説明

液晶光学部品、液晶光学装置及び液晶光学部品の製造方法

【課題】本発明では、部品点数が少なく簡易な構成で小型の液晶光学部品及び液晶光学装置、並びにこの液晶光学部品の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る液晶光学部品は、液晶粒子が高分子内に分散した高分子液晶複合層と、高分子液晶複合層への電圧の印加により高分子液晶複合層の光透過率が変化するように高分子液晶複合層に設けられた一対の電極と、高分子液晶複合層を透過する光のうち、一対の電極からの電圧の印加により高分子液晶複合層の光透過率が変化する部分で散乱する光の一部を受光する受光部と、受光部において受光される光の光量を基に一対の電極から高分子液晶複合層へ印加する電圧の大きさを可変する電圧制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の透過率を可変可能な光学素子を用い、光波長多重通信において、異なる波長の光を波長ごとに任意に強度の調整をすることが可能な液晶光学部品、液晶光学装置及び液晶光学部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光波長多重通信の普及に伴い光ファイバを伝搬する光の強度を光ファイバに伝搬する光ごとに任意に減衰させる光可変減衰器が光通信のキーデバイスとなっている。
【0003】
従来では、アレイ状に配置された光ファイバを端面が向かい合うように配置し、光ファイバの端面の間に高分子液晶層を配置した光可変減衰器が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。この光可変減衰器では、高分子液晶層の両面に電圧を印加することで光ファイバを伝搬する光ごとに光量を減衰させることができる。
【0004】
また、アレイ状に配置された光ファイバを端面が向かい合うように配置し、光ファイバの端面の間に、光ファイバを伝搬する光の強度を可変して減衰できる光アッテネータパネルを挟み込んだ光可変減衰器も提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。この光可変減衰器では、光ファイバを機械的にスライドして、複数のファイバと複数のファイバの間の切り替えを行うことができる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−52339号公報
【特許文献2】特開2002−311352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら従来の光可変減衰器では、光量の調節を行うために、入射光量や出射光量をモニタする場合が多い。具体的には、入射前の光をファイバカップラでタップし、それを光受光素子でモニタし、入射光強度を計測する。また、光可変減衰器からの出射光をファイバカップラでタップし、出射強度をモニタし、出射強度を計測する。そして、入射強度と出射強度との比較において直接減衰量を求めることができる。
【0007】
しかし、このようにして光減衰量をモニタするためには、ファイバタップ2つと、受光素子2つが必要となり、さらに複雑な光配線を光減衰器の前後に配置しなければならないという欠点がある。
【0008】
そこで、本発明では、部品点数が少なく簡易な構成で小型の液晶光学部品及び液晶光学装置、並びにこの液晶光学部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、高分子液晶複合層で散乱する光の一部を受光する構成とし、受光した光に基づいて高分子液晶複合層の透過率を可変することにした。
【0010】
