説明

整形外科用の足部および整形外科用の足部を制御するための方法

【課題】従来のタイプの整形外科用の足部を、整形外科用の足部の特性への従来よりも多い要求が、踝関節を中心とした動きの制動のもっぱらパッシブな制御プロセスによって、応じられるように、制御可能に構成する。
【解決手段】センサ装置は、下腿接続部と足部10との間の角度を測定する踝角度センサ7と、垂直線に対する絶対角度センサ20と、踝関節5におけるトルクまたは踝関節5におけるトルクを発生させる力を検出するためのモーメント・センサ21とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科用の足部であって、下腿接続部と、踝関節として作用する回転ヒンジと、回転ヒンジを中心とした回転運動に影響を及ぼす制動装置と、義足足部の作動状態を検出するためのセンサ装置と、このセンサ装置に結合されておりかつ制動装置を制御する制御装置とを具備し、回転ヒンジによって、足部が背屈および底屈の方向に回転自在に下腿接続部に結合されていてなる整形外科用の足部に関する。本発明は、更に、整形外科用の足部を制御するための方法に関する。
【0002】
義足足部のまたは足矯正器の形態の整形外科用の足部の制御が、足部の安全な利用、および補装具装着者の歩行の際の出来る限り自然な動きの経過を可能にするためには、多くの要求に応じるべきであることは知られている。歩行中、踵の接地の際に、足部を制御しつつ立脚面に着けることを可能にし、前足により足の運びを可能にすること、例えば、このことは望ましい。この場合、補装具装着者の身体が幾らか持ち上げられる。遊脚局面では、自然な足は、背屈を行なう。このことによって、脚の長さの短縮、従ってまた前方への容易な揺動が達成される。更に、義足足部による確かな立脚のためには、足部と下腿接続部との間の角度の高い安定性が存することが必要である。しかしながら、義足足部の、踝関節として作用する回転ヒンジの、安定性のために適切なブロックは、調整可能であるべきである。その目的は、補装具装着者が、傾斜した地面上で、またはの踵の比較的大きな高さを有する靴を着用して、弛緩した状態で立っていることができるためである。
【0003】
踝角度を、歩行サイクル中に、二軸モータの形態のアクチュエータによって制御することは、例えば特許文献1によって公知である。ここでは用いられる足部分は、所定の弾性によって、ほぼ自然な歩行を実現するために貢献することが意図される。常時駆動されるモータの形態でのアクチュエータの使用は、人工関節に供給されねばならない、かなりの量の電気エネルギを必要とする。このためには、補装具装着者は、有効なバッテリを携帯しなければならない。このバッテリは、必要とされる高い容量のために、不可避的に嵩が大きくかつ重量がある。
【0004】
更に、制御プロセスという観点を満たすためには、下腿接続部に対する足部の回転運動の制動のみを制御することも知られている。特許文献2によって、この目的のためには、特殊な回転ヒンジが、義足足部の踝関節として設けられている。磁気流動学的な液体によって制動に影響を与えるのは、磁界による影響が、液体を、低い粘性から高い粘性へ従ってまた制動を弱い制動から強い制動へ切り換えることができることによってである。このことによって、歩行中に自動的に調整される背屈または底屈をロックし、かつ所定の時間保持することができる。更に達成されるのは、座っている最中には、関節が解除されることである。その目的は、座っている最中に自然な足によって実行される底屈の調整を行なうためである。
【0005】
特許文献3によって、更に、傾斜した地面において立脚中に静止角度を調整するために、あるいは、義足足部と共に用いられる靴の種々の踵の高さのために、液圧装置を用いることが公知である。この液圧装置では、液体が、底屈の際に、一方の液体リザーバから他方の液体リザーバへ流れ、背屈のためには、反対方向に流れる。2つの液体リザーバの間の接続ラインへは、電磁コイルが挿入されている。電磁コイルは、圧液として用いられる磁気流動学的な液体の粘性を制御する。このことによって、第1の制動レベルから第2の制動レベルへの制動の切換が可能である。提示した制御の課題を満たすために、ここでは、垂直線に対する下腿接続部のための傾斜センサおよび地面接触センサが用いられる。地面接触センサは、義足足部が、地面への接地によって、地面反力を受けることを表示する。
【背景技術】
【0006】
【特許文献1】US 2005/0197717 A1
【特許文献2】US 7,029,500 B2
【特許文献3】US 2002/0138153 A1
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係わる義足足部の第1の実施の形態の略図を示す。
【図2】本発明に係わる義足足部の第2の実施の形態の略図を示す。
