説明

施肥装置付き湛水直播機

【課題】施肥装置付き湛水直播機にて、圃場に適切に種子を点播し、点播された種子の側方に肥料を散布する。
【解決手段】座席13を装備した走行車体1の後部に播種装置2と施肥装置3とを装着した施肥装置付き湛水直播機において、座席13の後方近くに種子タンク33と肥料タンク41を配置して、種子タンク33から移送案内された種子を播種用点播ロール50にて間欠的に繰出して播種用作溝器29にて圃場に形成された播種溝に播種し、肥料タンク41から移送案内された肥料を施肥用点播ロール53にて間欠的に繰出して施肥用作溝機37にて圃場に形成された施肥溝に施肥する構成とすると共に、播種用点播ロール50及び施肥用点播ロール53を各々播種用作溝器29及び施肥用作溝機37の上方近くに配置し、且つ、播種用点播ロール50及び施肥用点播ロール53を同じ駆動軸52にて駆動する構成とした施肥装置付き湛水直播機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、種子と肥料を同時に散布する施肥装置付き湛水直播機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、種子と肥料を所定量づつ繰出して、種子と肥料を同時に圃場に散布する施肥装置付き湛水直播機がある。
【特許文献1】特開平11−289818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に示す施肥装置付き湛水直播機では、種子タンク及び肥料タンクから繰出された種子及び肥料が、繰出し部から圃場に達するまで長い案内パイプを通って散布される為に、順次繰出される種子及び肥料は圃場に達するまでに列状に繋がって、実際に圃場に散布される種子は1列の連続した条播になり、また、肥料も同様に1列の連続した条状になる。
【0004】
田植作業では、苗を所定の株間をあけて植付けるが、これは苗が成長する際に苗の間に空間があると、その苗と苗との空間部を空気(風)が流れて、病害虫の発生が抑制されて、苗の成育が良いからである。
【0005】
従って、湛水直播においても、連続した条播とするよりも所定間隔をあけて種子を播く点播にした方が、発芽後の苗は病害虫の発生が抑制されて成育が良い。
そこで、圃場に種子を点播する湛水直播機が必要で、且つ、同じく所定間隔をあけて肥料を散布して点播された種子の側方に肥料が散布できる施肥機が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、座席13を装備した走行車体1の後部に播種装置2と施肥装置3とを装着した施肥装置付き湛水直播機において、該座席13の後方近くに種子タンク33と肥料タンク41を配置して、該種子タンク33から移送案内された種子を播種用点播ロール50にて間欠的に繰出して播種用作溝器29にて圃場に形成された播種溝に播種し、肥料タンク41から移送案内された肥料を施肥用点播ロール53にて間欠的に繰出して施肥用作溝機37にて圃場に形成された施肥溝に施肥する構成とすると共に、播種用点播ロール50及び施肥用点播ロール53を各々播種用作溝器29及び施肥用作溝機37の上方近くに配置し、且つ、播種用点播ロール50及び施肥用点播ロール53を同じ駆動軸52にて駆動する構成とした施肥装置付き湛水直播機としたものである。
【0007】
従って、座席13の後方近くに種子タンク33と肥料タンク41を配置しているので、作業者は機体上で種子タンク33及び肥料タンク41に各々種子及び肥料を容易に供給することができる。また、種子タンク33内の種子は、播種用点播ロール50まで移送され、播種用点播ロール50にて所定量づつ間欠的に繰出されるが、播種用点播ロール50から播種用作溝器29までの距離は短いので、播種用点播ロール50にて所定量づつ間欠的に繰出された種子は圃場に適切に所定間隔をあけて点播される。そして、肥料タンク41内の肥料は、施肥用点播ロール53まで移送され、施肥用点播ロール53にて所定量づつ間欠的に繰出されるが、施肥用点播ロール53から施肥用作溝機37までの距離は短いので、施肥用点播ロール53にて所定量づつ間欠的に繰出された肥料は圃場に所定間隔をあけて点播された種子の側方位置に適切に散布される。
【0008】
更に、播種用点播ロール50と施肥用点播ロール53とを同じ駆動軸52にて駆動する構成としたので、両ロール50・53は同期して駆動回転し、種子及び肥料は同期して繰出される。そして、播種用点播ロール50と施肥用点播ロール53とは、各々の播種用作溝器29及び施肥用作溝機37の上方近くに配置されているから、種子の播種間隔と肥料の散布間隔が同じになって、種子は圃場に適切に所定間隔をあけて点播され、その点播された種子のすぐ横に施肥されることとなる。よって、良好な点播作業及び適切で施肥効率の良い施肥作業が行なえる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によると、播種用点播ロール50及び施肥用点播ロール53を各々播種用作溝器29及び施肥用作溝機37の上方近くに配置し、且つ、播種用点播ロール50及び施肥用点播ロール53を同じ駆動軸52にて駆動する構成としたので、播種用点播ロール50と施肥用点播ロール53とは同期して駆動回転し、種子及び肥料は同期して繰出され、種子の播種間隔と肥料の散布間隔が同じになって、種子は圃場に適切に所定間隔をあけて点播され、その点播された種子のすぐ横に施肥されることとなる。よって、良好な点播作業及び適切で施肥効率の良い施肥作業が行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の一実施例として、8条の播種作業と施肥作業が同時に行なえる施肥装置付き8条湛水直播機について説明する。
施肥装置付き8条湛水直播機は、走行車体1の後部に播種装置2と施肥装置3とを装着して、播種作業と施肥作業とが同時に行なえる湛水直播機となっている。
【0011】
走行装置1は、フレーム4の前部に走行ミッションケース5を設けて、該走行ミッションケース5の左右外側に左右前輪7を配置して設けている。また、フレーム4の後部に後輪伝動ケース6を設けて、該後輪伝動ケース6の左右外側に左右後輪8を配置して設けている。エンジン9がフレーム4の上に取付けられ、その動力がベルト10,11で走行ミッションケース5内に伝動されたのち、走行ミッションケース5内の変速装置を介して左右前輪7と左右後輪8を駆動回転して、走行車体1が前進または後進する。
【0012】
エンジン9は、カバー12で被われ、その上に座席13が設けられている。前部カバー14が、座席13の前方に設けられ、その上部にステアリングハンドル15が設けられており、該ステアリングハンドル15を操作すると、左右前輪7が操向されて走行車体1の進行方向が変わるように構成されている。
【0013】
フレーム4の後部から上方に延設された支柱16に昇降リンク機構18の前部が枢支されており、該昇降リンク機構18の後部にヒッチ17が設けられている。昇降シリンダ19の前部がフレーム4に取付けられ、そのピストンロッド20がこれから斜後上方に伸び、昇降リンク機構18と一体のアーム21の下端とその先端部が連結されている。そして、座席13の左側に設けた昇降レバー22にて昇降切替バルブを操作して昇降シリンダ19に油を供給すると、ピストンロッド20が突出して、ヒッチ17が同じ姿勢を保って上昇し、逆に、昇降シリンダ19の油をタンクに戻すと、ヒッチ17が下降するように構成されている。
