説明

携帯内視鏡の光源装置

【課題】EOG滅菌等の減圧工程において光源装置内外の圧力差をなくして光源装置への負担を軽減し、光源装置の破損を防ぐ携帯内視鏡の光源装置を提供する。
【解決手段】内視鏡本体の光源装置接続部26に着脱自在に設けられた携帯内視鏡の光源装置30であって、光源装置30の内部と外部とを連通させる連通孔35hと、連通孔35hを閉塞可能なスライドピン37とを備え、光源装置30が光源装置接続部26から取り外されたときにスライドピン37が光源装置接続部26から離間されることにより、連通孔35hがスライドピン37によって閉塞され、光源装置30が光源装置接続部26に装着されたときにスライドピン37が光源装置接続部26に当接することにより、連通孔35hが開放されて光源装置30の内部と外部とを連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の照明用ライトガイドに照明光を供給するための光源とその光源の電源となる電池とを内蔵した携帯内視鏡の光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯内視鏡装置では、光源装置は携帯内視鏡本体の操作部に着脱可能な構成となっており、被写体を照明する照明光を伝達するための光源である電球や、光源の電源となる電池の交換などのメンテナンスを光源部ユニット単位で行えるようになっている。この光源装置は、単体で気密性を保つ構造となっている。
【0003】
この携帯内視鏡の光源装置として、気密に構成された光源装置内の圧力を調整するために、圧力を外部に逃がすためのリリーフバルブを設けることが提案されている(特許文献1参照)。また、光源装置の内部と外部とを連通させる通気路を形成して、その通気路を塞ぐように通気性はあるが通水性のない多孔質部材を設けることにより、EOG滅菌(エチレン・オキサイドガス滅菌)の際に内部圧力と外部圧力との関係がどのように変化しても、内部圧力が外部圧力に追随して変化して、内外圧力差に起因する不都合が発生しない簡易型内視鏡の光源装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3215794号公報
【特許文献2】特許第4201413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、EOG滅菌等で減圧を行う際に、光源装置内部の圧力が滅菌缶内の圧力より高くなることで圧力差が生まれ、光源装置に負担がかかり、破壊に繋がる恐れがある。
【0006】
したがって、本発明は、EOG滅菌等の減圧工程において光源装置内外の圧力差をなくして光源装置への負担を軽減し、光源装置の破損を防ぐ携帯内視鏡の光源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る携帯内視鏡の光源装置は、携帯内視鏡の内視鏡本体に照明光を供給するための光源を備え、内視鏡本体に着脱自在に設けられた携帯内視鏡の光源装置であって、光源装置は、光源装置の内部と外部とを連通させる連通孔と、連通孔を閉塞可能なスライドピンとを備え、光源装置が内視鏡本体から取り外されたときにスライドピンが内視鏡本体から離間されることにより、連通孔がスライドピンによって閉塞され、光源装置が内視鏡本体に装着されたときにスライドピンが内視鏡本体に当接することにより、連通孔が開放されて光源装置の内部と外部とを連通させることを特徴とする。
【0008】
この構成により、気密性を保った光源装置において、内視鏡本体や滅菌のためのアダプタを接続されてスライドピンが押されることにより連通孔が開放され、内外の空気が装置内外を連通可能となる。これにより、減圧工程を有する滅菌操作等において、装置内外で圧力差が生じることが抑制され、光源装置への負担が軽減される。
【0009】
光源装置は、内視鏡本体から取り外された状態において光源をオフ状態とし、光源装置が内視鏡本体に装着された状態において光源をオン状態とするスイッチ機構を備え、スイッチ機構は、連通孔とスライドピンとを備え、光源装置が内視鏡本体から取り外されたときにスライドピンが内視鏡本体から離間されて光源がオフ状態となり、光源装置が内視鏡本体に装着されたときにスライドピンが内視鏡本体に当接して光源がオン状態となることを特徴とする。
【0010】
この場合には、光源装置を内視鏡本体に接続した際に光源装置の内部と外部とを連通させて圧力を調整する圧力調整機構と、光源装置を内視鏡本体に接続した際に光源をオン状態とする光源装置のスイッチ機構とを兼ねる。
【0011】
スライドピンが内視鏡本体に当接することによりスライドピンと光源装置に設けられた光源駆動のためのスイッチが光源装置の本体側に押し込まれ、これにより光源がオン状態となることが好ましい。この場合には、光源装置が内視鏡本体に装着されると、光源がオン状態となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、EOG滅菌等の減圧工程において光源装置内外の圧力差をなくして光源装置への負担を軽減し、光源装置の破損を防ぐ携帯内視鏡の光源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る携帯内視鏡の光源装置を携帯内視鏡本体に接続した状態を示す正面図である。
【図2】光源装置を内視鏡本体から取り外した状態を示す部分断面図である。
