説明

排ガス浄化システム、排ガス浄化システムの製造方法、及び、排ガス浄化システムを用いた排ガス浄化方法

【課題】保持シール材が排ガス処理体を充分に保持することができる排ガス浄化システムを提供する。
【解決手段】保持シール材140は、無機繊維を含むマット状であるとともに、排ガス浄化装置110のガス出口側に位置する第1の側面141と、入口側に位置する第2の側面142とを有し、保持シール材の第1の側面には、第1の傾斜面が形成されており、排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、第1の傾斜面は、保持シール材と排ガス処理体とが接触する第1の内側端点143aと、保持シール材と金属容器とが接触する第1の外側端点143bとを有し、第1の内側端点は、第1の外側端点よりも排ガス浄化装置のガス入口側に位置し、第1の傾斜面は、第1の内側端点から第1の外側端点へ向かい、かつ、第1の傾斜面は、排ガス処理体の端面に対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化システム、排ガス浄化システムの製造方法、及び、排ガス浄化システムを用いた排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)又はNOx(窒素酸化物)等の有害なガス成分が含まれており、この有害なガス成分が環境や人体に害を及ぼすことについても問題となっている。
【0003】
そこで、内燃機関と連結されることにより排ガス中のPMを捕集したり、排ガスに含まれるCO、HC又はNOx等の排ガス中の有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、コージェライトや炭化ケイ素などの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を内部に収容する金属容器(ケーシング)と、排ガス処理体と金属容器との間に配設され、無機繊維を含むマット状の保持シール材とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。
この排ガス浄化装置では、無機繊維の有する弾性によって保持シール材が排ガス処理体を保持している。また、排ガス処理体と金属容器との隙間を保持シール材が埋めることにより、排ガス処理体と金属容器との隙間からの排ガスの漏出を防止している。
【0004】
排ガス浄化装置を作製する方法としては、周囲に保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を金属容器の内部に圧入する方法が知られている。そして、金属容器としては、保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体の外径(排ガス処理体の直径と保持シール材の厚さとを合わせた長さ)よりも若干短い内径を有する金属容器が用いられる。
なお、本明細書では、保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を巻付体ともいうこととする。
【0005】
上記の方法により製造される排ガス浄化装置では、保持シール材が金属容器内で圧縮された状態となる。そのため、保持シール材が無機繊維の有する弾性により元の形状に戻ろうとする復元力(すなわち、排ガス処理体を保持する保持力)を発揮し、保持シール材で排ガス処理体が保持される。
【0006】
そして、排ガス浄化装置の一方の端部に、排ガスを排ガス浄化装置に導入するための導入管を接続し、かつ、排ガス浄化装置の他方の端部に、排ガス浄化装置を通過した排ガスを外部に排出するための排出管を接続することにより、排ガス浄化システムを製造することができる。
本明細書では、排ガス浄化装置において、導入管に接続されている端部の側をガス入口側ということとし、排出管に接続されている端部の側をガス出口側ということとする。
【0007】
しかしながら、従来の方法で製造される排ガス浄化システムでは、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の周囲に巻き付けられた保持シール材の側面が変形し、排ガスを流入させた場合に保持シール材の破損が発生するという問題がある。
これについて、図21を参照しながら以下に詳しく説明する。
図21は、従来の排ガス浄化システムの一例を模式的に示す断面図である。図21では、圧入方向を矢印Zで表している。このように、従来の排ガス浄化システムでは、圧入方向と排ガスを流入させる方向が同じである。
【0008】
図21に示した従来の排ガス浄化システム200において、排ガス浄化装置210のガス出口側212では、保持シール材240の第1の側面241が、排ガス処理体230の出口側端面232と略平行にならず、傾いた状態となっている。また、排ガス浄化装置210のガス入口側211では、保持シール材240の第2の側面242が、排ガス処理体230の入口側端面231と略平行にならず、傾いた状態となっている。
この理由については、以下のように考えられる。保持シール材240が巻き付けられた排ガス処理体230を金属容器220の内部に圧入する際に、保持シール材240の排ガス処理体230と接触している主面245a(以下、単に第一主面ともいう)と、保持シール材240の金属容器220と接触している主面245b(以下、単に第二主面ともいう)との間でせん断力が負荷される。せん断力は、保持シール材240の第一主面245a側では圧入方向に働き、保持シール材240の第二主面245b側では圧入方向と反対の方向に働く。その結果、保持シール材240の第一主面245a及び第二主面245bの互いの位置がずれて、保持シール材240が変形するものと考えられる。
なお、略平行とは、排ガス処理体の端面(入口側端面、出口側端面)と保持シール材の第1の側面又は第2の側面とが平行であるか、又は、保持シール材の第1の側面又は第2の側面が排ガス処理体の端面から傾いていても実質的にその傾きを無視し得る程度に傾いていることをいう。
【0009】
図21に示した従来の排ガス浄化システム200のように、排ガス浄化装置210において、保持シール材240の第1の側面241及び第2の側面242が傾いた状態では、排ガスを流入させた場合に保持シール材240の第1の側面241又は第2の側面242と排ガスとが接触する面積が大きくなる。そのため、排ガスの流動に伴って保持シール材240の第1の側面241又は第2の側面242が風蝕されやすくなる。そして、保持シール材240の第1の側面241又は第2の側面242に発生した風蝕が進展し、保持シール材240が破損することがある。
そのため、保持シール材240の破損が発生した場合には、排ガス処理体230を充分に保持することができなくなり、風蝕により発生した隙間から排ガスが漏れたり、場合によっては、排ガス処理体230が脱落したりするという問題がある。
【0010】
このような問題に対して、排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置として、例えば、側面に傾斜面を形成した保持シール材を用いた排ガス浄化装置、及び、排ガス浄化装置の製造方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−092553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の排ガス浄化装置に用いられる保持シール材では、まず、カッター等の切断治具で保持シール材の側面を切断して第一主面側から第二主面側に向かって傾斜した傾斜面とする。次に、この保持シール材の側面(傾斜面)が金属容器に巻付体を圧入する際の圧入方向に突出するようにして、保持シール材を排ガス処理体の周囲に単層に巻き付けて巻付体を作製する。
このようにして作製した巻付体を金属容器に圧入すると、第二主面近傍が圧入方向と反対の方向に変形していくにつれ傾斜面が徐々に排ガス処理体の端面と平行になっていくとされている。そして、巻付体が所定の位置に配設された状態においては、保持シール材の第2の側面がちょうど排ガス処理体の端面と略平行になるとされている。
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の排ガス浄化装置を用いて、従来の方法により排ガス浄化システムを製造した場合、排ガス浄化システムに排ガスを流入させると、排ガスの流動に伴って、排ガス処理体がガス出口側に押されることになる。
図22(a)は、排ガスを流入させる前の従来の排ガス浄化システムの別の一例を模式的に示す断面図である。図22(b)は、排ガスを流入させている間の従来の排ガス浄化システムの別の一例を模式的に示す断面図である。
図22(a)及び図22(b)に示す排ガス浄化システム300は、特許文献1に記載の排ガス浄化装置を用いて、従来の方法により製造されている。
図22(b)に示すように、排ガス浄化システム300に排ガスGを流入させると、保持シール材340の第1の側面341及び第2の側面342が傾いた状態となってしまう。
保持シール材の側面が傾いた状態であると、従来の排ガス浄化システムと同様に、保持シール材が風蝕されやすくなるという問題が発生する。また、保持シール材の風蝕という問題以外に、以下のような問題も発生する。
【0014】
排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面で見た場合、保持シール材の第1の側面又は第2の側面が傾いていない部分では、排ガス処理体と金属容器との隙間が保持シール材によって完全に埋められている。排ガス処理体と金属容器との隙間が保持シール材によって完全に埋められている部分では、保持シール材は、排ガス処理体や金属容器を垂直に押し出すことができる。その結果、保持シール材に面圧(保持シール材の保持面に負荷される圧力)が発生する。
一方、保持シール材の第1の側面又は第2の側面が傾いた部分では、排ガス処理体と金属容器との隙間が保持シール材によって埋められていない空間が存在する。保持シール材の第1の側面又は第2の側面が傾いた部分では、排ガス処理体と金属容器との隙間に保持シール材が存在しないため、保持シール材が排ガス処理体や金属容器を垂直に押し出すことができない。その結果、保持シール材に面圧が発生しない。
以下、面圧が発生する部分の面積を面圧有効面積という。
【0015】
図22(a)に示す排ガスを流入させる前の排ガス浄化システム300において、面圧有効面積は、Sで表される部分の面積である。一方、図22(b)に示す排ガスを流入させている間の排ガス浄化システム300において、面圧有効面積は、Sで表される部分の面積である。
排ガス浄化システム300に排ガスGを流入させると、保持シール材340の第1の側面341及び第2の側面342が傾いていくため、面圧有効面積は、SからSへ減少する。その結果、保持シール材の保持力が低下する。
このように、特許文献1に記載の排ガス浄化装置を用いて、従来の方法により排ガス浄化システムを製造した場合、排ガスを流入させている間、保持シール材の保持力が低下し、保持シール材が排ガス処理体を充分に保持することができないという問題がある。
【0016】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、排ガスを流入させている間、保持シール材が排ガス処理体を充分に保持することができる排ガス浄化装置を備える排ガス浄化システム、上記排ガス浄化システムの製造方法、及び、上記排ガス浄化システムを用いた排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上述した課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、排ガスの流動に伴って排ガス処理体が移動することを考慮して、保持シール材の側面に傾斜面を設けることにより、保持シール材の保持力の低下を防止することができることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、請求項1に記載の排ガス浄化システムは、
金属容器、上記金属容器内に収容された排ガス処理体、並びに、上記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ上記排ガス処理体及び上記金属容器の間に配設された保持シール材を備えた排ガス浄化装置と、
上記排ガス浄化装置の一方の端部に接続され、排ガスを上記排ガス浄化装置に導入するための導入管と、
上記排ガス浄化装置の他方の端部に接続され、上記排ガス浄化装置を通過した上記排ガスを外部に排出するための排出管とからなる排ガス浄化システムであって、
上記排ガス浄化装置は、上記導入管に接続されたガス入口側と、上記排出管に接続されたガス出口側とを有し、
上記保持シール材は、無機繊維を含むマット状であるとともに、上記排ガス浄化装置のガス出口側に位置する第1の側面と、上記排ガス浄化装置のガス入口側に位置する第2の側面とを有し、
上記保持シール材の第1の側面には、第1の傾斜面が形成されており、
上記排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、上記第1の傾斜面は、上記保持シール材と上記排ガス処理体とが接触する第1の内側端点と、上記保持シール材と上記金属容器とが接触する第1の外側端点とを有し、
上記第1の内側端点は、上記第1の外側端点よりも上記排ガス浄化装置のガス入口側に位置し、