【0014】
播種装置2は、つぎのように構成されている。
取付枠23がヒッチ17に着脱自在に取付けられ、その下部の後方に横長のパイプフレーム24が設けられている。そして、4本の支持フレーム25がパイプフレーム24から等間隔で斜後下に伸び、それぞれの下部に配置したアーム26の後端に整地フロート27が横軸28で取付けられ、走行車体1の前進で4つの整地フロート27の各々の前部が横軸28回りに上下揺動しながら水田の泥面を滑走するように構成されている。
【0015】
一対の播種用作溝器29がそれぞれの整地フロート27に固定され、上記の滑走で泥面に8個の播種溝をほぼ等間隔に圃場泥面に作るように構成されている。
支持アーム23aが取付枠23から斜前上方に伸び、横長のパイプ状のエアチャンバー30がその上端に固定されている。8本の吐出管31がエアチャンバー30から後に突出し、その左端部に設けた送風機32にて吹き込まれた空気が吹き出すようになっている。種子タンク33が吐出管31の上に配置されている。種子タンク33は、横長に作られて底に横並びの8個の谷を備え、上の入口が開閉される蓋34で被われている。それぞれの谷は、繰出筒35でそれぞれの吐出管31に連結固定され、その中の種子繰出しロール35aがエンジン9の動力で回転すると、種子タンク33内の種もみが吐出管31の中間部に連続的に繰り出されるようになっている。各吐出管31の後端と対応する播種用点播ロール50まで可撓性の長い移送チューブ36aで連結され、吐出管31内に繰り出された種もみがエアチャンバー30から吹き出される空気で送られて、播種用点播ロール50まで送られる。
【0016】
播種用点播ロール50は、回転するロールに3つの種もみ収納溝(種もみが3個入る溝)を等間隔にあけて構成されており、左右方向に8つ並列されて播種用作溝器29の近くの上方位置に設けられている。そして、各播種用点播ロール50は、駆動モータ51にて駆動軸52を介して回転駆動される。また、播種用点播ロール50から繰出された種もみは、短い移送チューブ36bを通ってすぐ下の播種用作溝器29の播種溝内に散布される。それぞれの整地フロート27の下面に埋戻具が設けられ、整地フロート27の滑走で土を掻き寄せて、種もみが散布された播種溝を埋め戻す。
【0017】
従って、種子タンク33内の種もみは、繰出しロール35aにて繰出されて空気にて長い移送チューブ36aを通って播種用点播ロール50まで移送される。そして、再度、播種用点播ロール50にて所定量づつ間欠的に繰出されるが、播種用点播ロール50から播種用作溝器29までの距離は短いので、播種用点播ロール50にて所定量づつ間欠的に繰出された種もみは圃場に適切に所定間隔をあけて点播されることとなる。
【0018】
施肥装置3は、つぎのように構成されている。
それぞれの整地フロート27に、2つの播種用作溝器29の内側に対の施肥用作溝器37が固定され、その滑走で泥面に8条の施肥溝を作るように構成されている。横長のパイプ状のエアチャンバー38が座席13の後方で走行車体1に固定されている。8本の吐出管39がエアチャンバー38から後に突出し、その左端部に設けた送風機40が吹き込んだ空気が吹き出す構成になっている。肥料タンク41が種子タンク31の前で吐出管39の上に配置固定されている。この肥料タンク41は、横長に作られて底に横並びの8個の谷を備えている。また、この肥料タンク41は、上の入口が蓋42で被われ、その蓋42は、後部が横軸43の回りに回動するように肥料タンク41に取付けられている。
【0019】
上記のそれぞれの谷と吐出管39が繰出筒44で連結固定され、その中の肥料繰出しロール44aがエンジン9の動力で回転すると、肥料タンク41内の粒状又は粉状の肥料が吐出管39の中間部に連続的に繰り出されるようになっている。各吐出管39の後端と対応する施肥用点播ロール53まで可撓性の長い移送チューブ45で連結され、吐出管39内に繰り出された肥料がエアチャンバー38から吹き出される空気で送られて、施肥用点播ロール53まで送られる。
【0020】
施肥用点播ロール53は、回転するロールに3つの肥料収納溝を等間隔にあけて構成されており、左右方向に8つ並列されて施肥用作溝機37の近くの上方位置に設けられている。そして、各施肥用点播ロール53は、前記駆動モータ51にて駆動回転する駆動軸52により回転駆動される。また、施肥用点播ロール53から繰出された肥料は、短い移送チューブ45bを通ってすぐ下の施肥用作溝機37の施肥溝内に散布される。それぞれの整地フロート27の下面に埋戻具が設けられ、整地フロート27の滑走で土を掻き寄せて、肥料が散布された施肥溝を埋め戻す。
【0021】
従って、肥料タンク41内の粒状又は粉状の肥料は、肥料繰出しロール44aにて繰出されて空気にて長い移送チューブ45を通って施肥用点播ロール53まで移送される。そして、再度、施肥用点播ロール53にて所定量づつ間欠的に繰出されるが、施肥用点播ロール53から施肥用作溝機37までの距離は短いので、施肥用点播ロール53にて所定量づつ間欠的に繰出された肥料は圃場に所定間隔をあけて点播された種もみの側方位置に適切に散布されることとなる。
【0022】
上記のように、播種用点播ロール50と施肥用点播ロール53とを同じ駆動軸52にて駆動する構成としたので、両ロール50・53は同期して駆動回転し、種もみ及び肥料は同期して繰出される。そして、播種用点播ロール50と施肥用点播ロール53とは、各々の播種用作溝器29及び施肥用作溝機37のすぐ近くに配置されているから、種もみの播種間隔と肥料の散布間隔が同じになって、種もみは圃場に適切に所定間隔をあけて点播され、その点播された種もみのすぐ横に施肥されることとなる。従って、良好な点播作業及び適切で施肥効率の良い施肥作業が行なえる。
【0023】
また、機体の構成上で駆動軸52を1本の軸で構成できない場合は、図で示すように2条単位で駆動軸52を分割し、各駆動軸52をユニバーサルジョイント54で連結して構成すれば良い。然しながら、ユニバーサルジョイント54を用いた場合には、各駆動軸52の回転移送がユニバーサルジョイント54の伝動遊びでずれてしまうことがあるので、ユニバーサルジョイント54に回転位相調節部55を設けると良い。即ち、回転位相調節部55は、分割した左右駆動軸52に設けた左右接合板55aをボルトで固定する際に、ボルトを通す孔を長孔に構成して、分割した左右駆動軸52の回転位相を調節して全ての播種用点播ロール50と施肥用点播ロール53の回転移送が同じになるようにして左右駆動軸52をボルトにて固定するものである。
【0024】
尚、駆動モータ51を高速回転させれば、播種用点播ロール50と施肥用点播ロール53は高速で回転して、種もみ及び肥料を連続的に繰出すようになり、条播作業も行なえる。
【0025】
