水中運動用レッグウェア
【課題】プール等の水中において高い防滑性を有する水中運動用レッグウェアを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェア1は、水中運動のためのレッグウェアであって、少なくとも中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分を覆う足底部20を備え、足底部20は、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及び、ゴムのうちの少なくとも何れか1つを主成分とし、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革からなる。これにより、プール等の水中での防滑性を高めることができる。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェア1は、水中運動のためのレッグウェアであって、少なくとも中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分を覆う足底部20を備え、足底部20は、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及び、ゴムのうちの少なくとも何れか1つを主成分とし、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革からなる。これにより、プール等の水中での防滑性を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中運動の際に着用するレッグウェアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、リハビリテーションやダイエット等を目的として、水中歩行やアクアビクス等の水中運動が注目されている。この種の水中運動では、運動性を高めるために、足の滑りを低減することが要望されている。
【0003】
この点に関し、特許文献1〜3には、水中運動の際に着用するためのレッグウェアが開示されている。これらのレッグウェアでは、中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分のみに足底部が形成されている。すなわち、踵部の足底側に相当する部分に足底部が形成されていない。これにより、防滑性を高めつつ、水抜き性を高めることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−119472号公報
【特許文献2】特開2000−166608号公報
【特許文献3】特開2000−217601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に開示のレッグウェアの足底部は、一般的な靴底を流用するものである。本願発明者らの研究によれば、濡れた地面での防滑性を目的とする一般的な靴底では、プール等の水中における防滑性は低いという知見を得ている。
【0006】
そこで、本発明は、プール等の水中において高い防滑性を有する水中運動用レッグウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、足底部に、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革を用いると、プール等の水中での防滑性を高めることができることを見出した。
【0008】
そこで、本発明の水中運動用レッグウェアは、少なくとも中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分を覆う足底部を備え、足底部は、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及び、ゴムのうちの少なくとも何れか1つを主成分とし、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革からなる。
【0009】
この水中運動用レッグウェアによれば、少なくとも中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分を覆う足底部が、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革からなるので、プール等の水中での防滑性を高めることができる。例えば、母趾球周辺による床面のグリップから足趾先端による蹴り出し完了までの防滑性を高めることができる。その結果、水中での歩行速度を高めることができ、水による抵抗力を高めることができ、水中での運動性を高めることができる。
【0010】
上記した足底部は、第5趾側の足側部まで覆うことが好ましい。ここで、健常者の歩行を想定し、床面に対する足底部の体重や力の移動順序について説明する。まず、踵のやや外側寄りが接地し、続いて外踏まず部後方から徐々に前方へ移行し、第5趾(小指)の付け根に達したのち、足底を横切って第1趾(親指)の付け根までローリングさせ、そのまま第1趾(親指)の反りなりにピッチングさせ、力を次第に第1趾爪先部へ移動し、最後に各趾で地面を強く蹴って前進するといわれている。よって、歩行や運動における足底の床面接地時には内反側に力が働くため、特に第5趾の足底部と側面に力が加わることとなる。この構造によれば、足底部が第5趾側の足側部まで覆うので、プール等の水中での防滑性を効率よく得ることができる。また、足甲側の生地が床面にすれることを抑制することができ、耐久性を高めることができる。
【0011】
また、上記した水中運動用レッグウェアは、足甲部を覆う足甲部を更に備え、足甲部は多孔構造をなしていることが好ましい。この構造によれば、レッグウェア内に水が滞ることなく、足の動きに応じて瞬時に水を排出することができる。これにより、着用者の快適性を高めることができる。
【0012】
また、上記した足底部は、中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分のみを覆うことが好ましい。この構造によれば、歩行や運動における体重前方移動の後半から足趾先端による蹴り出しに至る足底接地部分のみを効率的にカバーすることができ、必要最低限の被覆量で最大の防滑性を得ることができる。また、水掃け性を高めることができ、着用者の快適性を高めることができる。
【0013】
また、上記した水中運動用レッグウェアは、踵部を周回して足底部及び足甲部を固定する踵帯部を更に備え、踵帯部は長さ調節機構を有していることが好ましい。この構造によれば、フィット感を調整することができる。また、足の大きさに依存することなく使用することができる。
【0014】
