説明

携帯機器

【課題】 複数の筐体を機構的に接続した構成を持つ携帯機器において、各筐体間の接続部分の厚みを薄くした、携帯性に優れた携帯機器を提供する。
【解決手段】 複数の筐体を機構的に接続した構成を持つ携帯機器において、各筐体間の接続部分の厚みを薄くした、携帯性に優れた携帯機器を提供する。第1の筐体と、第1の筐体に設けられた第1のボードと、第2の筐体と、第2の筐体に設けられた第2のボードと、第1の筐体と第2の筐体とを互いの相対的な位置を可変に接続する連結部と、第1のボードと第2のボードとを光配線により接続するための少なくとも1個の光導波路を持つ光導波路フィルムとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器に関し、特定的には、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistance)、ノート型パーソナルコンピュータ等の複数の筐体を互いの相対的な位置を可変に接続する連結部を持つ携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、PDA、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯機器においては、手軽に持ち運ぶために小型、薄型の機器が強く要望されている。そこで、携帯電話やノートパソコン等では、複数の筐体を厚み10mm程度のヒンジ部によって折り畳んで携帯性を高めた機器が一般化している。
【0003】
また、これらの携帯機器の多機能化、高性能化等の進展が目覚ましい。例えば、携帯電話ではメガピクセルを超える画素を持つ撮像素子を備えたカメラの搭載やディスプレイの高精細化、大型化、あるいはテレビ機能の搭載等が急速に進展している。そのため、携帯機器内での信号伝送速度が、ますます高速化している。
【0004】
携帯電話においては、一般にキー操作部分や制御部を搭載した本体部と、ディスプレイやカメラを搭載した蓋側部とが折り畳みヒンジで結合された構成が一般化している。従来、本体部と蓋側部との信号伝送は数十本以上の同軸線を媒体として電気信号で行われていた。
【0005】
しかしながら、機器に必要とされる信号伝送速度が高速化していくものの、薄型化への要望を満たすためにヒンジ部のスペースは減少する傾向にあり、同軸線の本数を増やすには限界がある。そのため、結果として伝送できる信号速度に制限を生じていた。また、ヒンジ部の同軸線による電気信号とアンテナとの間で電磁干渉が発生し、通話品質や通話信頼性の上で課題となっていた。
【0006】
このような課題に対して、本体部と蓋側部との高速信号伝送および大量データ伝送を実現するために、信号伝送に光配線を用いる提案がされている。例えば、特許文献1では筐体間伝送手段として、光ファイバを用いて高速伝送確保と電磁干渉対策を行う例が提示されている。
【0007】
一方、光配線にフィルム状光導波路を用いて基板間を接続する例が特許文献2や特許文献3に提示されている。特許文献2には、プリント基板から取り出した複数の並列信号をそのまま複数の光信号に変換し、信号数と同数のフィルム状光導波路列を通して伝送するものが示されている。
【0008】
また、特許文献3には、ポリイミドフィルム上に光導波路のコア部とクラッド層、および金属配線を形成し、フレキシブルの電気・光配線フィルムを作製する。これを用いて電気・光配線基板上に搭載された電気・光素子間を接続するものが示されている。
【特許文献1】特開2003−244295号公報(第4頁、図1、図2)
【特許文献2】特開平01−166629号公報(第2〜3頁、第1図、第2図)
【特許文献3】特開平06−222230号公報(第3〜5頁、図2、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1においては、光ファイバを用いる例が開示されているものの光ファイバがガラス製の場合では曲げ半径が小さいと破断により断線を生じる。一方、柔軟性のあるプラスチック製の光ファイバでは径が太いため、ヒンジ部の曲げ半径が小さい場合、屈曲により光の閉じ込めができなくなってしまう。つまり、折り畳み部分を閉じた場合、あるいは折り畳み途中の状態では高速伝送ができなくなってしまい、機器を使う上で大きな制約を生じる。なお、光量損失を少なくするために、大きな曲げ半径でプラスチック製のファイバを屈曲させると、結果的に折り畳み時の厚みが厚くなり、携帯性に支障を生じる。
【0010】
また、特許文献2、特許文献3においてはフィルム状光導波路がフレキシブルであることを利用して高さや位置の異なるボード間を接続することに主眼をおいており、携帯機器のように曲げ半径が5mm以下になるくらい極端にフィルム状光導波路を屈曲させたり、折り畳んだりすることは想定していない。さらに、いずれの特許文献においてもベースフィルムにフィルム状光導波路を形成しており、ベースフィルムとフィルム状光導波路層の総厚は厚くなり曲げ半径を小さくして屈曲させると光量損失が増大する。
【0011】
また、携帯機器は、一方の筐体にバッテリーなどの電源を配置し、他方の筐体へ電源電圧を供給することにより、他方の筐体内の装置を駆動している。ところが、特許文献1は、光ファイバからなる信号線を用いて筐体間を接続することは述べているが、筐体間の電源電圧の供給は言及されていない。したがって、特許文献1に記載された信号線を携帯機器に応用する場合、光ファイバとは別に金属配線を設ける必要があった。したがって、全体としてみた場合、連結部の薄型化を達成することができなかった。
【0012】
本発明の目的は、複数の筐体を機構的に接続した構成を持つ携帯機器において、各筐体間の接続部分の厚みを薄くした、携帯性に優れた携帯機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、以下の携帯機器により達成される。第1の筐体と、第1の筐体に設けられた第1のボードと、第2の筐体と、第2の筐体に設けられた第2のボードと、第1の筐体と第2の筐体とを互いの相対的な位置を可変に接続する連結部と、第1のボードと第2のボードとを光配線により接続するための少なくとも1個の光導波路を持つ光導波路フィルムとを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の筐体を機構的に接続した構成を持つ携帯機器において、各筐体間の接続部分の厚みを薄くした、携帯性に優れた携帯機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る携帯機器の概略構成図である。図1(a)は、携帯機器の概観図であり、図1(b)は、第1の筐体と第2の筐体の連結部における光導波路フィルムの配置を説明する概念図である。なお、光導波路フィルムの配置を明確に示すために、実際上は連結部を覆う外装があるが、同図Bを含めたすべての図面において、外装は省略されている。
【0016】
また、以下では、携帯機器として一般的な携帯電話を例に説明するが、開閉自在なノート型パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistance)等の携帯機器も基本的な構造は同様である。
【0017】
図1(a)において、第1の筐体100と第2の筐体110が、開閉自在なヒンジを持つ連結部120によって連結されている。第1の筐体100には第1のボード130を備え、第2の筐体110には第2のボード140を備えている。ここで、第1のボード130は、LCD(Liquid Crystal Display)素子やEL(Electro-luminescence)素子からなる表示部150と、マイクやスピーカ等からなる音声部と、カメラ部と、制御部と、電源部と、受光/発光素子等とから構成される。また、表示部150、音声部及びカメラ部等を複数個、同一面または表裏面に設けることもできる。第2のボード140は、キー操作部と、制御部と、音声部と、電源部と、受光/発光素子等とから構成される。
【0018】
なお、図1(b)に示すように、第1の筐体100の第1のボード130と第2の筐体110の第2のボード140は、連結部120を介して曲げ半径5mm程度でも光信号を
損失なく伝達できる連結部120と略直角に配置された光導波路210を有する光導波路フィルム200で光配線されている。
【0019】
以下に、実施の形態1の光配線に用いられる光導波路フィルム200の構成について説明する。図2は、実施の形態1の携帯機器に用いられる光導波路フィルム200の構成図である。図2(a)は光導波路フィルム200の上面図、図2(b)は、図1(a)のA−A’断面図である。
【0020】
図2(b)に示すように、光導波路フィルム200は、第1のクラッド層220と第2のクラッド層230を貼り合わせ、第1のクラッド層220に形成された溝240にコア材料を埋め込んだコア250とで構成される。ここで、コア250とコア250の周囲を取り囲む第1のクラッド層220と第2のクラッド層230の一部から構成される部分、点線で示す部分を光導波路210とし、コア250と第1のクラッド層220と第2のクラッド層230とで構成される全体を光導波路フィルム200と定義し、以下においても同様とする。また、実施の形態1では、第1のクラッド層220と第2のクラッド層230はいずれも、屈折率約1.5を有する熱可塑性樹脂のシクロオレフィンポリマーからなっている。
【0021】
シクロオレフィンポリマーとしては、例えば、日本ゼオン社製シクロオレフィン樹脂「ゼオネックス(登録商標)」、JSR社製脂環式ポリオレフィン樹脂「アートン(登録商標)」、三井化学社製環状ポリオレフィン樹脂「アペル(登録商標)」等がある。これらの樹脂は、従来の光学樹脂であるアクリル樹脂、ポリカーボネートに比較して、透明性も高く、複屈折が低いという優れた光学特性と、低吸湿性、高耐熱性を有するため、信頼性の高い光導波路210を備えた光導波路フィルム200を形成することができる。また、コア250の材料としては、例えば、エポキシ系やアクリル系の紫外線硬化樹脂等を用いることができる。
【0022】
以下に光導波路フィルム200の製造方法について説明する。なお、光導波路フィルム200の製造方法は、これに限られるものではない。まず、コア250となる溝240を形成するために表面に凸形状が形成された型等を作製する。型材料としてはニッケルやシリコン、あるいは石英等が使用できる。
【0023】
特に光量損失の少ない光導波路210を作製する場合には、ニッケル等のメタル母材で、電鋳により作製した型を用いることが好ましい。また、シリコンや石英の型の場合、エッチングを用いて加工することができる。
【0024】
次に、第1のクラッド層220となるシクロオレフィンポリマーのフィルムシートをヒータ上にセットし、約150℃〜250℃程度に加熱して軟化させた後、ニッケルの型をフィルムシートに押し付けて凸形状を転写する。これにより、シクロオレフィンポリマーフィルムシートの表面にコア250に相当する溝240形状が形成される。
【0025】
