説明

段積み部品取出し装置

【課題】段積みされた部品を効率良く取出す装置を提供する。
【解決手段】平面上で位置決めできる本体と、本体に取り付けられたアクチュエータ62と、該アクチュエータ62により駆動されて上昇端位置α1と下降端位置の2ポイントの位置で上下動する上下本体63と、該上下本体63に自重で上下動できるように貫通状態で設置された自重上下軸41と、該自重上下軸41がその下降端位置にあることを検出するセンサPH1とを具備する段積み部品取出し装置において、前記自重上下軸41の上端部には、自重で下降することを停止させる自重軸ストッパ45が設けられ、前記自重上下軸41の下端部には、部品を把持するチャック21と、前記自重上下軸41を部品上面で停止させるためのストッパ51が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段積みされた部品等、特に、部品箱にマトリックス状かつ段積みされた部品を効率良く取出す装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品箱にマトリックス状かつ段積みされていて、その部品の数量が不明な部品を取出す場合には、特許文献1のようなロボットハンドを用いて、部品最大数のチャックポイントをプログラミングして、チャックヘッド先端が、各ポイントを順番に移動して、段積みされた最上部の部品を、その都度確認して取出していた。
部品箱に部品が満載して積層していない場合においても、部品のないポイントにも有無を確認しながら移動を繰り返すので、無駄な時間が発生していた。同様に、取出す部品が一部積層していない(歯抜け状態)場合でも、部品の有無にかかわらず順番に各ポイントへ移動することから、無駄時間が発生していた。
また、この様な段積み部品を取出すための上下動作においては、多点(段積み枚数に対応した位置)に位置決め停止できる高精度アクチュエータが必要であった。このため、装置が高コストとなってしまうという問題点が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−218582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑み、段積みされた部品等、特に部品箱にマトリックス状かつ段積みされた部品を効率良く取出す装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、平面上で位置決めできる本体(10)と、本体(10)に取り付けられたアクチュエータ(62)と、該アクチュエータ(62)により駆動されて上昇端位置(α1)と下降端位置(α2)の2ポイントの位置で上下動する上下本体(63)と、該上下本体(63)に自重で上下動できるように貫通状態で設置された自重上下軸(41)と、該自重上下軸(41)がその下降端位置(β2)にあることを検出するセンサ(PH1)とを具備する段積み部品取出し装置において、前記自重上下軸(41)の上端部には、自重で下降することを停止させる自重軸ストッパ(45)が設けられ、前記自重上下軸(41)の下端部には、部品を把持するチャック(21)と、前記自重上下軸(41)を部品上面で停止させるためのストッパ(51)が設けられていることを特徴とする段積み部品取出し装置である。
【0006】
これにより、いちいち、プログラミングされたロボットにて、段積みされた部品のチャックポイントを順番に移動して存在を確認してから取出す必要がなく、部品箱にマトリックス状かつ段積みされている部品の数量が不明であっても段積みされた部品を効率良く取出すことができる。また、上下本体の上下動作用のアクチュエータは、上昇端と下降端の2ポイントで済むので制御が容易になる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記上下本体(63)がその下降端位置(α2)にあるとき、前記自重上下軸(41)がその下降端位置(β2)にあることを、前記センサ(PH1)が検出した場合、段積みされた部品が空であると判別するようにしたことを特徴とする。
これにより、上下本体の上下動作用のアクチュエータは、上昇端位置と下降端位置の2ポイントで済むので、部品が空の場合の検出時間が大幅に低減できる。また上下動作用アクチュエータはプログラミングも不要で簡素化できる。
【0008】