また、上記した足底部及び前記足甲部における爪先部は、少なくとも二股に分割する仕切り構造を有していることが好ましい。この構造によれば、爪先部を二股に分割する仕切り構造によって、水中運動時にレッグウェアが左右に回転してしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プール等の水中において高い防滑性を有する水中運動用レッグウェアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェアを前内側から示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェアを外側面から示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェアを足底側から示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例1に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図5】本発明の実施例2に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図6】本発明の実施例3に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図7】本発明の比較例1に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図8】本発明の比較例2に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図9】本発明の比較例3に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図10】本発明の比較例4に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図11】本発明の比較例5に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図12】本発明の比較例6に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の水中運動用レッグウェアの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、水中運動用レッグウェアは左右略対称であるので、以下では左のみによって説明する。また、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェアを前内側から示す斜視図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェアを外側面から示す図であり、図3は、本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェアを足底側から示す斜視図である。なお、図1〜3では、着用状態の水中運動用レッグウェアを示している。図1〜3に示す水中運動用レッグウェア1は、足甲部10と、足底部20と、踵帯部30と、調節部40とを備えている。
【0019】
足甲部10は、着用者の足甲部を被覆する。足甲部10には、伸縮性を有する生地、例えば、ダブルラッセル編み生地等が用いられる。特に、足甲部10は足幅方向に伸縮性を有することが好ましい。また、足甲部10は、多孔構造(メッシュ形状)となっている。
【0020】
足底部20は、着用者の足裏側において、中足骨骨頭部及び趾骨(指節骨)部の足底側に相当する部分を被覆する。足底部20には、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及び、ゴムのうちの少なくとも何れか1つを主成分とし、天然皮革の皺(所謂、しぼ)を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革(人工皮革、人造皮革)が用いられる。
【0021】
ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及び、ゴムを用いることにより、着用者の体重により足底部20が適度に変形し、水中における床面との摩擦を瞬時に高めることができる。その結果、水中における防滑性を効果的に発揮することができる。中でも、ポリ塩化ビニルは、塩素等のプール消毒薬に対する耐薬品性に優れており、なおかつ機械的耐久性にも優れているため好適である。
【0022】
また、足底部20は、着用者の第5趾側の足側部も覆う。ここで、歩行や運動における足底の床面接地時には内反側に力が働くため、第5趾側の足外側は、底面よりもやや甲側の部分が床面に接することとなる。よって、足底部20は、第5趾側の足外側の足側部において、底面よりもやや甲側に向けて広域に配置する。
【0023】
足甲部10と足底部20とは、それぞれ爪先縁部11,21、第5趾(小指)側の外側縁部12,22、及び、第1趾(親指)側の内側縁部13,23において互いに縫着されている。また、足甲部10の足首側縁部、及び、足底部20の踵側縁部には、それぞれ、伸縮性を有するテープ14,24が縫着されている。
【0024】
また、足甲部10と足底部20とによって形成される爪先部には、第1趾(親指)と第2趾(人指し指)との間を二股に分割する仕切り50が設けられている。例えば、第1趾と第2趾との間において、足甲部10が足底部20に縫着される。これにより、第1趾とその他の趾とを別々に収納できるようになっている。足甲部10及び足底部20には、踵帯部30が設けられている。
【0025】
踵帯部30は、着用者の踵を周回することにより、足甲部10及び足底部20を着用者の足に固定するものである。踵帯部30には、例えば、伸縮性を有する帯状のテープが用いられる。踵帯部30における第5趾側の外側端部は、足甲部10と足底部20との接合部において、テープ14,24に縫着されている。一方、踵帯部30における第1趾側の内側端部は、足甲部10と足底部20との接合部におけるテープ14,24に、調節部40を介して止着されている。
【0026】
調節部40は、Zカン41と、Zカン41を勘合するための複数の孔部42とから構成されている。Zカン41は、踵帯部30の内側端部に固定されている。一方、複数の孔部42は、足底部20におけるテープ24において、踵帯部30の延長上に直列に形成されている。この調節部40によれば、Zカン41を勘合する孔部42を選択することにより、踵帯部30の止着位置を調節することができ、踵帯部30の長さを調節することができる。
【0027】
この本実施形態の水中運動用レッグウェア1によれば、中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分を覆う足底部20が、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革からなるので、プール等の水中での防滑性を高めることができる。以下では、この作用効果について考察する。
【0028】
図4は、本実施形態(及び、後述する実施例1)の水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。図4(a)では拡大率30倍、図4(b)では拡大率50倍、図4(c)では拡大率100倍である。
【0029】
図4に示すように、合成皮革の表面は、細部にわたりランダムな方向に皮膚状の溝Aを有している。床面接地の際、この溝Aを伝って水がはけ、溝Aに囲まれた凸状領域Bと床面との間の水の層(膜)がなくなり、凸状領域Bが床面に限りなく密着するものと考えられる。また、着用者の体重により、凸状領域Bが適度に変形することで、凸状領域Bが床面に限りなく密着するものと考えられる。これらにより、凸状領域Bにおける摩擦抵抗を瞬時に高めることができるものと考えられる。
【0030】
また、表面の平坦性が比較的粗いプール底面には、比較的に平坦性が高い凸状領域Bであって、水の浮力によって荷重が制限された着用者の体重により適度に変形する凸状領域Bが適していると考えられる。
【0031】
