検出システム
【課題】DPFの下流に配置されたPMセンサの故障を高精度で検出する検出システムを提供する。
【解決手段】図示のとおりDPF3をすり抜けたPM(あるいはすす(soot))積算量は時間とともに徐々に増加していく。DPF再生インターバル期間内でPMセンサの出力値が故障判定閾値を一度でも越えたら、PMセンサは正常だと判定し、故障判定閾値を一度も越えなかったら、PMセンサは故障していると判定する。DPF再生インターバル期間中にPMセンサの出力値がPMセンサ故障判定閾値を一度も越えなかった場合に、その時点ではまだPMセンサの故障判定は行わず、DPFの再生開始を所定期間保留して、その保留期間内でPMセンサの故障判定をするとしてもよい。
【解決手段】図示のとおりDPF3をすり抜けたPM(あるいはすす(soot))積算量は時間とともに徐々に増加していく。DPF再生インターバル期間内でPMセンサの出力値が故障判定閾値を一度でも越えたら、PMセンサは正常だと判定し、故障判定閾値を一度も越えなかったら、PMセンサは故障していると判定する。DPF再生インターバル期間中にPMセンサの出力値がPMセンサ故障判定閾値を一度も越えなかった場合に、その時点ではまだPMセンサの故障判定は行わず、DPFの再生開始を所定期間保留して、その保留期間内でPMセンサの故障判定をするとしてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、内燃機関に対してすぐれた排気浄化性能が求められている。特にディーゼルエンジンにおいては、エンジンから排出される黒煙などのいわゆる排気微粒子(粒子状物質、PM:Particulate Matter)の除去が重要である。PMを除去するために排気管の途中にディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が装備されることが多い。
【0003】
排気中のPM量を検出する手段としてPMセンサがある。例えばDPF下流にPMセンサを配置した場合、PMセンサの検出値を用いてDPFが故障しているか否かを判定できる。今後さらに自動車の後処理故障検出が厳しくなることが予想されており、PMセンサを装備してDPFの故障検出を行う必要がある。そのためにはPMセンサ自体が正常であることが必要であり、PMセンサの故障検出(PMセンサの合理性判断)も重要となる。例えば下記特許文献1には、PMセンサの故障検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−275977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DPFが正常の場合、DPFをすり抜けるPM量は非常に少ないので、DPFの下流に搭載されたPMセンサの出力値は小さい。したがってPMセンサの故障検出には、小さい出力値を用いてPMセンサが故障しているのかどうかを判断するという課題がある。上記特許文献1の装置では、DPFの再生終了から所定期間の間はDPFをすり抜けるPM量が相対的に多いことを利用して、同期間内でPMセンサの故障を判定している。
【0006】
しかし一般的に、DPFの再生終了後におけるDPFをすり抜けるPM量が相対的に多い期間は非常に短く、その短い期間内でPMセンサの故障を精度よく検出することは難しい。よって、文献1のような方法によらず、高精度でPMセンサの故障を検出するしくみを開発することが求められる。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、DPFの下流に配置されたPMセンサの故障を高精度で検出する検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明に係る検出システムは、内燃機関の排気通路に装備されて、前記内燃機関から排出された粒子状物質を捕集するフィルタと、前記排気通路において前記フィルタよりも下流に装備されて、粒子状物質を検出する検出手段と、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
これにより本発明に係る検出システムでは、排気通路に配置されて粒子状物質を捕集するフィルタの再生インターバル期間中に、フィルタの下流に配置された検出手段の出力が所定の出力でない場合に検出手段が故障だと判定する。したがってフィルタ再生インターバル期間中に検出手段の出力が、正常であることを示す所定の出力であるか否かの情報を用いて、高精度に検出手段の故障が判定できる。
【0010】
また前記判定手段は、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記フィルタ再生処理の開始を所定期間遅らせて、その所定期間中にも前記検出手段からの出力が前記所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定するとしてもよい。
【0011】
この発明によれば、例えばフィルタの捕集率が高い場合などの理由でフィルタをすり抜ける粒子状物質の量が少ない場合には、通常のフィルタ再生インターバル期間中での判定のみでは、検出手段が正常でも故障と誤判定する可能性があるので、フィルタ再生開始を所定期間遅らせて、その期間にも所定の出力が得られなければ検出手段は故障と判定する。これにより検出手段の誤判定の可能性が低減できる。
【0012】
また前記第1判定手段は、前記検出手段の出力が第1閾値を越えない場合に前記所定の出力でないとし、前記検出手段の出力が前記第1閾値よりも大きい第2閾値を越えた場合に、前記フィルタが故障であると判定する第2判定手段を備えたとしてもよい。
【0013】
この発明によれば、検出手段の故障判定の手段に加えて、フィルタの故障判定の手段を備えて、両判定のために閾値を設ける構成において、フィルタ故障判定の第2閾値を検出手段故障判定の第1閾値よりも大きくした。したがって、フィルタをすり抜ける粒子状物質量が少ない状況で適切に検出手段の故障が判定できるとともに、相対的に高い閾値によりフィルタ故障判定も精度よく行える。
【0014】
また前記検出手段の出力により前記フィルタが故障であると判定する第2判定手段を備え、前記第1判定手段および第2判定手段は電気回路を含んで構成され、前記第1判定手段が有する第1回路は、前記第2判定手段が有する第2回路よりも高感度の回路であるとしてもよい。
【0015】
この発明によれば、検出手段とフィルタの故障判定のための電気回路を装備し、検出手段の故障検出の場合にはフィルタの故障検出の場合よりも高感度の電気回路を用いる。したがって、通常、検出手段の故障判定の場合にはフィルタの故障判定の場合よりも少ない粒子状物質の付着量で故障か否かを判定することになるが、より高感度の回路を用いることにより、少ない粒子状物質量でも高精度に検出手段の故障が判定できる。
【0016】
また前記第1判定手段は、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記検出手段の温度をより高くし、昇温した前記検出手段からの出力が前記所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定するとしてもよい。
【0017】
この発明によれば、通常のフィルタ再生インターバル期間中に所定の出力が出ない場合には、検出手段を昇温して、それでも所定の出力が出ない場合に検出手段が故障したと判定する。したがって検出手段に付着した粒子状物質の電気抵抗値が高く、付着量が検出手段に出力として現れない場合に、粒子状物質の有する温度特性を効果的に利用して、検出手段を昇温して粒子状物質の電気抵抗を低減し、検出手段の出力を出やすくする。よって粒子状物質の電気抵抗値が高いことが原因で検出手段が故障と誤判定することを抑制する。
【0018】
また前記第1判定手段は、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記検出手段に印加する電圧をより高くし、より高い電圧を印加された前記検出手段からの出力が前記所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定するとしてもよい。
【0019】
この発明によれば、通常のフィルタ再生インターバル期間中に所定の出力が出ない場合には、検出手段への印加電圧を高くして、それでも所定の出力が出ない場合に検出手段が故障したと判定する。したがって検出手段に付着した粒子状物質の電気抵抗値が高く、付着量が検出手段に出力として現れない場合に、検出手段への印加電圧を高くして、粒子状物質の電気抵抗が高くても検出手段の出力を出やすくする。よって粒子状物質の電気抵抗が高いことが原因で検出手段が故障と誤判定することを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明における検出システムの実施例における構成図。
