説明

流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置

【課題】消化管の奥まで容易に挿入することができ、被検者の苦痛が少ない外筒を使用しない流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置を提供すること。
【解決手段】本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aは,内視鏡本体11の遠位端側外表面に固定された第1のバルーン12と、内視鏡本体の外表面に対して摺動可能に配置された第2のバルーン13と、一端が内視鏡本体11の遠位端側に固定され、他端が第2のバルーン13に固定されたそれぞれ独立して作動可能な複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14cと、一端が第2のバルーン13に固定され、他端が内視鏡本体11の外表面に固定されたそれぞれ独立して作動可能な複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cが配置された構成を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体による自己推進機能を有する外筒を使用しないダブルバルーン式内視鏡装置に関し、詳しくは、消化管の奥まで容易に挿入することができ、被検者の苦痛が少ない流体による自己推進機能を有する外筒を使用しないダブルバルーン式内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、主に人体内部を観察することを目的とした医療機器であり、現在では内視鏡観察下で直接治療や検体の採取などを行う内視鏡的処置のための各種デバイスを備えたものも開発・実用化されている。内視鏡は、構造によって硬性鏡、軟性鏡、カプセル型に大別され、特に大腸や小腸などの消化管を観察する際には、診断だけでなく治療も同時に行える軟性鏡が現在の主流となっている。
【0003】
一般的な内視鏡(軟性鏡)装置は、柔軟な素材でできた管の先端側(内視鏡操作部側から見た遠位端側。以下、「遠位端側」と表現する。また、内視鏡操作部側を「近位端側」と表現する。)に観察のための光学系や超音波センサ等が取り付けられており、管の中には光源や検出器用の配線、内視鏡的処置を実施するための各種処置具操作用のケーブル等が通された構造を有しており、経口・経鼻的もしくは経肛門的に消化管内に挿入され、目的の箇所まで導入されて観察ないし各種処置が行われる。消化管の中でも、小腸は口からも肛門からも遠く、複雑に屈曲しているために内視鏡装置の摩擦力も大きくなり、特に深部小腸の病変部になると、従来であれば内視鏡装置が到達できず、観察が困難であった。また、たとえば大腸内視鏡装置を用いた大腸の内視鏡検査に際しても、大腸内視鏡の操作者の技量にもよるが、約10%の症例で深部大腸への大腸内視鏡装置の挿入が困難な例が存在する。
【0004】
その理由としては、
(ア)軟性の内視鏡装置に対して押す力を活用しているために内視鏡装置が撓んで遠位端側に力が加わらないこと、
(イ)内視鏡装置は、内視鏡操作部を手元で把持して操作するため、力の作用点が内視鏡装置の手元側にあるので、軟性の内視鏡装置の遠位端側に力が加わらないこと、
(ウ)内視鏡装置と消化管との間の摩擦力が大きいこと、
等にあるものと考えられる。
【0005】
たとえば、図8は経肛門的に内視鏡装置を挿入している状態を示す模式図であるが、S状結腸が大きく屈曲しているため、矢印で示した箇所で内視鏡が大きく撓んでしまっている状態を模式的に示している。この状態では、より強く押し込んでも、S状結腸を過度に伸展させるだけで、内視鏡装置の遠位端側を前進させる方向へは殆ど力が伝わらないことがわかる。
【0006】
このような従来の内視鏡装置が抱える問題点に対し、バルーン内視鏡と総称される小腸深部の観察ないし治療を可能にした内視鏡装置が実用化されている。バルーン内視鏡は、内視鏡装置の遠位端側にバルーンが備えられており、備えているバルーンの数で、シングルバルーン式又はダブルバルーン式と呼ばれるが、いずれも、内視鏡装置の挿入操作中に適宜バルーンを膨らませることで、外筒部と消化管内壁を摩擦力で固定させることができるものである。
【0007】
たとえば、下記特許文献1には、遠位端側外周に本体固定用バルーンを取り付けた内視鏡本体と、遠位端側外周にチューブ固定用バルーンを取り付け、内部に内視鏡本体を挿通させて内視鏡本体挿入時のガイドを行うスライディングチューブを有すると共に、各バルーンにエアを供給するポンプ装置を有し、各ポンプ装置は、各バルーン内のエアの圧力を測定して各バルーン内の圧力を制御する制御手段を有する、ダブルバルーン式内視鏡の発明が開示されている。
【0008】
下記特許文献1に開示されているダブルバルーン式内視鏡50は、図9に示すように、内視鏡本体51及び内視鏡本体51が挿通されている外筒としてのスライディングチューブ52のそれぞれの遠位端側に、本体固定用バルーン53及びチューブ固定用バルーン54を備えている。このダブルバルーン式内視鏡50は、まず本体固定用バルーン53及びチューブ固定用バルーン54を萎ませた状態(図9A)で消化管内へ挿入されるが、上述したように深部へ進むにしたがって挿入させることが困難になる。
【0009】
そこで、チューブ固定用バルーン54を膨らませてスライディングチューブ52を消化管壁に固定した上で、内視鏡本体51を進ませる操作(図9B)と、本体固定用バルーン53を膨らませて内視鏡本体を消化管に固定した上で、スライディングチューブ52の遠位端を内視鏡本体51の遠位端付近まで進ませる操作(図9C)とを、繰り返すことで、深部への挿入を進めていくことができるものである。
【0010】
たとえば、深部小腸へ挿入する際には、以下に述べる(a)〜(f)の操作を繰り返すことで、従来よりも深く挿入することができる。すなわち、
(a)内視鏡本体51を、従来どおり方法で(挿入部付近から押し込んで)挿入していく。
(b)それ以上押し込めなくなったところで、内視鏡本体51の遠位端側に取り付けられている本体固定用バルーン53を膨らませて内視鏡本体51を固定する(図9C)。
(c)内視鏡本体51が固定されている状態で、内視鏡本体をガイドとしてスライディングチューブ52を挿入部付近から押し込むことで、スライディングチューブ52の遠位端側を本体固定用バルーン53の位置まで進める(図9C矢印)。
(d)スライディングチューブ52の遠位端側に取り付けられているチューブ固定用バルーン54を膨らませて、スライディングチューブ52を固定する(図9B)。
(e)スライディングチューブ52が固定されている状態で、内視鏡本体51及びスライディングチューブ52を引き戻すと、固定箇所より手前側の小腸が縮み、固定箇所より奥側の小腸が伸展する。
(f)固定箇所より奥側の小腸が伸展されているので、本体固定用バルーン53を萎ませると、内視鏡本体51をさらに奥へと押し込むことが可能となる(図9B矢印)。
【0011】
下記特許文献1に開示されているダブルバルーン式内視鏡装置によれば、従来の内視鏡装置に比すると小腸内にも挿入し易くなる。しかしながら、このダブルバルーン式内視鏡装置であっても、小腸の奥へ挿入されるにしたがって、内視鏡本体を進めることが困難となる。これは、内視鏡装置やスライディングチューブの硬さが硬いゴム程度しかないため撓み易いことと、内視鏡装置やスライディングチューブの挿入方法が被検者の口もしくは肛門である挿入部付近から力をかけて押し込むことであることに起因している。
【0012】
すなわち、内視鏡装置が小腸の奥へ挿入される度に摩擦も大きくなり、内視鏡装置やスライディングチューブは撓みやすくなってしまい、挿入部付近から力を加えて押し込んでも、内視鏡装置の遠位端側が推進する方向には力が伝わり難くなるからである。しかも、内視鏡本体の外周を囲む外筒としてのスライディングチューブは、外径が内視鏡本体よりも大きいため、とくに肛門括約筋による収縮や腸管蠕動の収縮時にはより挿入時の摩擦も大きくなる。さらに、従来のバルーン式内視鏡では、外筒のバルーンを拡張させた状態で内視鏡を牽引することにより小腸の直線化をするため、患者にとっては苦痛を伴っていた。
【0013】
このような問題点を解決するためには、内視鏡装置等が挿入部付近から押し込まれるのではなく、外筒の遠位端側から押し出すように力が加えられればよいという観点から、本発明者等は、既に「糸牽引推進式内視鏡装置」の発明を特願2010−027020号(以下、「先願」という。)として特許出願している。この先願に係る「糸牽引推進式内視鏡装置」の発明は、内視鏡本体及びスライディングチューブを備えるダブルバルーン式内視鏡装置であるが、近位端側から内視鏡装置やスライディングチューブに取り付けられた糸を操作することにより、内視鏡装置をスライディングチューブの遠位端側から押し出すように力が加わるようにすると共に、スライディングチューブを内視鏡装置の遠位端側から引っ張るように力が加わるようにしたものである。この発明によれば、内視鏡装置等の撓み易さに左右されることなく内視鏡装置やスライディングチューブを深部消化管内へ容易に推進させることができるという優れた効果を奏する。
【0014】
