説明

無線装置

【課題】 不必要な通電を行わないことで、使用する電力量を減らすことができる無線装置を提供する。
【解決手段】 無線装置は、水晶発信子と、前記水晶発信子が発振した信号を受けて作動するリアルタイムクロックと、前記リアルタイムクロックの信号でそれぞれ個別に電圧制御を行う複数の電圧制御半導体と、前記電圧制御半導体に電源を供給する電源と、前記電源により温度や湿度などの環境データを測定する環境センサーと、前記電源により前記環境センサーで測定された前記環境データをアナログ・ディジタル変換する半導体素子と、前記電源により前記半導体素子で変換された前記環境データを送信し、命令や条件の受信を行う双方向無線機とからなる。前記電圧制御半導体は、前記環境センサーが前記環境データの測定が終了すると、前記電源が前記環境センサーに電力供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
環境の数値情報や画像情報、個体の識別番号やその付帯情報、個体の存在や位置情報等を発信又は受信又は経由通信する無線装置の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
無線装置は古くから通報や情報の送受に用いられて来ているが、その多くが1対1の通信である。通信の目的を達成する為にはお互いが遠く離れている場合にはその距離に見合っただけの送信出力や空中線の指向性が求められて来た。しかし、送信出力の増大は送信機に対する電源容量の負荷を増大させ、電力線電源が使用できない移動体通信では蓄電池の容量が増大し、容量の大きい蓄電池を用いるか又は容量を絞ってこまめに充電を繰り返す方法で対応してきた。しかし、送信電力を増大する事で通達距離を拡大する方法は情報の漏洩や有害な混信を招き易いとの欠点を伴うものであった。また、指向性空中線は一般的に性能が上がるに連れてその大きさが増し、大がかりな装置構成になる欠点があった。その欠点を補う方法として省電力無線を用いてノードと呼ばれる中継無線機を送信者と受信者の中間に置いて経由通信をする方法、いわゆるリピータ方式が出現し、近年では送信者と受信者の間に多数のノードを置いて相互に通信が出来るノード間をランダムに経由して最終の受信者まで到達し、またその逆の道筋を経由して送信者に受信者の情報等を返答する通信方法、いわゆるマルチホップ方式が出現している。
【0003】
リピータ方式もマルチホップ方式もノードに小電力無線を使うと言っても送信時には大きな電力を消費する、受信時は送信時ほどではないか無線装置が受信状態に置かれている限り継続的に電力を消費する。反面、ノードは乾電池か蓄電池駆動になる場合が多い。電線が敷設できる場所ではこの様なノードを使う必要性が低いからである。しかし、乾電池や蓄電池を使用する以上その交換や充電は不可欠である。それが頻繁に行わなければならないと保守に掛かる費用と手間が増大し、小電力無線を使う利点が減少する結果になる。
【0004】
半導体素子やその他の素子にはスリープモードと言われる使用しない時にはスリープ状態に置いておく機能を備えたものがある。しかし、スリープモードでも少しではあるが不要な電力を消費している。
【0005】
次に、特許文献1における検針装置の例であるが、受動検針装置は、カレンダー時計、無線装置用電源装置、電送用無線装置、比較器、中央処理装置、画像入力装置、及び中央電源と2つのOR回路からなる。カレンダー時計とOR回路は常時可動の電源に接続されている為、常時作動する。カレンダー時計には大凡の検針時期が入力されており、この時期になると一定の周期で無線装置用電源を入れる為のパルスを出す。これによって電送用無線装置に電気が供給され、無線装置0が可動する。無線装置用電源装置は電送用無線装置及び比較器に電源を供給する装置で電源が入ると、無線装置は指定された周波数で送信されてくる高周波情報を空中線から受信してそれを復調し、その内容を比較器に送る動作をする。
【0006】
この検針装置を作動させる電源の入/切の手順は、カレンダー時計に検針想定期を設定する。カレンダー時計は予め設定された期間、即ち検針が行われると想定される期間に入ると、周期的なパルスを発信する。一方、検針が行われると想定される期間でないと判断したときは、引き続き、カレンダ時計は時を刻む。カレンダー時計からの信号は、第1のOR回路の出力をHIGHの状態にする。第1のOR回路の出力がHIGHになると、無線装置用電源が入る。電源が入ると電送用無線装置は受信を開始する。電送用無線装置は受信した信号を復調し、受信した情報を比較器に送る。送られて来た情報が「検針命令」かどうか比較する。受信した信号が検針命令であれば比較器が第2のOR回路にHIGHの信号を送る。第2のOR回路125の出力がHIGHとなる、中央電源が入る。これによって中央処理装置と画像処理装置に電源が入り、可動を始める。中央処理装置は先ず、電源を検針処理中の間、入りの状態にする目的で2つのOR回路にHIGHを入力する。中央電源は中央処理装置が一連の作業を終えてその値をLOWにする。そして次の検針に備える(特許文献1参照)。。