このようにして、例えば、母趾球周辺による床面のグリップから足趾先端による蹴り出し完了までの防滑性を高めることができる。その結果、水中での歩行速度を高めることができ、水による抵抗力を高めることができ、水中での運動性を高めることができる。
【0032】
更に、歩行や運動における体重前方移動の後半から足趾先端による蹴り出しに至る足底接地部分のみを効率的にカバーすることができ、必要最低限の被覆量で最大の防滑性を得ることができる。また、水掃け性を高めることができ、着用者の快適性を高めることができるとともに、水中運動時の抵抗を軽減することができる。
【0033】
また、本実施形態の水中運動用レッグウェア1によれば、足底部20が、第5趾側の足側部において、底面よりもやや甲側に向けて広域に配置されているので、足底の床面接地時に内反側に力が働いて第5趾側の足側部が床面に接しても、プール等の水中での防滑性を効率よく得ることができる。また、足甲部10や、足甲部10と足底部20との縫着部が床面にすれることを抑制することができ、耐久性を高めることができる。
【0034】
また、本実施形態の水中運動用レッグウェア1によれば、足甲部10が多孔構造をなし、例えば足幅方向に伸縮性を有するので、レッグウェア内に水が滞ることなく、足の動きに応じて瞬時に水を排出することができる。これにより、着用者の快適性を高めることができるとともに、水中運動時の抵抗を軽減することができる。
【0035】
また、本実施形態の水中運動用レッグウェア1によれば、調節部40によって踵帯部30の長さを調節することができるので、フィット感を調整することができる。また、足の大きさに依存することなく使用することができる。また、調節部40が第1趾側の内側に設けられているので、周囲の人に対する安全性を損なうことがない。
【0036】
また、本実施形態の水中運動用レッグウェア1によれば、爪先部が、第1趾とその他の趾とを二股に分割する仕切り50を有しているので、水中運動時にレッグウェアが左右に回転してしまうことを抑制することができる。
【0037】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、爪先部における第1趾(親指)と第2趾(人指し指)との間を二股に分割する構造を例示したが、第1趾(親指)、第2趾(人指し指)、第3趾(中指)、第4趾(薬指)、及び、第5趾(小指)の何れかの指の間を少なくとも二股以上に分割してもよい。
【0038】
また、本実施形態では、調節部としてZカン及び複数の孔部とからなるフック構造を例示したが、調節部はこれに限定されるものではない。例えば、調整部としては、マジックテープ等も適用可能である。
【0039】
また、本実施形態では、足底部が中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分のみを被覆する形態を例示したが、足底部が踵部の足底側に相当する部分まで被覆する形態であっても本発明の特徴が適用可能である。
【実施例1】
【0040】
図1〜3に示す本発明の実施形態のレッグウェア1を実施例として製作し、防滑性の評価を行った。この評価では、実施例と比較例との対比評価を行った。
【0041】
ここで、実施例、及び、本実施例に対して対比を行った比較例を以下に示す。
(実施例1)
【0042】
実施例1のレッグウェアでは、足底部として、ポリ塩化ビニルを主成分とし、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する(所謂、しぼ加工した)合成皮革を使用した。図4に、実施例1のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図4(a)では拡大率30倍、図4(b)では拡大率50倍、図4(c)では拡大率100倍である。図4に示すように、実施例1のレッグウェアにおける足底部の表面は、皮膚状の溝Aと、溝Aに囲まれた凸状領域Bであって立体的な凸状領域Bと床面とを有している。また、実施例1のレッグウェアにおける足底部の表面は、ツヤがあり、しっとり感がある。なお、実施例1のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約0.51mmであった。
(実施例2)
【0043】
実施例2のレッグウェアでは、実施例1と同様に、足底部として、ポリ塩化ビニルを主成分とし、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する(所謂、しぼ加工した)合成皮革を使用した。図5に、実施例2のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図5(a)では拡大率30倍、図5(b)では拡大率50倍、図5(c)では拡大率100倍である。図5に示すように、実施例2のレッグウェアにおける足底部は、表面における皮膚状の溝Aがやや浅い点、表面のツヤがなく乾燥した感じである点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、実施例2のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約0.48mmであった。
(実施例3)
【0044】
実施例3のレッグウェアでは、実施例1と同様に、足底部として、ポリ塩化ビニルを主成分とし、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する(所謂、しぼ加工した)合成皮革を使用した。図6に、実施例3のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図6(a)では拡大率30倍、図6(b)では拡大率50倍、図6(c)では拡大率100倍である。図6に示すように、実施例3のレッグウェアにおける足底部は、表面における凸状領域Bがやや平坦である点、表面のツヤがなく乾燥した感じである点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、実施例3のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約0.51mmであった。
(比較例1)
【0045】
比較例1のレッグウェアでは、足底部として、ポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂を使用した。図7に、比較例1のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図7(a)では拡大率30倍、図7(b)では拡大率50倍、図7(c)では拡大率100倍である。図7に示すように、比較例1のレッグウェアにおける足底部は、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有さない(所謂、しぼ加工しない)点、表面のツヤがなく乾燥した感じである点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、比較例1のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約0.48mmであった。
(比較例2)
【0046】