次に、この溝240形状を埋め込むように紫外線硬化樹脂を塗布して、コア250を形成する。なお、光導波路210の光閉じ込めに重要なコア250の屈折率は、紫外線硬化樹脂の材料によって変えることができる。例えば、光学用途の透明なエポキシ系紫外線硬化樹脂では、イオウ等の含有量を増やすことにより屈折率を上げることができる。反対に、フッ素等の含有量を増やすことにより屈折率を下げることができる。つまり、紫外線硬化樹脂材料の組成を変更することにより、屈折率1.5〜1.7程度まで任意に調整することができる。従って、第1のクラッド層220と第2のクラッド層230に、屈折率1.5のシクロオレフィンポリマーを用いた場合には、コア250の屈折率に対する比屈折率差が0〜十数%の範囲で調整できる光導波路210を備えた光導波路フィルム200を
形成できる。なお、コア250材料として屈折率の大きい紫外線硬化樹脂を用いれば、実現可能な比屈折率差の範囲をさらに広げることができる。
【0026】
次に、シクロオレフィンポリマーのフィルム状シートからなる第2のクラッド層230を第1のクラッド層220に貼り合わせることによって光導波路210を備えた光導波路フィルム200が作製される。この場合、必要に応じて第2のクラッド層230を貼り合わせる前に溝240からあふれた紫外線硬化樹脂を取り除いておいてもよい。また、紫外線硬化樹脂を第2のクラッド層230の貼り合わせ面に塗布し、貼り合わせてもよい。
【0027】
なお、上記では、1本の光導波路210を有する光導波路フィルム200の製造方法で説明したが、複数本の光導波路210を有する光導波路フィルムも同様に作製できる。また、光導波路フィルム200の厚み(図2のt)は、開閉自在の携帯電話等の情報機器においては、曲げによる光信号の伝送損失を低減するための重要な要素である。つまり、以下で説明するように、曲げた場合、光導波路フィルム200に生じる曲げ応力によりコア250やクラッドの屈折率が変化し、それらの比屈折率差が変わるため、光の漏れによる光量損失が発生する。そこで、曲げ応力による光量損失を小さくするためには、光導波路フィルム200を薄型に形成することが効果的である。
【0028】
なお、実施の形態1の携帯機器に用いられる光導波路フィルム200の厚みは、例えばコア250の大きさを50μmの正方形断面とする場合には、第1のクラッド層220のフィルムシートの厚みを80μm、第2のクラッド層230のフィルムシートの厚みを十数μm程度で形成できる。なお、光導波路フィルム200の厚みは、第1のクラッド層220と第2のクラッド層230を貼り合わせた後、コア250が極端に変形しない程度のプレスによっても薄型化できる。また、光導波路フィルム200の厚みの下限については、コア250の大きさに応じて変化する。しかし、コア250に閉じ込められて伝搬する光信号は、実際にはコア250の周辺のクラッド部分にも光が漏れており、クラッドが薄すぎると光量損失の原因となる。そのため、コア250の周囲のクラッドは10μm以上の厚みが好ましい。従って光導波路フィルム200の膜厚としては厚みの上下方向を考慮して、コア250の大きさ+20μm以上が好ましい。
【0029】
上記条件を満たせば、フィルム厚みを極薄のものから厚いものまで、さらに、コアとクラッドの比屈折率差等を任意に選択できる光導波路フィルム200を作製できる。また、コア250の大きさによって、マルチモードはもちろんシングルモード用の光導波路210をも作り込むことも可能である。
【0030】
以上述べたように、携帯機器の薄型化には、連結部120で折り曲げられる光導波路フィルム200の光量損失をいかに低減できるかが重要である。そこで、光導波路フィルム200の折り曲げに対する光量損失について評価した。評価方法は、図3のように光導波路210を備えた光導波路フィルム200を180゜まで曲げた状態において、光導波路フィルム200の厚みおよびコアとクラッドとの比屈折率差をパラメータとし、光導波路フィルム200の曲げ半径×2と光導波路フィルム200を伝送する相対光量損失の関係により評価した。なお、曲げ半径×2の定義は、図3に示す通りであり、折り曲げ部分の厚みに相当する。
【0031】
図4は、光導波路フィルム200の厚み(t)を100μm、150μm、200μmとした時の曲げ半径×2と相対光量損失の関係(比屈折率差は5%に固定)を示している。図5は、光導波路フィルム200の比屈折率差を4%、5%、6%とした時の曲げ半径×2と相対光量損失の関係(総厚は100ミクロンに固定)を示している。なお、光量損失は、光導波路フィルム200を折り曲げずに測定した場合に対する相対値で示している。
【0032】
図4より、光導波路フィルム200が厚くなるにつれて同じ曲げ半径でも曲げによる光量損失は増大することがわかる。また、図5より光導波路フィルム200のコアとクラッドの比屈折率差が大きくなるにつれて同じ曲げ半径でも光量損失が低減することがわかる。
【0033】
なお、一般的に、曲げによる光導波路フィルム200の光量損失のメカニズムは、以下の2つが考えられる。
1)曲げ応力による材料歪みによるコア、クラッドの屈折率の変化による損失
2)光の直進する特性に起因し、曲げ半径に依存して光がコアから漏れることによる損失
【0034】
図4のように光導波路フィルム200の厚みが厚くなるにつれて光量損失が増大する理由は、上記1)に起因すると考えられる。つまり、光導波路フィルム200の厚みが厚いほど曲げ半径が同じ場合、大きな曲げ応力が光導波路フィルム200の曲げられる部分に発生する。そのため、構成材料が歪むことによる光弾性効果によってコア、クラッドの屈折率が変化し、比屈折率差が小さくなるために光導波路210内への光閉じ込め効果が低減することによるものと考えられる。
【0035】
一方、比屈折率差が小さいほど曲げ半径が同じ場合でも光量損失が増大する理由は、主に上記2)に起因すると考えられる。つまり、比屈折率差が大きければ光導波路210を伝播する光はコア250内に強く閉じ込められるため、曲げ半径が小さい場合でもコア250内に光を閉じ込めて光量損失なく伝搬できる。
【0036】
よって、実施の形態1の折り畳み型の携帯機器においては、例えばコアとクラッドの比屈折率差としては5%以上で、かつコア250を50μmの正方形断面として100μmの厚みを有する光導波路フィルム200を形成し、第1の筐体100と第2の筐体110とを連結部120を介して光配線することにより、折り畳み時の厚みが8mm(曲げ半径4mm)でも光量損失のない信号伝送を実現できる。
【0037】
なお、光導波路フィルム200の総厚を100μm以下にできる理由は、光導波路フィルム200の作製にベースフィルムを用いる必要がなく、数十μm程度の薄い樹脂シートから直接プレスにより作製できることによるものである。
【0038】
この構成により、実施の形態1の携帯機器は、折り畳み時の機器の厚みを薄型化できる。また、第1の筐体100と第2の筐体110間とを光導波路210を備えた光導波路フィルム200により光配線するため高速伝送が可能となり、表示部・カメラ部等の多機能、高性能化に有利である。さらに、光配線であるため電磁ノイズが発生しない、あるいは信号伝送が電磁ノイズに影響されないので光配線近くにアンテナを配置しても全く問題を生じない。
【0039】
図6は実施の形態1に係る携帯機器に用いる別の例の光導波路フィルム200の断面図である。実施の形態1の光導波路フィルム200に、受光素子300を搭載した第1のサブボード310と、発光素子320を搭載した第2のサブボード330とから構成されるものである。ここで、受光素子300や発光素子320は、フリップチップ実装、あるいはワイヤボンディングで第1のサブボード310、第2のサブボード330上に実装され、光導波路フィルム200の光導波路210と受光素子300や発光素子320が、使用波長に対しては少なくとも透明な接着剤で固定されている。
【0040】
なお、受光素子300や発光素子320に付帯する回路、例えば駆動回路や信号増幅回路等は、各サブボード上や各ボード上のどちらに設けても構わない。また、各サブボードや各ボードの基板材料としては、光導波路フィルム200を介してGbps以上の高速伝送を可能とするために、ガラスエポキシ基板(FR4)やセラミック基板等の高周波用の回路基板を用い、この上に駆動回路、信号増幅や信号処理回路を設ける方が好ましい。
【0041】
以下に、実施の形態1に係る携帯機器に用いる別の例の光導波路フィルム200の作製方法を説明する。まず、第1のサブボード310に受光素子300、第2のサブボード330に発光素子320を実装する。
【0042】
次に、光導波路フィルム200と発光素子320と受光素子300を使用波長においては少なくとも透明な接着剤で固定する。この方法により、光導波路フィルム200は半田リフロー工程を通らないため、携帯機器として使用される環境変化に耐えうる耐熱性を備えていればよい。つまり、光導波路フィルム200材料として、汎用の熱可塑性材料を用いることができため、高耐熱性を持つ高価なフッ素化ポリイミドや無機と有機のハイブリッド材料等を用いる必要がない。
【0043】
なお、図6では、第1のサブボード310に受光素子300を、第2のサブボード330に発光素子320を搭載する構成を示したが、第1のサブボード310と第2のサブボード330のそれぞれに受光素子300や発光素子320の組を少なくとも1組以上搭載する構成としてもよい。この場合、光導波路フィルム200の光導波路210の入出力部を分岐構造として、受光素子300および発光素子320を切り替えて入出力する必要がある。
【0044】
この構成により、第1のサブボード310上の発光素子320から出た光信号を第2のサブボード330の受光素子300へ導き、逆に第2のサブボード330上の発光素子320から出た光信号を第1のサブボード310上の受光素子300へ導くように光導波路フィルム200の光導波路210を配置すれば、入出力の光導波路210を切り替えることにより双方向の通信が可能となる。
【0045】
また、第1のサブボード310と第2のサブボード330のそれぞれに異なる波長の発光素子320を搭載し、波長多重で双方向通信する構成としてもよい。この構成により、1本の光導波路210で双方向通信を可能とすると共に、光配線のスペースを小さくできるため、限られたスペースしか許されない携帯機器への搭載に対して有効である。
【0046】
また、図7に示すように、第1のサブボード310と第2のサブボード330に電気コネクタ340、350をそれぞれ備える構成とすることもできる。この構成により、第1のボード130、第2のボード140と第1のサブボード310、第2のサブボード330が電気コネクタ340、350を介して自由に着脱可能に接続できるため、リペア性に優れた携帯機器としての利便性が高い。なお、図7では、電気コネクタ340、350を第1のサブボード310、第2のサブボード330上の裏面に配置した構成で示したが、発光素子320や受光素子300と同じ側に設けてもよい。
【0047】
また、受光素子300と発光素子320を、面受光型の受光素子や面発光型のダイオードやレーザ等の発光素子で構成してもよい。例えば、面発光型の発光素子の1つである面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Lasers)は低電流駆動、高速駆動が可能であり、アレイ化も容易であるため数Gbps〜数十Gbpsの光伝送を低消費電力で実現することができる。この構成により、端面型の発光素子や端面型の受光素子に比べて、光導波路210との位置合わせ精度が1桁程度緩和できるため実装コストを低減することができる。