【図2】PMセンサの構造の例を示す図。
【図3】PMセンサの出力の例を示す図。
【図4】実施例1における故障検出処理のフローチャート。
【図5】実施例1におけるタイムチャートの例を示す図。
【図6】実施例2における故障検出処理のフローチャート。
【図7】実施例2におけるタイムチャートの例を示す図。
【図8】DPFセンサ故障判定とDPF故障判定の閾値の例を示す図。
【図9】実施例3における検出処理のフローチャート。
【図10】実施例3におけるタイムチャートの例を示す図。
【図11】実施例4における検出処理のフローチャート。
【図12】実施例4におけるタイムチャートの例を示す図。
【図13】PMセンサのシステム構成例の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る検出システム1(以下、システム)の実施例における装置構成の概要図である。図1の構成は以下の全ての実施例で用いればよい。
【0022】
システム1は、自動車のディーゼルエンジン2(エンジン)の排気管(排気通路)中のPM量を検出するためのシステムである。エンジン2の排気管に、上流側からDPF3とPMセンサ4とが配置されている。
【0023】
DPF3は、例えば代表的な構造として、いわゆるハニカム構造において入口側と出口側を交互に目詰めした構造とすればよい。エンジン2の運転中に排出される排気にはPM(粒子状物質)が含まれ、このPMはDPF3の上記構造のDPF壁を排気が通過するときに、このDPF壁の内部あるいは表面に捕集されて車外に排出される排気が浄化される。DPF3は例えば酸化触媒が担持された酸化触媒付きDPFであるとすればよい。
【0024】
DPF3に堆積したPMの堆積量が十分大きくなった度ごとに、堆積したPMを燃焼することによって除去し、DPF3を再生する。PMの堆積量を推定する方法は例えば、DPF3の前後差圧とPM堆積量の関数関係(マップ)を予め求めておいてメモリ50に記憶しておき、差圧センサを配置して、その検出値と同マップとからPMの堆積量を推定すればよい。このマップは、代表的な特性としては、前後差圧とPM堆積量とをそれぞれ縦軸横軸とした関係がほぼ平行四辺形の形状となり、PMが堆積し、燃焼することによりその平行四辺形を1周する。
【0025】
PMセンサ4はDPF3より下流の排気中のPM量を検出する。PMセンサ4がDPF3の下流に装備されていることにより、PMセンサ4によってDPF3をすり抜けたPM量を検出できる。これによりDPF3の故障の有無が検出できる。
【0026】
電子制御装置5(ECU:Electronic Control Unit)は、以上のシステムを制御するために装備されている。ECU5は通常のコンピュータと同様の構造を有するとして、各種演算をおこなうCPUや各種情報の記憶を行うメモリ50を備えるとすればよい。
【0027】
PMセンサ4の構造の一例が図2に示されている。PMセンサ4のセンサ素子40(素子)は、板状の絶縁体44からなるの上に1対の検出電極42(電極)が形成された構造を有する。そして全体が、例えば金属製のカバー41で覆われている。カバー41にはいくつかの孔部が形成されていて、排気管中のPMはカバー41の内側に流入する。そしてPMは、自身が持つ粘着性によって素子42に付着、堆積していく。PMは導電性を有するので、素子40上に堆積したPMによって一対の電極42間が連結されると、電極間が導通状態となる。
【0028】
電極間には図示しない電源から電圧が印加されており、素子40上に堆積したPMによって電極42間が導通状態となると、電極間に電流が流れる。PMセンサ4は、例えばその電流値などの測定値(他には、回路上のある部分の電圧値、さらには電圧値、電流値から算出されるインピーダンス値(抵抗値や容量値)などでもよい)を、センサ出力としてECU5へ出力する。
【0029】
図3にはその様子の例が示されている。上述のとおり、素子表面のPM堆積量が徐々に増加しても、両電極間が電気的に接続されるまではPMセンサ4の出力値のゼロにとどまり、両電極間が電気的に接続された以降、PMセンサ4の出力値がゼロから上昇する。PMセンサに多くのPMが堆積(付着)したとみなされたら、ヒータ43によって素子40を加熱して、堆積したPMを燃焼除去してPMセンサ4を再生する。
【0030】
PMセンサ4のより詳細なシステム構成例が図13に示されている。同図のとおりPMセンサ4は、上述の一対の検出電極42、42(電極)、ヒータ43に加えて、温度調節部45、電圧調節部46、回路47a、47b、スイッチ48、制御部49を備える。
【0031】
温度調節部45はヒータ43への供給電力によって、素子40の温度を調節する。電圧調節部46は電極42、42へ印加する電圧を調節する。回路47a、47bは例えば図13のとおり配置されて、スイッチ48の制御によって回路47a、47bのうちの一方が素子40の検出電極42に電気的に接続される。回路47a、47bは、素子40に付着したPM量の情報を電気的特性として検出するために装備されている(詳細は後述)。制御部49はマイクロプロセッサ等、通常のコンピュータと同様の構成を備えて、PMセンサ4における全ての制御を司る。
【0032】
回路47a、47bについて説明する。PMセンサ4では、DPF3の故障検出と、PMセンサ4自体の故障検出という2つの検出を実行するが、この2つの検出のために2つの回路47a、47bを備える。PMセンサ4は、それら2つの検出を、ともに素子40に付着したPM量の情報が電極42、42間の電気的特性となるしくみを用いて実行する。
【0033】
PMセンサ4の故障判定の場合は、DPF故障判定の場合よりも、通常PM量が少ない状況が想定される。したがって後述するように、PMセンサ4の故障判定の閾値は、DPF故障判定の閾値よりも小さく設定する。またPMセンサ4自体の故障検出の場合には、DPF3の故障検出の場合よりも、PMセンサ4が高感度であることが望ましい。この目的のために、PMセンサ4では、例えば回路47aは抵抗成分(R)を検出するための回路とし、回路47bは容量成分(C)を検出するための回路とする。
【0034】
回路47aによる抵抗成分の検出では、付着したPMによって電極42、42間が繋がった状態となって流れる電流値から抵抗成分を検出する。一方、回路47bによる容量成分の検出では、電極42、42間がPMによって繋がっていなくても、離間したPM間は容量成分をもつので、その容量を介して流れる電流値から容量成分を検出する。
【0035】
したがって明らかに容量成分の検出の方が抵抗成分の検出よりも早い時点で検出結果がゼロから増加し始める。この意味で容量成分の検出の方が抵抗成分の検出よりも感度がよい。また発明者の知見によると、抵抗成分の検出の方が容量成分の検出よりも検出が安定している(誤差やぶれが小さい等)。よって回路47bは回路47aよりも高感度であり、回路47aは回路47bよりも出力の安定性が良好である。
【0036】
DPF3の故障検出の場合は、スイッチ48によって回路47aを接続して、付着したPM量(を示す抵抗値)を安定的に検出して、相対的に高い閾値で故障判定する。PMセンサ4の故障検出の場合は、スイッチ48によって回路47bを接続して、付着したPM量(を示す容量値)を高感度に検出して、相対的に低い閾値で故障判定する。
【0037】
なお図13の構成は一例であり、しかも概念図である。例えば回路47a、47bは図13では単純に並列的な配置としているが、実際の回路構成はより複雑であってもよい。また上述のように回路47aが抵抗成分検出、回路47bが容量成分検出と限定しなくともよく、より高感度の回路とより低感度の回路との間で切り替えられる構成であればよい。なお抵抗値や容量値の計測、算出は既知の方法を用いればよい。
【0038】
以上の構成のもとでシステム1は、PMセンサ4の出力から、PMセンサ4の故障の有無を判定する。なおPMセンサ4の故障とは、カバー41の孔部の目詰まりや、電気系統の故障などあらゆる故障を包含するとすればよい。実施例1における処理手順が図4に示されている。図4(および後述の全て)のフローチャートは予めプログラム化しておき、例えばメモリ50に記憶しておいてECU5が自動的に呼び出して実行すればよい。
【0039】
図4の処理ではまず手順S10でECU5は、DPF再生の開始を指令し、S20でDPF再生の終了を指令する。したがってS20以降はDPF再生と次回DPF再生間の期間(インターバル期間)となる。なお図4(他のフローチャートも同様)の処理においては、DPF再生のインターバル期間内でPMセンサの再生は行わない。