60は排水用溝を圃場に形成する排水溝切り器であって、パイプフレーム24に先端部が回動自在に枢支されたアーム61と該アーム61の後部に設けられた左右溝切り側板62と溝深さを調節するウエイト式調節部63とから構成されている。ウエイト式調節部63は、前後支持板64に固定した螺子軸65にウエイト66を前後移動自在に設けて、ウエイト66を適当な位置で固定できるチョウボルト67をウエイト66の前後に設けている。即ち、泥土が硬い圃場では、ウエイト66を後方に移動させて前後からチョウボルト67で締め上げて固定し、左右溝切り側板62の圃場に入り込む荷重を重くして適切な排水溝を掘る。逆に、泥土が軟らかい圃場では、ウエイト66を前方に移動させて前後からチョウボルト67で締め上げて固定し、左右溝切り側板62の圃場に入り込む荷重を軽くして適切な排水溝を掘る。
【0026】
また、圃場の水深が深い時には、播種用作溝器29及び施肥用作溝機37で形成した溝が大量の泥水にて狭くなって、適切な播種及び施肥が行なえないと謂う課題がある。そこで、播種用作溝器29及び施肥用作溝機37の左右側板を前部を枢支点にして後部の左右幅が開くようにモータにて駆動できる構成とする。一方、整地フロート27に浮き体を設けて、該浮き体の整地フロート27に対する位置を検出して圃場の水深を検出できる構成とし、圃場の水深が深い時には播種用作溝器29及び施肥用作溝機37の左右側板の後部の左右幅をモータにて開いて、溝幅を広く形成するようにすれば、大量の泥水で形成された溝幅が狭くなっても、溝幅は広めに形成しているので適切な播種及び施肥作業が行なえる。
【0027】
図5に示す他の例を説明する。
駆動モータ51にて駆動軸52を介して播種用点播ロール50と施肥用点播ロール53とが駆動回転されるまでの構成は、前記の例と同じである。この例は、1つの播種用点播ロール50にて2条分の播種作業を行い、1つの施肥用点播ロール53にて2条分の施肥作業を行うものである。
【0028】
即ち、播種用点播ロール50の下方に左右に振り分ける切替弁70を設けた左右分岐機構を設けて、モータにて所定時間毎に切替弁70の左右切替えを行って、1つの播種用点播ロール50から繰出した種もみを隣接する2つの播種用作溝器29に送り播種作業を行なう。従って、隣接する条の播種は、互い違いに行なわれて、千鳥状の播種作業ができる。同様に、施肥用点播ロール53の下方に左右に振り分ける切替弁70を設けた左右分岐機構を設けて、モータにて所定時間毎に切替弁70の左右切替えを行って、1つの施肥用点播ロール53から繰出した肥料を隣接する2つの施肥用作溝機37に送り施肥作業を行なう。従って、上記の千鳥状の播種作業で播種された側方に施肥できる。
【0029】
図6乃至図9に基づいて、水田に種籾(カルパーコーティングされた種子でもよい)を播種する他の乗用型施肥装置付き播種機の説明をする。
乗用型施肥装置付き播種機は、主として乗用型走行車体103と8条分の施肥装置101及び播種装置104とで構成される。
【0030】
乗用型走行車体103の前後左右略中央に駆動源であるエンジン105を備え、このエンジン105からの動力によりエンジン出力ベルト106を介して2連プーリ107と一体回転する中継軸108を駆動する。この中継軸108には油圧ポンプ109を設けており、この油圧ポンプ109はエンジン105の駆動に伴って駆動するようになっている。また、前記2連プーリ107の他側となる駆動プーリ107aから伝動ベルト110を介して主ミッションケース111の入力軸111aと一体回転する従動プーリ112を駆動することにより、主ミッションケース111内に動力を伝達する構成となっている。尚、前記駆動プーリ107a及び前記従動プーリ112は割りプーリで構成されて、該駆動プーリ107a、該従動プーリ112及び前記伝動ベルト110はこれらのプーリ107a,112の割り幅を変更して主ミッションケース111内への伝動の伝達比を無段変速する無段変速装置113となっている。
【0031】
無段変速装置113から主ミッションケース111への入力軸111aの回転動力は、湿式多板クラッチ構成の主クラッチによって伝動入・切可能に主ミッションケース111に入力される。主ミッションケース111に入力された動力の一部は、前進2段・後進1段の変速位置を有する主変速装置へ伝達され、ここで変速された後に、後輪用動力と前輪用動力に分岐する。そして、左右後輪クラッチ・ブレーキ装置は、操縦席120前方に設けた左右ブレーキペダルにて各々操作される。
【0032】
従って、乗用型走行車体103は、前記前輪114,114及び後輪117,117を駆動して走行する構成となっている。後輪用動力及び前輪用動力以外の残りの動力は、外部取出動力として、株間変速装置によって変速された後に、安全クラッチと播種装置104及び施肥装置101の駆動の入切を行う播種施肥を経由して主ミッションケース111から外部に取り出された播種伝動軸118により、前記エンジン105の右側方を通過して播種装置104へ動力を伝達するようになっている。
【0033】
尚、前記播種伝動軸118の中途部には動力分岐ケース119を設け、該動力分岐ケース119により分岐して取り出される動力を施肥装置101へ伝達する構成となっている。また、乗用型走行車体103には、前記エンジン105の上側に操縦席120を設け、該操縦席120の前側にステアリングハンドル121を設けている。該ステアリングハンドル121の右側には、前記無段変速装置113の変速操作を行う副変速レバー122を設けている。また、前記ステアリングハンドル121の左側には主変速レバー123を設け、この主変速レバー123の操作により主ミッションケース111内の主変速装置のギヤの噛み合いを切り替えて機体の車速を「路上走行速」、「播種作業速」及び「後進速」に切り替えるようになっている。前記ステアリングハンドル121の下方の左側には主クラッチペダル124を設け、この主クラッチペダル124の踏み込み操作により主ミッションケース111内の主クラッチを操作して走行車輪114,114,117,117、播種装置104及び施肥装置101への伝動を断つようになっている。操縦席120の右側には、前記播種施肥クラッチを操作することで播種装置104及び施肥装置101への伝動の入切が可能な播種・昇降レバー125を設けている。
【0034】
また、この乗用型走行車体103の後部には、昇降リンク機構126が枢支されている。この昇降リンク機構126は、1本の上リンク126aと平面視左右方向において前記上リンク126aを挟むように配設された2本の下リンク126b,126bとで構成される。播種装置104は、前記昇降リンク機構126の後端部に設けた縦リンク126cを介して乗用型走行車体103の後側に装着された構成となっている。前記播種装置104は、油圧ポンプ109からの油圧により油圧バルブを介して作動する油圧昇降シリンダ127の伸縮により前記昇降リンク機構126が上下に回動することによって昇降するように設けている。尚、前記播種・昇降レバー125の操作により、前記油圧バルブを手動操作して昇降リンク機構126を回動させて、播種装置104を昇降できるようになっている。
【0035】
施肥装置101は、粒状の肥料を貯留する肥料ホッパ140、該肥料ホッパ140内の肥料を所定量づつ繰り出す各条の肥料繰出部141…、該肥料繰出部141…から繰り出される肥料の移送を案内する各条の案内管142…、該案内管142…に圧力風を供給する施肥エアチャンバー143及び該施肥エアチャンバー143に圧力風を供給する施肥用送風機144を備えて構成される。また、前記施肥用送風機144は、乗用型走行車体103の前部に配置したバッテリー145を駆動源として駆動する構成となっている。
