説明

無線タグ通信装置

【課題】 無線タグとの間の通信指向性を通信目的に応じて適宜設定し得る無線タグ通信装置を提供する。
【解決手段】 複数のアンテナ素子34を有すると共に、無線タグ14との間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子34相互間の間隔を変更し得るアレイアンテナ36と、そのアレイアンテナ36におけるアンテナ素子34相互間の間隔に応じてそれらアンテナ素子34に対応する信号それぞれの少なくとも位相を変化させるためのウェイトを設定することで無線タグ14との間の通信指向性を制御するPAAウェイト制御部48とを、備えていることから、無線タグ14との間の通信に関与するアンテナ素子34相互間の間隔を変更することで指向性特性を任意に制御できることに加え、その間隔に応じて所定のウェイトを設定することで通信指向性を好適に定めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線にて情報の書き込みや読み出しができる無線タグとの間で通信を行う無線タグ通信装置に関し、特に、通信指向性制御の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の情報が記憶された小型の無線タグ(応答器)から所定の無線タグ通信装置(質問器)により非接触にて情報の読み出しを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。このRFIDシステムは、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても無線タグ通信装置との通信によりその無線タグに記憶された情報を読み出すことが可能であることから、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
上記無線タグ通信装置をはじめとする通信装置では、通信感度を高めるために通信指向性の制御が行われることが多く、斯かる通信指向性を好適に制御するための種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載されたレーダ装置の指向性制御がそれである。この技術によれば、複数のアンテナ素子を備えてフェイズドアレイ制御を行うアレイアンテナにおいて、それら複数のアンテナ素子のうち通信に用いるアンテナ素子を選択的に切り換えてアンテナ素子の相互間隔を変更することで指向性特性を制御することができ、最大距離及び最大感度を低下させることなく、検索すべき全領域に対して受信感度を適合させることができるとされている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−174823号公報
【0005】
しかし、前記従来の技術では、前記無線タグとの間の通信指向性を好適に定めることは困難であった。すなわち、RFIDにおいてアレイアンテナを構成する複数のアンテナ素子間隔は一般に搬送波の波長の1/2乃至1倍程度とされ、その間隔が広いほどメインローブ(通信感度を最大とする放射パターン)は鋭くなるが、そのようにすることでグレーティングローブ(不要放射パターン)が発生する可能性があり、また、アンテナを大型化する必要が生じるといった弊害がある。更に、アンテナ素子の相互間隔を変更した場合には、各素子に対応して乗算する係数(ウェイト)をも変更しなければならないが、このウェイトの設定を好適に行い得る技術はなかった。一般にRFIDでは、通信目的に応じて前記無線タグとの通信指向性を適宜設定することが所望されるため、斯かる制御を実現する無線タグ通信装置の開発が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、無線タグとの間の通信指向性を通信目的に応じて適宜設定し得る無線タグ通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、前記無線タグに向けて送信信号を送信すると共に、その送信信号に応じてその無線タグから返信される返信信号を受信してその無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置であって、複数のアンテナ素子を有すると共に、前記無線タグとの間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を変更し得るアレイアンテナと、そのアレイアンテナにおける前記アンテナ素子相互間の間隔に応じてそれらアンテナ素子に対応する信号それぞれの少なくとも位相を変化させるためのウェイトを設定することで前記無線タグとの間の通信指向性を制御する指向性制御部とを、備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
このようにすれば、複数のアンテナ素子を有すると共に、前記無線タグとの間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を変更し得るアレイアンテナと、そのアレイアンテナにおける前記アンテナ素子相互間の間隔に応じてそれらアンテナ素子に対応する信号それぞれの少なくとも位相を変化させるためのウェイトを設定することで前記無線タグとの間の通信指向性を制御する指向性制御部とを、備えていることから、前記無線タグとの間の通信に関与するアンテナ素子相互間の間隔を変更することで指向性特性を任意に制御できることに加え、その間隔に応じて所定のウェイトを設定することで通信指向性を好適に定めることができる。すなわち、無線タグとの間の通信指向性を通信目的に応じて適宜設定し得る無線タグ通信装置を提供することができる。
【0009】
ここで、好適には、前記アンテナ素子相互間間隔毎に予め定められた複数組のウェイトテーブルを記憶する記憶部を備え、前記指向性制御部は、その記憶部に記憶された複数組のウェイトテーブルのうち前記アンテナ素子相互間間隔に応じて何れか1組のウェイトテーブルを読出して設定するものである。このようにすれば、前記無線タグとの間の通信に関与するアンテナ素子相互間の間隔に適合するウェイトを実用的な態様で設定できる。
【0010】
また、好適には、前記指向性制御部は、前記指向性制御部は、前記無線タグとの間の通信におけるメインローブを所望のビーム幅とするために前記通信指向性を制御するものである。このようにすれば、前記無線タグとの間の通信におけるメインローブのビーム幅を好適に制御できる。
【0011】
また、好適には、前記アレイアンテナは、前記無線タグとの間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を機械的に変更し得るものである。このようにすれば、例えば手動のつまみ等により前記無線タグとの間の通信に関与するアンテナ素子相互間の間隔を実用的な態様で変更できる。
【0012】
また、好適には、前記無線タグとの間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を機械的に変更するための動力発生機及び動力伝達装置を備えたものである。このようにすれば、例えば電動モータ等を用いて前記無線タグとの間の通信に関与するアンテナ素子相互間の間隔を実用的な態様で変更できる。
【0013】
また、好適には、前記無線タグとの間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を検出する検出装置を備えたものである。このようにすれば、その検出装置により検出される間隔に応じて前記指向性制御部により実用的な態様で前記無線タグとの間の通信指向性を制御できる。
【0014】
また、好適には、前記アレイアンテナは、3つ以上のアンテナ素子を有するものであり、それらのアンテナ素子のうち前記無線タグとの間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子を選択するアンテナ選択部を備えたものである。このようにすれば、前記無線タグとの間の通信に関与するアンテナ素子相互間の間隔を実用的な態様で変更できる。
【0015】
また、好適には、前記アレイアンテナは、前記無線タグに送信信号を送信するために用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を変更し得るものであり、前記指向性制御部は、前記アレイアンテナにおける前記アンテナ素子相互間の間隔に応じて所定の送信ウェイトを設定するものである。このようにすれば、前記無線タグとの間の通信における送信指向性を好適に制御できる。
【0016】
また、好適には、前記アレイアンテナは、前記無線タグから返信される受信信号を受信するために用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を変更し得るものであり、前記指向性制御部は、前記アレイアンテナにおける前記アンテナ素子相互間の間隔に応じて所定の受信ウェイトを設定するものである。このようにすれば、前記無線タグとの間の通信における受信指向性を好適に制御できる。