【0040】
次にS25でECU5はPMセンサ4内で回路47a、47bのいずれを用いるかを選択する。上述のとおり、例えば回路47aが抵抗値(R)検出のための回路であり、回路47bが容量値(C)検出のための回路とした場合には、低感度の回路47aがDPF3の故障検出に適し、高感度の回路47bがPMセンサ4の故障検出に適する。したがって、S25以降ではPMセンサ4の故障の有無を判定することから、S25では回路47bを選択して、スイッチ48により回路47bを接続すればよい。
【0041】
次にS30でECU5は、PMセンサ4の出力を検出(取得)する。そしてS40でECU5は、DPF3の再生が要求されているかを判別する。DPF3の再生は、ECU5が、DPF3におけるPM堆積量の推定値がDPF再生を開始すべき所定値を超えたと判断したら要求する。DPF3の再生が要求されている場合(S40:Yes)はS50に進み、再生が要求されていない場合(S40:No)はS30を繰り返す。これにより、S20で終了したDPF再生の次のDPF再生が要求されるまでは、S30を繰り返してPMセンサ出力値をモニタし続ける。取得されたPMセンサ出力値(の系列)は例えばメモリ50に記憶していけばよい。
【0042】
S50に進んだらECU5は、DPF再生インターバル期間中であるか否かを判別する。DPF再生インターバル期間中の場合(S50:Yes)はS60に進み、DPF再生インターバル期間ではない場合(S50:No)は図4の処理を終了する。
【0043】
S60に進んだらECU5は、S30で検出(取得)したPMセンサ4の出力のうち少なくとも1つの数値が閾値より小さいか否かを判別する。ここで閾値は、PMセンサ4の出力がその数値を超えていればPMセンサ4は正常だとみなせる数値である。PMセンサ4の出力(の系列)が閾値より小さい場合(S60:Yes)はS90に進み、閾値以上の場合(S60:No)はS100に進む。
【0044】
S90に進んだ場合はPMセンサ4の出力が一度も閾値を越えなかった場合である。したがってS90でECU5は、PMセンサ4は故障していると判定する。一方S100に進んだ場合はPMセンサ4の出力が閾値を一度は越えた場合である。したがってS100でECU5は、PMセンサ4は正常であると判定する。以上が図4の処理手順である。なお図4においては(あるいは図4を変更して)、DPF再生インターバル期間中に、例えば所定周期でS60からS100を実行するとしてもよい。この場合、DPF再生インターバル期間中に閾値を越える出力が一度でもあればPMセンサ4は正常と判定される。
【0045】
図4の処理を実行した場合の時間的推移の様子(タイムチャート)の例が図5に示されている。図1の構成において、DPF再生インターバル期間中に、エンジン2から排出されたPMは、通常例えDPF3が正常であっても微量はすり抜けていく。したがって図示のとおりDPF3をすり抜けたPM(あるいはすす(soot))積算量は時間とともに徐々に増加していく。エンジン2からのPM排出度合いの設定や、DPF3の基材の捕集性能などによって、DPF再生インターバル期間中のエンジン2を搭載した車両の走行距離は200km程度から800km程度とがある。
【0046】
DPF再生インターバル期間の開始後ある程度の期間は、素子40に付着したPM量が少なく電極間が導通されていないのでPMセンサ4の出力値はゼロにとどまる。その後、素子40に付着したPM量が増加すると、あるところから電極間が導通されてPMセンサ4の出力値がゼロから増加を開始する。そして図4の処理では、DPF再生インターバル期間内でPMセンサ4の出力値がPMセンサ故障判定閾値を(1度でも)越えたら、PMセンサ4は正常だと判定される。DPF再生インターバル期間中にPMセンサ4の出力値がPMセンサ故障判定閾値を(1度も)越えなかったら、PMセンサ4は、正常な出力値が出ず、故障していると判定される。
【0047】
なお上記S60では、DPF再生インターバル期間中のPMセンサ出力が閾値を越えたか否かで故障判定しているが、本発明はこれに限定されず、PMセンサ出力が正常な場合の所定の出力であるか否かで故障判定すればよい。その場合、正常な出力であるか否かの判定方法としては、例えばPMセンサ出力の立ち上がり時点が所定の時点よりも速ければ正常(遅ければ故障)、またPMセンサ出力の上昇速度(傾き)が所定の数値よりも大きければ正常(小さければ故障)などがある。
【0048】
以上のとおり実施例1では、DPF再生インターバル期間中に、PMセンサ出力が正常な出力でない場合に、PMセンサ4を故障だと判定する。その際、インターバル期間中はPMセンサ再生は行わず、また素子40に付着したPM量の検出のための回路は高感度の回路を用いた。これにより高精度にPMセンサ4の故障が検出できる。
【0049】
次に実施例2を説明する。実施例2では、通常のDPF再生インターバル期間中でPMセンサ出力が閾値を越えなければ、DPF再生開始を所定期間遅らせて、その所定期間、故障判定を継続する。実施例2での処理手順は図6に示されている。図6の処理手順では、図4の処理手順にS65からS85が追加されている。図4と同一符号の処理は同一の処理であるので、以下では重複する説明を省略する。
【0050】
図6の処理では、S60で肯定判断となった場合(S60:Yes)にS65に進む。S65でECU5は、S40でDPF再生要求が出ていることが確認されたにも係らず、DPF3の再生開始を保留する(遅らせる)。そして、続くS70でECU5は、PMセンサ出力の検出(取得)を継続する。
【0051】
ECU5は、S80でDPF再生要求からの経過時間(つまり上記S65でDPF再生開始の保留を開始してからの経過時間(DPF再生開始保留時間))が所定の閾値を越えているか否かを判別する。DPF再生開始保留時間が閾値を越えている場合(S80:Yes)はS85に進み、閾値を越えていない場合(S80:No)はS65でのPMセンサ出力の検出(取得)を繰り返す。S65を繰り返し実行することにより、DPF再生開始保留期間中もPMセンサ出力値がモニタされ続ける。
【0052】
S85に進んだらECU5は、S70で検出(取得)したDPF再生開始保留期間中のPMセンサ4の出力のうちの少なくとも1つが閾値より大きいか否かを判別する。S85での閾値はS60での閾値と同じとすればよい。DPF再生開始保留期間中のPMセンサ4の出力の全てが閾値より小さい場合(S85:Yes)はS90に進み、DPF再生開始保留期間中のPMセンサ4の出力のうち少なくとも1つが閾値以上の場合(S85:No)はS100に進む。
【0053】
S90に進んだ場合は、通常のDPF再生インターバル期間内においてPMセンサ4の出力値が一度も閾値まで届かず(S60:Yes)、かつDPF再生開始保留期間内においてもPMセンサ4の出力値が一度も閾値まで届かなかった(S85:Yes)の場合である。したがってS90でECU5は、PMセンサ4は故障していると判定する。
【0054】
一方S100に進んだ場合は、通常のDPF再生インターバル期間内においてPMセンサ4の出力値が一度は閾値を越えた(S60:No)か、あるいはDPF再生開始保留期間内においてPMセンサ4の出力値が一度は閾値を越えた(S85:No)場合である。したがってS100でECU5は、PMセンサ4は正常であると判定する。以上が図6の処理手順である。
【0055】
図6の処理を実行した場合のタイムチャートの例が図7に示されている。図5の場合と同様に、DPF再生インターバル期間中に、エンジン2から排出されたPMが、例えDPF3が正常であっても微量はすり抜け、図示のとおりDPF3をすり抜けたPM積算量は時間とともに徐々に増加していく。素子40に付着したPM量が増加すると、あるところから電極間が導通されてPMセンサ4の出力値がゼロから増加を開始する。そして図5と同様に図7の場合でも、DPF再生インターバル期間内でPMセンサ4の出力値がPMセンサ故障判定閾値を1度でも越えたら、PMセンサ4は正常だと判定される。
【0056】
一方、DPF再生インターバル期間中にPMセンサ4の出力値がPMセンサ故障判定閾値を1度も越えなかった場合、その時点ではまだPMセンサの故障判定は行わず、DPFの再生開始を所定期間保留する。そしてDPF再生開始保留期間中にPMセンサ4の出力値がPMセンサ故障判定閾値を越えたらPMセンサ4は正常と判定する。逆にDPF再生開始保留期間においても、期間中にPMセンサ4の出力値がPMセンサ故障判定閾値を1度も越えなかった場合には、保留期間の終了時点でPMセンサ4は故障していると判定する。これによりDPF再生開始を保留して、より確実にPMセンサの故障が判定できる。