【0036】
そして、施肥装置101は、肥料繰出部141…から繰り出される肥料を案内管142…に落下供給し、施肥エアチャンバー143からの圧力風により案内管142…及び各条の肥料案内管146…を介して該肥料案内管146終端に設けた各条の施肥部147…へ肥料を移送して、圃場に8条分の施肥を行う構成となっている。尚、前記肥料案内管146…は、フレキシブルなチューブにより構成されている。
【0037】
前記施肥部147は、前記肥料案内管146とブーツ148により接続され、圃場面を滑走する整地フロート131,131,132,132に取付ボルトにより取り付けられている。前記施肥部147の前方には、該施肥部147と一体的に施肥作溝器150を設けている。この施肥作溝器150は、整地フロート131,131,132,132の底面より下方に突出する突起で構成され、機体の前進に伴って圃場の泥土を左右方向及び下方向に押し分けて作溝する。そして、その作溝された溝内に施肥エアチャンバー143からの圧力風により肥料が施肥部147から吐出して供給されるようになっている。また、施肥部147の後方にはそれぞれプレートで構成される施肥覆土器151を設け、この施肥覆土器151により機体の前進に伴って前記施肥作溝器150が作った溝を埋めて圃場に施肥された肥料に覆土するようになっている。尚、前記施肥覆土器151は、整地フロート131,131,132,132にそれぞれ取り付けられている。
【0038】
各条の肥料繰出部141…を構成する繰出部ケース141a…と案内管142…とは、前記施肥エアチャンバー143に溶接された取付台(図示せず)にそれぞれボルトにより取付固定されている。そして、肥料ホッパ140を前記繰出部ケース141a…に取り付けた構成となっている。尚、前記施肥エアチャンバー143は、乗用型走行車体103の後部の縦フレーム152,152に取り付けられている。従って、肥料繰出部141…は、乗用型走行車体103の後部に配置された構成となっている。
【0039】
各条の肥料繰出部141…の前側には、作業終了後等に肥料ホッパ140内の肥料を取り出すための肥料取出口153…を設けている。この肥料取出口153…を前記肥料繰出部141…の前側に設けているので、作業者が乗用型走行車体側から肥料ホッパ140内の肥料の取出作業を容易に行える。
【0040】
ここで、肥料繰出部141…への駆動構成について説明すると、動力分岐ケース119からの駆動により回転駆動する施肥駆動アーム(図示せず)に連結された施肥駆動ロッド154が上下動することにより、施肥繰出駆動アーム155を駆動し施肥駆動軸156に伝動する。尚、該施肥駆動軸156と前記施肥繰出駆動アーム155との間には一方向クラッチを設け、前記施肥駆動ロッド154の上動に伴って施肥駆動軸156が一定方向にしか回動しないようになっている。そして、施肥駆動軸156により肥料繰出しロール141b…を駆動する構成となっている。
【0041】
次に、播種装置104について、説明する。播種装置104の種子繰出部171は、動力分岐ケース119からの動力が入力される播種伝動ケース130からの動力の伝達により作動する構成となっている。また、播種装置104の下方には2つのセンター整地フロート131,131と左右両側部のサイド整地フロート132,132が設けられており、これらの整地フロート131,131,132,132が播種作業時に圃場面を滑走するようになっている。整地フロート131,131,132,132は、昇降リンク機構126の縦リンク126cに対してローリング軸133回りに左右にローリングする主フレーム134からそれぞれ後方に延びる左右のフロート支持プレート135,135…を介して設けられ、該フロート支持プレート135,135…の後端部に前記整地フロート131,131,132,132の左右にそれぞれ固着したフロート取付プレート136,136…に備える左右方向の回動軸137,137…回りに回動自在に支持され、前後傾斜姿勢が自由に変更する構成となっている。播種装置104による播種作業を行うべく前記播種・昇降レバー125により播種装置104を下降させて前記整地フロート131,131,132,132を圃場面に接地させ乗用型走行車体103を走行させると、センター整地フロート131,131の前後傾斜姿勢が所定の傾斜姿勢となるよう該整地フロート131,131前部上方の圃場面感知機構138の作動に基づいて油圧バルブを切替えて前記昇降リンク機構126を回動させることにより、播種装置104を適正位置に昇降制御する構成となっている。
【0042】
ここで、圃場面感知機構138の構成を更に詳述する。前記主フレーム134より前方に向けて設けた取付け板134aに基部が枢支された上部アーム138aと下部アーム138bの先端部に縦アーム138cを枢着して平行リンクを構成し、上部アーム138aの基部側には一体に揺動する下方に向かうアーム138dを設けて、該アーム138d下端部を主フレーム134側に固定したロッド138e先端螺子部に外嵌合して、アーム138d下端部両側よりボルト138fにて固定することにより、上部アーム138a・下部アーム138b・縦アーム138cよりなる平行リンクは固定されている。そして、整地フロート131,131の前部を連結したフレームより前方に向けて延設されたアーム138gは、上部アーム138a先端の枢支軸138hに枢支されたアーム138iの後端部と連結アーム138jにて連結されている。一方、縦アーム138cの上部には角度検出センサ138kが設けられており、この角度検出センサ138kのアーム138mの先端がアーム138iの先端に連結ロッド138nにて連結されている。
【0043】
従って、センター整地フロート131,131は共にその前後が上下動する構成となっており、そのセンター整地フロート131,131前部の上下動にて切替えられる角度検出センサ138kにて油圧バルブが制御されて、常に、センター整地フロート131,131が所定の姿勢になるように播種装置104を適正位置に昇降制御する。
【0044】
尚、38pは感度調節ワイヤであって、ステアリングハンドル21近傍に設けた昇降感度調節レバーの操作にて、イ−ロ方向に押し引きされて感度調節ワイヤ138pの先端とアーム138iとの間に設けた引張バネqを伸縮させて、センター整地フロート131,131前部の上下動によるアーム138iの回動力を変更できる構成となっている。即ち、イ方向に感度調節ワイヤ138pを引くと引張バネqを伸ばすのでセンター整地フロート131,131前部が上がりにくくなり制御感度は鈍感になる。逆に、ロ方向に感度調節ワイヤ138pを緩めると引張バネqを縮めるのでセンター整地フロート131,131前部が上がり易くなり制御感度は敏感になる。一方、前記ロッド138e先端螺子部に外嵌合したアーム138d下端部両側のボルト138fの位置を前後方向に位置調節して固定することにより、アーム138dの角度が変更できるので、アーム138dと一体の上部アーム138aも角度変更され、上部アーム138aの先端に枢支したアーム138iの上下位置が変更できる構成となっている。従って、この調節によりセンター整地フロート131,131の制御基準姿勢の変更を行なうことができ、昇降制御感度を変更することができる。