具体的には、本願第一発明に係る液晶光学部品は、液晶粒子が高分子内に分散した高分子液晶複合層と、前記高分子液晶複合層への電圧の印加により前記高分子液晶複合層の光透過率が変化するように前記高分子液晶複合層に設けられた一対の電極と、前記高分子液晶複合層を透過する光のうち、前記一対の電極からの電圧の印加により前記高分子液晶複合層の光透過率が変化する部分で散乱する光の一部を受光する受光部と、前記受光部において受光される光の光量を基に前記一対の電極から前記高分子液晶複合層へ印加する電圧の大きさを可変する電圧制御部と、を備える。これにより、高分子液晶複合層で散乱する光の光量を直接検出でき、受光部品の数を削減することができる。そのため、部品点数が少なく簡易な構成で小型の液晶光学部品を提供することができる。
【0011】
本願第二発明に係る液晶光学装置は、複数波長の光を波長ごとに分離して出力する分波用AWGと、前記分波用AWGから出力される波長ごとの光をそれぞれ透過して出力する高分子内に液晶粒子が分散した高分子液晶複合層と、前記高分子液晶複合層の前記波長ごとの光が透過する部分の前記波長ごとの光に対する光透過率が、前記高分子液晶複合層への電圧の印加により前記波長ごとの光のそれぞれについて変化するように前記高分子液晶複合層に設けられた複数の一対の電極と、前記分波用AWGからの波長ごとの光のうち、前記複数の一対の電極からの電圧の印加により前記高分子液晶複合層の光透過率が変化する部分でそれぞれ散乱する光の一部をそれぞれ受光する受光部と、前記受光部において受光される光の光量を基に前記複数の一対の電極から前記高分子液晶複合層へ印加する電圧の大きさを前記複数の一対の電極ごとにそれぞれ可変する電圧制御部と、前記分波用AWGから前記高分子液晶複合層を透過して出力される波長ごとの光を合波して出力する合波用AWGと、を備える。これにより、部品点数を少なくして消費電力が小さく低損失の液晶光学装置を提供することができる。
【0012】
本願第三発明に係る液晶光学装置は、複数波長の光を波長ごとに分離して出力する分波用AWGと、前記分波用AWGからの波長ごとの光をそれぞれ選択的に分岐して分岐ポートからそれぞれ出力し、前記分波用AWGからの波長ごとの光をそれぞれ選択的に分岐して分岐ポートからそれぞれ出力し、前記分波用AWGからの波長ごとの光をそれぞれ選択的に前記分岐ポートに出力させる分岐機能と前記分岐ポートに出力された光と同一波長の外部光を挿入ポートに分岐と同時に挿入させる機能を持つ光スイッチと、前記光スイッチから選択的に出力された波長ごとの光をそれぞれ透過して出力する高分子内に液晶粒子が分散した高分子液晶複合層と、前記高分子液晶複合層の前記波長ごとの光が透過する部分の前記波長ごとの光に対する光透過率が、前記高分子液晶複合層への電圧の印加により前記波長ごとの光のそれぞれについて変化するように前記高分子液晶複合層に設けられた複数の一対の電極と、前記光スイッチからの波長ごとの光のうち、前記複数の一対の電極からの電圧の印加により前記高分子液晶複合層の光透過率が変化する部分でそれぞれ散乱する光の一部をそれぞれ受光する受光部と、前記受光部において受光される光の光量を基に前記複数の一対の電極から前記高分子液晶複合層へ印加する電圧の大きさを前記複数の一対の電極ごとにそれぞれ可変する電圧制御部と、前記分波用AWGから前記高分子液晶複合層を透過して出力される波長ごとの光を合波して出力する合波用AWGと、を備える。これにより、部品点数を少なくして小型で消費電力が小さく低損失で再配置可能なアドドロップマルチプレクサを提供することができる。
【0013】
本願第四発明に係る液晶光学部品の製造方法は、基板上にレンズファイバを配置し固定するレンズファイバ固定工程と、前記レンズファイバが固定されたファイバ固定基板に前記レンズファイバを横切るように切断する溝を形成する溝形成工程と、前記ファイバ固定基板に形成された溝から露出した前記レンズファイバの向かい合ったそれぞれの端面を覆うように一対の電極を形成する電極形成工程と、高分子内に液晶粒が分散した高分子液晶複合層を前記ファイバ固定基板の溝に形成された前記一対の電極の間に前記高分子液晶複合層の両面が前記一対の電極のそれぞれに接触するように配置する液晶層配置工程と、光を受光する受光部の受光面が前記高分子液晶複合層の前記ファイバ固定基板の溝から出現する側面のうち前記一対の電極に挟まれた部分を向くように前記受光部を前記ファイバ固定基板の溝が形成された側の面上に設ける受光部設置工程と、を備える。