説明

排気浄化装置

【課題】 ナビゲーションシステムの機能を十分に活用して排気浄化ユニット10のPMの放出除去(強制再生)を最適に実行させる。
【解決手段】 PMの堆積量が所定量を超えた際に、ナビゲーションシステムの情報に基づいて、現在の走行経路における車両の進行方向でDPF31の強制再生が可能な経路の有無を判断し、強制再生が可能な経路がない場合に強制再生が可能な退避走行経路をナビゲーションシステムで設定・案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化する排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載されるエンジン、特にディーゼルエンジンから排出される排気ガス中には、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)や、微粒子状物質(PM:Particulate Matter)等が多く含まれている。このため、エンジンから排出される排気ガスが通過する排気通路に、例えば、上記汚染物質を分解(還元等)するための三元触媒や、PMを捕捉するためのパティキュレートフィルタ等を設け、排気ガスが浄化された状態で大気中に放出されるようにしている。
【0003】
ディーゼルエンジンにおいては、排気ガスが酸化雰囲気であるため、三元触媒を用いた窒素酸化物(NOx)の浄化が難しい。このため、ディーゼルエンジンには、排気ガス中のNOxを効率的に浄化するために、例えば、NOxの吸着と還元とを繰り返し行ってNOxを分解(還元)する、いわゆるNOxトラップ触媒が採用されている。NOxトラップ触媒は、例えば、排気通路内に燃料(軽油)等を噴射することで還元剤をNOxトラップ触媒に供給し、吸着したNOxを分解(還元)してNOxトラップ触媒の再生を図っている。
【0004】
燃料中には硫黄成分が有害成分として含まれているため、硫黄成分は酸素と反応して硫黄酸化物となってNOxの代わりにNOxトラップ触媒に吸蔵される(S被毒)。吸蔵された硫黄成分は定期的に除去する必要があり、空燃比をリッチ状態にしてNOxトラップ触媒を高温化することで吸蔵された硫黄成分を放出除去している(Sパージ)。
【0005】
一方、パティキュレートフィルタは、使用に伴ってフィルタ内にPMが堆積して通過抵抗が増大するため、必要に応じて再生処理を行う必要がある。再生処理としては、パティキュレートフィルタの上流に設けられた酸化触媒に燃料(軽油)などの添加剤を流入させて発熱反応を生じさせ、この熱によりパティキュレートフィルタの再生処理を行っている(再生)。
【0006】
NOxトラップ触媒のSパージやパティキュレートフィルタの再生処理は、排気温度を上昇させることでNOxトラップ触媒やパティキュレートフィルタを昇温し、Sパージや再生を実施している。このため、Sパージや再生処理は、エンジンの負荷がある程度高い領域での運転が実施可能な条件になり、低速運転中、渋滞中や停車中で可燃物が周囲に多く存在する場所ではSパージや再生処理を実施できないのが現状である。
【0007】
Sパージや再生処理は、S被毒やPMの堆積状況を求めて(検出・推定)必要時に適宜実行するようになっている。Sパージや再生処理が困難な条件で走行を続け、堆積量が所定量を越えた時には警告灯等により運転者に知らせ、Sパージや再生処理が可能な状態での走行を促すようにしている。しかし、実際にはSパージや再生処理が可能な状態での走行を行うことは困難であるのが実情であり、警告灯が点灯した場合にはサービス拠点に持ち込んでメンテナンスを実行する等して対応しているのが現状である。
【0008】
近年、車両の走行経路を設定・案内したり道路情報を提供するナビゲーションシステムが普及してきており、ナビゲーションシステムを用いてSパージや再生処理を実行させる技術が提案されてきている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された技術は、ナビゲーションシステムにより渋滞に関連する情報が得られた場合にフィルタの再生を実行させるようにし、渋滞中にフィルタの再生を実行せざるを得なくなることを避ける技術である。このため、再生不良やフィルタの目詰まりの問題を解消することができる。
【0009】
特許文献1に開示された技術は、渋滞区間までに強制再生できる経路があることが前提とされた技術であり、強制再生できる経路がない場合にはメンテナンスを実行する等の対応が必要になる。このため、走行経路を設定・案内する、といったナビゲーションシステムの機能を、触媒の再生やパージの実行に対して十分に活用した技術とはいえないものである。
【0010】