一方、下記特許文献1及び上記先願に開示されているダブルバルーン式内視鏡装置は、いずれも外筒としてのスライディングチューブを備えている。この外筒としてのスライディングチューブは、内視鏡本体よりも径が大きいために摩擦が大きく、挿入部付近から押し込む場合だけでなく、遠位端側から引き上げる場合であっても、大きな力が必要となる。このような外筒としてのスライディングチューブを使用せず、内視鏡装置に取り付けられた単一のバルーンを用いて内視鏡装置を深部消化管内へ容易に推進させることができる内視鏡自動挿入機の発明が下記特許文献2に開示されている。
【0015】
下記特許文献2に開示されている内視鏡自動挿入機60は、図10に示したように、内視鏡本体61の外側に長軸方向の前後に移動可能な浮き輪型の前後可動バルーン62を、内視鏡本体61の側面の長径孔63より前後駆動体64に接合したバルーン連結筒65を放射状に突出させて連結し、内視鏡本体61の長軸を中心軸として前後駆動体64を前後駆動体駆動中心軸体66によって伝えられる動力により、両軸方向の前後に駆動することで、内視鏡本体61を前進させることが可能となるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2002−301019号公報
【特許文献2】特開2009−018146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記特許文献2に開示されている内視鏡自動挿入機60によれば、前後可動バルーン62が一つしかなく、しかも、スライディングチューブを使用せずとも、内視鏡本体61に対して遠位端側において押し出すように力を加えることができるため、一応内視鏡本体61を消化管の奥へと進行させることが可能となる。しかしながら、上記特許文献2に記載されている内視鏡自動挿入機60は、内視鏡本体61の内部に前後駆動体64及びバルーン連結筒65を挿入する必要があるため、従来から普通に使用されている内視鏡装置に対してはたとえばアタッチメントの形で適用することはできず、しかも、前後駆動体駆動中心軸体66を内視鏡本体61の内部に挿入する必要があるため、内視鏡本体61の遠位端側を曲折し難いため、曲がりくねった消化管内部に挿入することが困難であるという課題が存在する。
【0018】
加えて、上記特許文献2に開示されている内視鏡自動挿入機60は、内視鏡本体61の内部挿入された前後駆動体64及びバルーン連結筒65を内視鏡本体61の長軸方向に沿って往復動できるようにするため、少なくとも各種処置具の挿入孔等を前後駆動体64の横を通って内視鏡本体61の遠位端側まで形成し難いという課題も存在する。
【0019】
本発明者らは、従来の内視鏡装置に対して適用でき、簡単な構成で、しかも、スライディングチューブ等の外筒を使用せず、内視鏡装置の遠位端側から内視鏡装置を押し出す力を加えることができると共に、内視鏡装置の近位端側から遠位端側を曲折できる構成について種々検討を重ねてきた。その結果、本発明者らは、内視鏡装置の遠位端側の外周に固定バルーンと可動バルーンを配置すると共に両方のバルーン間を複数の細径の蛇腹様バルーンで結合することにより、解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0020】
すなわち、本発明は、従来の内視鏡装置に対しても適用でき、スライディングチューブ等の外筒を使用せず、深部消化管に挿入されても内視鏡装置の遠位端側を容易に曲折できると共に内視鏡装置を容易に進ませることができる流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を解決するため、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置は、内視鏡本体の外表面に第1のバルーンと第2のバルーンとを備えた流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置において、
前記第1のバルーンは前記内視鏡本体の遠位端側外表面に固定され、
前記第2のバルーンは、前記第1のバルーンよりも前記内視鏡本体の近位端側に前記内視鏡本体の外表面に対して摺動可能に配置され、
前記内視鏡本体の外表面側には、
一端が前記内視鏡本体の遠位端側であって前記第1のバルーンよりも近位端側に固定され、他端が前記第2のバルーンに固定されたそれぞれ独立して作動可能な複数の第1の蛇腹様バルーンが配置され、
一端が前記第2のバルーンに固定され、他端が前記第2のバルーンよりも近位端側の前記内視鏡本体の外表面に固定されたそれぞれ独立して作動可能な複数の第2の蛇腹様バルーンが配置され、
前記内視鏡本体の内部及び外表面側の少なくとも一方には、前記第1のバルーン、前記複数の第1の蛇腹様バルーン、前記第2のバルーン及び前記複数の第2の蛇腹様バルーンの内部にそれぞれ独立して流体を導入及び吸引するための流体流路が形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置においては、第1のバルーンは内視鏡本体の遠位端側の外表面に固定され、第2のバルーンは、第1のバルーンよりも内視鏡本体の近位端側に、内視鏡本体の外表面に対して摺動可能に配置されている。そして、内視鏡本体の外表面側には、一端が内視鏡本体の遠位端側であって第1のバルーンよりも近位端側に固定され、他端が第2のバルーンに固定されたそれぞれ独立して作動可能な複数の第1の蛇腹様バルーンが配置され、さらに、一端が第2のバルーンに固定され、他端が第2のバルーンよりも近位端側の内視鏡本体の外表面に固定されたそれぞれ独立して作動可能な複数の第2の蛇腹様バルーンが配置されている。
【0023】
本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置は、最初に、たとえば第1のバルーンから流体を吸引して萎ませた状態とし、第2のバルーンに流体を導入して膨らませることにより消化管壁に固定する。この状態で、複数の第1の蛇腹様バルーンに均等に流体を導入して膨らませると、複数の第1の蛇腹様バルーンは第2のバルーンを支点として直線状に遠位端側に伸びようとするので、内視鏡本体に対して第2のバルーンを支点として直線状に遠位端側へ押し出す力を加えることができる。このとき、同調して複数の第2の蛇腹様バルーンから均等に流体を吸引して萎ませると、複数の第2の蛇腹様バルーンは第2のバルーンを支点として直線状に遠位端側に縮もうとするので、複数の第2の蛇腹様バルーンの近位端側を第2のバルーン側へ引き寄せる力が加わることになり、その結果、第2のバルーンを支点として、内視鏡本体をより遠位端側へ突出させることができる。
【0024】
そのため、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置によれば、第1のバルーンから流体を吸引して萎ませた状態とし、第2のバルーンに流体を導入して膨らませることにより消化管壁に固定された状態で、複数の第1の蛇腹様バルーンへの均等な流体の導入と複数の第2の蛇腹様バルーンからの均等な流体の吸引を同時に行うことによって、内視鏡本体を容易に遠位端より突出させて消化管内に押し込むことができるようになる。しかも、この内視鏡本体を駆動する力は複数の第1の蛇腹様バルーン内から吸引される流体及び複数の第2の蛇腹様バルーン内に導入される流体により与えられるため、ダブルバルーン内視鏡本体の操作部側からダブルバルーン内視鏡本体を押し込むよりも大きな力で消化管内に押し込むことができる。
【0025】
その後、第1のバルーンに流体を導入して膨らませることにより消化管壁に固定し、第2のバルーンから流体を吸引して萎ませる。この状態で、複数の第1の蛇腹様バルーンから均等に流体を吸引して萎ませると、複数の第1の蛇腹様バルーンは第2のバルーンを第1のバルーン側に引き寄せることができる。このとき、複数の第2の蛇腹様バルーンに均等に流体を導入することによって膨らませると、複数の第2の蛇腹様バルーンは第2のバルーンを第1のバルーン側へ押し出す力を与えることができる。
【0026】
そのため、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置によれば、第1のバルーンに流体を導入して膨らませることにより消化管壁に固定し、第2のバルーンから流体を吸引して萎ませた状態とし、複数の第1の蛇腹様バルーンからの均等な流体の吸引と複数の第2の蛇腹様バルーンへの均等な流体の導入を同時に行うことによって、第2のバルーンを内視鏡本体の遠位端側へ移動させることができるようになる。なお、流体としては、空気や窒素等の気体だけでなく、水やオイル等の液体も使用することができるが、入手のし易さ及び制御のし易さを考慮すると、空気が望ましい。
【0027】
したがって、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置によれば、複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンが内視鏡本体及び第2のバルーンの推進力発生装置として作動するから、上述のような操作を交互に繰り返すことにより、内視鏡本体の遠位端側に対して容易に押し出す力を与えることができるようになる。すなわち、従来は、医師が内視鏡本体を手で持って押し込んで消化管内に挿入していたが、本発明では、内視鏡本体の先端に複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンからなる推進力発生装置を搭載し、自己推進するシステムとしたものであるので、従来のダブルバルーン式内視鏡装置よりも内視鏡本体の消化管内への挿入が容易になる。
【0028】