【0017】
また、好適には、前記アンテナ素子相互間の間隔が所定値未満である場合には、前記指向性制御部により指向性を変化させつつ前記無線タグとの間の通信を行い、前記アンテナ素子相互間の間隔が所定値以上である場合には、前記指向性制御部により設定される指向性を固定して前記無線タグとの間の通信を行うものである。このようにすれば、前記アンテナ素子相互間の間隔に対応する指向性特性に応じて好適な態様で前記無線タグとの間の通信を行うことができる。
【0018】
また、好適には、前記複数のアンテナ素子は、前記無線タグに向けて送信信号を送信すると共に、その送信信号に応じてその無線タグから返信される返信信号を受信するために用いられる送受信共用のアンテナ素子である。このようにすれば、前記アレイアンテナの構成を可及的に簡単にできることに加え、前記無線タグとの間の通信における送信指向性及び受信指向性を好適に制御できる。
【0019】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の無線タグ通信装置が好適に用いられる無線タグ通信システム10について説明する図である。この無線タグ通信システム10は、本発明の一実施例である無線タグ通信装置12と、その無線タグ通信装置12の通信対象である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ14とから構成される所謂RFID(Radio Frequency Identification)システムであり、上記無線タグ通信装置12はそのRFIDシステムの質問器として、上記無線タグ14は応答器としてそれぞれ機能する。すなわち、上記無線タグ通信装置12から質問波F(送信信号)が上記無線タグ14に向けて送信されると、その質問波Fを受信した上記無線タグ14において所定の情報信号(データ)によりその質問波Fが変調され、応答波F(返信信号)として上記無線タグ通信装置12に向けて返信されることで、その無線タグ通信装置12と無線タグ14との間で情報の通信が行われる。この無線タグ通信システム10は、例えば、所定の通信領域内における物品の管理等に用いられるものであり、上記無線タグ14は、好適には、管理対象である物品に貼られる等してその物品と一体的に設けられている。また、上記無線タグ通信装置12は、好適には、管理対象である物品等に対して相対移動可能に設けられた携帯式装置であり、上記無線タグ14の検出に際して利用者は上記無線タグ通信装置12を携帯し、その無線タグ通信装置12の表示部22に表示される画面を参照しながら上記無線タグ14の検出を行う。
【0021】
図2は、前記無線タグ通信装置12の外観を説明する平面図であり、図3は、図2を矢印IIIの方向から見た背面図である。これらの図2及び図3に示すように、前記無線タグ通信装置12は、所定の厚みを有する平板状の本体ユニット16と、その本体ユニット16の側部に設けられたアンテナユニット18とから成る。この本体ユニット16は、所定の厚みを有する平板状の筐体20と、その筐体20の平面部に設けられた表示部22と、上記筐体20の平面部における表示部22の側方に設けられた操作部24と、上記筐体20の平面部における表示部22の側方にスピーカを有する音声出力部26とを、備えて構成されている。
【0022】
上記表示部22は、前記無線タグ14との通信に関する種々の情報を示す映像(画像)を表示させるための映像表示装置であり、液晶ディスプレイパネル等が好適に用いられる。また、上記操作部24は、所定のキー、ボタン、スイッチ、或いはパッド等の入力装置を備えており、それらの入力装置によって上記表示部22の表示や無線タグ14の検出に係わる様々な操作を行い得るようになっている。また、上記音声出力部26は、前記無線タグ14との通信に関する種々の発信音を出力させるための音声発生装置であり、ブザー、アラーム、或いはチャイムスピーカ等が好適に用いられる。
【0023】
前記アンテナユニット18は、前記筐体20と一体的に設けられたユニット基部28と、そのユニット基部28から左右に張り出すように設けられると共にそのユニット基部28からの伸長寸法を変更し得る左右一対の支持アーム30a、30b(以下、特に区別しない場合には単に支持アーム30と称する)と、それら支持アーム30のユニット基部28からの伸長寸法を変更するための調節つまみ32と、上記ユニット基部28の中央部及び一対の支持アーム30それぞれにおけるユニット基部28とは反対側の端部に互いに平行となるように立設された複数(図2及び3では3本)のアンテナ素子34a、34b、34c(以下、特に区別しない場合には単にアンテナ素子34と称する)とを、備えて構成されている。これら複数のアンテナ素子34は、前記無線タグ14に向けて送信信号を送信すると共に、その送信信号に応じてその無線タグ14から返信される返信信号を受信するために用いられる送受信共用のアンテナ素子であり、上記3本のアンテナ素子34a、34b、34cによりアレイアンテナ36が構成されている。また、図8乃至図10を用いて後述するように、上記調節つまみ32による支持アーム30の伸長寸法を変更する操作では、中央のアンテナ素子34aに対するアンテナ素子34b及び34cの距離が常に等しくなるように、すなわちアンテナ素子34a、34b相互間の間隔と、アンテナ素子34a、34c相互間の間隔とが常に等しくなるように構成されている。また、好適には、上記ユニット基部28は、図示しない所定の係止具を備えており、その係止具が前記本体ユニット16の所定部位に設けられた図示しない係止部と係合させられることにより、その本体ユニット16に対して着脱可能とされている。
【0024】
図4は、前記無線タグ通信装置12の構成を説明する図である。この図4に示すように、前記無線タグ通信装置12は、前記無線タグ14への送信信号に対応するコマンドビット列を生成するコマンドビット列生成部38と、そのコマンドビット列生成部38から出力されたディジタル信号をFSK方式で符号化するFSK符号化部40と、そのFSK符号化部40により符号化された信号をAM方式で変調して送信メモリ部44に供給(記憶)するAM変調部42と、その送信メモリ部44に記憶された送信信号を随時読み出して所定の送信ウェイト(送信PAAウェイト)を掛算する送信PAA(Phased Array Antenna)処理部である送信ウェイト掛算部46と、その送信ウェイト掛算部46において掛算される送信ウェイト及び後述する受信ウェイト掛算部56において掛算される受信ウェイトを制御(算出)するPAAウェイト制御部48とを、備えている。また、予め定められた複数組のウェイトを記憶する記憶部(レジスタ)であるウェイトメモリ部49を備えており、上記PAAウェイト制御部48は、好適には、そのウェイトメモリ部49に記憶された複数組のウェイトのうち何れかのウェイトを読み出して設定することにより前記無線タグ14との通信指向性を制御する指向性制御部として機能する。
【0025】
また、所定の局発信号を出力する局部発振器50と、その局部発振器50から出力される局発信号に応じて上記送信ウェイト掛算部46から出力される送信信号をアップコンバートして出力すると共に、上記局部発振器50から出力される局発信号に応じて上記複数のアンテナ素子34によりそれぞれ受信される受信信号をダウンコンバートして受信メモリ部54に供給(記憶)する複数(図4では3つ)の高周波送受信部52a、52b、52c(以下、特に区別しない場合には単に高周波送受信部52と称する)とを、備えている。
【0026】
また、上記受信メモリ部54に記憶された受信信号を随時読み出して前記PAAウェイト制御部48から供給される所定の受信ウェイト(受信PAAウェイト)を掛算する受信PAA処理部である受信ウェイト掛算部56と、その受信ウェイト掛算部56から出力される受信信号をAM方式で復調してAM復調波を検出するAM復調部58と、そのAM復調部58により復調されたAM復調波をFSK方式で復号するFSK復号部60と、そのFSK復号部60により復号された復号信号を解釈して前記無線タグ14の変調に関する情報信号を読み出す返答ビット列解釈部62とを、備えている。また、図10を用いて後述するように、前記アンテナユニット18には、前記複数のアンテナ素子34のうち少なくとも1つのアンテナ素子34の位置を検出するための素子位置センサ64が設けられており、前記無線タグ通信装置12は、斯かる素子位置センサ64による検出結果に応じて前記複数のアンテナ素子34相互間の間隔を検出する素子間隔検出部66を機能的に備えている。
【0027】
