説明

有機トランジスタ、回路素子及びそれらの製造方法

【課題】低電圧で作動するとともに大きなベース電圧を印加した場合でも耐電圧が高く、各種の回路素子への応用が容易で、製造コストを抑えた有機トランジスタ及び回路素子を提供する。
【解決手段】コレクタ電極1とエミッタ電極2と両電極間に設けられた有機半導体層3と有機半導体層3内に設けられたベース電極4とを有する縦型トランジスタ部、及び、ベース電極4とベース電圧電源端子7との間に設けられた抵抗部6、を有する。抵抗部6は、コレクタ電極1と同じ材料からなりベース電圧電源端子7に接続する第1電極21と、エミッタ電極2と同じ材料からなりベース電極4に接続する第2電極22と、有機半導体層3と同じ材料からなり第1電極21及び第2電極22間に挟まれた抵抗層24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機トランジスタ、回路素子及びそれらの製造方法に関する。更に詳しくは、低電圧で作動するとともに大きなベース電圧を印加した場合でも耐電圧が高く、各種の回路素子への応用が容易で、製造コストを抑えた有機トランジスタ、回路素子及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界効果型トランジスタ(OFET:Organic Field Effect Transistor)は、有機半導体を印刷等の塗布プロセスで作製可能であるため、安価、フレキシブル等の特長を有している。そのため、有機電界効果型トランジスタには、フレキシブルディスプレイや、ID情報を埋め込んだタグから電磁界や電波等を用いた近距離無線通信によって情報をやりとりするRFID(Radio Frequency Identification)等のように、従来のSiトランジスタとは異なる新たな用途が期待されている。しかし、有機電界効果型トランジスタに用いられる有機半導体はキャリア移動度が低いため、電流変調量が小さい、応答速度が遅い等の問題がある。
【0003】
これらの問題を解決するため、例えば下記特許文献1〜4及び非特許文献1に示す態様の縦型有機トランジスタが提案されている。縦型有機トランジスタは、上下に配置したコレクタ電極とエミッタ電極との間に有機半導体層を挟み、その有機半導体層内にストライプ状のベース電極(「中間電極」ともいう。)を形成した積層構造である。そのため、有機半導体層が担うチャネル長を例えば1μm以下に短くできること、電極面全体を有効利用できるために高速応答や大電力化が可能となること、さらに、界面の影響を受け難くなること等のメリットがある。その結果、キャリア移動度の低い有機半導体を用いた場合であっても、低電圧での高速応答が可能になる。
【0004】
さらに、縦型有機トランジスタは、有機半導体層を間に挟んで上下に対向するエミッタ電極とコレクタ電極とに一定電圧(コレクタ電圧)を印加した場合において、エミッタ電極と有機半導体層内に設けられたベース電極との間に電圧(ベース電圧)を印加しないときはエミッタ電極とコレクタ電極との間にほとんど電流は流れないが、エミッタ電極とベース電極との間に電圧(ベース電圧)を印加するとエミッタ電極とコレクタ電極との間に流れる電流量が大幅に増加し、電流(コレクタ電流)を変調することができるという利点がある。
【0005】
こうした電流変調は以下のメカニズムによるものと考えられている。すなわち、有機半導体層がエミッタ電極とコレクタ電極の両方に接するとともにストライプ状のベース電極間の開口部にも存在しているので、エミッタ電極とベース電極との間に電圧(ベース電圧)が印加されることによって、有機半導体層からなる開口部(ベース電極が無い部分のこと。)を流れる電流(コレクタ電流)が変調されることによると考えられている。
【0006】
さらに、本件出願人は、この出願に先立って、前記各文献に記載の縦型有機トランジスタよりも電流変調を容易且つ効率的に変調できる、縦型有機トランジスタを提案している(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−327615号公報
【特許文献2】特開2007−27566号公報
【特許文献3】特開2005−243871号公報
【特許文献4】特開2003−324203号公報
【特許文献5】特開2009−76891号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】工藤一浩、「有機トランジスタの現状と将来展望」、応用物理、第72巻、第9号、第1151頁〜第1156頁(2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1〜5に記載の縦型有機トランジスタは有機半導体層内に薄いベース電極又はストライプ状のベース電極を設けているので、ベース電圧を過剰に(例えば5V以上)印加した場合、エミッタ電極からベース電極に大量の電荷が流入し、ベース電極−エミッタ電極間に短絡が生じたり、ベース電圧のON/OFFによりコレクタ電流にヒステリシスが発生じたりするおそれがあり、回路素子に応用する際の障壁となっていた。
【0010】
図18は、特許文献5に記載の縦型有機トランジスタ100へのベース電圧の影響を示す模式断面図である。この縦型有機トランジスタ100は、下側から、コレクタ電極101、下側有機半導体層103a、ベース電極104、上側有機半導体層103b、エミッタ電極104の順で積層され、ベース電極104は、連続する絶縁性金属化合物(例えば酸化アルミニウム)と、その絶縁性金属化合物内に分布する粒状金属(例えばアルミニウム)とを有する層状連続体となっている例である。
【0011】
図18(A)はベース電圧Vbがコレクタ電圧Vcよりも小さい場合(Vcが例えば5Vで、Vbが例えば1V〜2V程度の場合)である。この場合、エミッタ電極102から供給された電荷の大半はベース電極104を通過してコレクタ電極101に到達し、エミッタ電極102とコレクタ電極101との間に流れる電流(コレクタ電流)はベース電圧Vbによって変調される。一方、図18(B)はベース電圧Vbがコレクタ電圧Vcと同程度以上の場合(Vcが例えば5Vで、Vbが例えば5V以上の場合)である。この場合、エミッタ電極102から供給された電荷はベース電極104にリーク電流として流入し、コレクタ電極101に到達する電荷が減少する。その結果、ベース電極−エミッタ電極間の抵抗が急激に低下して短絡が生じたり、ベース電圧VbのON/OFFによりコレクタ電流にヒステリシスが生じるおそれがある。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、低電圧で作動するとともに大きなベース電圧を印加した場合でも耐電圧が高く、各種の回路素子への応用が容易で、製造コストを抑えた有機トランジスタ、回路素子及びそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明に係る有機トランジスタは、コレクタ電極と、エミッタ電極と、両電極間に設けられた有機半導体層と、該有機半導体層内に設けられたベース電極とを有する縦型トランジスタ部、及び、前記ベース電極とベース電圧電源端子との間に設けられた抵抗部、を有することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、ベース電極とベース電圧電源端子との間に設けた抵抗部により、ベース電圧を高くした場合に起こるベース電極へのリーク電流の発生を抑制することができる。その結果、ベース電極−エミッタ電極間の抵抗の急激な低下を防ぐので、短絡やヒステリシスの発生を防ぐことができる。
【0015】
このときの抵抗部の抵抗値は、電流増幅を生じさせるベース電圧印加時におけるベース電極−エミッタ電極間の抵抗値よりも大きく、リーク電流が生じるおそれのあった高いベース電圧印加時におけるベース電極−エミッタ電極間の抵抗値よりも小さいことが好ましい。その結果、電流増幅を生じさせるベース電圧印加時には、ベース電極−エミッタ電極間の抵抗(有機半導体層の抵抗)が抵抗部の抵抗よりも十分に大きいため、抵抗部での電圧降下が起こらず、抵抗部の挿入による駆動電圧の増加が起きない。一方、リーク電流が生じるおそれのあった高いベース電圧印加時には、抵抗部によりリーク電流の流入を抑制することができる。したがって、この発明によれば、抵抗部を設けたことによって、動作電圧の増加を伴わず、耐電圧を向上させることができる。
【0016】
本発明に係る有機トランジスタにおいて、前記抵抗部は、前記コレクタ電極と同じ材料からなり前記ベース電圧電源端子に接続する第1電極と、前記エミッタ電極と同じ材料からなり前記ベース電極に接続する第2電極と、前記有機半導体層と同じ材料からなり前記第1電極及び第2電極間に挟まれた抵抗層とを有する。
【0017】
この発明によれば、抵抗部を構成する第1電極、第2電極及び抵抗層が、縦型トランジスタ部を構成するコレクタ電極、エミッタ電極及び有機半導体層とそれぞれ同じ材料からなるので、従来の縦型有機トランジスタの作製工程と同じ工数で製造可能な有機トランジスタとなる。
【0018】
本発明に係る有機トランジスタにおいて、前記コレクタ電極が基板上に形成されてコレクタ電圧電源端子に接続され、前記エミッタ電極が前記有機半導体層上に形成されてグラウンド端子に接続され、前記第1電極が前記基板上に形成されて前記ベース電圧電源端子に接続されていてもよい。
【0019】
この発明によれば、縦型トランジスタ部は、基板上にコレクタ電極、有機半導体層及びエミッタ電極の順で形成され、抵抗部は、基板上に第1電極、抵抗層及び第2電極の順で形成されている。
【0020】
本発明に係る有機トランジスタにおいて、前記第1電極とともに前記抵抗層を挟む前記第2電極が、前記抵抗層上に直接設けられていてもよいし、前記ベース電極と同じ材料からなる第3電極を介して設けられていてもよい。この場合において、ベース電極と第2電極又は第3電極とが、バス電極を介して接続されていてもよい。
【0021】
