説明

樹脂内装パネル

【課題】外観見栄えを悪化させることなく、かつ成形サイクルが短くスキン層が薄くて触感の良いパッドを備えた樹脂内装パネルを提供する。
【解決手段】側面部7の延出端に基材9が外側に向かって一体に延出する基材延出部分からなる断面略L字状のフランジ部19を基材9を露出させて形成し、フランジ部19に、側面部7延出方向に凹み、パッド13成形時に基材9とパット側成形型105との間のキャビティ114に第二樹脂R2を導入する凹状溝部21をパッド13成形時のパッド側成形型105後退量D2よりも深く形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドがキャビティ容積を拡大させる、いわゆるコアバック方式により成形された樹脂内装パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、略平坦状に延びる一般面部と、該一般面部の外周縁から裏側方向に一体に延出する側面部とを備え、上記一般面部が第一樹脂からなる基材と、該基材の表面に一体に成形された第二樹脂からなるパッドとで構成されるとともに、上記側面部が基材のみで構成された樹脂内装パネルが開示されている。したがって、この樹脂内装パネルでは、基材の一般面部に対応する箇所に配置されたゲートから上記基材とパッド側成形型との間のキャビティに上記第二樹脂を充填し、上記基材との接触面近傍及びパッド側成形型の成形面近傍の第二樹脂が型温により固化し始めた時点で上記パッド側成形型を基材から後退させることにより、キャビティ容積を拡大して上記第二樹脂を発泡膨張させることでパッドを成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1では、第二樹脂を注入するゲートが基材の一般面部に対応する箇所に配置されているので、成形された一般面部のパッド表面にゲート跡が残って樹脂内装パネルの外観見栄えが悪くなる。
【0005】
これを回避するために、側面部にもパッドを成形して第二樹脂を注入するゲートを側面部側に配置すると、一般面部側のパッド側成形型の成形面近傍で第二樹脂が固化し始めた段階でパッド側成形型を後退させた場合、ゲート周りの第二樹脂は固化の進行が一般面部側に比べて遅れていて高温になっていることから、側面部ではスキン層の生成が一般面部よりも遅れるため、パッド側成形型を後退させることによって生じる基材とパッド側成形型との隙間から生成が不十分なスキン層を突き破りゲート周りに第二樹脂の内部ガスが漏出してゲート周りのパッドの表面性状に影響が及び、側面部の外観見栄えが悪くなるおそれがある。さりとて、側面部においてスキン層がガス漏出に耐え得る程度に生成されるのを待ってからパッド側成形型を後退させると、成形サイクルが長くなってしまう上に一般面部のスキン層が必要以上に厚く形成されて触感が悪くなってしまう。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、外観見栄えを悪化させることなく、かつ成形サイクルが短くスキン層が薄くて触感の良いパッドを備えた樹脂内装パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、側面部の延出端に形成した基材延出部分からなるフランジ部に、側面部延出方向に凹む凹状溝部をパッド成形時のパッド側成形型後退量よりも深く形成したことを特徴とする。
【0008】
具体的には、本発明は、略平坦状に延びる一般面部と、該一般面部の外周縁から裏側方向に一体に延出する側面部とを備え、それら一般面部及び側面部が第一樹脂からなる基材と、該基材の表面に一体に成形された第二樹脂からなるパッドとで構成され、該パッドは、表裏面に形成された樹脂密度が高くて堅いソリッド層からなる薄肉のスキン層と、該スキン層に挟まれ内部に多数の空隙を有し、該スキン層よりも樹脂密度が低い発泡層とを備え、パッド成形時に上記基材とパッド側成形型との間のキャビティに上記第二樹脂を充填し、上記基材との接触面近傍及びパッド側成形型の成形面近傍の第二樹脂が型温により固化し始めた時点で上記パッド側成形型と基材とを離間させることにより、キャビティ容積を拡大して上記第二樹脂を発泡膨張させて成形される樹脂内装パネルを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記側面部の延出端には、上記基材が外側に向かって一体に延出する基材延出部分からなる断面略L字状のフランジ部が基材を露出させて形成され、該フランジ部には、上記側面部延出方向に凹む凹状溝部がパッド成形時に上記パッド側成形型との間に上記基材とパット側