比較例2のレッグウェアでは、足底部として、天然ゴムを使用する点において実施例1とことなる。図8に、比較例2のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図8(a)では拡大率30倍、図8(b)では拡大率50倍、図8(c)では拡大率100倍である。図8に示すように、比較例2のレッグウェアにおける足底部は、表面に規則的で立体感のある凸部を有する点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、比較例2のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約1.83mmであった。
(比較例3)
【0047】
比較例3のレッグウェアでも、足底部として、天然ゴムを使用する点において実施例1とことなる。図9に、比較例3のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図9(a)では拡大率30倍、図9(b)では拡大率50倍、図9(c)では拡大率100倍である。図9に示すように、比較例3のレッグウェアにおける足底部は、表面に規則的で立体感のある織り模様を有する点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、比較例3のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約2.69mmであった。
(比較例4)
【0048】
比較例4のレッグウェアでは、足底部として、改質ABS系弾性樹脂を使用する点において実施例1とことなる。図10に、比較例4のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図10(a)では拡大率30倍、図10(b)では拡大率50倍、図10(c)では拡大率100倍である。図10に示すように、比較例4のレッグウェアにおける足底部は、表面に様々な大きさの気泡が不規則に点在している点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、比較例4のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約0.75mmであった。
(比較例5)
【0049】
比較例5のレッグウェアでは、足底部として、発砲塩化ビニルを使用する点において実施例1とことなる。図11に、比較例5のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図11(a)では拡大率30倍、図11(b)では拡大率50倍、図11(c)では拡大率100倍である。図11に示すように、比較例5のレッグウェアにおける足底部は、表面に、荒い編み形状であり、不規則な大きさである凹凸を有する点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、比較例5のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約1.12mmであった。
(比較例6)
【0050】
比較例6のレッグウェアでは、足底部として、合成ゴムからなる合成樹脂を使用する点において実施例1と異なる。図12に、比較例6のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図12(a)では拡大率30倍、図12(b)では拡大率50倍、図12(c)では拡大率100倍である。図12に示すように、比較例6のレッグウェアにおける足底部は、規則的な溝を有し、立体感がある表面を有する点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、比較例6のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約3.45mmであった。
(比較例7)
【0051】
比較例7のレッグウェアは、特許文献1に開示のレッグウェアに相当する他社商品である。すなわち、比較例7のレッグウェアの足底部は、ゴムを使用する点、及び、一般的な靴底を流用して表面に凹凸を形成する点において実施例1と異なる。
【0052】
本評価では、本発明の実施例1〜3及び比較例1〜6をそれぞれ着用し、プールでの水中歩行における防滑性の評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。表1では、防滑性が非常に高いと感じた場合に二重丸印で、高いと感じた場合に丸印で、比較的高いと感じた場合に三角印で、低いと感じた場合にばつ印で示している。
【表1】
【0053】
この評価結果によれば、実施例1〜3のように、足底部として合成皮革を用いることにより、プール等の水中での防滑性を高めることができた。
【0054】
また、本評価では、本発明の実施例1及び比較例7をそれぞれ着用し、プールにおいて約23mの水中歩行を行ったときの歩行時間の測定を行った。なお、比較のために、裸足での水中歩行時間の測定も行った。本評価の被験者は2人であり、水中歩行時間の測定回数は2回である。これらの評価結果を表2に示す。また、測定した歩行時間の平均値に基づく下式より酸素摂取量を換算し、換算した酸素摂取量に基づいて消費カロリーを換算した。これらの結果を表3に示す。
消費カロリー(kcal/min.)=酸素摂取量(L/min.)×5
酸素摂取量(L/min.)=0.3540x2−0.722x+0.88
ここで、xは、測定した歩行時間の平均値から換算した歩速(km/h)である。
(小野くみ子、小野寺昇ら、「水中トレッドミル歩行およびプール歩行における心拍数、直腸温、酸素摂取量の変化」、川崎医療福祉学会誌、Vol.14、No.2、2005、p.323−330)
【表2】
【表3】
【0055】
これらの評価結果によれば、実施例1を着用したときの歩行時間が、裸足での歩行時間に比べて、被験者1で約3.70秒、被験者2で約4.67秒も短縮した。これより、水中運動において、実施例1は効果的に防滑性を発揮するとともに、効率的にレッグウェア内の水を排出し運動性を維持することができたものと考えられる。また、実施例1を着用したときの消費カロリーが、裸足の場合の消費カロリーに対して、被験者1及び被験者2ともに約1.2倍以上であった。これより、実施例1はダイエットや健康維持への貢献も期待できる。
【符号の説明】
【0056】
1…水中運動用レッグウェア、10…足甲部、11,21…爪先縁部、12,22…外側縁部、13,23…内側縁部、14,24…テープ、20…足底部、24…テープ、30…踵帯部、40…調節部、41…Zカン、42…孔部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中運動の際に着用するレッグウェアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、リハビリテーションやダイエット等を目的として、水中歩行やアクアビクス等の水中運動が注目されている。この種の水中運動では、運動性を高めるために、足の滑りを低減することが要望されている。
【0003】
この点に関し、特許文献1〜3には、水中運動の際に着用するためのレッグウェアが開示されている。これらのレッグウェアでは、中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分のみに足底部が形成されている。すなわち、踵部の足底側に相当する部分に足底部が形成されていない。これにより、防滑性を高めつつ、水抜き性を高めることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−119472号公報
