説明

排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法

【課題】内燃機関の排気ガス浄化システムにおいて、NOx吸蔵還元型触媒を通過した排気ガスのDPF又は触媒付きDPFへの流量を抑制して、PM再生温度を適温に維持しながら、NOx吸蔵還元型触媒の脱硫制御とDPF又は触媒付きDPFのPM再生処理とを同時に並行して行うことができる排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法を提供する。
【解決手段】内燃機関10の排気通路16にNOx吸蔵還元型触媒を備えた上流側排気ガス処理ユニット18a,18bと、DPF又は触媒付きDPFを備えた下流側排気ガス処理ユニット18cを設け、前記上流側排気ガス処理ユニット18a,18bを通過する排気ガスG1の流量と、この排気ガスG1の内で、更に前記下流側排気ガス処理ユニット18cを通過する排気ガスG2の流量とを調整可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に上流側から順にNOx吸蔵還元型触媒(LNT)とDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)又は触媒付きDPFを備えた排気ガス浄化システムにおいて、排気ガスの流量調整を行うことにより、NOx吸蔵還元型触媒の脱硫制御とDPF又は触媒付きDPFのPM再生処理とを同時に並行して行うことができる排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガスを浄化するための装置の一つに、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)の浄化のためのNOx浄化触媒装置がある。このNOx浄化触媒装置の一つに、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を貴金属と共に担持して、酸素過剰な排気ガス中のNO(一酸化窒素)を酸化して硝酸塩として触媒上に吸着させて、NOxを浄化するNOx吸蔵還元型触媒(LNT:リーンNOxトラップ)を担持した装置がある。
【0003】
このNOx吸蔵還元型触媒は、排気ガスが酸素過剰なリーン空燃比状態では、NOxを吸蔵し、酸素濃度が低いか、空気過剰率が1より小さいリッチ空燃比状態では、吸蔵したNOxを放出すると共に、この放出されたNOxを還元雰囲気中で還元して、NOxを低減する。
【0004】
このNOx吸蔵還元型触媒は、ディーゼルエンジンのようなリーン空燃比状態が継続すると、NOx吸蔵材であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の殆どが硝酸塩に変化し、触媒上に吸着させた硝酸塩の量が一定量を超えるとNOx吸蔵機能を失い、NOx浄化性能が低下する。そこで、NOx浄化性能を維持するために、NOx吸蔵能力が飽和に達する前に、酸素濃度に対して燃料由来の還元ガス濃度を増加して排気ガス中の酸素濃度を下げて、一時的に空気過剰率λが1以下のリッチ空燃比状態になるようにして、NOx吸蔵材からNOxを放出させるNOx再生処理を行っている。この再生処理は、一定の時間間隔やNOx吸蔵量の蓄積量を監視して、NOx吸蔵能力が飽和に近づいたときに行っている。
【0005】
一方、燃料中や潤滑油中に硫黄成分が含まれており、この硫黄成分は二酸化硫黄(SO2)として、内燃機関の筒内(シリンダ内)の燃焼室から排気ガス中に排出された後に、酸化触媒(DOC)やNOx吸蔵還元型触媒(LNT)で三酸化硫黄(SO3)に酸化されて硫黄化合物となる。この硫黄化合物が硫酸塩としてNOx吸蔵還元型触媒上に吸着されるために、NOx吸蔵材のNOx吸蔵能力が低下するという硫黄被毒の問題がある。
この硫黄被毒に対してNOx吸蔵材から硫黄成分を除去する脱硫処理を行ってNOx吸蔵材を再生する必要がある。そのために、NOx吸蔵還元型触媒を700℃程度まで昇温させて、この温度に維持しながら排気ガス中に含まれる燃料量に対して酸素濃度を低下させている。
【0006】
このNOx再生処理や脱硫処理のための制御では、エンジンの出力を低下させない程度に、シリンダ内への流入空気量を減らして酸素濃度を下げる吸気制御に加えて、排気ガスの一部を再び燃焼室内に戻すEGR(排気再循環)制御を行っている。また、更に、NOx吸蔵還元型触媒に流入する排気ガス中の酸素濃度を更に下げる必要がある場合には、エンジンのシリンダ内燃料噴射制御において、ピストンの膨張行程において燃料を添加するポスト噴射制御や、NOx吸蔵還元型触媒の上流側の排気通路に燃料を直接噴射して、NOx吸蔵還元型触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチにする排気管内直接燃料噴射制御等を行っている。
【0007】
一方、PM(粒子状物質:パティキュレートマター)を捕集するために、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)や触媒付きDPF(SCF)も用いられている。このDPFや触媒付きDPFのフィルタは多孔質のセラミックのハニカムのチャンネルの入口と出口を交互に目封じしたモノリスハニカム型ウォールフロータイプのフィルタ等で形成される。触媒付きDPFでは、このフィルタの部分に白金や酸化セリウム等の触媒を担持する。
【0008】