さらに、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置では、複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンが蛇腹様に形成されているため、複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーン内に流体を導入させた場合に径方向に大きく膨れることなく長さ方向に容易に延伸することができるようになる。そのため、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置によれば、内視鏡本体及び第2のバルーンの推進用バルーンに流体を導入する操作と吸引する操作を繰り返すことにより、故障が少なく、よりスムーズに内視鏡本体を消化管の奥に挿入することができるようになる。
【0029】
このような式内視鏡を10両編成のディーゼル列車に例えると、従来法では最後尾の10両目がエンジンを載せたディーゼル機関車であり、客席列車を最後尾から押し進んでいる状態であり、5両目あたりで列車の列が歪みやすく脱線し易い仕組みである。これに対し、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置は、先頭車両がディーゼル機関車であり、客席列車を牽引して進む状態と捉えることができ、従来法と比較して車列の歪みが少なくなる(内視鏡のたわみが少なくなる)効果がある。
【0030】
さらに、内視鏡先端への推進力発生装置の搭載によって、内視鏡(列車)が大腸壁(トンネルの壁)に強くぶつからないため、腸管の過伸展を防ぐことができ、苦痛の少ない検査が可能となると同時に、大腸壁を破る穿孔の危険も回避でき、安全に検査することができるようになる。また、被検者の検査に対する苦痛や不安が低減されると、大腸がん検査の受診率も上昇することが期待され、大腸がんによる死者数の低減に繋がる可能性も期待される。
【0031】
また、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置においては、複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンに対して、「均等」に流体の導入ないし吸引を行うと内視鏡本体の遠位端側の直線的な押し出しを行うことができるが、「不均等」に流体の導入ないし吸引を行うと、内視鏡本体の遠位端側を所望の曲折した状態で押し出しを行うことができるようになる。すなわち、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置においては、複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンは、それぞれ独立して流体を吸引及び導入することができるから、複数の蛇腹様バルーンはそれぞれの内圧を独立して制御することができる。
【0032】
そのため、複数の蛇腹様バルーンのそれぞれの内圧をベクトル的に捉え、曲折したい方向の蛇腹様バルーン側が他の腹様バルーン側よりも低圧となるように流体を吸引及び導入することによって、内視鏡本体の遠位端側を所望の方向に曲折させた状態で押し出しを行うことができ、より深部の消化管内へ容易に挿入することができるようになる。この際、複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンの両者共に、それぞれ曲折したい方向の蛇腹様バルーン側が他の腹様バルーン側よりも低圧となるように流体を吸引及び導入すると、よりなだらかに内視鏡本体の遠位端側を所望の方向に曲折させることができるようになる。
【0033】
なお、第1のバルーン、複数の第1の蛇腹様バルーン、第2のバルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーン内部に流体を導入及び吸引するための流体流路は、内視鏡本体内に形成してもよく、内視鏡本体の外表面側に別途流体流路を形成してもよい。特に、第1のバルーン、第2のバルーン、複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンの内部にそれぞれ独立して流体を導入及び吸引するための流体流路を内視鏡本体の外表面側に配置すれば、従来の内視鏡本体を利用して特に内部に加工を要せずに、アタッチメントの形式とすることにより、容易に本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置を作製することができるようになる。
【0034】
また、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置においては、前記第1のバルーン、前記複数の第1の蛇腹様バルーン、前記第2のバルーン及び前記複数の第2の蛇腹様バルーンは、この順序で複数組が直列に形成されており、前記内視鏡本体の内部及び外表面側の少なくとも一方には、これらの全ての前記第1のバルーン、前記複数の第1の蛇腹様バルーン、前記第2のバルーン及び前記複数の第2の蛇腹様バルーンの内部にそれぞれ独立して流体を導入及び吸引するための流体流路が形成されているようにしてもよい。
【0035】
このような構成とすると、内視鏡本体に固定されている第1のバルーン及び内視鏡本体の表面に摺動可能に配置された第2のバルーンが共に複数個となるので、消化管壁に対する固定が確実となる。また、内視鏡本体の遠位端側を屈曲させる場合には、屈曲の曲がり度合いを短い長さ単位で細かく制御することができるようになる。
【0036】
また、本発明のダブルバルーン式内視鏡装置においては、最も近位端側に位置する前記複数の第2の蛇腹様バルーンよりも近位端側には、第3のバルーンが前記内視鏡本体の外表面に固定されていることが好ましい。
【0037】
本発明のダブルバルーン式内視鏡装置によれば、最も近位端側に位置する複数の第2の蛇腹様バルーンよりも近位端側に内視鏡本体の外表面に固定されている第3のバルーンが配置されているため、この第3のバルーンによって内視鏡本体を消化管壁に強固に固定することができるとともに、正確な形に屈曲させることができるようになる。
【0038】
また、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置においては、前記複数の第1の蛇腹様バルーンのそれぞれないし前記複数の第2の蛇腹様バルーンのそれぞれは、中空円筒体内に形成された少なくとも1つの隔壁によって複数の室に区画されており、前記隔壁には開口が形成されているものとすることができる。
【0039】
複数の第1の蛇腹様バルーンないし複数の第2の蛇腹様バルーンの中空円筒体内に形成された少なくとも1つの隔壁によって複数の室に区画されていると、複数の第1の蛇腹様バルーンないし複数の第2の蛇腹様バルーン内に流体を導入させた場合の径方向への膨れがより抑制される。また、複数の室内への流体の導入ないし複数の室からの流体の吸引は、隔壁に形成された開口によって確保することができる。そのため、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置によれば、複数の第1の蛇腹様バルーンないし複数の第2の蛇腹様バルーンに流体を導入する操作と吸引する操作を繰り返すことにより、よりスムーズに内視鏡本体を適宜に曲折させた状態で消化管の奥に挿入することができるようになる。
【0040】
また、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置においては、前記複数の第1の蛇腹様バルーンのそれぞれないし前記複数の第2の蛇腹様バルーンのそれぞれは、内部にコイルバネが配置されており、前記コイルバネのそれぞれは、一端が前記複数の第1の蛇腹様バルーンないし前記複数の第2の蛇腹様バルーンの遠位端側に、他端が前記複数の第1の蛇腹様バルーンないし前記複数の第2の蛇腹様バルーンの近位端側に、それぞれ固定されていることが好ましい。
【0041】
複数の第1の蛇腹様バルーンないし複数の第2の蛇腹様バルーン内にコイルバネが挿入されていると、コイルバネの圧縮力ないし伸縮力をも利用できるようになる。そのため、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置によれば、内視鏡装置及び第2のバルーンの推進用である複数の第1の蛇腹様バルーンないし複数の第2の蛇腹様バルーン内に流体を導入する際の圧力ないし流体を吸引する際の圧力の設定の自由度が増す。なお、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置においては、かかる構成を複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンのどちらか一方又は両者に採用することができる。
【0042】
また、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置においては、前記コイルバネは、前記複数の第1の蛇腹様バルーンないし前記複数の第2の蛇腹様バルーンの内部壁と一体化されていることが好ましい。
【0043】
コイルバネが複数の第1の蛇腹様バルーンないし複数の第2の蛇腹様バルーンの内部壁を一体化されていると、複数の第1の蛇腹様バルーンないし複数の第2の蛇腹様バルーン内に流体を導入させた場合の径方向への膨れがより抑制される。そのため、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置によれば、複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンに流体を導入する操作と吸引する操作を繰り返すことにより、よりスムーズに内視鏡本体を適宜に曲折させた状態で消化管の奥に挿入することができるようになる。