【特許文献2】特開2000−166608号公報
【特許文献3】特開2000−217601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に開示のレッグウェアの足底部は、一般的な靴底を流用するものである。本願発明者らの研究によれば、濡れた地面での防滑性を目的とする一般的な靴底では、プール等の水中における防滑性は低いという知見を得ている。
【0006】
そこで、本発明は、プール等の水中において高い防滑性を有する水中運動用レッグウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、足底部に、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革を用いると、プール等の水中での防滑性を高めることができることを見出した。
【0008】
そこで、本発明の水中運動用レッグウェアは、少なくとも中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分を覆う足底部を備え、足底部は、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及び、ゴムのうちの少なくとも何れか1つを主成分とし、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革からなる。
【0009】
この水中運動用レッグウェアによれば、少なくとも中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分を覆う足底部が、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革からなるので、プール等の水中での防滑性を高めることができる。例えば、母趾球周辺による床面のグリップから足趾先端による蹴り出し完了までの防滑性を高めることができる。その結果、水中での歩行速度を高めることができ、水による抵抗力を高めることができ、水中での運動性を高めることができる。
【0010】
上記した足底部は、第5趾側の足側部まで覆うことが好ましい。ここで、健常者の歩行を想定し、床面に対する足底部の体重や力の移動順序について説明する。まず、踵のやや外側寄りが接地し、続いて外踏まず部後方から徐々に前方へ移行し、第5趾(小指)の付け根に達したのち、足底を横切って第1趾(親指)の付け根までローリングさせ、そのまま第1趾(親指)の反りなりにピッチングさせ、力を次第に第1趾爪先部へ移動し、最後に各趾で地面を強く蹴って前進するといわれている。よって、歩行や運動における足底の床面接地時には内反側に力が働くため、特に第5趾の足底部と側面に力が加わることとなる。この構造によれば、足底部が第5趾側の足側部まで覆うので、プール等の水中での防滑性を効率よく得ることができる。また、足甲側の生地が床面にすれることを抑制することができ、耐久性を高めることができる。
【0011】
また、上記した水中運動用レッグウェアは、足甲部を覆う足甲部を更に備え、足甲部は多孔構造をなしていることが好ましい。この構造によれば、レッグウェア内に水が滞ることなく、足の動きに応じて瞬時に水を排出することができる。これにより、着用者の快適性を高めることができる。
【0012】
また、上記した足底部は、中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分のみを覆うことが好ましい。この構造によれば、歩行や運動における体重前方移動の後半から足趾先端による蹴り出しに至る足底接地部分のみを効率的にカバーすることができ、必要最低限の被覆量で最大の防滑性を得ることができる。また、水掃け性を高めることができ、着用者の快適性を高めることができる。
【0013】
また、上記した水中運動用レッグウェアは、踵部を周回して足底部及び足甲部を固定する踵帯部を更に備え、踵帯部は長さ調節機構を有していることが好ましい。この構造によれば、フィット感を調整することができる。また、足の大きさに依存することなく使用することができる。
【0014】
また、上記した足底部及び前記足甲部における爪先部は、少なくとも二股に分割する仕切り構造を有していることが好ましい。この構造によれば、爪先部を二股に分割する仕切り構造によって、水中運動時にレッグウェアが左右に回転してしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プール等の水中において高い防滑性を有する水中運動用レッグウェアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェアを前内側から示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェアを外側面から示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェアを足底側から示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例1に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図5】本発明の実施例2に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図6】本発明の実施例3に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図7】本発明の比較例1に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図8】本発明の比較例2に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図9】本発明の比較例3に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図10】本発明の比較例4に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図11】本発明の比較例5に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【図12】本発明の比較例6に係る水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の水中運動用レッグウェアの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、水中運動用レッグウェアは左右略対称であるので、以下では左のみによって説明する。また、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェアを前内側から示す斜視図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェアを外側面から示す図であり、図3は、本発明の一実施形態に係る水中運動用レッグウェアを足底側から示す斜視図である。なお、図1〜3では、着用状態の水中運動用レッグウェアを示している。図1〜3に示す水中運動用レッグウェア1は、足甲部10と、足底部20と、踵帯部30と、調節部40とを備えている。
【0019】