なお、上記に付した符号は、後述する実施形態に記載の具体的実施形態との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一例として挙げた部品を示す図であり、(a)は部品の平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図2】部品をマトリックス状かつ段積みするための部品箱の一例を示す図であり、(a)は部品箱の平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図3】本発明の基礎となった比較技術を示す正面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】図5(a)は、図4の一部詳細であり、図5(b)は、図5(a)のA−A断面図である。
【図6】本発明の一実施形態を示す正面図である。
【図7】図6の側面図である。
【図8】図6の平面図である。
【図9】本発明の一実施形態において、部品無しの状態を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態において、部品有りの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施形態について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。本発明の各実施形態が、本発明の基礎となった比較技術に対しても同一構成の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0011】
図1は、一例として挙げた部品を示す図であり、(a)は部品の平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。図2は、部品をマトリックス状かつ段積みするための部品箱の一例を示す図であり、(a)は部品箱の平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。部品としては、リードフレームや電子部品のみならず、積層状に配置できるものであればこれらに限られるものではなく何であっても良い。部品箱は、一例としてリードフレームをマトリックス状かつ段積みする部品箱を例示したが、これに限定されるものではない。積層状に収納して上部から取出すための部品箱であれば、何であっても良く、マトリックス状に収納していない場合であっても良い。また、部品箱を用いず部品供給部に部品が積層された場合であっても良い。
【0012】
図3は、本発明の基礎となった比較技術を示す正面図である。図4は、図3の側面図である。図5(a)は、図3の一部詳細であり、図5(b)は、図5(a)のA−A断面図である。
図3から図5を参照して、本発明の基礎となった比較技術としての部品取出し装置を説明する。ロボット本体10は、ロボット本体X軸12とロボット本体Y軸13から構成されるX−Yの2軸方向に移動するロボットである。ロボット本体Y軸13には上下用サーボモータ15が設置されており、上下本体11をボールねじ式スライドテーブル14に取り付けて、上下用サーボモータ15により、上下本体11は上下方向のZ軸に移動するものである。結果的には直交3軸に移動するロボットとなっている。
【0013】
図5(a)に見られるように、上下本体11には、エア平行チャック23が取り付けられており、二股状のチャック爪21を開閉することで、部品1をチャックする。エア平行チャック23には、センサ取付けステー22が設けられている。図5(b)に見られるように、両側のチャック爪21の間に部品1が存在するか否かを検出する部品検出用光電式センサ20が、センサ取付けステー22に取付けられている。
【0014】
この場合の部品箱2に段積みされている部品1を取出す作業について、図5(a)を参照して説明する。チャック爪21は開の状態で下降してきて、ポイントP1に至ると、その位置に部品1が存在すれば部品検出用光電式センサ20の光軸24を遮断するので、その信号で上下本体11は下降を停止する。その後、両側のチャック爪21の間に部品1を把持し、把持後部品箱2から部品1を取出す。一方、ポイントP1において、部品1を部品検出用光電式センサ20が検出しなければ、チャック爪21は次のポイントに順次移動する。
このように上下本体11はプログラム(ティーチング等)された図5(a)のP1からPnのポイントへ順番に移動し、部品1を検出すればチャック爪21は閉となり、取出し作業を行う。縦1列に部品1が空の場合においても各ポイントに位置決めされないと部品の有無が検出できないので取り出し作業に時間がかかっていた。
【0015】
これに対して、本発明の一実施形態は次のようなものである。
図6は、本発明の本発明の一実施形態を示す正面図である。図7は、図6の側面図である。図8は、図6の平面図である。図9は、本発明の一実施形態において、部品無しの状態を示す図である。図10は、本発明の一実施形態において、部品有りの状態を示す図である。