【0057】
以上の通り実施例2では、通常のDPF再生インターバル期間内においてPMセンサ4の出力値が閾値まで届かない場合はただちにPMセンサ4が故障したと判定せずに、所定期間DPF3の再生を保留して、保留期間内でもPMセンサ4の出力値が閾値まで届かない場合にPMセンサ4が故障したと判定する。したがってPMセンサ4の故障判定がより確実になる。
【0058】
上述のとおり、システム1では、DPF3の故障とPMセンサ4の故障とを、ともにPMセンサ4の出力を見て判定する。両判定での閾値の設定例が図8に示されている。DPF故障判定閾値は、PMセンサ4の出力がその数値を超えたらDPF3が故障していると判定する数値である。PMセンサ故障判定閾値は、PMセンサ4の出力がその数値に届かなかったらPMセンサ4が故障していると判定する数値である(上述のS60、S85で用いられた閾値)。
【0059】
PMセンサ故障判定を行う状況は通常、DPF下流からすり抜けるPM量が少ない状況と想定される。またDPF故障判定のための閾値は、相対的に大きい数値としてもDPFの故障判定は精度よく行える。以上の理由から、図8に示すとおり、DPF故障判定閾値はPMセンサ故障判定閾値よりも大きい数値とする。これにより、故障したPMセンサ4の出力によってDPF3が故障判定されるケースの発生を避けることもできる。
【0060】
次に実施例3を説明する。実施例3では、確実にPMセンサ4の故障を判定するために、PMセンサ4の素子温度を上昇させて、PMセンサ4に付着したPMの電気抵抗を低下させる。実施例3での処理手順は図9に示されている。図9の処理手順では、図6の処理手順にS66の処理が追加されている。図6と同一符号の処理は同一の処理であるので、以下では重複する説明を省略する。
【0061】
図9の処理では、S65を処理したら、次にS66を処理する。S66でECU5は、温度調節部45によりヒータ43を加熱して、PMセンサ4の素子40の温度が上昇するように制御する。素子温度を昇温する理由は、素子40に付着したPMの電気抵抗が高く、それによりPMセンサへPMが堆積しても、その影響がPMセンサの出力として現れにくい場合があるからである。一般にPMの有する電気抵抗値は固有の温度特性を有し、図1等の構成で想定される温度(例えば室温から摂氏300度ぐらいの範囲)では、温度を上げるとPMの電気抵抗値は(グラフにすると下に凸で)低下する。したがって素子40に付着したPMの温度を上げることにより、PMの電気抵抗が下がって電流が流れやすくなって、PMセンサの出力が出やすくなる。
【0062】
PMセンサ4の素子40の昇温の例が図10に示されている。図10に示すとおり、PMセンサ素子温度は相対的に短い期間(DPF再生開始保留期間よりも短い期間)だけ上昇させてもよい。この昇温の効果によって、図示のとおりDPF再生開始保留期間内でPMセンサ出力が上昇して閾値を一度でも越えたら、PMセンサ4は正常だと判定する。昇温にも関わらずPMセンサ出力が上昇せず閾値を一度も越えない場合は、PMセンサ4は故障だと判定する。
【0063】
実施例3では、通常のDPF再生インターバル期間内においてPMセンサ4の出力値が閾値まで届かない場合はただちにPMセンサ4が故障したと判定せずに、所定期間DPF3の再生を保留して、保留期間中はPMセンサ4の素子温度を上昇させて、素子に付着したPMの電気抵抗を下げて、それでもPMセンサ4の出力値が閾値まで届かない場合にPMセンサ4が故障したと判定する。したがってPMセンサ4の故障判定から、PMの電気抵抗値が高いことの影響が除かれて、故障判定がより確実になる。
【0064】
次に実施例4を説明する。実施例4では、確実にPMセンサ4の故障を判定するために、PMセンサ4への印加電圧を増加させる。実施例4での処理手順は図11に示されている。図11の処理手順では、図6の処理手順にS67の処理が追加されている。図6と同一符号の処理は同一の処理であるので、以下では重複する説明を省略する。
【0065】
図11の処理では、S65を処理したら、次にS67を処理する。S67でECU5は、電圧調節部46を用いて、PMセンサ4への印加電圧を増加するように制御する。このようにPMセンサ4への印加電圧を増加する理由は、PMセンサ4に堆積したPMの電気抵抗値が高い場合にはPMセンサへPMが堆積しても、その影響がPMセンサの出力として現れにくい場合があるからである。PMセンサへの印加電圧を増加させることにより、PMセンサ4に堆積したPMの電気抵抗値が高くても、PMセンサの出力が出やすくなる。
【0066】
PMセンサ4への印加電圧の増加の例が図12に示されている。図12に示すとおり、PMセンサへの印加電圧は例えばステップ状に増加させればよい。この電圧増加の効果によって、図示のとおりDPF再生開始保留機関内でPMセンサ出力が上昇して閾値を一度でも越えたら、PMセンサ4は正常だと判定する。電圧増加にも関わらずPMセンサ出力が上昇せず、DPF再生開始保留機関内で閾値を一度も越えない場合は、PMセンサ4は故障だと判定する。
【0067】
実施例4では、通常のDPF再生インターバル期間内においてPMセンサ4の出力値が閾値まで届かない場合はただちにPMセンサ4が故障したと判定せずに、所定期間DPF3の再生開始を保留して、保留期間中はPMセンサ4への印加電圧を増加させて、それでもPMセンサ4の出力値が閾値まで届かない場合にPMセンサ4が故障したと判定する。したがってPMセンサ4の故障判定から、堆積したPMの電気抵抗値が高いことの影響が除かれて、故障判定がより確実になる。
【0068】
なお上記実施例は特許請求の範囲に記載された趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更できる。例えばエンジン2はディーゼルエンジンのみでなく、リーンバーンガソリンエンジンとしても同様の効果を奏する。またPMセンサ4をDPF3の下流に配置することに関係しない事柄(例えば回路選択など)の場合、PMセンサ4をDPF3の下流に配置する構成に限定されなくともよい。
【符号の説明】
【0069】
1 検出システム
2 ディーゼルエンジン(エンジン、内燃機関)
3 ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
4 PMセンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、内燃機関に対してすぐれた排気浄化性能が求められている。特にディーゼルエンジンにおいては、エンジンから排出される黒煙などのいわゆる排気微粒子(粒子状物質、PM:Particulate Matter)の除去が重要である。PMを除去するために排気管の途中にディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が装備されることが多い。
【0003】
排気中のPM量を検出する手段としてPMセンサがある。例えばDPF下流にPMセンサを配置した場合、PMセンサの検出値を用いてDPFが故障しているか否かを判定できる。今後さらに自動車の後処理故障検出が厳しくなることが予想されており、PMセンサを装備してDPFの故障検出を行う必要がある。そのためにはPMセンサ自体が正常であることが必要であり、PMセンサの故障検出(PMセンサの合理性判断)も重要となる。例えば下記特許文献1には、PMセンサの故障検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−275977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DPFが正常の場合、DPFをすり抜けるPM量は非常に少ないので、DPFの下流に搭載されたPMセンサの出力値は小さい。したがってPMセンサの故障検出には、小さい出力値を用いてPMセンサが故障しているのかどうかを判断するという課題がある。上記特許文献1の装置では、DPFの再生終了から所定期間の間はDPFをすり抜けるPM量が相対的に多いことを利用して、同期間内でPMセンサの故障を判定している。
【0006】
しかし一般的に、DPFの再生終了後におけるDPFをすり抜けるPM量が相対的に多い期間は非常に短く、その短い期間内でPMセンサの故障を精度よく検出することは難しい。よって、文献1のような方法によらず、高精度でPMセンサの故障を検出するしくみを開発することが求められる。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、DPFの下流に配置されたPMセンサの故障を高精度で検出する検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明に係る検出システムは、内燃機関の排気通路に装備されて、前記内燃機関から排出された粒子状物質を捕集するフィルタと、前記排気通路において前記フィルタよりも下流に装備されて、粒子状物質を検出する検出手段と、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