このDPFや触媒付きDPFにより、排気ガス中のPMは、多孔質のセラミックの壁で捕集される。このDPFや触媒付きDPFでは、捕集したPMによるフィルタが目詰まりしてくると、PM再生を行っている。このPM再生では、排気通路中に、ポスト噴射制御や排気管内直接燃料噴射制御等により、排気通路中に燃料を供給して、この燃料を、上流側に配置した酸化触媒や、フィルタに担持した触媒により、酸化して排気ガス又は触媒を昇温し、PMの燃焼を行っている。
【0009】
NOx吸蔵還元型触媒(LNT)の後段にDPFや触媒付きDPFが配置されている場合には、脱硫処理においてNOx吸蔵還元型触媒を加熱する過程で高温の排気ガスが、下流側のDPFや触媒付きDPFに流入するので、NOx吸蔵還元型触媒と同時にDPFや触媒付きDPFも加熱できる。
【0010】
これに関連して、内燃機関の排気通路に上流側から酸化触媒、NOxトラップ、粒子フィルタを設けた装置において、フィルタの再生時にNOxトラップの硫黄被毒量を調べて、ある程度進捗していればフィルタの再生操作の終わりに脱硫操作を開始し、また、NOxトラップの飽和率とフィルタの閉塞率のいずれかが閾値を超えた場合にトラップの脱硫操作の終わりに粒子フィルタの再生を実施する酸化窒素トラップの脱硫および粒子フィルタの再生を目的とする方法および装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
また、内燃機関の排気通路の上流側から、燃料添加装置、電気加熱式触媒(EHC)、ターボ過給機、NOx吸蔵還元型触媒(NSR)、NOx及びPMのトラップフィルタ(DPNR)を設け、S再生(脱量処理)又はPM再生の開始後に所定の期間の低負荷運転が継続したときに、EHCに通電し、S再生又はPM再生を継続する内燃機関の排気浄化制御装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
しかしながら、NOx吸蔵還元型触媒の触媒温度が700℃以上に加熱されていると、下流側のDPFや触媒付きDPFは、このDPFや触媒付きDPFに捕集されたPMの発熱反応により更に高温となる。この高温状態ではDPFや触媒付きDPFのフィルタが溶損される可能性が極めて高くなるという問題がある。
【特許文献1】特開2005−155629公報
【特許文献2】特開2008−106685公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の排気通路に上流側から順にNOx吸蔵還元型触媒とDPF又は触媒付きDPFを備えた排気ガス浄化システムにおいて、NOx吸蔵還元型触媒を通過した排気ガスのDPF又は触媒付きDPFへの流量を抑制して、DPF又は触媒付きDPFへの酸素供給量と、DPF又は触媒付きDPFからの放熱量を減少して、PM再生温度を適温に維持しながら、NOx吸蔵還元型触媒の脱硫制御とDPF又は触媒付きDPFのPM再生処理とを同時に並行して行うことができる排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の排気ガス浄化システムは、内燃機関の排気通路にNOx吸蔵還元型触媒を備えた上流側排気ガス処理ユニットと、ディーゼルパティキュレートフィルタ又は触媒付きディーゼルパティキュレートフィルタを備えた下流側排気ガス処理ユニットを設け、前記上流側排気ガス処理ユニットを通過する排気ガスの流量と、前記上流側排気ガス処理ユニットを通過した排気ガスの内で、更に前記下流側排気ガス処理ユニットを通過する排気ガスの流量とを調整可能に構成する。
【0015】
この構成によれば、排気ガスの流量調整を行うことにより、NOx吸蔵還元型触媒を通過する排気ガスの流量と、NOx吸蔵還元型触媒を通過した排気ガスのDPF又は触媒付きDPFへの流量を調整して、DPF又は触媒付きDPFからの放熱と酸素供給量を同時に減少してPM再生温度を適温に維持できるので、NOx吸蔵還元型触媒の脱硫制御とDPF又は触媒付きDPFのPM再生処理とを同時に並行して効率よく行うことができる。特に、DPF又は触媒付きDPFが過熱されるのを防止することができ、この過熱によるフィルタの溶損を回避できる。
【0016】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記排気通路に第1バイパス通路を設け、該第1バイパス通路に前記上流側排気ガス処理ユニットと前記下流側排気ガス処理ユニットを上流側から順に設けて、更に、前記上流側排気ガス処理ユニットの下流側で、かつ、前記下流側排気ガス処理ユニットの上流側の前記第1バイパス通路と前記排気通路を接続する第2バイパス通路を設け、該第2バイパス通路が前記第1バイパス通路と分岐する部分に第1流量制御弁を設け、前記第2バイパス通路が前記排気通路に合流する部分に第2流量制御弁を設けて構成する。
【0017】
この構成によれば、比較的簡単な構成で、第1流量調整制御弁により上流側排気ガス処理ユニットを通過する排気ガスの流量を調整でき、第2流量調整制御弁により下流側排気ガス処理ユニットを通過する排気ガスの流量を調整できる。
【0018】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、ポスト噴射又は排気管内直接燃料噴射による排気管内への燃料供給の際に、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記触媒付きディーゼルパティキュレートフィルタのフィルタの温度を指標するフィルタ温度指標温度が第1閾値を超えるまでは、排気ガスの全部を、前記上流側排気ガス処理ユニットと前記下流側排気ガス処理ユニットを通過させ、前記フィルタ温度指標温度が前記第1閾値を越えたときには、排気ガスの一部を、前記上流側排気ガス処理ユニットと前記下流側排気ガス処理ユニットを迂回させると共に、前記上流側排気ガス処理ユニットを通過した排気ガスの内の一部を、下流側排気ガス処理ユニットを迂回させるように構成する。