上記第1の傾斜面は、上記第1の内側端点から上記第1の外側端点へ向かい、かつ、
上記第1の傾斜面は、上記排ガス処理体の端面に対して傾斜していることを特徴とする。
【0019】
請求項1に記載の排ガス浄化システムでは、保持シール材の第1の側面が、従来の方法で製造された排ガス浄化システムとは逆の方向に傾いている。
請求項1に記載の排ガス浄化システムに排ガスを流入させた場合、排ガスの流動に伴って、排ガス処理体が排ガス浄化装置のガス出口側に押されることになる。その結果、保持シール材の第1の側面に形成されている第1の傾斜面が、排ガスの流入方向、つまり排ガス浄化装置のガス出口側に移動することにより、第1の側面が排ガス処理体の端面と略平行になっていく。
請求項1に記載の排ガス浄化システムでは、従来の方法で製造された排ガス浄化システムとは異なり、排ガス処理体や金属容器に対して充分な面圧が発生する。その結果、排ガスを流入させている間も保持シール材の保持力が低下することを防止することができるため、保持シール材が排ガス処理体を充分に保持することができる。
【0020】
請求項1に記載の排ガス浄化システムにおいて、排ガスを流入させている間も保持シール材の保持力が低下しない理由は、以下のように考えられる。
図1(a)は、排ガスを流入させる前の本発明の排ガス浄化システムの一例を模式的に示す断面図である。図1(b)は、排ガスを流入させている間の本発明の排ガス浄化システムの一例を模式的に示す断面図である。
図1(a)に示す排ガスを流入させる前の排ガス浄化システム100において、面圧が発生する面圧有効面積は、Sで表される部分の面積である。一方、図1(b)に示す排ガスを流入させている間の排ガス浄化システム100において、面圧有効面積は、Sで表される部分の面積である。
排ガス浄化システム100に排ガスGを流入させると、保持シール材140の第1の側面141が排ガス処理体130の端面と略平行になっていくため、面圧有効面積は、SからSへ増加する。その結果、保持シール材の保持力が向上する。
【0021】
また、請求項1に記載の排ガス浄化システムでは、排ガス浄化装置を構成する保持シール材が充分な保持力を発揮することができるため、排ガス処理体と金属容器との間に配設する保持シール材の充填密度(GBD;Gap Bulk Density)を小さくすることができる。その結果、排ガス浄化装置を構成する保持シール材の量を低減させることができる。
なお、保持シール材の充填密度(GBD)とは、巻付体を金属容器に圧入した後の保持シール材の嵩密度を表し、「充填密度(g/cm)=単位面積あたりの保持シール材の重量(g/cm)/排ガス処理体と金属容器との隙間の距離(cm)」により求められる。
【0022】
また、従来の排ガス浄化システムでは、排ガス浄化装置を構成する保持シール材の保持力が充分でなかったため、保持シール材のみで排ガス処理体を充分に保持しにくい。そのため、排ガス処理体を保持するために、金属ネット等の他の保持材を使用する必要がある。しかし、請求項1に記載の排ガス浄化システムでは、保持シール材のみで排ガス処理体を充分に保持することができるため、金属ネット等の他の保持材を使用することを省略することができる。
【0023】
さらに、請求項1に記載の排ガス浄化システムのように、保持シール材の第1の側面が、従来の方法で製造された排ガス浄化システムとは逆の方向に傾いていると、保持シール材を構成する無機繊維が、排ガス浄化装置のガス入口側から内燃機関側へ飛散する量を低減させることができる。
その理由は明らかではないが、請求項1に記載の排ガス浄化システムでは、排ガス浄化装置を構成する保持シール材の保持力によって無機繊維が拘束されるためであると考えられる。
【0024】
請求項2に記載の排ガス浄化システムでは、
上記保持シール材の第2の側面には、第2の傾斜面が形成されており、
上記排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、上記第2の傾斜面は、上記保持シール材と上記排ガス処理体とが接触する第2の内側端点と、上記保持シール材と上記金属容器とが接触する第2の外側端点とを有し、
上記第2の内側端点は、上記第2の外側端点よりも上記排ガス浄化装置のガス入口側に位置し、
上記第2の傾斜面は、上記第2の内側端点から上記第2の外側端点へ向かい、かつ、
上記第2の傾斜面は、上記排ガス処理体の端面に対して傾斜している。
【0025】
請求項2に記載の排ガス浄化システムでは、保持シール材の第1の側面に加えて、保持シール材の第2の側面にも傾斜面が形成されている。そして、保持シール材の第2の側面は、従来の方法で製造された排ガス浄化システムとは逆の方向に傾いている。
そのため、請求項2に記載の排ガス浄化システムに排ガスを流入させた場合、保持シール材の第2の側面に形成されている第2の傾斜面が、排ガスの流入方向、つまり排ガス浄化装置のガス出口側に移動することにより、保持シール材の第1の側面だけでなく保持シール材の第2の側面も排ガス処理体の端面と略平行になっていく。
請求項2に記載の排ガス浄化システムに排ガスを流入させると、保持シール材の第1の側面及び第2の側面が排ガス処理体の端面と略平行になっていくため、面圧有効面積は増加する。その結果、保持シール材の保持力が向上する。このように、請求項2に記載の排ガス浄化システムでは、従来の方法で製造された排ガス浄化システムとは異なり、排ガス処理体や金属容器に対する面圧が大きくなる。その結果、排ガス浄化装置を構成する保持シール材は、請求項1に記載の排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における保持シール材よりも大きい保持力を発揮することができる。
【0026】
請求項3に記載の排ガス浄化システムでは、上記排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、上記第1の内側端点及び上記第1の外側端点を結ぶ線分と、上記金属容器の内周とにより形成される第1の角度は、25〜89.5°である。
第1の角度が、25°未満であると、排ガス浄化装置における保持シール材の変形が大きくなりすぎるため、保持シール材が破損しやすくなる。また、第1の角度が、25°未満であると、排ガスを流入させる前の排ガス浄化システムにおいて、面圧有効面積が小さくなりすぎるため、保持シール材に充分な保持力が得られない。
一方、第1の角度が、89.5°を超えると、排ガス浄化装置における保持シール材に第1の傾斜面を設ける効果が充分に得られない。
【0027】
請求項4に記載の排ガス浄化システムでは、上記保持シール材は、ニードリング処理によって形成された複数のニードル痕を有する。
排ガス浄化装置を構成する保持シール材にニードル痕が設けられていると、巻付体が金属容器に圧入される際に、保持シール材のニードル痕に一定の方向性が生じる。排ガス浄化装置において、保持シール材のニードル痕が一定の方向性を有していると、保持シール材が排ガス処理体や金属容器を押し出す力が大きくなるため、保持シール材の保持力が向上すると考えられる。
ニードル痕を有する保持シール材の保持力が大きい理由は、以下のように考えられる。保持シール材が、無機繊維から構成される場合、無機繊維は、ニードル痕において、保持シール材の表面に対して垂直な方向に配向する。その結果、排ガス浄化装置において、保持シール材がニードル痕の向き(無機繊維が配向している向き)に排ガス処理体や金属容器を押し出す力が大きくなると考えられる。
【0028】
請求項5に記載の排ガス浄化システムでは、上記複数のニードル痕は、上記保持シール材の厚さ方向に対して斜め方向に形成されている。
排ガス浄化装置において、複数のニードル痕が、保持シール材の厚さ方向に対して斜め方向に形成されていると、保持シール材が排ガス処理体や金属容器を押し出す力がより大きくなるため、保持シール材の保持力がさらに向上すると考えられる。
【0029】
請求項6に記載の排ガス浄化システムでは、上記保持シール材には、バインダが付与されている。
保持シール材に付与されたバインダによって、保持シール材を構成する無機繊維同士を互いに固着することができる。従って、排ガス浄化装置を構成する保持シール材にバインダが付与されていると、ニードル痕の向きが維持されやすくなる。そのため、排ガス浄化装置において、保持シール材が排ガス処理体や金属容器を押し出す力が大きくなる。その結果、排ガス浄化装置における保持シール材の保持力が向上すると考えられる。
【0030】
請求項7に記載の排ガス浄化システムでは、上記保持シール材に付与されたバインダの量は、10重量%以下である。
上述したように、排ガス浄化装置を構成する保持シール材にバインダが付与されていると、排ガス浄化装置における保持シール材の保持力を向上させることができる。しかし、保持シール材に付与されたバインダの量が多くなるほど、保持シール材の保持力を向上させる効果は小さくなるため、保持シール材に付与されたバインダの量は、10重量%以下であることが望ましい。保持シール材に付与されたバインダの量が10重量%を超えると、保持シール材を構成する無機繊維同士が互いに固着されすぎてしまう。その結果、保持シール材を構成する無機繊維の有する弾性が弱くなるため、保持シール材の保持力を向上させる効果は小さくなると考えられる。また、保持シール材に付与されたバインダの量が10重量%を超えると、バインダ成分が熱分解することによって、分解ガスが多く発生するという不具合が生じやすくなる。
【0031】
請求項8に記載の排ガス浄化システムでは、上記金属容器には、上記排ガス浄化装置のガス入口側となるガス入口側と上記排ガス浄化装置のガス出口側となるガス出口側との区別がある。
このように、本発明の排ガス浄化システムでは、排ガス浄化装置を構成する金属容器にガス入口側とガス出口側の区別があってもよいし、金属容器にガス入口側とガス出口側の区別がなくてもよい。
いずれの場合であっても、排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置は、導入管に接続されたガス入口側と、排出管に接続されたガス出口側とを有している。
【0032】
請求項9に記載の排ガス浄化システムの製造方法は、
請求項1〜7のいずれかに記載の排ガス浄化システムの製造方法であって、
周囲に保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を金属容器に圧入することにより、排ガス浄化装置を作製する圧入工程と、
排ガスを上記排ガス浄化装置に導入するための導入管を上記排ガス浄化装置の一方の端部に接続し、かつ、上記排ガス浄化装置を通過した上記排ガスを外部に排出するための排出管を上記排ガス浄化装置の他方の端部に接続する接続工程とを含み、
上記圧入工程では、上記保持シール材の第2の側面を圧入の進行方向に対して先頭にして、上記保持シール材の第1の側面側から上記保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を押し、
上記接続工程では、上記排ガス浄化装置の端部のうち、上記保持シール材の第1の側面よりも上記保持シール材の第2の側面に近い端部に上記導入管を接続し、かつ、上記保持シール材の第2の側面よりも上記保持シール材の第1の側面に近い端部に上記排出管を接続することにより、上記保持シール材の第1の側面よりも上記保持シール材の第2の側面に近い端部を排ガス浄化装置のガス入口側とし、かつ、上記保持シール材の第2の側面よりも上記保持シール材の第1の側面に近い端部を排ガス浄化装置のガス出口側とすることを特徴とする。
【0033】
請求項9に記載の排ガス浄化システムの製造方法では、都度、保持シール材の側面をカッター等の切断治具で切断する操作を行うことなく、保持シール材の第1の側面に第1の傾斜面を形成したり、保持シール材の第2の側面に第2の傾斜面を形成したりすることができる。そのため、保持シール材が充分な保持力を発揮する排ガス浄化装置を備える本発明の排ガス浄化システムを簡便かつ効率的に製造することができる。
【0034】
また、保持シール材に第1の傾斜面が形成された排ガス浄化装置では、排ガス処理体と金属容器との間に配設する保持シール材の充填密度(GBD)を小さくすることができるため、請求項9に記載の排ガス浄化システムの製造方法では、少ない量の保持シール材を用いて排ガス浄化装置を作製することができ、上記排ガス浄化装置を用いて排ガス浄化システムを製造することができる。
さらに、請求項9に記載の排ガス浄化システムの製造方法では、金属ネット等の他の保持材を使用することなく、保持シール材のみで排ガス処理体を充分に保持することが可能な排ガス浄化装置を作製することができ、上記排ガス浄化装置を用いて排ガス浄化システムを製造することができる。
【0035】
請求項10に記載の排ガス浄化システムの製造方法は、
上記金属容器には、上記排ガス浄化装置のガス入口側となるガス入口側と上記排ガス浄化装置のガス出口側となるガス出口側との区別があり、
上記圧入工程の前に、上記保持シール材の第1の側面が上記金属容器のガス出口側に位置し、かつ、上記保持シール材の第2の側面が上記金属容器のガス入口側に位置するように、上記保持シール材の第2の側面が圧入の進行方向に対して先頭になるようにして、上記保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を配置する配置工程をさらに含む。
【0036】