溝形成工程を備えることにより、溝によって分断したレンズファイバ間の光軸を予め合わせることができる。これにより、別途の調芯工程を不要とするとともに、調芯精度がよく完成した液晶光学部品の品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、部品点数が少なく簡易な構成で小型の液晶光学部品及び液晶光学装置、並びにこの液晶光学部品に適した製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、具体的に実施形態を示して本願発明を詳細に説明するが、本願の発明は以下の記載に限定して解釈されない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る液晶光学装置の概略構成図である。図1(a)は、上面図で、図1(b)は、側面図である。
【0017】
図1の液晶光学装置10は、図1(a)に示すように、光を伝搬する光ファイバ40a〜40fと、光ファイバ40a〜40fからの光を透過させる際に光減衰量を調整して出力する液晶光学部品42と、液晶光学部品42からの光を受光する受光ファイバ41a〜41fと、を備える。液晶光学部品42は、図1(b)に示すように、液晶粒子が高分子内に分散した高分子液晶複合層43と、高分子液晶複合層43に設けられた一対の電極44,45と、高分子液晶複合層43で散乱する光の一部を受光する受光部46と、受光部46において受光される光の光量を基に高分子液晶複合層43へ印加する電圧の大きさを可変する不図示の電圧制御部と、を備える。
【0018】
光ファイバ40は、ガラス基板51上に形成された不図示のV溝上にアレイ状に配置されている。光ファイバ40の出力端に複数の光ファイバ40ごとに光ファイバ40からの光を集光するマイクロレンズアレイ52を配置する。また、受光ファイバ41の入力端についても受光ファイバごとに光を集光するマイクロレンズアレイ53を配置する。これにより、向かい合ったマイクロレンズアレイ52,53の間にビームウェストを持つコリメートガウシャンビームを形成することができる。ここで、アレイ数は、図1では、8アレイを適用したが、2,16,20のように任意の数を用いることができる。また、アレイではなく、1つの光ファイバであってもよい。
【0019】
高分子液晶複合層43は、本実施形態では、マイクロレンズアレイ52,53の間のビームウェストの位置近傍に配置される。また、網目状の高分子ネットワーク中に直径1μm程度の液晶の連続層が分散されている構成であり、液晶の配向方向がランダム配向となっているため、無電界状態では強い光散乱状態を示す。高分子液晶複合層43を得る方法としては、高分子又は高分子前駆体と液晶の混合物から、液晶を層分離させて得る方法が一般的である。高分子液晶複合層43の表面には、一対の電極44,45を配置している。この一対の電極44,45に電圧を印加すると高分子液晶複合層43内の液晶分子の配向が揃い、光透過状態へ変化することが知られている。これにより、高分子液晶複合層43に、例えば、1kHz交流電圧を印加すると、電圧に応じて光散乱が生じ、受光ファイバ41への光量が減衰する。また、無電界時に光透過状態となるリバースモード型の高分子液晶複合層も知られている。具体的には、紫外線硬化接着剤とネマチック液晶とを混合したものを、後述の透明電極が形成されたガラス板80,81に塗布し、紫外線を照射して硬化させることにより作製した。
【0020】
一対の電極44,45は、高分子液晶複合層43への電圧の印加により高分子液晶複合層43の光透過率が変化するように高分子液晶複合層43に設けられる。本実施形態では、複数の光ファイバ40からの光ごとに光透過率を変えられるように、例えば、光ファイバ40a〜40f(図1(a))の配列間隔と略同じ間隔で縞状に形成するとよい。本実施形態では、2枚のガラス板80,81(図1(b))の片面に、一対の電極44,45として、酸化スズ等の光透過性材料で縞状の透明電極を形成し、高分子液晶複合層43を挟んだ構造としている。この構成で、内側の両透明電極から電極リードを取り出し、交流電圧を印加することで高分子液晶複合層43の散乱状態を制御することができる。