【特許文献1】特開2005−248762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、ナビゲーションシステムの機能を十分に活用して排気浄化ユニットの有害成分の放出除去を最適に実行させることができる排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の排気浄化装置は、車両の内燃機関の排気通路に設けられ排気の浄化を行なう排気浄化ユニットと、前記排気浄化ユニットに吸蔵もしくは捕集された排気成分の堆積量を導出する堆積量導出手段と、前記堆積量導出手段により導出された前記排気成分の堆積量に基づいて前記排気浄化ユニットを昇温して前記排気成分を放出除去する放出手段と、前記車両の走行経路を設定・案内すると共に道路情報を提供するナビゲーションシステムと、前記堆積量導出手段により導出された前記排気成分の堆積量が所定量を超えた際、現在の走行経路における前記車両の進行方向で前記放出手段の動作が可能な経路の有無を判断し、前記放出手段の動作が可能な経路が無いと判断された場合に、前記放出手段の動作が可能な退避走行経路を前記ナビゲーションシステムで設定・案内させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項1に係る本発明では、有害成分の堆積量が所定量を超えた際に、車両の進行方向で放出手段の動作が可能な経路が無いと判断された場合に、放出手段の動作が可能な退避走行経路をナビゲーションシステムで設定・案内させるので、ナビゲーションシステムの機能を十分に活用して排気浄化ユニットの排気成分の放出除去を最適に実行させることができる。
【0014】
そして、請求項2に係る本発明の排気浄化装置は、請求項1に記載の排気浄化装置において、前記制御手段は、前記排気成分の堆積量が前記所定量より多い第2所定量を設定し、前記排気成分の堆積量が所定量を超えた際に、前記第2所定量になるまでの走行距離を算出し、算出された走行距離内に前記放出手段の動作が可能な経路が存在するか否かを判断することを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項2に係る本発明では、算出された走行距離内に放出手段の動作が可能な経路が存在するか否かを判断することにより、可能な経路がある場合には車両の進行方向で放出手段の動作を行わせることができるので、排気成分の放出のために車両の進行方向を変更することを最小限に抑制することができる。
【0016】
また、請求項3に係る本発明の排気浄化装置は、請求項2に記載の排気浄化装置において、前記制御手段は、前記第2所定量を超えるまで前記走行距離内に、前記放出手段の動作が可能な経路がない場合、安全に停車できる場所を検索して前記退避走行経路とすることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る本発明では、排気成分の堆積量が増加しても安全に停車できる場所を案内することができる。
【0018】
また、請求項4に係る本発明の排気浄化装置は、請求項3に記載の排気浄化装置において、前記制御手段は、前記安全に停車できる場所がない時、もしくは前記安全に停車できる場所に前記車両が停車しない時に、前記堆積量導出手段により導出された前記排気成分の堆積量が前記第2所定量を超えた際に、前記放出手段の動作を実施させるためのサービス拠点を検索して前記退避走行経路とすることを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る本発明では、安全に停車できる場所に退避できない場合に(しない場合に)、排気成分の堆積量が更に多くなった時にはサービス拠点を案内することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の排気浄化装置は、ナビゲーションシステムの機能を十分に活用して排気浄化ユニットの有害成分の放出除去を最適に実行させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1には本発明の第1実施形態例に係る排気浄化装置を備えたディーゼルエンジンの全体、図2には制御手段の概略ブロック構成、図3〜図5には制御フロー、図6には差圧とPMの堆積量との関係を示してある。
【0022】
図1に基づいてディーゼルエンジンの全体を説明する。
【0023】
図に示すように、多気筒ディーゼルエンジン(エンジン)1のシリンダブロック2にはシリンダボア3が形成され、シリンダボア3内にはピストン4が往復移動自在に収容されている。ピストン4及びシリンダボア3及びシリンダヘッド5により燃焼室8が形成されている。ピストン4にはコネクティングロッド6の上端が回動自在に連結され、コネクティングロッド6の下端はクランクシャフト7のピン部に回転自在に接続されている。