成形型との間のキャビティに第二樹脂を導入するための空間を形成するように形成され、該凹状溝部は、パッド成形時におけるパッド側成形型と基材との上記離間距離よりも深く形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の樹脂内装パネルにおいて、上記フランジ部の上記溝部対応箇所を除く基端領域には、上記側面部の基材に一体に連続しパッドの厚みに相当する幅の棚部が形成され、該棚部は、パッド成形時のキャビティ容積拡大時のパッド側成形型よりも離間方向に位置し、かつ上記溝部は上記フランジ部の基端まで連続して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、基材の一般面部に対応する箇所にゲートが配置されないので、成形された一般面部のパッド表面にゲート跡が残らず、樹脂内装パネルの外観見栄えが向上する。
【0012】
また、一般面部側のパッド側成形型の成形面近傍で第二樹脂が固化し始めた段階でパッド側成形型と基材とを離間させても、パッド側成形型が溝部の側壁に接して第二樹脂の内部ガスの溝部からの漏出を阻止するので、高温で第二樹脂の固化が遅れる溝部から圧力が逃げず、溝部周りの側面部の表面がパッド側成形型の成形面に沿う形状となる。したがって、外観見栄えを悪化させることなく、かつ短い成形サイクルでスキン層が薄くて触感の良いパッドを備えた樹脂内装パネルを成形できる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、パッド側成形型と基材とを離間させてキャビティ容積を拡大させても、フランジ部がパッド側成形型と接しているため、第二樹脂の内部ガスの溝部の外への漏出を阻止でき、高温で第二樹脂の固化が遅れる溝部から圧力が逃げない。したがって、溝部周りの側面部の表面がパッド側成形型の成形面に沿う形状となり、見栄えの悪化が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るインストルメントパネル1の斜視図である。
【図2】図1のA−A線における拡大断面図である。
【図3】図2のB部に対応する拡大斜視図である。
【図4】パッド成形前の図3対応図である。
【図5】本発明の実施形態に係る成形型のキャビティ内に第二樹脂を射出充填した状態を示す図3のC−C線に対応する成形工程図である。
【図6】図5における成形型のパッド側成形型を基材から後退させた状態を示す成形工程図である。
【図7】本発明の実施形態に係る成形型のキャビティ内に第二樹脂を射出充填した状態を示す図3のD−D線に対応する成形工程図である。
【図8】図7における成形型のパッド側成形型を基材から後退させた状態を示す成形工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
図1及び図2は、この発明の実施形態に係る樹脂内装パネルとしてのインストルメントパネル1を示す。このインストルメントパネル1は、車体前端部分において車幅方向に略平坦状に延びる前方面部3と、該前方面部3の後端全幅から車体後方に向かって略平坦状に一体に延出して略への字状に折れ曲がる一般面部5と、該一般面部5の後端全幅から裏側方向に一体に延出する側面部7とを備えている。上記前方面部3は、ポリプロピレン、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、ノリル樹脂等、硬質の第一樹脂R1からなる基材9で構成され、当該前方面部3にはフロントデフロスターエア吹出口11が形成されている。上記一般面部5及び側面部7は、上記基材9と、該基材9の表面に一体に成形されたサーモプラスチックスチレン、サーモプラスチックオレフィン等、熱可塑性で軟質の第二樹脂R2からなるパッド13とで構成されている。15はサイドベントエア吹出口であり、17はセンターパネル取付部である。
【0017】
上記一般面部5のパッド13は、図2に示すように、表裏面に形成された樹脂密度が高くて堅いソリッド層からなる薄肉のスキン層23と、該スキン層23に挟まれ内部に多数の空隙を有し、該スキン層23よりも樹脂密度が低い発泡層25とを備えている。上記側面部7のパッド13は、樹脂密度が高くて堅い上記スキン層23よりも厚肉のソリッド層24のみから構成されている。
【0018】