【図3】光源装置を内視鏡本体に接続した状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施形態では、光源装置を内視鏡本体に接続した際に光源装置の内部と外部とを連通させて圧力を調整する圧力調整機構と、光源装置を内視鏡本体に接続した際に光源をオン状態とする光源装置のスイッチ機構とを兼ねる例を示す。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る携帯内視鏡の光源装置30を内視鏡本体20に接続した状態を示す正面図である。図1に示すように、携帯内視鏡10は、内視鏡本体20と、内視鏡本体20に着脱自在である光源装置30とを備える。内視鏡本体20は、把持部21と、挿入部22と、接眼部23と、圧力調整弁24と、アングルレバー25aを備えた操作部25とを備える。
【0016】
内視鏡本体20内には、光源装置30から供給された照明光を挿入部22先端から観察部位にまで導光するためのライトガイド(図示せず)と、観察部位の反射光を導光するイメージガイド(図示せず)が配設される。把持部21は、施術者が手で保持しながら各種操作を行う部分である。操作部25には、後述するように、光源装置30を装着するための光源装置接続部26が設けられる。
【0017】
接眼部23は図示しない接眼レンズを有する。挿入部22から観察部位に照射された光の反射光がイメージガイドを通して接眼部23に伝送され、得られた被写体像は接眼レンズを介して観察可能である。圧力調整弁24は、気密に構成された内視鏡内部の圧力を調整するため、把持部21と挿入部22との間に突出して設けられる。
【0018】
内視鏡本体20の操作部25には、光源装置30を装着するための光源装置接続部26が設けられる。光源装置接続部26は、例えば円筒形状を呈し、その外周部には雄ネジ(図示せず)が設けられる。また、光源装置接続部26の内部の円筒中央には、円筒軸に沿った円筒形の窪部(図示せず)が形成され、そこに光源装置30の光源部34(図2参照)が挿入される。光源装置接続部26の雄ネジを締めることにより、光源装置30は着脱自在に内視鏡本体20に装着される。
【0019】
図2は光源装置30を内視鏡本体20から取り外した状態を示す部分断面図であり、図3は光源装置30を内視鏡本体20に接続した状態を示す部分断面図である。図2、3に示すように、光源装置30の筐体31内には、電源であるバッテリ(図示せず)が内蔵される。バッテリとして、乾電池又は充電可能なニッケルカドミウム電池等のどのような電池を用いても構わない。バッテリのプラス極はメインスイッチ(図示せず)を介して筐体31内に設けられた光源駆動回路(図示せず)に接続され、マイナス極は光源駆動回路のグラウンドに接続される。
【0020】
光源用回路基板には、照明用光源として例えばLEDなどの光源(図示せず)が装着される。光源は、光源用回路基板に設けられた光源駆動回路(図示せず)によりその点灯が駆動制御される。光源用回路基板の光源駆動回路は、光源装置30の筐体31にアースされる。
【0021】
光源装置30の筐体31には、内視鏡接続部32が設けられる。内視鏡接続部32は、光源装置30を内視鏡本体20の光源装置接続部26へ取り付ける際に、光源装置接続部26に接続される。内視鏡接続部32は、筐体31に取り付けられ、Oリング34が装着された円筒形状の取付部材33と、取付部材33に螺合された円筒形状の接続部材35と、接続部材35に螺嵌された締め付け用の回転部材36と、スライドピン37とを備える。
【0022】
内視鏡接続部32の端面32aの略中央には、光源および照明用レンズが納められた円筒形状の光源部38が形成される。光源部38は、接続部材35が内視鏡接続部32の円筒軸に沿って延出した円筒形状の部材の内側に、光源および照明用レンズが納められて形成される。内視鏡接続部32の端面32aにおいて、光源部38の外周面の近傍にスライドピン37の先端部37aが位置する。
【0023】
スライドピン37は、取付部材33の内周面33aと接続部材35の外周面35aとの間に配置される。スライドピン37は、例えば導電性の材料からなる軸37sと、円筒形状の中央部37cを備え、中央部37cにはシール用のOリング37dが装着される。スライドピン37は、軸37sの長手方向が内視鏡接続部32の円筒軸に平行になるように配置される。スライドピン37の先端部37aは、接続部材35の端面に形成された連通孔35bを挿通して筐体31外部に向かって延出される。スライドピン37の基端部37bは、筐体31の端部31aを挿通して筐体31内部に向かって延出されており、スライドピン37が筐体31内部方向に移動することにより、光源を駆動するスイッチ(図示せず)を押し込み、光源をオンする。スライドピン37の基端部37bには、先端部37aの方向に向けてスライドピン37を付勢する付勢手段としての圧縮コイルスプリング39が装着されている。
【0024】
圧縮コイルスプリング39からの付勢力以外の外力が作用しないときには、スライドピン37はスイッチに接触しないため光源がオフ状態に維持され(図2参照)、スライドピン37の先端部37aが、圧縮コイルスプリング39の付勢力に抗して押し戻されると、スライドピン37は筐体31内部に向かってスライド移動してスイッチを押し込み、光源がオン状態となる(図3参照)。
【0025】
接続部材35の外周面35aには、光源装置30の内部と外部とを連通させる連通孔35hが形成される。スライドピン37の中央部37cは、連通孔35hの上をスライド移動する。連通孔35hが閉塞されることにより、光源装置30の内部は気密性を保って外部から遮断される。
【0026】