【0016】
図6から図8を参照して、本発明の一実施形態である部品取出し装置を説明する。
ロボット本体10は前記比較技術と同じものであり、ロボット本体X軸12とロボット本体Y軸13に移動するものである。ロボット本体Y軸13には中間プレート61が取り付けられており、市販品のスイッチ付きツインロッド式エアシリンダ62が中間プレート61に固定されている。ロッドの上昇端位置を検出するための上昇端検出スイッチSW1と下降端位置を検出するための下降端検出スイッチSW2がエアシリンダ62に設けられている。
エアシリンダ62の2本のロッドの先端部には上下本体63が連結しており、上下本体63にねじ留めされた断面L字ブラケット63’には自重上下軸41と回り止め軸43がそれぞれボール軸受け42、44を介して上下方向に貫通している。自重上下軸41と回り止め軸43の先端部にはチャック支持部47が設置されている。
【0017】
図7において、エアシリンダ62のロッドの上昇端位置と下降端位置を、仮にエアシリンダ62のロッドに連結する上下本体63の下方端部を基準として図示すれば、上昇端位置はα1であり、下降端位置は図9、10のα2である。
【0018】
チャック支持部47には、エア平行チャック23が取り付けられており、二股状のチャック爪21を両側から開閉することで、部品1をチャックする。チャック爪21の間には、自重で降下した自重上下軸41を部品上面で停止させるためのストッパ51が、チャック支持部47から、チャック爪21の把持を邪魔しないように垂下している。
【0019】
自重上下軸41の上端部には、自重上下軸41が自重で下に抜けないように自重軸ストッパ45が設けられている。自重軸ストッパ45がボール軸受け42上面に当接したときを、自重上下軸41が下降端位置にあると呼ぶ。このとき、光電式センサPH1の光軸46が自重軸ストッパ45で遮られて、光電式センサPH1がONとなるように配置されている。したがって、自重上下軸41が下降端位置になければ、光電式センサPH1はOFFとなる。自重軸ストッパ45に光軸46が通光する貫通孔を設けても良い。また、光電式センサPH1の設置位置は本一実施形態の場合に限定されるものではなく、自重上下軸41の下降端位置を検出できればよく、さらに、光電式センサに限定されるものではなく、周知のセンサーが適用可能である。
図10において、自重上下軸41の上昇端位置と下降端位置を、自重軸ストッパ45の下面を基準として図示すれば、上昇端位置はβ1であり、下降端位置はβ2である(図9、10)。上昇端位置β1と下降端位置β2の距離Lは、部品箱の最大段積み高さである。下降端位置β2から自重軸ストッパ45の下面までの距離Lをリニアスケール等で検出して、把持の有無と連動させれば、部品数をカウントできる。
図9に示したように、ツインロッド式エアシリンダ62のロッドが下降端位置α2まで延出して、下降端検出スイッチSW2をONにしたときに、自重軸ストッパ45が下降端位置β2にあれば、光電式センサPH1はONとなる。それ以外の場合には、図10に示したように光電式センサPH1がOFFとなっている。なお、図7のように、自重上下軸41が自重で垂下して部品に当接していなければ光電式センサPH1はONとなっている。
【0020】
次に、図7、図9、図10を参照して、本発明の一実施形態である部品取出し装置の作動を説明する。
部品箱2には部品がマトリックス状かつ段積みされており、そのうちのどの1列から部品を取出すか制御部から指示されると、ロボット本体10のロボット本体X軸12とロボット本体Y軸13を制御して自重上下軸41の位置を移動させる。このとき図7に示す状態になっている。すなわち、光電式センサPH1はONであり、ツインロッド式エアシリンダ62のロッドは上昇端にあり、上昇端検出スイッチSW1はONとなっている。その一列に位置決めされると、ツインロッド式エアシリンダ62のロッドが下降端位置α2まで延出し始め、チャック爪21が開の状態で下降を開始する。
【0021】
次に、ツインロッド式エアシリンダ62のロッドが下降する途中で、部品箱2に部品があれば、自重上下軸41はストッパ51が部品上面に当接して停止する。さらに、その後もツインロッド式エアシリンダ62のロッドが下降を続け、下降端検出スイッチSW2をONにするとロッドの下降は停止する。このとき光電式センサPH1の状態を確認して、ONでなければ(通光状態)部品があると判定して、チャック爪21を閉じて部品を把持する。ツインロッド式エアシリンダ62のロッドを上昇させて取出し、上昇端検出スイッチSW1がONとなれば、ロボット本体10を移動させて、所定の位置に部品を搬送する。
【0022】