【0019】
このフィルタ温度指標温度は、フィルタの温度を直接計測できる場合にはフィルタ温度に対応する温度であるが、一般的にフィルタ温度を直接測定することは難しいため、フィルタに流入する排気ガス温度、言い換えれば、下流側排気ガス処理ユニットの入口側に設けた排気ガス温度センサで検出される排気ガス温度で代用されることが多い。このフィルタ温度指標温度は、フィルタ温度と対応する温度であれば良く、下流側排気ガス処理ユニットの出口側に設けた排気ガス温度センサで検出される排気ガス温度で代用してもよい。
【0020】
また、第1閾値は、PM再生処理過程でDPF又は触媒付きDPFのフィルタの溶損を防止しつつ、NOx吸蔵還元型触媒の脱硫処理とフィルタのPM再生処理をするための温度制御に使用する温度であり、フィルタ温度指標温度に対応して決まる温度である。具体的には、NOx吸蔵還元型触媒が脱硫可能な温度(例えば、700℃付近)で、かつ、フィルタがPM燃焼可能な温度(例えば、600℃付近)に同時到達できる温度の上限値(フィルタの入口側の排気ガスの温度に対応する温度としては、例えば、500℃)として設定される。
【0021】
この構成によれば、フィルタ温度指標温度が第1閾値を超えたときには下流側排気ガス処理ユニットに流入する排気ガスの流量を減少して、下流側排気ガス処理ユニットに流入する排気ガス中の酸素量を減少してPMの燃料反応速度を低下させる。これにより、下流側排気ガス処理ユニットが過熱状態になるのを防止できる。
【0022】
また、上記の目的を達成するための本発明の排気ガス浄化方法は、上記の排気ガス浄化システムにおいて、ポスト噴射又は排気管内直接燃料噴射による排気管内への燃料供給の際に、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記触媒付きディーゼルパティキュレートフィルタのフィルタの温度を指標するフィルタ温度指標温度が第1閾値を超えるまでは、排気ガスの全部を、前記上流側排気ガス処理ユニットと前記下流側排気ガス処理ユニットを通過させ、前記フィルタ温度指標温度が前記第1閾値を越えたときには、排気ガスの一部を、前記上流側排気ガス処理ユニットと前記下流側排気ガス処理ユニットを迂回させると共に、前記上流側排気ガス処理ユニットを通過した排気ガスの内の一部を、下流側排気ガス処理ユニットを迂回させるように構成する。このフィルタ温度指標温度と第1閾値は、上記のフィルタ温度指標温度と第1閾値と同じである。
【0023】
この方法によれば、排気ガスの流量調整を行うことにより、フィルタ温度指標温度が第1閾値を超えたときには下流側排気ガス処理ユニットに流入する排気ガスの流量を減少して、下流側排気ガス処理ユニットが過熱状態になるのを防止できる。また、下流側排気ガス処理ユニットへの酸素供給量と下流側排気ガス処理ユニットからの放熱量を調整してPM再生温度を適温に維持でき、NOx吸蔵還元型触媒の脱硫制御とDPF又は触媒付きDPFのPM再生処理とを同時に並行して効率よく行うことができる。
【0024】
上記の排気ガス浄化方法において、ポスト噴射又は排気管内直接燃料噴射による排気管内への燃料供給の際に、前記フィルタ温度指標温度が、前記第1閾値より高くなってから、前記第1閾値より低い第2閾値より低くなったときには、前記上流側排気ガス処理ユニットを通過させる排気ガスの流量を増加すると共に、前記上流側排気ガス処理ユニットを通過した排気ガスの内で、前記下流側排気ガス処理ユニットを通過させる排気ガスの流量を増加するように構成する。
【0025】
この第2閾値は、PM再生処理過程でDPF又は触媒付きDPFのフィルタの溶損を防止しつつ、NOx吸蔵還元型触媒の脱硫処理とフィルタのPM再生処理をするための温度制御に使用する温度であり、フィルタ温度指標温度に対応して決まる温度である。具体的には、NOx吸蔵還元型触媒が脱硫可能な温度(例えば、700℃付近)で、かつ、フィルタがPM燃焼可能な温度(例えば、650℃付近)に同時到達できる温度の下限値(フィルタの入口側の排気ガスの温度に対応する温度としては、例えば、450℃)として設定される。
【0026】
この方法によれば、排気ガスのフィルタへの流入流量を抑制することにより、フィルタ温度が低下するが、低下し過ぎるとPMの燃焼除去処理が停止するので、これを避けるため、フィルタ温度が下がりそうな場合には、再びフィルタに流入する排気ガスの流量を増加することができる。
【0027】
つまり、排気ガスの流量の調整により、フィルタに流入する酸素量を調整して、PMとの燃焼反応速度を調整する。排気ガスの流量の減少により、フィルタ温度は低下するが、低下し過ぎるとPM燃焼除去処理が停止するので、この停止を回避するために、フィルタ温度指標温度が第2閾値より低くなると、再び排気ガスの流量を増加する。
【0028】
なお、第1閾値と第2閾値に関しては、ポスト噴射又は排気管内直接燃料噴射による排気管内への燃料供給の際に、下流側排気ガス浄化ユニットのフィルタ温度を制御するために、上限値としての第1閾値と下限値としての第2閾値を用いる。フィルタ温度指標温度は、フィルタ温度を指標する排気ガス温度センサ等の検出値を用いるので、必ずしもフィルタ温度と一致するわけではなく、フィルタ温度指標温度は実際のフィルタ温度に対応する温度となる。
【0029】