排ガス浄化装置を構成する金属容器にガス入口側とガス出口側との区別がある場合には、圧入工程の前に、金属容器に対して巻付体をどの方向から圧入するかを定めることにより、保持シール材の第1の側面に形成された第1の傾斜面や、保持シール材の第2の側面に形成された第2の傾斜面を有する排ガス浄化装置を作製することができ、上記排ガス浄化装置を用いて排ガス浄化システムを製造することができる。
【0037】
請求項11に記載の排ガス浄化方法は、
請求項1〜8のいずれかに記載の排ガス浄化システムを用いてエンジンから排出された排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、
エンジンから排出された排ガスを上記排ガス浄化装置のガス入口側から上記排ガス浄化装置に流入させ、上記排ガス浄化装置のガス出口側から流出させることを特徴とする。
請求項1〜8のいずれかに記載の排ガス浄化システムに対して、上記の方向に排ガスを流入させると、排ガス処理体が排ガス浄化装置のガス出口側に押されるため、保持シール材の第1の側面が排ガス処理体の端面と略平行になっていく。その結果、面圧有効面積が増加するため、排ガスを流入させている間も保持シール材の保持力の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1(a)は、排ガスを流入させる前の本発明の排ガス浄化システムの一例を模式的に示す断面図である。図1(b)は、排ガスを流入させている間の本発明の排ガス浄化システムの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムの一例を模式的に示す断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置の一例を模式的に示す斜視図である。図3(b)は、図3(a)に示した排ガス浄化装置のA−A線断面図である。
【図4】図4は、図2に示した排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における金属容器の内周近傍の部分拡大断面図である。
【図5】図5(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。図5(b)は、図5(a)に示す保持シール材のB−B線断面図である。
【図6】図6(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。図6(b)は、図6(a)に示す排ガス処理体のC−C線断面図である。
【図7】図7は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における金属容器の一例を模式的に示す斜視図である。
【図8】図8(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムを構成する導入管の一例を模式的に示す斜視図である。図8(b)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムを構成する排出管の一例を模式的に示す斜視図である。
【図9】図9(a)は、本発明の第一実施形態の圧入工程の一例を模式的に示す斜視図である。図9(b)は、図9(a)に示した圧入工程により作製された排ガス浄化装置を模式的に示す一部切り欠き斜視断面図である。図9(c)は、本発明の第一実施形態の接続工程の一例を模式的に示す斜視図である。
【図10】図10(a)は、押し抜き強度を測定する方法を模式的に示す斜視図である。図10(b)は、押し抜き強度試験機を模式的に示す正面図である。
【図11】図11(a)は、各実施例の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の押し抜き強度を測定する場合を模式的に示す断面図であり、図11(b)は、各比較例の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の押し抜き強度を測定する場合を模式的に示す断面図である。
【図12】図12は、繊維飛散量の測定方法を模式的に示す斜視図である。
【図13】図13(a)は、実施例1の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の繊維飛散量を測定する場合を模式的に示す断面図であり、図13(b)は、比較例1の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の繊維飛散量を測定する場合を模式的に示す断面図である。
【図14】図14は、実施例1及び比較例1における押し抜き強度の測定結果のグラフである。
【図15】図15は、実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例3における押し抜き強度の測定結果から、保持シール材のバインダ含有量と押し抜き強度との関係を示すグラフである。
【図16】図16は、実施例1及び実施例4〜実施例8、並びに、比較例1及び比較例4〜比較例7における押し抜き強度の測定結果から、保持シール材の充填密度と押し抜き強度との関係を示すグラフである。
【図17】図17は、実施例1及び実施例9における押し抜き強度の測定結果のグラフである。
【図18】図18は、実施例1及び比較例1における繊維飛散量の測定結果のグラフである。
【図19】図19は、保持シール材のバインダ含有量と押し抜き強度の増加率との関係を示すグラフである。
【図20】図20(a)は、本発明の実施形態に係る配置工程の一例を模式的に示す斜視図である。図20(b)は、本発明の実施形態に係る圧入工程の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視断面図である。図20(c)は、図20(a)に示した配置工程、及び、図20(b)に示した圧入工程を経ることにより作製された排ガス浄化装置を模式的に示す一部切り欠き斜視断面図である。
【図21】図21は、従来の排ガス浄化システムの一例を模式的に示す断面図である。
【図22】図22(a)は、排ガスを流入させる前の従来の排ガス浄化システムの別の一例を模式的に示す断面図である。図22(b)は、排ガスを流入させている間の従来の排ガス浄化システムの別の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第一実施形態)
以下、本発明の排ガス浄化システム、排ガス浄化システムの製造方法、及び、排ガス浄化システムを用いた排ガス浄化方法の一実施形態である第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0040】
まず、本発明の実施形態に係る排ガス浄化システムについて説明する。
図2は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムの一例を模式的に示す断面図である。
図2に示す排ガス浄化システム100は、排ガス浄化装置110と、排ガス浄化装置110の一方の端部に接続され、排ガスを排ガス浄化装置110に導入するための導入管101と、排ガス浄化装置110の他方の端部に接続され、排ガス浄化装置110を通過した排ガスを外部に排出するための排出管102とからなる。
排ガス浄化装置110は、導入管101に接続されたガス入口側111と、排出管102に接続されたガス出口側112とを有している。
【0041】
図3(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置の一例を模式的に示す斜視図である。図3(b)は、図3(a)に示した排ガス浄化装置のA−A線断面図である。
図3(a)及び図3(b)に示す排ガス浄化装置110は、金属容器120と、金属容器120内に収容された排ガス処理体130と、排ガス処理体130及び金属容器120の間に配設された保持シール材140とを備えている。
保持シール材140は、無機繊維を含むマット状であり、排ガス処理体130の周囲に巻き付けられている。そして、保持シール材140によって排ガス処理体130が保持されている。
【0042】
図2に示す排ガス浄化システム100において、排ガス浄化装置110を構成する排ガス処理体130は、排ガス浄化装置110のガス入口側111に位置する入口側端面131と、排ガス浄化装置110のガス出口側112に位置する出口側端面132とを有している。
【0043】
本実施形態に係る排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における保持シール材について説明する。
図2に示すように、排ガス浄化システム100を構成する排ガス浄化装置110において、保持シール材140は、排ガス浄化装置110のガス出口側112に位置する第1の側面141と、排ガス浄化装置110のガス入口側111に位置する第2の側面142とを有している。そして、保持シール材140の第1の側面141には、第1の傾斜面が形成されており、また、保持シール材140の第2の側面142には、第2の傾斜面が形成されている。
【0044】
保持シール材140の第1の側面141に形成された第1の傾斜面は、保持シール材140と排ガス処理体130とが接触する第1の内側端点143aと、保持シール材140と金属容器120とが接触する第1の外側端点143bとを有する。
保持シール材140の第1の内側端点143aは、保持シール材140の第1の外側端点143bよりも排ガス浄化装置110のガス入口側111に位置している。そして、第1の傾斜面は、排ガス処理体130の端面に対して傾斜しており、第1の内側端点143aから第1の外側端点143bへ向かっている。
【0045】
保持シール材140の第2の側面142に形成された第2の傾斜面は、保持シール材140と排ガス処理体130とが接触する第2の内側端点144aと、保持シール材140と金属容器120とが接触する第2の外側端点144bとを有する。
保持シール材140の第2の内側端点144aは、保持シール材140の第2の外側端点144bよりも排ガス浄化装置110のガス入口側111に位置している。そして、第2の傾斜面は、排ガス処理体130の端面に対して傾斜しており、第2の内側端点144aから第2の外側端点144bへ向かっている。
【0046】
図4は、図2に示した排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における金属容器の内周近傍の部分拡大断面図である。
本明細書では、排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、第1の内側端点及び第1の外側端点を結ぶ線分と、金属容器の内周とにより角度が形成される角度のうち、鋭角である方の角度を「第1の角度」ということとする。また、排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、第2の内側端点及び第2の外側端点を結ぶ線分と、金属容器の内周とにより形成される角度のうち、鋭角である方の角度を「第2の角度」ということとする。
すなわち、図4に示す排ガス浄化装置110においては、αで示す角度が第1の角度であり、βで示す角度が第2の角度である。
【0047】
以下、第1の角度の求め方について、図4を参照しながら説明する。
まず、排ガス浄化装置110のガス出口側112から保持シール材140の第1の外側端点143bまでの距離(図4中、両矢印xの長さ)を測定する。次に、排ガス浄化装置110のガス出口側112から保持シール材140の第1の内側端点143aまでの距離(図4中、両矢印xの長さ)を測定する。さらに、金属容器120と排ガス処理体130との間の距離(図4中、両矢印yの長さ)を測定する。そして、以下の計算式(1)により、第1の角度αを算出する。計算式(1)中、arctanは、逆正接(正接の逆関数)を表す。
第1の角度α(°)=arctan{y/(x−x)}・・・(1)
また、第2の角度についても、第1の角度と同様に求められる。すなわち、図4において、排ガス浄化装置110のガス入口側111から保持シール材140の第2の外側端点144bまでの距離x、排ガス浄化装置110のガス入口側111から保持シール材140の第2の内側端点144aまでの距離x、金属容器120と排ガス処理体130との間の距離yをそれぞれ測定し、以下の計算式(2)により第2の角度βを算出する。
第2の角度β(°)=arctan{y/(x−x)}・・・(2)
【0048】
本実施形態の排ガス浄化システムでは、第1の角度(排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、第1の内側端点及び第1の外側端点を結ぶ線分と、金属容器の内周とにより角度が形成される角度のうち、鋭角である方の角度)は、保持シール材の保持力の点から、25〜89.5°であることが好ましい。
また、本実施形態の排ガス浄化システムでは、第2の角度(排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、第2の内側端点及び第2の外側端点を結ぶ線分と、金属容器の内周とにより形成される角度のうち、鋭角である方の角度)は、保持シール材の保持力の点から、25〜89.5°であることが好ましい。
【0049】
以下、保持シール材の構成の一例について詳しく説明する。
図5(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。図5(b)は、図5(a)に示す保持シール材のB−B線断面図である。