【0045】
播種装置104の播種部は、種子を貯留する種子ホッパ170、該種子ホッパ170内の種子を所定量づつ繰り出す各条の種子繰出部171…、該種子繰出部171…から繰り出される種子の移送を案内する各条の案内管172…、該案内管172…の繰り出された種子を受けて下方に向けて加速して種子案内管175…から放出する種子放出装置173…と、圃場に播種溝を形成して上記種子放出装置173…の種子案内管175…から加速放出された種子を受けて播種溝内に案内する播種作溝器181…等を備えている。従って、種子ホッパ170内より種子繰出部171…にて繰り出される種子を案内管172…に落下供給し、その種子を種子放出装置173…が一旦受け止めてから下方に向けて加速して種子案内管175…から放出し、各播種作溝器181…等よりなる各条の播種部176…へ種子を搬送して、圃場に8条分の播種を行う構成となっている。
【0046】
種子繰出部171…への駆動構成について説明すると、前記動力分岐ケース119を経由した播種伝動軸118の駆動を変速する播種伝動ケース130より外方に突出させた駆動軸194に設けた駆動スプロケットと播種駆動軸197に設けた従動スプロケットとの間に伝動チェーンを設けて、その周りを伝動チェーンケース195で覆っている。尚、駆動スプロケットと従動スプロケットとは同じ歯数で駆動軸194と播種駆動軸197とは同速回転する。
【0047】
そして、播種駆動軸197には各条毎に繰り出しロール171a…が設けられており、その繰り出しロール171a…には各々3つの凹部171bが形成されていて、繰り出しロール171a…がハ方向に駆動回転されることにより種子ホッパ170下部より該凹部171b内に種子が入り下方に所定量づつ間隔をあけて種子が繰り出される構成となっている。尚、播種駆動軸197には、2条毎の駆動クラッチを設けてあり、2条単位で駆動の入り切り操作をできるようにしてあり、端数条の播種作業が行なえる構成となっている。
【0048】
種子放出装置173…は、所定幅の薄い円柱形状のケーシング173a内に所定幅を有する薄い円柱形状の回転体173cを回転軸173bによりニ方向に駆動回転されるように軸支して構成している。そして、播種伝動ケース130より外方に突出させた駆動軸194に設けた駆動スプロケットと回転軸173bに設けた従動スプロケットとの間に伝動チェーンを設けて、その周りを伝動チェーンケース195dで覆っている。尚、駆動スプロケットは従動スプロケットよりもはるかに多い歯数を有し、駆動軸194により回転軸173bは増速回転する構成となっている。
【0049】
そして、回転体173cの外周部には、案内管172から供給された種子を受け止めて収容する側面視鋸歯状をなす多数の種子収容溝173dを設けている。そして、回転体173cの回転により種子収容溝173dに収容された種子を周方向に加速させて、加速された種子を種子案内管175を介して該種子案内管175終端より放出し、それを播種部176の播種作溝器181で受けて圃場に形成した溝内に案内し、圃場に8条分の播種を行う構成となっている。
【0050】
上記回転体173cの外周部に設けられる種子収容溝173dの側面視鋸歯状の個々の形状は、回転体173cの回転方向に対しそれぞれ鋭角をなす形状となっている。また、図において、回転体173cの回転方向に対して、種子収容溝173dが下向きになって下降する部分、即ち、回転軸173bの中心を通る垂線から左側部分の上部位置に案内管172の下端部を開口させ、その下方位置に種子案内管175を種子収容溝173dの幅に近似させて開口している。
【0051】
尚、種子放出装置173の主要部分の寸法及び諸元は、以下のとおりである。ケーシング173aの直径=200mm、回転体173cの直径=180〜186mm、回転体173cの外周とケーシング173aの内周との間隙22=3〜6mm、種子収容溝173dの幅=20〜30mm、案内管172の内径=16mm、粒体種子案内管175の内径=22〜30mm、回転体173cにおける鋸歯状をなす種子収容溝173dの個数=32個、鋸歯状をなす種子収容溝173dの深さ=15mm、種子案内管175のケーシング173aへの取付け角度=15°、回転体173cの材質は発泡性のゴムが好ましい。
【0052】
ところで、機体の播種作業前進速度を変更すべく、副変速レバー122の変速操作により無段変速装置113の変速を行なうと、前輪114,114・後輪117,117の駆動回転を変更して機体の前進速度を変更させると共に、株間変速装置にも比例して変速された駆動回転が入力されるので、播種伝動軸118の回転速度も前輪114,114・後輪117,117への回転速度に比例して変更されて、繰り出しロール171a…及び回転体173cの回転速度が前輪114,114・後輪117,117への回転速度に比例して変更される。
【0053】
播種部176は、整地フロート131,131,132,132の底面より下方に突出する突起で構成され機体の前進に伴って圃場の泥土を左右方向及び下方向に押し分けて作溝する播種作溝器181と該播種作溝器181の上部に形成された平面視で後方が開放されたコ字状の種子案内部181aとにより構成されている。そして、種子案内部181aの上部が種子案内管175より放出された種子を受けて圃場に案内する構成となっている。
【0054】
播種部176の後方にはそれぞれ播種覆土器183を設け、この播種覆土器183により機体の前進に伴って前記播種作溝器181が作った溝を埋めて圃場に吐出した種子に覆土するようになっている。この播種覆土器183は、左右方向において播種作溝器181側に傾斜した平面である覆土面を備え、機体の前進に伴って該覆土面により土壌が種子の上方位置まで押されて覆土するようになっている。
【0055】
ここで、上記播種覆土器183の構成及びその作動制御を詳細に説明する。各整地フロート131,131,132,132の後部上面の左右両側に筒状部179を有する左右取付け座184・184をボルト185にて各々固定し、その取付け座184・184の各上部に横フレーム186をボルトにて固定し、これら横フレーム186と取付け座184の筒状部179を貫通して回動軸187を回動自在に装着し、この回動軸187の下部に播種覆土器183を固定している。また、回動軸187の上部には回動調節アーム188を固定し、この回動調節アーム188の一端側に調節ワイヤ189のインナーワイヤ189a先端側を連結し、横フレーム186に固定のアウター受け部材190に調節ワイヤ189のアウターを係止している。また、回動調節アーム188の他端側とアウター受け部材190との間に引張バネ191を装着している。一方、調節ワイヤ189の基端側のインナーワイヤは、主フレーム134に基部が固着されたアームに回転自在に設けた回転横軸210に基部が固定したアーム211の先端に連結されている。
【0056】