【0048】
図8は実施の形態1に係る携帯機器に用いる別の例の光導波路フィルム200の上面図である。実施の形態1の光導波路フィルム200に複数本の光導波路210からなる第1の光導波路群360と第2の光導波路群370を設けたものである。また、第1のサブボード310上にはアレイ型の発光ダイオード(LED)380とアレイ型のフォトダイオード400が搭載され、第2のサブボード330上にもアレイ型の発光ダイオード390とアレイ型のフォトダイオード410が搭載されて構成される。そして、第1の光導波路群360は第1のサブボード310から送信される光信号をパラレルで伝送し、第2の光導波路群370は第2のサブボード330から送信される光信号をパラレルで伝送する。
【0049】
この構成により、第1の筐体100と第2の筐体110間での双方向の信号伝送をパラレル伝送で行うことができる。これにより、1)パラレルの電気信号をそのまま光信号に変換するだけで伝送できる。つまり、パラレル・シリアル変換を行う必要がない。2)光源として高速な受光素子・発光素子を必要でないため、安価な受光素子・発光素子のチップを用いることにより低コスト化が可能である。3)光導波路210で光信号を閉じ込めているため、双方向伝送時に高い光アイソレーションができる等の優れた効果を有する携帯機器を実現できる。
【0050】
図9は実施の形態1に係る携帯機器に用いる別の例の光導波路フィルム200の説明図である。実施の形態1の第1のクラッド層220に位置決め用マーカ420および位置決め用窪み部430を設けたものである。つまり、図9(a)の第1のクラッド層220の上面透視図に示すように、ミラー440形成用の位置決め用マーカ420および発光素子や受光素子あるいはレンズ系等を備えた受光素子や発光素子と光導波路との位置決め用窪み部430を、第1のクラッド層220に溝240パターンを形成する時に一体に設けるものである。また、図9(b)は、図9(a)のA−A’断面図を示している。
【0051】
さらに、図9(c)は、位置決め用マーカ420を用いて、ブレード加工法によりミラー440を形成し、位置決め用窪み部430に発光素子320を配置した光導波路フィルム200の断面図である。そして、図9(d)は、図9Cの構成において、光導波路とミラー440の間に、球面または非球面のレンズ450や回折格子等を配置した場合の断面図である。
【0052】
これにより、ミラー440、受光素子300や発光素子320と光導波路との位置合わせを簡略化し実装コストを低減できる。また、光導波路と受光素子300や発光素子320とをレンズ450等により高効率に光結合することが可能になると共に、位置ずれに対する許容範囲を拡大できる。
【0053】
(実施の形態2)
図10は、実施の形態2に係る携帯機器の概略構成図である。図10(a)は携帯機器の概観図であり、図10(b)は、第1の筐体100と第2の筐体110を光配線する連結部120における光導波路フィルム200の配置を説明する概念図である。実施の形態1とは、光導波路フィルム200の少なくとも光導波路210が、連結部120の回転軸160に対して斜めに配置される点で異なる以外は、同様の構成である。
【0054】
実施の形態2は、実施の形態1に係る携帯機器のさらなる薄型化を実現するものである。以下にその理由を説明する。表1は、連結部120の回転軸160と光導波路210との螺旋角Φ(図11(a)参照)に対して、光導波路フィルム200の厚みをパラメータとして、光導波路フィルム200の曲げにより発生する相対光量損失を示している。なお、相対光量損失は、図3で定義した曲げ半径×2を3mm(曲げ半径は1.5mm)、コアとクラッドとの非屈折率差を5%と一定条件の下、光導波路フィルム200を曲げない状態の光量を基準とした相対値で示している。
【表1】

【0055】
表1より、第1の筐体100と第2の筐体110とを図1(a)に示すように、螺旋角Φが90°、光導波路フィルム200の厚みが100μmの場合、連結部120の直径(曲げ半径×2)を3mmとすると、最大1dBの光量損失を生じる。そのため、光量損失なく光信号を伝送するには、実施の形態1の図4、図5で示したように、連結部120の直径(曲げ半径×2)を少なくとも8mm程度にしなければならない。
【0056】
一方、螺旋角Φを、例えば45°とすれば、連結部120の直径(曲げ半径×2)を3mmとしても光量損失はほとんどなく、さらなる携帯機器の薄型化を実現できる。しかし螺旋角Φを小さくすることは、連結部120を横切って第1の筐体100と第2の筐体110を接続する光導波路フィルム200が長くなり、結果的に携帯機器の幅を大きくするため現実的でない。例えば、携帯電話においては、その幅は40mm程度であり、第1の筐体100と第2の筐体110の最大開閉角を180°として逆算すると螺旋角Φは、6.7°程度が限界となる。
【0057】
以下に、実用的な螺旋角Φと携帯機器の連結部120の幅Wと半径Rとの関係を明確にする。一般的に、円柱形の連結部120に光導波路フィルム200を斜めに配置し、折り畳む場合、光導波路フィルム200は、半径Rを有する連結部120に対して、図11(a)、Bに示すように螺旋角Φで螺旋状に曲げられる。その時、光導波路フィルム200は、連結部120の幅Wが、携帯機器の最大開閉角度を360°で割った値に相当する螺旋ピッチとなる螺旋角Φを最小角度として曲げられることになる。例えば最大開閉角度が180°の場合、連結部120の幅Wは0.5ピッチに、150°の場合は0.42ピッチに相当する。つまり、それ以下の螺旋角Φでは、連結部120の幅Wを超えるため、第1の筐体100と第2の筐体110を接続できなくなり実用的でない。また、螺旋角Φの上限は、実施の形態1に示すように90°となる。
【0058】
そして、連結部120の半径R、連結部120の幅W、ピッチλ=2πb(0.5ピッチの場合:2W)の螺旋の場合、螺旋角Φおよび螺旋の長さS(最小の光導波路長に相当する)とすれば、以下の(数1)と(数2)を用いて、携帯機器の形状に応じて最適に設計することができる。
【数1】

【数2】

【0059】
例えば、連結部120の幅W=40mm、連結部120の半径R=1.5mmの円柱とし、0.5ピッチで接続されると仮定すれば、Φ≒6.7°、S≒40.3mmとなる。この場合、表1に示す相対光量損失から、光導波路フィルム200の厚みが200μmでも損失なく光信号の伝達をできることがわかる。
【0060】
以上述べたように、連結部120の回転軸160に対して、光導波路フィルム200を斜めに配置することにより、光導波路フィルム200の厚みが薄い場合、より連結部120の半径を小さくできるため、携帯機器のより薄型化を可能とする。また、連結部120の半径を現状(5mm)程度とすれば、厚みの厚い光導波路フィルム200を用いることができるため、低コストで量産性に優れる携帯機器を実現できる。
【0061】
なお、図12(a)に示す光導波路フィルム200を斜めに配置し携帯機器において、図12(b)のA部拡大図に示すように、光導波路フィルム200の複数本の光導波路210に対して、直交する方向にアレイ型面発光素子やアレイ型面受光素子を配置する構成としてもよい。これにより、図11に示すような光導波路フィルム200の回転軸160に対する螺旋角Φに応じて、アレイ型面発光素子やアレイ型面受光素子の素子ピッチを変える必要がない。そのため、従来の光ファイバ列との結合に用いられる安価で量産性に優れたアレイ型面発光素子やアレイ型面受光素子のチップを活用できるので携帯機器の低コスト化を実現できる。
【0062】
(実施の形態3)
図13は、実施の形態3に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの形状を説明する透視斜視図である。実施の形態1とは、連結部120の開閉近傍における光導波路フィルム200の形状が、あらかじめ曲げられた曲げ形状460で形成されているものであり、他の構成は同様である。
【0063】
実施の形態3は、実施の形態1に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルム200の曲げ応力による光量損失をさらに低減するものである。以下にその理由を説明する。実施の形態1で述べたように、曲げによる光量損失のメカニズムは、曲げ応力に起因する材料歪みによって、コア、クラッドの比屈折率差の変化により発生するものである。つまり、携帯機器の折り畳み動作により、例えば開いた状態の光導波路フィルム200の応力を最小とすれば、折り畳まれた状態(180°折り曲げ時に相当)で最大の応力が発生することになる。
【0064】
そこで、あらかじめ曲げられた曲げ形状460で形成された光導波路フィルム200を、携帯機器の第1の筐体100と第2の筐体110との光配線に用いることにより、上記最大の曲げ応力を下げることができるものである。つまり、あらかじめ曲げられた曲げ形状460での光導波路フィルム200の応力が最小となるため、曲げられた位置を中心に開閉動作を行っても、上記最大の曲げ応力を超えることはない。例えば、実施の形態2の表1において、厚み200μmの光導波路フィルム200を用い、螺旋角Φ45°で折り畳んだ場合の相対光量損失は最大0.8dBである。一方、実施の形態3により開閉角Ψを90°で作製され曲げられた曲げ形状460の光導波路フィルム200を用いて折り畳んだ場合、相対光量損失は0dBであり、曲げ応力の緩和に充分な効果があることを確認している。
【0065】
ここで、曲げられた曲げ形状460は、特に限定されないが、使用頻度の高い開閉位置での形状が好ましい。例えば、携帯電話の場合、通常第1の筐体100と第2の筐体110とが開けられた状態での使用頻度高いため、第1の筐体100と第2の筐体110との開閉角Ψが、145°〜175°に曲げられた曲げ形状460が好ましい。また、ノートパソコンやPDAでは、第1の筐体100と第2の筐体110との開閉角Ψが90°〜150°に曲げられた曲げ形状460が好ましい。
【0066】
以下に、あらかじめ曲げられた曲げ形状460を有する光導波路フィルム200の作製方法について説明する。実施の形態1で述べたように、まず、例えば第1のクラッド層220となるシクロオレフィンポリマーのフィルムシートをヒータ上にセットし、約150〜250℃程度に加熱して軟化させた後、曲げ形状をしたニッケルの型をフィルムシートに押し付けて凸形状を転写する。これにより、曲げ形状460をしたシクロオレフィンポリマーフィルムシートの表面にコア250に相当する溝240形状が形成される。
【0067】
次に、この溝240形状を埋め込むように紫外線硬化樹脂を塗布しコア250を形成する。次に、シクロオレフィンポリマーのフィルム状シートからなる第2のクラッド層230を第1のクラッド層220に貼り合わせることによって光導波路210を備えた曲げ形状460を有する光導波路フィルム200が作製される。
【0068】
この構成により、使用頻度の高い位置での形状で光導波路フィルム200が形成されているため、通常の使用状態では、光導波路フィルム200に応力が発生しない。そのため、コアとクラッドとの比屈折差の低下による光量損失がなく、通信品質を劣化させずに信号伝送ができる携帯機器を実現できる。
【0069】