【0024】
これにより、ピストン4の往復運動がコネクティングロッド6を介してクランクシャフト7の回転運動に変換される。エンジン1にはクランク角センサ12が設けられ、クランク角センサ12の情報によりエンジン1の回転速度が検出される。
【0025】
シリンダヘッド5には吸気ポート11が形成され、吸気ポート11には吸気マニホールドを含む吸気管13が接続されている。吸気ポート11には吸気弁14が設けられ、吸気弁14により吸気ポート11が開閉される。また、シリンダヘッド5には排気ポート15が形成され、排気ポート15には排気マニホールドを含む排気管17(排気通路)が接続されている。排気ポート15には排気弁18が設けられ、排気弁18により排気ポート15が開閉される。
【0026】
吸気管13及び排気管17の途中部にはターボチャージャ21が介装され、排気管17の排気によりターボチャージャ21が駆動されて吸気管13の吸気が過給される。即ち、ターボチャージャ21は、タービン及びコンプレッサを有し、排気管17の排気によりタービンが回転し、タービンの回転に伴ってコンプレッサが回転して吸気管13からの空気が加圧されて吸気ポート11に供給される。
【0027】
シリンダヘッド5には燃焼室8に燃料を噴射する電子制御式の燃料噴射弁22が設けられ、燃料噴射弁22にはコモンレール23から燃料が供給される。コモンレール23にはサプライポンプ29により燃料タンク30内の燃料が供給され、エンジン1の回転速度に応じてサプライポンプ29から所定圧で燃料がコモンレール23に供給される。コモンレール23では燃料が所定の燃圧に調整され、コモンレール23から所定の燃圧に制御された高圧燃料が燃料噴射弁22に供給される。
【0028】
尚、図中の符号で24は排気の一部を吸気管13側に循環させるEGR系、25は吸入空気量が調整されるスロットルバルブ、26は過給された吸気の温度を調整するインタークーラーである。
【0029】
ターボチャージャ21の下流側の排気管17には、排気浄化ユニット10であるディーゼル酸化触媒(酸化触媒)31及びNOxトラップ触媒32及びディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)33が上流側から順に配されている。
【0030】
ターボチャージャ21と酸化触媒31との間の排気管17には、還元剤である燃料(軽油)を酸化触媒31に向かって噴射するインジェクタ34が設けられている。インジェクタ34は、添加剤供給配管35を介してサプライポンプ29に接続され、エンジン1の回転速度に応じて燃料タンク30内の燃料がサプライポンプ29から所定圧でインジェクタ34に供給される。
【0031】
酸化触媒31は、例えば、セラミックス材料で形成されたハニカム構造の担体に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属が担持された触媒層を有する触媒本体部20を備え、触媒本体部20は排気管17に保持されている。酸化触媒31では、排気ガスが流入すると、排気ガス中の一酸化窒素(NO)が酸化されて二酸化窒素(NO)が生成されるとともにHCが酸化されて一酸化炭素(CO)あるいは二酸化炭素(CO)が生成される。
【0032】
酸化触媒31における酸化反応が起こるには、酸化触媒31が活性温度以上に温度を上昇させる必要があるため、酸化触媒31は可及的にエンジン1に近い位置に配されていることが好ましい。エンジン1に近い位置に配置されることにより、酸化触媒31がエンジン1から排出される既燃ガスの熱によって加熱され、始動時等であっても比較的短時間で酸化触媒31を活性温度以上の温度に上昇させることができる。
【0033】
NOxトラップ触媒32は、例えば、酸化アルミニウム(Al)からなるハニカム構造の担体に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属が担持されると共に、吸蔵剤としてバリウム(Ba)等のアルカリ金属、あるいはアルカリ土類金属が担持される。NOxトラップ触媒32では、酸化雰囲気においてNOxを一旦吸蔵し、即ち、酸化触媒31で生成されたNO、また酸化触媒31で酸化されずに排気ガス中に残存するNOを一旦吸蔵し、例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を含む還元雰囲気中において、NOxを放出して窒素(N)等に還元する。
【0034】
尚、酸化触媒31で生成されたNOの多くはNOxトラップ触媒32によって吸着・分解(還元)されるが、吸着・分解されなかった残りのNOはDPF33での反応により浄化される。
【0035】