【0044】
また、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置においては、前記複数の第1の蛇腹様バルーン及び前記複数の第2の蛇腹様バルーンは、それぞれ3本又は4本からなることが好ましい。
【0045】
本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置においては、複数の第1の蛇腹様バルーン及び前記複数の第2の蛇腹様バルーンはそれぞれ少なくとも2本存在していれば内視鏡本体の押し出し操作と曲折操作を行わせることができる。しかしながら、複数の第1の蛇腹様バルーン及び前記複数の第2の蛇腹様バルーンがそれぞれ2本ずつであると、所望の方向に曲折させる際に内視鏡本体に対して回転動作を付与する必要が生じる場合がある。それに対し、複数の第1の蛇腹様バルーン及び前記複数の第2の蛇腹様バルーンがそれぞれ3本以上であると、特に内視鏡本体に対して回転操作を付与せずとも所望の方向に曲折させることができる。
【0046】
ただし、複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンの本数が多すぎても、内視鏡装置の外径の増大や構造の複雑化のために好ましくなく、それぞれ4本以下とすることが好ましい。複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンの数を3本ないし4本とすると、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置の外径があまり大きくならず、内視鏡本体に対して押し出し操作だけでなく所望の方向に曲折することができるようになる。なお、複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンのそれぞれに対して所望の流体の導入ないし吸引を行わせるには、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置の操作部側に、ポンプ等のスイッチ手段や、ジョイスティック様の操作手段を設けることにより、容易に操作者によって手動で制御することができる。
【0047】
また、本発明の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置においては、撮像手段で得られた映像信号を無線で送信する映像信号送信手段を備えるものであっても良い。その場合、内視鏡本体がより細径となり、よりスムーズに内視鏡本体を消化管の奥に挿入することができるようになる。加えて光源用の電源を電池ないし無線送電によるものとすれば、更に細径化がなされた内視鏡装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1Aは第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置の分解斜視図であり、図1Bは組み立てた状態の斜視図である。
【図2】図2Aは第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置において内視鏡装置を押し出した状態の斜視図であり、図2Bは同じく第2のバルーンを第1のバルーン側へ引き寄せた状態の斜視図である。
【図3】図2Bの状態から内視鏡装置を屈曲させた状態の斜視図である。
【図4】図4Aは変形例1の、図4Bは変形例2の、それぞれ流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置の斜視図である。
【図5】図5Aは第2実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置において内視鏡装置を押し出した状態の斜視図であり、図5Bは同じく第2のバルーンを第1のバルーン側へ引き寄せた状態の斜視図である。
【図6】図5Bの状態から内視鏡装置を屈曲させた状態の斜視図である。
【図7】変形例3の自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置の斜視図である。
【図8】従来の内視鏡装置の挿入状態を示す模式図である。
【図9】従来のダブルバルーン式内視鏡装置を説明する模式図である。
【図10】従来の単一のバルーンを用いた内視鏡自動挿入機を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の各実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための一例を説明するためのものであって、本発明をこれらの実施形態に特定することを意図するものでなく、本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。また、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではなく、さらに、本発明の理解に不要な部分については記載を省略した部分がある。
【0050】
[第1実施形態]
まず、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態にかかる流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aの概略構成について説明する。なお、図1Aは第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置の分解斜視図であり、図1Bは組み立てた状態の斜視図である。図2Aは第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置において内視鏡装置を押し出した状態の斜視図であり、図2Bは同じく第2のバルーンを第1のバルーン側へ引き寄せた状態の斜視図である。図3は図2Bの状態から内視鏡装置を屈曲させた状態の斜視図である。なお、「流体」としては、空気や窒素等の気体だけでなく、水やオイル等の液体も使用可能であるが、以下ではこれらを区別することなく、単に「流体」として表現する。
【0051】
第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aは、内視鏡本体11を備えている。内視鏡本体11は、たとえば従来から普通に使用されている大腸内視鏡であり、遠位端側に撮像手段及び光源などの光学系(図示省略)が設けられていると共に、内部に各種処置具が挿入される鉗子孔(図示省略)等が形成されている。また、内視鏡本体11の遠位端側には、第1のバルーン12が固定されている。この第1のバルーン12は、ドーナツ状支持体を有する円筒形バルーンであり、内視鏡操作部(図示省略)側から、たとえば内視鏡本体11内に形成された流体流路(図示省略)を経て、所定の流体を導入ないし吸引することによって、膨張させたり萎ませたりすることができようになっている。
【0052】
また、内視鏡本体11には、第1のバルーン12よりも近位端側に第2のバルーン13が内視鏡本体11の外表面に対して内視鏡本体11の長手方向に摺動可能に配置されている。この第2のバルーン13も、内側に円筒形状支持体を有するバルーンであり、たとえば流体流路13を経て内視鏡操作部側から所定の流体を導入ないし吸引することによって、膨張させたり萎ませたりすることができようになっている。
【0053】
そして、複数の、ここでは3本の、第1の蛇腹様バルーン14a〜14cが、それぞれの一方側の端部が内視鏡本体11の遠位端側であって第1のバルーン12よりも近位端側に固定され、他端が第2のバルーン13に固定されている。なお、図2及び図3においては、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14cのうち、14cに対応する部分は図示省略した。これらの第1の蛇腹様バルーン14a〜14cは、それぞれ流体流路14a〜14c(流体流路14cについては図示省略。以下、同じ。)を経て内視鏡操作部側から所定の流体を導入ないし吸引することによって、独立して膨張させたり萎ませたりすることができようになっている。
【0054】
また、複数の、ここでは3本の、第2の蛇腹様バルーン15a〜15cが、それぞれの一方側の端部が第2のバルーン13に固定され、他端が第2のバルーン13よりも近位端側の内視鏡本体11の外表面に固定されている。なお、図2及び図3においては、複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cのうち、15cに対応する部分は図示省略した。これらの第2の蛇腹様バルーン15a〜15cも、それぞれたとえば内視鏡本体11内に形成された流体流路(図示省略)を経て内視鏡操作部側から所定の流体を導入ないし吸引することによって、独立して膨張させたり萎ませたりすることができようになっている。
【0055】