【図3】本発明に係わる義足足部の第3の実施の形態の略図を示す。
【図4】本発明に係わる義足足部の構造的に詳細な他の実施の形態の平面図を示す。
【図5】図4に示す義足足部の、矢状面に対し平行に切った垂直断面を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて、本発明を詳述する。
【0028】
図1に示した実施の形態では、4つの斜面を有する逆さピラミッドの切頭錐体の形態をとる調整用延長部2を有する取付部分1が、形成されている。取付部分1は、下方に開いた円筒形状部材を形成している。この円筒形状部材へは、2腕式のレバー4の、上方に突入するウェブ3が、突入している。2腕式のレバーは、回転ヒンジ5を中心として回転自在である。回転ヒンジの回転軸6は、同時に、義足足部の踝関節の軸でもある。回転ヒンジ5は角度センサ7を有する。2腕式のレバー4は、下方に延びている剛性の延長部8を有する。
【0029】
取付部分1の、下方に開いた円筒形状部材には、ウェブ4によって形成された中間空間が、比較的硬い弾性材料9によって満たされている。それ故に、取付部分1の動きが、ほんの幾らか制動されて、2腕式のレバー4のウェブ3の動きに伝達される。これに従って、延長部8が、取付部分1の動きに倣うが、弾性材料9に基づいて、幾らか制動される。
【0030】
踝関節を形成する回転ヒンジ5は、更に、主要足部10を担持している。この主要足部は、同様に、後方のレバー・アーム11を有する2腕式のレバーとして、足部の踵領域へ延びている。そこでは、斜め後方および下方に延びている後方のレバー・アーム11は、幾らか水平方向にカーブしている端部12を有する。
【0031】
主要足部は、踝関節5から前方に延びている前方のレバー・アーム13を有する。このレバー・アームは、ほぼ直線的に踝関節5から前方へ、しかも幾らか斜め下方に延びている。それ故に、主要足部10は、踝関節すなわち回転ヒンジ5へ上方に湾曲するように形成されており、踝関節5から後方へ踵領域に、および前方へ、前足領域へ斜めに下降している。踵領域への斜めの下降は、前足領域への下降よりも急勾配である。
【0032】
主要足部10の、前方のレバー・アーム13は、前足領域の始まりまで延びており、そこでは、回転ヒンジ14を有する。この回転ヒンジによって、足指領域を模倣している前足部分15が、主要足部の前方のレバー・アーム13に回転自在に連結されている。回転ヒンジ14は、回転軸を有する。この回転軸は、踝関節5の回転軸6に平行に、水平方向に延びている。前足部分15は、自然な足の足指領域を模倣しているので、前足部分は、先端が三角状に前方へ延びるように形成されている。回転ヒンジ14の下方には、前足部分15に、他の回転ヒンジ16がある。この回転ヒンジによって、液圧シリンダすなわち制動装置17のピストン18のピストンロッドが、前足部分に連結されている。液圧シリンダ17は、回転ヒンジ19によって、2腕式のレバーの、下方へ突出している延長部8の、その自由端に回転自在に連結されている。それ故に、回転ヒンジ19は、下方におよび前足領域15の方向に幾らか前方に、踝関節5に対しずれて設けられている。
【0033】
踝関節5は、踝角度、すなわち、(下腿と面一に整列された)ウェブ3と、主要足部10の前方のレバー・アーム13との間の角度を測定するための角度センサ7を有する。
【0034】
主要足部10の、前方のレバー・アーム13は、更に、重力に対する(垂直線に対する)傾斜を算出する傾斜センサ20を有する。重力に対する絶対的な傾斜角度を確定する、このような傾斜センサ20は、ジャイロを有するかまたは有しない加速度センサ装置として知られている。
【0035】
2腕式のレバー4は、調整延長部2とほぼ面一に、すなわち、患者の(人工の)下腿とほぼ面一に、踝モーメント・センサ21を有する。この踝モーメント・センサは、この位置で作用するトルクを測定する。
【0036】
前足部分15の後端は、支承延長部22を有する。支承延長部は、張力および圧力の下で負荷可能なばね23を保持するために用いられる。このばねの他端は、主要足部10の、前方のレバー・アーム13において支持される。ばね23は、背屈後に、前足部分5の戻りを引き起こす。戻り速度は、液圧シリンダ17によって規定される。
【0037】
液圧シリンダ17は、パッシブなアクチュエータとして形成されていてもよい。このアクチュエータには、ピストン18によって引き起こされる液圧流が、(図示しない)複数の弁によって制御される。これらの弁自体は、開閉可能であるだけでなく、所定の流量に関して制御されることが可能である。しかしまた、液圧シリンダ17を、力の作用なしに前足部分15の調整を外から引き起こすことができるアクティブなアクチュエータとして、形成することが可能である。
【0038】