そのため、フィルタ温度指標温度が、第1閾値や第2閾値に到達したときに、第1流量制御弁と第2流量制御弁を使用して、フィルタに流入する排気ガスの流量を調整するわけであるが、制御対象が温度であるため、制御動作に対する応答遅れが発生し、この応答遅れの時間の間に上昇したり、下降したりしてしまう。従って、その応答遅れ分の温度分を見込んで第1閾値と第2閾値を設定することになる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法によれば、内燃機関の排気通路に上流側から順にNOx吸蔵還元型触媒とDPF又は触媒付きDPFを備えた排気ガス浄化システムにおいて、NOx吸蔵還元型触媒装置と触媒付きDPF装置にそれぞれ流入する排気ガスの流量調整を行うことができるように構成したので、内燃機関に対する排気圧力の上昇による乗り心地性(ドライバビリティ)を悪化することなく、NOx吸蔵還元型触媒やDPF又は触媒付きDPFを通過する排気ガスの流量を低減することができる。
【0031】
このNOx吸蔵還元型触媒を通過した排気ガスの内で、DPF又は触媒付きDPFへ流入する排気ガスの流量を低減することにより、DPF又は触媒付きDPFへの酸素供給量を減少して、過熱状態になることを防止しつつ、PM再生時のフィルタ温度を適温に維持しながら、NOx吸蔵還元型触媒の脱硫制御とDPF又は触媒付きDPFのPM再生処理とを同時に並行して行うことができる。これにより、脱硫処理とフィルタのPM再生処理の処理時間の低減と燃費の低減が可能となる。
【0032】
また、NOx吸蔵還元型触媒及びフィルタを通過する排気ガスの流量を抑制して、NOx吸蔵還元型触媒及びDPF又は触媒付きDPFから排気ガスへの放熱量を低減することができるので、これらの装置の保温と、これらの保温に伴う燃費の低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、ここでは、触媒付きDPFを用いて説明しているが、本発明は触媒付きDPFの代わりに、触媒を担持していないDPFを用いる排気ガス浄化システムも適用できる。
【0034】
図1に、本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システム1の構成を示す。この排気ガス浄化システム1は、エンジン(内燃機関)10の排気通路16に排気ガス浄化装置18を備えて構成される。
【0035】
この排気ガス浄化システム1のエンジン10は、吸気マニホールド10aに接続される吸気通路11に吸入吸気量センサ12(MAFセンサ)とターボチャージャ13のコンプレッサ13aとインタークーラ14と吸気弁(インテークスロットル)15を備えている。さらに、排気マニホールド10bに接続される排気通路16に、ターボチャージャ13のタービン13bと、排気管内に直接燃料を噴射するための燃料噴射装置17と排気ガス浄化装置18を備えている。更に、排気マニホールド10bと吸気マニホールド10aを接続するEGR通路19には、EGRクーラー20とEGR弁21を備えている。
【0036】
排気ガス浄化装置18は、図1の構成では、酸化触媒装置(DOC)18a、NOx吸蔵還元型触媒装置(LNT)18b、触媒付きDPF装置(CSF)18cで構成されている。この排気ガス浄化装置18では、排気ガスGの浄化性能を維持するために、担持している触媒の温度を触媒活性化温度以上のある程度の温度まで上昇させる必要がある。
酸化触媒装置18aは、多孔質のセラミックのハニカム構造の担持体に、白金等の酸化触媒を担持させて形成される。この酸化触媒は、排気ガス中のHCやCOを酸化して排気ガスを浄化する役割と、NOx吸蔵還元型触媒のNOx吸蔵能力を回復するためのNOx再生の際にNOxの還元剤として供給される燃料の一部を酸化して排気ガスの温度を昇温する役割とを持っている。
【0037】
NOx吸蔵還元型触媒装置18bは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を貴金属と共に担持して形成され、酸素過剰な排気ガス中のNOを酸化して硝酸塩として触媒上に吸着させて、NOxを浄化する。このNOx吸蔵還元型触媒は、排気ガスがリーン空燃比では、NOxを吸蔵し、リッチ空燃比では、吸蔵したNOxを放出すると共に、この放出されたNOxを還元雰囲気中で還元して、NOxを低減する。
【0038】
触媒付きDPF装置18cは、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を備えた触媒付きDPFで構成される。この触媒付きDPFは、多孔質のセラミックのハニカムのチャンネルの入口と出口を交互に目封じしたモノリスハニカム型ウォールフロータイプのフィルタ等で形成される。このフィルタの部分に白金や酸化セリウム等の触媒を担持する。
【0039】
この触媒付きDPFにより、排気ガス中のPMは、多孔質のセラミックの壁で捕集される。このPMの捕集量が増加した場合には、排気ガス中に燃料を噴射して、この燃料を酸化触媒により酸化して排気ガスの温度を高めて、この高温の排気ガスにより触媒付きDPFをPMの燃焼開始温度まで上昇させて、捕集されたPMを強制的に燃焼除去して、触媒付きDPFのPM再生を行う。
【0040】
本発明では、排気ガス浄化装置18においては、酸化触媒装置18aとNOx吸蔵還元型触媒装置18bとで、NOx吸蔵還元型触媒を備えた上流側排気ガス処理ユニットを構成し、触媒付きDPF装置18cで触媒付きDPFを備えた下流側排気ガス処理ユニットを構成する。
【0041】
そして、排気ガス浄化装置18は、排気通路16に第1バイパス通路R1を設け、この第1バイパス通路R1に上流側排気ガス処理ユニット18a,18bと下流側排気ガス処理ユニット18cを上流側から順に設けて構成される。更に、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bの下流側で、かつ、下流側排気ガス処理ユニット18cの上流側の第1バイパス通路R1と排気通路16を接続する第2バイパス通路R2を設ける。この第2バイパス通路R2が第1バイパス通路R1と分岐する部分に第1流量制御弁18dを設け、第2バイパス通路R2が排気通路16に合流する部分に第2流量制御弁18eを設ける。