一方、主フレーム134より前方に向けて設けた支持フレーム192の前端部に移動調節フレーム193を移動調節フレーム193の長穴193aを介してボルト194により上下位置調節自在に固定し、この移動調節フレーム193の下端部に支持軸195を設けている。支持軸195には左回動体196と右回動体197を回動自在に枢支し、各回動体196・197の下端部には左右接地回転体198・199が回転自在に設けている。この左接地回転体198は先端が尖った円盤状で、泥面が軟らかいと泥土中に入っていくような形状になっており、右接地回転体199は先端に広い接地平面を有する円柱状で、泥土面に接して回転するような形状になっている。
【0057】
そして、右回動体197の上部には角度検出センサ201が設けられており、該角度検出センサ201の検出アーム201aの先端が左回動体196の上部に連結されている。尚、右回動体197の角度検出センサ201の下方にはコ字状の鉄板202が溶接されており、その鉄板202の両端部に位置調節用のボルト203・203が装着されており、コ字状の間隔内でボルト203・203間を左回動体196の上部は回動できるようになっている。即ち、ボルト203・203の調節で左回動体196上部の回動量を調節できるようになっている。
【0058】
従って、泥土が硬いと左右接地回転体198・199は略同じ位置にあるので、左回動体196の上部と角度検出センサ201の検出アーム201aは、図の実線の状態となっている。泥土が軟らかくなるにつれて、左接地回転体198は泥土中に入っていくので、左回動体196の上部は回動し、それを角度検出センサ201が検出する。尚、角度検出センサ201の検出アーム201aは、ホ方向にバネで付勢されており、検出アーム201aは左回動体196の上部に追従して回動するように構成されている。
【0059】
一方、主フレーム134より上方に向けて設けた支持フレーム204の上端部に電動シリンダー205が装着されており、この電動シリンダー205のヘ−ト方向に伸縮する伸縮部206の先端を前記回転横軸210に基部が固定したアーム212の先端に連結し、電動シリンダー205の伸縮部206のヘ−ト方向の伸縮により回転横軸210を回転させて、調節ワイヤ189のインナーワイヤを押し引きして、前記回動調節アーム188を回動させて、播種覆土器183の角度を変更して覆土量が調節できる構成となっている。
【0060】
以上要するに、泥土の硬軟により左右接地回転体198・199の上下位置が変わることを角度検出センサ201にて検出して、その検出結果に応じて、電動シリンダー205を制御して、播種覆土器183の角度を泥土の硬軟に拘らず適正な覆土量となるように制御できるものである。即ち、泥土が軟らかい場合は、播種覆土器183を機体進行方向と略同じ方向にして覆土量が少なくなるようにし、逆に、泥土が硬い場合は、播種覆土器183を機体進行方向に対して横を向く方向に回動させて覆土量が多くなるようにしている。
【0061】
また、種子放出装置173…の回転体173cの回転駆動をモータにて行なう構成として、泥土の硬軟により左右接地回転体198・199の上下位置が変わることを角度検出センサ201にて検出して、その検出結果に応じて、泥土が硬い場合には、回転体173cの回転速度を速くし、逆に、泥土が軟らかい場合には、回転体173cの回転速度を遅くして、泥土の硬軟に応じて回転体173cによる種籾の放出速度を適切にすれば、圃場の硬軟に応じて自動的に回転体173cによる種籾の放出速度が制御できて、どのような圃場でも適切な深さに播種できる。
【0062】
また、播種作溝器181をその前部を回動支点として後部がモータにて上下揺動する構成として、泥土の硬軟により左右接地回転体198・199の上下位置が変わることを角度検出センサ201にて検出して、その検出結果に応じて、泥土が硬い場合には、モータにて播種作溝器181の後部が下動して作溝深さが深くなり、逆に、泥土が軟らかい場合には、モータにて播種作溝器181の後部が上動して作溝深さが浅くなって、泥土の硬軟に応じて播種作溝器181の作溝深さを適切にすれば、圃場の硬軟に応じて自動的に適切な深さに播種できる。
【0063】
ところで、施肥装置101の施肥部147は、播種装置104の播種部176と機体の左右方向において所定量異ならせて配置されている。従って、この施肥播種機2は、圃場内を乗用型走行車体103を走行させて播種装置104により8条分の播種を行うと共に、前記播種装置104の播種位置の側方の所定位置に施肥装置101により8条分の施肥を行う構成となっている。
【0064】
S1〜S8は播種装置104の種子ホッパ170から各種子繰出部171にて繰り出される種子を検出する衝撃センサであって、各条の種子繰出部171と種子放出装置173との間に位置して各々設けられており、各条の各種子繰出部171にて繰り出される種子が繰り出されなくなった時に、播種されていないことを検出して、作業者の前方の運転パネルに播種されていない条が判るように対応する警報ランプを点灯させると共に、警報ブザーを鳴らすように構成している。
【0065】
即ち、例えば、各種子繰出部171…にて繰り出される種子を各衝撃センサS1〜S8が検出している間は、正常な繰出状態であるので、警報ランプは点灯されず、警報ブザーも鳴らさないように制御装置にて制御されている。ところが、各種子繰出部171…の何れかが詰まって種子を繰り出さなくなった場合には、その種子繰出部171に対応する衝撃センサ(例えば、S1)が種子を検出しなくなるので、それに対応する警報ランプが点灯し、警報ブザーが鳴るように制御されている。尚、衝撃センサS1〜S8が、種子の欠粒を検出する欠粒センサとなっている。
【0066】
作業者は、この警報が発せられると、直ぐに、機体を停止させて、異常部分を確認して、それを正して播種作業を再開する。L・Lは左右後輪117,117の通過跡に配置された左右溝切り装置であって、その基部は前記主フレーム134に固着されている。この左右溝切り装置L・Lにて播種作業時に水田圃場に同時に溝が形成されるので、播種作業を終えた後に、圃場の水管理を行う場合に、その溝により圃場の水を容易に排水することができて、圃場の水管理作業が容易になる。
【0067】
また、この左右溝切り装置L・Lは左右後輪117,117の通過跡に配置されているので、左右後輪117,117が通って掘り起こされた部分に溝を形成するので(左右溝切り装置L・Lによる溝形成抵抗が少ないので)、左右溝切り装置L・Lによる溝の形成が容易となる。更に、左右溝切り装置L・Lは圃場への各播種位置よりもずっと前方で、且つ、各整地フロート131,131,32,32の前部に位置しているので、左右溝切り装置L・Lが圃場に溝を形成する際に、左右側方に泥や泥水を押し出しても、それが播種部にまで流れ込んで影響を及ぼすことがないので、播種深さが一定となり良好な播種作業が行える。
【0068】
最後に、播種装置104を圃場面に対して常に水平に維持するローリング制御について説明する。200は一般的な水平センサであって、播種装置104側の主フレーム134の左右両側部に基部が固着された正面視門型フレームBの左右中央上部に設けられている。
【0069】