【特許文献1】特開2004−94787号公報(0014−0019段落、第1−3図)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無線装置が外からの電源供給無しに動き続ける為には無線装置が発電を行い、発電した電気を使うまで溜めておく装置を有する必要がある。無線装置の電力使用量が多ければ多いほど発電器や電力貯蔵装置は大がかりなものになる。従って、無線装置が使われる応用分野の必要性に合わせて素子に通電する時間を制限することで電力の消費を押さえることが必要となる。
【0008】
また、特許文献1では、カレンダー時計にあらかじめ検針する日時を設定しておく必要がある。検針する日時が決められるようであれば、このような方法は有効であるが、測定する対象によっては、このような日時が決められないような場合がありえる。
【0009】
そこで、カレンダー時計を使用しない機器において、外部からの電源供給や電池の交換の回数を極力減らすことができるように、低消費電力の無線装置を稼働させる事は本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無線装置は、水晶発信子と、前記水晶発信子発振した信号を受けて作動するリアルタイムクロックと、前記リアルタイムクロックの信号でそれぞれ個別に電圧制御を行う複数の電圧制御半導体と、前記電圧制御半導体に電源を供給する電源と、前記電源により環境データを測定する環境センサーと、前記電源により前記環境センサーで測定された前記環境データをアナログ・ディジタル変換する半導体素子と、前記電源により前記半導体素子で変換された前記環境データを送信し、命令や条件の受信を行う双方向無線機と、からなる。
【0011】
本発明の電圧制御半導体は、前記環境センサーが前記環境データの測定が終了すると、前記電源が前記環境センサーに電力供給を停止する。
本発明の前記電圧制御半導体は、前記双方向無線機が前記環境データを送信した後、前記双方向無線機に電力供給を停止するように前記電源を制御する。
本発明の無線装置は部屋の中に取り付けて、前記部屋の環境を測定する。
【0012】
本発明の無線装置は電信柱に取り付けて、前記電信柱が倒壊しているか否かの情報を測定する。
そして、本発明の無線装置は電信柱に取り付けて、前記電信柱に取り付けられたトランスに異常が発生したか否かの情報を測定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は不必要な通電を行わないことで、使用する電力量を減らすことができる。さらに、使用する電力量を減らすことができたので、発電機器を無線装置に取り付けた場合でも、発電量の小さい発電器でも十分な電力を供給できる。また、これによって無線装置の小型化や軽量化を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図面を参照に説明する。無線装置における通電制限シーケンスは実時間時計、通称RTCを用いて規則的作動する方法と物理的な変化、例えば振動、加速度、温度や湿度等の環境変化を関知して感応的作動する方法の2つを実施した。具体的な実施例としてRTCを用いて規則的作動をする方法の例を実施例1に、規則作動と感応作動を組み合わせた実施例を実施例2として説明する。
【実施例1】
【0015】
本実施例は、環境センサーを搭載した無線装置10の例である。環境センサー110としては温度、湿度、日照及び臭気を検知する4種類のセンサー101、102、103、104を搭載している。環境センサー110を搭載した無線装置10で得られた環境データは、環境センサーネットワークを通じてエアコンを制御する装置に伝えられ、環境を一定に保つ為に使われる。本実施例では、環境センサーネットワークは通常マルチホップ方式を用いた。
【0016】
図1は環境センサー110を搭載した無線装置10の構造を示すブロック構成図である。回路構成について説明する。環境センサー110を搭載した無線装置10は、水晶発信子120の信号を受けて作動するリアルタイムクロック125と、リアルタイムクロック125の信号で個別に作動する二つの電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR1、VR2と、電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR1、VR2に電源を供給する電源130と、環境センサー110、本実施例では温度センサー101、湿度センサー102、日照センサー103及び臭気センサー104の4センサー、測定するセンサーの選択とそのセンサーに電源を供給するマルチプレクサー140、センサー信号を増幅し、アナログ・ディジタル変換する半導体素子OPE-A+A/DC150、アナログ・ディジタル変換した環境センサーの値や検量線や校正値を保持する電気的消去可能な記憶素子EPROM+Buf160、通信制御やその他の処理を行う中央処理装置170、環境データの送信や命令や条件の受信を行う双方向無線機180、及び空中線190とからなる。
【0017】