すなわち、図2に示すように、光源装置30が内視鏡本体20から取り外されると、スライドピン37の先端部37aが内視鏡本体20の光源装置接続部26から開放され、連通孔35hよりも内視鏡接続部32の端面32a側にOリング37dが位置する。したがって、スライドピン37の中央部37cの端面37eが接続部材35の連通孔35bを閉塞すると共に、連通孔35hをOリング37dにより閉塞される。なお、スライドピン37は光源を駆動するスイッチから離間されているため、光源が点灯されることはない。
【0027】
光源装置30を内視鏡本体20へ取り付ける際には、光源部38が光源装置接続部26の内部に挿入されるとともに、回転部材36の図示しない雌ネジが、手動回転操作により光源装置接続部26の雄ネジに螺合される。すなわち、回転部材36が回転されると、回転部材36は内視鏡接続部32の雄ネジから螺脱される方向に進むとともに、光源装置接続部26の雄ネジに螺合され、光源装置30の内視鏡本体20への取り付けが完了する。なお内視鏡接続部32には、回転部材36と光源装置30が一緒に回転しないよう、図示しない回転係止機構が設けられている。
【0028】
図3に示すように、光源装置30が内視鏡本体20に装着された場合には、光源装置接続部26の端部26aがスライドピン37の先端部37aに当接することにより、スライドピン37が筐体31内に向けて押し込まれる。そして、スライドピン37の中央部37cの端面37eが接続部材35の連通孔35bから離れて連通孔35bが開放されると共に、連通孔35hよりも筐体31側にOリング37dが位置することにより連通孔35hが開放されるため、光源装置30の内部と外部とが連通される。
【0029】
また、光源装置30が内視鏡本体20に装着されると、スライドピン37は筐体31内部に向かってスライド移動して図示しないスイッチを筐体31内側に向けて押し込み、光源がオン状態となって点灯される。
【0030】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、気密性を保った光源装置において、内視鏡本体に光源装置を接続することにより、スライドピンが押されて連通孔が開放され、光源装置内外の空気が連通可能となる。これにより、内視鏡本体に光源装置を接続した状態でのEOG滅菌の減圧工程等において、光源装置内外で圧力差が生じることが抑制され、光源装置への負担が軽減される。
【0031】
なお、本実施の形態では光源装置を内視鏡本体に接続して滅菌する例を示したが、光源装置をEOG滅菌する際には、光源装置そのものをEOG滅菌用アダプタに接続して行っても構わない。この場合には、EOG滅菌用アダプタにスライドピン37の先端部37aが当接することによってスライドピン37が筐体31内に向けて押し込まれ、連通孔37hが開放され、光源装置内外で圧力差が生じることが抑制される。
【0032】
また、本実施の形態では、光源装置が1つのスライドピンを備える構成の例を示したが、スライドピンを2つ設ける構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 携帯内視鏡
20 内視鏡本体
26 光源装置接続部
26a 端部
30 光源装置
31 筐体
32 内視鏡接続部
33 取付部材
35 接続部材
35b 連通孔
35h 連通孔
36 回転部材
37 スライドピン
37a 先端部
37b 基端部
37c 中央部
37d Oリング
37e 端面
37s 軸
38 光源部
39 圧縮コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯内視鏡の内視鏡本体に照明光を供給するための光源を備え、前記内視鏡本体に着脱自在に設けられた携帯内視鏡の光源装置であって、
前記光源装置は、前記光源装置の内部と外部とを連通させる連通孔と、前記連通孔を閉塞可能なスライドピンとを備え、
前記光源装置が前記内視鏡本体から取り外されたときに前記スライドピンが前記内視鏡本体から離間されることにより、前記連通孔が前記スライドピンによって閉塞され、
前記光源装置が前記内視鏡本体に装着されたときに前記スライドピンが前記内視鏡本体に当接することにより、前記連通孔が開放されて前記光源装置の内部と外部とを連通させることを特徴とする携帯内視鏡の光源装置。
【請求項2】
前記光源装置は、前記内視鏡本体から取り外された状態において前記光源をオフ状態とし、前記光源装置が前記内視鏡本体に装着された状態において前記光源をオン状態とするスイッチ機構を備え、
前記スイッチ機構は、前記連通孔と前記スライドピンとを備え、
前記光源装置が前記内視鏡本体から取り外されたときに前記スライドピンが前記内視鏡本体から離間されて前記光源がオフ状態となり、
前記光源装置が前記内視鏡本体に装着されたときに前記スライドピンが前記内視鏡本体に当接して前記光源がオン状態となることを特徴とする請求項1に記載の携帯内視鏡の光源装置。
【請求項3】
前記スライドピンが前記内視鏡本体に当接することにより、前記スライドピンと前記光源装置に設けられた光源駆動のためのスイッチが前記光源装置の本体側に押し込まれ、これにより前記光源がオン状態となることを特徴とする請求項2に記載の携帯内視鏡の光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−135575(P2012−135575A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291682(P2010−291682)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】