220はローリング用電動モータであって、昇降リンク機構126の縦リンク126cに固定されており、その回転駆動軸221に駆動ギヤ222を固定している。そして、その駆動ギヤ222に噛み合う従動扇ギヤ223を縦リンク126cに枢支軸224にて回動自在に枢支している。一方、従動扇ギヤ223には、回動アーム225が溶接固着され、従動扇ギヤ223と共に上記枢支軸224に回動自在に枢支されている。そして、回動アーム225の上端部と上記播種装置104側の正面視門型フレームBの左右側部との間には、左右バネ226・226が装着されている。
【0070】
然して、圃場にて播種装置104を下降接地させて播種及び施肥作業を行なう場合、泥土面の左右傾斜や凹凸により播種装置104が左右傾斜した時、水平センサ200が播種装置104の左右傾斜を検出して、該検出結果によりローリング用電動モータ220を駆動制御して回動アーム225を左右所定の方向へ回動させて左右バネ226・226を介して播種装置104を水平になるように制御する。例えば、機体正面視で播種装置104の左側が低くなるように傾斜した場合には、ローリング用電動モータ220を駆動制御して回動アーム225の上部が右方向に回動するようにして、播種装置104が水平になる位置まで回動アーム225を回動させる。
【0071】
以上により、この施肥播種機2は、乗用型走行車体103を走行させながら施肥装置101の肥料繰出部141…、播種装置104の種子繰出部171…及び施肥用送風機144、種子放出装置173を作動させることにより、乗用型走行車体103の後方の整地フロート131,131,32,32に設けた施肥部147…から肥料を吐出すると共に前記整地フロート131,131,32,32に設けた播種部176…から種子を吐出し圃場に施肥及び播種を行っていく。この時、種子ホッパ170内の種子を所定量づつ繰り出す種子繰出部171と、該種子繰出部171から繰り出された種子を受けて下方に向けて加速して放出する種子放出装置173と、該種子放出装置173から加速された種子を下方の播種作溝器181に向けて放出する種子案内管175とを設けると共に、上記種子放出装置173を播種作溝器181の上方近くに配置した播種装置104としているので、種子繰出部171から繰り出された種子を播種作溝器181の上方近くに配置した種子放出装置173が一旦受け止めて下方に向けて順次加速して放出し、圃場に種子を間歇的に播種することができて、点播状態での播種作業が良好に行なわれる。然も、播種作溝器181にて圃場に適切な深さに形成した溝内に点播状態で播種できるので、播種深さが適切な一定の深さでの点播となり、発芽率が向上し然も良好な苗の育成が行なえる。また、適切な点播が行なえるので、風とおしが良くて成育が極めて順調となり茎の太い倒れにくい稲となり、品質の良い米が収穫できる。また、病気や害虫が発生した時にも、苗株は離れているので、急速に病気や害虫が広がることが少なくて、被害の少ない初期段階で殺菌剤や殺虫剤の散布が行なえる。
【0072】
図10乃至図11に基づいて、水田に有機肥料をペレット状にした肥料散布装置を装着した乗用型施肥装置付き田植機の説明をする。
301は乗用型走行車体であって、左右フレーム302・302と該左右フレーム302・302の後部を連結する横フレーム303とで構成される機体の後部上面にエンジン304を搭載し、左右フレーム302・302の前部には走行ミッションケース305を固設している。そして、この走行ミッションケース305には、エンジン304の回転駆動力が変速されるHST変速装置と前輪デフ装置と後輪デフ装置とが内蔵されているおり、HST変速装置は、変速レバー306にて、後進と中立と前進(圃場内で植付け作業をする植付速・路上等で早く移動する為の移動速)とに変速操作される。
【0073】
307・307は左右フロントアクスルケースであって、前記走行ミッションケース305の前輪デフ装置より左右駆動軸を介して動力が伝動されるように構成されている。309・309は操向自在の左右駆動前輪であって、左右フロントアクスルケース307・307の下部に嵌合され操舵ハンドル310にて回動される操向ケース311・311に軸架されており、操舵ハンドル310を回すと左右操向ケース311・311が縦軸回りに回動し左右駆動前輪309・309が向きを変えるように構成されている。
【0074】
315・315は左右後輪駆動ケースであって連結枠で一体に連結されており、該連結枠が横フレーム303にロリング軸にてロリング自在に設けられており、その左右両側部に軸架された左右駆動後輪318・318が上下揺動できるように構成されている。319・319は、走行ミッションケース305の後輪デフ装置から左右後輪駆動ケース315・315に動力を伝える伝動軸である。
【0075】
そして、後輪駆動ケース315内部の伝動機構中には左右駆動後輪318・318に対する左右サイドクラッチと左右サイドブレーキとが内蔵されており、機体旋回の為に操舵ハンドル310を所定量以上に操向操作すると旋回内側のサイドクラッチが切れ且つサイドブレーキが利くように連携構成されていて、小回りの旋回操作が操舵ハンドル310を操向操作するだけで容易に行える。
【0076】
321はFRPにて成型された車体カバ−であって、エンジン304の周囲を覆うエンジンカバ−部321aと、前記エンジン304の前方及び左右側方に設けられたステップ321bと、ハンドルポストカバー321cと、エンジン304の後方に設けられた後輪フェンダーを兼ねたステップ321dとにより構成されており、左右フレーム302・302上に固定されている。322は操縦座席で、前記車体カバー321のエンジンカバ−部321a上面に設置固定されている。
【0077】
323は上部リンク323aと下部リンク323bとにより構成される昇降リンク機構であって、上部リンク323aと下部リンク323bの基端部は左右フレーム302・302の後部に固着された支持フレーム324に各々枢着され、後端部は後述の苗植装置325に設けたローリング軸326を回動自在に支持して苗植装置325をローリング自在に装着した縦枠327に枢着されている。そして、昇降リンク機構323の回動角は昇降リンクセンサ323cによって検出されるようになっている。
【0078】
328は油圧シリンダーであって、シリンダーの基部が左右フレーム302・302に枢着され、そのピストンの後端が上部リンク323aと一体の揺動アーム323cに枢着されている。
【0079】
苗植装置325は、前記縦枠327にローリング軸326にてローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース329と、該植付伝動ケース329に設けられた左右支持部材329a・329aに支持されて機体左右方向に往復動する苗載台330と、植付伝動ケース329の後端部に装着され前記苗載台330の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける6つの苗植付け具331…と、植付伝動ケース329の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンターフロート332・左右サイドフロート333・333等にて構成されている。左右サイドフロート333・333は、各々左右駆動後輪318・318の後方に配置されており、該左右駆動後輪318・318にて掻き乱された圃場を整地すると共に苗植付け具331にて苗が植付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。そして、苗載台330は、6つの苗載置部が左右方向に並列して設けられている。334は苗検出センサーであって、苗載台330の6つの苗載置部の各々に設けられており、苗載置部の苗が減少した場合に検出して、警報ランプを点滅させて6つの苗載置部のどれが苗減少しているかを操縦者に報知する構成となっている。