図2に示した実施の形態は、図1に示した実施の形態に実質的に対応する。相違は、取付部分1´が調整取付部2と一体的に形成されており、それ故に、弾性材料9によって形成された弾性はもはや存在しないことにある。その代わりに、2腕式のレバー4´の、下方に突出している延長部8´が、材料の薄さをもって形成されている。それ故に、延長部の、回転ヒンジ19を担う自由端が、2腕式のレバー4´の残りの材料に対しばね弾性的に設けられている。
【0039】
当然ながら、義足足部は、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、装飾的なカバー24を有する。しかしながら、この装飾的なカバー24は、第2のおよび第3の実施の形態に関しては、繰り返し示されていない。
【0040】
図3に示した第3の実施の形態の義足足部では、2腕式のレバー4´´も、同様に、調整用取付部2と一体的に形成されている。2腕式のレバー4´´の、下方に突出している延長部8は、第1の実施の形態と同様に、硬い。その代わりに、液圧シリンダ17は、うず巻きばね25によって、2腕式のレバー4´´の、下方に突出している延長部8に弾性的に結合されている。このことによって、液圧シリンダ17の作用と直列で、弾性が実現される。この弾性は、図1に示した実施の形態では、弾性材料9によって、図2に示した実施の形態は、弾性的な延長部8´によって実現されている。第3の実施の形態の他のすべての部材は、第1の実施の形態の部材に対応する。
【0041】
図4および5に示した実施の形態で、ピラミッド状の調整用延長部2を有する取付部材1を示す。取付部材1には、弾性材料すなわち弾性材料部分9がある。この弾性材料部分は、2腕式のレバー4の、上方に突出しているウェブ3と制動式に協働する。2腕式のレバー4の、下方に突出している延長部8は、この実施の形態では、歩行方向で踝関節5の後方に延びており、そこでは、回転ヒンジ19を介して、液圧シリンダ17に連結されている。液圧シリンダ17の中で、ピストン18は、長手方向に移動可能に動く。ピストンは、液圧シリンダ17にある軸受26を越えて延びており、前足部分15の他の回転ヒンジ16に結合されている。踝関節5は、更に、主要足部10を支持する。主要足部は、ここでは、剛性のハウジングの形態で形成されており、後方に向いている弾性的なレバー11を、ばねレバーとして有する。主要足部10は、かくて、踵用のレバー11と共に、踝関節5を中心として、取付部材1に対しおよび2腕式のレバー4に対し回動可能である。取付部材1と主要足部10との間の回動は、2腕式のレバー4および液圧シリンダ17によって制御かつ制動される。この場合、ピストン18のピストンロッド18´の、前足部分15への連結は、足指プレートを形成する前足部分15の追加的な制御のみを引き起こす。しかしながら、この制御は、主要足部10の制御を僅かしか変更しない。何故ならば、他の回転ヒンジ16が、前足部分15と主要足部10との間の回転ヒンジ14のすぐ近くに、設けられているからである。液圧シリンダ17は、液圧シリンダ17の上面に設けられている2つの制御弁27,28を有する。これらの制御弁27,28は、ピストン18の両側で、液圧シリンダ17のチャンバ29,30に結合されている。(図示しない)複数の逆止め弁が引き起こすのは、第1の制御弁27によって、圧液が、下方のチャンバ29から前方のチャンバ30へ流れることができることである。このことによって、ピストン18の、液圧シリンダ17への挿入運動が可能となる。このことは、取付部材1に対する主要足部10の底屈に対応する。他方の制御シリンダすなわち制御弁28は、複数の逆止め弁によって、前方のチャンバ30から後方のチャンバ29への圧液の流れのみを可能にする。このことによって、ピストン18が、液圧シリンダ17から抜き出ることが可能となる。従って、回転ヒンジ19と16との間の間隔が延長される。このことは、取付部材1と主要足部10との間の背屈に対応する。同時に、回転ヒンジ14に対する回転ヒンジ16の移動によって、前足部分15の、前方に向かっての持ち上げが引き起こされる。
【0042】
義足足部の機能は、図示した複数の実施の形態にとって同じである。踝角度と、踝モーメントと、絶対的な傾斜角度とを測定するためのセンサ装置によって、義足足部の、複数の重要な機能状態が算出かつ区別される。一方では、取付部材1,1´,1´´と主要足部10との間の踝角度を算出するための、踝角度センサからの信号が評価され、他方では、各々の踝角速度が評価される。
【0043】
例えば、義足足部によって人が歩くか、立っているかの検出は、踝角速度が踝モーメントの中立点の通過において定められることによって、なされる。踝角速度が、踝モーメントの中立点の通過において、しきい値より下にあるとき、このことは、「立脚」と検出され、液圧シリンダの形態をとるアクチュエータは、複数の弁によって、高い抵抗に調整され、この高い抵抗によって、背部ストッパを形成することができる。