図5(a)及び図5(b)に示す保持シール材140は、アルミナ−シリカ繊維等の無機繊維149からなり、所定の長さ(図5(a)中、矢印Lで示す)、幅(図5(a)中、矢印Wで示す)、及び、厚さ(図5(a)中、矢印Tで示す)を有する平面視略矩形の平板状の形状を有している。
また、保持シール材140の幅方向に平行な端面147a、147bのうち、一方の端面147aには、凸部148aが形成されており、他方の端面147bには、保持シール材140を丸めて端面147aと端面147bとを当接させた際に凸部148aと嵌合する形状の凹部148bが形成されている。
【0050】
このような保持シール材は、紡糸法により、無機繊維を絡み合わせることにより製造することができる。
【0051】
本実施形態の排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置において、保持シール材は、無機繊維から構成された素地マットに対してニードリング処理を施して得られるニードルマットであることが望ましい。ニードリング処理とは、ニードル等の繊維交絡手段を素地マットに対して抜き差しする処理のことをいう。ニードリング処理が施された保持シール材では、比較的繊維長の長い無機繊維が3次元的に交絡する。そのため、無機繊維の開繊が防止されて、ニードルマットの強度が向上することとなる。
【0052】
保持シール材がニードルマットである場合、保持シール材は、ニードリング処理によって形成された複数のニードル痕を有している。
図5(a)及び図5(b)に示す保持シール材140は、複数のニードル痕146を有する例を示している。ニードル痕146には、保持シール材の厚さ方向に配向するとともに、互いに絡み合った無機繊維149が含まれている。
保持シール材の無機繊維が一定の方向に配向されていると、排ガス浄化装置において、保持シール材がニードル痕の向き(図5(b)中、両矢印fで示した向き)、すなわち、無機繊維が配向している向きに、排ガス処理体や金属容器を押し出す力が大きくなると考えられる。
保持シール材140においては、ニードル痕146を中心として、互いに絡み合った無機繊維149により、保持シール材140が厚さ方向に沿って縫い付けられたような状態になっている。
【0053】
一方、保持シール材140において、ニードル痕146が形成されていない領域は、特定の方向に配向されていない無機繊維149が比較的緩く絡み合うことにより形成されており、不織布状を呈している。
【0054】
従って、保持シール材140において、ニードル痕146近傍では、ニードル痕146が形成されていない領域に比べて、無機繊維149の密度が高い。
【0055】
本実施形態の排ガス浄化システムでは、排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、ニードル痕の形状、及び、ニードル痕が形成される方向は特に限定されないが、保持シール材の厚さ方向に対して斜め方向に形成されていることが望ましい。具体的には、排ガスを流入させる前の排ガス浄化システムにおいて、ニードル痕は、保持シール材に形成された第1の傾斜面や第2の傾斜面に略平行であることが望ましい。
図4には、排ガス浄化装置110を構成する保持シール材140が、保持シール材140の厚さ方向に対して斜め方向に形成された複数のニードル痕146を有する例を示している。図4に示した排ガス浄化装置110において、保持シール材140は、第1の傾斜面及び第2の傾斜面に略平行なニードル痕の向きfに、排ガス処理体130及び金属容器120を押し出すことができる。
【0056】
本実施形態の排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置において、保持シール材には、バインダが付与されていてもよい。保持シール材に付与されたバインダによって、保持シール材を構成する無機繊維同士を互いに固着することができる。従って、これらのバインダによって、保持シール材を金属容器に圧入する際の保持シール材の嵩を低減させたり、無機繊維の飛散を防止したりすることができる。
また、保持シール材にバインダが付与されていると、ニードル痕の向きが維持されやすくなるため、保持シール材が排ガス処理体や金属容器を押し出す力が大きくなる。その結果、保持シール材の保持力が向上すると考えられる。
【0057】
保持シール材にバインダを付与する方法としては、例えば、スプレー等を用いて保持シール材にバインダ溶液を所定量吹きかけることにより、保持シール材にバインダを付着させる方法、及び、保持シール材にバインダ溶液を含浸させる方法等が挙げられる。
【0058】
上記バインダ溶液としては、アクリル系樹脂等の有機バインダを水に分散させて調製したエマルジョンを用いることができる。また、上記バインダ溶液には、アルミナゾル等の無機バインダが適宜含まれていてもよい。
【0059】
保持シール材に付与されるバインダの量(以下、バインダ含有量ともいう)は、保持シール材の保持力向上の点から、10重量%以下であることが好ましく、0.5〜6.0重量%であることがより好ましく、1.0〜2.0重量%であることがさらに好ましい。
【0060】
本実施形態に係る排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における排ガス処理体について説明する。
図6(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。図6(b)は、図6(a)に示す排ガス処理体のC−C線断面図である。
【0061】
図6(a)に示すように、排ガス処理体130は、主にコージェライト等の多孔質セラミックからなり、その形状は略円柱状である。また、排ガス処理体130の外周には、排ガス処理体130の外周部を補強したり、形状を整えたり、排ガス処理体130の断熱性を向上させたりする目的で、コート層136が設けられている。なお、コート層は、必要に応じて設けられていればよい。
【0062】
図6(a)に示す排ガス処理体130は、セル壁135を隔てて長手方向(図6(a)中、両矢印aで示した方向)に多数のセル133が並設されたハニカム構造体となっている。
そして、各々のセル133におけるいずれか一方の端部は、封止材134によって封止されている。この場合、排ガス処理体は、排ガスに含まれるPMを浄化するフィルタ(ハニカムフィルタ)として機能する。排ガス処理体としてハニカムフィルタを用いた場合の排ガス浄化方法については後述する。
【0063】
本実施形態に係る排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における金属容器について説明する。
図7は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における金属容器の一例を模式的に示す斜視図である。
図7に示す金属容器120は、主にステンレス等の金属からなり、その形状は、略円筒状である。金属容器120の内径は、図6(a)及び図6(b)に示す排ガス処理体130の端面の直径と、排ガス処理体130に巻き付けられた状態の保持シール材140の厚さとを合わせた長さより若干短くなっている。
また、金属容器120の長さは、図6(a)及び図6(b)に示す排ガス処理体130の長手方向における長さより若干長くなっている。なお、金属容器の長さは、排ガス処理体の長手方向における長さと略同一であってもよい。
【0064】
本実施形態に係る排ガス浄化システムを構成する導入管及び排出管について説明する。
図8(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムを構成する導入管の一例を模式的に示す斜視図である。図8(b)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムを構成する排出管の一例を模式的に示す斜視図である。
図8(a)に示す導入管101は、主にステンレス等の金属からなり、その形状は、略円筒状である。そして、図8(a)に示すように、導入管101の一方の端面103aの外径(内径)は、図7に示した金属容器120の外径(内径)と略同一となっている。また、導入管101の他方の端面103bの外径(内径)は、図7に示した金属容器120の端面の外径(内径)よりも小さくなっている。そして、導入管101の一方の端面103a近傍の形状は、一方の端面103a側から他方の端面103b側に向かって縮小したテーパー状になっている。
この導入管101の他方の端面103bは、必要に応じてさらに排ガス管が接続された上で、内燃機関と連結されることになる。
【0065】
図8(b)に示す排出管102は、主にステンレス等の金属からなり、その形状は、略円筒状である。そして、図8(b)に示すように、排出管102の一方の端面104aの外径(内径)は、図7に示した金属容器120の外径(内径)と略同一となっている。また、排出管102の他方の端面104bの外径(内径)は、図7に示した金属容器120の端面の外径(内径)よりも小さくなっている。そして、排出管102の一方の端面104a近傍の形状は、一方の端面104a側から他方の端面104b側に向かって縮小したテーパー状になっている。
この排出管102の他方の端面104bは、外部に連結されることになる。
【0066】
次に、上述した構成を有する排ガス浄化システムを用いて排ガスを浄化する本実施形態の排ガス浄化方法について、図1(a)及び図1(b)を参照しながら説明する。
なお、図1(a)及び図1(b)に示す排ガス浄化システム100では、排ガス処理体130として、図6(a)及び図6(b)に示したハニカムフィルタを用いた場合を示している。
【0067】
図1(a)に示す排ガス浄化システム100に対して、内燃機関から排出された排ガスを排ガス浄化装置110のガス入口側111から流入させると、排ガスの流動に伴って、排ガス処理体130が排ガス浄化装置110のガス出口側112に押されることになる。その結果、図1(b)に示すように、保持シール材140の第1の側面141に形成されている第1の傾斜面が、排ガス(図1(b)中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)の流入方向、つまり排ガス浄化装置110のガス出口側112に移動することにより、保持シール材140の第1の側面141が、排ガス処理体130の出口側端面132と略平行になっていく。同様に、保持シール材140の第2の側面142に形成されている第2の傾斜面が、排ガス浄化装置110のガス出口側112に移動することにより、保持シール材140の第2の側面142が、排ガス処理体130の入口側端面131と略平行になっていく。
排ガス浄化システム100に排ガスGを流入させると、保持シール材140の第1の側面141及び第2の側面142が排ガス処理体130の端面と略平行になっていくため、面圧有効面積は、SからSへ増加する。その結果、保持シール材の保持力が向上する。
【0068】
本実施形態の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の保持力は、保持シール材の第1の側面及び第2の側面が排ガス処理体の端面と略平行となるときに最大となる。
本実施形態の排ガス浄化システムでは、排ガス処理体は、遅くとも保持シール材の第1の側面及び第2の側面が排ガス処理体の端面と略平行となる前に、保持シール材によって保持され、以降、排ガスが流入されても移動することがないように設計されている。
【0069】
図1(b)に示すように、排ガス浄化装置110のガス入口側111から排ガス浄化装置110の中に流入した排ガスGは、排ガス処理体130の出口側端面132側の端部が封止された一のセル133aに流入する。そして、排ガスGは、一のセル133aと、排ガス処理体130の入口側端面131側の端部が封止された他のセル133bとを隔てるセル壁135を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁135で捕集され、排ガスGが浄化される。
浄化された排ガスGは、他のセル133bに流入し、排ガス浄化装置110のガス出口側112から排ガス浄化装置110の外に排出される。その後、排ガスGは、排出管102を通って外部に排出される。
このように、一のセル133aと他のセル133bとを隔てるセル壁135が、フィルタとして機能するようになっている。
【0070】
続いて、本実施形態の排ガス浄化システムの製造方法について、図9(a)〜図9(c)を参照しながら説明する。ここでは、図2に示した排ガス浄化システム100を製造する方法について説明する。
本実施形態の排ガス浄化システムの製造方法は、圧入工程と接続工程とを含む。
【0071】
図9(a)は、本発明の第一実施形態の圧入工程の一例を模式的に示す斜視図である。図9(a)では、圧入方向を矢印Xで表している。
図9(a)に示すように、まず、排ガス処理体130の周囲に保持シール材140が巻き付けられた巻付体150を用意する。
巻付体150は、図6(a)及び図6(b)に示した排ガス処理体(ハニカム構造体)130の外周に、図5(a)に示した保持シール材140の凸部148aと凹部148bとが嵌合するようにして保持シール材140を巻き付けることによって製造することができる。
【0072】
次に、巻付体を金属容器に圧入することにより、排ガス浄化装置を作製する圧入工程を行う。
圧入工程では、保持シール材140の第2の側面142を圧入の進行方向に対して先頭にして、保持シール材140の第1の側面141側から巻付体150を押すことにより、巻付体150を金属容器120内の所定の位置まで圧入する。