【0021】
受光部46は、高分子液晶複合層43を透過する光のうち、一対の電極44,45からの電圧の印加により高分子液晶複合層43の光透過率が変化する部分で散乱する光の一部を受光する。本実施形態では、高分子液晶複合層43と両側のマイクロレンズアレイ52,53の上部を揃えてフラットにし、高分子液晶複合層43の上部に、高分子液晶複合層43からの散乱光をアレイフォトダイオード82の受光面に集光させるための別のマイクロレンズアレイ(不図示)を配置する。受光部46での受光感度を上げるためにガラス基板51と高分子液晶複合層43の間にミラーを配置することもできる。また、このミラー面はガラス基板51に直接真空蒸着又はスパッタ法で形成することもできる。
【0022】
図2は、高分子液晶複合層43への印加電圧と光の減衰量及び光電流の関係を示している。黒三角で示されるグラフは、高分子液晶複合層43への印加電圧に対する光電流の変化を示し、黒丸で示されるグラフは、高分子液晶複合層43への印加電圧に対する光の減衰量を示している。図2の光電流の印加電圧依存度は、光ファイバ40からの入射光強度1mWのときのものである。
【0023】
図2には高分子液晶複合層への印加電圧と光ファイバ40から光ファイバ41へ伝搬した時の光の減衰量の関係を示す。この曲線は光ファイバ40からの入射光強度に依存せず、一定である。このことから、印加電圧が分かれば、その減衰量を算出することができる。図3に入射強度をパラメータとした光の減衰量とフォトダイオードの光電流の関係を示す。高分子液晶複合層での散乱光は入射光強度に依存し、入射光強度が増加すれば、光電流は増加する。また光の減衰量を大きくすると、高分子液晶複合層からの散乱光は増加する。
【0024】
図2から印加電圧と光の減衰量は入射光強度に依存しないので、図3の光の減衰量を印加電圧に置換して、入射強度をパラメータとしたフォトダイオードの光電流と高分子液晶複合層への印加電圧の関係を求めることができる。これを図4に示す。動作中の素子の印加電圧と光電流から図4の関係を用いて、光ファイバ40への入射光強度を求めることができる。さらに、印加電圧から減衰量が求まるので出射光強度が求まることになる。
【0025】
上記のステップを不揮発メモリを搭載したマイクロコンピュータチップでプログラムし、不揮発メモリに図4の曲線群をルックアップテーブルとして、保存しておくことが好ましい。高精度読み取りのためには製造後にできるだけ細かい入射光のステップで多数の曲線を測定し、それを保存することが好ましい。マイクロコンピュータのプログラムは動作中の可変減衰器から印加電圧と光電流を読み取り、入射光強度と出斜光強度を容易に取得することができる。
【0026】
以上説明したように、図1の液晶光学装置10では、高分子液晶複合層43での光散乱と無散乱状態を利用して通過する光量を可変する機能と、高分子液晶複合層43での散乱状態をモニタするモニタ機能を同時に実現できる。また、高分子液晶複合層43で散乱する光の光量を受光部46で直接検出でき、受光部品の数を削減することができる。そのため、部品点数が少なく簡易な構成で小型の液晶光学部品を提供することができる。
【0027】
(第二実施形態)
図5は、本実施形態に係る液晶光学装置の概略構成図を示す。図5(a)は、上面図を示し、図5(b)は側面図を示す。
【0028】
図5の液晶光学装置11は、複数波長の光を波長ごとに分離して出力する分波用AWG21と、分波用AWG21からの光を透過させる際に波長ごとに光減衰量を調整して出力する液晶光学部品42と、分波用AWG21から液晶光学部品42を介して出力される波長ごとの光を合波して出力する合波用AWG22と、を備える。液晶光学装置11では、分波用AWG21、液晶光学部品42及び合波用AWG22が順にガラス基板51(図5(b))上に配置されている。また、液晶光学装置11の分波用AWG21の入射端及び合波用AWG22の出射端には、光ファイバ47,48がそれぞれ接続されている。
