製品A,B,Cをレンズシフトさせないときの状態として、照度センサ14により測定されるセンサ照度実測値Y4がこの補正後のセンサ照度目標値Y3となるように、各製品の投写レンズから出射される光の明るさを調整すれば、レンズシフトしたときに各スクリーンの画面照度を略10000[lm]とすることができる。
【0061】
なお、図4のような例ではなく、複数の製品のレンズシフト位置が、上下方向又は左右方向の最大シフトとシフトなしの位置との中間に位置する場合の照度比は、表3から得られる数値を基礎にこれを補間することにより算出される。
【0062】
次に以上のように構成されている本発明に係る投写型映像表示装置の動作について、図5を参照しながら説明する。
本発明に係る投写型映像表示装置では、次の照度調整処理により画面照度を初期値の状態として一定に調整することができる。
【0063】
この画面照度調整処理に先立つ準備条件として、投写型映像表示装置を所定の位置に設置して電源を投入し、所定のレンズシフトを設定しておくものとする。例えば、図4のようなマルチスクリーンシステムの場合は、各製品A,B,Cを所定位置に設置するとともに、テストパターン映像光を投写しながら、一つの画面を形成するように、各製品のレンズシフトを設定しておく。
【0064】
ユーザは、このような準備が整っていることを確認できた段階で、画面照度調整作業を行う。なお、このような画面照度調整は、ユーザの好みによりいつでも行えるようにしておくのが好ましいが、製造者により予め定められた一定の使用時間が経過したときに行うのが効率的である。
【0065】
ユーザは、画面照度調整処理を行うに当たって、操作部27の所定のキーにより照度調整作業をスタートさせる。このスタート信号が制御部21に送信され、記憶部22に記憶された所定のプログラムに従い所定の画面照度調整処理が行われる。なお、この段階では、投写光はテストパターン等の映像光とされている。そして、ユーザは、先ず操作部27から画面照度設定値X2を設定する(ステップS1)。このような画面照度設定値X2の設定は、図4のようなマルチスクリーンシステムの場合は、各製品A,B,Cについてそれぞれ行う。なお、この画面照度設定値X2が常に一定であれば初期状態と同一の明るさの画面を維持することができる。しかし、この画面照度設定値X2が変更されると、変更前の画面照度と異なる画面照度に設定されることになるが、設定された画面照度目標に対しては初期状態の画面照度を得ることができる。
【0066】
各製品A,B,Cについて画面照度設定値X2が設定されると、各製品では、設定された画面照度設定値X2に対し、記憶部22に記憶されている初期照度テーブル22aを使用してこの画面照度を得るために必要なセンサ照度演算値Y1cが算出される。そして、算出されたセンサ照度演算値Y1cはセンサ照度設定値Y2として記憶部に記憶される(ステップS2)。
【0067】
そして、各製品A,B,C毎にレンズシフトの位置が位置検出器28により検出され(ステップS3)、記憶部22に記憶された照度比テーブル22bを使用して、検出されたレンズシフト位置に対する照度比が算出される(ステップS4)。この算出された照度比に基づき、前述のセンサ照度設定値Y2が補正され(ステップS5)、センサ照度目標値Y3が算出されえるとともに改めて記憶部22に記憶され、操作部27に表示される。ここで、ユーザはこのセンサ照度目標値Y3を見てセンサ照度目標値Y3の誤差ΔYを設定することができる(ステップS6)。
【0068】
前記センサ照度目標値Y3は、レンズシフトしない状態において照度センサにより検出されなければならない照度であることを意味する。したがって、この制御プログラムにおいては、この時点でレンズシフトが解除され、一端レンズシフトのない状態にセットされる(ステップS7)。次に、投写光をテストパターン等の映像光から白熱光に切り換える(ステップS8)。そして、レンズシフトのない状態における照度センサにより照度が測定される(ステップS9)。次いで、照度センサ14により測定された測定値であるセンサ照度実測値Y4が、前述の記憶部22に記憶された、センサ照度目標値Y3とが比較され、先に設定された、センサ照度目標値Y3についての誤差ΔY内かどうか判断される(ステップS10)。
【0069】
この比較において、センサ照度実測値Y4がセンサ照度目標値Y3の誤差ΔY内でないときは(ステップS10でNO)、センサ照度実測値Y4がセンサ照度目標値Y3より大きいか否か判断される(ステップS11)。センサ照度実測値Y4がセンサ照度目標値Y3より小さい場合は(ステップS11でNO)、投写レンズ12から出射される光の明るさを増大するように制御される(ステップS12)。具体的には、光源ランプ1の出力の調整、液晶ライトバルブ10R,10G,10Bに出力される映像信号出力を調整、光学系内に絞り装置が設けられている場合はこの絞り装置の絞り度の調整などが行われる。また、センサ照度実測値Y4がセンサ照度目標値Y3より大きい場合は(ステップS11でYES)、投写レンズ12から出射される光の明るさを低減するように制御される(ステップS13)。このように投写レンズ12から出射される光の明るさが制御されることにより、センサ照度実測値Y4がセンサ照度目標値Y3の誤差ΔY内に入るまで投写レンズ12から出射される光の明るさの調整が行われる(ステップS12、S13→S9→S10→S11→S12、S13)。