【0073】
図9(a)に示す圧入工程では、圧入治具80を用いて、巻付体150を金属容器120に圧入する方法を示している。
圧入治具80は、全体として略円筒状であり、その内部が一端から他端に向かってテーパー状に広がっている。
圧入治具80の一端は、金属容器120の内径よりわずかに小さな径に相当する内径を有する短径側端部81となっている。また、圧入治具80の他端は、少なくとも巻付体150の外径に相当する内径を有する長径側端部82となっている。
圧入治具80を用いることにより、巻付体150を金属容器120に容易に圧入することができる。
なお、巻付体を金属容器に圧入する方法としては特に限定されず、例えば、手で巻付体を押すことにより巻付体を金属容器に圧入する等の方法であってもよい。
【0074】
本実施形態の排ガス浄化システムの製造方法では、さらに、プレス機等を使用することにより、金属容器の内径を縮めるように外周側から圧縮して、巻付体を保持してもよい。
【0075】
上記圧入工程により、排ガス浄化装置を作製することができる。
図9(b)は、図9(a)に示した圧入工程により作製された排ガス浄化装置を模式的に示す一部切り欠き斜視断面図である。
巻付体150を金属容器120の内部に圧入する際に、保持シール材140の排ガス処理体130と接触している第一主面145aと、保持シール材140の金属容器120と接触している第二主面145bとの間でせん断力が負荷され、第一主面145a及び第二主面145bの互いの位置がずれて保持シール材140が変形する。
その結果、図9(b)に示す排ガス浄化装置110では、保持シール材140の第1の側面141及び第2の側面142が傾いた状態になっている。
【0076】
続いて、排ガス浄化装置の一方の端部に導入管を接続し、かつ、排ガス浄化装置の他方の端部に排出管を接続する接続工程を行う。
図9(c)は、本発明の第一実施形態の接続工程の一例を模式的に示す斜視図である。図9(c)においては、排ガス浄化装置の向きが、図9(b)と逆向きとなっている。
接続工程では、まず、排ガス浄化装置110の端部のうち、保持シール材140の第1の側面141よりも保持シール材140の第2の側面142に近い端部に導入管101を溶接によって接続する。次に、保持シール材140の第2の側面142よりも保持シール材140の第1の側面141に近い端部に排出管102を溶接によって接続する。
なお、溶接の代わりに、ネジや所定の金具等の結合手段を用いてもよい。
【0077】
以上の工程を経ることにより、図2に示した排ガス浄化システム100を製造することができる。
図2に示した排ガス浄化システム100では、上述した接続工程により、排ガス浄化装置110の端部のうち、保持シール材140の第1の側面141よりも保持シール材140の第2の側面142に近い端部が排ガス浄化装置110のガス入口側111となっており、保持シール材140の第2の側面142よりも保持シール材140の第1の側面141に近い端部が排ガス浄化装置110のガス出口側112となっている。
【0078】
以下に、本実施形態の排ガス浄化システム、排ガス浄化システムの製造方法、及び、排ガス浄化システムを用いた排ガス浄化方法の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態の排ガス浄化システムでは、保持シール材の第1の側面には、第1の傾斜面が形成されており、また、保持シール材の第2の側面には、第2の傾斜面が形成されている。そして、第1の傾斜面及び第2の傾斜面により、保持シール材の第1の側面及び第2の側面が、従来の方法で製造された排ガス浄化システムとは逆の方向に傾いている。
本実施形態の排ガス浄化システムに排ガスを流入させた場合、排ガスの流動に伴って、排ガス処理体が排ガス浄化装置のガス出口側に押されることになる。その結果、保持シール材の第1の側面に形成されている第1の傾斜面、及び、保持シール材の第2の側面に形成されている第2の傾斜面が、排ガスの流入方向、つまり排ガス浄化装置のガス出口側に移動することにより、第1の側面及び第2の側面が排ガス処理体の端面と略平行になっていく。
本実施形態の排ガス浄化システムに排ガスを流入させると、保持シール材の第1の側面及び第2の側面が排ガス処理体の端面と略平行になっていくため、面圧有効面積は増加する。その結果、保持シール材の保持力が向上する。このように、本実施形態の排ガス浄化システムでは、従来の方法で製造された排ガス浄化システムとは異なり、排ガス処理体や金属容器に対して充分な面圧が発生する。その結果、排ガスを流入させている間も保持シール材の保持力が低下することを防止することができるため、保持シール材が排ガス処理体を充分に保持することができる。
【0079】
(2)本実施形態の排ガス浄化システムでは、排ガス浄化装置を構成する保持シール材が充分な保持力を発揮することができるため、排ガス処理体と金属容器との間に配設する保持シール材の充填密度(GBD)を小さくすることができる。その結果、排ガス浄化装置を構成する保持シール材の量を低減させることができる。
【0080】
(3)従来の排ガス浄化システムでは、排ガス浄化装置を構成する保持シール材の保持力が充分でなかったため、保持シール材のみで排ガス処理体を充分に保持しにくい。そのため、排ガス処理体を保持するために、金属ネット等の他の保持材を使用する必要がある。しかし、本実施形態の排ガス浄化システムでは、保持シール材のみで排ガス処理体を充分に保持することができるため、金属ネット等の他の保持材を使用することを省略することができる。
【0081】
(4)また、本実施形態の排ガス浄化システムでは、保持シール材の第1の側面に第1の傾斜面が形成されており、かつ、保持シール材の第2の側面に第2の傾斜面が形成されている。そのため、保持シール材を構成する無機繊維が、排ガス浄化装置のガス入口側から内燃機関側へ飛散する量を低減させることができる。
【0082】
(5)本実施形態の排ガス浄化システムの製造方法は、圧入工程と接続工程とを含む。
圧入工程では、上記保持シール材の第2の側面を圧入の進行方向に対して先頭にして、上記保持シール材の第1の側面側から上記保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を押す。また、接続工程では、上記排ガス浄化装置の端部のうち、上記保持シール材の第1の側面よりも上記保持シール材の第2の側面に近い端部に上記導入管を接続し、かつ、上記保持シール材の第2の側面よりも上記保持シール材の第1の側面に近い端部に上記排出管を接続することにより、上記保持シール材の第1の側面よりも上記保持シール材の第2の側面に近い端部をガス入口側とし、かつ、上記保持シール材の第2の側面よりも上記保持シール材の第1の側面に近い端部をガス出口側とする。
このような製造方法によると、都度、保持シール材の側面をカッター等の切断治具で切断する操作を行うことなく、保持シール材の第1の側面に第1の傾斜面を形成し、保持シール材の第2の側面に第2の傾斜面を形成することができる。そのため、保持シール材が充分な保持力を発揮する排ガス浄化装置を備える本発明の排ガス浄化システムを簡便かつ効率的に製造することができる。
【0083】
(6)また、本実施形態の排ガス浄化システムの製造方法では、少ない量の保持シール材を用いて排ガス浄化装置を作製することができ、上記排ガス浄化装置を用いて排ガス浄化システムを製造することができる。
さらに、本実施形態の排ガス浄化システムの製造方法では、金属ネット等の他の保持材を使用することなく、保持シール材のみで排ガス処理体を充分に保持することが可能な排ガス浄化装置を作製することができ、上記排ガス浄化装置を用いて排ガス浄化システムを製造することができる。
【0084】
(7)本実施形態の排ガス浄化方法は、本実施形態の排ガス浄化システムを用いてエンジンから排出された排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、エンジンから排出された排ガスを上記排ガス浄化装置のガス入口側から上記排ガス浄化装置に流入させ、上記排ガス浄化装置のガス出口側から流出させる。
本実施形態の排ガス浄化システムに対して、上記の方向に排ガスを流入させると、排ガス処理体が排ガス浄化装置のガス出口側に押されるため、保持シール材の第1の側面及び第2の側面が排ガス処理体の端面と略平行になっていく。その結果、面圧有効面積が増加するため、排ガスを流入させている間も保持シール材の保持力の低下を防止することができる。
【0085】
(実施例)
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0086】
(実施例1)
(1)保持シール材の作製
アルミナ−シリカ組成を有するアルミナ繊維(平均繊維長:50mm、平均繊維径:5.5μm)からなる素地マットとして、組成比がAl:SiO=72:28である素地マットを用意した。この素地マットに対し、ニードリング処理を施すことで、ニードルマットを作製した。
【0087】
次に、ニードルマットを平面視寸法で、266mm(長さ)×83.5mm(幅)に裁断した。裁断したニードルマットのアルミナ繊維量に対して1.0重量%となるように、スプレーを用いて裁断したニードルマットにバインダ溶液を吹きかけることにより、ニードルマット全体にバインダを均一に付着させた。
なお、バインダ溶液としては、アクリル系樹脂を水に充分に分散させることで、アクリル系ラテックスエマルジョンを調製したものを用いた。
【0088】
その後、バインダを付着させたニードルマットを70kPaの加圧下、140℃の温度で5分間通気乾燥させることにより、図5(a)に示した形状(L=266mm、W=83.5mm、T=7.9mm)を有し、嵩密度が0.177g/cm、目付量が1400g/m、バインダ含有量が1.0重量%である保持シール材を作製した。
【0089】
(2)巻付体の作製
主に多孔質セラミックからなり、直径80mm×長さ95mmの円柱状であって、従来公知の方法で作製されたハニカム構造体(排ガス処理体)を用意した。
【0090】
次いで、工程(1)で作製した保持シール材を、保持シール材の端部の凸部と凹部が互いに勘合し合うように、用意した排ガス処理体の外周に隙間なく巻き付けることにより巻付体を作製した。
作製した巻付体において、保持シール材は、第1の側面、及び、第2の側面とを有する。
【0091】
(3)排ガス浄化装置の作製
まず、ステンレス製の内径88mm×全長115mmの円筒状の金属容器を用意した。
【0092】
巻付体を金属容器へ圧入するため、図9(a)に示した形状の圧入治具を用意した。
用意した圧入治具の短径側端部を金属容器の一端へ嵌め込み、両者を固定した。
【0093】
次に、保持シール材の第2の側面を圧入の進行方向に対して先頭にして、保持シール材の第1の側面側から巻付体を押すことにより、巻付体を金属容器内に圧入した。
具体的には、圧入治具の長径側端部内に巻付体(保持シール材の第2の側面側)を押し当て、保持シール材の第1の側面側から押すことにより、巻付体全体が金属容器内に位置するように巻付体を圧入して排ガス浄化装置を作製した。
作製された排ガス浄化装置における保持シール材の充填密度は、0.35g/cmである。
【0094】
(4)排ガス浄化システムの製造
上記により作製した排ガス浄化装置について、排ガス浄化装置の端部のうち、保持シール材の第1の側面よりも保持シール材の第2の側面に近い端部に導入管を接続し、かつ、保持シール材の第2の側面よりも保持シール材の第1の側面に近い端部に排出管を接続することにより排ガス浄化システムを製造した。
製造した排ガス浄化システムでは、排ガス浄化装置の端部のうち、保持シール材の第1の側面よりも保持シール材の第2の側面に近い端部が排ガス浄化装置のガス入口側であり、保持シール材の第2の側面よりも保持シール材の第1の側面に近い端部が排ガス浄化装置のガス出口側である。
なお、実施例1の排ガス浄化システムは、図2に示した排ガス浄化システム100に相当する。
【0095】
実施例1の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の第1の側面には、第1の傾斜面が形成されており、保持シール材の第2の側面には、第2の傾斜面が形成されている。そして、排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、保持シール材の第1の側面に形成された第1の傾斜面は、保持シール材と排ガス処理体とが接触する第1の内側端点と、保持シール材と金属容器とが接触する第1の外側端点とを有している。保持シール材の第1の内側端点は、保持シール材の第1の外側端点よりも排ガス浄化装置のガス入口側に位置し、かつ、第1の傾斜面は、第1の内側端点から第1の外側端点へ向かっている。
また、排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、保持シール材の第2の側面に形成された第2の傾斜面は、保持シール材と排ガス処理体とが接触する第2の内側端点と、保持シール材と金属容器とが接触する第2の外側端点とを有している。保持シール材の第2の内側端点は、保持シール材の第2の外側端点よりも排ガス浄化装置のガス入口側に位置し、かつ、第2の傾斜面は、第2の内側端点から第2の外側端点へ向かっている。
第1の傾斜面における第1の角度を測定したところ、第1の角度は、61.2°である。
【0096】
(実施例2及び実施例3)