また、実施の形態3を、実施の形態2に係る光導波路フィルム200に適用し、曲げられた曲げ形状460を有する光導波路フィルム200を第1の筐体100と第2の筐体110を連結する連結部120に対して斜めに配置する構成としてもよい。この構成により、光量損失をさらに低減できると共に、さらなる薄型化を実現した携帯機器を提供できる。
【0070】
なお、上記各実施の形態では、第1の筐体100と第2の筐体110を光導波路フィルム200だけで接続する構成で述べたが、低速の信号を伝送するために通常の同軸線等の金属配線を光導波路フィルム200に設けたり、または別のフレキシブル配線等で接続する構成としてもよい。この構成により、第1の筐体100か第2の筐体110に設けられた制御回路や電源等を共用することができる。
【0071】
また、低速で電磁干渉の少ない信号の場合は金属配線だけで行い、画像情報等の高速で大容量の信号を伝送する場合には光導波路フィルム200を用いた光配線で行う構成としてもよい。
【0072】
また、上記各実施の形態において、光伝送距離が問題とならない範囲内で螺旋状の光導波路フィルムを用いる構成としてもよい。また、第1の筐体100と第2の筐体110を折り畳んだ形状で形成された光導波路フィルムと使用頻度の高い曲げ位置の形状で形成された光導波路フィルムを貼り合わせて、使用位置に応じて、光導波路を切り替える構成とした光導波路フィルム構成としてもよい。これにより、使用状態での光導波路フィルムに生じる曲げ応力が緩和され、光量損失を低減した携帯機器を実現できる。
【0073】
また、図14(a)に示すように、上記各実施の形態を開閉方向の第1の連結部470と第1の筐体100または第2の筐体110を回転させる第2の連結部480を有する携帯電話等の情報機器に適用してもよい。この場合、例えば、図14(b)に示すように、光導波路フィルム200を斜めに配置する角度が小さくできないので、厚みの薄い光導波路フィルム200が好ましい。
【0074】
(実施の形態4)
図15は、実施の形態4に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの構成図である。図15(a)は上面図、図15(b)はA−A’断面図、図15(c)はB−B’断面図である。
【0075】
光導波路フィルム510は、第1のクラッド層511と、第2のクラッド層512と、コア513と、金属配線514とを備える。第1のクラッド層511と第2のクラッド層512とが貼り合わされて、コア513の周囲を囲むように配置され、クラッド515を構成する。なお、第1のクラッド層511と第2のクラッド層512とは、いずれも可視光に対して透明であるので、図15(a)は透過図として記載されている。コア513は、第1のクラッド層511に形成された溝パターンに樹脂材料を埋め込んで形成される。第2のクラッド層512には、光信号が伝送される方向に沿って、金属配線514が形成されている。金属配線514は、A−A’断面部分ではコア513に直接的に接しているが、B−B’断面部分ではコア513から離れた位置に配置されている。
【0076】
コア513は、エポキシ系の紫外線硬化樹脂からなる。また、第1のクラッド層511と第2のクラッド層512とはいずれも、屈折率約1.5の熱可塑性樹脂のシクロオレフィンポリマーからなる。熱可塑性樹脂のシクロオレフィンポリマーとしては、日本ゼオン社製シクロオレフィン樹脂「ゼオネックス(ZEONEX(登録商標))」、JSR社製脂環式ポリオレフィン樹脂「アートン(登録商標)」、三井化学社製環状ポリオレフィン樹脂「アペル(登録商標)」などを用いることが出来る。
【0077】
以上のように構成において、コア513の一方端から光信号を入射すると、光信号は、コア513内部に閉じこめられて伝搬する。光信号は、コア513内部を伝搬して他方端に到達し、他方端から出射する。なお、光信号は、半導体レーザなどの発光素子からコア513へ供給してもよいし、コア513から離れた位置にある発光素子から光ファイバ等で供給してもよい。また、光信号は、コア513からフォトダイオードなどの受光素子へ導光してもよいし、コア513から離れた位置にある受光素子へ光ファイバ等で供給してもよい。また、光導波路フィルム510は、コア513を伝搬する光信号とは別に、金属配線514により電気的な接続線として使用可能である。例えば、携帯情報機器の筐体間接続に光導波路フィルムを用いた場合、片側の筐体に電源を備えていれば、もう一方の筐体に電源がなくても金属配線を用いて電源供給を行うことができる。
【0078】
次に、光導波路フィルム510を屈曲させた際の光信号の損失について図16乃至図18を用いて説明する。図16は、光導波路フィルムを屈曲させた際の曲げ半径の定義を示す模式図である。図16において、光導波路フィルム510は、180°屈曲しており、屈曲している部分に金属配線514が位置している。図16のように、光導波路フィルム510を180゜屈曲させ、屈曲させた際の光導波路フィルム510の総厚を、曲げ半径×2と定義する。測定結果を、図17及び図18のグラフに示す。図17は、光導波路フィルム510の厚みを100ミクロン、150ミクロン、200ミクロンの3段階に変化させたときの曲げ半径と相対光損失の関係(比屈折率差は5%に固定)を示すグラフである。図18は、光導波路フィルム510の比屈折率差を4%、5%、6%の3段階に変化させたときの曲げ半径と相対光損失の関係(総厚は100ミクロンに固定)を示すグラフ(白い記号で記載)である。また、比較のため、図4および図5で示した金属配線がない場合の曲げ半径と相対光損失の関係を同一のグラフに重ねて示す(黒い記号で記載)。
【0079】
図17及び図18において、縦軸はともに、光導波路フィルム510を屈曲させた場合の光信号の損失を、屈曲させずに測定した場合に対する光信号の損失の増加分として表した光損失である。図17より、光導波路フィルム510が厚くなるにつれて、同じ曲げ半径の屈曲による光損失が増大することがわかる。また、図18より、光導波路フィルム510のコア513とクラッド515と間の比屈折率差が大きくなるにつれて、同じ曲げ半径の光損失が低減することがわかる。また、図17及び図18において、すべてのレベルにおいて、金属配線を設けたときの方が、金属配線を設けなかったときよりも、光損失が小さくなっていることがわかる。
【0080】
屈曲させた場合に光損失が発生するメカニズムとしては、(1)曲げ応力による材料歪みによるコア及びクラッド屈折率の変化(光弾性効果)に基づく効果、(2)光は直進する性質を持っているので、曲げ半径が小さくなると光がコアからリークする効果、の2点が考えられる。図17のように光導波路フィルムの厚みが厚くなるにつれて光損失が増大する理由は、主に(1)の理由であると考えられる。第2のクラッド層512及び第1のクラッド層511のフィルム厚みが厚いほど同じ曲げ半径で曲げると曲げ応力が発生するからである。材料が歪むことによる光弾性効果によって、コア513及びクラッド515の屈折率が変化し、光信号を閉じこめる効果が失われるものと考えられる。一方、比屈折率差が小さいほど同じ曲げ半径でも光損失が増大する理由は、主に(2)の理由であると考えられる。比屈折率差が大きければ、伝送する光信号はコア内に強く閉じこめられ、急な曲げ半径でコアが曲がっていても伝搬しやすくなる。すなわち、小さい曲げ半径でも光信号は、ロスなく伝達することになる。
【0081】
折り畳み型の携帯情報機器において、折り畳み時の厚みが10mmレベルのものが要望されている。さらに、折り畳み時でも筐体同士の信号伝送が滞りなく行えることが要望されている。光導波路フィルム510をこのような携帯情報端末に搭載する場合、曲げ半径×2の値は、屈曲性を確保するために、8mm以下が望ましい。このことより、光導波路フィルム510は、厚みとして100ミクロン以下、コアとクラッドの比屈折率差として5%以上にする必要がある。
【0082】
実施の形態4の携帯機器に用いられる光導波路フィルム510は、厚みとして100ミクロン以下、コアとクラッドの比屈折率差として5%以上を達成している。この特性が可能であるのは、光導波路フィルム510が、ベースフィルムを用いずに、薄い樹脂シートを直接プレスして構成しているためである。樹脂材料としては、熱可塑性樹脂であればポリメチルメタクリレート(PMMA)やアクリル樹脂やポリカーボネートなどが使用できる。しかしながら、複屈折が小さく、耐熱性が高く、汎用材料であるため安価なシクロオレフィンポリマーが望ましい。シクロオレフィンポリマーは、従来から光学樹脂として用いられているアクリル樹脂及びポリカーボネートと比較して、透明性が高く複屈折が低いという優れた光学特性を有している。また、熱可塑性樹脂のシクロオレフィンポリマーは、吸湿性が低く耐熱性が高いので、信頼性の高い光導波路フィルムを形成することができる。
【0083】
なお、従来からフィルム状の光導波路材料としてフッ素化ポリイミドが提案されている。しかしながら、フッ素化ポリイミドは、厚み方向と水平方向との間に屈折率の差(複屈折)を持つ。このため、コア及びクラッドを共にフッ素化ポリイミドをベースにして製造することにより、複屈折の影響を低減させなければならない。例えば、従来のフッ素化ポリイミドを材料とする光導波路フィルムは、モノマーの比率を変えることでコアに用いる高屈折率フッ素化ポリイミドとクラッドに用いる低屈折率フッ素化ポリイミドを得ている。ところが、フッ素化ポリイミド材料同士でコアとクラッドとの間に屈折率に差を付ける場合、基本的に同一の材料であるため、比屈折率差を大きくすることには限界があった。このように、フッ素化ポリイミドは、比屈折率差を大きくすることができないため、実施の形態4に係る光導波路フィルム510のクラッド515の材料には不向きである。
【0084】
コア513の材料としては、紫外線硬化樹脂がプロセス時間の短さから最も望ましい。材料としてはエポキシ系に限るものではなく、例えばアクリレート系やフルオレン系でもよい。また、必ずしも紫外線硬化樹脂でなくても熱硬化樹脂、常温で自然硬化する樹脂を用いてもよい。
【0085】
実施の形態4の携帯機器に用いられる光導波路フィルム510において、金属配線514は、A−A’断面部分ではコア513に直接接しているが、B−B’断面部分ではコア513から離れた位置に配置されている。金属配線514は金属を材料とするため、光信号が、コア513と金属配線514との境界面に到達すると、大部分は反射され一部は金属配線514の内部にリークし光信号を損失させる。通常は、コア513とクラッド515の比屈折率差により光信号を閉じこめた方が、コア513と金属配線514との境界面で光信号を反射して伝送するよりもはるかに損失は小さい。しかしながら、前述のように、光導波路フィルム510を屈曲させて使用する場合、(2)の曲げ半径が小さくなり光がコア513からリークする効果により、屈曲された部分でコア513とクラッドの比屈折率差により光信号を閉じこめることが困難になる。そこで、光導波路フィルム510は、屈曲される部分でコア513と金属配線514との境界面で光信号を反射して伝送することにより、その部分での光信号の損失を小さくしている。この結果、光導波路フィルム510は、A−A’断面付近で金属配線514がコアからの光信号の漏れを防止するので、A−A’断面付近で曲げ半径を十分小さくさせて、屈曲して使用することができる。
【0086】