足甲部10は、着用者の足甲部を被覆する。足甲部10には、伸縮性を有する生地、例えば、ダブルラッセル編み生地等が用いられる。特に、足甲部10は足幅方向に伸縮性を有することが好ましい。また、足甲部10は、多孔構造(メッシュ形状)となっている。
【0020】
足底部20は、着用者の足裏側において、中足骨骨頭部及び趾骨(指節骨)部の足底側に相当する部分を被覆する。足底部20には、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及び、ゴムのうちの少なくとも何れか1つを主成分とし、天然皮革の皺(所謂、しぼ)を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革(人工皮革、人造皮革)が用いられる。
【0021】
ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及び、ゴムを用いることにより、着用者の体重により足底部20が適度に変形し、水中における床面との摩擦を瞬時に高めることができる。その結果、水中における防滑性を効果的に発揮することができる。中でも、ポリ塩化ビニルは、塩素等のプール消毒薬に対する耐薬品性に優れており、なおかつ機械的耐久性にも優れているため好適である。
【0022】
また、足底部20は、着用者の第5趾側の足側部も覆う。ここで、歩行や運動における足底の床面接地時には内反側に力が働くため、第5趾側の足外側は、底面よりもやや甲側の部分が床面に接することとなる。よって、足底部20は、第5趾側の足外側の足側部において、底面よりもやや甲側に向けて広域に配置する。
【0023】
足甲部10と足底部20とは、それぞれ爪先縁部11,21、第5趾(小指)側の外側縁部12,22、及び、第1趾(親指)側の内側縁部13,23において互いに縫着されている。また、足甲部10の足首側縁部、及び、足底部20の踵側縁部には、それぞれ、伸縮性を有するテープ14,24が縫着されている。
【0024】
また、足甲部10と足底部20とによって形成される爪先部には、第1趾(親指)と第2趾(人指し指)との間を二股に分割する仕切り50が設けられている。例えば、第1趾と第2趾との間において、足甲部10が足底部20に縫着される。これにより、第1趾とその他の趾とを別々に収納できるようになっている。足甲部10及び足底部20には、踵帯部30が設けられている。
【0025】
踵帯部30は、着用者の踵を周回することにより、足甲部10及び足底部20を着用者の足に固定するものである。踵帯部30には、例えば、伸縮性を有する帯状のテープが用いられる。踵帯部30における第5趾側の外側端部は、足甲部10と足底部20との接合部において、テープ14,24に縫着されている。一方、踵帯部30における第1趾側の内側端部は、足甲部10と足底部20との接合部におけるテープ14,24に、調節部40を介して止着されている。
【0026】
調節部40は、Zカン41と、Zカン41を勘合するための複数の孔部42とから構成されている。Zカン41は、踵帯部30の内側端部に固定されている。一方、複数の孔部42は、足底部20におけるテープ24において、踵帯部30の延長上に直列に形成されている。この調節部40によれば、Zカン41を勘合する孔部42を選択することにより、踵帯部30の止着位置を調節することができ、踵帯部30の長さを調節することができる。
【0027】
この本実施形態の水中運動用レッグウェア1によれば、中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分を覆う足底部20が、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革からなるので、プール等の水中での防滑性を高めることができる。以下では、この作用効果について考察する。
【0028】
図4は、本実施形態(及び、後述する実施例1)の水中運動用レッグウェアの足底部の表面を拡大して示す拡大図である。図4(a)では拡大率30倍、図4(b)では拡大率50倍、図4(c)では拡大率100倍である。
【0029】
図4に示すように、合成皮革の表面は、細部にわたりランダムな方向に皮膚状の溝Aを有している。床面接地の際、この溝Aを伝って水がはけ、溝Aに囲まれた凸状領域Bと床面との間の水の層(膜)がなくなり、凸状領域Bが床面に限りなく密着するものと考えられる。また、着用者の体重により、凸状領域Bが適度に変形することで、凸状領域Bが床面に限りなく密着するものと考えられる。これらにより、凸状領域Bにおける摩擦抵抗を瞬時に高めることができるものと考えられる。
【0030】
また、表面の平坦性が比較的粗いプール底面には、比較的に平坦性が高い凸状領域Bであって、水の浮力によって荷重が制限された着用者の体重により適度に変形する凸状領域Bが適していると考えられる。
【0031】
このようにして、例えば、母趾球周辺による床面のグリップから足趾先端による蹴り出し完了までの防滑性を高めることができる。その結果、水中での歩行速度を高めることができ、水による抵抗力を高めることができ、水中での運動性を高めることができる。
【0032】
更に、歩行や運動における体重前方移動の後半から足趾先端による蹴り出しに至る足底接地部分のみを効率的にカバーすることができ、必要最低限の被覆量で最大の防滑性を得ることができる。また、水掃け性を高めることができ、着用者の快適性を高めることができるとともに、水中運動時の抵抗を軽減することができる。
【0033】
また、本実施形態の水中運動用レッグウェア1によれば、足底部20が、第5趾側の足側部において、底面よりもやや甲側に向けて広域に配置されているので、足底の床面接地時に内反側に力が働いて第5趾側の足側部が床面に接しても、プール等の水中での防滑性を効率よく得ることができる。また、足甲部10や、足甲部10と足底部20との縫着部が床面にすれることを抑制することができ、耐久性を高めることができる。
【0034】
また、本実施形態の水中運動用レッグウェア1によれば、足甲部10が多孔構造をなし、例えば足幅方向に伸縮性を有するので、レッグウェア内に水が滞ることなく、足の動きに応じて瞬時に水を排出することができる。これにより、着用者の快適性を高めることができるとともに、水中運動時の抵抗を軽減することができる。
【0035】
また、本実施形態の水中運動用レッグウェア1によれば、調節部40によって踵帯部30の長さを調節することができるので、フィット感を調整することができる。また、足の大きさに依存することなく使用することができる。また、調節部40が第1趾側の内側に設けられているので、周囲の人に対する安全性を損なうことがない。
【0036】
また、本実施形態の水中運動用レッグウェア1によれば、爪先部が、第1趾とその他の趾とを二股に分割する仕切り50を有しているので、水中運動時にレッグウェアが左右に回転してしまうことを抑制することができる。
【0037】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、爪先部における第1趾(親指)と第2趾(人指し指)との間を二股に分割する構造を例示したが、第1趾(親指)、第2趾(人指し指)、第3趾(中指)、第4趾(薬指)、及び、第5趾(小指)の何れかの指の間を少なくとも二股以上に分割してもよい。
【0038】
また、本実施形態では、調節部としてZカン及び複数の孔部とからなるフック構造を例示したが、調節部はこれに限定されるものではない。例えば、調整部としては、マジックテープ等も適用可能である。