裁断したニードルマットに付着させるバインダの濃度を変更することによって、保持シール材のバインダ含有量を6.0重量%(実施例2)、10重量%(実施例3)に変更した他は、実施例1と同様にして保持シール材を作製した。また、これらの保持シール材を用いて、実施例1と同様にして巻付体を作製し、排ガス浄化装置を作製した。作製した排ガス浄化装置を用いて、実施例1と同様にして導入管及び排出管を接続することにより排ガス浄化システムを製造した。
実施例2及び実施例3の排ガス浄化システムにおける保持シール材の充填密度、バインダ含有量、及び、第1の角度を表1に示す。
【0097】
(実施例4〜8)
排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における保持シール材の充填密度が表1に示す値になるように、保持シール材の嵩密度を変更した他は、実施例1と同様にして保持シール材を作製した。また、これらの保持シール材を用いて、実施例1と同様にして巻付体を作製し、排ガス浄化装置を作製した。作製した排ガス浄化装置を用いて、実施例1と同様にして導入管及び排出管を接続することにより排ガス浄化システムを製造した。
実施例4〜8の排ガス浄化システムにおける保持シール材の充填密度、バインダ含有量、及び、第1の角度を表1に示す。
【0098】
(実施例9)
保持シール材を作製する際に、素地マットに対し、ニードリング処理を施さなかったこと以外は、実施例1と同様にして保持シール材を作製した。また、この保持シール材を用いて、実施例1と同様にして巻付体を作製し、排ガス浄化装置を作製した。作製した排ガス浄化装置を用いて、実施例1と同様にして導入管及び排出管を接続することにより排ガス浄化システムを製造した。
実施例9の排ガス浄化システムにおける保持シール材の充填密度、バインダ含有量、及び、第1の角度を表1に示す。
【0099】
(比較例1)
実施例1で作製した排ガス浄化装置について、実施例1とは反対に、排ガス浄化装置の端部のうち、保持シール材の第2の側面よりも保持シール材の第1の側面に近い端部に導入管を接続し、かつ、保持シール材の第1の側面よりも保持シール材の第2の側面に近い端部に排出管を接続することにより排ガス浄化システムを製造した。
製造した排ガス浄化システムでは、排ガス浄化装置の端部のうち、保持シール材の第2の側面よりも保持シール材の第1の側面に近い端部が排ガス浄化装置のガス入口側であり、保持シール材の第1の側面よりも保持シール材の第2の側面に近い端部が排ガス浄化装置のガス出口側である。
なお、比較例1の排ガス浄化システムは、図21に示した従来の方法により製造された排ガス浄化システム200に相当する。
【0100】
比較例1の排ガス浄化システムにおいても、保持シール材の第1の側面には、第1の傾斜面が形成されており、保持シール材の第2の側面には、第2の傾斜面が形成されている。しかし、比較例1の排ガス浄化システムでは、保持シール材の第1の側面、第2の側面ともに、実施例1の排ガス浄化システムとは逆の方向に傾いている。
【0101】
比較例1の排ガス浄化システムにおける保持シール材の充填密度、バインダ含有量、及び、第1の角度を表1に示す。比較例1の排ガス浄化システムにおける保持シール材の充填密度、及び、バインダ含有量は、実施例1における値と同じである。一方、比較例1の排ガス浄化システムにおける保持シール材の第1の角度は、実施例1における値と同じであるが、角度の向きが実施例1とは逆向きである。そのような場合、表1では、保持シール材の第1の角度をマイナスの値で示すこととする。
【0102】
(比較例2〜7)
実施例2〜7で作製した排ガス浄化装置について、比較例1と同様に、排ガス浄化装置の端部のうち、保持シール材の第2の側面よりも保持シール材の第1の側面に近い端部に導入管を接続し、かつ、保持シール材の第1の側面よりも保持シール材の第2の側面に近い端部に排出管を接続することにより排ガス浄化システムを製造した。
比較例2〜7の排ガス浄化システムにおける保持シール材の充填密度、バインダ含有量、及び、第1の角度を表1に示す。
【0103】
各実施例及び比較例の排ガス浄化システムの特性を評価するために、導入管及び排出管を接続する前の排ガス浄化装置における押し抜き強度の評価、及び、繊維飛散量の評価を行った。
【0104】
(押し抜き強度の評価)
各実施例及び比較例の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置について、巻付体の押し抜き強度を以下の方法により測定し、これを排ガス浄化装置のガス入口側から排ガスを流入させた際の保持シール材の保持力の指標とした。
図10(a)は、押し抜き強度を測定する方法を模式的に示す斜視図である。図10(b)は、押し抜き強度試験機を模式的に示す正面図である。図10(a)及び図10(b)では、各実施例の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の押し抜き強度を測定する方法を示している。
まず、図10(a)及び図10(b)に示すように、各実施例の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置110を、排ガス浄化装置110のガス入口側111を上にして台61の上に載置した。
次に、押し抜き治具62で押し抜き荷重(加圧速度:1mm/min)を排ガス処理体130にかけた。巻付体150(保持シール材140が巻き付けられた排ガス処理体130)が押し抜かれた時点までの押し抜き荷重(N)の最大値を測定した。押し抜き治具62は、アルミニウム製であり、巻付体150と接する荷重部分63の直径は30mmである。
この押し抜き荷重(N)の最大値を保持シール材の面積(cm)で割った値を、保持シール材と金属容器との間の保持力としての押し抜き強度(N/cm)とした。
一方、各比較例の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置については、図11(b)に示すように、各比較例の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置210を、排ガス浄化装置110のガス入口側111を上にして台61の上に載置し、上記と同様の方法により押し抜き強度を測定した。
図11(a)は、各実施例の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の押し抜き強度を測定する場合を模式的に示す断面図であり、図11(b)は、各比較例の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の押し抜き強度を測定する場合を模式的に示す断面図である。
なお、押し抜き強度の測定には、インストロン万能試験機(5582型)を用いた。
実施例1〜9の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の押し抜き強度は、それぞれ4.58N/cm、5.42N/cm、6.38N/cm、2.29N/cm、3.33N/cm、5.58N/cm、6.92N/cm、8.29N/cm、4.20N/cmであった。一方、比較例1〜7の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の押し抜き強度は、それぞれ3.22N/cm、4.11N/cm、5.17N/cm、1.42N/cm、2.11N/cm、4.02N/cm、4.71N/cmであった。
各実施例及び比較例の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の押し抜き強度の測定結果を表1に示す。
【0105】
(繊維飛散量の評価)
実施例1及び比較例1の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置について、繊維飛散量を以下の方法により測定し、これを排ガス浄化装置のガス入口側からの繊維飛散量の指標とした。
図12は、繊維飛散量の測定方法を模式的に示す斜視図である。図12では、実施例1の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の繊維飛散量を測定する方法を示している。
図12に示すように、排ガス処理体130の端面をマスキング処理した排ガス浄化装置110を、排ガス浄化装置110のガス入口側111を下にして紙71の上に載置した。
次に、図12に示すように、ハンマー72を用いて排ガス浄化装置110に衝撃を与え、紙71の上に落下した繊維の重量(mg)を電子天秤を用いて測定した。この繊維の重量を繊維飛散量(mg)とした。
一方、比較例1の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置については、図13(b)に示すように、排ガス処理体230の端面をマスキング処理した排ガス浄化装置210を、排ガス浄化装置210のガス入口側211を下にして紙71の上に載置し、上記と同様の方法により繊維飛散量を測定した。
図13(a)は、実施例1の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の繊維飛散量を測定する場合を模式的に断面図であり、図13(b)は、比較例1の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の繊維飛散量を測定する場合を模式的に示す断面図である。
【0106】
繊維飛散量の測定には、図12に示す衝撃試験機を用いた。ハンマーの持ち上げ角度(図12中、γで示した角度)は、90°とした。このときのハンマーによる衝撃力は、0.24N・mであった。ハンマーによって排ガス浄化装置に衝撃を与える位置は、排ガス浄化装置の長手方向において中央となる位置であって、円周方向において5等分となる位置(5箇所)とした。各位置について2回ずつ、計10回ハンマーによって排ガス浄化装置に衝撃を与えた。
その結果、実施例1の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の繊維飛散量は、0.267mgであった。一方、比較例1の排ガス浄化システムにおける排ガス浄化装置の繊維飛散量は、1.30mgであった。
【0107】
各実施例及び比較例の排ガス浄化システムについて、保持シール材の充填密度、バインダ含有量、第1の角度、及び、ニードリング処理の有無、並びに、押し抜き強度の測定結果をまとめて表1に示した。
図14は、実施例1及び比較例1における押し抜き強度の測定結果のグラフである。
図15は、実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例3における押し抜き強度の測定結果から、保持シール材のバインダ含有量と押し抜き強度との関係を示すグラフである。
図16は、実施例1及び実施例4〜実施例8、並びに、比較例1及び比較例4〜比較例7における押し抜き強度の測定結果から、保持シール材の充填密度と押し抜き強度との関係を示すグラフである。
図17は、実施例1及び実施例9における押し抜き強度の測定結果のグラフである。
図18は、実施例1及び比較例1における繊維飛散量の測定結果のグラフである。
【0108】
【表1】

【0109】
また、実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例3における押し抜き強度の測定結果から、保持シール材のバインダ含有量が1.0重量%、6.0重量%及び10重量%であるときの押し抜き強度の増加率を求めた。押し抜き強度の増加率は、保持シール材のバインダ含有量が同じである実施例及び比較例に対して、「押し抜き強度の増加率(%)={実施例における押し抜き強度(N/cm)−比較例における押し抜き強度(N/cm)}/比較例における押し抜き強度(N/cm)×100」により求めた。その結果を表2に示す。
また、図19は、保持シール材のバインダ含有量と押し抜き強度の増加率との関係を示すグラフである。
【0110】
【表2】

【0111】
表1及び図14に示すように、保持シール材に形成された第1の傾斜面における第1の角度がプラスの値を示す実施例1の場合、押し抜き強度は4.6N/cmであった。一方、保持シール材に形成された第1の傾斜面における第1の角度がマイナスの値を示す比較例1の場合、押し抜き強度は3.2N/cmであった。この結果より、排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の第1の側面を従来の方法で製造された排ガス浄化システムとは逆の方向に傾けることにより、排ガスの流入に伴って面圧有効面積が増加するため、保持シール材の保持力が向上すると考えられる。
【0112】
次に、保持シール材のバインダ含有量が、押し抜き強度に与える影響を考える。
表1及び図15に示すように、いずれのバインダ含有量においても、実施例における押し抜き強度は、比較例における押し抜き強度よりも大きい値であった。
これらの結果より、排ガス浄化装置を構成する保持シール材にバインダを付与することにより、保持シール材の保持力を向上させることはできると考えられる。また、排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の第1の側面を従来の方法で製造された排ガス浄化システムとは逆の方向に傾けることにより、保持シール材の保持力が向上する効果は、バインダ含有量に関係なく発現すると考えられる。
【0113】