図5は、前記送信ウェイト掛算部46の構成を詳しく説明する図である。この図5に示すように、前記送信ウェイト掛算部46は、前記送信メモリ部44から読み出される送信信号に前記PAAウェイト制御部48から供給される送信PAAウェイトをそれぞれ掛け合わせて各高周波送受信部52に供給する複数(図5では3つ)の掛算器68a、68b、68c(以下、特に区別しない場合には単に掛算器68と称する)を備えている。ここで、上記掛算器68aが高周波送受信部52aに、掛算器68bが高周波送受信部52bに、掛算器68cが高周波送受信部52cに、それぞれ対応しており、各掛算器68からの出力が対応する高周波送受信部52に供給されるようになっている。
【0028】
図6は、前記高周波送受信部52の構成を詳しく説明する図である。この図6に示すように、前記高周波送受信部52は、前記送信ウェイト掛算部46から供給される送信信号をアナログ信号に変換する送信信号D/A変換器70と、その送信信号D/A変換器70によりアナログ変換された送信信号のうち必要な周波数帯域だけを取り出す送信信号バンドパスフィルタ71と、送信信号バンドパスフィルタ71で取り出された信号の周波数を前記局部発振器50から出力される局発信号の周波数だけ高くするアップコンバータ72と、そのアップコンバータ72によりアップコンバートされた送信信号を増幅する送信信号増幅器74と、その送信信号増幅器74から出力される送信信号を高周波バンドパスフィルタ77を介して対応するアンテナ素子34に供給すると共に、そのアンテナ素子34から供給される受信信号を高周波信号バンドパスフィルタ77を介して受信信号増幅部78に供給する方向性結合器76と、その方向性結合器76から供給される受信信号を増幅する受信信号増幅器78と、その受信信号増幅器78から出力される受信信号の周波数を前記局部発振器50から出力される局発信号の周波数だけ低くするダウンコンバータ80と、そのダウンコンバータ80によりダウンコンバートされた受信信号のうち必要な周波数帯域だけ取り出す受信信号バンドパスフィルタ81と、受信信号バンドパスフィルタ81で取り出された信号をディジタル信号に変換して前記受信メモリ部54に供給する受信信号A/D変換器82とを、備えている。
【0029】
図7は、前記受信ウェイト掛算部56の構成を詳しく説明する図である。この図7に示すように、前記受信ウェイト掛算部56は、前記受信メモリ部54から読み出される受信信号それぞれに前記PAAウェイト制御部48から供給される所定の受信PAAウェイトを掛け合わせる複数(図7では3つ)の掛算器84a、84b、84c(以下、特に区別しない場合には単に掛算器84と称する)と、それら掛算器84から出力される信号を合成して前記AM復調部58に供給する合成器86とを、備えている。ここで、上記掛算器84aが高周波送受信部52aに、掛算器84bが高周波送受信部52bに、掛算器84cが高周波送受信部52cに、それぞれ対応している。
【0030】
図8は、前記無線タグ14に備えられた無線タグ回路素子88の構成を説明する図である。この図8に示すように、上記無線タグ回路素子88は、前記無線タグ通信装置12との間で信号の送受信を行うためのアンテナ部90と、そのアンテナ部90により受信された信号を処理するためのIC回路部92とを、備えて構成されている。そのIC回路部92は、上記アンテナ部90により受信された前記無線タグ通信装置12からの質問波Fを整流する整流部94と、その整流部94により整流された質問波Fのエネルギを蓄積するための電源部96と、上記アンテナ部90により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部104に供給するクロック抽出部98と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部100と、上記アンテナ部90に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部102と、上記整流部94、クロック抽出部98、及び変復調部102等を介して前記無線タグ回路素子88の作動を制御するための制御部104とを、機能的に含んでいる。この制御部104は、前記無線タグ通信装置12と通信を行うことにより上記メモリ部100に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ部90により受信された質問波Fを上記変復調部102において上記メモリ部100に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波Fとして上記アンテナ部90から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0031】
図9及び図10は、前記無線タグ通信装置12のアンテナユニット18におけるアンテナ素子34相互間の間隔の変更について説明する図である。前述したように、前記アンテナユニット18は、前記調節つまみ32を回すことで前記一対の支持アーム30a、30bの前記ユニット基部28からの伸長寸法を変更し得るように構成されている。前記複数のアンテナ素子34a、34b、34cは、前記ユニット基部28の中央部及び一対の支持アーム30それぞれにおけるユニット基部28とは反対側の端部に互いに平行となるように立設されていることから、上記操作により前記一対の支持アーム30a、30bの前記ユニット基部28からの伸長寸法が変更されることで、前記複数のアンテナ素子34相互間の間隔が機械的に変更されるようになっており、後述する図11に示すような歯車装置106により、図9に示すように素子間隔が前記質問波Fの波長の1倍とされる状態、図9の状態と図10の状態の間である素子間隔が前記質問波Fの波長の3/4倍とされる状態、及び図10に示すように素子間隔が前記質問波Fの波長の1/2倍とされる状態のうち何れかに切り換えられるように構成されている。
【0032】
図11は、図9に示すアンテナユニット18において一点鎖線で囲んで示す部分の内部構成を拡大して詳しく説明する部分断面図であり、前記一対の支持アーム30a、30bの前記ユニット基部28からの伸長寸法(突き出し量)を変更するための歯車装置106を示している。前記ユニット基部28は、その内部の空間に上記歯車装置106を収容すると共に前記一対の支持アーム30a、30bをそのユニット基部28からの伸長寸法変更可能に収めている。すなわち、前記一対の支持アーム30a、30bは、前記ユニット基部28に対してそれぞれの軸心方向に摺動可能に嵌め入れられている。また、図11に示すように、前記一対の支持アーム30a、30bそれぞれにおける側部(互いに対向する側面部)には、歯車噛み合い用の歯車溝108が支持アーム30a、30bそれぞれの長手方向に連続して直線状に掘設されている。また、中央歯車110が前記調節つまみ32と一体的にその調節つまみ32に対する相対回転不能且つ前記ユニット基部28に対する軸心まわりの自転可能に設けられている。そして、前記支持アーム30に設けられた歯車溝108と中央歯車110との間に第1歯車112及び第2歯車114が前記ユニット基部28に対する軸心まわりの自転可能に設けられることで、それら第1歯車112及び第2歯車114を介して前記歯車溝108と中央歯車110とが噛み合わされている。
【0033】
以上のように構成された歯車装置106において、前記調節つまみ32が矢印で示す方向に回転操作されると、その調節つまみ32と相対回転不能に設けられた中央歯車110が同方向に自転させられ、それに伴って上記第1歯車112及び第2歯車114が軸心まわりに自転させられることで、前記支持アーム30a、30bが矢印で示す方向に駆動される。また、前記調節つまみ32が矢印で示す方向と逆方向に回転操作された場合には、前記支持アーム30a、30bは矢印で示す方向と逆方向に駆動される。このような機構により、前記調節つまみ32の回転に伴って前記一対の支持アーム30が前記ユニット基部28から同じ長さ寸法だけ突き出され(或いは引き込まされ)、前記中央のアンテナ素子34aに対するアンテナ素子34b及び34cの距離が変更される。
【0034】