本発明に係る有機トランジスタにおいて、前記有機半導体層が、前記ベース電極と前記コレクタ電極との間にある第1有機半導体層と、前記ベース電極と前記エミッタ電極との間にある第2有機半導体層とからなり、前記抵抗層が、前記第1有機半導体層と同一の材料からなる層を有する。
【0022】
本発明に係る有機トランジスタにおいて、前記ベース電極が、連続する絶縁性金属化合物と、該絶縁性金属化合物内に分布する粒状金属とを有する層状連続体である。
【0023】
本発明に係る有機トランジスタにおいて、前記ベース電極が、メッシュ状の導体である。
【0024】
上記課題を解決する本発明に係る第1の回路素子は、上記本発明に係る有機トランジスタを有することを特徴とする。
【0025】
この第1の回路素子に係る発明によれば、低電圧で作動するとともに大きなベース電圧を印加した場合でも耐電圧が高く、且つ製造コストを抑えた回路素子を提供できる。
【0026】
上記課題を解決する本発明に係る第2の回路素子は、上記本発明に係る有機トランジスタがさらに抵抗部又は非線形電流電圧特性部を有し、該抵抗部又は非線形電流電圧特性部は、前記コレクタ電極と同じ材料からなり該コレクタ電極に接続する第4電極と、前記エミッタ電極と同じ材料からなり該エミッタ電極に接続しない第5電極と、前記有機半導体層と同じ材料からなり前記第4電極及び第5電極間に挟まれた第2抵抗層とを有することを特徴とする。
【0027】
この第2の回路素子に係る発明によれば、抵抗部又は非線形電流電圧特性部を構成する第4電極、第5電極、及び第2抵抗層が、縦型トランジスタ部を構成するコレクタ電極、エミッタ電極、及び有機半導体層とそれぞれ同じ材料からなるので、従来の縦型有機トランジスタの作製工程と同じ工数で製造可能な回路素子となる。なお、本願において、「非線形電流電圧特性部」とは、電極から抵抗層への電荷注入度合いによって電流の立ち上がり電圧(閾値電圧)が異なる非線形な電流−電圧特性を持つ部分」のことであり、ダイオード類似の機能部である。
【0028】
上記課題を解決するための本発明に係る有機トランジスタの製造方法は、縦型トランジスタ部と抵抗部とを有する有機トランジスタの製造方法であって、
前記縦型トランジスタ部の作製工程は、コレクタ電極が形成された基板上に第1有機半導体層を形成する工程、前記第1有機半導体層上にベース電極を形成する工程、前記ベース電極上に第2有機半導体層を形成する工程、及び、前記第2有機半導体層上にエミッタ電極を形成する工程、をその順で有し、
前記抵抗部の作製工程は、前記コレクタ電極と同じ材料からなる第1電極が形成された基板上に前記第1有機半導体層と同じ材料からなる層を有する抵抗層を形成する工程、及び、前記抵抗層上に前記エミッタ電極と同じ材料からなる第2電極を形成する工程、をその順で有し、
前記第1有機半導体層と前記抵抗層の全部又は一部とを同時に形成し、前記エミッタ電極と前記第2電極とを同時に形成することを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、第1有機半導体層と抵抗層の全部又は一部とを同じ材料で同時に形成し、エミッタ電極と第2電極とを同じ材料で同時に形成するので、従来の縦型有機トランジスタの作製工程と同じ工数で製造することができる。
【0030】
本発明に係る有機トランジスタの製造方法において、前記エミッタ電極をグラウンド端子に接続し、前記コレクタ電極をコレクタ電圧電源端子に接続し、前記第1電極をベース電圧電源端子に接続し、前記第2電極を前記ベース電極に接続する。
【0031】
上記課題を解決するための本発明に係る回路素子の製造方法は、縦型トランジスタ部と、第1抵抗部と、第2抵抗部又は非線形電流電圧特性部とを有する回路素子の製造方法であって、
前記縦型トランジスタ部の作製工程は、コレクタ電極が形成された基板上に第1有機半導体層を形成する工程、前記第1有機半導体層上にベース電極を形成する工程、前記ベース電極上に第2有機半導体層を形成する工程、及び、前記第2有機半導体層上にエミッタ電極を形成する工程、をその順で有し、
前記第1抵抗部の作製工程は、前記コレクタ電極と同じ材料からなる第1電極が形成された前記基板上に前記第1有機半導体層と同じ材料からなる層を有する第1抵抗層を形成する工程、及び、前記第1抵抗層上に前記エミッタ電極と同じ材料からなる第2電極を形成する工程、をその順で有し、
前記第2抵抗部又は前記非線形電流電圧特性部の作製工程は、前記コレクタ電極と接続するとともに該コレクタ電極と同じ材料からなる第4電極が形成された前記基板上に前記第1有機半導体層と同じ材料からなる層を有する第2抵抗層を形成する工程、及び、前記第2抵抗層上に前記エミッタ電極と同じ材料からなる第5電極を形成する工程、をその順で有し、
前記第1有機半導体層と前記第1抵抗層の全部又は一部と前記第2抵抗層の全部又は一部とを同時に形成し、前記エミッタ電極と前記第2電極と前記第5電極とを同時に形成することを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、第1有機半導体層と第1抵抗層の全部又は一部と第2抵抗層の全部又は一部とを同じ材料で同時に形成し、エミッタ電極と第2電極と第5電極とを同じ材料で同時に形成するので、従来の縦型有機トランジスタの作製工程と同じ工数で製造することができる。
【0033】
本発明に係る回路素子の製造方法において、前記エミッタ電極をグラウンド端子に接続し、前記第4電極を出力電圧端子に接続し、前記第1電極を入力電圧端子に接続する。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る有機トランジスタによれば、ベース電極とベース電圧印加端子との間に設けた抵抗部により、ベース電圧を高くした場合に起こるベース電極へのリーク電流の発生を抑制することができる。その結果、ベース電極−エミッタ電極間の抵抗の急激な低下を防ぐので、短絡やヒステリシスの発生を防ぐことができ、動作電圧の増加を伴わず、耐電圧を向上させることができる。
【0035】
本発明に係る第1の回路素子によれば、低電圧で作動するとともに大きなベース電圧を印加した場合でも耐電圧が高く、且つ製造コストを抑えた回路素子を提供できる。また、第2の回路素子によれば、抵抗部又は非線形電流電圧特性部を構成する第4電極、第5電極、及び第2抵抗層が、縦型トランジスタ部を構成するコレクタ電極、エミッタ電極、及び有機半導体層とそれぞれ同じ材料からなるので、従来の縦型有機トランジスタの作製工程と同じ工数で製造可能な回路素子となる。
【0036】
本発明の有機トランジスタの製造方法によれば、第1有機半導体層と抵抗層の全部又は一部とを同じ材料で同時に形成し、エミッタ電極と第2電極とを同じ材料で同時に形成するので、従来の縦型有機トランジスタの作製工程と同じ工数で製造することができる。その結果、製造された有機トランジスタの製造コストを低減することができる。
【0037】
本発明に係る回路素子の製造方法によれば、第1有機半導体層と第1抵抗層の全部又は一部と第2抵抗層の全部又は一部とを同じ材料で同時に形成し、エミッタ電極と第2電極と第5電極とを同じ材料で同時に形成するので、従来の縦型有機トランジスタの作製工程と同じ工数で製造することができる。その結果、製造された回路素子の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る有機トランジスタの基本的な構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る有機トランジスタにおいて、ベース電圧がコレクタ電圧よりも小さい場合の電荷の流れ(A)と、ベース電圧がコレクタ電圧以上の場合の電荷の流れ(B)を説明する模式断面図である。
【図3】本発明に係る有機トランジスタの第1実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る有機トランジスタの第2実施形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明に係る有機トランジスタの第3実施形態を示す模式断面図である。
【図6】本発明に係る有機トランジスタの第4実施形態を示す模式断面図である。
【図7】本発明に係る有機トランジスタの第5実施形態を示す模式断面図である。
【図8】本発明に係る有機トランジスタを構成する各層の配置例を示す断面図(A)と平面図(B)である。
【図9】本発明に係る回路素子の例を示す回路図である。
【図10】本発明に係る回路素子を構成する各層の配置例を示す断面図(A)と平面図(B)である。
【図11】回路素子の応用例(リングオシレータ)の回路図である。
【図12】回路素子の他の応用例(アンプ)の回路図である。
【図13】層状連続体の形成工程を示す説明図である。
【図14】実験例1で得られた電流変調特性を示すグラフである。
【図15】実験例2で得られた入出力電圧特性を示すグラフである。
【図16】実験例3で得られた電流変調特性を示すグラフである。
【図17】実験例4で得られた入出力電圧特性を示すグラフである。
【図18】従来の有機トランジスタにおいて、ベース電圧がコレクタ電圧よりも小さい場合の電荷の流れ(A)と、ベース電圧がコレクタ電圧以上の場合の電化の流れ(B)を説明する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明に係る有機トランジスタ、回路素子及びそれらの製造方法について、図面を参照して詳しく説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有すれば種々の変形が可能であり、以下に具体的に示す実施形態に限定されるものではない。
【0040】
[有機トランジスタ及びその製造方法]
(基本構成)
有機トランジスタ10は、図1に示すように、コレクタ電極1と、エミッタ電極2と、両電極1,2間に設けられた有機半導体層3と、有機半導体層3内に設けられたベース電極4とを有する縦型トランジスタ部5、及び、ベース電極4とベース電圧電源端子7との間に設けられた抵抗部6、を有する。