さらに、図15より、押し抜き強度は、保持シール材のバインダ含有量が増加するとともに向上することが分かった。
一方、図19より、押し抜き強度の増加率は、保持シール材のバインダ含有量が増加すると減少することが分かった。
これらの結果より、排ガス浄化装置を構成する保持シール材にバインダを付与することにより、保持シール材の保持力を向上させることはできるものの、保持シール材の保持力を向上させる効果は、バインダ含有量が少ない方が大きいと考えられる。
【0114】
次に、保持シール材の充填密度が、押し抜き強度に与える影響を考える。
表1及び図16に示すように、すべての保持シール材の充填密度において、実施例における押し抜き強度の方が、比較例における押し抜き強度よりも大きい値であった。
これらの結果より、排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の第1の側面を従来の方法で製造された排ガス浄化システムとは逆の方向に傾けることにより、保持シール材の保持力が向上する効果は、保持シール材の充填密度に関係なく発現すると考えられる。
また、図16より、押し抜き強度は、保持シール材の充填密度が大きくなるほど大きくなると考えられる。
【0115】
続いて、ニードリング処理が押し抜き強度に与える影響を考える。
図17に示すように、保持シール材にニードリング処理を施した実施例1における押し抜き強度の方が、保持シール材にニードリング処理を施していない実施例9における押し抜き強度よりも大きい値であった。この結果より、排ガス浄化装置を構成する保持シール材にニードリング処理を施すことによって、保持シール材を構成する無機繊維が、保持シール材の表面に対して垂直な方向に配向するため、保持シール材の保持力がより向上すると考えられる。
【0116】
続いて、繊維飛散量について考える。
図18より、実施例1における繊維飛散量は、比較例1における繊維飛散量よりも極めて少ない。この結果より、排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の第1の側面を従来の方法で製造された排ガス浄化システムとは逆の方向に傾けることにより、保持シール材を構成する無機繊維が、保持シール材の保持力によって拘束されるため、排ガス浄化装置のガス入口側から内燃機関側へ飛散する量を低減させることができると考えられる。
【0117】
(その他の実施形態)
本発明の排ガス浄化システムにおいては、排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置における金属容器に、排ガス浄化装置のガス入口側となるガス入口側と排ガス浄化装置のガス出口側となるガス出口側との区別があってもよい。
【0118】
排ガス浄化装置を構成する金属容器にガス入口側とガス出口側との区別がある場合には、圧入工程の前に、金属容器に対して巻付体をどの方向から圧入するかを定めることにより、保持シール材の第1の側面に形成された第1の傾斜面や、保持シール材の第2の側面に形成された第2の傾斜面を有する排ガス浄化装置を作製することができ、上記排ガス浄化装置を用いて排ガス浄化システムを製造することができる。
【0119】
以下、排ガス浄化装置を構成する金属容器にガス入口側とガス出口側との区別がある場合における、本発明の排ガス浄化システムを構成する排ガス浄化装置を作製する方法について、図20(a)〜図20(c)を参照しながら説明する。
排ガス浄化装置を構成する金属容器にガス入口側とガス出口側との区別がある場合、本発明の第一実施形態で説明した圧入工程の前に、保持シール材の第1の側面が金属容器のガス出口側に位置し、かつ、保持シール材の第2の側面が金属容器のガス入口側に位置するように、保持シール材の第2の側面が圧入の進行方向に対して先頭になるようにして、保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を配置する配置工程をさらに含む。
【0120】
図20(a)は、本発明の実施形態に係る配置工程の一例を模式的に示す斜視図である。図20(a)では、圧入方向を矢印Yで表している。
図20(a)に示すように、まず、排ガス処理体30の周囲に保持シール材40が巻き付けられた巻付体50を用意する。巻付体を製造する方法については、本発明の第一実施形態で既に説明しているので、ここでは省略する。
【0121】
次に、巻付体を金属容器に対して所定の向きに配置する配置工程を行う。
配置工程では、保持シール材40の第1の側面41が金属容器20のガス出口側22に位置し、かつ、保持シール材40の第2の側面42が金属容器20のガス入口側21に位置するように、保持シール材40の第2の側面42が圧入の進行方向に対して先頭になるようにして、巻付体50を配置する。
【0122】
続いて、上記の位置に配置した巻付体を金属容器に圧入する圧入工程を行う。
図20(b)は、本発明の実施形態に係る圧入工程の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視断面図である。図20(b)では、圧入方向を矢印Yで表している。
圧入工程では、保持シール材40の第1の側面41側から巻付体50を押すことにより、巻付体50を金属容器20内の所定の位置まで圧入する。
巻付体を金属容器に圧入する方法としては、例えば、本発明の第一実施形態で説明した圧入治具を用いる方法等が挙げられる。
【0123】
以上の工程を経ることにより、排ガス浄化装置を作製することができる。
図20(c)は、図20(a)に示した配置工程、及び、図20(b)に示した圧入工程を経ることにより作製された排ガス浄化装置を模式的に示す一部切り欠き斜視断面図である。
作製された排ガス浄化装置10において、排ガス処理体30は、金属容器20のガス入口側21に位置する入口側端面31と、金属容器20のガス出口側22に位置する出口側端面32とを有している。
巻付体50を金属容器20の内部に圧入する際に、保持シール材40の排ガス処理体30と接触している第一主面45aと、保持シール材40の金属容器20と接触している第二主面45bとの間でせん断力が負荷され、第一主面45a及び第二主面45bの互いの位置がずれて保持シール材40が変形する。
その結果、図20(c)に示す排ガス浄化装置10では、保持シール材40の第1の側面41及び第2の側面42が傾いた状態になっている。
【0124】
以上の工程により作製された排ガス浄化装置について、排ガス浄化装置を構成する金属容器のガス入口側に導入管を接続し、かつ、排ガス浄化装置を構成する金属容器のガス出口側に排出管を接続することにより、本発明の構成を有する排ガス浄化システムを製造することができる。
【0125】
本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムでは、保持シール材の第1の側面に第1の傾斜面が形成され、保持シール材の第2の側面に第2の傾斜面が形成されている。本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の第2の側面に第2の傾斜面が形成されていることが好ましいが、保持シール材の第2の側面に第2の傾斜面は必ずしも形成されていなくてもよい。
保持シール材の第1の側面に第1の傾斜面を形成し、かつ、保持シール材の第2の側面に第2の傾斜面を形成しない方法としては、例えば、保持シール材の側面をカッター等の切断治具で切断する方法等が挙げられる。
【0126】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材に形成される第1の傾斜面及び第2の傾斜面は、保持シール材の内側端点と外側端点とが本発明の第一実施形態で説明した位置関係を満たす限り、その断面形状は特に限定されず、例えば、直線、曲線、折れ線等、任意の形状であってよい。
【0127】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材に形成される第1の傾斜面は、保持シール材の第1の側面の全部に形成されている必要はない。例えば、保持シール材の第1の側面の一部をカッター等の切断治具で切断することにより、保持シール材の第1の側面の一部にのみ第1の傾斜面を形成することができる。同様に、本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材に形成される第2の傾斜面は、保持シール材の第2の側面の全部に形成されている必要はなく、保持シール材の第2の側面の一部にのみ形成されていてもよい。
【0128】
本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムでは、保持シール材の幅は、排ガス処理体の長手方向の長さよりも短い。
本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の幅は、特に限定されず、排ガス処理体の長手方向の長さと略同一でもよいし、排ガス処理体の長手方向の長さよりも長くてもよい。
【0129】
なお、本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の幅が、排ガス処理体の長手方向の長さよりも長い場合、保持シール材の側面には、保持シール材と排ガス処理体とが接触する第1の内側端点や第2の内側端点は存在しないこととなる。しかし、そのような場合であっても、排ガス処理体の長手方向の長さが、保持シール材の長手方向の長さよりも長いと仮定した場合に、両者が接触する点をそれぞれ第1の内側端点、及び、第2の内側端点ということとする。
【0130】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の端面に形成される凹部及び凸部の形状は、凹部と凸部とが嵌合することができる形状であれば特に限定されないが、一組の凹部及び凸部からなる場合には、一方の端面の一部に幅20mm×長さ20mm〜幅100mm×長さ100mmの大きさに渡って突出した凸部が形成されており、他方の端面の一部にそれに嵌合する形状の凹部が形成されていることが望ましい。このような凹部及び凸部の形状を有する保持シール材を用いて排ガス浄化システムを製造する場合には、保持シール材で排ガス処理体を確実に保持することができるので、排ガス浄化システムの取り扱い性に優れることとなる。
また、上記保持シール材の端面には、互いに嵌合する複数の凹部及び凸部が形成されていてもよいし、凹部及び凸部が形成されていなくてもよい。
【0131】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材を構成する無機繊維としては、上述したアルミナとシリカとを含む無機繊維に限られず、その他の無機化合物を含む無機繊維であってもよい。
また、アルミナ及びシリカのうち、アルミナのみを含む無機繊維であってもよいし、シリカのみを含む無機繊維であってもよい。
アルミナとシリカとを含む無機繊維の組成比としては、重量比で、Al:SiO=60:40〜80:20であることが望ましく、Al:SiO=70:30〜74:26であることがより望ましい。
アルミナ及びシリカのうち、アルミナのみを含む無機繊維には、アルミナ以外に、例えば、CaO、MgO、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
アルミナ及びシリカのうち、シリカのみを含む無機繊維には、シリカ以外に、例えば、CaO、MgO、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
【0132】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材を構成する無機繊維の平均繊維長は、0.5〜10cmであることが望ましく、1〜8cmであることがより望ましい。
【0133】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材を構成する無機繊維の平均繊維径は、1〜20μmであることが望ましく、3〜10μmであることがより望ましい。
【0134】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の目付量(単位面積あたりの重量)は、特に限定されないが、500〜5000g/mであることが望ましく、1000〜4000g/mであることがより望ましい。
また、本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の嵩密度(巻付体を金属容器に圧入する前の保持シール材の嵩密度)についても、特に限定されないが、0.10〜0.30g/cmであることが望ましい。
【0135】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の厚さは、特に限定されないが、6〜31mmであることが望ましく、8〜20mmであることがより望ましい。
【0136】
本発明の第一実施形態の排ガス浄化システムでは、保持シール材が、ニードリング処理が施されたニードルマットである。本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材には、ニードリング処理が施されていることが好ましいが、ニードリング処理が施されていなくてもよい。
また、保持シール材にニードリング処理が施されている場合、ニードリング処理は、無機繊維から構成された素地マット全体に対して施されていてもよいし、素地マットの一部に施されていてもよい。