また、図11に示すように、前記ユニット基部28には、前記一対の支持アーム30のうち少なくとも一方に対応して素子間隔合わせのための凹部116がその支持アーム30に対向する部分に掘設されており、前記ユニット基部28からの支持アーム30の伸長寸法が所定長となったときにその支持アーム30に設けられた板ばね等の突出部118が突出して前記凹部116に嵌り込むことにより、その支持アーム30の位置が定まるように構成されている。この凹部116は、好適には、前記アンテナ素子34相互間の間隔が前記質問波Fの波長の1倍、3/4倍、1/2倍となる前記一対の支持アーム30a、30bの前記ユニット基部28からの伸長寸法に対応する位置にそれぞれ設けられており、前記調節つまみ32を手動操作する場合に前記アンテナ素子34相互間の間隔を好適に定め得るようになっている。また、好適には、上記凹部116にはスイッチ等のセンサ装置が設けられており、前記支持アーム30の突出部118が嵌り込むことによりその支持アーム30の前記ユニット基部28からの伸長寸法、延いては前記アンテナ素子34b又は34cの位置を検出するための素子位置センサ64として機能する。なお、この素子位置センサ64は、上記支持アーム30(突出部118)の側に設けられるものであってもよい。なお、前述の機構により、前記アンテナ素子34a、34b相互間の間隔と、アンテナ素子34a、34c相互間の間隔とが常に等しくなるように構成されていることで、前記素子位置センサ64によりアンテナ素子34b及び34cのうち少なくとも一方の位置を検出することで、前記中央のアンテナ素子34aに対するアンテナ素子34b及び34cの距離を検出でき、延いては前記素子間隔検出部66によりそれら複数のアンテナ素子34相互間の間隔を検出できるのである。
【0035】
図12及び図13は、前記アンテナ素子34相互間の間隔による指向性パターンの違いを説明する図であり、図12はメインローブ方向θ=0°の指向性パターンを、図13はメインローブ方向θ=30°の指向性パターンを、それぞれ示している。また、これらの図において、素子間隔が前記質問波Fの波長の1倍とされた状態の指向性パターンを実線で、素子間隔が前記質問波Fの波長の3/4倍とされた状態の指向性パターンを破線で、素子間隔が前記質問波Fの波長の1/2倍とされた状態の指向性パターンを一点鎖線で、それぞれ示している。これらの図に示すように、前記複数のアンテナ素子34相互間の間隔を前記質問波Fの波長の1倍と比較的広くした場合には、それら複数のアンテナ素子34により構成されるアレイアンテナ36の指向性が比較的鋭い(ナロービーム)ものとされ、前記複数のアンテナ素子34相互間の間隔を前記質問波Fの波長の3/4倍と中程とした場合には、それら複数のアンテナ素子34により構成されるアレイアンテナ36の指向性が中程(ミドルビーム)とされ、前記複数のアンテナ素子34相互間の間隔を前記質問波Fの波長の1/2倍と比較的狭くした場合には、それら複数のアンテナ素子34により構成されるアレイアンテナ36の指向性が比較的広い(ワイドビーム)ものとされる。このように、素子間隔が広いほどメインローブ(通信感度を最大とする放射パターン)は鋭くなり、逆に素子間隔が狭いほどメインローブは広くなる。例えば、前記無線タグ14の検索制御において、検索対象である無線タグ14が存在する位置がまったくわからない場合には、比較的メインローブが広い指向性パターンにて通信を行うことで、比較的広い範囲を検索領域として前記無線タグ14の大まかな位置を速やかに検出することができる。また、前記無線タグ14の存在する位置が大まかにわかっている場合には、比較的メインローブが鋭い指向性パターンにて通信を行うことで、その無線タグ14が存在する詳細な位置を検出することができる。このように、前記無線タグ通信装置12による前記無線タグ14との間の通信では、その無線タグ14との通信指向性の広狭を随意に変更できることが望ましく、本実施例の無線タグ通信装置12では、前述のようにアンテナ素子34相互間の間隔が変更可能とされていることで、目的に応じて最適な通信指向性を選択できるようになっている。
【0036】
図14は、前記ウェイトメモリ部49に記憶された複数組のウェイトについて説明する図である。この図14に示すように、前記ウェイトメモリ部49には、前記アレイアンテナ36における前記アンテナ素子34相互間の間隔に応じて複数組の送受信PAAウェイトW0、W1、W2が予め記憶されている。前記ウェイト(複素ウェイト)の値は、例えばWが中央のアンテナ素子に対応する場合、W=ejφ、W=ej0=1、W=e−jφである。ここで、φ=(2π/λ)×d×sinθ(但し、λは搬送波の波長、dは素子間隔、θはメインローブの方向)である。例えば、前記複数のアンテナ素子34相互間の間隔を前記質問波Fの波長の1/2倍とした場合に対応する送受信PAAウェイトがウェイトテーブルAに、前記複数のアンテナ素子34相互間の間隔を前記質問波Fの波長の3/4倍とした場合に対応する送受信PAAウェイトがウェイトテーブルBに、前記複数のアンテナ素子34相互間の間隔を前記質問波Fの波長の1倍とした場合に対応する送受信PAAウェイトがウェイトテーブルCに、それぞれ記憶されている。そして、指向性制御部である前記PAAウェイト制御部48は、前記ウェイトメモリ部49に記憶された複数組のウェイトのうち何れかのウェイトを読み出し、それに基づく送受信PAAウェイトを設定する。このような送受信PAAウェイトを素子間隔に応じて選択的に用いることで、通信目的に応じて素子間隔を変更した場合に最適な指向性パターンを形成することができ、前記無線タグ14との間で好適な通信を実現できる。なお、本実施例では、送信指向性の制御に用いられる送信ウェイトと受信指向性の制御に用いられる受信ウェイトとが共通の値とされているが、送受信でそれぞれ別々の値が用いられる態様も考えられる。
【0037】
図15は、前記無線タグ通信装置12による前記無線タグ14の検索制御動作を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0038】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)SA1において、前記コマンドビット列生成部38により検索対象である無線タグ14へのコマンドビット列が生成され、前記FSK符号化部40によりFSK方式にて符号化される。次に、SA2において、SA1にて符号化された信号が前記AM変調部42においてAM方式で変調され、前記送信メモリ部44に記憶される。次に、SA3において、送受信PAAウェイトレジスタすなわちウェイトメモリ部49に指向性方向の初期値としてθ=−30°が設定される。次に、前記素子間隔検出部66の動作に対応するSA4において、前記素子位置センサ64からの信号に応じて前記アレイアンテナ36における素子間隔が送信される質問波Fに対して1/2波長、3/4波長、1波長の何れであるかが判断される。このSA4において、前記アレイアンテナ36における素子間隔が1/2波長だと判断される場合には、SA5において、前記ウェイトメモリ部49におけるウェイトテーブルAが選択された後、SA8以下の処理が実行される。また、SA4において、前記アレイアンテナ36における素子間隔が3/4波長だと判断される場合には、SA6において、前記ウェイトメモリ部49におけるウェイトテーブルBが選択された後、SA8以下の処理が実行される。また、SA4において、前記アレイアンテナ36における素子間隔が1波長だと判断される場合には、SA7において、前記ウェイトメモリ部49におけるウェイトテーブルCが選択された後、SA8以下の処理が実行される。
【0039】
SA8の処理では、SA2にて記憶されたデータが前記送信メモリ部44から読み出され、前記送信ウェイト掛算部46においてSA5、SA6、又はSA7にて選択されたウェイトテーブルに基づく送信PAAウェイトが掛算された後、前記複数の高周波送受信部52を介して前記アレイアンテナ36から質問波Fとして送信される。次に、SA9において、SA8にて送信された質問波Fに応じて前記無線タグ14から返信された応答波Fが前記アレイアンテナ36により受信され、前記複数の高周波送受信部52を介して前記受信メモリ部54に記憶される。次に、SA10において、SA9にて記憶されたデータが前記受信メモリ部54から読み出され、前記受信ウェイト掛算部56においてSA5、SA6、又はSA7にて選択されたウェイトテーブルに基づく受信PAAウェイトが掛算された後、前記合成器86により合成される。次に、SA11において、SA10にて合成された合成信号が前記AM復調部58によりAM方式で復調される。次に、SA12において、SA11において復調された信号が前記FSK復号部60によりFSK方式で復号される。次に、SA13において、SA12にて復号された復号データが正常であるか否かが判断される。このSA12の判断が肯定される場合には、SA14において、検索対象である無線タグ14が発見されたことが確認された後、本ルーチンが終了させられるが、SA13の判断が否定される場合には、SA15において、前記ウェイトメモリ部49に設定されたメインローブ方向θに10°が加算された後、SA16において、前記ウェイトメモリ部49に設定された指向性方向θは30°より大きいか否かが判断される。このSA16の判断が否定される場合には、SA8以下の処理が再び実行されるが、SA16の判断が肯定される場合には、SA17において、検索対象である無線タグ14は発見されなかったことが確認された後、本ルーチンが終了させられる。以上の処理において、SA5、SA6、SA7、SA8、及びSA10が前記PAAウェイト制御部48の動作に対応する。
【0040】