【0042】
この第1流量調整弁18dは、NOx吸蔵還元型触媒装置18bを通過した排気ガスG1の流量の全部又は一部が触媒付きDPF装置18cに流入できるように弁開度を調整可能に構成される。また、第2流量調整弁18eは、触媒付きDPF装置18cを迂回した排気ガスG3(図2参照)が大気に放出するための開放弁となるように構成される。
【0043】
つまり、第1流量制御弁18dと第2流量制御弁18eの弁開度の調整により、図1及び図2に示すように、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bを通過する排気ガスG1の流量と、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bを通過した排気ガスG1の内で、更に下流側排気ガス処理ユニット18cを通過する排気ガスG2の流量とを調整可能に構成する。
【0044】
更に、図1に示すように、排気ガスGの温度を測定するために、排気ガス浄化装置18の入口に第1温度センサ22が、NOx吸蔵還元型触媒装置18bの出口側である、触媒付きDPF装置18cの入口に、第2温度センサ23が配設される。また、排気ガス浄化装置18の出口に第3温度センサ24とλ(空気過剰率)センサ25が配設される。
【0045】
この第1温度センサ22で検出された温度Tg1が、NOx吸蔵還元型触媒装置18cの触媒温度の制御に必要な温度を検出するための温度となり、第2温度センサ23で検出された温度Tg2が、排気ガスの第1流量制御弁18d、18eの弁開度の制御に必要な温度を検出するための温度となる。また、第3温度センサ24で検出された温度Tg3が排気ガス浄化装置18の異常高温を検出するための温度となる。また、λセンサ25で検出された空気過剰率(又は空燃比、酸素濃度)が、リーン空燃比制御やリッチ空燃比制御に使用される。
【0046】
これらのセンサ22、23、24、25等の測定値とエンジン10の運転制御に必要なデータを入力してエンジンの運転状態と排気ガス浄化システム1の排気ガス浄化制御や再生制御を行う制御装置(図示しない)が設けられている。この制御装置はECU(エンジンコントロールユニット)と呼ばれる制御装置であり、本発明の排気ガス浄化方法に関する制御では、エンジン10からのデータと吸入空気量センサ12等の検出値に基づいて、吸気弁15、排気管内直接燃料噴射用の燃料噴射装置17、第1流量制御弁18d、第2流量制御弁18e、EGR弁22等を制御する。
【0047】
なお、燃料噴射装置17は、触媒付きDPF装置18cのPM再生用だけでなく、NOx吸蔵還元型触媒装置18bのNOx再生処理用や脱硫処理用に使用され、更に、排気ガスの昇温用だけでなく、排気ガス中の酸素濃度を調整する空燃比制御にも使用される。
【0048】
この構成の排気ガス浄化システム1によれば、比較的簡単な構成で、第1流量調整制御弁18dにより上流側排気ガス処理ユニット18a,18bを通過する排気ガスG1の流量を調整でき、第2流量調整制御弁18eにより下流側排気ガス処理ユニット18dを通過する排気ガスG2の流量を調整できる。
【0049】
従って、この構成によって、排気ガスG1,G2,G3,G4の流量調整を行うことにより、NOx吸蔵還元型触媒装置18bを通過する排気ガスG1の流量と、NOx吸蔵還元型触媒装置18bを通過した排気ガスG1の内で触媒付きDPF装置18cへ流入する排気ガスG2の流量を調整して、触媒付きDPF装置18cへの酸素供給量と、触媒付きDPF装置18cからの放熱量を調整してPM再生温度を適温に維持できる。そのため、NOx吸蔵還元型触媒装置18bの脱硫制御と触媒付きDPF装置18cのPM再生処理とを同時に並行して効率よく行うことができる。特に、触媒付きDPF装置18cが過熱されるのを防止することができ、この過熱による触媒付きDPF装置18cのフィルタの溶損を回避できる。
【0050】
次に、上記の構成の排気ガス浄化システム1における排気ガス浄化方法について、図3の脱硫処理及びPM再生処理の制御フローを参照しながら説明する。この図3の制御フローは、NOx吸蔵還元型触媒装置18bの脱硫処理と触媒付きDPF装置18cのPM再生処理とを同時に行う際に上級の制御フローから繰り返し呼ばれて、実行されて、実行後に上級の制御フローに戻るものとして示してある。
【0051】
この排気ガス浄化方法では、フィルタ温度指標温度Tcと第1閾値T1と第2閾値T2を用いる。このフィルタ温度指標温度Tcは、触媒付きDPF装置18cのフィルタの温度を直接計測できる場合にはこの測定した温度であるが、一般的にフィルタ温度を直接測定することは難しいため、フィルタに流入する排気ガス温度、言い換えれば、下流側排気ガス処理ユニット18cの入口側に設けた第2温度センサ(排気ガス温度センサ)23で検出される排気ガス温度Tg2で代用する。このフィルタ温度指標温度Tcは、フィルタ温度と対応する温度であれば良いので、下流側排気ガス処理ユニット18cの出口側に設けた第3温度センサ(排気ガス温度センサ)24で検出される排気ガス温度Tg3で代用してもよい。
【0052】