【0080】
また、走行車体301の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台338,338が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0081】
340は施肥装置であって、前記支持フレーム324の上端部に固着されており、ペレット状にした有機肥料を貯留する施肥タンク341と、該各施肥タンク341の下部に装着され施肥タンク341内のペレット状にした有機肥料を一定量づつ繰り出す6つの肥料繰出装置342…と、該各々の肥料繰出装置342にて繰り出された肥料をそれぞれ案内する透明の4つの施肥パイプ343a・343b・343c・343dとにより構成されている。尚、345は肥料繰出装置342…を駆動する駆動機構であって、左右フレーム302・302上に固設の施肥駆動ケ−ス346により回転動力が伝達される。そして、施肥駆動ケ−ス346には走行ミッションケース305より駆動軸347にて動力が伝達されるように構成されている。
【0082】
上記の4つの施肥パイプ343a・343b・343c・343dのうち、中央部の2つの施肥パイプ343b・343cは、左右駆動後輪318・318間に配置され、左右外側の施肥パイプ343a・343dは左右駆動後輪318・318の外側位置に配置されている。そして、中央部の2つの施肥パイプ343b・343cは、その先端部が二股状に分岐してペレット状にした有機肥料を2列づつ散布する構成となっている。従って、図11に示すように、中央部の4条の苗植付け具331が植付ける苗列の側方に対応した位置に、中央部の2つの施肥パイプ343b・343cにてペレット状にした有機肥料を散布し、左右外側の各1条づつの苗植付け具331が植付ける苗列の側方に対応した位置に、左右外側の施肥パイプ343a・343dにてペレット状にした有機肥料を散布する。
【0083】
そして、昇降リンク機構323の上部リンク323aに支持体323dを左右方向に設けて固定し、該支持体323dに設けた左右挟持体323e・323eにて中央部の2つの施肥パイプ343b・343cの中途部を挟持して支持する構成としている。
【0084】
従って、施肥パイプ343b・343c下端の散布部は、昇降リンク機構323の昇降動即ち苗植装置325の昇降動に連動して昇降するので、耕盤の深浅に係らず常に泥土面からの距離が一定となり適切なペレット状にした有機肥料の散布が行なえる。また、施肥パイプ343b・343c下端の散布部は、耕盤の深浅に係らず常に泥土面からの距離が一定であるから、耕盤の深い圃場でも施肥パイプ343b・343c下端の散布部が泥面に浸かって散布部が泥土で詰まるような事態も回避できる。
【0085】
348は両端にユニバーサルジョイントを有するPTO伝動軸であって、施肥駆動ケース346の動力を苗植装置325の植付伝動ケース329に伝達すべく設けている。349は圃場に対する苗植装置325の位置を検出するセンサーとしてのセンターフロートセンサーであって、センターフロート332前部の上下位置を検出するポテンショメータにより構成され、センターフロート332の前部上面とリンク350により連携されている。そして、センターフロートセンサー349のセンターフロート332前部の上下位置検出に基づいて、制御装置の昇降制御手段によりソレノイド油圧バルブを制御して油圧シリンダー328にて苗植装置325の上下位置を制御するように構成されている。
【0086】
354は車体カバ−321より突出して操縦座席322の左側方に設けられた昇降レバーであって、該昇降レバー354を操作することにより、制御装置のPTOクラッチ作動手段にて走行ミッションケ−ス305から後方に向けて設けられた駆動軸347を駆動回転する動力を断接するPTOクラッチを作動させて施肥装置340及び苗植装置325への動力を入切り操作できるように構成されていると共に、制御装置の昇降制御手段にてソレノイド油圧バルブを作動させて手動にて苗植装置325を上下動できるように構成されている。
【0087】
尚、370はセンターマスコットであって、機体の前端部に設けられており、次工程の機体の中心位置を示す線を圃場面に引く一般的な左右線引きマーカ371・371にて前工程で引かれた線に操縦者が合わせて直進する為の一般的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】施肥装置付き湛水直播機の左側面図である。
【図2】施肥装置付き湛水直播機の平面図である。
【図3】要部の作用説明図である。
【図4】排水溝切り器の拡大左側面図である。
【図5】他の例を示す要部の作用説明図である。
【図6】他の例を示す施肥装置付き湛水直播機の左側面図である。
【図7】他の例を示す施肥装置付き湛水直播機の平面図である。
【図8】他の例を示す施肥装置付き湛水直播機の要部の一部断面側面図である。
【図9】他の例を示す施肥装置付き湛水直播機の要部の作用説明用平面図である。
【図10】他の例を示す施肥装置付き田植機の左側面図である。
【図11】他の例を示す施肥装置付き田植機の要部の作用説明用平面図である。
【符号の説明】
【0089】
1 走行車体
2 播種装置
3 施肥装置
13 座席
29 播種用作溝器
33 種子タンク
37 施肥用作溝機
41 肥料タンク
50 播種用点播ロール
52 駆動軸
53 施肥用点播ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席(13)を装備した走行車体(1)の後部に播種装置(2)と施肥装置(3)とを装着した施肥装置付き湛水直播機において、該座席(13)の後方近くに種子タンク(33)と肥料タンク(41)を配置して、該種子タンク(33)から移送案内された種子を播種用点播ロール(50)にて間欠的に繰出して播種用作溝器(29)にて圃場に形成された播種溝に播種し、肥料タンク(41)から移送案内された肥料を施肥用点播ロール(53)にて間欠的に繰出して施肥用作溝機(37)にて圃場に形成された施肥溝に施肥する構成とすると共に、播種用点播ロール(50)及び施肥用点播ロール(53)を各々播種用作溝器(29)及び施肥用作溝機(37)の上方近くに配置し、且つ、播種用点播ロール(50)及び施肥用点播ロール(53)を同じ駆動軸(52)にて駆動する構成としたことを特徴とする施肥装置付き湛水直播機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−22721(P2008−22721A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195753(P2006−195753)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】