このように、本実施例によれば、複数のアンテナ素子34を有すると共に、前記無線タグ14との間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子34相互間の間隔を変更し得るアレイアンテナ36と、そのアレイアンテナ36における前記アンテナ素子34相互間の間隔に応じてそれらアンテナ素子34に対応する信号それぞれの少なくとも位相を変化させるためのウェイトを設定することで前記無線タグ14との間の通信指向性を制御する指向性制御部であるPAAウェイト制御部48(SA5、SA6、SA7、SA8、及びSA10)とを、備えていることから、前記無線タグ14との間の通信に関与するアンテナ素子34相互間の間隔を変更することで指向性特性を任意に制御できることに加え、その間隔に応じて所定のウェイトを設定することで通信指向性を好適に定めることができる。すなわち、無線タグ14との間の通信指向性を通信目的に応じて適宜設定し得る無線タグ通信装置12を提供することができる。
【0041】
また、前記アンテナ素子34相互間間隔毎に予め定められた複数組のウェイトテーブルを記憶する記憶部であるウェイトメモリ部49を備え、前記PAAウェイト制御部48は、そのウェイトメモリ部49に記憶された複数組のウェイトテーブルのうち前記アンテナ素子34相互間間隔に応じて何れか1組のウェイトテーブルを読出して設定するものであるため、前記無線タグ14との間の通信に関与するアンテナ素子34相互間の間隔に適合するウェイトを実用的な態様で設定できる。
【0042】
また、前記PAAウェイト制御部48は、前記無線タグ14との間の通信におけるメインローブを所望のビーム幅とするために前記通信指向性を制御するものである。このようにすれば、前記無線タグ14との間の通信におけるメインローブのビーム幅を好適に制御できる。
【0043】
また、前記アレイアンテナ36は、前記無線タグ14との間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子34相互間の間隔を機械的に変更し得るものであるため、手動の調節つまみ32により前記無線タグ14との間の通信に関与するアンテナ素子34相互間の間隔を実用的な態様で変更できる。
【0044】
また、前記無線タグ14との間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子34相互間の間隔を検出する検出装置である素子位置センサ64を備えたものであるため、その素子位置センサ64により検出される間隔に応じて前記PAAウェイト制御部48により実用的な態様で前記無線タグ14との間の通信指向性を制御できる。
【0045】
また、前記アレイアンテナ36は、前記無線タグ14に送信信号を送信するために用いられる少なくとも2つのアンテナ素子34相互間の間隔を変更し得るものであり、前記PAAウェイト制御部48は、前記アレイアンテナ36における前記アンテナ素子34相互間の間隔に応じて所定の送信ウェイトを設定するものであるため、前記無線タグ14との間の通信における送信指向性を好適に制御できる。
【0046】
また、前記アレイアンテナ36は、前記無線タグ14から返信される受信信号を受信するために用いられる少なくとも2つのアンテナ素子34相互間の間隔を変更し得るものであり、前記PAAウェイト制御部48は、前記アレイアンテナ36における前記アンテナ素子34相互間の間隔に応じて所定の受信ウェイトを設定するものであるため、前記無線タグ14との間の通信における受信指向性を好適に制御できる。
【0047】
また、前記複数のアンテナ素子34は、前記無線タグ14に向けて送信信号を送信すると共に、その送信信号に応じてその無線タグ14から返信される返信信号を受信するために用いられる送受信共用のアンテナ素子34であるため、前記アレイアンテナ36の構成を可及的に簡単にできることに加え、前記無線タグ14との間の通信における送信指向性及び受信指向性を好適に制御できる。
【0048】
続いて、本発明の他の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明に関して、前述の実施例と共通する部分については同一の符合を付してその説明を省略する。
【実施例2】
【0049】
図16は、本発明の他の実施例である無線タグ通信装置120の構成を説明する図である。この図16に示すように、本実施例の無線タグ通信装置120は、前記歯車装置106の中央歯車110に連結されてその中央歯車110を回転駆動するためのモータ122を備えている。このモータ122としては、電気信号に応じて一定角度(回転量)で回転するステッピングモータ等が好適に用いられ、動力伝達装置である前記歯車装置106を介して前記無線タグ14との間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子34相互間の間隔を機械的に変更するための動力発生機として機能する。また、上記モータ122の回転量を制御することにより前記複数のアンテナ素子34相互間の間隔を制御(設定)する素子間隔設定部123が機能的に設けられている。
【0050】
上記無線タグ通信装置120では、動作モードすなわち前記アレイアンテナ36の通信モードをワイドビーム、ミドルビーム、及びナロービームの何れかに設定し得るように構成されている。このワイドビームは、前記アレイアンテナ36におけるアンテナ素子34相互間の間隔を前記質問波Fの波長の1/2倍とした場合に対応し、ミドルビームは、前記アレイアンテナ36におけるアンテナ素子34相互間の間隔を前記質問波Fの波長の3/4倍とした場合に対応し、ナロービームは、前記アレイアンテナ36におけるアンテナ素子34相互間の間隔を前記質問波Fの波長の1倍とした場合に対応する。上記素子間隔設定部123は、前記操作部24を介しての所定の操作或いは通信対象となる無線タグ14との通信状態に応じた自動制御により上記モータ122の回転量を制御することで前記複数のアンテナ素子34相互間の間隔を変更し、上記ワイドビーム、ミドルビーム、及びナロービームの何れかの動作モードを成立させる。なお、本実施例では、動作モードを三段階に変更する態様について説明するが、二段階に変更するものであってもよく、また四段階以上に変更し得るものであっても構わない。
【0051】
ここで、前記無線タグ通信装置120は、好適には、前記アンテナ素子34相互間の間隔が所定値未満である場合、例えば前記質問波Fの波長の3/4倍未満である場合には、前記PAAウェイト制御部48により指向性を変化させつつ前記無線タグ14との間の通信を行い、前記アンテナ素子34相互間の間隔が所定値以上、例えば前記質問波Fの波長の3/4倍以上である場合には、前記PAAウェイト制御部48により設定される指向性を固定して前記無線タグ14との間の通信を行う。前述のように、前記アンテナ素子34相互間の間隔が比較的狭い場合には、前記アレイアンテナ36による通信モードはワイドビームとなり、広い検索範囲における前記無線タグ14の位置を大まかに検出する場合等において好適である。このような態様では、指向性制御部である前記PAAウェイト制御部48により指向性を振ることで、より速やかに対象となる無線タグ14を検索することができる。一方、前記アンテナ素子34相互間の間隔が比較的広い場合には、前記アレイアンテナ36による通信モードはナロービームとなり、大まかな位置がわかっている無線タグ14の存在する位置を詳細に求める場合等において好適である。このような態様では、指向性制御部である前記PAAウェイト制御部48により指向性を固定して、例えば利用者が前記無線タグ通信装置120を手で持って振ること等により好適な通信を実現できる。
【0052】
また、前記無線タグ通信装置120では、好適には、前記アレイアンテナ36におけるアンテナ素子34相互間の間隔を比較的狭くした状態で検索対象である無線タグ14の仮検索を行い、それらアンテナ素子34相互間の間隔を比較的広くした状態でその無線タグ14の本検索を行う。例えば、前記アレイアンテナ36の通信モードをワイドビームとして(すなわち素子間隔を1/2波長として)仮検索を行い、通信モードをナロービームとして(すなわち素子間隔を1波長として)本検索を行う。前述したように、ワイドビームは前記無線タグ14の大まかな位置を検索する通信において好適であり、ナロービームはその無線タグ14の詳細な位置を検索する通信において好適であるため、このように前記アレイアンテナ36の通信指向性を適宜設定して仮検索及び本検索を行うことで、通信対象である無線タグ14の存在する位置を可及的速やかに検索できる。
【0053】