【0041】
図1では、有機トランジスタ10は基板11上に設けられている。有機半導体層3は、ベース電極4とコレクタ電極1との間にある第1有機半導体層3a(下側有機半導体層)と、ベース電極4とエミッタ電極2との間にある第2有機半導体層3b(上側有機半導体層)とから構成されている。つまり、図1に示す有機トランジスタ10は、基板11側から、コレクタ電極1、第1有機半導体層3a(下側有機半導体層ともいう。)、ベース電極4、第2有機半導体層3b(上側有機半導体層ともいう。)、及びエミッタ電極2の順で設けられている。
【0042】
ベース電極4は、図12で詳しく説明するように、連続する絶縁性金属化合物4b(例えば酸化アルミニウム)と、その絶縁性金属化合物4b内に分布する粒状金属4a(例えばアルミニウム)とを有する層状連続体となっている。このベース電極4には抵抗部6が接続され、その抵抗部6はベース電圧電源端子7に接続されている。また、コレクタ電極1にはコレクタ電圧電源端子8が接続され、エミッタ電極2はグラウンド端子9に接続されている。
【0043】
本発明に係る有機トランジスタ10においては、コレクタ電極1とエミッタ電極2との間にコレクタ電圧Vcを印加し、さらにエミッタ電極2とベース電極4との間にベース電圧Vbを印加すると、そのベース電圧Vbの作用により、エミッタ電極2から注入された電子が著しく加速されてベース電極4を構成する開口部(絶縁性金属化合物4bのみの部分)を透過し、コレクタ電極1に到達する。すなわち、ベース電圧Vbの印加によってエミッタ電極−コレクタ電極間に流れる電流を変調させることができる。
【0044】
こうした有機トランジスタ10へのベース電圧Vbの影響を説明する。図2(A)はベース電圧Vbがコレクタ電圧Vcよりも小さい場合(Vcが例えば5Vで、Vbが例えば1V〜2V程度の場合)である。この場合、エミッタ電極2から供給された電荷の大半はベース電極4の開口部(粒状金属4aの無い絶縁性金属化合物4bのみの部分。以下同じ。)を通過してコレクタ電極101に到達する。一方、図2(B)はベース電圧Vbがコレクタ電圧Vcと同程度以上の場合(Vcが例えば5Vで、Vbが例えば5V以上の場合)である。この場合も、エミッタ電極102から供給された電荷はベース電極4の開口部を通過してコレクタ電極101に到達する。いずれの場合においても、エミッタ電極102とコレクタ電極101との間に流れる電流(コレクタ電流)はベース電圧Vbによって変調される。
【0045】
なお、本発明に係る有機トランジスタ10では、図18に示す従来例のようなリーク電流の流入による短絡やヒステリシスは生じない。その理由は、ベース電極4とベース電圧電源端子7との間に抵抗部6が設けられているためであり、その結果、ベース電圧Vbを高くした場合に起こるベース電極4へのリーク電流の発生を抑制し、ベース電極−エミッタ電極間の抵抗の急激な低下を防ぐことができる。
【0046】
このときの抵抗部6の抵抗値は、低いベース電圧印加時におけるベース電極−エミッタ電極間の抵抗値よりも大きく、高いベース電圧印加時におけるベース電極−エミッタ電極間の抵抗値よりも小さいことが好ましい。具体的には、ベース電極−エミッタ電極間に−2V〜2V程度の低いベース電圧を印加したときのベース電極−エミッタ電極間の抵抗値が100kΩ〜10MΩ程度であり、一方、ベース電極−エミッタ電極間に±3V〜±10V程度の高いベース電圧を印加したときのベース電極−エミッタ電極間の抵抗値1kΩ以下である場合には、抵抗部6の抵抗値としては例えば10kΩ〜50kΩの範囲内であることが好ましい。
【0047】
その結果、低いベース電圧印加時には、ベース電極−エミッタ電極間の抵抗(有機半導体層の抵抗)が抵抗部6の抵抗よりも十分に大きいため、抵抗部6での電圧降下が起こらず、抵抗部6の挿入による駆動電圧の増加が起きない。一方、高いベース電圧印加時には、抵抗部6によりリーク電流の流入を抑制することができる。したがって、抵抗部6が設けられた有機トランジスタ10は、動作電圧の増加を伴わず、耐電圧を向上させることができる。
【0048】
次に、以下の第1実施形態〜第5実施形態を例示して、有機トランジスタ10とその製造方法について説明する。
【0049】
(第1実施形態)
最初に、有機トランジスタ10Aの構成について説明する。第1実施形態に係る有機トランジスタ10Aは、図3に示すように、縦型トランジスタ部5と抵抗部6とで構成され、それらが基板11上に隣接して一体的に設けられている。
【0050】
縦型トランジスタ部5は、基板11上に設けられたコレクタ電極1と、コレクタ電極1上に設けられた第1有機半導体層3aと、第1有機半導体層3a上に設けられたベース電極4と、ベース電極4上に設けられた第2有機半導体層3bと、第2有機半導体層3b上に設けられたエミッタ電極2とで構成されている。コレクタ電極1はコレクタ電圧電源端子8に接続されている。エミッタ電極2はグラウンド端子9に接続されている。
【0051】
一方、抵抗部6は、基板11上に設けられた第1電極21と、第1電極21上に設けられた抵抗層24と、抵抗層24上に設けられた第3電極23と、第3電極23上に設けられた第2電極22とで構成されている。第1電極21は、コレクタ電極1と同じ材料からなり、コレクタ電極1と離間した所定のパターンでベース電圧電源端子7に接続する態様で設けられている。第2電極22は、エミッタ電極2と同じ材料からなり、エミッタ電極2と離間して設けられ、第1電極21に対向する所定のパターンで第3電極23上に設けられている。なお、第2電極22は、第3電極23を介してベース電極4に電気的に接続されている。第3電極23は、ベース電極4と同じ材料からなり、ベース電極4が抵抗部6にも延びた態様からなるものである。抵抗層24は、第1有機半導体層3aと同じ材料からなり、第1有機半導体層3aが抵抗部6にも延びた態様からなるものである。この抵抗層24は、第1電極21と第2電極22(第3電極23を介した第2電極22)との間に設けられている。
【0052】
抵抗部6は、いわゆる電子部品としての抵抗器であってもよく、特性的には使用可能であるが、本発明では、基板11上に縦型トランジスタ部5と並設できるので便利である。
【0053】
コレクタ電極1と第1電極21を覆うように一様に形成された有機半導体材料からなる層は、コレクタ電極1上では第1有機半導体層3aとして機能し、第1電極21上では抵抗層24として機能する。また、第1有機半導体層3aと抵抗層24を覆うように一様に形成された電極材料からなる層は、第1有機半導体層3a上ではベース電極4として機能し、抵抗層24上では第3電極23として機能する。
【0054】
なお、後で詳しく説明するが、抵抗部6を、抵抗として機能させる他、ダイオード機能に類似する非線形電流電圧特性部としても機能させることもできる。抵抗層24は半導体特性を有する層であるので、電極21,22からその抵抗層24への電荷の注入度合いを調整することができる。後述の実施例に示すように、用いる電極種によって閾値電圧がシフトしていることから、抵抗層24への電荷の注入度合いを変化させれば、そうした抵抗部6は、ダイオードの整流性よりも寧ろ、電流の立ち上がり電圧(閾値電圧)が異なる非線形な電流−電圧特性を持つ素子ということができる(こうしたダイオード類似の機能を「非線形電流電圧特性機能」とよぶ)。例えば、有機半導体材料の種類と電極(第1電極21,第2電極22、第3電極23)の種類とを調整することにより、一方の電極から抵抗層24への電荷注入度合いと、他方の電極から抵抗層24への電荷注入度合いを異なるものとし、電流の立ち上がり電圧(閾値電圧)を異なるものとして、ダイオード類似の非線形な電流電圧特性素子を構成できる。
【0055】
次に、製造方法について説明する。この有機トランジスタ10Aは、縦型トランジスタ部5の作製工程と、抵抗部6の作製工程とを有する方法で製造できる。
【0056】
縦型トランジスタ部5の作製工程は、コレクタ電極1が形成された基板11上に第1有機半導体層3aを形成する工程、第1有機半導体層3a上にベース電極4を形成する工程、ベース電極4上に第2有機半導体層3bを形成する工程、及び、第2有機半導体層3b上にエミッタ電極2を形成する工程、をその順で有する。コレクタ電極1、第1有機半導体層3a、ベース電極4、第2有機半導体層3b及びエミッタ電極2はそれぞれ所定パターンでその順で形成されている。
【0057】
抵抗部6の作製工程は、コレクタ電極1と同じ材料からなる第1電極21が形成された基板11上に第1有機半導体層3aと同じ材料からなる抵抗層24を形成する工程、抵抗層24上に前記エミッタ電極と同じ材料からなる第2電極を形成する工程、をその順で有する。第1電極21、抵抗層24及び第2電極22はそれぞれ所定パターンで形成されている。
【0058】
抵抗部6の作製工程において、この第1実施形態では、第2電極22を第3電極を23介して抵抗層24上に設けているが、後述の第2〜第5実施形態にように、第2電極22を抵抗層24上に直接設けてもよい。したがって、この第1実施形態に係る有機トランジスタ10Aの製造では、抵抗層形成工程後に、抵抗層24上にベース電極4と同じ材料からなる第3電極23を形成する工程と、その第3電極23上にエミッタ電極2と同じ材料からなる第2電極22を所定パターンで形成する工程をその順で有している。
【0059】
この製造方法では、第1有機半導体層3aと抵抗層24の全部又は一部とを同じ材料で同時に形成し、エミッタ電極2と第2電極22とを同じ材料で同時に形成することにより、第1実施形態の有機トランジスタ10Aを得ることができる。なお、「第1有機半導体層3aと抵抗層24の全部又は一部とを同時に形成し」とは、抵抗層24の全部を第1有機半導体層3aの形成と同時に第1有機半導体層3aと同じ材料で形成している場合(図3の第1実施形態)と、抵抗層24の一部を第1有機半導体層3aの形成と同時に第1有機半導体層3aと同じ材料で形成し、他の一部を第2有機半導体層3bと同時に第2有機半導体層3bと同じ材料で形成している場合(図6の第4実施形態)を含む意味である。