【0070】
このようにしてセンサ照度実測値Y4がセンサ照度目標値Y3の誤差ΔY内となったことが確認されると、所望の画面照度を得ることができる投写レンズ12から出射される光の明るさになっている。そして、画面照度調整処理が完了したことになるので(ステップS10でYES)、各製品A,B,Cのレンズシフトを当初設定状態に復元され(ステップS14)、一連の処理が完了する。
【0071】
以上のように構成された本実施の形態に係る投写型映像表示装置は、次のような効果を奏することができる。
(1)投写型映像表示装置を実際に使用する現場において、ユーザが画面照度設定値X2を設定すると、機内に設置された照度センサ14により実測されるべきセンサ照度目標値Y3が算出される。そして、センサ照度実測値Y4が、前記センサ照度目標値Y3となるように投写レンズ12から出射される光の明るさが調整され、光学系部品や照度センサ14についての経時変化やその性能のばらつき、及びレンズシフト位置による影響を補償した製品使用前の初期状態の画面照度を得ることができ、一定の画面照度が得られる。
【0072】
(2)センサ照度目標値Y3が製品A,B,C毎に保有される初期照度テーブル22aを使用して算出されることにより、製品A,B,C毎の初期性能のばらつき、製品A,B,C毎の経時変化のばらつきを解消することができる。また、複数台の投写型映像表示装置を使用するマルチスクリーンシステムのような場合には、スクリーン31,32,33相互間の明るさを一定に調整することが可能になる。
【0073】
(3)照度センサ14がプリズムブロック13における投写レンズ12側に取り付けられているので、光源ランプ1以外の各種光学系部品の経時変化による影響、製品A,B,C毎の初期性能や経時変化の相違、レンズシフトによる影響などを織り込んで、投写レンズ12から出射される光の明るさを測定することができる。
【0074】
(4)画面照度の調整に必要な製品A,B,C毎に作成される初期照度テーブル22aとしては、光源ランプ1の最小出力時及び最大出力時における画面照度の測定値である最小値p1、最大値p2並びに、光源ランプ1の最小出力時及び最大出力時における照度センサ14の測定値である最小値q1、最大値q2とから構成されている。したがって、初期照度テーブル22aの作成工数が節減でき生産性を向上させることができる。
【0075】
(5)画面照度の調整に必要なシフト補正用の照度比テーブル22bは、9点のレンズシフト位置における画面照度についての測定データを保有することにより、全てのレンズシフト位置に対応してセンサ照度目標値Y3を補間演算して算出することができる。
【0076】
(6)上記構成の投写型映像表示装置を組合わせてマルチスクリーンシステムを形成した場合は、各投写型映像表示装置から投写されるスクリーン31,32,33間において、画面照度のばらつきを補償することができる。一般に、マルチスクリーンシステムでは、各投写型映像表示装置に使用される光源ランプ1、ライトバルブなどの光学系部品の初期光学特性にばらつきがあり、さらに経時変化にもばらつきがあるため、各投写型映像表示装置対応のスクリーン31,32,33間の画面照度にばらつきが生じやすい。しかし、本発明に係る投写型映像表示装置を用いることにより、このようなばらつきを補償することができる。
【0077】
(変形例)
本発明は、上記実施の形態において以下のように変更することもできる。
・上記実施の形態においては、ユーザが、随時、画面照度調整を行うようにしているが、製品に定められた一定の条件を満たしたときに、画面照度の照度調整必要の表示がなされ、これを見てユーザが画面照度調整プログラムを作動させるようにしてもよい。
【0078】
・記憶部22に記憶される初期照度テーブル22aは、光源ランプ1の最小出力時に照度センサより測定された測定値である最小値p1、q1と、光源ランプ1の最大出力時に照度センサにより測定された測定値である最大値p2、q2とからなるように構成されているが、特に光源ランプ1の最小又は最大出力時に拘る必要はない。他の出力時の値を用いるようにしてもよい。また、多数出力時のデータを用いるようにしてもよく、このようにすれば制御精度を向上させることができる。
【0079】
・上記実施の形態においては、センサ照度目標値Y3の誤差ΔYをユーザが設定するようにしているが、予め装置にこの誤差ΔYが設定されており、自動的に設定された誤差ΔYに基づき投写レンズ12から出射される光の明るさが適切に制御されたかどうか行うようにしてもよい。
【0080】
・また、このセンサ照度目標値Y3の誤差ΔYをセンサ照度設定値Y2が補正された後に行うようにしているが、画面照度設定値X2の設定と同様に、この手順の初めの方の段階で設定するようにしても支障はない。
【0081】