図17は、前記無線タグ通信装置120による前記無線タグ14の検索制御動作を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この図17に示す制御において、前述した図15に示す制御と共通するステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図17に示す制御では、前述したSA2の処理に続くSA18において、前記無線タグ通信装置12の動作モードがワイドビーム、ミドルビーム、ナロービームの何れであるかが判断される。このSA18において、前記無線タグ通信装置12の動作モードがワイドビームであると判断される場合には、SA19において、前記モータ122が駆動されて前記アレイアンテナ36における素子間隔が1/2波長とされ、SA5において、前記ウェイトメモリ部49におけるウェイトテーブルAが選択された後、SA3以下の処理が実行される。また、SA18において、前記無線タグ通信装置12の動作モードがミドルビームであると判断される場合には、前記モータ122が駆動されて前記アレイアンテナ36における素子間隔が3/4波長とされ、SA6において、前記ウェイトメモリ部49におけるウェイトテーブルBが選択された後、SA3以下の処理が実行される。また、SA18において、前記無線タグ通信装置12の動作モードがナロービームであると判断される場合には、SA21において、前記モータ122が駆動されて前記アレイアンテナ36における素子間隔が1波長とされ、SA7において、前記ウェイトメモリ部49におけるウェイトテーブルCが選択された後、SA3以下の処理が実行される。また、前述したSA13の判断が肯定される場合には、SA13′において、前記アンテナ素子34相互間の間隔が前記質問波Fの波長の1波長分であるか否かが判断される。このSA13′の判断が否定される場合には、前述したSA15以下の処理が実行されるが、SA13′の判断が肯定される場合には、SA13″において、検索中断であるか否かが判断される。このSA13″の判断が肯定される場合には、前述したSA17以下の処理が実行されるが、SA13″の判断が否定される場合には、前述したSA8以下の処理が再び実行される。以上の制御において、SA19、SA20、及びSA21が前記素子間隔設定部123の動作に対応する。
【0055】
図18は、前記無線タグ通信装置120による前記無線タグ14の検索制御動作の他の一例を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0056】
先ず、S1において、前記コマンドビット列生成部38により検索対象である無線タグ14へのコマンドビット列が生成され、前記FSK符号化部40によりFSK方式にて符号化される。次に、S2において、S1にて符号化された信号が前記AM変調部42においてAM方式で変調され、前記送信メモリ部44に記憶される。次に、S3において、前記モータ122が駆動されて前記アレイアンテナ36におけるアンテナ素子34相互間の間隔が前記質問波Fの波長の1/2倍とされる。次に、S4において、前記ウェイトメモリ部49におけるウェイトテーブルAが選択される。次に、STにおいて、図19に詳述するタグ仮検索制御が実行される。次に、S5において、前記モータ122が駆動されて前記アレイアンテナ36におけるアンテナ素子34相互間の間隔が前記質問波Fの波長の1倍とされる。次に、S6において、前記ウェイトメモリ部49におけるウェイトテーブルCが選択される。次に、SMにおいて、図20に詳述するタグ本検索制御が実行された後、本ルーチンが終了させられる。
【0057】
図19は、図18に示す無線タグ検索制御の一部であるタグ仮検索制御について説明するフローチャートである。この図19に示す制御では、先ず、ST1において、送受信PAAウェイトレジスタすなわちウェイトメモリ部49に指向性方向の初期値としてθ=−30°が設定される。次に、ST2において、S2にて記憶されたデータが前記送信メモリ部44から読み出され、前記送信ウェイト掛算部46においてS4にて選択されたウェイトテーブルAに基づく送信PAAウェイトが掛算された後、前記複数の高周波送受信部52を介して前記アレイアンテナ36から質問波Fとして送信される。次に、ST3において、ST2にて送信された質問波Fに応じて前記無線タグ14から返信された応答波Fが前記アレイアンテナ36により受信され、前記複数の高周波送受信部52を介して前記受信メモリ部54に記憶される。次に、ST4において、ST3にて記憶されたデータが前記受信メモリ部54から読み出され、前記受信ウェイト掛算部56においてS4にて選択されたウェイトテーブルAに基づく受信PAAウェイトが掛算された後、前記合成器86により合成される。次に、ST5において、ST4にて合成された合成信号が前記AM復調部58によりAM方式で復調される。次に、ST6において、ST5にて復調されたAM復調信号の振幅Aが検出される。次に、ST7において、ST6にて検出された振幅Aが最大であるか否かが判断される。このST7の判断が肯定される場合には、ST8において、検出された振幅Aが最大振幅を示すAtemp_maxに代入され、その時点におけるメインローブ方向θが最大感度方向を示すθtemp_maxに代入された後、ST9以下の処理が実行されるが、ST7の判断が否定される場合には、ST9において、前記ウェイトメモリ部49に設定されたメインローブ方向θに30°が加算された後、ST10において、前記ウェイトメモリ部49に設定されたメインローブ方向θは30°より大きいか否かが判断される。このST10の判断が否定される場合には、ST2以下の処理が再び実行されるが、ST10の判断が肯定される場合には、最大振幅を示すAtemp_maxが所定の必要値以上であるか否かが判断される。このST11の判断が否定される場合には、ST12において、検索対象である無線タグ14は発見されなかったことが確認された後、本ルーチンが終了させられるが、ST11の判断が肯定される場合には、それをもって図18に示す無線タグ検索制御に復帰させられる。
【0058】
図20は、図18に示す無線タグ検索制御の一部であるタグ本検索制御について説明するフローチャートである。この図20に示す制御では、先ず、SM1において、前記ウェイトメモリ部49にメインローブ方向の初期値としてθ=θtemp_max−10°が設定される。次に、SM2において、S2にて記憶されたデータが前記送信メモリ部44から読み出され、前記送信ウェイト掛算部46においてS6にて選択されたウェイトテーブルCに基づく送信PAAウェイトが掛算された後、前記複数の高周波送受信部52を介して前記アレイアンテナ36から質問波Fとして送信される。次に、SM3において、SM2にて送信された質問波Fに応じて前記無線タグ14から返信された応答波Fが前記アレイアンテナ36により受信され、前記複数の高周波送受信部52を介して前記受信メモリ部54に記憶される。次に、SM4において、SM3にて記憶されたデータが前記受信メモリ部54から読み出され、前記受信ウェイト掛算部56においてS6にて選択されたウェイトテーブルCに基づく受信PAAウェイトが掛算された後、前記合成器86により合成される。次に、SM5において、SM4にて合成された合成信号が前記AM復調部58によりAM方式で復調される。次に、SM6において、SM5にて復調されたAM復調信号の振幅が検出され、その振幅が最大であるか否かが判断される。このSM6の判断が肯定される場合には、SM7において、その時点におけるメインローブ方向θがタグ方向を示すθmaxに代入された後、SM8以下の処理が実行されるが、SM6の判断が否定される場合には、SM8において、前記ウェイトメモリ部49に設定されたメインローブ方向θに10°が加算された後、SM9において、前記ウェイトメモリ部49に設定されたメインローブ方向θはθtemp_max+10°より大きいか否かが判断される。このSM9の判断が否定される場合には、SM2以下の処理が再び実行されるが、SM9の判断が肯定される場合には、その時点におけるθmaxが検索対象である無線タグ14の存在する方向であると確認された後、図18に示す無線タグ検索制御に復帰させられる。
【0059】
このように、本実施例によれば、前記無線タグ14との間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子34相互間の間隔を機械的に変更するための動力発生機であるモータ122及び動力伝達装置である歯車装置106を備えたものであるため、そのモータ122の駆動により歯車装置106を介して前記無線タグ14との間の通信に関与するアンテナ素子34相互間の間隔を実用的な態様で変更できる。
【0060】
また、前記無線タグ通信装置120は、前記アンテナ素子34相互間の間隔が所定値未満である場合すなわち1波長ではない場合には、前記PAAウェイト制御部48により指向性を変化させつつ前記無線タグ14との間の通信を行い、前記アンテナ素子34相互間の間隔が所定値以上である場合すなわち1波長である場合には、前記PAAウェイト制御部48により設定される指向性を固定して前記無線タグ14との間の通信を行うものであるため、前記アンテナ素子34相互間の間隔に対応する指向性特性に応じて好適な態様で前記無線タグとの間の通信を行うことができる。