光導波路フィルム510の製造方法の一例を、以下に示す。なお、光導波路フィルムの製造方法は、以下に説明する方法に限るものではない。
【0087】
はじめに、コア513に対応する凸形状が表面に形成された型を用意する。型材料としてはニッケルやシリコン、あるいは石英なども使用できる。これらのうち、特に低ロスの光導波路フィルム510を作製する場合、型材料としてニッケルなどの金属を母材とし、製造方法として電鋳を用いることが望ましい。型材料としてシリコンや石英を材料とすると、製造方法としてエッチングを用いる必要がある。ところが、紫外線硬化樹脂をスピンコートで塗布し、ドライエッチングを用いてコアをパターニングするとコア513の側面の荒れが大きくなる。したがって、光損失が小さいコア513を製造するためには、電鋳により加工されたニッケル等の金属型が望ましい。ニッケル型によるプレスを用いると、非常に平滑なコア513の側面が得られ、伝送する際の光信号の損失も0.1dB/cm以下という極めて低い値にできる。
【0088】
次に、シクロオレフィンポリマーのフィルムシートをヒータ上にセットし、約150〜230°C程度に加熱して軟化させ、型を押し付けて型形状を転写する。これにより、フィルムシートの表面に、コア513に相当する溝パターンが形成され、第1のクラッド層511を得ることができる。さらに、溝パターンを埋め込むようにエポキシ系の紫外線硬化樹脂を塗布する。溝パターンにエポキシ系の紫外線硬化樹脂が充填された第1のクラッド層511に、予め金属配線514を形成したフィルムシート状の第2のクラッド層512を上から重ね合わせて接着する。第2のクラッド層512を重ね合わせた後、所定波長の紫外線をコア513に充填された樹脂が硬化する程度に照射して光導波路フィルムが完成する。
【0089】
なお、必要に応じて、第2のクラッド層512を貼り合わせる前に、溝パターンからあふれた紫外線硬化樹脂を取り除く工程を加えてもよい。あるいは、紫外線硬化樹脂を第2のクラッド層512側の貼り合わせ面に塗布しておいてもよい。第2のクラッド層512に形成された金属配線514は、金や銅を材料とすることができる。必要に応じて、第2のクラッド層512と金属配線514との間に、中間膜を介してもよい。
【0090】
なお、コア513は、使用するエポキシ系の紫外線硬化樹脂の材料によって、屈折率を変えることができる。例えば、光学用途の透明なエポキシ系の紫外線硬化樹脂は、イオウ等の含有量を増やすことにより屈折率を上昇させることができる。逆に、光学用途の透明なエポキシ系の紫外線硬化樹脂は、フッ素等の含有量を増やすことにより屈折率を降下させることができる。このように各材料組成を変更することにより、コア513の屈折率を1.5〜1.7の範囲にすることができる。従って、クラッドに屈折率1.5のシクロオレフィンポリマーを用いた場合、クラッドとコアの間の比屈折率を最大で10数%の範囲の光導波路フィルムを得ることができる。さらに、屈折率の高い紫外線硬化樹脂も存在するため、比屈折率差がさらに大きい光導波路フィルムを得ることも可能である。
【0091】
なお、コア513とクラッド515との間の比屈折率差を大きくすると、コア513内部に多数のモードが発生し、各モード間の光伝送速度差が通信上影響することを考慮する必要がある。一般に、光導波路フィルムに10Gbps程度のデジタルパルスの光信号を送った場合、光信号の時間間隔は0.1nsecとなる。例えば、開口数(NA)が0.4の光導波路で光信号を伝送する場合、50cm伝送時のモード分散は、0.08nsecである。光導波路フィルム510を携帯機器に搭載する場合、10cm程度の伝送距離があれば十分であるため、光導波路フィルム510のように高い比屈折率差にしても、光信号が受ける通信上の影響は無視できる。発明者らは、実際にこのような条件で長さ10cmの光導波路フィルムを作製し、10Gbpsの光信号の伝送する実験を行った結果、十分な伝送性を確認することができた。実際に作成した光導波路フィルム510は、折り曲げて使用した場合も伝送ときの性能劣化も全く見られなかった。
【0092】
光導波路フィルム510は、第1のクラッド層511と、第2のクラッド層512との材料となるフィルムシートのプレス前の初期厚みとプレス条件とにより、厚み(図15のtに相当)を変化させることができる。コア513を50ミクロン正方形断面とする場合、第1のクラッド層511に用いるフィルム状シートは、厚みが80ミクロン以上のものを用いる。このようなフィルム状シートに型でプレスを行うことにより、コア513に対応する溝パターンの転写が可能なフィルムの極薄化が可能になる。また、第2のクラッド層512に用いられるフィルムシートは、10数ミクロン以上のものが使用可能である。なお、光導波路フィルムの総厚については第1のクラッド層511と第2のクラッド層512とを貼り合わせた後に、コア513が極端に変形しない程度でプレスすることによっても低減することができる。
【0093】
光導波路フィルム510の実用可能な厚みの下限値は、コア513のサイズに応じて変わる。光はコアに閉じこめられて伝搬するが、実際には周辺のクラッドにも光がしみ出しており、クラッドが薄いと光損失の原因となる。このため、コア513を取り巻くクラッドの厚みは、10ミクロン以上が望ましい。従って、光導波路フィルムの膜厚は、コア513とクラッドの厚みの上下方向とを考慮して、コア513のサイズ+20ミクロン以上が望ましい。
【0094】
以上のように、実施の形態4の携帯機器に用いられる光導波路フィルムは、金属配線の一部が前記コアに接することによりコアからの光信号の漏れを防止するので、コアとクラッドの比屈折率差により光信号を閉じこめることが困難になる屈曲部分でも金属配線により光信号のリークを防止する。したがって、実施の形態4の携帯機器に用いられる光導波路フィルムは、より小さな曲げ半径で屈曲することが可能になる。
【0095】
また、実施の形態4の携帯機器に用いられる光導波路フィルムは、コアと前記クラッドとの間の比屈折率差が5%以上であり、総厚が100μm以下であるので、屈曲させても十分薄く光信号の伝送を滞りなく行うことができる。
【0096】
また、実施の形態4の携帯機器に用いられる光導波路フィルムは、クラッドがシクロオレフィンポリマーからなるので、透明性が高く複屈折が低いという優れた光学特性を持ち、吸湿性が低く耐熱性が高いため信頼性の高い光導波路フィルムである。さらに、実施の形態4の携帯機器に用いられる光導波路フィルムは、コアが紫外線硬化樹脂からなるので、比屈折率差が高い光導波路フィルムを提供することができる。
【0097】
また、実施の形態4の携帯機器に用いられる光導波路フィルムは、クラッドは、第2のクラッド層と、コアに対応した形状を持つ溝パターンを有する第1のクラッド層とを含み、コアは、第1のクラッド層の溝パターンに充填された樹脂からなるので、屈曲させても十分薄く製造が簡単な光導波路フィルムを提供することができる。
なお、実施の形態4の携帯機器に用いられる光導波路フィルムは、十分な比屈折率差を有し、厚さを薄いものから厚いものまで設計可能であるため。マルチモード用及びシングルモード用のいずれにも対応することができる。
【0098】
(実施の形態5)
図19は、実施の形態5に係る光導波路フィルムの構成図である。図19(a)は上面図、図19(b)は側面図、図19(c)はA−A’断面図である。光導波路フィルム550は、実施の形態4の携帯機器に用いられる光導波路フィルム510と、ほぼ同様の構成を示し、コア553、第1のクラッド層551、第2のクラッド層552及び金属配線554の概略の構成は等しい。ただし、両端部が斜めに切断されている点が異なる。光導波路フィルム550のコア553は、両端部の斜めに切断された部分にミラー555を形成している。コア553に入射する光信号は、ミラー555により伝搬方向に垂直な方向から伝搬方向へ90°折り曲げられる。また、コア553の内部を伝送される光信号の光路は、ミラー555により90°折り曲げられる。2個のミラー555に併せて、第1のクラッド層551と、第2のクラッド層552と、金属配線554とのそれぞれの端部は、斜めに切断されている。
【0099】
このように、光導波路フィルム550は、光信号の伝送方向に対して垂直な方向から光信号を入射させ、ミラー555で反射させてコア553に光信号を結合する。また、光導波路フィルム550は、コア553の内部を伝送した光信号を、ミラー555で反射させてコア553から光信号を出射する。このように構成することにより、発光素子として面発光型の素子を、受光素子として面受光型の素子を用いることができる。面発光型の素子や面受光型の素子は、いずれも位置合わせの許容幅が広く実装が容易であるため、製造しやすい光導波路フィルムを提供することができる。
【0100】
光導波路フィルム550は、実施の形態4で述べた光導波路フィルム510の製造方法において、第1のクラッド層511を型により形成する際に、ミラー555を同時に成形することにより製造可能である。この製造方法では、コア553を成型により製造した後に、第1のクラッド層551と、第2のクラッド層552と、金属配線554とを、両端部が平面になるように切断する。また、別の製造方法として、先に説明した実施の形態4に係る光導波路フィルム510を製造した後、断面が90°のV字ブレードで切断して端部に45°ミラーを作成してもよい。光導波路フィルム550において、ミラー555は全反射を用いているが、金などの金属膜をコーティングしてもよい。
【0101】
図20は、実施の形態5に係る光導波路フィルム550に、面発光素子及び面受光素子を実装した状態を示す側面図である。面発光素子562は、光導波路フィルム550の一方の端部のミラー555に対応する位置に固定される。面受光素子563は、光導波路フィルム550の他方の端部のミラー555に対応する位置に固定される。光導波路フィルム550を用いることにより、面発光素子562や面受光素子563との接続が非常に容易となる。光導波路フィルム550に面発光素子562や面受光素子563を実装する場合、光導波路フィルム550又は面発光素子562もしくは面受光素子563のいずれかに、光信号に対して光学的に透明な接着剤564を塗布した後、両者を接触させて固定する。接着剤は、紫外線硬化樹脂を用いることができる。
【0102】
図21は、実施の形態5の変形例に係る光導波路フィルムに、発光ダイオードアレイを接着する様子を示す斜視図である。図21において、光導波路フィルム573は、実施の形態5で説明した光導波路フィルム550と概略構成は等しく、クラッド内部に、複数のコア574がそれぞれ独立に形成されている点が相違する。光導波路フィルム573の各コア574は、それぞれの端部にミラーを持つ。発光ダイオード(LED)アレイ571は、ウェハー572上に所定間隔を隔てて複数形成される。このとき、発光ダイオードアレイ571上の発光点の数及び間隔と、コア574の数及び間隔とをほぼ一致させることにより、発光ダイオードアレイ571の複数の発光点から放射された光信号を各コア574に結合することができる。このような光導波路フィルムは、コア574と各LEDの位置合わせを行ってから接着固定して製造される。
【0103】