この場合、ツインロッド式エアシリンダ62のロッドが下降端α2にあるときで(下降端検出スイッチSW2をONにするとき)、かつ、自重軸ストッパ45がボール軸受け42の上面に当接したとき(自重上下軸41が下降端位置β2にあるとき)において、部品箱2に部品1が1個でもあれば取出せることができるように、下降端検出スイッチSW2の位置が調整されている。その他、自重上下軸41に対して自重軸ストッパ45の位置が調整できるようにしても良い。
【0023】
部品箱2に部品がない場合、図9に示すように、ツインロッド式エアシリンダ62のロッドが下降し、下降端検出スイッチSW2をONにしてロッドの下降は停止する。すなわち、部品が無いので、下降端位置β2においてもストッパ51が部品に当たらない。
したがって、光電式センサPH1がON(遮光状態)となるので、部品無しと判定することができる。その後、直ちにツインロッド式エアシリンダ62のロッドは上昇し、次の平面ポイントに移動するので、きわめて作業が効率的である。
【0024】
チャック支持部47を自重で上下動する自重上下軸41に取り付け、上下本体63はアクチュエータ(ツインロッド式エアシリンダ62等)により、上昇端位置と下降端位置の2ポイントで上下動する。自重上下軸41が下降端位置にあるときの確認センサであるPH1は、いわば、ワーク検出(ワークが空)を兼ねるセンサとなっている。つまり、下降端での位置と、下降端でないはずれた位置を検出できる構成にしておくだけで、部品が空の場合の検出が行え、作業時間が大幅に低減できる。さらに、上下動作用アクチュエータのプログラミングも不要であって、装置の制御を簡素化することできる。
【0025】
本発明の別の実施形態として、次のような変形形態が考えられる。
上下動作用アクチュエータは、本発明の一実施形態ではツインロッド式エアシリンダ62であったが、上下本体63を移動するアクチュエータはサーボ式であっても良く、この場合でも上下動作は2ポイントである。エアシリンダや油圧シリンダを用いることなく電動モータとねじ軸により上下動させても良い。
また、本発明の一実施形態では、部品箱2にマトリックス状かつ段積みされた部品を取出す場合としたが、これに限らず、部品供給部に段積みされた部品を取出して供給する供給部に適用しても良い。
ロボット本体10は2軸の直交型ロボットであったが、これに限らずスカラー型ロボットであってもよく、その他周知のロボットに適用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 部品
2 部品箱
10 ロボット本体
12 ロボット本体X軸
13 ロボット本体Y軸
21 チャック爪
23 エア平行チャック
41 自重上下軸
43 回り止め軸
42、43 ボール軸受け
45 自重軸ストッパ
47 チャック支持部
51 ストッパ
61 中間プレート
62 ツインロッド式エアシリンダ
63 上下本体
63’ 断面L字ブラケット
PH1 光電式センサ
SW1 上昇端検出スイッチ
SW2 下降端検出スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上で位置決めできる本体(10)と、本体(10)に取り付けられたアクチュエータ(62)と、該アクチュエータ(62)により駆動されて上昇端位置(α1)と下降端位置(α2)の2ポイントの位置で上下動する上下本体(63)と、該上下本体(63)に自重で上下動できるように貫通状態で設置された自重上下軸(41)と、該自重上下軸(41)がその下降端位置(β2)にあることを検出するセンサ(PH1)とを具備する段積み部品取出し装置において、
前記自重上下軸(41)の上端部には、自重で下降することを停止させる自重軸ストッパ(45)が設けられ、前記自重上下軸(41)の下端部には、部品を把持するチャック(21)と、前記自重上下軸(41)を部品上面で停止させるためのストッパ(51)が設けられていることを特徴とする段積み部品取出し装置。
【請求項2】
前記上下本体(63)がその下降端位置(α2)にあるとき、前記自重上下軸(41)がその下降端位置(β2)にあることを、前記センサ(PH1)が検出した場合、段積みされた部品が空であると判別するようにした請求項1に記載の段積み部品取出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−173799(P2010−173799A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18554(P2009−18554)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】