【0060】
また、基板11は、コレクタ電極1と第1電極21が既に形成されたものを用いてもよいし、何も形成されていないものを用いてもよい。何も形成されていない基板11を用いる場合は、第1有機半導体層3aと抵抗層24の形成工程の前に、基板11上にコレクタ電極1と第1電極21を形成する。この第1実施形態では、基板11上に、コレクタ電極1と第1電極21とが同じ材料で同時にパターン形成されていることが好ましい。
【0061】
したがって、第1実施形態に係る有機トランジスタ10Aは、(ア)基板11上に電極層を形成し、その電極層をパターニングして所定パターンのコレクタ電極1と第1電極21を形成する工程、(イ)コレクタ電極1と第1電極21を覆うように有機半導体材料からなる層を形成し、コレクタ電極1上の層(有機半導体材料層)を第1有機半導体層3aとし、第1電極21上の層(有機半導体材料層)を抵抗層24とする工程、(ウ)その層(第1有機半導体層3a及び抵抗層24)上にベース電極材料からなる電極層を形成し、第1有機半導体層3a上の電極層をベース電極4とし、抵抗層24上の電極層を第3電極23とする工程、(エ)ベース電極4上のみに第2有機半導体層3bを形成する工程、(オ)エミッタ電極材料からなる電極層を第2有機半導体層3b上に形成してエミッタ電極2とするとともに、同じエミッタ電極材料からなる電極層を第3電極23上に形成して第2電極22とする工程、をその順で有している。エミッタ電極2と第2電極22とを同時に形成することが好ましい。
【0062】
こうした製造方法によれば、抵抗部6を構成する第1電極21、抵抗層24、第3電極23及び第2電極22を、縦型トランジスタ部5を構成するコレクタ電極1、第1有機半導体層3a、ベース電極4及びエミッタ電極2とそれぞれ同じ材料で同時に形成するので、従来の縦型有機トランジスタの作製工程と同じ工数で製造することができる。
【0063】
(第2〜第5実施形態)
第2〜第5実施形態に係る有機トランジスタ10B〜10Eは、図4〜図7に示すように、縦型トランジスタ部5と抵抗部6とを離間して設け、縦型トランジスタ部5を構成するベース電極4と抵抗部6を構成する第2電極22(又は第3電極23を経由した第2電極22)とをバス電極25を介して接続している。この点が、縦型トランジスタ部5と抵抗部6とを連続して隣接させてなる第1実施形態の有機トランジスタ10Aとは異なっている。
【0064】
バス電極25は、例えばAl、Cu、Au、Cr、Mo、及びそれらのナノ粒子等の低抵抗の金属材料をパターン形成して基板11に設ける。こうした材料からなる導電性の良いバス電極25がベース電極4と第2電極22とを接続するので、縦型トランジスタ部5と抵抗部6とを基板1上の離れた場所に設けることができ、回路設計上便利である。バス電極25は、コレクタ電極1と第1電極21の形成工程前に形成してもよいし、その形成工程後で有機半導体材料からなる層(第1有機半導体層3a、抵抗層24)の形成工程前に形成してもよい。
【0065】
第2実施形態に係る有機トランジスタ10Bは、図4に示すように、第1実施形態と同様に、順次、コレクタ電極1と第1電極21を同じ材料で同時にパターン形成し、第1有機半導体層3aと抵抗層24を同じ材料で同時にパターン形成し、ベース電極4と第3電極23を同じ材料で同時にパターン形成し、第2有機半導体層3bのみ縦型トランジスタ部5に単独でパターン形成し、エミッタ電極2と第2電極22を同じ材料で同時にパターン形成して、縦型トランジスタ部5と抵抗部6とを形成する。その結果、従来の縦型有機トランジスタの形成工程と同じ工数で製造できるので製造上有利である。
【0066】
縦型トランジスタ部5を構成するベース電極4と、抵抗部6を構成する第2電極22との電気的な接続は、図4に示すように、予め基板11上にパターン形成されたバス電極25にベース電極4と第2電極22とを接触させるようにパターン形成して行う。
【0067】
第3実施形態に係る有機トランジスタ10Cは、図5に示すように、第3電極23を設けていない以外は上記第2実施形態の有機トランジスタ10Bと同じである。そして、その製造は、第2実施形態の場合と比較して、(1)ベース電極4を縦型トランジスタ部5のみに単独でパターン形成し、(2)第2電極22をエミッタ電極2の形成と同時にそのエミッタ電極2と同じ材料で抵抗層24上に直接且つバス電極25に電気的に接続するようにパターン形成する。
【0068】
第4実施形態に係る有機トランジスタ10Dは、図6に示すように、抵抗層24を、縦型トランジスタ部5を構成する第1有機半導体層3aと第2有機半導体層3bとで構成した以外は上記第3実施形態の有機トランジスタ10Cと同じである。そして、その製造は、第3実施形態の場合と比較して、縦型トランジスタ部5を構成する第2有機半導体層3bの形成と同時にその第2有機半導体層3bと同じ材料で抵抗部6の抵抗層(第1有機半導体層3aと同じ材料からなる層)上にパターン形成し、2層(第1有機半導体層3aと第2有機半導体層3b)構造の抵抗層24を形成する。
【0069】
第5実施形態に係る有機トランジスタ10Eは、図7に示すように、抵抗層24を、縦型トランジスタ部5を構成する第2有機半導体層3bのみで構成した以外は上記第3実施形態の有機トランジスタ10Cと同じである。そして、その製造は、第3実施形態の場合と比較して、縦型トランジスタ部5を構成する第2有機半導体層3bの形成と同時にその第2有機半導体層3bと同じ材料で抵抗部6の第1電極21上に形成して抵抗層24を形成する。このとき、第1電極21上には第1有機半導体層3aは形成されておらず、第2有機半導体層3bのみが抵抗層24として形成されている。
【0070】
次に、有機トランジスタ10Fを構成する各層の配置例について説明する。図8は、その一例を示す断面図(A)と平面図(B)である。
【0071】
縦型トランジスタ部5においては、コレクタ電極1とエミッタ電極2が平面視で重複部分S1を有するように対向して設けられている。ベース電極4と有機半導体層3aと有機半導体層3bは、通常、その重複部分S1を平面視で含み且つその重複部分S1よりも大きい面積で形成されている。こうして構成された縦型トランジスタ部5においては、その重複部分S1が電流変調を担う領域となる。
【0072】
また、抵抗部6においては、第1電極21と第2電極22が平面視で重複部分S2を有するように対向して設けられている。抵抗層24は、通常、その重複部分S2を平面視で含み且つその重複部分S2よりも大きい面積で形成されている。その結果、その重複部分S2が抵抗となり、重複部分S2の面積を変化させれば任意の抵抗値を得ることができる。
【0073】
図8(B)においては、有機半導体層(第1有機半導体層3a、第2有機半導体層3b、抵抗層24)は省略しているが、その有機半導体層は、少なくとも重複部分S1及びS2よりも大きく、且つ、上下に対向配置された電極が接触しないように少なくとも一方の電極の面積よりも大きく形成されている。
【0074】
なお、図8に示す実施形態は、ベース電極4が縦型トランジスタ部5にのみ設けられ、第2電極21がベース電極4の端部上に重なる態様で抵抗部6にのみ設けられ、そのベース電極4と第2電極22とは重なり部分26で電気的に接続されている。この点は、ベース電極4が抵抗部6にまで延びている第1実施形態とは異なる。
【0075】
[回路素子及びその製造方法]
(構成)
次に、本発明に係る回路素子について説明する。本発明に係る回路素子50は、図9の回路図と図10の断面図(A)及び平面図(B)とに示すように、少なくとも上記本発明に係る有機トランジスタ10を有する。具体的には、図9(A)に示すように、縦型トランジスタ部5と抵抗部(第1抵抗部)6とを少なくとも有する有機トランジスタ10が、さらに抵抗部(以下、第2抵抗部という。)30又は非線形電流電圧特性部40を有する。なお、図中、VDDは電源電圧であり、VOUTは出力電圧であり、VINは入力電圧である。また、符号35は出力電圧端子であり、符号36は入力電圧端子であり、符号37は電源電圧端子である。
【0076】
図10に示す回路素子50において、縦型トランジスタ部5と第1抵抗部6とを有する有機トランジスタについては、図3〜図8を用いて説明した内容と同じであり、ここではその説明を省略する。
【0077】
第2抵抗部30は、基板11上に設けられた第4電極31と、第4電極31上に設けられた第2抵抗層33と、第2抵抗層33上に設けられた第5電極32とで構成されている。
【0078】
第4電極31は、コレクタ電極1と同じ材料からなり、コレクタ電極1に電気的に接続するように設けられている。この第4電極31は、コレクタ電極1と一体化したものであってもよいし、別体で形成されたものであってもよいが、コレクタ電極1と一体化した所定パターンでコレクタ電極1と同時に形成されることが好ましい(図10(A)参照)。なお、第4電極31は、出力電圧端子35に接続する態様で設けられている。
【0079】
第5電極32は、エミッタ電極2と同じ材料からなり、エミッタ電極2ともベース電極4とも離間して設けられ、第4電極31に対向する所定のパターンで第2抵抗層33上に設けられている。なお、第5電極32は、VDD端子37に接続する態様で設けられている。
【0080】
第2抵抗層33は、第1有機半導体層3aと同じ材料からなり、第1有機半導体層3aが第2抵抗部30にも延びた態様からなるものである。この第2抵抗層33は、第4電極31と第5電極32との間に挟まれた態様で設けられている。第4電極31とコレクタ電極1と第1電極21を覆うように一様に形成された有機半導体材料からなる層は、図10(A)に示すように、第4電極31上では第2抵抗層33として機能し、コレクタ電極1上では第1有機半導体層3aとして機能し、第1電極21上では第1抵抗層24として機能する。
【0081】
回路素子50を構成する各層の配置例を図1(B)に示すが、縦型トランジスタ部5と第1抵抗部6については、図8(B)で説明した内容と同じであるのでその説明は省略する。