【実施例3】
【0061】
図21は、本発明の更に別の実施例である無線タグ通信装置124の構成を説明する図である。この図21に示すように、本実施例の無線タグ通信装置124は、互いに平行となるように立設された複数(図21では7つ)のアンテナ素子34a、34b、34c、34d、34e、34f、34g(以下、特に区別しない場合には単にアンテナ素子34と称する)を有するアレイアンテナ126を備えている。また、上記アンテナ素子34a、34b、34cの何れかを選択的に前記高周波送受信部52aに入出力可能に接続すると共に、上記アンテナ素子34e、34f、34gの何れかを選択的に前記高周波送受信部52cに入出力可能に接続するアンテナ選択部128と、そのアンテナ選択部128による上記複数のアンテナ素子34と高周波送受信部52との間の接続を制御することにより前記無線タグ14との間の通信に用いられるアンテナ素子34相互間の間隔を設定する素子間隔設定部130とを、機能的に備えている。
【0062】
図22は、上記アレイアンテナ126における複数のアンテナ素子34の相対位置関係を例示する図である。この図22に示すように、上記アレイアンテナ126は、上記アンテナ素子34dを中心として上記アンテナ素子34a及び34gがそのアンテナ素子34aから前記質問波Fの波長の1倍の距離隔てた位置に、上記アンテナ素子34b及び34fがそのアンテナ素子34aから前記質問波Fの波長の3/4倍の距離隔てた位置に、上記アンテナ素子34c及び34eがそのアンテナ素子34aから前記質問波Fの波長の1/2倍の距離の位置に、それぞれ配設されている。また、上記アンテナ選択部128は、上記アンテナ素子34aを高周波送受信部52aに接続する場合には、上記アンテナ素子34gを高周波送受信部52cに接続し、上記アンテナ素子34bを高周波送受信部52aに接続する場合には、上記アンテナ素子34fを高周波送受信部52cに接続し、上記アンテナ素子34cを高周波送受信部52aに接続する場合には、上記アンテナ素子34eを高周波送受信部52cに接続するものである。すなわち、上記アレイアンテナ126では、通信対象である無線タグ14との間で情報の送受信を行う複数のアンテナ素子として上記アンテナ素子34a、34d、34gが選択される第1の状態、上記アンテナ素子34b、34d、34fが選択される第2の状態、及び上記アンテナ素子34c、34d、34eが選択される第3の状態のうち何れかが選択的成立させられる。このように、上記アレイアンテナ126は、上記複数のアンテナ素子34から前記無線タグ14との間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子34を選択することにより、その無線タグ14との間の通信に用いられるアンテナ素子34相互間の間隔を変更するものである。
【0063】
ここで、通信対象である無線タグ14との間で情報の送受信を行う複数のアンテナ素子として前記アンテナ素子34a、34d、34gが選択される第1の状態では、それらアンテナ素子34相互間の間隔が前記質問波Fの波長の1倍となり、前記アレイアンテナ36による通信モードは比較的鋭く(ナロービーム)なる。また、前記アンテナ素子34b、34d、34fが選択される第2の状態では、それらアンテナ素子34相互間の間隔が前記質問波Fの波長の3/4倍となり、前記アレイアンテナ36による通信モードは中程(ミドルビーム)となる。また、前記アンテナ素子34c、34d、34eが選択される第3の状態では、それらアンテナ素子34相互間の間隔が前記質問波Fの波長の1/2倍となり、前記アレイアンテナ36による通信モードは比較的広く(ワイドビーム)となる。また、前記無線タグ通信装置124に備えられたPAAウェイト制御部48は、前述した実施例と同様に、前記アレイアンテナ126における前記アンテナ素子34相互間の間隔に応じて、前記ウェイトメモリ部49に記憶された複数組のウェイトのうち対応するウェイトを読み出し、そのウェイトに基づいて前記送信ウェイト掛算部46において掛算される送信PAAウェイト及び受信ウェイト掛算部56において掛算される受信PAAウェイトを制御する。
【0064】
図23は、前記無線タグ通信装置124による前記無線タグ14の検索制御動作を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この図23に示す制御において、前述した図15に示す制御と共通するステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図23に示す制御では、前述したSA3の処理に続くSA18において、前記無線タグ通信装置12の動作モードがワイドビーム、ミドルビーム、ナロービームの何れであるかが判断される。このSA18において、前記無線タグ通信装置12の動作モードがワイドビームであると判断される場合には、SA22において、前記アンテナ素子34cが高周波送受信部52aに、アンテナ素子34dが高周波送受信部52bに、アンテナ素子34eが高周波送受信部52cに、それぞれ接続されて前記アレイアンテナ36における素子間隔が1/2波長とされ、SA5において、前記ウェイトメモリ部49におけるウェイトテーブルAが選択された後、SA8以下の処理が実行される。また、SA18において、前記無線タグ通信装置12の動作モードがミドルビームであると判断される場合には、SA23において、前記アンテナ素子34bが高周波送受信部52aに、アンテナ素子34dが高周波送受信部52bに、アンテナ素子34fが高周波送受信部52cに、それぞれ接続されて前記アレイアンテナ36における素子間隔が3/4波長とされ、SA6において、前記ウェイトメモリ部49におけるウェイトテーブルBが選択された後、SA8以下の処理が実行される。また、SA18において、前記無線タグ通信装置12の動作モードがナロービームであると判断される場合には、SA24において、前記アンテナ素子34aが高周波送受信部52aに、アンテナ素子34dが高周波送受信部52bに、アンテナ素子34gが高周波送受信部52cに、それぞれ接続されて前記アレイアンテナ36における素子間隔が1波長とされ、SA7において、前記ウェイトメモリ部49におけるウェイトテーブルCが選択された後、SA8以下の処理が実行される。以上の制御において、SA22、SA23、及びSA24が前記アンテナ選択部128の動作に対応する。
【0066】
このように、本実施例によれば、前記アレイアンテナ126は、3つ以上のアンテナ素子34を有するものであり、それらのアンテナ素子34のうち前記無線タグ14との間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子34を選択するアンテナ選択部128(SA22、SA23、及びSA24)を備えたものであるため、前記無線タグ14との間の通信に関与するアンテナ素子34相互間の間隔を実用的な態様で変更できる。
【0067】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0068】
例えば、前述の実施例において、前記送信ウェイト掛算部46、PAAウェイト制御部48、受信ウェイト掛算部50、及び素子間隔検出部66等は、それぞれ個別の制御装置として備えられたものであったが、これらの制御機能は、CPU、ROM、RAM等を含んでディジタル信号処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)等に機能的に備えられたものであってもよい。また、これらの制御機能による制御動作は、ディジタル信号処理によるものであるとアナログ信号処理によるものであるとを問わない。
【0069】
また、前述の実施例では、PAA(Phased Array Antenna)処理により前記無線タグ14との間の通信指向性を制御する態様について説明したが、例えば、AAA(Adaptive Array Antenna)処理等により前記無線タグ14との通信指向性を制御し得る無線タグ通信装置にも本発明は好適に適用されるものである。
【0070】
また、前述の実施例では、前記無線タグ14との間の通信に関して利用者が携帯して用いることができる携帯式の無線タグ通信装置12等について説明したが、室等に位置固定に設けられた据置式の無線タグ通信装置にも本発明は好適に適用される。
【0071】
また、前述の実施例では、前記送信信号の送信指向性の制御及び受信信号の受信指向性の制御の何れにも本発明が適用されていたが、それらのうち少なくとも一方に適用されることで一応の効果は得られるため、必ずしも送受信共に本発明が適用されなくとも構わない。
【0072】