図20及び図21に記載したような面発光素子や面受光素子は、端面発光素子や端面受光素子に比べて、光導波路との位置合わせの際の調整精度が1桁程度緩和できる。このため、面発光素子や面受光素子を、光導波路フィルムに実装する際の調整が容易となり、実装コストの削減することができる。また、面発光型素子の一つである面発光レーザ(VCSEL)は低電流駆動、高速駆動が可能であり、アレイ化も容易である。したがって、面発光素子としてVCSELを用いることにより、数Gbps〜数10Gbpsの光伝送を、低い消費電力で実現することができる。図21を用いて説明した発光ダイオードアレイ571をVCSELアレイとしても、同様の方法を用いて実装することができる。
【0104】
光導波路フィルム550は、VCSELを光源に用いる場合、特に有効である。VCSELは、光出力を上げるにつれてビーム広がり角が大きくなるという性質を持つ。ところが、前述したフッ素化ポリイミドを光導波路フィルムの材料に採用した場合、コアとクラッドの比屈折率差を大きくすることができないので、光導波路フィルムの全反射条件は、より厳しくなってしまう。このため、フッ素化ポリイミドからなる従来の光導波路フィルムの場合、開口数(NA)は0.2〜0.3程度しかとれなかった。したがって、VCSELの光出力を上げても、伝搬方向に対して大きな角度で光導波路フィルムに入射する光信号を取り込むことができず、VCSELとコアの結合ロスはVCSELの光出力とともに増大していた。これに対して、実施の形態5の光導波路フィルム550は、コアとクラッドの屈折率差を極めて大きくとれるため、VCSELの光出力を上げてもVCSELと光導波路の結合ロスはほぼ一定である。発明者らは、実施の形態5に係る光導波路フィルム550を製造し、VCSELからの光信号を光導波路フィルムに結合する実験を行ったところ、VCSELの光出力を上げてもVCSELと光導波路の結合ロスが一定であることが確認された。
【0105】
このように、実施の形態5の光導波路フィルムは、コアが、端部に光信号の光路をほぼ90°折り曲げる反射面持つので、光源側に形成した場合は光源として面発光素子を用いることができ、受光側に形成した場合は受光部として面受光素子を用いることができる。したがって、光導波路フィルムを製造する際、特に受発光素子を実装する調整が容易となり、コストの削減することができる。特に、実施の形態5の光導波路フィルムは、光源としてVCSELを用いた場合、VCSELの持つ長所である低電流駆動、高速駆動を行うことができ、有効である。
【0106】
(実施の形態6)
図22(a)は、実施の形態6に係る光導波路フィルムの第1のクラッド層の製造工程の途中段階を示す要部の上面図であり、図22(b)は、実施の形態6に係る光導波路フィルムの第1のクラッド層のA−A’断面図である。実施の形態6に係る光導波路フィルム580の第1のクラッド層581は、実施の形態5の第1のクラッド層551と概略等しい構造を有するが、第1のクラッド層581の溝パターン582が形成される表面に切断加工用マーカ583が形成されている点と、溝パターン582が形成される表面とは反対の裏面に位置決め用マーカ584が形成されている点で相違する。
【0107】
切断加工用マーカ583は、十字形状を持つ凹部である。切断加工用マーカ583は、コアに対応する溝パターンを形成する際に、予め型に形成しておいた凸部を転写して形成される。切断加工用マーカ583は、コアの端部にミラーを形成するために光導波路フィルム580を斜めに切断する際のブレードの位置を決定する基準となる。また、位置決め用マーカ584は、所定の深さを有する凹部である。位置決め用マーカ584も、コアに対応する溝パターンを形成する際に、予め型に形成しておいた凸部を転写して形成される。位置決め用マーカ584は、光導波路フィルムに面発光素子又は面受光素子を実装する際の位置決め基準となる。したがって、位置決め用マーカ584は、実装する面発光素子又は面受光素子の入射側の形状に合わせて形成される。
【0108】
切断加工用マーカ583及び位置決め用マーカ584は、第1のクラッド層581にコアに対応する溝パターン582を形成する際に、同時に形成される。したがって、切断加工用マーカ583及び位置決め用マーカ584は、溝パターン582に対して相対的な位置ずれが生じない状態で成形することができ、容易に高い精度の第1のクラッド層581を形成することができる。また、第2のクラッド層を貼り合わせた後に、切断加工用マーカ583を目印にブレード加工でミラーを形成するので、コア及びクラッドと、ミラー及び受発光素子との間の位置決めが容易に高精度で可能になる。したがって、光導波路フィルム580を製造する際の実装コストを大幅に低減することができる。
【0109】
なお、切断加工用マーカ583に換えて、光導波路フィルムを所定の伝送長に切断するための基準となるマーカを形成したり、コアを形成する際の樹脂の充填を開始する位置を決める基準となるマーカを形成してもよく、要は後加工のための基準となるマーカであればよい。また、位置決め用マーカ584に換えて、光信号を入出力するための光ファイバの位置合わせの基準となるマーカを形成したり、光導波路フィルムにより接続されるべき基板の位置を決定する基準となるマーカを形成してもよい。さらに、これらのマーカを適宜組み合わせて複数形成してもよい。
【0110】
このように、実施の形態6の光導波路フィルムは、第1のクラッド層が、接続されるべき素子の位置及び/又は後加工の基準となるマーカを有しているので、後加工や組立調整を容易に行うことができる。したがって、実施の形態6の光導波路フィルムは、実装コストを低減することができる。
【0111】
(実施の形態7)
図23は、実施の形態7に係る光導波路フィルムの断面図である。実施の形態7に係る光導波路フィルム590は、実施の形態5の光導波路フィルム550と概略等しい構造を有するが、光導波路フィルム590と面発光素子562との間にレンズ素子592が配置されている点が相違する。
【0112】
光導波路フィルム590は、面発光素子562から放射された光信号がレンズ素子592により集光され概略平行光として光導波路フィルム590に入射する。入射した光信号は、ミラー555により光路が90°折り曲げられてコア553の内部を伝送されていく。レンズ素子592は、第1のクラッド層551にホルダー部591を介して固定される。ホルダー部591は、第1のクラッド層551の一部の肉厚を厚くし一体的に形成しても別部品を取り付けてもよいが、一体で形成する方が調整の容易さや製造工程の削減から望ましい。また、レンズ素子592は、例えば複数のコア553を有する場合は、各コアの数と同じ数だけ形成される。レンズ素子592は、面発光素子562の間に予め決定された距離をおいて対向している。面発光素子593は使用波長で透明な接着剤564を介して固定されている。レンズ素子592が形成される部分は、端部であるので光導波路フィルム590の屈曲には何ら影響は生じない。
【0113】
実施の形態7のように、面発光素子562とコア553との間にレンズ素子592を設けると、高結合効率で光信号をコア553へ導くことができる。また、レンズ素子592を介することによって面発光素子562とミラー555の位置ずれ許容誤差も緩和することができる。さらに、レンズ素子592やホルダー部591を、第1のクラッド層551に溝パターンを形成する際に、同時にプレスによって一括成形すれば大量生産が容易である。
【0114】
なお、実施の形態7において、レンズ素子592は、球面、あるいは非球面形状のレンズ素子を図示したが、これに限るものではない。例えば、集光作用を持つ回折格子やフレネルレンズでもかまわない。また、本実施の形態では光導波路フィルムと面発光素子について説明したが、面受光素子側にレンズを設けても同様の効果が得られる。
【0115】
(実施の形態8)
図24は、実施の形態8に係る光導波路モジュールの側面図である。実施の形態8の光導波路モジュール600は、光導波路フィルム601と、第1のサブボード603と、第2のサブボード605とを含む。光導波路フィルム601は、図19及び図20を用いて説明した光導波路フィルム550と同一構成を有しており、面発光素子602及び面受光素子104が実装されている。第1のサブボード603は、発光素子602を含む所定の素子を搭載する。第1のサブボード603は、電気コネクタ606を持つ。第2のサブボード605は、受光素子604を含む所定の素子を搭載する。第2のサブボード605は、電気コネクタ607を持つ。また、第1のサブボード603は、光導波路フィルム601に設けられた金属配線により、第2のサブボード605と電気的に接続される。金属配線は、電源からの電圧供給に用いられる。面発光素子602及び面受光素子604は、フリップチップ実装、あるいはワイヤボンディングによりそれぞれのサブボードに実装される。面発光素子602及び面受光素子604は、前述したように、光導波路フィルム601の両端部に、使用波長に対して透明な接着剤で固定されている。
【0116】
図25は、実施の形態8に係る光導波路モジュールの使用態様を示す側面図である。図25において、光導波路モジュール600は、2つのメインボード612及び613の間を接続する。光導波路モジュール600は、各サブボードに設けられた電気コネクタによって各メインボードにそれぞれ取り付けられる。メインボード612及びメインボード613は、各サブボードを介して、光導波路モジュール600に含まれる光導波路フィルムのコアを伝送される光信号により接続される。また、メインボード612及び613は、各サブボードを介して、光導波路モジュール600に含まれる金属配線によっても電気的に接続される。すなわち、光導波路モジュール600は、第1のサブボード603と、第2のサブボード605とを、光導波路フィルムが伝送する光信号と金属配線とによりそれぞれ独立に電気的に接続する。
【0117】
光導波路モジュール600は、実施の形態5で説明した光導波路フィルム550と同様の構成を持つ光導波路フィルム601を含んでいるので、屈曲して使用しても金属配線の一部がコアに接することによりコアからの光信号の漏れを防止する。したがって、コアとクラッドの比屈折率差により光信号を閉じこめることが困難になる屈曲部分でも金属配線により光信号のリークを防止できる。このため、光導波路モジュール600は、より小さな曲げ半径で屈曲することが可能になる。
【0118】
また、光導波路モジュール600を用いることにより、メインボード612及びメインボード613に光学的な結合を設ける必要がない。したがって、メインボード612及びメインボード613は、従来のプリント基板と同様の材料、プロセスを用いればよく、光/電気の両素子が混載することによる回路配線上の制約は生じない。この場合、メインボード612及びメインボード613は、受発光素子に付帯する電気回路及び電源供給ラインのみを付加しておくだけでよい。なお、受発光素子に付帯する回路、例えば駆動回路や信号増幅回路は、サブボード、メインボードのどちらに設けても構わない。ただし、Gbps以上の高速伝送を行う場合には短配線化の観点から、各サブボードをガラスエポキシ材料やセラミックなどの高周波向け基板により作成し、このサブボード上に受発光素子の駆動回路、信号増幅回路、処理回路等を設ける方が望ましい。
【0119】