【0082】
第2抵抗部30においては、第4電極31と第5電極32が平面視で重複部分S3を有するように対向して設けられている。第2抵抗層33は、通常、その重複部分S3を平面視で含み且つその重複部分S3よりも大きい面積で形成されている。その結果、その重複部分S3が抵抗となり、重複部分S3の面積を変化させれば任意の抵抗値を得ることができる。
【0083】
図10(B)においては、有機半導体層(第1有機半導体層3a、第2有機半導体層3b、第1抵抗層24、第2抵抗層33)は省略しているが、その有機半導体層は、少なくとも重複部分S1、S2及びS3よりも大きく、且つ、上下に対向配置された電極が接触しないように少なくとも一方の電極の面積よりも大きく形成されている。
【0084】
こうした第2抵抗部30は、非線形電流電圧特性部40としても機能させることができる。有機半導体材料からなる層は半導体特性を有する層である。こうした層を第2抵抗層33とするためには、上下に配置された第4電極31と第5電極32との重複部分S3の面積を規定すれば所定の抵抗値を有する抵抗として機能させることができる。一方、有機半導体材料からなる第2抵抗層33への電荷の注入度合いは、有機半導体材料の種類と電極(第4電極31と第5電極32)の種類とで可変できる。したがって、一方の電極から第2抵抗層33への電荷注入度合いと、他方の電極から第2抵抗層33への電荷注入度合いを異なるものとすれば、一方向のみに電流を流す整流機能を持たせることができ、ダイオード類似の非線形電流電圧特性として機能させることができる。
【0085】
例えば、第4電極31から第2抵抗層33への電荷注入度合いを、第5電極32から第2抵抗層33への電荷注入度合いよりも高くすれば、第4電極31側から第5電極32側に向かって順バイアスとなるように構成できる。一方、具体例として、第2抵抗層33を構成する有機半導体材料としてペリレン顔料(Me−PTC)を用い、第4電極31としてITOを用い、第5電極32として銀を用いた場合には、第5電極32の銀からペリレンへの電荷注入度合いは、第4電極31のITOからペリレンへの電荷注入度合いよりも高いので、第5電極31側から第4電極32側に向かって順バイアスとなる。
【0086】
このように、第2抵抗部30は、用いる材料の選択により、抵抗機能とともに非線形電流電圧特性機能を有するように構成できるので、単一の第2抵抗部30を形成するのみで、抵抗とダイオード類似の非線形電流電圧特性の2つの機能をもたせることができるという利点がある。
【0087】
以上、この回路素子50によれば、第2抵抗部30又は非線形電流電圧特性部40を構成する第4電極31、第5電極32、及び第2抵抗層33が、縦型トランジスタ部5を構成するコレクタ電極1、エミッタ電極2、及び第1有機半導体層3aを有する層とそれぞれ同じ材料からなるので、従来の縦型有機トランジスタの作製工程と同じ工数で製造可能な回路素子となる。
【0088】
(製造方法)
次に、回路素子50の製造方法について説明する。本発明に係る回路素子50の製造方法は、縦型トランジスタ部5の作製工程と、第1抵抗部6の作製工程と、第2抵抗部30又は非線形電流電圧特性部40の作製工程とを有する。
【0089】
縦型トランジスタ部5の作製工程は、コレクタ電極1が形成された基板11上に第1有機半導体層3aを形成する工程、第1有機半導体層3a上にベース電極4を形成する工程、ベース電極4上に第2有機半導体層3bを形成する工程、及び、第2有機半導体層3b上にエミッタ電極2を形成する工程、をその順で有する。この工程は上記した有機トランジスタ10で説明したのと同じであるので、詳細は省略する。
【0090】
第1抵抗部6の作製工程は、コレクタ電極1と同じ材料からなる第1電極21が形成された基板11上に第1有機半導体層3aと同じ材料からなる層を有する第1抵抗層24を形成する工程、及び、第1抵抗層24上にエミッタ電極2と同じ材料からなる第2電極22を形成する工程、をその順で有する。この工程も上記した有機トランジスタ10で説明したのと同じであり、詳細は省略する。
【0091】
第2抵抗部30又は非線形電流電圧特性部40の作製工程は、コレクタ電極1と接続するとともに該コレクタ電極1と同じ材料からなる第4電極31が形成された基板11上に第1有機半導体層3aと同じ材料からなる層を有する第2抵抗層33を形成する工程、及び、第2抵抗層33上にエミッタ電極2と同じ材料からなる第5電極32を形成する工程、をその順で有する。ここで、第4電極31、第2抵抗層33及び第5電極32はそれぞれ所定パターンで形成されている(図10参照)。
【0092】
第2抵抗部30の作製工程において、第2抵抗層33上には通常、第5電極32が直接設けられるが、第1抵抗部6の場合と同様、ベース電極4と同じ材料からなる電極を介して第5電極32を設けてもよい。或いは、第2抵抗層33への電荷注入度合いを調整する層を介して第5電極32を設けてもよい。なお、ここでいう「電荷注入度合いを調整する層」は、第4電極31と第2抵抗層33との間に設けてもよいし、或いは、上記した第1抵抗部6においても、第1電極21と第1抵抗層24との間、又は、第2電極22と第1抵抗層24との間に設けてもよい。そうした層(電荷注入度合いを調整する層)としては、遷移金属酸化物、PEDOT等の高分子材料からなる電荷注入層等を挙げることができる。
【0093】
この製造方法では、第1有機半導体層3aと第1抵抗層24の全部又は一部と第2抵抗層33の全部又は一部とを同じ材料で同時に形成し、エミッタ電極2と第2電極22と第5電極32とを同じ材料で同時に形成する。これにより、従来の縦型有機トランジスタの作製工程と同じ工数で製造することができる。
【0094】
したがって、図10に例示した回路素子50は、(ア)基板11上に電極層を形成し、その電極層をパターニングして所定パターンのコレクタ電極1と第1電極21と第4電極31(コレクタ電極1と第5電極32は一体形成)を形成する工程、(イ)コレクタ電極1と第1電極21と第4電極31を覆うように有機半導体材料からなる層を形成し、コレクタ電極1上の層(有機半導体材料層)を第1有機半導体層3aとし、第1電極21上の層(有機半導体材料層)を第1抵抗層24とし、第4電極31上の層(有機半導体材料層)を第2抵抗層33とする工程、(ウ)第1有機半導体層3a上にベース電極材料からなる電極層を形成し、所定パターンのベース電極4とする工程、(エ)ベース電極4上のみに第2有機半導体層3bを形成する工程、(オ)エミッタ電極材料からなる電極層を第2有機半導体層3b上に形成してエミッタ電極2を形成し、同じエミッタ電極材料からなる電極層を第1抵抗層24上に形成して第2電極22を形成し、同じエミッタ電極材料からなる電極層を第2抵抗層33上に形成して第5電極32を形成する工程、をその順で有している。
【0095】
この場合、エミッタ電極2と第2電極22と第5電極32とは同時に形成される。また、エミッタ電極2はグラウンド端子9に接続され、第4電極31は出力電圧端子35に接続され、第1電極21は入力電圧端子36に接続され、第5電極32は電源電圧端子37に接続される。
【0096】
(応用例)
図11は、本発明に係る回路素子を複数用いたリングオシレータ60である。リングオシレータ60は、全体として負のゲインを持つ複数個(奇数個)の遅延要素をリング状に結合した発振回路である。遅延要素は、本発明の回路素子で構成した奇数個のNOTゲート(インバータ50A…50N)である。各インバータ50A,50B…の出力は鎖状に別のインバータに入力され、最後のインバータ50Nの出力は最初のインバータ50Aに入力される。各インバータは有限の遅延時間をもち、最初のインバータ50Aへの入力から有限の遅延時間後に最後のインバータ50Nが最初のインバータ50Aへの入力の論理否定を出力し、これが再び最初のインバータ50Aに入力される。このプロセスが繰り返されて発振する。
【0097】
図12は、本発明に係る回路素子を用いたアンプ70である。アンプ70は、例えばMP3プレーヤーを入力側に接続し、スピーカーを出力側に接続することで、入力した音声信号を増幅し、スピーカーから出力することができる。
【0098】
[各層の構成]
以下、本発明の有機トランジスタ及び回路素子を構成する各層について順に説明する。
【0099】
(各電極)
電極としては、コレクタ電極1、エミッタ電極2、ベース電極4、第1電極21、第2電極22、第4電極31、第5電極32及びバス電極25がある。これらのうち、コレクタ電極1と第1電極21と第4電極31は同じコレクタ電極材料で形成される。また、エミッタ電極2と第2電極22と第5電極32は同じエミッタ電極材料で形成される。なお、ベース電極4は別の電極材料で形成されるので後述する。
【0100】
コレクタ電極材料及びエミッタ電極材料としては、金属、導電性酸化物、導電性高分子等の薄膜が用いられる。
【0101】
コレクタ電極材料としては、例えば、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等を挙げることができる。一方、有機半導体層3が後述する電子輸送性の有機化合物からなる場合、エミッタ電極材料としては、アルミ、銀等の単体金属、MgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、Li、Caをはじめとするアルカリ金属類、それらアルカリ金属類の合金のような仕事関数の小さな金属等を挙げることができる。なお、有機半導体層3が後述する正孔輸送性の有機化合物からなる場合には、エミッタ電極材料として、金、クロムのような仕事関数の大きな金属を用いる。
【0102】
コレクタ電極材料は基板11上に電極層として形成され、その後所定パターンにパターニングして各電極(コレクタ電極1、第1電極21、第4電極31)を形成する。電極層の形成方法は、コレクタ電極材料の種類と基板11の種類や耐熱性等とを考慮し、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等や、塗布法等から任意に選択される。コレクタ電極材料を用いた各電極の厚さは、通常、10〜1000nmである。