・本実施の形態においては、マルチスクリーンシステムを例にとって説明しているが、このようなシステムに限られたものではなく、単独使用の投写型映像表示装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0082】
A,B,C…製品、p1,p2,q1,q2…測定値、X1…画面照度初期値、X2…画面照度設定値、X3…画面照度目標値、Y1…センサ照度初期値、Y2…センサ照度設定値、Y3…センサ照度目標値、Y4…センサ照度実測値、1…光源ランプ、11…クロスダイクロイックプリズム、12…投写レンズ、13…プリズムブロック、14…照度センサ、21…制御部、22…記憶部、22a…初期照度テーブル、22b…照度比テーブル、27…操作部、28…位置検出器、30…画面、31,32,33…スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投写レンズ入射手前の漏れ光を受ける照度センサと、レンズシフト装置と、レンズシフト位置を検出する位置検出器と、操作部とを有し、
さらに、製品使用前にレンズシフトさせずに白色光を投写する状態において測定された、基準投写面の画面照度である画面照度初期値と、前記照度センサにより測定された測定値であるセンサ照度初期値との相関を示す初期照度テーブル、並びに、レンズシフトさせた場合とさせない場合との基準投写面における画面照度の測定値を対比した照度比とレンズシフト位置との相関を示す照度比テーブルを記憶した記憶部と、
操作部から画面照度調整指令が出力されるとともに基準投写面における画面照度設定値が設定された場合に、この画面照度設定値を前記画面照度初期値とした場合のセンサ照度初期値を前記初期照度テーブルから算出してこれをセンサ照度設定値とし、さらに、このセンサ照度設定値を、位置検出器により測定されたレンズシフト位置に対応するように照度比テーブルに基づき補正してセンサ照度目標値とし、実際に光源ランプを点灯して白色光を投写したときに照度センサにより実測されるセンサ照度実測値がセンサ照度目標値に一致するように投写レンズから出射される光の明るさを調整する制御部とを
有することを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の投写型映像表示装置において、
前記初期照度テーブルは、製品毎に測定されたデータに基づくものであり、
前記制御部は、この製品毎の初期照度テーブルに基づき製品毎にセンサ照度設定値を算出する
ことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の投写型映像表示装置において、
投写型映像表示装置は、3板式液晶投写型映像表示装置であって、
前記レンズシフト装置は、赤色光用、緑色光用、及び青色光用の光ライトバルブがクロスダイクロイックプリズムに一体化されたプリズムブロックを固定した状態として、投写レンズを上下左右に移動するものであり、
前記照度センサは、プリズムブロックにおける投写レンズ側に取り付けられている
ことを特徴する投写型映像表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の投写型映像表示装置において、
前記初期照度テーブルは、光源ランプの最大出力時に照度センサにより測定された測定値であるセンサ照度初期値と、光源ランプの最小出力時に照度センサにより測定された測定値であるセンサ照度初期値とからなり、
前記制御部は、前記初期照度テーブルとして記憶された前記二つのセンサ照度初期値から、補間方法によりセンサ照度設定値を算出するように構成されている
ことを特徴する投写型映像表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の投写型映像表示装置において、
前記照度比テーブルは、レンズシフト位置を、上下方向には最大シフトさせた上下位置とシフトさせない中央位置との3段階とし、左右方向には最大シフトさせた左右位置とシフトさせない中央位置との3段階とした計9個とし、上下方向及び左右方向にシフトさせない中央の画面照度の測定値に対する他の各位置における画面照度の測定値の比を照度比として備えたテーブルであり、
前記制御部は、前記照度比テーブルに記憶された照度比に基づき、前記算出されたセンサ照度設定値を補間演算して補正し、これをセンサ照度目標値とするように構成されている
ことを特徴する投写型映像表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複数の投写型映像表示装置を組み合わせ、各投写型映像表示装置から投写されるスクリーンで一つの画面が形成されることを特徴とするマルチスクリーンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−109103(P2013−109103A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253103(P2011−253103)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】