【0044】
険しい傾斜のまたは踵の高さの検出は、踝モーメントの中立点の通過の際に、主要足部10の中指領域に設けられた傾斜センサによって、定められる。
【0045】
平面における歩行が検出されるとき、足部の底屈を担当する弁が、半ば開いた位置に保たれる。他方、背屈を規定する弁が、踝角度が増大するにつれて、閉じられ、背部ストッパを形成する。
【0046】
上りの歩行が検出されるとき、前足部分15の、増大された背屈への可能性が与えられる。
【0047】
歩行中に、遊脚局面後および立脚局面の初めの踵の接地が、特に、マイナスの踝モーメントによって検出されるとき、底屈のための弁が、以下のように、すなわち、弁が、踝角度の増加と共に、底屈の方向に閉じ、かくして、底屈のためのストッパを形成するように、制御される。
【0048】
立脚局面の終わりでの足指の突き放しが検出されるとき(踝モーメントが低下し、踝角度が増大するとき)、不作動時間後の背屈のための弁が完全に開けられる。その目的は、弾性要素によって、遊脚局面で前足部分の持ち上げ(足指の持ち上げ)を引き起こすためである。
【0049】
これらの例から、立脚の際のおよび歩行の際の義足足部の重要な制御が、地面の傾斜または踵の高さによって適切に行なうことができ、動きに対する液圧シリンダによる抵抗の制御が既に十分であることが検出される。その代わりに、アクティブなアクチュエータを、調整部材として設けることもできる。
【0050】
義足足部のための動きの状態の検出と、この検出から結果として生じる制御とに関する実施の形態では、以下の操作モード(Funktionen)が実現される。
【0051】
〈立脚と歩行の相違〉
立脚と歩行との間の相違は、以下の判定基準でなされる。
【0052】
1.遊脚局面の検出
遊脚局面は、足部が遊脚局面において無負荷であるので、踝モーメントがゼロに近いことによって検出される。
【0053】
前足部分10の絶対角度は、立脚に関して個々に定められているしきい値を上回る。更に、絶対角速度は所定のしきい値を上回る。
【0054】
2.前方へ揺動された状態における踵接地の検出
(底屈の際の)マイナスの踝モーメントが検出される。絶対角度信号が、立脚に関して個々に定められているしきい値と比較した、前方へ揺動された足部に対応する。
【0055】
踵の接地の際に、底屈を、踝角速度に関する情報によって示すことができることが選択される。
【0056】
3.立脚への戻り
踵の接地が検出された後に、前足部分10の絶対角度が、立脚に関して個々に定められているしきい値の範囲内にある。その代わりにまたは補足的に、背部から足底への立脚局面中期における動き方向のアクティブな反転を、立脚か否かの判断基準として検出することができる。
【0057】
立脚が検出されるとき、制御弁27,28は、立脚に関して、狭い角度(中立点位置)で、腹部および背部へのストッパが生じるように、調整される。歩行サイクルに関しては、ストッパが背部へ移動され、底屈および背屈に関する制動特性が、歩幅に従って調整される。
【0058】
〈平面と斜面の相違〉
歩行サイクルにおける立脚局面中期の初めの、すなわち、地面への足部全体の着地後の、測定された絶対角度は、絶対角度に関する、平面における歩行に関して定められた数値範囲よりも大きいか、小さい。
【0059】
斜面の定められた傾斜に対応して、背部ストッパが変えられ、底屈および背屈の際の制動特性が、絶対角度および予知された歩幅に従って、調整される。
【0060】
〈後方への歩行の検出〉
後方への歩行の検出は、後方遊脚局面(Rueckschwungsphase)の検出と、戻された状態における前足部分の接地の検出とからなる。
【0061】
1.後方遊脚局面の検出
測定された踝モーメントがゼロに近いときは、絶対角度信号は、立脚に対して戻された足部(後傾)に対応する。絶対角速度は、所定のしきい値を上回る。
【0062】
2.戻された状態における前足部分の接地の検出
より大きなプラスの踝モーメントが測定される。
【0063】
測定された数値に従って、ストッパが背部へ移動される。底屈および背屈の際の制動特性は、前足部分の接地の際の絶対角度に従って調整される。
【0064】
〈踵の種々の高さへの適合〉
トリガ信号が手動で始動される最中に、踵の高さを、絶対角度信号の読み取りによって検出することは好ましい。絶対角度に比例して、制御弁27,28のための中立点が調整される。
【0065】
この代わりに、踵の高さを、関節式に連結された前方足部15を有する義足足部では、斜面の傾斜からの踵の高さを、主要足部10に対する前足部分15の角度が測定されることによって、定めることが可能である。このことが、本発明の枠内における追加的な選択である。
【0066】
〈傾斜した地面での立脚〉