【0103】
エミッタ電極材料は、第2有機半導体層3b上、抵抗層24(第1抵抗層24)上、又は第2抵抗層33上に電極層として形成され、その後所定パターンにパターニングして各電極(エミッタ電極2、第2電極22、第5電極32)を形成する。電極層の形成方法は、エミッタ電極材料の種類と有機半導体層(第2有機半導体層3b、抵抗層24、第2抵抗層33)の種類や耐熱性等とを考慮し、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等や、塗布法等から任意に選択される。エミッタ電極材料を用いた各電極の厚さは、通常、10〜1000nmである。
【0104】
バス電極材料としては、例えばAl、Cu、Au、Cr、Mo、及びそれらのナノ粒子等の低抵抗の金属材料が挙げられ、真空蒸着法、スパッタリング法、塗布法等で形成される。バス電極材料を用いたバス電極25の厚さは、通常、10〜1000nmである。
【0105】
(有機半導体層)
有機半導体材料層3(第1有機半導体層3a、第2有機半導体層3b)及びそれと同じ有機半導体材料からなる層(第1抵抗層24、第2抵抗層33)を形成する有機半導体材料としては、種々の電荷輸送性の有機半導体材料を挙げることができる。
【0106】
有機半導体層3には、第1有機半導体層3aと第2有機半導体層3bがあるが、例えば、(i)第1有機半導体層3aと第2有機半導体層3bとを1種又は2種以上の同じ材料で形成しても、1種又は2種以上の異なる材料で形成してもよいし、(ii)その材料が正孔輸送材料であっても電子輸送材料であってもよいし、(iii)第1有機半導体層3aの厚さと第2有機半導体層3bの厚さとが同じでも異なっていてもよいし、(iv)電荷注入層(図示しない)を有機半導体層3とエミッタ電極2ないしコレクタ電極1との間に有するものであってもよい。
【0107】
また、第1抵抗層24と第2抵抗層33は、第1有機半導体層3aを構成する有機半導体材料が通常用いられるが、第2有機半導体層3bを構成する有機半導体材料であってもよいし、第1有機半導体層3aと第2有機半導体層3bとを積層したものであってもよい。
【0108】
有機半導体材料としては、例えば、Alq(トリス8−キノリノラトアルミニウム錯体)、n型有機半導体であるペリレン顔料(Me−PTC)、フラーレンC60、NTCDA(ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)、PTCDA(3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物)若しくはPh−Et−PTC等を好ましく挙げることができ、また、アントラキノジメタン、フルオレニリデンメタン、テトラシアノエチレン、フルオレノン、ジフェノキノンオキサジアゾール、アントロン、チオピランジオキシド、ジフェノキノン、ベンゾキノン、マロノニトリル、ニジトロベンゼン、ニトロアントラキノン、無水マレイン酸若しくはペリレンテトラカルボン酸、又はこれらの誘導体等、電荷輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。
【0109】
第1有機半導体層3aの厚さは、通常、10nm〜3μm程度を挙げることができるが、好ましくは50nm〜700nm程度である。なお、その厚さが10nm未満の場合又は3μmを超える場合は、トランジスタが動作しないことがある。一方、第2有機半導体層3bの厚さは、第1有機半導体層3aに比べて基本的に薄いことが望ましく、通常、500nm程度以下を挙げることができるが、好ましくは10nm〜150nm程度である。その厚さが10nm未満の場合は、導通の問題が発生して歩留まりが低下することがある。
【0110】
コレクタ電極1上への第1有機半導体層3aの形成は、有機半導体材料の材質や特性等を考慮し、塗布法や蒸着法等から任意に選択される。また、ベース電極4と第2有機半導体層3bとの間に、又はベース電極4の両面に、漏れ電流を抑制するため、例えば酸化ケイ素膜等を設けてもよい。また、有機半導体材料からなる層の上にエミッタ電極2や第2電極22、第5電極32を形成する場合は、電極形成時に有機半導体材料からなる層に加わるダメージを軽減するための保護層設けてもよい。保護層としては、例えばAu、Ag、Al等の金属膜やZnS、ZnSe等の無機半導体膜等の蒸着膜又はスパッタ膜のように、成膜時にダメージを与え難いものが1〜500nm程度の厚さで予め成膜されることが好ましい。
【0111】
第1抵抗層24と第2抵抗層34の抵抗は、既述したように、各抵抗層を挟む電極の重複部分S2,S3の面積でコントロールできる。したがって、有機半導体材料層の半導体特性等を考慮して所定パターンで電極を形成すれば、希望する抵抗を得ることができる。
【0112】
(ベース電極)
ベース電極4は、図13に示すように、粒状金属4aと、その粒状金属4aを内部に有する絶縁性金属化合物4bとで構成されている層状連続体である。言い換えると、ベース電極4は、連続する絶縁性金属化合物4bと、絶縁性金属化合物4b内に分布する粒状金属4aとを有する。絶縁性金属化合物4bは、粒状金属4aを内部に有した形態で横方向に層状に設けられている。詳しくは、絶縁性金属化合物4bは、粒状金属4aの全体を取り巻くように設けられているとともに、横方向には層状に一様に形成されている。
【0113】
このベース電極4では、層状連続体4の横方向に粒状に分布する粒状金属4aが、エミッタ電極2から供給された電荷をコレクタ電極1側の第1有機半導体層3a内に強制的に供給する電極として作用する。粒状金属4aの形態は特に限定されないが、通常は円形又は略円形(楕円形等を含む)又はそれらに類似の形態である。円形又は略円形からなる粒状金属4aの平均直径は、5nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましく、30nm以上50nm以下が特に好ましい。こうした範囲の粒状金属4aは著しく微細なので、その粒状金属4aの周りに形成されて電流の透過部(開口部)として作用する絶縁性金属化合物4bを、ベース電極4内に多く(高い密度で)形成することができる。その結果、エミッタ電極2とベース電極4との間に印加した電圧Vbによって、エミッタ電極2とコレクタ電極1との間を流れる電流Icを効率的に変調することができる。
【0114】
粒状金属4aの厚さは特に限定されず、例えば5nm〜100nm程度、好ましくは10nm〜40nm程度を挙げることができる。なお、後述で説明するように、所定粒径の金属粒4”からなる金属膜4’(図13(A)参照)を酸化等の化学反応により粒状金属4aとする場合には、粒状金属4aの厚さは2nm〜50nm程度であることが好ましく、5nm〜20nm程度であることがより好ましい。こうした厚さからなる粒状金属4aは、ベース電極4の横方向に粒状に分布することができる。
【0115】
粒状金属4aの材質は導電性の金属であれば特に限定されないが、好ましくは導電性のよいアルミニウム又は銅等が採用される。特にアルミニウムは、酸化反応によって容易に酸化アルミニウムとすることができ、その酸化アルミニウムが絶縁性金属化合物4bとなるので便利である。しかも、その酸化アルミニウムは、酸化の進行がある程度進むと停止するという性質を有するので、粒状金属4aの大きさと絶縁性金属化合物4bの厚さをおよそ10nm以下の範囲内にコントロールすることができるという利点がある。
【0116】
絶縁性金属化合物4bとしては、例えば酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化銅等を挙げることができる。絶縁性金属化合物4bを構成する金属は特に限定されないが、通常は、粒状金属4aを構成する金属と同じである。したがって、例えば粒状金属4aがアルミニウムである場合には、絶縁性金属化合物4bはアルミニウム化合物(例えば酸化アルミニウム等)である。特に、絶縁性金属化合物4bが、粒状金属4aを構成する金属の酸化物又は酸窒化物又はそれらの複合化合物であることが好ましい。こうすることにより、絶縁性金属化合物4bを構成する金属成分と、粒状金属4aを構成する金属成分とが同じであるので、例えば、薄膜状の金属膜を成膜した後に酸素や窒素等の反応ガスを導入して化学反応させることによって、ベース電極4を構成する絶縁性金属化合物4bを容易に形成することができる。
【0117】
絶縁性金属化合物4bの厚さは特に限定されないが、金属粒4”からなる金属膜4’を酸化等して絶縁性金属化合物4bを形成する場合には、少なくとも粒状金属4aが所定の大きさで必ず残存する程度の厚さであることが必要であり、例えばその厚さとしては0.1nm〜100nm程度、好ましくは1nm〜10nmを例示できる。この場合における厚さは、少なくとも、粒状金属4aの周りに形成された厚さを指している。
【0118】
なお、絶縁性金属化合物4b内に分布している粒状金属4aは、前記のようにそれぞれの金属部分が接触せずに繋がっていない態様で分布していてもいなくてもよいが、それぞれの金属部分が接触して繋がっている態様で分布していてもよい。それぞれの金属部分が接触している場合は、粒状金属4a,4a間で電流が流れて電気導電性を確保できる。また、それぞれの金属部分が接触していない場合は、粒状金属4aの周囲に粒状金属4a,4a間に存在する電流の透過部としての絶縁性金属化合物4bの幅(隣り合う粒状金属4a,4aの間隔)が上記の厚さ寸法の範囲で存在すれば、粒状金属4a,4a間ではトンネル電流が流れる等して電極としての電気導電性を確保できる。
【0119】
こうしたベース電極4は、先ず、第1有機半導体層3a上の全面に金属膜4’を真空蒸着、スパッタリング等で形成し(図13(A)参照)、次いでその金属膜4’を部分的に絶縁化させて、連続する絶縁性金属化合物4bと、その絶縁性金属化合物4b内に分布する粒状金属4aとを生じさせる部分絶縁化法にて形成する(図13(B)参照)。