【0039】
また、本実施形態では、足底部が中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分のみを被覆する形態を例示したが、足底部が踵部の足底側に相当する部分まで被覆する形態であっても本発明の特徴が適用可能である。
【実施例1】
【0040】
図1〜3に示す本発明の実施形態のレッグウェア1を実施例として製作し、防滑性の評価を行った。この評価では、実施例と比較例との対比評価を行った。
【0041】
ここで、実施例、及び、本実施例に対して対比を行った比較例を以下に示す。
(実施例1)
【0042】
実施例1のレッグウェアでは、足底部として、ポリ塩化ビニルを主成分とし、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する(所謂、しぼ加工した)合成皮革を使用した。図4に、実施例1のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図4(a)では拡大率30倍、図4(b)では拡大率50倍、図4(c)では拡大率100倍である。図4に示すように、実施例1のレッグウェアにおける足底部の表面は、皮膚状の溝Aと、溝Aに囲まれた凸状領域Bであって立体的な凸状領域Bと床面とを有している。また、実施例1のレッグウェアにおける足底部の表面は、ツヤがあり、しっとり感がある。なお、実施例1のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約0.51mmであった。
(実施例2)
【0043】
実施例2のレッグウェアでは、実施例1と同様に、足底部として、ポリ塩化ビニルを主成分とし、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する(所謂、しぼ加工した)合成皮革を使用した。図5に、実施例2のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図5(a)では拡大率30倍、図5(b)では拡大率50倍、図5(c)では拡大率100倍である。図5に示すように、実施例2のレッグウェアにおける足底部は、表面における皮膚状の溝Aがやや浅い点、表面のツヤがなく乾燥した感じである点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、実施例2のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約0.48mmであった。
(実施例3)
【0044】
実施例3のレッグウェアでは、実施例1と同様に、足底部として、ポリ塩化ビニルを主成分とし、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する(所謂、しぼ加工した)合成皮革を使用した。図6に、実施例3のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図6(a)では拡大率30倍、図6(b)では拡大率50倍、図6(c)では拡大率100倍である。図6に示すように、実施例3のレッグウェアにおける足底部は、表面における凸状領域Bがやや平坦である点、表面のツヤがなく乾燥した感じである点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、実施例3のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約0.51mmであった。
(比較例1)
【0045】
比較例1のレッグウェアでは、足底部として、ポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂を使用した。図7に、比較例1のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図7(a)では拡大率30倍、図7(b)では拡大率50倍、図7(c)では拡大率100倍である。図7に示すように、比較例1のレッグウェアにおける足底部は、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有さない(所謂、しぼ加工しない)点、表面のツヤがなく乾燥した感じである点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、比較例1のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約0.48mmであった。
(比較例2)
【0046】
比較例2のレッグウェアでは、足底部として、天然ゴムを使用する点において実施例1とことなる。図8に、比較例2のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図8(a)では拡大率30倍、図8(b)では拡大率50倍、図8(c)では拡大率100倍である。図8に示すように、比較例2のレッグウェアにおける足底部は、表面に規則的で立体感のある凸部を有する点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、比較例2のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約1.83mmであった。
(比較例3)
【0047】
比較例3のレッグウェアでも、足底部として、天然ゴムを使用する点において実施例1とことなる。図9に、比較例3のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図9(a)では拡大率30倍、図9(b)では拡大率50倍、図9(c)では拡大率100倍である。図9に示すように、比較例3のレッグウェアにおける足底部は、表面に規則的で立体感のある織り模様を有する点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、比較例3のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約2.69mmであった。
(比較例4)
【0048】
比較例4のレッグウェアでは、足底部として、改質ABS系弾性樹脂を使用する点において実施例1とことなる。図10に、比較例4のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図10(a)では拡大率30倍、図10(b)では拡大率50倍、図10(c)では拡大率100倍である。図10に示すように、比較例4のレッグウェアにおける足底部は、表面に様々な大きさの気泡が不規則に点在している点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、比較例4のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約0.75mmであった。
(比較例5)
【0049】
比較例5のレッグウェアでは、足底部として、発砲塩化ビニルを使用する点において実施例1とことなる。図11に、比較例5のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図11(a)では拡大率30倍、図11(b)では拡大率50倍、図11(c)では拡大率100倍である。図11に示すように、比較例5のレッグウェアにおける足底部は、表面に、荒い編み形状であり、不規則な大きさである凹凸を有する点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、比較例5のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約1.12mmであった。