これにより本発明に係る検出システムでは、排気通路に配置されて粒子状物質を捕集するフィルタの再生インターバル期間中に、フィルタの下流に配置された検出手段の出力が所定の出力でない場合に検出手段が故障だと判定する。したがってフィルタ再生インターバル期間中に検出手段の出力が、正常であることを示す所定の出力であるか否かの情報を用いて、高精度に検出手段の故障が判定できる。
【0010】
また前記判定手段は、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記フィルタ再生処理の開始を所定期間遅らせて、その所定期間中にも前記検出手段からの出力が前記所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定するとしてもよい。
【0011】
この発明によれば、例えばフィルタの捕集率が高い場合などの理由でフィルタをすり抜ける粒子状物質の量が少ない場合には、通常のフィルタ再生インターバル期間中での判定のみでは、検出手段が正常でも故障と誤判定する可能性があるので、フィルタ再生開始を所定期間遅らせて、その期間にも所定の出力が得られなければ検出手段は故障と判定する。これにより検出手段の誤判定の可能性が低減できる。
【0012】
また前記第1判定手段は、前記検出手段の出力が第1閾値を越えない場合に前記所定の出力でないとし、前記検出手段の出力が前記第1閾値よりも大きい第2閾値を越えた場合に、前記フィルタが故障であると判定する第2判定手段を備えたとしてもよい。
【0013】
この発明によれば、検出手段の故障判定の手段に加えて、フィルタの故障判定の手段を備えて、両判定のために閾値を設ける構成において、フィルタ故障判定の第2閾値を検出手段故障判定の第1閾値よりも大きくした。したがって、フィルタをすり抜ける粒子状物質量が少ない状況で適切に検出手段の故障が判定できるとともに、相対的に高い閾値によりフィルタ故障判定も精度よく行える。
【0014】
また前記検出手段の出力により前記フィルタが故障であると判定する第2判定手段を備え、前記第1判定手段および第2判定手段は電気回路を含んで構成され、前記第1判定手段が有する第1回路は、前記第2判定手段が有する第2回路よりも高感度の回路であるとしてもよい。
【0015】
この発明によれば、検出手段とフィルタの故障判定のための電気回路を装備し、検出手段の故障検出の場合にはフィルタの故障検出の場合よりも高感度の電気回路を用いる。したがって、通常、検出手段の故障判定の場合にはフィルタの故障判定の場合よりも少ない粒子状物質の付着量で故障か否かを判定することになるが、より高感度の回路を用いることにより、少ない粒子状物質量でも高精度に検出手段の故障が判定できる。
【0016】
また前記第1判定手段は、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記検出手段の温度をより高くし、昇温した前記検出手段からの出力が前記所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定するとしてもよい。
【0017】
この発明によれば、通常のフィルタ再生インターバル期間中に所定の出力が出ない場合には、検出手段を昇温して、それでも所定の出力が出ない場合に検出手段が故障したと判定する。したがって検出手段に付着した粒子状物質の電気抵抗値が高く、付着量が検出手段に出力として現れない場合に、粒子状物質の有する温度特性を効果的に利用して、検出手段を昇温して粒子状物質の電気抵抗を低減し、検出手段の出力を出やすくする。よって粒子状物質の電気抵抗値が高いことが原因で検出手段が故障と誤判定することを抑制する。
【0018】
また前記第1判定手段は、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記検出手段に印加する電圧をより高くし、より高い電圧を印加された前記検出手段からの出力が前記所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定するとしてもよい。
【0019】
この発明によれば、通常のフィルタ再生インターバル期間中に所定の出力が出ない場合には、検出手段への印加電圧を高くして、それでも所定の出力が出ない場合に検出手段が故障したと判定する。したがって検出手段に付着した粒子状物質の電気抵抗値が高く、付着量が検出手段に出力として現れない場合に、検出手段への印加電圧を高くして、粒子状物質の電気抵抗が高くても検出手段の出力を出やすくする。よって粒子状物質の電気抵抗が高いことが原因で検出手段が故障と誤判定することを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明における検出システムの実施例における構成図。
【図2】PMセンサの構造の例を示す図。
【図3】PMセンサの出力の例を示す図。
【図4】実施例1における故障検出処理のフローチャート。
【図5】実施例1におけるタイムチャートの例を示す図。
【図6】実施例2における故障検出処理のフローチャート。
【図7】実施例2におけるタイムチャートの例を示す図。
【図8】DPFセンサ故障判定とDPF故障判定の閾値の例を示す図。
【図9】実施例3における検出処理のフローチャート。
【図10】実施例3におけるタイムチャートの例を示す図。
【図11】実施例4における検出処理のフローチャート。
【図12】実施例4におけるタイムチャートの例を示す図。
【図13】PMセンサのシステム構成例の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る検出システム1(以下、システム)の実施例における装置構成の概要図である。図1の構成は以下の全ての実施例で用いればよい。
【0022】
システム1は、自動車のディーゼルエンジン2(エンジン)の排気管(排気通路)中のPM量を検出するためのシステムである。エンジン2の排気管に、上流側からDPF3とPMセンサ4とが配置されている。
【0023】
DPF3は、例えば代表的な構造として、いわゆるハニカム構造において入口側と出口側を交互に目詰めした構造とすればよい。エンジン2の運転中に排出される排気にはPM(粒子状物質)が含まれ、このPMはDPF3の上記構造のDPF壁を排気が通過するときに、このDPF壁の内部あるいは表面に捕集されて車外に排出される排気が浄化される。DPF3は例えば酸化触媒が担持された酸化触媒付きDPFであるとすればよい。
【0024】
DPF3に堆積したPMの堆積量が十分大きくなった度ごとに、堆積したPMを燃焼することによって除去し、DPF3を再生する。PMの堆積量を推定する方法は例えば、DPF3の前後差圧とPM堆積量の関数関係(マップ)を予め求めておいてメモリ50に記憶しておき、差圧センサを配置して、その検出値と同マップとからPMの堆積量を推定すればよい。このマップは、代表的な特性としては、前後差圧とPM堆積量とをそれぞれ縦軸横軸とした関係がほぼ平行四辺形の形状となり、PMが堆積し、燃焼することによりその平行四辺形を1周する。
【0025】
PMセンサ4はDPF3より下流の排気中のPM量を検出する。PMセンサ4がDPF3の下流に装備されていることにより、PMセンサ4によってDPF3をすり抜けたPM量を検出できる。これによりDPF3の故障の有無が検出できる。
【0026】
電子制御装置5(ECU:Electronic Control Unit)は、以上のシステムを制御するために装備されている。ECU5は通常のコンピュータと同様の構造を有するとして、各種演算をおこなうCPUや各種情報の記憶を行うメモリ50を備えるとすればよい。
【0027】
PMセンサ4の構造の一例が図2に示されている。PMセンサ4のセンサ素子40(素子)は、板状の絶縁体44からなるの上に1対の検出電極42(電極)が形成された構造を有する。そして全体が、例えば金属製のカバー41で覆われている。カバー41にはいくつかの孔部が形成されていて、排気管中のPMはカバー41の内側に流入する。そしてPMは、自身が持つ粘着性によって素子42に付着、堆積していく。PMは導電性を有するので、素子40上に堆積したPMによって一対の電極42間が連結されると、電極間が導通状態となる。