なお、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cのそれぞれに対して所望の流体の導入ないし吸引を行わせるには、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aの操作部側に、ポンプのスイッチやジョイスティック様の操作手段(図示省略)を設けることによって、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cのそれぞれに導入ないし吸引される流体の圧力を自動的にコントロールするようにすれば、操作者によって容易に手動で制御することができる。なお、このようなポンプのスイッチやジョイスティック様の操作手段によって各部に導入ないし吸引する流体を自動的に制御するための構成は、周知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0056】
また、ここでは、第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び第2の蛇腹様バルーン15a〜15cとしては、図1A及び図1Bに示したように、蛇腹様の折り目が付けられたものが用いられており、内部に流体を導入することによって完全に延伸した状態では長い円筒状となり、内部から流体を排出した状体では折り畳まれて、図1Aの第2の蛇腹様バルーン15a〜15cのように、短い円筒状になる。
【0057】
このように、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cを蛇腹様に形成しておくと、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15c内に流体を導入させた場合に径方向に大きく膨れることなく長さ方向に容易に延伸することができるようになる。このようにして組み立てられた第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置の概略構成は図1Bに示したとおりとなる。なお、図1Bにおいては、第1の蛇腹様バルーン14c及び第2の蛇腹様バルーン15cは、図示省略されている(以下、他の図面においても同様である。)。この場合においては、第1の蛇腹様バルーン14c及び第2の蛇腹様バルーン15cが折り目に沿って折りたたまれた時に消化管粘膜を挟まないようにするため、外周を伸縮性のある生地(縦方向にのみ伸縮する繊維やゴム・ラテックス膜等)で包んでもよい。
【0058】
次に、第1実施形態にかかるダブルバルーン式内視鏡装置10Aの具体的操作方法を、図2を用いて説明する。なお、以下の図面においては全ての流体流路については、図1Bに示したものと同様であるので、図示省略してある。先ず、実施形態1のダブルバルーン式内視鏡装置10Aを第1のバルーン12及び第2のバルーン13を萎ませた状態で、消化管内に挿入できるところまで挿入する。この際、第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び第2の蛇腹様バルーン15a〜15cの状態をどのようにするかは任意であるが、外径が部分的に太いところが生じないようにするため、第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び第2の蛇腹様バルーン15a〜15cは、両者共に同じような延伸状態となるようにしておくとよい。
【0059】
実施形態1のダブルバルーン式内視鏡装置10Aを消化管内に挿入し難くなった場合、先ず、第1のバルーン12内に流体を導入し、第1のバルーン12を膨らませて消化管壁に固定する。次いで、第1の蛇腹様バルーン14a〜14c内を均等に負圧状態とすると共に、第2の蛇腹様バルーン15a〜15cを均等に陽圧状態とすることによって、第2のバルーン13を第1のバルーン12に引き寄せる。そこで、第2のバルーン13内に流体を導入し第2のバルーン13を消化管壁に固定する。次に、第1のバルーン12内の流体を吸引し、先ほどとは逆に、第1の蛇腹様バルーン14a〜14c内に流体を導入して陽圧状態にして延伸状態にさせると共に、第2の蛇腹様バルーン15a〜15c内から均等に流体を吸引することによって第2の蛇腹様バルーン15a〜15cを均等に負圧状態とすることによって、第2のバルーン13を支点として内視鏡本体11の遠位端が消化管の深部へと挿入される。
【0060】
また、内視鏡本体11の延伸長さが足らなくなる場合などは、従来のダブルバルーン内視鏡と同様に第2バルーン13ないし第1バルーン12を膨らませて消化管壁に固定した状態で、内視鏡本体11を引くことにより消化管の長さを短縮することも可能である。
【0061】
第2のバルーン13を支点として内視鏡本体11の遠位端が消化管の深部へ進んだ時の状態を図2Aに示す。このように、実施形態1のダブルバルーン式内視鏡装置10Aによれば、第1の蛇腹様バルーン14a〜14cを均等に延伸状態とする際に内視鏡本体11を消化管内に押し込む力を付与することができるだけでなく、第2の蛇腹様バルーン15a〜15cを均等に萎ませることによっても内視鏡本体11を消化管内に押し込む力を付与することができるので、従来例のようにダブルバルーン内視鏡本体11の操作部側からダブルバルーン内視鏡本体11を押し込むよりも大きな力で、内視鏡本体11を消化管内に押し込むことができるようになる。
【0062】
次いで、第1のバルーン12内に流体を導入し、第1のバルーン12を膨らませて消化管壁に固定し、第2のバルーン13から流体を吸引して第2のバルーン13を萎ませる。その後、第1の蛇腹様バルーン14a〜14cから流体を均等に吸引することによって第1の蛇腹様バルーン14a〜14cを萎んだ状態とすると、第2のバルーン13は第1のバルーン12側に引き寄せられる。それと同時に、第2の蛇腹様バルーン15a〜15c内に均等に流体を導入して第2の蛇腹様バルーン15a〜15cを延伸状態とすると、第2の蛇腹様バルーン15a〜15cの近位端は内視鏡本体11の外壁側に固定されているため、第2のバルーン13は第1のバルーン12側に押し出される。
【0063】
この時の状態を図2Bに示す。このように、実施形態1のダブルバルーン式内視鏡装置10Aによれば、第1の蛇腹様バルーン14a〜14cを均等に萎ませた状態とする際に第2のバルーン13を第1のバルーン12側に引き寄せる力を付与することができるだけでなく、第2の蛇腹様バルーン15a〜15cを均等に延伸状態とすることによっても第2のバルーン13を第1のバルーン12側に押し出す力を付与することができるので、容易に第2のバルーン13を内視鏡本体11の外周面に沿って移動させることができる。
【0064】
その後、再度図2Aに示した状態と図2B示した状態とを順次繰り返すことにより、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aを消化管の奥にまで容易に挿入することができるようになる。
【0065】
上述の例では、第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び第2の蛇腹様バルーン15a〜15cのそれぞれ全てに対して均等に流体の導入及び吸引を行った例を示した。このような流体の導入及び吸引操作では、内視鏡本体11を直線的に押し出す操作となる。しかしながら、消化管は曲折しているため、内視鏡本体11の挿入に際しては、内視鏡本体11を曲折させて挿入する必要がある。従来の内視鏡装置では、内視鏡装置の内部に配置されたワイヤを操作部で操作することにより、内視鏡装置の遠位端側を曲折させるアングル操作機能を付与していた。
【0066】
これに対し、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aでは、第1の蛇腹様バルーン14a〜14cないし第2の蛇腹様バルーン15a〜15cに対して、「不均等」に流体の導入ないし吸引を行うと、内視鏡本体11の遠位端側に対してアングル操作機能を付与することができ、所望の方向に曲折した状態で押し出しを行うことができるようになる。たとえば、図2Bに示した状態において、複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cのうち、1つの第2の蛇腹様バルーン15bのみ部分的に吸引して僅かに萎ませて他の2つの第2の蛇腹様バルーン15a及び15bを同様に延伸させ、更に、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14cのうち、1つの第2の蛇腹様バルーン15bのみ大きく吸引し、他の2つの第1の蛇腹様バルーン14a及び14cを同様に部分的に延伸させると、図3に示したように、内視鏡本体11は第2のバルーン13の近傍から第1のバルーン12部分にかけて、第2の蛇腹様バルーン15b側及び第1の蛇腹様バルーン14b側になだらかに折れ曲がった状態となる。
【0067】
このような内視鏡本体11の折れ曲がり状態は、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cのそれぞれの内圧をベクトル的に捉え、曲折したい方向の蛇腹様バルーン側が他の蛇腹様バルーン側よりも低圧となるように流体を吸引及び導入することによって、低圧となった側に内視鏡装置を曲折することができる。この内視鏡本体11の曲折状態は、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14cに対して不均等に流体の導入ないし吸引を行うことによって第1のバルーン12から第2のバルーン13の間にかけて曲折させることができ、複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cに対して不均等に流体の導入ないし吸引を行うことによって第2のバルーン13から、複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cと内視鏡本体11との固定箇所の間にかけて曲折させることができるようになる。そのため、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aによれば、内視鏡本体11の遠位端側を所望の方向に曲折させた状態で押し出しを行うことができ、より深部の消化管内へ容易に挿入することができるようになる。