通常、エンジン1から排出される排気ガスは酸化雰囲気であるため、NOxトラップ触媒32の内部が酸化雰囲気となり、NOxトラップ触媒32ではNOxが吸着されるのみで吸着されたNOxが分解(還元)されることはない。このため、NOxトラップ触媒32に所定量のNOxが吸着されると、インジェクタ34から還元剤である燃料(軽油)が噴射される。
【0036】
インジェクタ34から燃料(軽油)が噴射されることにより、燃料が混合された排気ガスが酸化触媒31で反応し、酸素を消費するとともに還元能力の高い一酸化炭素(CO)を生成することで、NOxトラップ触媒32の内部が還元雰囲気となり、吸着されたNOxが分解(還元)される。
【0037】
燃料中には硫黄成分が有害成分として含まれているため、硫黄成分は酸素と反応して硫黄酸化物(SOx)となってNOxの代わりにNOxトラップ触媒32に吸蔵され(S被毒)、SOxはNOxの浄化能力を低下させてしまう。このため、NOxトラップ触媒32に吸蔵されるSOxの量が所定量に達した場合には、SOxの放出除去(Sパージ)が実施される。
【0038】
NOxトラップ触媒32に吸蔵されるSOxの量の把握は、エンジン1の運転時間により推定したり、検出手段を設けて堆積量(トラップ量)を検出することで可能である(堆積量導出手段)。Sパージを実施する場合、NOxトラップ触媒32を還元雰囲気にすると共に、排気温度を上げてNOxトラップ触媒32を所定の高温に昇温させるようにしている(放出手段)。
【0039】
一方、DPF33は、例えば、セラミックス材料で形成されたハニカム構造のフィルタであり、DPF33の内部には、上流側端部が開放され下流側端部が閉塞された排気ガス通路33aと下流側端部が開放され上流側端部が閉塞された排気ガス通路33bとが多孔質の壁面を介して交互に配列されている。排気ガスは、上流側端部が開放された排気ガス通路33aに流入し、多孔質の壁面を通って隣接する排気ガス通路33bに流入して下流側に流出する。排気ガスの流通過程で、排気ガス中の微粒子状物質(PM)が壁面に衝突し吸着されて捕捉される。
【0040】
DPF33は、PMの堆積によって徐々に排圧が上昇して排気抵抗が増大する。排気抵抗が増大すると燃費の悪化に繋がるため、PMの堆積量が所定量に達した時には堆積したPMを燃焼除去してDPF33を強制的に再生している(強制再生)。強制再生は、Sパージと同様に、排気温度を上げてDPF33を所定の高温に昇温させるようにしている(放出手段)。
【0041】
PMの堆積量を推定するために、DPF33の出入口の排気管17には圧力センサ38が設けられ、圧力センサ38の情報が入力されてDPF33の出入口の圧力差を検出する差圧センサ39が備えられている。差圧センサ39の検出情報によりPMの堆積量が推定される(堆積量導出手段)。
【0042】
酸化触媒31、NOxトラップ触媒32及びDPF33の触媒間やDPF33の下流側近傍には、適宜排気温センサが設けられ、複数の排気温センサによって、酸化触媒31、NOxトラップ触媒32及びDPF33に流入する排気ガスの温度と排出される排気ガスの温度が検出される。また、酸化触媒31及びDPF33の上流側近傍には、排気ガス中の酸素濃度を検出するための酸素濃度センサが設けられている。
【0043】
また、DPF33の下流側の排気管17には空燃比センサ36が設けられ、空燃比センサ36により排気空燃比が検出され、エンジン1が所定の空燃比で運転されるようにフィードバック制御される。
【0044】
図2に示すように、車両には、電子制御ユニット(ECU)41が設けられ、ECU41のエンジンECU42には、入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶を行う記憶装置、中央処理装置及びタイマやカウンタ類が備えられている。そして、各種センサからの情報に基づいて、エンジンECU42の指令により、エンジン1及び排気浄化装置の総合的な制御を行っている。
【0045】
一方、車両には、走行経路を設定・案内すると共に道路情報を提供するナビゲーションシステムが搭載されている。ナビゲーションシステムには、自車両の現在地を検出する機能、地図情報を記憶する機能、目的地を入力する機能、VICS情報(交通量、工事事故情報等の交通情報)や道路規模情報(国道、県道、車線数、制限速度等)を把握する機能、目的地までの走行経路を設定して最適な経路を設定・案内する機能が備えられている。
【0046】
制御手段としてのECU41には、カーナビECU43が備えられ、エンジンECU42とカーナビECU43との間で必要な情報が授受される。即ち、ECU41では、NOxトラップ触媒32に吸蔵されるSOxの量が所定量に達した場合や、DPF33のPMの堆積量が所定量に達した場合に、Sパージや強制再生の動作が可能な経路、即ち、エンジン1の負荷を高めて排気を昇温させることができる経路の有無が判断される。