【0120】
なお、部分絶縁化工程は、図13(A)に示すような金属粒4”からなる金属膜4’を反応ガス中で化学反応させ、図13(B)に示すような粒状金属4aが所定の平均直径になるまで反応を行う。化学反応させるための反応ガス雰囲気としては、酸素雰囲気、酸素窒素混合雰囲気、高湿度雰囲気下等を挙げることができるが、好ましくは酸素雰囲気であり、容易に酸化処理することができる。金属粒4”の集合体からなる金属膜4’を酸化処理することにより、金属粒4”の周りに絶縁性金属酸化物4bを容易に形成することができる。
【0121】
(基板)
基板11の種類や構造は特に限定されるものではなく、用途に応じてフレキシブルな材質や硬質な材質等が選択される。具体的に用いることができる材料としては、例えば、Al等の金属、ガラス、石英、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等を挙げることができる。通常は、ITO付きガラス基板やITO付きプラスチック基板等を好ましく用いることができる。また、基板11の形状としては、枚葉状でも連続状でもよく、具体的な形状としては、例えばカード状、フィルム状、ディスク状、チップ状等を挙げることができる。
【0122】
(その他)
電極形成前の基板11上にはバリア層や平滑層等を設けてもよい。また、エミッタ電極2上には、必要に応じて、PVP (ポリビニルピロリドン) 等からなる保護層や、酸化ケイ素や酸窒化ケイ素等からなるガスバリア層を形成してもよい。
【実施例】
【0123】
以下、種々の実験を行って本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の例に限定解釈されることはない。
【0124】
[実験例1]
図8に示す有機トランジスタ10を作製した。先ず、厚さ150nmの透明ITO電極が全面に形成された厚さ1mmのガラス基板11を準備した。その透明ITO電極を、所定パターンのコレクタ電極1と第1電極21にパターニングした。電極パターンが形成されたガラス基板11を真空チャンバー内にセットし、そのコレクタ電極1と第1電極21上に、ペリレン系顔料(Me−PTC)を厚さ200nmとなるように蒸着法で形成して有機半導体層を形成した。この有機半導体層は、コレクタ電極1上では第1有機半導体層3aとして作用し、第1電極21上では抵抗層24として作用する。
【0125】
次に、第1有機半導体層3a上に、アルミニウム金属膜を厚さ20nmとなるように真空蒸着法で形成したが、その際、その金属膜が、平均粒径30nmの多数の金属粒(グレイン)によって形成されるように蒸着レートを0.1nm/秒〜1nm/秒の範囲で設定した(実際は、1nm/秒で成膜した。)。アルミニウム金属膜を形成した素子(図13(A)参照)を大気雰囲気下で120℃に加温した環境に保持し、そのアルミニウム金属膜を構成する金属粒の周縁を酸化させて、粒状のアルミニウム金属と酸化アルミニウムとからなる層状連続体(ベース電極4)を形成した(図13(B)参照)。次いで、再び真空チャンバーに戻して厚さ40nmのフラーレンC60を蒸着して第2有機半導体層3bを形成した。
【0126】
次に、Alをマスクを用いてパターン蒸着し、第2有機半導体層3b上にはエミッタ電極2を所定パターンで形成し、抵抗層24上には第2電極22を所定パターンで形成した。なお、第2電極22の端部がベース電極4の端部に重なる部分26を有するように形成し、両者を電気的に接続した。最後に、窒素雰囲気下で封止処理を行った。封止処理は、2枚のガラスを紫外線硬化樹脂で貼り合わせることで行った。こうして有機トランジスタ10を作製した。
【0127】
上記の方法で以下のサンプル1〜4を作製した。
【0128】
<サンプル1>抵抗層24を上下に挟む第1電極21と第2電極22との重複部分S2の面積を調整(1mm×4mm)して、抵抗部6の抵抗値が15kΩとなる有機トランジスタ;
<サンプル2>抵抗層24を上下に挟む第1電極21と第2電極22との重複部分S2の面積を調整(1mm×1.8mm)して、抵抗部6の抵抗値が20kΩとなる有機トランジスタ;
<サンプル3>抵抗層24を上下に挟む第1電極21と第2電極22との重複部分S2の面積を調整(1mm×1.2mm)して、抵抗部6の抵抗値が50kΩとなる有機トランジスタ;
<サンプル4>抵抗部6を形成しない縦型トランジスタ部5のみの有機トランジスタ。
【0129】
図14は、サンプル1〜4で得られた電流変調特性を示すグラフである。測定は、2台のソース・メジャーユニットを用い、一定のコレクタ電圧(3V)を印加した状態でベース電圧を変化させたときの、コレクタ電流、ベース電流を測定することで行った。
【0130】
図14に示すように、抵抗部6を形成しないサンプル4(図中の太線)の場合は、ベース電圧Vbの走査に対して、ベース電圧を4V印加しただけでヒステリシスが発生した。また、ベース電圧Vbを9V印加すると、ベース電極−エミッタ電極間の短絡が確認された。一方、抵抗部6を15kΩとしたサンプル1(図中の破線)、20kΩとしたサンプル2(図中の一点鎖線)は、コレクタ電流がサンプル4と同程度の立ち上がりを示しており、抵抗部6を加えたことによる動作電圧の増加は確認されなかった。また、ベース電圧を9V印加しても大きなヒステリシスやベース電極−エミッタ電極間の短絡は確認されなかった。抵抗部6を50kΩとしたサンプル3(図中の細線)は、ヒステリシスは確認されなかったが、動作電圧が増加しており、適切な抵抗値を設定することが必要であることが分かった。
【0131】
[実験例2]
図9(A)及び図10に示す回路素子50Aを作製した。先ず、厚さ150nm透明ITO電極が全面に形成された厚さ1mmのガラス基板11を準備した。その透明ITO電極を、所定パターンのコレクタ電極1及び第4電極31と第1電極21とにパターニングした。ここで、コレクタ電極1と第4電極31は図10に示すように一体パターンで形成した。電極パターンが形成されたガラス基板11を真空チャンバー内にセットし、そのコレクタ電極1と第1電極21と第4電極31上に、ペリレン系顔料(Me−PTC)を厚さ200nmとなるように蒸着法で形成して有機半導体層を形成した。この有機半導体層は、コレクタ電極1上では第1有機半導体層3aとして作用し、第1電極21上では第1抵抗層24として作用し、第4電極31上では第2抵抗層33として作用する。
【0132】
次に、第1有機半導体層3a上に、実験例1と同様の方法でベース電極4を形成した。次いで、再び真空チャンバーに戻して厚さ40nmのフラーレンC60を蒸着して第2有機半導体層3bを形成した。
【0133】
次に、Agをマスクを用いてパターン蒸着し、第2有機半導体層3b上にはエミッタ電極2を所定パターンで形成し、第1抵抗層24上には第2電極22を所定パターンで形成し、第2抵抗層33上には第5電極32を所定パターンで形成した。なお、第2電極22は、その端部がベース電極4の端部に重なる部分26を有するように形成し、両者を電気的に接続した。最後に、窒素雰囲気下で封止処理を行った。封止処理は、2枚のガラスを紫外線硬化樹脂で貼り合わせることで行った。こうして回路素子50A(図9(A)参照)を作製した。
【0134】
得られた回路素子50Aにおいて、第1抵抗層24を上下に挟む第1電極21と第2電極22との重複部分S2の面積を調整(1mm×1.8mm)して、第1抵抗部6の抵抗値を20kΩとした。また、第2抵抗層33を上下に挟む第4電極31と第5電極32との重複部分S3の面積を調整(1mm×1.8mm)して、第2抵抗部30の抵抗値を20kΩとした。
【0135】
図15は、得られた回路素子50Aの入出力電圧特性を示すグラフである。測定は、3台のソース・メジャーユニットを用い、一定のVDDを印加しながら入力電圧を変化させたときの出力電圧を観測することで行った。図示のように、入力電圧を増加させることで、出力電圧が減少しており、基本論理演算回路の一つであるインバータ回路として動作していることが確認された。
【0136】
[実験例3]
実験例1の有機トランジスタ10において、その抵抗部6に非線形電流電圧特性機能を併せ持たせた有機トランジスタ10(図8参照)を作製した。先ず、実験例1と同様にして、ガラス基板11にパターン形成したコレクタ電極1と第1電極21上に、コレクタ電極1上では第1有機半導体層3aとして作用し、第1電極21上では抵抗層24として作用する有機半導体層を形成した。
【0137】
次に、第1有機半導体層3a上に、実験例1と同様の方法でベース電極4を形成し、さらに、そのベース電極4上にて第2有機半導体層3bを形成した。
【0138】
次に、Ag、Al、Li/Alのいずれかをマスクを用いてパターン蒸着し、第2有機半導体層3b上にはエミッタ電極2を所定パターンで形成し、抵抗層24上には第2電極22を所定パターンで形成した。それ以外も実験例1と同様にして有機トランジスタ10を作製した。
【0139】
この実験例3では、第2電極22の電極材料として、Agを用いた場合をサンプルAとし、Alを用いた場合をサンプルBとし、Liを0.1nm、Alを100nm蒸着したものを用いた場合をサンプルCとした。なお、サンプルA〜Cは、抵抗層24を上下に挟む第1電極21と第2電極22との重複部分S2の面積を調整(1mm×1.8mm)し、抵抗部6の抵抗値は20kΩとした。
【0140】
図16は、サンプルA〜Cで得られた電流変調特性を示すグラフである。測定は、実験例1と同様である。図示のように、用いる電極種によって閾値電圧がシフトしていることから、抵抗層24への電荷の注入度合いを変化させることができる。すなわち、本発明においては、電極種を代えて抵抗層24への電荷注入度合いを変化させることにより、その抵抗部6には、ダイオードの整流性よりも寧ろ、電流の立ち上がり電圧(閾値電圧)が異なる非線形な電流−電圧特性を持たせることができる。本願では、こうしたダイオード類似の機能を「非線形電流電圧特性機能」とよぶ。例えば、抵抗層24への電荷注入を悪くする電極種を設けて立ち上がり電圧を例えば1Vとすると、トランジスタのVthをプラスにシフトさせることができる。