また、第1閾値T1は、PM再生処理過程で触媒付きDPF装置18cのフィルタの溶損を防止しつつ、NOx吸蔵還元型触媒装置18bの脱硫処理とフィルタのPM再生処理をするための温度制御に使用する温度であり、フィルタ温度指標温度Tcに対応して決まる温度である。具体的には、NOx吸蔵還元型触媒における脱硫可能な温度(例えば、700℃付近)と、かつ、フィルタにおけるPMの燃焼が可能な温度(例えば、600℃付近)に同時到達できる温度の上限値(フィルタの入口側の排気ガスの温度Tg2に対応する温度としては、例えば、500℃)として設定される。
【0053】
また、第2閾値は、PM再生処理過程で触媒付きDPF装置18cのフィルタの溶損を防止しつつ、NOx吸蔵還元型触媒装置18bの脱硫処理とフィルタのPM再生処理をするための温度制御に使用する温度であり、フィルタ温度指標温度Tcに対応して決まる温度である。具体的には、NOx吸蔵還元型触媒が脱硫可能な温度(例えば、700℃付近)に、かつ、フィルタがPM燃焼可能な温度(例えば、650℃付近)に同時到達できる温度の下限値(フィルタの入口側の排気ガスの温度Tg2に対応する温度としては、例えば、450℃)として設定される。
【0054】
この排気ガス浄化方法を実施するための図3の制御フローでは、脱硫処理とPM再生処理を行う場合に上級の制御フローから呼ばれてスタートすると、ステップS11で、シリンダ内の燃料噴射制御におけるポスト噴射、又は、燃料噴射装置17による排気通路16内へ燃料を供給する。それと共に、脱硫処理とPM再生処理の継続時間Tiをリセットする。 この際に、次のステップS12で、触媒付きDPF装置18cのフィルタの温度を指標するフィルタ温度指標温度Tcを判定する。この判定でフィルタ温度指標温度Tcが第1閾値T1以下(NO)のときには、ステップS13で、図1に示すように、第1流量制御弁18dを閉弁制御して第2バイパス通路R2を全閉すると共に、第2流量制御弁18eを閉弁制御して第2バイパス通路R2の下流側の排気通路16を全閉する。その後、ステップS12に戻る。
【0055】
これにより、排気ガスGの全部を、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bと下流側排気ガス処理ユニット18cを通過させる(G1=G2=G)。その後、ステップS12に戻り、フィルタ温度指標温度Tcが第1閾値T1より高く(YES)なるまで、ステップS13を繰り返す。
【0056】
また、ステップS12で、フィルタ温度指標温度Tcが第1閾値T1より高い(YES)ときには、ステップS14で、図2に示すように、第1流量制御弁18dを第1弁開度θ1まで開弁制御して第2バイパス通路R2を開くと共に、第2流量制御弁18eを第2弁開度θ2まで開弁制御して第2バイパス通路R2の下流側の排気通路16を開く。それと共に、脱硫処理とPM再生処理の継続時間Tiをカウントする。その後、ステップS15に行く。
【0057】
これにより、排気ガスGの一部の排気ガスG4を、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bと下流側排気ガス処理ユニット18cを迂回させて、残りの排気ガスG1を上流側排気ガス処理ユニット18a,18bを通過させる。それと共に、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bを通過した排気ガスG1の内の一部の排気ガスG3を、下流側排気ガス処理ユニット18cを迂回させて、残りの排気ガスG2を下流側排気ガス処理ユニット18cに流入させる(G=G1+G4,G1=G2+G3)。
【0058】
このステップS14によれば、フィルタ温度指標温度Tcが第1閾値T1を超えたときには下流側排気ガス処理ユニット18cに流入する排気ガスG2の流量を減少するので、下流側排気ガス処理ユニット18cに流入する排気ガスG1中の酸素量が減少してPMの燃料反応速度が低下する。これにより、下流側排気ガス処理ユニット18cが過熱状態になるのが回避される。
【0059】
また、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bに流入する排気ガスG1の流量が減少するので、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bからの放熱量が減少する。更に、下流側排気ガス処理ユニット18cへ流入する排気ガスG2の流量が減少するので、下流側排気ガス処理ユニット18cからの放熱量が減少する。また、下流側排気ガス処理ユニット18cへの酸素供給量が減少するので、フィルタが過熱されるのを回避でき、PM再生温度が適温に維持され、NOx吸蔵還元型触媒の脱硫制御とDPF又は触媒付きDPFのPM再生処理とを同時に並行して効率よく行うことができる。
【0060】
ステップS15では、脱硫処理とPM再生処理が終了したか否かを判定し、終了した場合はリターンに行く。終了していない場合はステップS16に行く。この終了の判定は、脱硫処理とPM再生処理の継続時間Tiが予め設定した終了用判定時間Ticを超えたか否かで判定する。
【0061】
ステップS16では、フィルタ温度指標温度Tcを判定し、フィルタ温度指標温度Tcが第1閾値T1より低い第2閾値T2より低くなったか否かを判定する。そして、フィルタ温度指標温度Tcが第2閾値T2より高い(NO)間は、ステップS14に戻る。また、フィルタ温度指標温度Tcが第2閾値T2より低くなった(YES)ときには、ステップS17で、第1流量制御弁18dを第3弁開度θ3(<θ1)まで閉弁制御して第2バイパス通路R2をやや閉じると共に、第2流量制御弁18eを第4弁開度θ4(<θ2)まで閉弁制御して第2バイパス通路R2の下流側の排気通路16をやや閉じる。それと共に、脱硫処理とPM再生処理の継続時間Tiをカウントする。その後、ステップS18に行く。