【0047】
エンジン1の運転時間等によりNOxトラップ触媒32に吸蔵されるSOxの量が所定量に達したと判断された場合や、差圧センサ39の検出情報によりPMの堆積量が所定量に達したと判断された場合、SOxの放出除去(Sパージ)やPMを燃焼除去してNOxトラップ触媒32やDPF33を強制的に再生する強制再生が実施される。
【0048】
Sパージや強制再生は、ナビゲーションシステムの情報に基づいて適宜実施される。ナビゲーションシステムでは、現在の走行経路が放出手段の動作が不可能な領域にある場合に現在の走行経路における車両の進行方向でSパージや強制再生が可能な経路があるか否かが判断される。Sパージや強制再生が可能な経路があると判断された場合、エンジンECU42にその旨の情報が送られて設定された経路内でSパージや強制再生が実施される。Sパージや強制再生が可能な経路が無いと判断された場合、SOxやPMの堆積により車両が走行不能となることを退避するための経路(退避走行経路)が設定・案内される。
【0049】
図3〜図6に基づいて、ナビゲーションシステムの情報に応じたSパージ及び強制再生の実施状況を具体的に説明する。
【0050】
DPF33に堆積されるPMの堆積量は、図6に示すように、差圧センサ39の値との関係でマップ化されて記憶されている。DPF33に堆積されたPMの堆積量は、車両の走行距離、図6に示したマップに基づいて推定される(導出される)。以下に示す処理では、図6に示したマップに基づいて推定されたPMの堆積量(または走行距離)により強制再生を個別に実施する動作を説明してあるが、Sパージと強制再生を同時に実施する処理とすることも、Sパージを個別に実施する処理とすることも可能である。
【0051】
処理がスタートすると、図3に示すように、ステップS0で堆積量(差圧センサ39の値に応じて図6のマップから読み出された堆積量)が基準値Aを越えているか否かが判断される。ステップS0で堆積量がA以下であると判断された場合、PMの堆積量が多くないと判断されてステップS0の処理を繰り返す。
【0052】
ステップS0で堆積量がAを越えていると判断された場合、ステップS1で現在の走行経路が放出手段の動作が可能な領域にあるか否か、即ち、強制再生が実施可能な領域にあるか否かが判断される。ステップS1で強制再生が実施可能な領域にあると判断された場合、ステップS2で強制再生が適宜実施されてリターンとなる。
【0053】
ステップS1で強制再生が実施可能な領域にはない(現在の走行経路が放出手段の動作が不可能な領域にある)と判断された場合、ステップS3で堆積量がB(A<B:所定量)を越えているか否かが判断される。ステップS3で堆積量がBを越えていると判断された場合、ステップS4でPMの堆積により車両が走行不能となるまでの残り距離がαを超えているか否かが判断される。
【0054】
図6に示したマップは、DPF33の出入口の差圧とPMの堆積量との関係を示すマップであるが、PMの堆積量は走行距離に対応しているため、車両が走行不能になる堆積量に基づいて残りの走行距離(残り距離)を類推することができる。車両が走行不能になるまでの残り距離は、堆積量と距離との関係のマップを別途用いる等して求めることも可能である。
【0055】
ステップS4で車両が走行不能となるまでの残り距離がαを超えていると判断された場合、即ち、車両が走行不能になるまでは、ある程度の距離があると判断された場合、ステップS5で、ナビゲーションシステムにより目的地が設定されているか否かが判断される。ステップS4で、残り距離がα以下であると判断された場合、即ち、車両が走行不能になるまでの距離が短くなったと判断された場合、図5に示すステップ(V)に移行する(後述する)。
【0056】
ステップS5で目的地が設定されていると判断された場合、ステップS6で目的地までに強制再生を実施できる経路があるか否かが判断される。ステップS5で目的地が設定されていないと判断された場合、図4に示すステップ(IV)に移行する(後述する)。
【0057】
ステップS6で目的地までに強制再生を実施できる経路があると判断された場合、ステップS7でそのままの経路が案内される。ステップS6で目的地までに強制再生を実施できる経路がないと判断された場合、ステップS8で強制再生可能な迂回経路(退避走行経路)が検索されて案内される。ステップS7もしくはステップS8で経路が案内された後、ステップS9で別の経路や目的地を設定していないか否か、即ち、経路変更なしか否かが判断される。
【0058】
ステップS9で経路変更なしと判断された場合、ステップS10で案内経路上(そのままの経路もしくは迂回経路)で強制再生が実施され、リターンとなる。ステップS9で経路変更なしではない、即ち、経路変更がなされたと判断された場合、ステップS4に移行して車両が走行不能となるまでの残り距離がαを超えているか否かを判断して経路案内の処理を再度実行する。