足底から背部への動き方向の転向の際に絶対角度が測定されるのは、踝モーメントが中立点の通過を達成する場合である。これに応じて、制御弁27,28を有する液圧シリンダ17を制御するための背部ストッパは、地面の傾斜に従って調整される。
【0067】
〈階段の上りの歩行の検出〉
絶対角度センサ20が、互いに直交している複数の加速成分のための2つの加速度センサからなり、これらの加速成分が別個に形成されているとき、主要部分10の、垂直方向に進んだ距離および水平方向に進んだ距離が検出される。距離区間は、対応の加速成分上の2重積分によって、算出される。これらの場合、階段の降下の区別を行い、これに従って、底屈および背屈の際の制動特性のためにストッパを調整することが可能である。
【0068】
同様に、歩行速度が異なる場合、歩行を調整するために、加速度を活用することができるのは、背部へのストッパ、ならびに底屈および背屈の際の制動特性を適切に変えることによってである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整形外科用の足部であって、下腿接続部と、踝関節(7)として作用する回転ヒンジ(5)と、前記回転ヒンジ(5)を中心とした回転運動に影響を及ぼす制動装置(17)と、前記整形外科用の足部の作動状態を検出するためのセンサ装置と、このセンサ装置に結合されておりかつ前記制動装置(17)を制御する制御装置とを具備し、前記回転ヒンジによって、足部(10)が背屈および底屈の方向に回転自在に前記下腿接続部に結合されており、
前記センサ装置は、前記下腿接続部と前記足部(10)との間の角度を測定する踝角度センサと、垂直線に対する絶対角度センサ(20)と、前記踝関節(7)におけるトルクまたは前記踝関節(7)におけるトルクを発生させる力を検出するためのモーメント・センサ(21)とを有することを特徴とする整形外科用の足部。
【請求項2】
前記制動装置は、一方では底屈方向におよび他方では背屈の方向に別個のおよび別個に制御可能な制動手段を有することを特徴とする請求項1に記載の整形外科用の足部。
【請求項3】
前記足部は、剛性をもって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の整形外科用の足部。
【請求項4】
前記足部(10)は、剛性の基体を有し、この基体からは、弾性的な踵部分が延びていることを特徴とする請求項1または2に記載の整形外科用の足部。
【請求項5】
前記制動装置(17)は、複数の中間段階に調整可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1に記載の整形外科用の足部。
【請求項6】
前記制動装置(17)は、連続的に調整可能であることを特徴とする請求項5に記載の整形外科用の足部。
【請求項7】
前記踝関節(7)の中立点位置を定めるためのスイッチが設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1に記載の整形外科用の足部。
【請求項8】
前記スイッチは、遠隔操作スイッチとして形成されていることを特徴とする請求項7に記載の整形外科用の足部。
【請求項9】
前記センサ装置のデータによる制御によって中立点位置が検出可能であること、および制動手段はゼロ位置から出て制御可能であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1に記載の整形外科用の足部。
【請求項10】
前記制動装置(17)は、圧液が貫流する液圧装置であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1に記載の整形外科用の足部。
【請求項11】
流れに影響を及ぼすために、背屈方向に背部弁が設けられており、底屈方向に、足底弁が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の整形外科用の足部。
【請求項12】
下腿接続部と、踝関節(7)として作用する回転ヒンジ(5)と、前記回転ヒンジ(5)を中心とした回転運動に影響を及ぼす制動装置(17)と、前記整形外科用の足部の作動状態を検出するためのセンサ装置と、このセンサ装置に結合されておりかつ前記制動装置(17)を制御する制御装置とを具備し、前記回転ヒンジによって、足部(10)が背屈および底屈の方向に回転自在に前記下腿接続部に結合されていてなる整形外科用の足部を制御する方法において、
前記踝関節(7)に生じるトルクに比例する値と、前記下腿接続部と前記足部分(10)との間の踝角度と、垂直線に対する前記足部分(10)の絶対角度とを確定すること、および、これらの測定された値に従って、歩行の立脚局面における足部の運びと、歩行の遊脚局面における前記足部(10)の位置と、立脚中の前記脚部(10)の位置決めおよび可動性とを、前記制動装置(17)によって制御することを特徴とする方法。