光導波路モジュール600は、電気コネクタを有しているが、各電気コネクタを用いずにメインボードにサブボードを直接実装しても良い。ただし、電気コネクタを用いれば、サブボードとメインボードの間で自由に着脱できるため利便性は高い。また、光導波路モジュール600は、各電気コネクタ606、607をサブボード上の裏面に配置しているが、受発光素子と同じ側に設けても構わない。電気コネクタを受発光素子とは異なる側の裏面に設ける際には表裏を貫通するビアで電気コネクタとの電気的な導通を取ることが望ましい。
【0120】
光導波路モジュール600は、各サブボードに発光素子や受光素子、電気コネクタを実装した後、最後に光導波路フィルム601と発光素子、受光素子を透明な接着剤で固定する製造方法により製造することが望ましい。このような手順によれば半田リフロー工程を通らないため、光導波路フィルムに求める耐熱性を低くできる。半田リフロー工程を通過しない工程を採用した場合、光導波路フィルム601は、通常の使用環境に耐えうる耐熱性を備えていればよい。これにより、コア及びクラッドの材料としては汎用の熱可塑性材料を用いることができ、高耐熱性をもつが高価なフッ素化ポリイミドや無機有機ハイブリッド材料などの光導波路材料を用いる必要がない。
【0121】
光導波路モジュール600は、メインボードの材料や電気回路レイアウトにほとんど変更を行うことなく、メインボード間の光配線が可能である。また、光導波路フィルムは、屈曲性と高速性を備えている上に、光信号の接続であるから耐EMC性(Electro-Magnetic Compatibility:電磁環境適合性)を兼ね備えている。したがって、係る光導波路モジュール600は、メインボードの間を高速に接続でき、接続部を屈曲して使用できる。また、光導波路フィルムは、金属配線を持つため、光信号とは別に装置を電気的に接続することもできる。以上のような特徴から、光導波路モジュール600は、折り畳みが可能な携帯電話や、折り畳みが可能なノート型パーソナルコンピュータにおける筐体間接続用途として最も好適である。また、メインボード内での任意位置に光配線を導入する用途に用いても、レイアウトの自由度を高くすることができる。
【0122】
光導波路モジュール600において、第1のサブボード603と第2のサブボード605とのそれぞれに、受光素子及び発光素子の両方を搭載し、対応するコアを複数形成してもよい。このように構成すると、第1のサブボード603の発光素子から出た光信号を第2のサブボード605の受光素子へ導き、逆に第2のサブボード605の発光素子から出た光信号を第1のサブボード603の受光素子へ導くことができ、双方向の通信が可能となる。さらに望ましくは、異なる波長を独立して発信する発光素子を光導波路フィルム601の異なる端部に配置して、波長多重で双方向通信を行ってもよい。この構成により、光導波路フィルムのコアが1本であっても双方向通信が可能となり、配線太さを極端に細くすることができる。特に、限られたスペースしか許されない機器への搭載に対して非常に有効である。
【0123】
なお、実施の形態8の光導波路モジュール600は、実施の形態5の光導波路フィルム550を備える例を示したが、各実施の形態のいずれの光導波路フィルムを用いてもよいことはいうまでもない。
【0124】
ここで、各実施形態のような光導波路フィルムを用いた光配線と、従来の同軸配線とを比較する。従来の同軸配線の場合、伝送速度を高めるためには、モード分散への考慮から配線径を細くするほうが望ましい。しかしながら、同軸配線の配線径を細くすると損失が大きくなり消費電力も増してしまう。したがって、伝送速度と消費電力のバランスをとるための最適な配線径が存在している。一般的には、同軸配線の配線径は数百ミクロンであり、隣接する配線との干渉を防ぐため、数百ミクロン以上の間隔を置いて配線を配置する必要がある。したがって、同軸配線を用いる場合には必然的に配線幅が大きくなる。
【0125】
一方、光導波路フィルムは、コアのサイズは30〜50ミクロン、隣接する光導波路間の距離は20ミクロン程度あれば干渉を起こさない。したがって、光導波路フィルムは、同じ本数の配線数であっても、従来同軸配線に比べて少なくとも1/5〜1/10の配線太さにすることができる。
【0126】
したがって、光導波路モジュールを配線に適用した携帯電話は、連結部に細い配線を通すだけで、従来の同軸配線と同等の信号をやりとり可能にすることができる。また、同軸配線により体積を必要とする電気コネクタが不要となり、機構上の制約も小さくすることができる。したがって、ヒンジ部自身を小型にすることができ、さらに自由度の高い連結部の機構の導入ができる。また、光導波路フィルムは、筐体間の高速伝送が可能で耐EMC効果も極めて高いので、アンテナ感度を高めることができアンテナが小型化でき、電気シールド部品の削減も可能となる。
【0127】
(実施の形態9)
図26乃至図29は、上述の各実施の形態で説明した光導波路フィルムを用いた携帯機器の具体的な適用例である携帯電話の外観図である。以下、光導波路フィルムが適用可能な接続部の形状例について、図面を参照して説明する。
【0128】
図26(a)は、実施の形態9に係る携帯電話の正面図、図26(b)は、実施の形態9に係る携帯電話の側面図である。この携帯電話1000は、第1の筐体1010と、第2の筐体1020と、ヒンジである連結部1030とを備える。第1の筐体1010は、画像を表示するディスプレイ装置などを実装した第1のボード1040を内蔵する。第2の筐体は、入力キー、制御回路などを実装した第2のボード1050を内蔵する。連結部1030は、第1の筐体1010と第2の筐体1020とをX方向に回転可能に連結することにより、両筐体を折り畳み可能に接続している。携帯電話1000は、先に図1、図10及び図12を用いて説明した機器と基本的に等しい構造を具備しており、第1のボード1040と第2のボード1050とを、各実施の形態で説明した光導波路フィルムによって接続している。
【0129】
図27(a)は、実施の形態9の第1変形例に係る携帯電話の正面図、図27(b)は、実施の形態9の第1変形例に係る携帯電話の側面図である。この携帯電話1100は、第1の筐体1110と、第2の筐体1120と、ヒンジである連結部1130と、連結部1140とを備える。第1の筐体1110は、画像を表示するディスプレイ装置などを実装した第1のボード1150を内蔵する。第2の筐体1120は、入力キー、制御回路などを実装した第2のボード1160を内蔵する。連結部1130は、第1の筐体1110と第2の筐体1120とをX方向に回転可能に連結することにより、両筐体を折り畳み可能に接続している。また、連結部1140は、第1の筐体1110と第2の筐体1120とをY方向に回転可能に連結することにより、両筐体を平面内で回転可能に接続している。携帯電話1100は、先に図14を用いて説明した機器と基本的に等しい構造を具備しており、第1のボード1150と第2のボード1160とを、各実施の形態で説明した光導波路フィルムによって接続している。
【0130】
図28(a)は、実施の形態9の第2変形例に係る携帯電話の正面図、図28(b)は、実施の形態9の第2変形例に係る携帯電話の側面図、図28(c)は、実施の形態9の第2変形例に係る携帯電話の筐体回転時の正面図である。この携帯電話1200は、第1の筐体1210と、第2の筐体1220と、連結部1230とを備える。第1の筐体1210は、画像を表示するディスプレイ装置などを実装した第1のボード1240を内蔵する。第2の筐体1220は、入力キー、制御回路などを実装した第2のボード1250を内蔵する。連結部1230は、第1の筐体1210と第2の筐体1220とをY方向に回転可能に連結することにより、両筐体を折り畳み可能に接続している。携帯電話1200は、第1のボード1240と第2のボード1250とを、各実施の形態で説明した光導波路フィルムによって接続している。
【0131】
図29(a)は、実施の形態9の第3変形例に係る携帯電話の正面図、図29(b)は、実施の形態9の第3変形例に係る携帯電話の側面図である。この携帯電話1300は、第1の筐体1310と、第2の筐体1320と、連結部1330とを備える。第1の筐体1310は、画像を表示するディスプレイ装置などを実装した第1のボード1340を内蔵する。第2の筐体1320は、入力キー、制御回路などを実装した第2のボード1350を内蔵する。連結部1330は、第2の筐体1320を第1の筐体1310上をZ方向にスライド可能に連結することにより、両筐体の収納時の長辺方向の大きさを小さくしている。携帯電話1300は、第1のボード1340と第2のボード1350とを、各実施の形態で説明した光導波路フィルムによって接続している。
【0132】
以上のように、実施の形態9に係る携帯電話は、いずれも第1の筐体と、第2の筐体と、第1の筐体と第2の筐体とを互いの相対的な位置を可変に接続する連結部とを備え、両筐体間の信号接続を光導波路フィルムで行っているので、収納時にコンパクトで薄型の携帯機器を実現している。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の携帯機器は、特に携帯電話やノートパソコンといった多機能性と薄型化の両立が必要な携帯機器に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】(a)は、実施の形態1に係る携帯機器の概観図、(b)は、実施の形態1に係る携帯機器の光導波路フィルムの配置を説明する概念図
【図2】(a)は、実施の形態1に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの上面図、(b)は、実施の形態1に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムのA−A’断面図
【図3】実施の形態1に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの厚みを変えたときの曲げ半径×2と光損失の関係を示すグラフ
【図4】実施の形態1に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの比屈折率差を変えたときの曲げ半径×2と光損失の関係を示すグラフ
【図5】実施の形態1に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムにおいてフィルムのコアとクラッドの比屈折率差をパラメータとした時のフィルムの曲げ半径×2と相対光量損失の関係を示す図
【図6】実施の形態1に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの別の構成を示す断面図
【図7】実施の形態1に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの別の構成を示す断面図
【図8】実施の形態1に係る携帯機器に用いられる複数本の光導波路を有する光導波路フィルムの上面図
【図9】(a)は、実施の形態1に係る携帯機器に用いられる別の例の光導波路フィルムの第1のクラッド層の上面透視図、(b)は、実施の形態1に係る携帯機器に用いられる別の例の光導波路フィルムの(a)−(a)’断面図、(c)は、実施の形態1に係る携帯機器に用いられる別の例の光導波路フィルムの第1のクラッド層を用いて、ミラーと発光素子を配置した光導波路フィルムの断面図、(d)は、実施の形態1に係る携帯機器に用いられる別の例の光導波路フィルムにおいて、光導波路とミラーの間に、球面または非球面のレンズや回折格子等を配置した場合の断面図