【0059】
つまり、排気成分であるPMの堆積量がB(所定量)を超えた際に、ナビゲーションシステムの情報に基づいて、現在の走行経路における前記車両の進行方向で強制再生が可能な経路の有無を判断し、強制再生が可能な経路がない場合に強制再生が可能な退避走行経路をナビゲーションシステムで設定・案内している。
【0060】
このため、PMの堆積量が所定量を超えた際に、ナビゲーションシステムの機能を十分に活用して排気浄化触媒(排気浄化ユニット)の強制再生を最適に実行させることができる。
【0061】
そして、ナビゲーションシステムで目的地の設定がある場合に、当初の目的地までの迂回経路を検索して退避走行経路とするので、PMの堆積量が増加しても目的地までの案内を継続することができる。
【0062】
図3のフローチャートに戻り、ステップS5で目的地が設定されていないと判断された場合、図4に示すように、ステップS11で車両の進行方向で強制再生が実施可能な経路を検索する。ステップS12で車両の進行方向に強制再生が実施可能な経路があるか否かが判断される。ステップS12で車両の進行方向に強制再生が実施可能な経路があると判断された場合、ステップS13で強制再生が実施可能な経路を案内し、ステップS14で車両の進行方向の経路上で強制再生を実施して図3に示すように(III)リターンとなる。
【0063】
ステップS12で車両の進行方向に強制再生が実施可能な経路がないと判断された場合、図5に示すステップ(V)に移行する。図3に示したステップS4で、車両が走行不能になるまでの距離が短くなったと判断された場合、もしくは、強制再生が実施可能な経路がないと判断された場合、図5に示すように、ステップS21で停車可能な安全な場所(退避走行経路)を検索する。
【0064】
ステップS22で停車可能な安全な場所があるか否かが判断され、ステップS22で停車可能な安全な場所があると判断された場合、ステップS23で停車可能な安全な場所を案内し、ステップS24で警告灯を点滅させる。強制再生は、エンジン1の負荷を高め、回転速度を所定回転速度に保って(例えば、3000rpm)排気温度を昇温させるので、エンジン1の音が高くなると共に触媒温度が高くなる。このため、渋滞中や可燃物の近く(草むら等)に停車した時には実施を避ける必要があり、ステップS24で安全な停車場所を案内するようにしている。
【0065】
案内された安全な場所で停車したか否かがステップS25で判断され、即ち、ステップS25では案内された位置に停車したか否かが判断される。ステップS25で案内された位置に停車したと判断された場合、ステップS26で緊急の強制再生を実施して図3に示すように(III)リターンとなる。
【0066】
つまり、車両が走行不能になるまでの距離が短くなった場合や、PMの堆積量が増加した際に目的地の設定がない場合、進行方向で強制再生が可能な退避走行経路(停車場所)を案内するので、PMの堆積量がBを越えても進行方向で強制再生が可能な安全な停車場所を案内することができる。
【0067】
図5のフローチャートに戻り、ステップS22で停車可能な安全な場所がないと判断された場合、もしくは、ステップS25で案内された位置に停車していないと判断された場合、ステップS27でPMの堆積量がC(B<C:第2所定量)を越えているか否かが判断される。ステップS27で堆積量がCを越えていると判断された場合、ステップS28で警告灯を常灯させ、ステップS29で近くのサービス工場(サービス拠点)への経路(退避走行経路)を案内して図3に示すように(III)リターンとなる。なお、第2所定量Cは、ステップS4で算出されるαの基準となる車両が走行不能になる堆積量より小さい値となる。
【0068】
このため、安全に停車できる場所に退避できない場合に(しない場合に)、PMの堆積量が更に多くなった時にはサービス拠点を案内することができる。
【0069】
従って、上述した排気浄化装置では、ナビゲーションシステムの機能を十分に活用して排気浄化ユニット10のPMの放出除去(強制再生)を最適に実行させることが可能になる。
【0070】
尚、上述した排気浄化装置ではDPF33の強制再生を用いて説明したが、NOxトラップ触媒32のSパージについても同様な処理が行える。またDPF33の強制再生とNOxトラップ触媒32のSパージを同時に実施しても良い。このときDPF33のPMの堆積量と、NOxトラップ触媒32のSOxの吸蔵量のどちらかが基準値Aを越えた場合に実施するようにした方が好ましい。
【0071】