【0028】
電極間には図示しない電源から電圧が印加されており、素子40上に堆積したPMによって電極42間が導通状態となると、電極間に電流が流れる。PMセンサ4は、例えばその電流値などの測定値(他には、回路上のある部分の電圧値、さらには電圧値、電流値から算出されるインピーダンス値(抵抗値や容量値)などでもよい)を、センサ出力としてECU5へ出力する。
【0029】
図3にはその様子の例が示されている。上述のとおり、素子表面のPM堆積量が徐々に増加しても、両電極間が電気的に接続されるまではPMセンサ4の出力値のゼロにとどまり、両電極間が電気的に接続された以降、PMセンサ4の出力値がゼロから上昇する。PMセンサに多くのPMが堆積(付着)したとみなされたら、ヒータ43によって素子40を加熱して、堆積したPMを燃焼除去してPMセンサ4を再生する。
【0030】
PMセンサ4のより詳細なシステム構成例が図13に示されている。同図のとおりPMセンサ4は、上述の一対の検出電極42、42(電極)、ヒータ43に加えて、温度調節部45、電圧調節部46、回路47a、47b、スイッチ48、制御部49を備える。
【0031】
温度調節部45はヒータ43への供給電力によって、素子40の温度を調節する。電圧調節部46は電極42、42へ印加する電圧を調節する。回路47a、47bは例えば図13のとおり配置されて、スイッチ48の制御によって回路47a、47bのうちの一方が素子40の検出電極42に電気的に接続される。回路47a、47bは、素子40に付着したPM量の情報を電気的特性として検出するために装備されている(詳細は後述)。制御部49はマイクロプロセッサ等、通常のコンピュータと同様の構成を備えて、PMセンサ4における全ての制御を司る。
【0032】
回路47a、47bについて説明する。PMセンサ4では、DPF3の故障検出と、PMセンサ4自体の故障検出という2つの検出を実行するが、この2つの検出のために2つの回路47a、47bを備える。PMセンサ4は、それら2つの検出を、ともに素子40に付着したPM量の情報が電極42、42間の電気的特性となるしくみを用いて実行する。
【0033】
PMセンサ4の故障判定の場合は、DPF故障判定の場合よりも、通常PM量が少ない状況が想定される。したがって後述するように、PMセンサ4の故障判定の閾値は、DPF故障判定の閾値よりも小さく設定する。またPMセンサ4自体の故障検出の場合には、DPF3の故障検出の場合よりも、PMセンサ4が高感度であることが望ましい。この目的のために、PMセンサ4では、例えば回路47aは抵抗成分(R)を検出するための回路とし、回路47bは容量成分(C)を検出するための回路とする。
【0034】
回路47aによる抵抗成分の検出では、付着したPMによって電極42、42間が繋がった状態となって流れる電流値から抵抗成分を検出する。一方、回路47bによる容量成分の検出では、電極42、42間がPMによって繋がっていなくても、離間したPM間は容量成分をもつので、その容量を介して流れる電流値から容量成分を検出する。
【0035】
したがって明らかに容量成分の検出の方が抵抗成分の検出よりも早い時点で検出結果がゼロから増加し始める。この意味で容量成分の検出の方が抵抗成分の検出よりも感度がよい。また発明者の知見によると、抵抗成分の検出の方が容量成分の検出よりも検出が安定している(誤差やぶれが小さい等)。よって回路47bは回路47aよりも高感度であり、回路47aは回路47bよりも出力の安定性が良好である。
【0036】
DPF3の故障検出の場合は、スイッチ48によって回路47aを接続して、付着したPM量(を示す抵抗値)を安定的に検出して、相対的に高い閾値で故障判定する。PMセンサ4の故障検出の場合は、スイッチ48によって回路47bを接続して、付着したPM量(を示す容量値)を高感度に検出して、相対的に低い閾値で故障判定する。
【0037】
なお図13の構成は一例であり、しかも概念図である。例えば回路47a、47bは図13では単純に並列的な配置としているが、実際の回路構成はより複雑であってもよい。また上述のように回路47aが抵抗成分検出、回路47bが容量成分検出と限定しなくともよく、より高感度の回路とより低感度の回路との間で切り替えられる構成であればよい。なお抵抗値や容量値の計測、算出は既知の方法を用いればよい。
【0038】
以上の構成のもとでシステム1は、PMセンサ4の出力から、PMセンサ4の故障の有無を判定する。なおPMセンサ4の故障とは、カバー41の孔部の目詰まりや、電気系統の故障などあらゆる故障を包含するとすればよい。実施例1における処理手順が図4に示されている。図4(および後述の全て)のフローチャートは予めプログラム化しておき、例えばメモリ50に記憶しておいてECU5が自動的に呼び出して実行すればよい。
【0039】
図4の処理ではまず手順S10でECU5は、DPF再生の開始を指令し、S20でDPF再生の終了を指令する。したがってS20以降はDPF再生と次回DPF再生間の期間(インターバル期間)となる。なお図4(他のフローチャートも同様)の処理においては、DPF再生のインターバル期間内でPMセンサの再生は行わない。
【0040】
次にS25でECU5はPMセンサ4内で回路47a、47bのいずれを用いるかを選択する。上述のとおり、例えば回路47aが抵抗値(R)検出のための回路であり、回路47bが容量値(C)検出のための回路とした場合には、低感度の回路47aがDPF3の故障検出に適し、高感度の回路47bがPMセンサ4の故障検出に適する。したがって、S25以降ではPMセンサ4の故障の有無を判定することから、S25では回路47bを選択して、スイッチ48により回路47bを接続すればよい。
【0041】
次にS30でECU5は、PMセンサ4の出力を検出(取得)する。そしてS40でECU5は、DPF3の再生が要求されているかを判別する。DPF3の再生は、ECU5が、DPF3におけるPM堆積量の推定値がDPF再生を開始すべき所定値を超えたと判断したら要求する。DPF3の再生が要求されている場合(S40:Yes)はS50に進み、再生が要求されていない場合(S40:No)はS30を繰り返す。これにより、S20で終了したDPF再生の次のDPF再生が要求されるまでは、S30を繰り返してPMセンサ出力値をモニタし続ける。取得されたPMセンサ出力値(の系列)は例えばメモリ50に記憶していけばよい。
【0042】
S50に進んだらECU5は、DPF再生インターバル期間中であるか否かを判別する。DPF再生インターバル期間中の場合(S50:Yes)はS60に進み、DPF再生インターバル期間ではない場合(S50:No)は図4の処理を終了する。
【0043】
S60に進んだらECU5は、S30で検出(取得)したPMセンサ4の出力のうち少なくとも1つの数値が閾値より小さいか否かを判別する。ここで閾値は、PMセンサ4の出力がその数値を超えていればPMセンサ4は正常だとみなせる数値である。PMセンサ4の出力(の系列)が閾値より小さい場合(S60:Yes)はS90に進み、閾値以上の場合(S60:No)はS100に進む。
【0044】
S90に進んだ場合はPMセンサ4の出力が一度も閾値を越えなかった場合である。したがってS90でECU5は、PMセンサ4は故障していると判定する。一方S100に進んだ場合はPMセンサ4の出力が閾値を一度は越えた場合である。したがってS100でECU5は、PMセンサ4は正常であると判定する。以上が図4の処理手順である。なお図4においては(あるいは図4を変更して)、DPF再生インターバル期間中に、例えば所定周期でS60からS100を実行するとしてもよい。この場合、DPF再生インターバル期間中に閾値を越える出力が一度でもあればPMセンサ4は正常と判定される。
【0045】
図4の処理を実行した場合の時間的推移の様子(タイムチャート)の例が図5に示されている。図1の構成において、DPF再生インターバル期間中に、エンジン2から排出されたPMは、通常例えDPF3が正常であっても微量はすり抜けていく。したがって図示のとおりDPF3をすり抜けたPM(あるいはすす(soot))積算量は時間とともに徐々に増加していく。エンジン2からのPM排出度合いの設定や、DPF3の基材の捕集性能などによって、DPF再生インターバル期間中のエンジン2を搭載した車両の走行距離は200km程度から800km程度とがある。
【0046】