【0062】
これにより、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bを通過させる排気ガスG1の流量を増加すると共に、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bを通過した排気ガスG1の内で、下流側排気ガス処理ユニット18cを通過させる排気ガスG2の流量を増加する。
【0063】
このステップS17によれば、下流側排気ガス処理ユニット18cのフィルタの温度が下がりそうな場合には、下流側排気ガス処理ユニット18cに流入する排気ガスG2の流量を増加することができ、フィルタの温度が低下し過ぎて下流側排気ガス処理ユニット18cにおけるPMの燃焼除去処理が停止するのを回避できる。
【0064】
ステップS18では、ステップS15と同様に、脱硫処理とPM再生処理が終了したか否かを判定し、終了した場合はリターンに行く。終了していない場合はステップS19に行く。この終了の判定は、脱硫処理とPM再生処理の継続時間Tiが予め設定した終了用判定時間Ticを超えたか否かで判定する。
【0065】
次のステップS19では、ステップS12と同様に、フィルタ温度指標温度Tcを判定する。この判定でフィルタ温度指標温度Tcが第1閾値T1以下(NO)のときには、ステップS17に行く。また、この判定でフィルタ温度指標温度Tcが第1閾値T1より高い(YES)のときには、ステップS14に行く。
【0066】
そして、図3の制御フローで、脱硫処理とPM再生処理を終了してリターンに行くと、上級の制御フローに戻り、第1流量制御弁18dと第2流量制御弁18eとは両方とも、通常運転で使用される全閉状態にされる。そして、次の脱硫処理とPM再生処理の開始まで待って、開始になると、再度、上級の制御フローからこの図3の制御フローが呼ばれて実行される。
【0067】
この図3の制御フローに基づく排気ガス浄化方法によれば、上記の排気ガス浄化システム1において、ポスト噴射又は排気管内直接燃料噴射による排気管内への燃料供給の際に、触媒付きDPFのフィルタの温度を指標するフィルタ温度指標温度Tcが第1閾値T1を越えるまでは、排気ガスGの全部を、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bと下流側排気ガス処理ユニット18cを通過させ、フィルタ温度指標温度Tcが第1閾値T1を越えたときには、排気ガスGの一部G4を、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bと下流側排気ガス処理ユニット18cを迂回させると共に、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bを通過した排気ガスG1の内の一部G3を、下流側排気ガス処理ユニット18cを迂回させることができる。
【0068】
また、ポスト噴射又は排気管内直接燃料噴射による排気管内への燃料供給の際に、フィルタ温度指標温度Tcが、第1閾値T1より高くなってから、第1閾値T1より低い第2閾値T2より低くなったときには、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bを通過させる排気ガスG1の流量を増加すると共に、上流側排気ガス処理ユニット18a,18bを通過した排気ガスG1の内で、下流側排気ガス処理ユニット18cを通過させる排気ガスG2の流量を増加することができる。
【0069】
更に、脱硫処理とPM再生処理の継続時間Tiが予め設定した終了用判定時間Ticを超えた場合に脱硫処理とPM再生処理を終了することができる。
【0070】
この図3の制御フローでは、図4に示すように、フィルタ温度指標温度Tcが、第1閾値T1より高くなってから、第2閾値T2より低くなるまでは、第1流量制御弁18dを第1弁開度θ1に維持し、第2流量制御弁18eを第2弁開度θ2に維持し、また、フィルタ温度指標温度Tcが、第1閾値T2より低くなってから、再度、第1閾値T1より高くなるまでは、第1流量制御弁18dを第3弁開度θ3に維持し、第2流量制御弁18eを第4弁開度θ4に維持する。
【0071】
そして、上記の排気ガス浄化システム1及び排気ガス浄化方法によれば、エンジン10の排気通路16に上流側から順にNOx吸蔵還元型触媒装置18bと触媒付きDPF装置18cを備えた排気ガス浄化システム1において、NOx吸蔵還元型触媒装置18bと触媒付きDPF装置18cにそれぞれ流入する排気ガスG1,G2の流量調整を行うことができるように構成したので、エンジン10に対する排気圧力の上昇による乗り心地性(ドライバビリティ)を悪化することなく、NOx吸蔵還元型触媒装置18bや触媒付きDPF装置18cを通過する排気ガスG1,G2の流量を低減することができる。
【0072】
また、NOx吸蔵還元型触媒装置18bを通過した排気ガスG1の内で、触媒付きDPF装置18cへ流入する排気ガスG2の流量を低減することにより、触媒付きDPF装置18cへの酸素供給量を減少して、過熱状態になることを防止しつつ、PM再生時のフィルタ温度を適温に維持しながら、NOx吸蔵還元型触媒装置18bの脱硫制御と触媒付きDPF装置18cのPM再生処理とを同時に並行して行うことができる。これにより、脱硫処理とフィルタのPM再生処理の処理時間の低減と燃費の低減が可能となる。
【0073】
また、NOx吸蔵還元型触媒装置18b及び触媒付きDPF装置18cのフィルタを通過する排気ガスG1,G2の流量を抑制して、NOx吸蔵還元型触媒装置18b及び触媒付きDPF装置18cから排気ガスGへの放熱量を低減することができるので、これらの装置18b,18cの保温と、これらの保温に伴う燃費の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態の排気ガス浄化システムの構成を示す図である。