本発明は、排気成分の堆積量が所定量を超えた際に、ナビゲーションシステムの情報に基づいて、現在の走行経路における車両の進行方向で強制再生が可能な経路の有無を判断し、強制再生が可能な経路がない場合に車両が走行不能となることを退避する退避走行経路をナビゲーションシステムで設定・案内することができれば、残り距離の判断や目的地の設定の有無の判断は適宜実施することができ、上述した実施形態例の処理に限定されるものではない。
【0072】
また、上述した実施形態例では、ディーゼルエンジンの排気浄化ユニット10を例に挙げて説明したが、ガソリンエンジンでSパージだけを実施する排気浄化ユニットを備えた排気浄化装置であっても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化する排気浄化装置の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態例に係る排気浄化装置を備えたディーゼルエンジンの全体構成図である。
【図2】制御手段の概略ブロック構成図である。
【図3】制御フローチャートである。
【図4】制御フローチャートである。
【図5】制御フローチャートである。
【図6】差圧とPMの堆積量との関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 多気筒ディーゼルエンジン(エンジン)
2 シリンダブロック
3 シリンダボア
4 ピストン
5 シリンダヘッド
6 コネクティングロッド
7 クランクシャフト
8 燃焼室
10 排気浄化ユニット
11 吸気ポート
12 クランク角センサ
13 吸気管
14 吸気弁
15 排気ポート
17 排気管
18 排気弁
20 触媒本体部
21 ターボチャージャ
22 燃料噴射弁
23 コモンレール
24 EGR系
25 スロットルバルブ
26 インタークーラー
29 サプライポンプ
30 燃料タンク
31 ディーゼル酸化触媒(酸化触媒)
32 NOxトラップ触媒
33 ディーゼルパティキュレート触媒(DPF)
34 インジェクタ
35 添加剤供給配管
36 空燃比センサ
38 圧力センサ
39 差圧センサ
41 電子制御ユニット(ECU)
42 エンジンECU
43 カーナビECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関の排気通路に設けられ排気の浄化を行なう排気浄化ユニットと、
前記排気浄化ユニットに吸蔵もしくは捕集された排気成分の堆積量を導出する堆積量導出手段と、
前記堆積量導出手段により導出された前記排気成分の堆積量に基づいて前記排気浄化ユニットを昇温して前記排気成分を放出除去する放出手段と、
前記車両の走行経路を設定・案内すると共に道路情報を提供するナビゲーションシステムと、
前記堆積量導出手段により導出された前記排気成分の堆積量が所定量を超えた際、現在の走行経路における前記車両の進行方向で前記放出手段の動作が可能な経路の有無を判断し、前記放出手段の動作が可能な経路が無いと判断された場合に、前記放出手段の動作が可能な退避走行経路を前記ナビゲーションシステムで設定・案内させる制御手段とを備えた
ことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気浄化装置において、
前記制御手段は、
前記排気成分の堆積量が前記所定量より多い第2所定量を設定し、
前記排気成分の堆積量が所定量を超えた際に、前記第2所定量になるまでの走行距離を算出し、算出された走行距離内に前記放出手段の動作が可能な経路が存在するか否かを判断することを備えたことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排気浄化装置において、
前記制御手段は、
前記第2所定量を超えるまで前記走行距離内に、前記放出手段の動作が可能な経路がない場合、安全に停車できる場所を検索して前記退避走行経路とする
ことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の排気浄化装置において、
前記制御手段は、
前記安全に停車できる場所がない時、もしくは前記安全に停車できる場所に前記車両が停車しない時に、前記堆積量導出手段により導出された前記排気成分の堆積量が前記第2所定量を超えた際に、前記放出手段の動作を実施させるためのサービス拠点を検索して前記退避走行経路とする
ことを特徴とする排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−59832(P2010−59832A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225203(P2008−225203)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】