DPF再生インターバル期間の開始後ある程度の期間は、素子40に付着したPM量が少なく電極間が導通されていないのでPMセンサ4の出力値はゼロにとどまる。その後、素子40に付着したPM量が増加すると、あるところから電極間が導通されてPMセンサ4の出力値がゼロから増加を開始する。そして図4の処理では、DPF再生インターバル期間内でPMセンサ4の出力値がPMセンサ故障判定閾値を(1度でも)越えたら、PMセンサ4は正常だと判定される。DPF再生インターバル期間中にPMセンサ4の出力値がPMセンサ故障判定閾値を(1度も)越えなかったら、PMセンサ4は、正常な出力値が出ず、故障していると判定される。
【0047】
なお上記S60では、DPF再生インターバル期間中のPMセンサ出力が閾値を越えたか否かで故障判定しているが、本発明はこれに限定されず、PMセンサ出力が正常な場合の所定の出力であるか否かで故障判定すればよい。その場合、正常な出力であるか否かの判定方法としては、例えばPMセンサ出力の立ち上がり時点が所定の時点よりも速ければ正常(遅ければ故障)、またPMセンサ出力の上昇速度(傾き)が所定の数値よりも大きければ正常(小さければ故障)などがある。
【0048】
以上のとおり実施例1では、DPF再生インターバル期間中に、PMセンサ出力が正常な出力でない場合に、PMセンサ4を故障だと判定する。その際、インターバル期間中はPMセンサ再生は行わず、また素子40に付着したPM量の検出のための回路は高感度の回路を用いた。これにより高精度にPMセンサ4の故障が検出できる。
【0049】
次に実施例2を説明する。実施例2では、通常のDPF再生インターバル期間中でPMセンサ出力が閾値を越えなければ、DPF再生開始を所定期間遅らせて、その所定期間、故障判定を継続する。実施例2での処理手順は図6に示されている。図6の処理手順では、図4の処理手順にS65からS85が追加されている。図4と同一符号の処理は同一の処理であるので、以下では重複する説明を省略する。
【0050】
図6の処理では、S60で肯定判断となった場合(S60:Yes)にS65に進む。S65でECU5は、S40でDPF再生要求が出ていることが確認されたにも係らず、DPF3の再生開始を保留する(遅らせる)。そして、続くS70でECU5は、PMセンサ出力の検出(取得)を継続する。
【0051】
ECU5は、S80でDPF再生要求からの経過時間(つまり上記S65でDPF再生開始の保留を開始してからの経過時間(DPF再生開始保留時間))が所定の閾値を越えているか否かを判別する。DPF再生開始保留時間が閾値を越えている場合(S80:Yes)はS85に進み、閾値を越えていない場合(S80:No)はS65でのPMセンサ出力の検出(取得)を繰り返す。S65を繰り返し実行することにより、DPF再生開始保留期間中もPMセンサ出力値がモニタされ続ける。
【0052】
S85に進んだらECU5は、S70で検出(取得)したDPF再生開始保留期間中のPMセンサ4の出力のうちの少なくとも1つが閾値より大きいか否かを判別する。S85での閾値はS60での閾値と同じとすればよい。DPF再生開始保留期間中のPMセンサ4の出力の全てが閾値より小さい場合(S85:Yes)はS90に進み、DPF再生開始保留期間中のPMセンサ4の出力のうち少なくとも1つが閾値以上の場合(S85:No)はS100に進む。
【0053】
S90に進んだ場合は、通常のDPF再生インターバル期間内においてPMセンサ4の出力値が一度も閾値まで届かず(S60:Yes)、かつDPF再生開始保留期間内においてもPMセンサ4の出力値が一度も閾値まで届かなかった(S85:Yes)の場合である。したがってS90でECU5は、PMセンサ4は故障していると判定する。
【0054】
一方S100に進んだ場合は、通常のDPF再生インターバル期間内においてPMセンサ4の出力値が一度は閾値を越えた(S60:No)か、あるいはDPF再生開始保留期間内においてPMセンサ4の出力値が一度は閾値を越えた(S85:No)場合である。したがってS100でECU5は、PMセンサ4は正常であると判定する。以上が図6の処理手順である。
【0055】
図6の処理を実行した場合のタイムチャートの例が図7に示されている。図5の場合と同様に、DPF再生インターバル期間中に、エンジン2から排出されたPMが、例えDPF3が正常であっても微量はすり抜け、図示のとおりDPF3をすり抜けたPM積算量は時間とともに徐々に増加していく。素子40に付着したPM量が増加すると、あるところから電極間が導通されてPMセンサ4の出力値がゼロから増加を開始する。そして図5と同様に図7の場合でも、DPF再生インターバル期間内でPMセンサ4の出力値がPMセンサ故障判定閾値を1度でも越えたら、PMセンサ4は正常だと判定される。
【0056】
一方、DPF再生インターバル期間中にPMセンサ4の出力値がPMセンサ故障判定閾値を1度も越えなかった場合、その時点ではまだPMセンサの故障判定は行わず、DPFの再生開始を所定期間保留する。そしてDPF再生開始保留期間中にPMセンサ4の出力値がPMセンサ故障判定閾値を越えたらPMセンサ4は正常と判定する。逆にDPF再生開始保留期間においても、期間中にPMセンサ4の出力値がPMセンサ故障判定閾値を1度も越えなかった場合には、保留期間の終了時点でPMセンサ4は故障していると判定する。これによりDPF再生開始を保留して、より確実にPMセンサの故障が判定できる。
【0057】
以上の通り実施例2では、通常のDPF再生インターバル期間内においてPMセンサ4の出力値が閾値まで届かない場合はただちにPMセンサ4が故障したと判定せずに、所定期間DPF3の再生を保留して、保留期間内でもPMセンサ4の出力値が閾値まで届かない場合にPMセンサ4が故障したと判定する。したがってPMセンサ4の故障判定がより確実になる。
【0058】
上述のとおり、システム1では、DPF3の故障とPMセンサ4の故障とを、ともにPMセンサ4の出力を見て判定する。両判定での閾値の設定例が図8に示されている。DPF故障判定閾値は、PMセンサ4の出力がその数値を超えたらDPF3が故障していると判定する数値である。PMセンサ故障判定閾値は、PMセンサ4の出力がその数値に届かなかったらPMセンサ4が故障していると判定する数値である(上述のS60、S85で用いられた閾値)。
【0059】
PMセンサ故障判定を行う状況は通常、DPF下流からすり抜けるPM量が少ない状況と想定される。またDPF故障判定のための閾値は、相対的に大きい数値としてもDPFの故障判定は精度よく行える。以上の理由から、図8に示すとおり、DPF故障判定閾値はPMセンサ故障判定閾値よりも大きい数値とする。これにより、故障したPMセンサ4の出力によってDPF3が故障判定されるケースの発生を避けることもできる。
【0060】
次に実施例3を説明する。実施例3では、確実にPMセンサ4の故障を判定するために、PMセンサ4の素子温度を上昇させて、PMセンサ4に付着したPMの電気抵抗を低下させる。実施例3での処理手順は図9に示されている。図9の処理手順では、図6の処理手順にS66の処理が追加されている。図6と同一符号の処理は同一の処理であるので、以下では重複する説明を省略する。
【0061】
図9の処理では、S65を処理したら、次にS66を処理する。S66でECU5は、温度調節部45によりヒータ43を加熱して、PMセンサ4の素子40の温度が上昇するように制御する。素子温度を昇温する理由は、素子40に付着したPMの電気抵抗が高く、それによりPMセンサへPMが堆積しても、その影響がPMセンサの出力として現れにくい場合があるからである。一般にPMの有する電気抵抗値は固有の温度特性を有し、図1等の構成で想定される温度(例えば室温から摂氏300度ぐらいの範囲)では、温度を上げるとPMの電気抵抗値は(グラフにすると下に凸で)低下する。したがって素子40に付着したPMの温度を上げることにより、PMの電気抵抗が下がって電流が流れやすくなって、PMセンサの出力が出やすくなる。
【0062】
PMセンサ4の素子40の昇温の例が図10に示されている。図10に示すとおり、PMセンサ素子温度は相対的に短い期間(DPF再生開始保留期間よりも短い期間)だけ上昇させてもよい。この昇温の効果によって、図示のとおりDPF再生開始保留期間内でPMセンサ出力が上昇して閾値を一度でも越えたら、PMセンサ4は正常だと判定する。昇温にも関わらずPMセンサ出力が上昇せず閾値を一度も越えない場合は、PMセンサ4は故障だと判定する。
【0063】
実施例3では、通常のDPF再生インターバル期間内においてPMセンサ4の出力値が閾値まで届かない場合はただちにPMセンサ4が故障したと判定せずに、所定期間DPF3の再生を保留して、保留期間中はPMセンサ4の素子温度を上昇させて、素子に付着したPMの電気抵抗を下げて、それでもPMセンサ4の出力値が閾値まで届かない場合にPMセンサ4が故障したと判定する。したがってPMセンサ4の故障判定から、PMの電気抵抗値が高いことの影響が除かれて、故障判定がより確実になる。