【図2】排気ガス浄化装置の第1流量調整弁と第2流量調整弁の状態と排気ガスの流れの状態を模式的に示す図である。
【図3】本発明の排気ガス浄化方法の制御フローの一例を示す図である。
【図4】本発明の排気ガス浄化方法による制御での時系列と第1流量調整弁と第2流量調整弁の弁開度の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1 排気ガス浄化システム
10 エンジン(内燃機関)
16 排気通路
17 燃料噴射装置
18 排気ガス浄化装置
18a 酸化触媒装置(DOC)(上流側排気ガス処理ユニット)
18b NOx吸蔵還元型触媒装置(LNT)(上流側排気ガス処理ユニット)
18c 触媒付きDPF装置(CSF)(下流側排気ガス処理ユニット)
18d 第1流量制御弁
18e 第2流量制御弁
22 第1温度センサ
23 第2温度センサ
G 排気ガス
G1 NOx吸蔵還元型触媒装置を通過する排気ガス
G2 NOx吸蔵還元型触媒装置を通過し、かつ、触媒付きDPF装置を通過する排気ガス
G3 NOx吸蔵還元型触媒装置を通過し、かつ、触媒付きDPF装置を迂回する排気ガス
G4 NOx吸蔵還元型触媒装置と触媒付きDPF装置の両方を迂回する排気ガス
R1 第1バイパス通路
R2 第2バイパス通路
Tc フィルタ温度指標温度
T1 第1閾値
T2 第2閾値
θ1 第1弁開度
θ2 第2弁開度
θ3 第3弁開度
θ4 第4弁開度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路にNOx吸蔵還元型触媒を備えた上流側排気ガス処理ユニットと、ディーゼルパティキュレートフィルタ又は触媒付きディーゼルパティキュレートフィルタを備えた下流側排気ガス処理ユニットを設け、前記上流側排気ガス処理ユニットを通過する排気ガスの流量と、前記上流側排気ガス処理ユニットを通過した排気ガスの内で、更に前記下流側排気ガス処理ユニットを通過する排気ガスの流量とを調整可能にしたことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項2】
前記排気通路に第1バイパス通路を設け、該第1バイパス通路に前記上流側排気ガス処理ユニットと前記下流側排気ガス処理ユニットを上流側から順に設けて、更に、前記上流側排気ガス処理ユニットの下流側で、かつ、前記下流側排気ガス処理ユニットの上流側の前記第1バイパス通路と前記排気通路を接続する第2バイパス通路を設け、該第2バイパス通路が前記第1バイパス通路と分岐する部分に第1流量制御弁を設け、前記第2バイパス通路が前記排気通路に合流する部分に第2流量制御弁を設けたことを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化システム。
【請求項3】
ポスト噴射又は排気管内直接燃料噴射による排気管内への燃料供給の際に、
前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記触媒付きディーゼルパティキュレートフィルタのフィルタの温度を指標するフィルタ温度指標温度が第1閾値を超えるまでは、排気ガスの全部を、前記上流側排気ガス処理ユニットと前記下流側排気ガス処理ユニットを通過させ、
前記フィルタ温度指標温度が前記第1閾値を越えたときには、排気ガスの一部を、前記上流側排気ガス処理ユニットと前記下流側排気ガス処理ユニットを迂回させると共に、前記上流側排気ガス処理ユニットを通過した排気ガスの内の一部を、下流側排気ガス処理ユニットを迂回させることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の排気ガス浄化システムにおいて、ポスト噴射又は排気管内直接燃料噴射による排気管内への燃料供給の際に、
前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記触媒付きディーゼルパティキュレートフィルタのフィルタの温度を指標するフィルタ温度指標温度が第1閾値を超えるまでは、排気ガスの全部を、前記上流側排気ガス処理ユニットと前記下流側排気ガス処理ユニットを通過させ、
前記フィルタ温度指標温度が前記第1閾値を越えたときには、排気ガスの一部を、前記上流側排気ガス処理ユニットと前記下流側排気ガス処理ユニットを迂回させると共に、前記上流側排気ガス処理ユニットを通過した排気ガスの内の一部を、下流側排気ガス処理ユニットを迂回させることを特徴とする排気ガス浄化方法。
【請求項5】
ポスト噴射又は排気管内直接燃料噴射による排気管内への燃料供給の際に、
前記フィルタ温度指標温度が、前記第1閾値より高くなってから、前記第1閾値より低い第2閾値より低くなったときには、前記上流側排気ガス処理ユニットを通過させる排気ガスの流量を増加すると共に、前記上流側排気ガス処理ユニットを通過した排気ガスの内で、前記下流側排気ガス処理ユニットを通過させる排気ガスの流量を増加することを特徴とする請求項4記載の排気ガス浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−144557(P2010−144557A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320659(P2008−320659)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】