【0029】
液晶光学部品42は、本実施形態では、図1のマイクロアレイレンズ52,53に代えて、レンズファイバをアレイ状に配置したファイバレンズアレイ55,56を適用している。レンズファイバは、屈折率が中心軸から周辺方向に変化しているファイバでファイバ端面から入出力される光に対してレンズ機能のあるファイバである。高分子液晶複合層43の上部は、フラットであり、この上部に集光用マイクロレンズアレイ57を配置し、その上に、フォトダイオードをアレイ状に配置したフォトダイオードアレイ58を配置する。アレイ数は分波する波長数分用意する。例えば、1.55μm帯で40チャンネルの波長であれば、40となる。フォトダイオードアレイ58の光電流と減衰器の印加電圧から出射光量をモニタすることができる。波長ブロッカとしての動作としては、各波長の光減衰ユニットの電圧をその波長の光が十分に消光するように可変させることで任意の波長の光をブロックした波長多重光を光ファイバ48から取り出すことができる。印加電圧11Vrmsで挿入損失は0.5dB、消光比は37.5dBが得られた。
【0030】
以上説明したように、液晶光学部品42の両側に分波用AWG21と合波用AWG22を接続すると、液晶光学装置11として、波長ブロッカ又は波長チャンネルイコライザが構成できる。波長チャンネルイコライザとしての動作としては、各波長の液晶光学部品42の高分子液晶複合層43への印加電圧を調節して、各波長の出射光強度を一定のレベルに揃えることができる。受光部であるフォトダイオードアレイ58によるモニタ付きであるため、余分なモニタ装置を必要とせず、液晶を用いているため小型化、低消費電力が実現される。また、液晶光学部品42の部品点数を少なくできるため、小型で低損失の液晶光学装置11を提供することができる。
【0031】
ここで、図5の液晶光学部品の製造方法について説明する。
【0032】
図6及び図7は、液晶光学部品の製造方法の各工程の概略を示した図である。図6(a)〜(c)は、液晶光学部品を製造する各工程の斜視図を示し、図7(a)〜(d)は、液晶光学部品を製造する各工程の側面図を示している。
【0033】
(レンズファイバ固定工程)
まず、基板上にレンズファイバを配置し固定する。本実施形態では、図6(a)に示すように、直径125μmの低NAのGRIN(Graded Index)レンズファイバ71をガラスV溝基板61にピッチ0.25mmで配列させる。GRINレンズファイバとは、円柱状のレンズファイバの中心軸から周辺方向に屈折率が徐々に小さくなるファイバである。ここではコリメート光を得るためにGRINレンズファイバ71のNA(開口数)は0.16とした。配列数としては、例えば、1,2,4,8,16,20又は40があるが、この数量は任意である。図6(a)では、配列数が8の場合を示している。GRINレンズファイバ71を配列させた後にガラス上蓋62を被せ、紫外線効果樹脂で接着させる。ガラスV溝基板61及びガラス上蓋62の各ガラスは、耐熱強化ガラスとした。また、各ガラスの大きさは、図6(a)に示す8アレイでは、幅2.5mm、長さ50mm、厚さ1.5mmとした。
【0034】
(溝形成工程)
次に、GRINレンズファイバ71が固定されたファイバ固定基板にGRINレンズファイバ71を横切るように切断する溝を形成する。本実施形態では、図6(b)に示すように、ダイシングソー63で幅0.25mm、深さ0.25mmの溝74をピッチ1.3mmで形成する。溝74の方向はGRINレンズファイバ71の光伝搬方向に直角である。ダイシングソー63による溝74の本数は40本とした。このように、溝形成工程を備えることにより、溝74によって分断したGRINレンズファイバ71間の光軸を予め合わせた状態にすることができる。これにより、別途の調芯工程を不要とするとともに、調芯精度がよく完成した液晶光学部品の品質を向上させることができる。
【0035】
(マスク形成工程)