【0137】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材にバインダが付与されている場合、保持シール材を作製する際に用いられるバインダ溶液に含まれる有機バインダとしては、例えば、アクリル系樹脂、アクリルゴム等のゴム、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
これらの中では、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが特に好ましい。
また、有機バインダの配合量は、無機繊維と有機バインダと無機バインダとの合計に対して15重量%以下であることが望ましい。
【0138】
上記バインダ溶液には、上述した有機バインダが複数種類含まれていてもよい。
また、上記バインダ溶液としては、上述した有機バインダを水に分散させたラテックスの他に、上述した有機バインダを水又は有機溶媒に溶解させた溶液等であってもよい。
【0139】
上記バインダ溶液に無機バインダが含まれる場合、無機バインダとしては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられる。
また、無機バインダの配合量は、無機繊維同士を結合することができるのであれば、特に限定されない。
【0140】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材にニードリング処理が施された後、保持シール材にバインダ溶液を含浸させることが好ましい。保持シール材に付与されたバインダによって、保持シール材を構成する無機繊維同士が固着され、その結果、ニードル痕の向きが維持されやすくなるためである。
【0141】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、保持シール材の枚数は、特に限定されず、1枚の保持シール材であってもよいし、互いに結合された複数枚の保持シール材であってもよい。
複数枚の保持シール材を結合する方法としては、特に限定されず、例えば、ミシン縫いで保持シール材同士を縫合したり、粘着テープや、接着材等で保持シール材同士を接着する方法等が挙げられる。
【0142】
本発明の排ガス浄化システムを構成する金属容器の材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
【0143】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、金属容器の形状は、略円筒型形状の他、クラムシェル型形状、ダウンサイジング型形状等を好適に用いることができる。
【0144】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、排ガス処理体の形状は、柱状であれば特に限定されず、略円柱状の他に、例えば、略楕円柱状や略角柱状等任意の形状、大きさのものであってもよい。
【0145】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、排ガス処理体は、図6(a)に示したような一体的に形成されたものであってもよい。また、排ガス処理体は、炭化ケイ素等からなり、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された形状のハニカム焼成体を、主にセラミックを含む接着材層を介して複数個結束してなるものであってもよい。
【0146】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、排ガス処理体には、触媒を担持させてもよい。このような触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、金属酸化物等が挙げられる。これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0147】
また、上記金属酸化物としては、PMの燃焼温度を低下させることができるものであれば特に限定されず、例えば、CeO、ZrO、FeO、Fe、CuO、CuO、Mn、MnO、組成式A1−nCO(式中、AはLa、Nd、Sm、Eu、Gd又はYであり、Bはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、CはMn、Co、Fe又はNiであり、0≦n≦1である)で表される複合酸化物等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよいが、少なくともCeOを含むものであることが望ましい。
このような金属酸化物を排ガス処理体に担持させることにより、PMの燃焼温度を低下させることができる。
【0148】
上記排ガス処理体に触媒を担持させる方法としては、例えば、触媒が含まれた溶液を排ガス処理体に含浸させた後に加熱する方法や、排ガス処理体の表面にアルミナ膜からなる触媒担持層を形成し、このアルミナ膜に触媒を担持させる方法等が挙げられる。
アルミナ膜を形成する方法としては、例えば、Al(NO等のアルミニウムを含有する金属化合物溶液を排ガス処理体に含浸させて加熱する方法、アルミナ粉末を含有する溶液を排ガス処理体に含浸させて加熱する方法等が挙げられる。
また、アルミナ膜に触媒を担持させる方法としては、例えば、貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は、金属酸化物を含む溶液等をアルミナ膜が形成された排ガス処理体に含浸させて加熱する方法等が挙げられる。
【0149】
本発明の排ガス浄化システムにおいて、排ガス処理体がハニカム構造体である場合、セルに封止材が設けられずに、セルの端部が封止されていなくてもよい。この場合、排ガス処理体は、白金等の触媒を担持させることによって、排ガス中に含まれるCO、HC又はNOx等の有害なガス成分を浄化する触媒担体として機能する。
【符号の説明】
【0150】
10、110、210、310 排ガス浄化装置
20、120、220、320 金属容器
21 金属容器のガス入口側
22 金属容器のガス出口側
30、130、230、330 排ガス処理体
40、140、240、340 保持シール材
41、141、241、341 保持シール材の第1の側面
42、142、242、342 保持シール材の第2の側面
143a 保持シール材の第1の内側端点
143b 保持シール材の第1の外側端点
144a 保持シール材の第2の内側端点
144b 保持シール材の第2の外側端点
146 ニードル痕
100、200、300 排ガス浄化システム
101、201、301 導入管
102、202、302 排出管
111、211 排ガス浄化装置のガス入口側
112、212 排ガス浄化装置のガス出口側
、G 排ガス
α 第1の角度
β 第2の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属容器、前記金属容器内に収容された排ガス処理体、並びに、前記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ前記排ガス処理体及び前記金属容器の間に配設された保持シール材を備えた排ガス浄化装置と、
前記排ガス浄化装置の一方の端部に接続され、排ガスを前記排ガス浄化装置に導入するための導入管と、
前記排ガス浄化装置の他方の端部に接続され、前記排ガス浄化装置を通過した前記排ガスを外部に排出するための排出管とからなる排ガス浄化システムであって、
前記排ガス浄化装置は、前記導入管に接続されたガス入口側と、前記排出管に接続されたガス出口側とを有し、
前記保持シール材は、無機繊維を含むマット状であるとともに、前記排ガス浄化装置のガス出口側に位置する第1の側面と、前記排ガス浄化装置のガス入口側に位置する第2の側面とを有し、
前記保持シール材の第1の側面には、第1の傾斜面が形成されており、
前記排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、前記第1の傾斜面は、前記保持シール材と前記排ガス処理体とが接触する第1の内側端点と、前記保持シール材と前記金属容器とが接触する第1の外側端点とを有し、
前記第1の内側端点は、前記第1の外側端点よりも前記排ガス浄化装置のガス入口側に位置し、
前記第1の傾斜面は、前記第1の内側端点から前記第1の外側端点へ向かい、かつ、
前記第1の傾斜面は、前記排ガス処理体の端面に対して傾斜していることを特徴とする排ガス浄化システム。
【請求項2】
前記保持シール材の第2の側面には、第2の傾斜面が形成されており、
前記排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、前記第2の傾斜面は、前記保持シール材と前記排ガス処理体とが接触する第2の内側端点と、前記保持シール材と前記金属容器とが接触する第2の外側端点とを有し、
前記第2の内側端点は、前記第2の外側端点よりも前記排ガス浄化装置のガス入口側に位置し、
前記第2の傾斜面は、前記第2の内側端点から前記第2の外側端点へ向かい、かつ、
前記第2の傾斜面は、前記排ガス処理体の端面に対して傾斜している請求項1に記載の排ガス浄化システム。
【請求項3】
前記排ガス浄化装置の長手方向に平行な断面において、前記第1の内側端点及び前記第1の外側端点を結ぶ線分と、前記金属容器の内周とにより形成される第1の角度は、25〜89.5°である請求項1又は2に記載の排ガス浄化システム。
【請求項4】
前記保持シール材は、ニードリング処理によって形成された複数のニードル痕を有する請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス浄化システム。
【請求項5】
前記複数のニードル痕は、前記保持シール材の厚さ方向に対して斜め方向に形成されている請求項4に記載の排ガス浄化システム。
【請求項6】
前記保持シール材には、バインダが付与されている請求項1〜5のいずれかに記載の排ガス浄化システム。
【請求項7】
前記保持シール材に付与されたバインダの量は、10重量%以下である請求項6に記載の排ガス浄化システム。
【請求項8】
前記金属容器には、前記排ガス浄化装置のガス入口側となるガス入口側と前記排ガス浄化装置のガス出口側となるガス出口側との区別がある請求項1〜7のいずれかに記載の排ガス浄化システム。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の排ガス浄化システムの製造方法であって、
周囲に保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を金属容器に圧入することにより、排ガス浄化装置を作製する圧入工程と、
排ガスを前記排ガス浄化装置に導入するための導入管を前記排ガス浄化装置の一方の端部に接続し、かつ、前記排ガス浄化装置を通過した前記排ガスを外部に排出するための排出管を前記排ガス浄化装置の他方の端部に接続する接続工程とを含み、
前記圧入工程では、前記保持シール材の第2の側面を圧入の進行方向に対して先頭にして、前記保持シール材の第1の側面側から前記保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を押し、
前記接続工程では、前記排ガス浄化装置の端部のうち、前記保持シール材の第1の側面よりも前記保持シール材の第2の側面に近い端部に前記導入管を接続し、かつ、前記保持シール材の第2の側面よりも前記保持シール材の第1の側面に近い端部に前記排出管を接続することにより、前記保持シール材の第1の側面よりも前記保持シール材の第2の側面に近い端部を排ガス浄化装置のガス入口側とし、かつ、前記保持シール材の第2の側面よりも前記保持シール材の第1の側面に近い端部を排ガス浄化装置のガス出口側とすることを特徴とする排ガス浄化システムの製造方法。
【請求項10】
前記金属容器には、前記排ガス浄化装置のガス入口側となるガス入口側と前記排ガス浄化装置のガス出口側となるガス出口側との区別があり、
前記圧入工程の前に、前記保持シール材の第1の側面が前記金属容器のガス出口側に位置し、かつ、前記保持シール材の第2の側面が前記金属容器のガス入口側に位置するように、前記保持シール材の第2の側面が圧入の進行方向に対して先頭になるようにして、前記保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を配置する配置工程をさらに含む請求項9に記載の排ガス浄化システムの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の排ガス浄化システムを用いてエンジンから排出された排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、
エンジンから排出された排ガスを前記排ガス浄化装置のガス入口側から前記排ガス浄化装置に流入させ、前記排ガス浄化装置のガス出口側から流出させることを特徴とする排ガス浄化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2011−226444(P2011−226444A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99200(P2010−99200)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】