上記側面部7の延出端には、図3にも示すように、上記基材9が外側に向かって一体に延出する基材延出部分からなる断面略L字状のフランジ部19が基材9を露出させて形成されている。なお、パッド13表面を図3に網目を付して表している。該フランジ部19には、図3及び図4に示すように、上記側面部7の延出方向に凹む凹状溝部21が、図1において白抜きの矢印で示す箇所に形成されている。各溝部21は、フランジ部19の基端まで連続し、基端側の各溝部21の底面は側面部7の基材9表面と面一になっている。また、各溝部21には、上記パッド13が連続して形成されている。各溝部21の基端側に形成されたパッド13はソリッド層24のみからなり、該溝部21の延出端側に形成されたパッド13は、ソリッド層からなる薄肉のスキン層23と該スキン層23に挟まれた発泡層25とからなる。
【0019】
また、フランジ部19の溝部21対応箇所を除く基端領域には、側面部7の基材9に一体に連続する棚部27が、側面部7のパッド13の厚みに相当する幅W1で車幅方向に延びるように形成されている。上記側面部7のパッド13表面は、フランジ部19表面と面一になっている。
【0020】
また、上記フランジ部19の延出端縁には、板状延出片部29が互いに間隔を開けて複数延設されている。各延出片部29には、矩形状のクリップ孔31が形成されている。これらクリップ孔31にクリップを挿入係止させることにより、インストルメントパネル1をデコレーションパネル(図示せず)やメーターパネル(図示せず)に取り付けることができる。
【0021】
上述の如く構成されたインストルメントパネル1は、図5〜8に示す成形型101を用いて成形される。
【0022】
上記成形型101は、固定型である基材側成形型103と可動型であるパッド側成形型105とを備え、上記パッド側成形型105には型開き方向に貫通する挿着孔107が形成され、この挿着孔107には射出ノズル109が挿着されている。この射出ノズル109には型開き方向に延びる噴出孔111が形成され、この噴出孔111にはニードルバルブ112が進退可能に装着されている。
【0023】
上記基材側成形型103に基材9をセットして基材側成形型103とパッド側成形型105とを型閉めした状態で、各々の成形面間にキャビティ114が形成され、上記フランジ部19の延出端の各溝部21に対応する箇所にゲート115が形成される。各ゲート115は、上記フランジ部19延出端から延出方向に延びるランナー117に連続している。各ランナー117は、上記射出ノズル109の噴出孔111に連通している。
【0024】
そして、上記のように構成された成形型101を用いてインストルメントパネル1を成形する要領は以下の如くである。
【0025】
まず、図5及び図7に示すように、基材側成形型103に予め成形した基材9をセットし、基材側成形型103とパッド側成形型105とを型閉めする。この状態で、フランジ部19の各溝部21と上記パッド側成形型105との間に空間Sが形成されている。この空間Sは、上記キャビティ114に第二樹脂R2を導入するための空間であり、ゲート115を介してランナー117に連通している。また、パッド側成形型105の各溝部21に対応する箇所が溝部21に嵌った状態で溝部21の側壁に接している。さらに、フランジ部19がパッド側成形型105と接している。
【0026】
次いで、ニードルバルブ112を後退させて各射出ノズル109の噴出孔111からランナー117を経てゲート115からキャビティ114内に溶融状態の第二樹脂R2を射出充填する。上記第二樹脂R2は、例えば、化学反応によりガスを発生させる化学的発泡材や二酸化炭素ガス及び窒素ガス等の不活性ガス(物理的発泡材)等の発泡促進物質が混入されたものである。
【0027】
しかる後、図6及び図8に示すように、上記基材9との接触面近傍及びパッド側成形型105の成形面近傍の第二樹脂R2が型温により固化し始めた時点で、棚部27がパッド側成形型105の後退位置よりも後方(離間方向)に位置するように上記パッド側成形型105を基材9から上記溝部21の深さD1より短い後退量(離間距離)D2後退させることにより、キャビティ容積を拡大する。すると、キャビティ114の容積拡大により、それまで基材9とパッド側成形型105の間で圧縮(膨張が規制)されている第二樹脂R2が、パッド側成形型105に引っ張られるとともに、第二樹脂R2中の化学反応によって発生したガスや不活性ガス等の内部ガスによって発泡膨張する。その結果、側面部7のパッド13及び一般面部5のパッド13の表裏面がソリッド層で形成され、これらソリッド層の内部に発泡層25が形成される。このとき、パッド側成形型105の後退量D2は溝部21の深さD1よりも短いので、パッド側成形型105の溝部21対応箇所が溝部21の側壁に接して第二樹脂R2の溝部21からの上記内部ガスの漏出を阻止する。これにより、高温で第二樹脂R2の固化が遅れる溝部21から圧力が逃げず、溝部21周りの側面部7の表面がパッド側成形型105の成形面に沿う形状となる。