後述の電極形成工程において電極を分離させるため、電極を形成しない部分にマスクを施す。マスクは、例えば、フォトリソグラフィーにより形成されるレジスト膜を適用することができる。本実施形態では、図6(c)に示すように、溝74から露出するGRINレンズファイバ71の一方の端面76を共通電極とするため、GRINレンズファイバ71の他方の端面77の側にのみマスク78を形成する。
【0036】
(電極形成工程)
次に、図7(a)に示すように、溝が形成されたファイバ固定基板73を斜め45度傾けて、酸化スズ等の光透過性材料で透明電極79aをスパッタ法又は真空蒸着法で形成した。なお、図7(a)(b)では、ターゲット64から点線矢印の方向に飛ばされた金属原子をファイバ固定基板73に付着させて透明電極を形成する概略図を示している。これにより、透明電極79aは、溝74の底部91と、斜め45度に傾けて下部なった溝74の側面75aには付着せず、上面92と、斜め45度に傾けて上部なった溝74の側面75bに形成される。次に、図7(b)に示すように、ファイバ固定基板73を逆に斜め45度傾けて同様に透明電極79bを形成した。これにより、底部91のみ透明電極が形成されない両面レンズ及び溝付きファイバ固定基板73を作製できる。このファイバ固定基板73では、GRINレンズファイバ71の端面77に形成された透明電極79bについて隣接レンズ間が分離されている。図7(c)に示すように、このファイバ固定基板73の各溝74を中心に1.3mmピッチで切断すると、レンズ長各0.5mmの両端レンズ及び溝付きファイバ固定基板73が作製できる(図7(d))。
【0037】
(素子配置工程)
次に、図5(b)のガラス基板51を準備し、分波用AWG21、作製したファイバ固定基板73(図7(d))及び合波用AWG22を順に配置する。分波用AWG21の各波長チャネルの出力導波路のピッチを0.25mmとした。ファイバ固定基板73の隣接レンズ間隔も同様に0.25mmピッチすることで容易に光結合が可能となる。ピッチ精度はガラスV溝基板61の高精度ピッチを利用するので、結合損失を小さくすることができる。また、合波用AWG22の入力導波路についても、コアピッチ0.25mmとした。調芯固定は分波用AWG21の入力ファイバから波長1.55μm帯の中心、両端の波長の光を入力し、結合最大となるところに調芯し、紫外線硬化接着剤で接着固定した。
【0038】
(配線工程)
ファイバ固定基板73(図7(d))の透明電極79a,79bと分波用AWG21及び合波用AWG22(図5)の各平面光導波路回路(PLC)の上面に配線された金属配線パターンの間をワイヤボンドで接続した。分離されている電極パターンはそれぞれワイヤボンドされ、接着剤で全体が固定保護された。
【0039】
(液晶層配置工程と受光部設置工程)
次に、高分子液晶複合層をファイバ固定基板73の溝74に形成された透明電極79a,79bの間に高分子液晶複合層の両面が透明電極79a,79bのそれぞれに接触するように配置する。そして、受光部の受光面が高分子液晶複合層のファイバ固定基板73の溝74から出現する側面のうち透明電極79a,79bに挟まれた部分を向くように受光部をファイバ固定基板73の溝74が形成された側の面上に設ける。本実施形態では、ファイバ固定基板73の溝74にネマチック液晶と紫外線硬化樹脂を混合した液体を塗布し、紫外線を照射して高分子液晶複合層を形成させる。次に、この上に、小型のGRINレンズをアレイ状に配置した集光用のマイクロGRINレンズアレイを被せて、紫外線を照射して、集光用マイクロGRINレンズアレイを接着固定した。GRINレンズとは、円柱状のレンズの中心軸から周辺方向に屈折率が徐々に小さくなるレンズである。マイクロGRINレンズアレイの上にパッケージ化されたフォトダイオードアレイを載せて接着固定した。パッケージ底部にはフォトダイオードからの電流の取り出しのためのフレキシブル基板が取り付けられる。
【0040】
(第三実施形態)
図8は、本実施形態に係る液晶光学装置の概略構成図である。
【0041】