【請求項13】
前記足部の制御を前記制動装置(17)によってのみ定めることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
制動を制御するために、背屈の方向におよび底屈の方向に、複数の別個の制動手段を使用しかつ制御することを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記制動手段を、歩行過程中に、多数の中間位置に、好ましくは連続的に調整することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記制動手段を、前記測定された踝角度および/または前記絶対角度を用いて、前記回転ヒンジ(5)をブロックするまで調整することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
歩行サイクルのパラメータへの影響を、この歩行サイクルのための既に測定されたセンサ信号によって、及ぼすことを特徴とする請求項12ないし16のいずれか1に記載の方法。
【請求項18】
前記歩行サイクルの立脚局面のパラメータへの影響を、同じ立脚局面のための、既に測定されたセンサ信号によって及ぼすことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記歩行サイクルの立脚局面中に、背屈のための最大限の踝角度を確定すること、および、当該の制動手段が、最大限の踝角度への接近の際に、自らの制動値をブロックの方向に増加的に上げることを特徴とする請求項12ないし18のいずれか1に記載の方法。
【請求項20】
前記歩行サイクルの立脚局面中に、底屈方向における動きのための前記制動手段の制動値を、この方向への踝角度が増大するにつれて、徐々に上げることを特徴とする請求項12ないし19のいずれか1に記載の方法。
【請求項21】
「踵の接地」という状態を、マイナスの踝モーメントの発生および底屈の方向における踝角度の動きによって、検出することを特徴とする請求項12ないし20のいずれか1に記載の方法。
【請求項22】
立脚に関しては、前記制動手段の制動値の非常な上昇を、既に、中立点に近い小さな角度に対しても、調整することを特徴とする請求項12ないし21のいずれか1に記載の方法。
【請求項23】
前記中立点を、足部の載置面の傾斜または靴の踵の高さに従って、確定することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記踝モーメントが、マイナスの値から始まって、ゼロより大きな値に達したとき、前記中立点を調整することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記踵の接地の際に、前記制動手段を、底屈の方向に制御しつつ、最大限の制動値まで調整し、プラスの踝モーメントへの移行の際に、前記制動手段を、底屈を制御しつつ戻すためにおよびストッパを形成するために、背屈の方向に制御することを特徴とする請求項12ないし24のいずれか1に記載の方法。
【請求項26】
前記歩行サイクルの遊脚局面の初めに、戻しばねによって、背屈方向における戻りを、前記制動手段の値の低下によって、背側方向に行ない、その結果、前記踵の接地の際に、遊脚局面の終りに、前記足部分(10)の背屈が存することを特徴とする請求項12ないし25のいずれか1に記載の方法。
【請求項27】
足部分として、前記回転ヒンジに接続された基礎部分と、回転ヒンジによってこの基礎部分に結合された前足部分(15)とを用いることを特徴とする請求項12ないし26のいずれか1に記載の方法。
【請求項28】
前記基礎部分すなわち足部分(10)に対する前記前足部位分(15)の前足角度に関する角度測定を行なうことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前方への地面の傾斜と、靴の、高くなった踵とを、前記基礎部分(10)と前記前足部分(15)との間の角度を確定することによって、区別することを特徴とする請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−219864(P2009−219864A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27681(P2009−27681)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(502220838)オットー・ボック・ヘルスケア・ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】Otto Bock HealthCare GmbH
【Fターム(参考)】