【図10】(a)は、実施の形態2に係る携帯機器の概観図、(b)は、実施の形態2に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの配置を説明する概念図
【図11】(a)は、実施の形態2に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムと連結部との斜め配置を説明する図、(b)は、実施の形態2に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの回転軸方向から見た図
【図12】(a)は、実施の形態2に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムにおいて、アレイ型受発光素子と光導波路との配置関係を説明する図、(b)は、実施の形態2に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムにおいて、図12(a)におけるA部拡大図
【図13】実施の形態3に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの形状を説明する透視斜視図
【図14】(a)は、実施の形態1〜3に係る変形例の携帯機器の概観図、(b)は、実施の形態1〜3に係る変形例の携帯機器の光導波路フィルムの配置を説明する概念図
【図15】(a)は、実施の形態4に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの上面図、(b)は、実施の形態4に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムのA−A’断面図、(c)は、実施の形態4に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムのB−B’断面図
【図16】実施の形態4に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムを屈曲させた際の曲げ半径の定義を示す模式図
【図17】実施の形態4に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの厚みを変えたときの曲げ半径×2と光損失の関係を示すグラフ
【図18】実施の形態4に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの比屈折率差を変えたときの曲げ半径×2と光損失の関係を示すグラフ
【図19】(a)は、実施の形態5に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの上面図、(b)は、実施の形態5に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの側面図、(c)は、実施の形態5に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムのA−A’断面図
【図20】実施の形態5に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムに、面発光素子及び面受光素子を実装した状態を示す側面図
【図21】実施の形態5の第1の変形例に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムに、発光ダイオードアレイを接着する様子を示す斜視図
【図22】(a)は、実施の形態6に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの第1のクラッド層の製造工程の途中段階を示す要部の上面図、(b)は、実施の形態6に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの第1のクラッド層のA−A’断面図
【図23】実施の形態7に係る携帯機器に用いられる光導波路フィルムの断面図
【図24】実施の形態8に係る携帯機器に用いられる光導波路モジュールの側面図
【図25】実施の形態8に係る携帯機器に用いられる光導波路モジュールの使用態様を示す側面図
【図26】(a)は、実施の形態9に係る携帯電話の正面図、(b)は、実施の形態9に係る携帯電話の側面図
【図27】(a)は、実施の形態9の第1変形例に係る携帯電話の正面図、(b)は、実施の形態9の第1変形例に係る携帯電話の側面図
【図28】(a)は、実施の形態9の第2変形例に係る携帯電話の正面図、(b)は、実施の形態9の第2変形例に係る携帯電話の側面図、(c)は、実施の形態9の第2変形例に係る携帯電話の筐体回転時の正面図
【図29】(a)は、実施の形態9に係る携帯電話の正面図、(b)は、実施の形態9に係る携帯電話の側面図
【符号の説明】
【0135】
100 第1の筐体
110 第2の筐体
104 面受光素子
120 連結部
130 第1のボード
140 第2のボード
150 表示部
160 回転軸
200 光導波路フィルム
210 光導波路
220 第1のクラッド層
230 第2のクラッド層
240 溝
250 コア
300 受光素子
310 第1のサブボード
320 発光素子
330 第2のサブボード
340、350 電気コネクタ
360 第1の光導波路群
370 第2の光導波路群
390 発光ダイオード
400、410 フォトダイオード
420 位置決め用マーカ
430 位置決め用窪み部
440 ミラー
450 レンズ
460 曲げ形状
470 第1の連結部
480 第2の連結部
510 光導波路フィルム
511 第1のクラッド層
512 第2のクラッド層
513 コア
514 金属配線
515 クラッド
550 光導波路フィルム
551 第1のクラッド層
552 第2のクラッド層
553 コア
554 金属配線
554 ミラー
562 面発光素子
563 面受光素子
564 接着剤
571 発光ダイオードアレイ
572 ウェハー
573 光導波路フィルム
574 コア
580 フィルム
581 第1のクラッド層
582 溝パターン
583 切断加工用マーカ
584 位置決め用マーカ
590 光導波路フィルム
591 ホルダー部
592 レンズ素子
593 面発光素子
600 光導波路モジュール
601 光導波路フィルム
602 面発光素子
603 第1のサブボード
604 面受光素子
605 第2のサブボード
606 電気コネクタ
607 電気コネクタ
612、613 メインボード
1000 携帯電話
1010 第1の筐体
1020 第2の筐体
1030 連結部
1040 第1のボード
1050 第2のボード
1100 携帯電話
1110 第1の筐体
1120 第2の筐体
1130 連結部
1140 連結部
1150 第1のボード
1160 第2のボード
1200 携帯電話
1210 第1の筐体
1220 第2の筐体
1230 連結部
1240 第1のボード
1250 第2のボード
1300 携帯電話
1310 第1の筐体
1320 第2の筐体
1330 連結部
1340 第1のボード
1350 第2のボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と、
前記第1の筐体に設けられた第1のボードと、
第2の筐体と、
前記第2の筐体に設けられた第2のボードと、
前記第1の筐体と前記第2の筐体とを互いの相対的な位置を可変に接続する連結部と、
前記第1のボードと前記第2のボードとを光配線により接続するための少なくとも1個の光導波路を持つ光導波路フィルムとを備える、携帯機器。
【請求項2】
前記連結部は、ヒンジを有し、前記第1の筐体および前記第2の筐体を折り畳み可能に接続する、請求項1に記載の携帯機器。
【請求項3】
前記光導波路フィルムは、前記ヒンジの回転軸に対して斜めに配置されている、請求項1に記載の携帯機器。
【請求項4】
前記光導波路フィルムは、前記第1の筐体と前記第2の筐体との最大開閉角度を360°で割った値に相当する螺旋ピッチが前記ヒンジの回転軸に沿った方向の幅以下となる螺旋角を有する、請求項2に記載の携帯機器。
【請求項5】
前記光導波路フィルムは、前記連結部においてあらかじめ曲げられた形状を有する、請求項1に記載の携帯機器。
【請求項6】
前記光導波路フィルムは、
前記第1のボードと接続される第1のサブボードと、
前記第1のサブボードに搭載される受光素子と、
前記第2のボードに接続される第2のサブボードと、
前記第2のサブボードに搭載される発光素子とを含み、
前記発光素子および前記受光素子と光学的に結合される、請求項1に記載の携帯機器。
【請求項7】
前記第1のサブボードは、前記発光素子と前記受光素子の両方を搭載し、
前記第2のサブボードは、前記発光素子と前記受光素子の両方を搭載する、請求項6に記載の携帯機器。
【請求項8】
複数の前記光導波路を有し、
前記第1及び第2のサブボードは、前記発光素子としてアレイ型発光ダイオード及び/又はアレイ型面発光レーザを、前記受光素子としてアレイ型面受光素子を、それぞれ搭載する、請求項6に記載の携帯機器。
【請求項9】
前記光導波路フィルムは、
前記光導波路に対応するコアと、
前記コアを取り囲むように配置されるクラッドとを含む、請求項1に記載の携帯機器。
【請求項10】
前記クラッドは、
前記コアに対応した形状を持つ溝パターンを有する第1のクラッド層とを含み、
第2のクラッド層と、
前記コアは、前記第1のクラッド層の前記溝パターンに充填された樹脂からなる、請求項9に記載の携帯機器。
【請求項11】
前記コアと前記クラッドとの間の比屈折率差が5%以上であり、総厚が100μm以下である、請求項9に記載の携帯機器。
【請求項12】
前記コアは、紫外線硬化樹脂からなる、請求項9に記載の携帯機器。
【請求項13】
前記クラッドは、シクロオレフィンポリマーからなる、請求項9に記載の携帯機器。
【請求項14】
さらに、前記コアに沿って配置される電気配線を備え、
前記電気配線は、その一部が前記コアに接することにより前記コアからの光信号の漏れを防止する、請求項9に記載の携帯機器。
【請求項15】
前記電気配線は、前記光導波フィルムを屈曲させて使用する部分で前記コアに接している、請求項9に記載の携帯機器。
【請求項16】
前記第1のクラッド層は、接続されるべき素子の位置及び/又は後加工の基準となるマーカを有する、請求項10に記載の携帯機器。
【請求項17】
前記コアは、端部に光信号の光路をほぼ90°折り曲げる反射面を含む、請求項9に記載の携帯機器。
【請求項18】
さらに、前記コアの入射側及び/又は出射側の端部に光信号を収束する光学素子を備える、請求項9に記載の携帯機器。
【請求項19】
前記光学素子は、回折光学素子又はレンズ素子のいずれかである、請求項18に記載の携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2006−42307(P2006−42307A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64205(P2005−64205)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】