図8の液晶光学装置12は、複数波長の光を波長ごとに分離して出力する分波用AWG21と、分波用AWG21からの波長ごとの光及び外部から入力された光を選択的に分離して出力する光スイッチ23と、光スイッチ23からの光を透過させる際に波長ごとに光減衰量を調整して出力する液晶光学部品42と、分波用AWG21から光スイッチ23及び液晶光学部品42を介して出力される波長ごとの光を合波して出力する合波用AWG22と、を備える。本実施形態に係る液晶光学装置12は、図5で説明した液晶光学装置11の分波用AWG21と液晶光学部品42との間に後述の光スイッチ23を配置した形態である。
【0042】
光スイッチ23は、分波用AWG21からの波長ごとの光をそれぞれ選択的に分岐して分岐ポート26からそれぞれ出力する。また、分波用AWG21からの波長ごとの光にそれぞれ対応して挿入ポート25から挿入される複数波長の光と分波用AWG21からの波長ごとの光とのいずれかを分波用AWG21からの波長ごとの光のそれぞれについて選択的に出力する。本実施形態では、光スイッチ23として、2×2の光スイッチ24をアレイ状に配置した光スイッチアレイPLCを配置している。これにより、再配置可能なアドドロップマルチプレクサ(ROADM)を構成することができる。なお、液晶光学装置12からの光は、アド及びドロップ端子29との間で入出力される。
【0043】
液晶光学装置12は、液晶光学部品42のみの挿入損失は0.5dB、消光比は37.5dBであった。図8の液晶光学装置12では、小型低消費電力且つ低損失のモニタ付きRODAMが構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の液晶光学部品及び液晶光学装置は、液晶光学部品において複数波長の光を波長毎に光の減衰量を調整できるため、光波長多重通信ネットワーク実現の際の波長多重用の光合分波回路や再配置型のadd−drop波長多重回路として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】一実施形態に係る液晶光学装置を示した概略構成図である。
【図2】高分子液晶複合層への印加電圧と光ファイバから光ファイバへ伝搬した時の光の減衰量の関係を示した図である。
【図3】入射強度をパラメータとした光の減衰量とフォトダイオードの光電流の関係を示す図である。
【図4】入射強度をパラメータとしたフォトダイオードの光電流と高分子液晶複合層への印加電圧の関係を示す図である。
【図5】一実施形態に係る液晶光学装置を示した概略構成図である。
【図6】一実施形態に係る液晶光学部品の製造方法の各工程の概略を示した斜視図である。
【図7】一実施形態に係る液晶光学部品の製造方法の各工程の概略を示した側面図である。
【図8】一実施形態に係る液晶光学装置を示した概略構成図である。
【符号の説明】
【0046】
10,11,12:液晶光学装置
21:分波用AWG
22:合波用AWG
23,24:光スイッチ
25:挿入ポート
26:分岐ポート
29:アド及びドロップ端子
40,40a〜40f:光ファイバ
41,41a〜41f:受光ファイバ
42:液晶光学部品
43:高分子液晶複合層
44,45:電極
46:受光部
47,48:光ファイバ
51:ガラス基板
52,52a〜52f,53,53a〜53f:マイクロレンズアレイ
55,56:ファイバレンズアレイ
57:集光用マイクロレンズアレイ
58:フォトダイオードアレイ
61:ガラスV溝基板
62:ガラス上蓋
63:ダイシングソー
64:ターゲット
71:GRINレンズファイバ
73:ファイバ固定基板
74:溝
75a,75b:側面
76,77:端面
78:マスク
79a,79b:透明電極
80,81:ガラス板
82:アレイフォトダイオード
91:底部
92:上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶粒子が高分子内に分散した高分子液晶複合層と、
前記高分子液晶複合層への電圧の印加により前記高分子液晶複合層の光透過率が変化するように前記高分子液晶複合層に設けられた一対の電極と、