【0068】
なお、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aにおいては、内視鏡本体11を曲折させた場合の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び第2の蛇腹様バルーン15a〜15cと曲折した内視鏡本体11との乖離を抑制するための構成を備えておいても良い。このような構成としては、例えば、内視鏡本体11の外表面に対して内視鏡本体11の長手方向に摺動可能なリング体を、第1の蛇腹様バルーン14a〜14cの中間位置や第2の蛇腹様バルーン15a〜15cの中間位置にそれぞれ固定するなどの方法を適宜用いれば容易に実現可能である。
【0069】
第1の蛇腹様バルーン14a〜14cないし第2の蛇腹様バルーン15a〜15cに対して「不均等」に流体の導入ないし吸引を行うことで内視鏡本体11を曲折させる場合、第1の蛇腹様バルーン14a〜14cないし第2の蛇腹様バルーン15a〜15cの長さや曲折させる程度によっては、第1の蛇腹様バルーン14a〜14cないし第2の蛇腹様バルーン15a〜15cが、曲折した内視鏡本体11の湾曲と大きく乖離してしまうことで、消化管壁との摩擦が増大したり消化管壁に引っ掛かったりするなどの虞を生じ得るが、上述の構成を備えることによりこれを抑制することができる。
【0070】
また、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aにおいては、第1のバルーン11及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cへの流体を導入及び吸引するための流体流路を内視鏡本体11内に形成した例を示したが、これらの流体流路を別途内視鏡本体11の外周側に沿って配置してもよい。このような構成を採用すると、特に従来の内視鏡装置の内部を加工する必要なく、従来の内視鏡装置に対してアタッチメントの形態で、第1のバルーン12、第2のバルーン13、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cを取り付けることにより、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aを作製することができるようになる。
【0071】
また、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aにおいては、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cとしては、蛇腹様の折り目が付けられたものを用いた例を示したが、さらに内部にコイルバネが配置されているものも使用できる。これらのコイルバネのそれぞれは、一端が複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14cないし複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cの遠位端側に、他端が複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14cないし複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cの近位端側に、それぞれ固定されているようにすればよい。
【0072】
このように複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14cないし複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15c内にコイルバネが挿入されていると、コイルバネの圧縮力ないし伸縮力をも利用できるようになるので、内視鏡本体11及び第2のバルーン13の推進用である複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15c内に流体を導入する際の圧力ないし流体を吸引する際の圧力の設定の自由度が増す。なお、コイルバネは、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14cないし複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cのどちらか一方に採用することができ、両者共に採用することもできる。
【0073】
また、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14cないし複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cの内部にコイルバネを配置する場合は、コイルバネは内部壁と一体化されているようにするとよい。複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンの内部壁にコイルバネが一体化されていると、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15c内に流体を導入させた場合に径方向に膨れることがより抑制される。そのため、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aによれば、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cに流体を導入する操作と吸引する操作を繰り返すことにより、よりスムーズに内視鏡本体を適宜に曲折させた状態で消化管の奥に挿入することができるようになる。
【0074】
また、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aにおいては、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cとしては、それぞれ3本用いた例を示したが、2本又は4本であってもよい。すなわち、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cはそれぞれ少なくとも2本存在していれば内視鏡本体11の押し出し操作と曲折操作を行わせることができる。しかしながら、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び前記複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cがそれぞれ2本ずつであると、所望の方向に曲折させる際に内視鏡本体11に対して回転動作を付与する必要が生じる場合がある。それに対し、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び前記複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cがそれぞれ3本以上であると、特に内視鏡本体11に対して回転操作を付与せずとも所望の方向に曲折させることができる。
【0075】
ただし、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cの本数が多すぎても、ダブルバルーン式内視鏡装置10Aの外径の増大や複雑化によるコスト増を招くため好ましくなく、それぞれ4本以下とすることが好ましい。複数の第1の蛇腹様バルーン及び複数の第2の蛇腹様バルーンの数を3本ないし4本とすると、ダブルバルーン式内視鏡装置10Aをそれほど太くしなくても、内視鏡本体に対して押し出し操作だけでなく所望の方向に曲折することができるようになる。
【0076】
また、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aにおいては、内視鏡本体11として、従来から普通に使用されている遠位端側に光学系が設けられていると共に内部に各種処置具が挿入される鉗子孔等が形成されている大腸内視鏡を用いた例を示した。この場合においては、内視鏡本体11としては、ある程度腰のあるものであるため、1m30cm〜3mの長さのものとすることができる。
【0077】
また、内視鏡本体11としては、ワイヤーによるアングル操作機能が付与されておらず、かつ腰のない内視鏡であってもよい。このような場合おいては、内視鏡本体11は、腰のないものであるために押して挿入することができなくなるので体腔内に挿入後から全て流体の導入と吸引のみで行うこととなる。そのため、内視鏡本体11としては十分な長さを備えたものが好ましく、2〜8m程度が最適であると考えられる。検査終了後、内視鏡の抜去は内視鏡本体11を引き抜くことで行うことができる。
【0078】
[変形例1]