また、前述の実施例では、前記無線タグ14に向けて送信信号を送信すると共に、その送信信号に応じてその無線タグ14から返信される返信信号を受信するために用いられる送受信共用のアンテナ素子34を備えた送受信共用のアレイアンテナ36等が設けられた無線タグ通信装置12等について説明したが、前記送信信号を送信するための送信アンテナ及び受信信号を受信するための受信アンテナが別々に設けられた無線タグ通信装置にも本発明は好適に適用される。
【0073】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の無線タグ通信装置が好適に用いられる無線タグ通信システムについて説明する図である。
【図2】本発明の一実施例である無線タグ通信装置の外観を説明する平面図である。
【図3】図2の無線タグ通信装置を矢印IIIの方向から見た背面図である。
【図4】図2の無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図5】図4の送信ウェイト掛算部の構成を詳しく説明する図である。
【図6】図4の高周波送受信部の構成を詳しく説明する図である。
【図7】図4の受信ウェイト掛算部の構成を詳しく説明する図である。
【図8】本発明の無線タグ通信装置の通信対象である無線タグに備えられた無線タグ回路素子の構成を説明する図である。
【図9】図2の無線タグ通信装置のアンテナユニットにおけるアンテナ素子相互間の間隔の変更について説明する図であり、素子間隔を比較的広くした場合を例示している。
【図10】図2の無線タグ通信装置のアンテナユニットにおけるアンテナ素子相互間の間隔の変更について説明する図であり、素子間隔を比較的狭くした場合を例示している。
【図11】図9に示すアンテナユニットにおいて一点鎖線で囲んで示す部分の内部構成を拡大して詳しく説明する部分断面図であり、一対の支持アームのユニット基部からの伸長寸法を変更するための歯車装置を示している。
【図12】図2の無線タグ通信装置におけるアンテナ素子相互間の間隔による指向性パターンの違いを説明する図であり、指向性方向θ=0°の指向性パターンを例示している。
【図13】図2の無線タグ通信装置におけるアンテナ素子相互間の間隔による指向性パターンの違いを説明する図であり、指向性方向θ=30°の指向性パターンを例示している。
【図14】図4のウェイトメモリ部に記憶された複数組のウェイトについて説明する図である。
【図15】図4の無線タグ通信装置による無線タグ検索制御動作を説明するフローチャートである。
【図16】本発明の他の実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図17】図16の無線タグ通信装置による無線タグ検索制御動作を説明するフローチャートである。
【図18】図16の無線タグ通信装置による無線タグ検索制御動作の他の一例を説明するフローチャートである。
【図19】図18に示す無線タグ検索制御の一部であるタグ仮検索制御について説明するフローチャートである。
【図20】図18に示す無線タグ検索制御の一部であるタグ本検索制御について説明するフローチャートである。
【図21】本発明の更に別の実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図22】図21の無線タグ通信装置に備えられたアレイアンテナにおける複数のアンテナ素子の相対位置関係を例示する図である。
【図23】図21の無線タグ通信装置による無線タグ検索制御動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
12、120、124:無線タグ通信装置
14:無線タグ
34:アンテナ素子
36、126:アレイアンテナ
48:PAAウェイト制御部(指向性制御部)
49:ウェイトメモリ部(記憶部)
64:素子位置センサ(検出装置)
106:歯車装置(動力伝達装置)
122:モータ(動力発生機)
128:アンテナ選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグに向けて送信信号を送信すると共に、該送信信号に応じて該無線タグから返信される返信信号を受信して該無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置であって、
複数のアンテナ素子を有すると共に、前記無線タグとの間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を変更し得るアレイアンテナと、
該アレイアンテナにおける前記アンテナ素子相互間の間隔に応じてそれらアンテナ素子に対応する信号それぞれの少なくとも位相を変化させるためのウェイトを設定することで前記無線タグとの間の通信指向性を制御する指向性制御部と
を、備えたことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項2】
前記アンテナ素子相互間間隔毎に予め定められた複数組のウェイトテーブルを記憶する記憶部を備え、前記指向性制御部は、該記憶部に記憶された複数組のウェイトテーブルのうち前記アンテナ素子相互間間隔に応じて何れか1組のウェイトテーブルを読出して設定するものである請求項1の無線タグ通信装置。
【請求項3】
前記指向性制御部は、前記無線タグとの間の通信におけるメインローブを所望のビーム幅とするために前記通信指向性を制御するものである請求項1又は2の無線タグ通信装置。
【請求項4】
前記アレイアンテナは、前記無線タグとの間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を機械的に変更し得るものである請求項1から3の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項5】
前記無線タグとの間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を機械的に変更するための動力発生機及び動力伝達装置を備えたものである請求項4の無線タグ通信装置。
【請求項6】
前記無線タグとの間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を検出する検出装置を備えたものである請求項1から5の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項7】
前記アレイアンテナは、3つ以上のアンテナ素子を有するものであり、それらのアンテナ素子のうち前記無線タグとの間の通信に用いられる少なくとも2つのアンテナ素子を選択するアンテナ選択部を備えたものである請求項1から3の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項8】
前記アレイアンテナは、前記無線タグに送信信号を送信するために用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を変更し得るものであり、前記指向性制御部は、前記アレイアンテナにおける前記アンテナ素子相互間の間隔に応じて所定の送信ウェイトを設定するものである請求項1から7の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項9】
前記アレイアンテナは、前記無線タグから返信される受信信号を受信するために用いられる少なくとも2つのアンテナ素子相互間の間隔を変更し得るものであり、前記指向性制御部は、前記アレイアンテナにおける前記アンテナ素子相互間の間隔に応じて所定の受信ウェイトを設定するものである請求項1から8の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項10】
前記アンテナ素子相互間の間隔が所定値未満である場合には、前記指向性制御部により指向性を変化させつつ前記無線タグとの間の通信を行い、前記アンテナ素子相互間の間隔が所定値以上である場合には、前記指向性制御部により設定される指向性を固定して前記無線タグとの間の通信を行うものである請求項1から9の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項11】
前記複数のアンテナ素子は、前記無線タグに向けて送信信号を送信すると共に、該送信信号に応じて該無線タグから返信される返信信号を受信するために用いられる送受信共用のアンテナ素子である請求項1から10の何れかの無線タグ通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−352788(P2006−352788A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179554(P2005−179554)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】