前記高分子液晶複合層を透過する光のうち、前記一対の電極からの電圧の印加により前記高分子液晶複合層の光透過率が変化する部分で散乱する光の一部を受光する受光部と、
前記受光部において受光される光の光量を基に前記一対の電極から前記高分子液晶複合層へ印加する電圧の大きさを可変する電圧制御部と、
を備える液晶光学部品。
【請求項2】
複数波長の光を波長ごとに分離して出力する分波用AWGと、
前記分波用AWGから出力される波長ごとの光をそれぞれ透過して出力する高分子内に液晶粒子が分散した高分子液晶複合層と、
前記高分子液晶複合層の前記波長ごとの光が透過する部分の前記波長ごとの光に対する光透過率が、前記高分子液晶複合層への電圧の印加により前記波長ごとの光のそれぞれについて変化するように前記高分子液晶複合層に設けられた複数の一対の電極と、
前記分波用AWGからの波長ごとの光のうち、前記複数の一対の電極からの電圧の印加により前記高分子液晶複合層の光透過率が変化する部分でそれぞれ散乱する光の一部をそれぞれ受光する受光部と、
前記受光部において受光される光の光量を基に前記複数の一対の電極から前記高分子液晶複合層へ印加する電圧の大きさを前記複数の一対の電極ごとにそれぞれ可変する電圧制御部と、
前記分波用AWGから前記高分子液晶複合層を透過して出力される波長ごとの光を合波して出力する合波用AWGと、
を備える液晶光学装置。
【請求項3】
複数波長の光を波長ごとに分離して出力する分波用AWGと、
前記分波用AWGからの波長ごとの光をそれぞれ選択的に分岐して分岐ポートからそれぞれ出力し、前記分波用AWGからの波長ごとの光をそれぞれ選択的に前記分岐ポートに出力させる分岐機能と前記分岐ポートに出力された光と同一波長の外部光を挿入ポートに分岐と同時に挿入させる機能を持つ光スイッチと、
前記光スイッチから選択的に出力された波長ごとの光をそれぞれ透過して出力する高分子内に液晶粒子が分散した高分子液晶複合層と、
前記高分子液晶複合層の前記波長ごとの光が透過する部分の前記波長ごとの光に対する光透過率が、前記高分子液晶複合層への電圧の印加により前記波長ごとの光のそれぞれについて変化するように前記高分子液晶複合層に設けられた複数の一対の電極と、
前記からの波長ごとの光のうち、前記複数の一対の電極からの電圧の印加により前記高分子液晶複合層の光透過率が変化する部分でそれぞれ散乱する光の一部をそれぞれ受光する受光部と、
前記受光部において受光される光の光量を基に前記複数の一対の電極から前記高分子液晶複合層へ印加する電圧の大きさを前記複数の一対の電極ごとにそれぞれ可変する電圧制御部と、
前記分波用AWGから前記高分子液晶複合層を透過して出力される波長ごとの光を合波して出力する合波用AWGと、
を備える液晶光学装置。
【請求項4】
基板上にレンズファイバを配置し固定するレンズファイバ固定工程と、
前記レンズファイバが固定されたファイバ固定基板に前記レンズファイバを横切るように切断する溝を形成する溝形成工程と、
前記ファイバ固定基板に形成された溝から露出した前記レンズファイバの向かい合ったそれぞれの端面を覆うように一対の電極を形成する電極形成工程と、
高分子内に液晶粒が分散した高分子液晶複合層を前記ファイバ固定基板の溝に形成された前記一対の電極の間に前記高分子液晶複合層の両面が前記一対の電極のそれぞれに接触するように配置する液晶層配置工程と、
光を受光する受光部の受光面が前記高分子液晶複合層の前記ファイバ固定基板の溝から出現する側面のうち前記一対の電極に挟まれた部分を向くように前記受光部を前記ファイバ固定基板の溝が形成された側の面上に設ける受光部設置工程と、
を備える液晶光学部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−268472(P2008−268472A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110198(P2007−110198)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】