【0141】
サンプルC(図中の一点鎖線)は、第2電極22から抵抗層24への電荷の注入が良好であるため、閾値電圧は0Vであった。一方、図16にも示すように、サンプルA(図中の実線)は、第2電極22から抵抗層24への電荷の注入が抑制されており、閾値電圧が0.6Vとなった。また、サンプルB(図中の破線)は、第2電極22から抵抗層24への電荷の注入がサンプルAよりさらに抑制されており、閾値電圧が1.2V程度となった。
【0142】
[実験例4]
実験例2の回路素子50Aにおいて、その第1抵抗部6に非線形電流電圧特性機能を併せ持たせた回路素子(図9(A)及び図10参照)を作製した。先ず、実験例2と同様にして、ガラス基板11にパターン形成したコレクタ電極1と第1電極21と第4電極31上に、コレクタ電極1上では第1有機半導体層3aとして作用し、第1電極21上では抵抗層24として作用し、第4電極31上では第2抵抗層33として作用する有機半導体層を形成した。なお、コレクタ電極1と第4電極31は図10に示すように一体パターンで形成した。
【0143】
次に、第1有機半導体層3a上に、実験例2と同様の方法でベース電極4を形成し、さらにそのベース電極4上に第2有機半導体層3bを形成した。
【0144】
次に、Ag、Al、Li/Alのいずれかをマスクを用いてパターン蒸着し、第2有機半導体層3b上にはエミッタ電極2を所定パターンで形成し、第1抵抗層24上には第2電極22を所定パターンで形成し、第2抵抗層33上には第5電極32を所定パターンで形成した。それ以外も実験例2と同様にして回路素子50Aを作製した。
【0145】
この実験例4では、第2電極22の電極材料として、Agを用いた場合をサンプルAとし、Alを用いた場合をサンプルBとし、LiF/Alを用いた場合をサンプルCとした。なお、サンプルA〜Cは、第1抵抗層24を上下に挟む第1電極21と第2電極22との重複部分S2の面積を調整(1mm×1.8mm)し、抵抗部6の抵抗値は20kΩとした。また、第2抵抗層33については、その第2抵抗層33を上下に挟む第4電極31と第5電極32との重複部分S3の面積を調整(1mm×0.6mm)し、第2抵抗部30の抵抗値は100kΩとした。
【0146】
図17は、サンプルA〜Cで得られた入出力電圧特性を示すグラフである。測定は、実験例2と同様である。図中の実線はサンプルAを表し、破線はサンプルBを表し、一点鎖線はサンプルCを表している。図17の結果より、抵抗部6の電極種による閾値電圧シフト(図16参照)にあわせてインバータの反転する閾値電圧を制御可能であることがわかった。
【符号の説明】
【0147】
1 コレクタ電極(下部電極)
2 エミッタ電極(上部電極)
3 有機半導体層
3a 第1有機半導体層
3b 第2有機半導体層
4 ベース電極(層状連続体)
4a 粒状金属
4b 絶縁性金属化合物
5 縦型トランジスタ部
6 抵抗部(第1抵抗部)
7 ベース電圧電源端子
8 コレクタ電圧電源端子
9 グラウンド端子
10 有機トランジスタ
11 基板
12 非線形電流電圧特性部
21 第1電極
22 第2電極
23 第3電極
24 抵抗層(第1抵抗層)
25 バス電極
26 ベース電極と第2電極との重なり部分
30 第2抵抗部
31 第4電極
32 第5電極
33 第2抵抗層
35 出力電圧端子
36 入力電圧端子
37 電源電圧端子
40 非線形電流電圧特性部
50 回路素子
【0148】
Vb ベース電圧
Vc コレクタ電圧
DD 電源電圧
OUT 出力電圧
IN 入力電圧
S1 コレクタ電極とエミッタ電極の重複部分
S2 第1電極と第2電極の重複部分
S3 第4電極と第5電極の重複部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレクタ電極と、エミッタ電極と、両電極間に設けられた有機半導体層と、該有機半導体層内に設けられたベース電極とを有する縦型トランジスタ部、及び、前記ベース電極とベース電圧電源端子との間に設けられた抵抗部、を有することを特徴とする有機トランジスタ。
【請求項2】
前記抵抗部は、前記コレクタ電極と同じ材料からなり前記ベース電圧電源端子に接続する第1電極と、前記エミッタ電極と同じ材料からなり前記ベース電極に接続する第2電極と、前記有機半導体層と同じ材料からなり前記第1電極及び第2電極間に挟まれた抵抗層とを有する、請求項1に記載の有機トランジスタ。
【請求項3】
前記コレクタ電極が基板上に形成されてコレクタ電圧電源端子に接続され、前記エミッタ電極が前記有機半導体層上に形成されてグラウンド端子に接続され、前記第1電極が前記基板上に形成されて前記ベース電圧電源端子に接続されている、請求項1に記載の有機トランジスタ。
【請求項4】
前記第1電極とともに前記抵抗層を挟む前記第2電極が、前記抵抗層上に直接、又は前記ベース電極と同じ材料からなる第3電極を介して設けられている、請求項2又は3に記載の有機トランジスタ。
【請求項5】
前記ベース電極と前記第2電極又は前記第3電極とが、バス電極を介して接続されている、請求項4に記載の有機トランジスタ。
【請求項6】
前記有機半導体層が、前記ベース電極と前記コレクタ電極との間にある第1有機半導体層と、前記ベース電極と前記エミッタ電極との間にある第2有機半導体層とからなり、前記抵抗層が、前記第1有機半導体層と同一の材料からなる層を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機トランジスタ。
【請求項7】
前記ベース電極が、連続する絶縁性金属化合物と、該絶縁性金属化合物内に分布する粒状金属とを有する層状連続体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機トランジスタ。
【請求項8】
前記ベース電極が、メッシュ状の導体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機トランジスタ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機トランジスタを有することを特徴とする回路素子。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機トランジスタがさらに抵抗部又は非線形電流電圧特性部を有し、該抵抗部又は非線形電流電圧特性部は、前記コレクタ電極と同じ材料からなり該コレクタ電極に接続する第4電極と、前記エミッタ電極と同じ材料からなり該エミッタ電極に接続しない第5電極と、前記有機半導体層と同じ材料からなり前記第4電極及び第5電極間に挟まれた第2抵抗層とを有することを特徴とする回路素子。
【請求項11】
縦型トランジスタ部と抵抗部とを有する有機トランジスタの製造方法であって、
前記縦型トランジスタ部の作製工程は、コレクタ電極が形成された基板上に第1有機半導体層を形成する工程、前記第1有機半導体層上にベース電極を形成する工程、前記ベース電極上に第2有機半導体層を形成する工程、及び、前記第2有機半導体層上にエミッタ電極を形成する工程、をその順で有し、
前記抵抗部の作製工程は、前記コレクタ電極と同じ材料からなる第1電極が形成された基板上に前記第1有機半導体層と同じ材料からなる層を有する抵抗層を形成する工程、及び、前記抵抗層上に前記エミッタ電極と同じ材料からなる第2電極を形成する工程、をその順で有し、
前記第1有機半導体層と前記抵抗層の全部又は一部とを同時に形成し、前記エミッタ電極と前記第2電極とを同時に形成することを特徴とする有機トランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記エミッタ電極をグラウンド端子に接続し、前記コレクタ電極をコレクタ電圧電源端子に接続し、前記第1電極をベース電圧電源端子に接続し、前記第2電極を前記ベース電極に接続する、請求項11に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項13】
縦型トランジスタ部と、第1抵抗部と、第2抵抗部又は非線形電流電圧特性部とを有する回路素子の製造方法であって、
前記縦型トランジスタ部の作製工程は、コレクタ電極が形成された基板上に第1有機半導体層を形成する工程、前記第1有機半導体層上にベース電極を形成する工程、前記ベース電極上に第2有機半導体層を形成する工程、及び、前記第2有機半導体層上にエミッタ電極を形成する工程、をその順で有し、
前記第1抵抗部の作製工程は、前記コレクタ電極と同じ材料からなる第1電極が形成された前記基板上に前記第1有機半導体層と同じ材料からなる層を有する第1抵抗層を形成する工程、及び、前記第1抵抗層上に前記エミッタ電極と同じ材料からなる第2電極を形成する工程、をその順で有し、
前記第2抵抗部又は前記非線形電流電圧特性部の作製工程は、前記コレクタ電極と接続するとともに該コレクタ電極と同じ材料からなる第4電極が形成された前記基板上に前記第1有機半導体層と同じ材料からなる層を有する第2抵抗層を形成する工程、及び、前記第2抵抗層上に前記エミッタ電極と同じ材料からなる第5電極を形成する工程、をその順で有し、
前記第1有機半導体層と前記第1抵抗層の全部又は一部と前記第2抵抗層の全部又は一部とを同時に形成し、前記エミッタ電極と前記第2電極と前記第5電極とを同時に形成することを特徴とする回路素子の製造方法。
【請求項14】
前記エミッタ電極をグラウンド端子に接続し、前記第4電極を出力電圧端子に接続し、前記第1電極を入力電圧端子に接続する、請求項13に記載の回路素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−54775(P2011−54775A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202575(P2009−202575)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】