次に、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aの構成の一部を変更した変形例1の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Bを図4Aを用いて説明する。この変形例1の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Bは、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aにおいて、最も近位端側に位置する複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cよりも近位端側に、第3のバルーン12aを固定したものである。なお、第3のバルーン12aにも、内部に流体を導入及び吸引するための流体流路が内視鏡本体11の内部ないし外周側に形成されているが、図4Aにおいては図示省略されている。
【0079】
この変形例1の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Bによれば、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aと同様の作用効果を奏することができる他、第3のバルーン12aを膨らませて消化管壁に固定することができるため、内視鏡本体11の消化管壁に対する固定をより確実にすることが可能となるとともに、内視鏡本体11を屈曲させる場合にはより正確な形に屈曲させることが可能となる。
【0080】
[変形例2]
次に、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aの構成の一部を更に変更した変形例2の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Cを図4Bを用いて説明する。変形例2の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Cは、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aにおける第1のバルーン12、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c、第2のバルーン13及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cを、この順序で複数組が直列に形成されているようにしたものである。
【0081】
すなわち、変形例2の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Cは、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aと同様に、第1のバルーン12、複数の第1の蛇腹様バルーン14a〜14c、第2のバルーン13及び複数の第2の蛇腹様バルーン15a〜15cが配置されているだけでなく、更に内視鏡装置11の近位端側に別の第1のバルーン12'、別の複数の第1の蛇腹様バルーン14d〜14f、別の第2のバルーン13'、別の複数の第2の蛇腹様バルーン15d〜15fが配置されたものである。この場合も、変形例1の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Bの場合と同様に、別の複数の第2の蛇腹様バルーン15d〜15fよりも近位端側に、内視鏡本体11の外表面に第3のバルーン12aを固定してもよい。
【0082】
なお、変形例2の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Cおいては、内視鏡本体11の内部ないし外表面側には、別の第1のバルーン12'、別の複数の第1の蛇腹様バルーン14d〜14f、別の第2のバルーン13'及び別の複数の第2の蛇腹様バルーン15d〜15fにそれぞれ独立して流体を導入及び吸引するための流体流路が形成されているが、図4Bにおいては図示省略されており、また、1つの別の第1の蛇腹様バルーン14f及び1つの別の第1の蛇腹様バルーン15fについても図示省略されている。
【0083】
このような構成の変形例2の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Cによれば、内視鏡本体11に固定されている第1のバルーン12、12'及び内視鏡本体11の表面に摺動可能に配置された第2のバルーン13、13'が共に複数個となるので、消化管壁に対する固定が確実となるとともに、内視鏡本体11の遠位端側を屈曲させる場合には、屈曲の曲がり度合いを短い長さ単位で細かく制御することができるようになる。
【0084】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Dを、図5及び図6を用いて説明する。なお、図5Aは第2実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置において内視鏡装置を押し出した状態の斜視図であり、図5Bは同じく第2のバルーンを第1のバルーン側へ引き寄せた状態の斜視図である。図6は図5Bの状態から内視鏡装置を屈曲させた状態の斜視図である。なお、以下においては、1つの第1の蛇腹様バルーン16c及び1つの第2の蛇腹様バルーン17cについては図示省略してある。
【0085】
この第2実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Dは、図5A及び図5Bに示したように、中空円筒体内に形成された少なくとも1つの隔壁18によって複数の室に区画されている第1の蛇腹様バルーン16a〜16c及び第2の蛇腹様バルーン17a〜17cを用いたものである。この隔壁18には、各室内へ流体の導入ないし吸引を行うことができるようにするため、全て開口19が形成されている。このような構成とすると、第1の蛇腹様バルーン16a〜16c及び第2の蛇腹様バルーン17a〜17c内に流体を導入させた場合に径方向に大きく膨れることがなくなり、また、第1の蛇腹様バルーン16a〜16c及び第2の蛇腹様バルーン17a〜17cからの流体の吸引は、隔壁18に形成された開口19によって確保することができる。
【0086】
この第2実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Dにおいても、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aの場合と同様に操作することにより、内視鏡本体11を消化管の奥にまで容易に挿入することができるようになる。すなわち、先ず、実施形態2の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Dを、第1のバルーン12及び第2のバルーン13を萎ませた状態で、消化管内に挿入できるところまで挿入する。実施形態2の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Dを消化管内に挿入し難くなった場合、先ず、第2のバルーン13内に流体を導入し、第2のバルーン13を膨らませて消化管壁に固定する。
【0087】
次いで、第1の蛇腹様バルーン16a〜16c内に均等に流体を導入して第1の蛇腹様バルーン16a〜16cを陽圧状態とすると同時に、第2の蛇腹様バルーン17a〜17c内から均等に流体を吸引することによって第2の蛇腹様バルーン17a〜17cを均等に負圧状態とすることによって、第1の蛇腹様バルーン17a〜17cが延伸状態となるとともに、第2の蛇腹様バルーン17a〜17cの近位端が第2のバルーン13側に引き寄せられる。
【0088】
この時の状態を図5Aに示す。このように、実施形態2の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Dによれば、第1の蛇腹様バルーン16a〜16cを均等に延伸状態とする際に内視鏡本体11を消化管内に押し込む力を付与することができるだけでなく、第2の蛇腹様バルーン17a〜17cを均等に萎ませることによっても内視鏡本体11を消化管内に押し込む力を付与することができるので、従来例のようにダブルバルーン内視鏡本体11の操作部側からダブルバルーン内視鏡本体11を押し込むよりも大きな力で、内視鏡本体11を消化管内に押し込むことができるようになる。
【0089】
次いで、第1のバルーン12内に流体を導入し、第1のバルーン12を膨らませて消化管壁に固定し、第2のバルーン13から流体を吸引して第2のバルーン13を萎ませる。その後、第1の蛇腹様バルーン16a〜16cから流体を均等に吸引することによって第1の蛇腹様バルーン16a〜16cを萎んだ状態とすると、第2のバルーン13は第1のバルーン12側に引き寄せられる。それと同時に、第2の蛇腹様バルーン17a〜17c内に均等に流体を導入して第2の蛇腹様バルーン17a〜17cを延伸状態とすると、第2の蛇腹様バルーン17a〜17cの近位端は内視鏡本体11の外壁側に固定されているため、第2のバルーン13は第1のバルーン12側に押し出される。
【0090】
この時の状態を図5Bに示す。このように、実施形態2の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Dにおいても、第1の蛇腹様バルーン16a〜16cを均等に萎ませた状態とする際に第2のバルーン13を第1のバルーン12側に引き寄せる力を付与することができるだけでなく、第2の蛇腹様バルーン17a〜17cを均等に延伸状態とすることによっても第2のバルーン13を第1のバルーン12側に押し出す力を付与することができるので、容易に第2のバルーン13を内視鏡本体11の外周面に沿って移動させることができる。
【0091】
その後、再度図5Aに示した状態と図5B示した状態とを順次繰り返すことにより、第2実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Dを消化管の奥にまで容易に挿入することができるようになる。