【0064】
次に実施例4を説明する。実施例4では、確実にPMセンサ4の故障を判定するために、PMセンサ4への印加電圧を増加させる。実施例4での処理手順は図11に示されている。図11の処理手順では、図6の処理手順にS67の処理が追加されている。図6と同一符号の処理は同一の処理であるので、以下では重複する説明を省略する。
【0065】
図11の処理では、S65を処理したら、次にS67を処理する。S67でECU5は、電圧調節部46を用いて、PMセンサ4への印加電圧を増加するように制御する。このようにPMセンサ4への印加電圧を増加する理由は、PMセンサ4に堆積したPMの電気抵抗値が高い場合にはPMセンサへPMが堆積しても、その影響がPMセンサの出力として現れにくい場合があるからである。PMセンサへの印加電圧を増加させることにより、PMセンサ4に堆積したPMの電気抵抗値が高くても、PMセンサの出力が出やすくなる。
【0066】
PMセンサ4への印加電圧の増加の例が図12に示されている。図12に示すとおり、PMセンサへの印加電圧は例えばステップ状に増加させればよい。この電圧増加の効果によって、図示のとおりDPF再生開始保留機関内でPMセンサ出力が上昇して閾値を一度でも越えたら、PMセンサ4は正常だと判定する。電圧増加にも関わらずPMセンサ出力が上昇せず、DPF再生開始保留機関内で閾値を一度も越えない場合は、PMセンサ4は故障だと判定する。
【0067】
実施例4では、通常のDPF再生インターバル期間内においてPMセンサ4の出力値が閾値まで届かない場合はただちにPMセンサ4が故障したと判定せずに、所定期間DPF3の再生開始を保留して、保留期間中はPMセンサ4への印加電圧を増加させて、それでもPMセンサ4の出力値が閾値まで届かない場合にPMセンサ4が故障したと判定する。したがってPMセンサ4の故障判定から、堆積したPMの電気抵抗値が高いことの影響が除かれて、故障判定がより確実になる。
【0068】
なお上記実施例は特許請求の範囲に記載された趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更できる。例えばエンジン2はディーゼルエンジンのみでなく、リーンバーンガソリンエンジンとしても同様の効果を奏する。またPMセンサ4をDPF3の下流に配置することに関係しない事柄(例えば回路選択など)の場合、PMセンサ4をDPF3の下流に配置する構成に限定されなくともよい。
【符号の説明】
【0069】
1 検出システム
2 ディーゼルエンジン(エンジン、内燃機関)
3 ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
4 PMセンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に装備されて、前記内燃機関から排出された粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記排気通路において前記フィルタよりも下流に装備されて、粒子状物質を検出する検出手段と、
前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段の出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定する第1判定手段と、
を備えたことを特徴とする検出システム。
【請求項2】
前記第1判定手段は、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記フィルタ再生処理の開始を所定期間遅らせて、その所定期間中にも前記検出手段からの出力が前記所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定する請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記第1判定手段は、前記検出手段の出力が第1閾値を越えない場合に前記所定の出力でないとし、
前記検出手段の出力が前記第1閾値よりも大きい第2閾値を越えた場合に、前記フィルタが故障であると判定する第2判定手段を備えた請求項1又は2に記載の検出システム。
【請求項4】
前記検出手段の出力により前記フィルタが故障であると判定する第2判定手段を備え、
前記第1判定手段および第2判定手段は電気回路を含んで構成され、
前記第1判定手段が有する第1回路は、前記第2判定手段が有する第2回路よりも高感度の電気回路である請求項1又は2に記載の検出システム。
【請求項5】
前記第1判定手段は、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記検出手段の温度をより高くし、昇温した前記検出手段からの出力が前記所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定する請求項1に記載の検出システム。
【請求項6】
前記第1判定手段は、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記検出手段に印加する電圧をより高くし、より高い電圧を印加された前記検出手段からの出力が前記所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定する請求項1に記載の検出システム。
【請求項1】
内燃機関の排気通路に装備されて、前記内燃機関から排出された粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記排気通路において前記フィルタよりも下流に装備されて、粒子状物質を検出する検出手段と、
前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段の出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定する第1判定手段と、
を備えたことを特徴とする検出システム。
【請求項2】
前記第1判定手段は、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記フィルタ再生処理の開始を所定期間遅らせて、その所定期間中にも前記検出手段からの出力が前記所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定する請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記第1判定手段は、前記検出手段の出力が第1閾値を越えない場合に前記所定の出力でないとし、
前記検出手段の出力が前記第1閾値よりも大きい第2閾値を越えた場合に、前記フィルタが故障であると判定する第2判定手段を備えた請求項1又は2に記載の検出システム。
【請求項4】
前記検出手段の出力により前記フィルタが故障であると判定する第2判定手段を備え、
前記第1判定手段および第2判定手段は電気回路を含んで構成され、
前記第1判定手段が有する第1回路は、前記第2判定手段が有する第2回路よりも高感度の電気回路である請求項1又は2に記載の検出システム。
【請求項5】
前記第1判定手段は、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記検出手段の温度をより高くし、昇温した前記検出手段からの出力が前記所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定する請求項1に記載の検出システム。
【請求項6】
前記第1判定手段は、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼するフィルタ再生処理の間のインターバル期間中に、前記検出手段からの出力が、前記検出手段が正常に機能していることを示す所定の出力でない場合に、前記検出手段に印加する電圧をより高くし、より高い電圧を印加された前記検出手段からの出力が前記所定の出力でない場合に、前記検出手段は故障していると判定する請求項1に記載の検出システム。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2013−68197(P2013−68197A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208863(P2011−208863)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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