したがって、成形サイクルを短くして一般面部5側のパッド側成形型105の成形面近傍で第二樹脂R2が固化し始めた段階でパッド側成形型105を基材9から後退させてスキン層23を薄く成形する場合でも、見栄えが悪化しない。さらに、このとき、棚部27がパッド側成形型105の後退位置よりも後方に位置しているので、フランジ部19がパッド側成形型105と接して第二樹脂R2の内部ガスの溝部21の外への漏出を阻止し、高温で第二樹脂R2の固化が遅れる溝部21から圧力が逃げない。したがって、溝部21周りの側面部7の表面がパッド側成形型105の成形面に沿う形状となり、見栄えの悪化が防止される。
【0028】
しかる後、パッド側成形型105を上昇させて成形型101を型開きし、成形されたインストルメントパネル1を基材側成形型103から脱型する。
【0029】
その後、ランナー117対応箇所をゲート115対応箇所から切断してインストルメントパネル1から切り離す。この状態で、一般面部5表面にゲート跡が形成されておらず、インストルメントパネル1の見栄えが向上している。
【0030】
なお、上記実施形態では、樹脂内装パネルがインストルメントパネル1である場合を示したが、本発明は、トリム類等、その他の樹脂内装パネルにも適用することができるものである。
【0031】
また、上記実施形態では、基材側成形型103を固定型とするとともにパッド側成形型105を可動型とし、図5〜図8に示す工程でパッド側成形型105を移動させて基材9から離間させていたが、可動型と固定型とを反対にして、基材側成形型103を移動させてパッド側成形型105から離間させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、例えば、パッドがキャビティ容積を拡大させる、いわゆるコアバック方式により成形された樹脂内装パネルとして有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 インストルメントパネル(樹脂内装パネル)
5 一般面部
7 側面部
9 基材
13 パッド
19 フランジ部
21 溝部
23 スキン層
25 発泡層
27 棚部
105 パッド側成形型
114 キャビティ
R1 第一樹脂
R2 第二樹脂
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平坦状に延びる一般面部と、該一般面部の外周縁から裏側方向に一体に延出する側面部とを備え、それら一般面部及び側面部が第一樹脂からなる基材と、該基材の表面に一体に成形された第二樹脂からなるパッドとで構成され、該パッドは、表裏面に形成された樹脂密度が高くて堅いソリッド層からなる薄肉のスキン層と、該スキン層に挟まれ内部に多数の空隙を有し、該スキン層よりも樹脂密度が低い発泡層とを備え、パッド成形時に上記基材とパッド側成形型との間のキャビティに上記第二樹脂を充填し、上記基材との接触面近傍及びパッド側成形型の成形面近傍の第二樹脂が型温により固化し始めた時点で上記パッド側成形型と基材とを離間させることにより、キャビティ容積を拡大して上記第二樹脂を発泡膨張させて成形される樹脂内装パネルであって、
上記側面部の延出端には、上記基材が外側に向かって一体に延出する基材延出部分からなる断面略L字状のフランジ部が基材を露出させて形成され、該フランジ部には、上記側面部延出方向に凹む凹状溝部がパッド成形時に上記パッド側成形型との間に上記キャビティに第二樹脂を導入するための空間を形成するように形成され、
該凹状溝部は、パッド成形時におけるパッド側成形型と基材との上記離間距離よりも深く形成されていることを特徴とする樹脂内装パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂内装パネルにおいて、
上記フランジ部の上記溝部対応箇所を除く基端領域には、上記側面部の基材に一体に連続しパッドの厚みに相当する幅の棚部が形成され、該棚部は、パッド成形時のキャビティ容積拡大時のパッド側成形型よりも離間方向に位置し、かつ上記溝部は上記フランジ部の基端まで連続して形成されていることを特徴とする樹脂内装パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−30387(P2012−30387A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169536(P2010−169536)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】