【0092】
この場合においても第1実施形態において述べたのと同様に、第1の蛇腹様バルーン16a〜16cないし第2の蛇腹様バルーン17a〜17cに対して、「不均等」に流体の導入ないし吸引を行うと、内視鏡本体11の遠位端側を所望の曲折した状態で押し出しを行うことができるようになる。たとえば、図4Bに示した状態において、複数の第2の蛇腹様バルーン17a〜17cのうち、1つの第2の蛇腹様バルーン17bのみ部分的に吸引して僅かに萎ませると、図5に示したように、内視鏡本体11は第2のバルーン13部分で第2の蛇腹様バルーン17b側に折れ曲がった状態とすることができ、アングル操作機能を付与することができる。
【0093】
このように、第2実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Dにおいても、複数の第1の蛇腹様バルーン16a〜16c及び複数の第2の蛇腹様バルーン17a〜17cのそれぞれの内圧をベクトル的に捉え、曲折したい方向の蛇腹様バルーン側が他の蛇腹様バルーン側よりも低圧となるように流体を吸引及び導入することによって、低圧となった側に内視鏡装置を曲折させることができので、内視鏡本体11の遠位端側を所望の方向に曲折させた状態で押し出しを行うことができ、より深部の消化管内へ容易に挿入することができるようになる。
【0094】
また、第2実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Dにおいても、第1実施形態の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Aの場合と同様に、複数の第1の蛇腹様バルーン16a〜16c及び複数の第2の蛇腹様バルーン17a〜17cの内部にコイルバネが挿入されていてもよく、このコイルバネを内部壁と一体化した構成を備えていてもよい。さらに、変形例1の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Bのように、複数の第2の蛇腹様バルーン17a〜17cの近位端側の内視鏡本体11の表面に第3のバルーン固定してもよく、また、変形例1の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Cのように、第1のバルーン12、複数の第1の蛇腹様バルーン16a〜16c、第2のバルーン13及び複数の第2の蛇腹様バルーン17a〜17cは、この順序で複数組が直列に形成されている状態としてもよい。
【0095】
なお、上記実施形態としては、図1〜6において「固定用バルーン(12、12'、12a、13、13')及び、蛇腹様バルーン(14a〜f、15a〜15f、16a〜16c、17a〜17c)」(カッコ内は、実施形態の該当符号)を主たる構成要素とする「自己推進用ユニット群」といえる機構を、内視鏡本体11を中心軸としてその周囲に配するような位置関係で図示した。しかしながら、上述の通り、本発明は内視鏡本体に備えられた自己推進用ユニット群によって、内視鏡本体に自己推進機能を付与するものであり、自己推進用ユニット群による推進・屈曲機能は、内視鏡本体との位置関係に関わらず顕現されるものである。
【0096】
すなわち、本発明の実施には、図1〜6で図示したような内視鏡本体11を中心軸としてその周囲に自己推進用ユニット群を配する様な位置関係である必要はない。例えば、変形例3として図7に示した流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置10Eのように、自己推進用ユニット群を束ねた上で、内視鏡本体11にまとめて備えた態様でも本発明は実施可能である。
【0097】
また、上記実施形態においては、内視鏡本体の中を光源や検出器用の配線が通された軟性鏡に自己推進用ユニット群を備えさせた内視鏡装置に代表させて説明したが、用いる軟性鏡としては、CCDやCMOS等の撮像手段によって得られた映像信号を無線で送信する映像信号送信手段を備えた軟性鏡であっても当然本発明は実施可能である。
【0098】
その場合、有線で映像信号を送信する場合と比べ、信号送信用の配線が不要となるため、内視鏡本体をより細径にすることができ、自己推進機能を有すると共により細径となった内視鏡装置とすることができる。加えて光源用の電源を電池ないしマイクロ波を用いた無線送電等によるものとすれば更に細径化がなされた内視鏡装置となる。
【符号の説明】
【0099】
10A〜10E:流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置
11:内視鏡本体
12、12':第1のバルーン
12a:第3のバルーン
13、13':第2のバルーン
13:流体流路
14a〜14f:第1の蛇腹様バルーン
14a〜14c:流体流路
15a〜15f:第2の蛇腹様バルーン
16a〜16c:第1の蛇腹様バルーン
17a〜17c:第2の蛇腹様バルーン
18:隔壁
19:開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡本体の外表面に第1のバルーンと第2のバルーンとを備えた流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置において、
前記第1のバルーンは前記内視鏡本体の遠位端側外表面に固定され、
前記第2のバルーンは、前記第1のバルーンよりも前記内視鏡本体の近位端側に前記内視鏡本体の外表面に対して摺動可能に配置され、
前記内視鏡本体の外表面側には、
一端が前記内視鏡本体の遠位端側であって前記第1のバルーンよりも近位端側に固定され、他端が前記第2のバルーンに固定されたそれぞれ独立して作動可能な複数の第1の蛇腹様バルーンが配置され、
一端が前記第2のバルーンに固定され、他端が前記第2のバルーンよりも近位端側の前記内視鏡本体の外表面に固定されたそれぞれ独立して作動可能な複数の第2の蛇腹様バルーンが配置され、
前記内視鏡本体の内部及び外表面側の少なくとも一方には、前記第1のバルーン、前記複数の第1の蛇腹様バルーン、前記第2のバルーン及び前記複数の第2の蛇腹様バルーンの内部にそれぞれ独立して流体を導入及び吸引するための流体流路が形成されていることを特徴とする流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置。
【請求項2】
前記第1のバルーン、前記複数の第1の蛇腹様バルーン、前記第2のバルーン及び前記複数の第2の蛇腹様バルーンは、この順序で複数組が直列に形成されており、前記内視鏡本体の内部及び外表面側の少なくとも一方には、これらの全ての前記第1のバルーン、前記複数の第1の蛇腹様バルーン、前記第2のバルーン及び前記複数の第2の蛇腹様バルーンの内部にそれぞれ独立して流体を導入及び吸引するための流体流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置。
【請求項3】
最も近位端側に位置する前記複数の第2の蛇腹様バルーンよりも近位端側には、第3のバルーンが前記内視鏡本体の外表面に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置。
【請求項4】
前記複数の第1の蛇腹様バルーンのそれぞれないし前記複数の第2の蛇腹様バルーンのそれぞれは、中空円筒体内に形成された少なくとも1つの隔壁によって複数の室に区画されており、前記隔壁には開口が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置。
【請求項5】
前記複数の第1の蛇腹様バルーンのそれぞれないし前記複数の第2の蛇腹様バルーンのそれぞれは、内部にコイルバネが配置されており、前記コイルバネのそれぞれは、一端が前記複数の第1の蛇腹様バルーンないし前記複数の第2の蛇腹様バルーンの遠位端側に、他端が前記複数の第1の蛇腹様バルーンないし前記複数の第2の蛇腹様バルーンの近位端側に、それぞれ固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置。
【請求項6】
前記コイルバネのそれぞれは、前記複数の第1の蛇腹様バルーンないし前記複数の第2の蛇腹様バルーンの内部壁と一体化されていることを特徴とする請求項5に記載の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置。
【請求項7】
前記複数の第1の蛇腹様バルーン及び前記複数の第2の蛇腹様バルーンは、それぞれ3本又は4本からなることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置。
【請求項8】
前記内視鏡本体は、撮像手段と、前記撮像手段で得られた映像信号を無線通信で送信する映像信号送信手段とを備えていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の流体による自己推進機能を有するダブルバルーン式内視鏡装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−75595(P2012−75595A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222552(P2010−222552)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】