(比較例6)
【0050】
比較例6のレッグウェアでは、足底部として、合成ゴムからなる合成樹脂を使用する点において実施例1と異なる。図12に、比較例6のレッグウェアにおける足底部の拡大図を示す。図12(a)では拡大率30倍、図12(b)では拡大率50倍、図12(c)では拡大率100倍である。図12に示すように、比較例6のレッグウェアにおける足底部は、規則的な溝を有し、立体感がある表面を有する点において実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同様である。なお、比較例6のレッグウェアにおける足底部の厚さは、約3.45mmであった。
(比較例7)
【0051】
比較例7のレッグウェアは、特許文献1に開示のレッグウェアに相当する他社商品である。すなわち、比較例7のレッグウェアの足底部は、ゴムを使用する点、及び、一般的な靴底を流用して表面に凹凸を形成する点において実施例1と異なる。
【0052】
本評価では、本発明の実施例1〜3及び比較例1〜6をそれぞれ着用し、プールでの水中歩行における防滑性の評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。表1では、防滑性が非常に高いと感じた場合に二重丸印で、高いと感じた場合に丸印で、比較的高いと感じた場合に三角印で、低いと感じた場合にばつ印で示している。
【表1】
【0053】
この評価結果によれば、実施例1〜3のように、足底部として合成皮革を用いることにより、プール等の水中での防滑性を高めることができた。
【0054】
また、本評価では、本発明の実施例1及び比較例7をそれぞれ着用し、プールにおいて約23mの水中歩行を行ったときの歩行時間の測定を行った。なお、比較のために、裸足での水中歩行時間の測定も行った。本評価の被験者は2人であり、水中歩行時間の測定回数は2回である。これらの評価結果を表2に示す。また、測定した歩行時間の平均値に基づく下式より酸素摂取量を換算し、換算した酸素摂取量に基づいて消費カロリーを換算した。これらの結果を表3に示す。
消費カロリー(kcal/min.)=酸素摂取量(L/min.)×5
酸素摂取量(L/min.)=0.3540x2−0.722x+0.88
ここで、xは、測定した歩行時間の平均値から換算した歩速(km/h)である。
(小野くみ子、小野寺昇ら、「水中トレッドミル歩行およびプール歩行における心拍数、直腸温、酸素摂取量の変化」、川崎医療福祉学会誌、Vol.14、No.2、2005、p.323−330)
【表2】
【表3】
【0055】
これらの評価結果によれば、実施例1を着用したときの歩行時間が、裸足での歩行時間に比べて、被験者1で約3.70秒、被験者2で約4.67秒も短縮した。これより、水中運動において、実施例1は効果的に防滑性を発揮するとともに、効率的にレッグウェア内の水を排出し運動性を維持することができたものと考えられる。また、実施例1を着用したときの消費カロリーが、裸足の場合の消費カロリーに対して、被験者1及び被験者2ともに約1.2倍以上であった。これより、実施例1はダイエットや健康維持への貢献も期待できる。
【符号の説明】
【0056】
1…水中運動用レッグウェア、10…足甲部、11,21…爪先縁部、12,22…外側縁部、13,23…内側縁部、14,24…テープ、20…足底部、24…テープ、30…踵帯部、40…調節部、41…Zカン、42…孔部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中運動のためのレッグウェアであって、
少なくとも中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分を覆う足底部を備え、
前記足底部は、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及び、ゴムのうちの少なくとも何れか1つを主成分とし、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革からなる、
水中運動用レッグウェア。
【請求項2】
前記足底部は、第5趾側の足側部まで覆う、請求項1に記載の水中運動用レッグウェア。
【請求項3】
足甲部を覆う足甲部を更に備え、
前記足甲部は、多孔構造をなしている、請求項1又は2に記載の水中運動用レッグウェア。
【請求項4】
前記足底部は、中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分のみを覆う、請求項1〜3の何れか1項に記載の水中運動用レッグウェア。
【請求項5】
踵部を周回して前記足底部及び前記足甲部を固定する踵帯部を更に備え、
前記踵帯部は、長さ調節機構を有している、請求項4に記載の水中運動用レッグウェア。
【請求項6】
前記足底部及び前記足甲部における爪先部は、少なくとも二股に分割する仕切り構造を有している、請求項1〜5の何れか1項に記載の水中運動用レッグウェア。
【請求項1】
水中運動のためのレッグウェアであって、
少なくとも中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分を覆う足底部を備え、
前記足底部は、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及び、ゴムのうちの少なくとも何れか1つを主成分とし、天然皮革の皺を模した凹凸模様を表面に有する合成皮革からなる、
水中運動用レッグウェア。
【請求項2】
前記足底部は、第5趾側の足側部まで覆う、請求項1に記載の水中運動用レッグウェア。
【請求項3】
足甲部を覆う足甲部を更に備え、
前記足甲部は、多孔構造をなしている、請求項1又は2に記載の水中運動用レッグウェア。
【請求項4】
前記足底部は、中足骨骨頭部及び趾骨部の足底側に相当する部分のみを覆う、請求項1〜3の何れか1項に記載の水中運動用レッグウェア。
【請求項5】
踵部を周回して前記足底部及び前記足甲部を固定する踵帯部を更に備え、
前記踵帯部は、長さ調節機構を有している、請求項4に記載の水中運動用レッグウェア。
【請求項6】
前記足底部及び前記足甲部における爪先部は、少なくとも二股に分割する仕切り構造を有している、請求項1〜5の何れか1項に記載の水中運動用レッグウェア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−245257(P2012−245257A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120873(P2011−120873)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(592154411)岡本株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(592154411)岡本株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
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