本発明の省電力化の基本は作動する事が必要な素子に対し、作動する時のみ電源を供給し、必要な処理が済むと電源供給を止めて電源の消耗を防ぐ方法である。環境センサー110を搭載した無線装置10には大きく分けて2種類の電原供給のタイミングがある。一つは、環境データを収集する時と環境データを送信するか命令や条件を受信する時である。環境データの収集は、そのデータの送信までに数回行われる事がある。本実施例では一つのセンサー当たり3回測定して、3回分の値を送信する方法を取っている。
【0018】
図2は、電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR1、VR2の出力波形を示す。VR1が3回出力した後にVR2が1度出力する事が判る。電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR1及びVR2は、リアルタイムクロック125の出力で作動する為、リアルタイムクロック125も電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR1、VR2と同じタイミングに出力する様にプログラムされている。
【0019】
次に、電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR1が出力する事で起こる作業シーケンスを第1のシーケンス、電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR2が作動する事で起こる作業シーケンスを第2のシーケンスとする。先ずは、第1のシーケンスについて説明する。図3は、電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR1が電源供給する各素子の電源供給の状態をX軸に時間を取って図式化したものである。4つの環境センサー110は測定をする順番で電源が供給され、あるセンサーの測定が終了すると電源が落とされ、次の環境センサー110に電源供給が移る。OPE-A+A/DC150とEPROM+Buf160は最初の環境センサー110の測定から最後の環境センサー110の測定が終了するまで、電源が供給されている。電源が供給されている時間に付いては、実際の作業時間と電源投入後に素子が安定するまでの時間と、安全に電源を落とすまでの時間が含まれる。
【0020】
次に、第2のシーケンスについて説明する。図4は、電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR2が電源供給する各素子の電源供給の状態をX軸に時間を取って図式化したものである。電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR2から電源が供給されている間は、EPROM+Buf160、中央処理装置170及び双方向無線機180は電源が供給されている。しかし、双方向無線装置180に付いては送信時及び受信時を除いては通電制御状態に置かれる。
【0021】
次に、第1のシーケンスのフローについて説明する。図5は、第1のシーケンスを現すフローチャートである。先ずは、開始すると環境センサ110の順番を示す変数Iに1が代入され、RTCがオンになり第1シーケンスが開始される(工程101)。RTCの信号が電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR2に入力され、電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR2がオンになり電源供給される(工程102)。マルチプレクサーが環境センサー110を選択し、選択された環境センサー110が温度センサー101の場合は温度センサー101に電源供給をし(工程103)、湿度センサー102の場合は湿度センサー102に電源を供給し(工程104)、日照センサー103の場合は日照センサー103に電源を供給し(工程105)、臭気センサー104の場合は臭気センサー104に電源を供給する(工程106)。OPE-A+A/DC150が電源供給された環境センサー110の測定値を増幅する(工程107)。OPE-A+A/DC150が環境センサー110のアナログ信号をアナログ・ディジタル変換する(工程108)。次に、EEPROMに記録された検量線や校正値を読み出す(工程109)。読み出された検量線や校正値で数値化された環境センサー値を校正する(工程110)。校正された校正値をEEPROMに書き込む(工程111)。測定済みの環境センサー110の電源を切る(工程112)。次の環境センサー110を選択する(工程113)。全ての環境センサーが測定されるまで工程103から工程113までが繰り返されて、環境センサ110の測定を行う(工程114)。全ての環境センサー110の測定が終了すると電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR2を切って、電源供給を止める(工程115)。これで測定サイクル1回が終了したことになる。
【0022】
次に、第2のシーケンスのフローに付いて説明する。図6は、第2のシーケンスを現すフローチャートである。開始すると環境センサ110の順番を示す変数Kに1が代入され、RTCがオンになり第2のシーケンスが開始する(工程201)。RTCの出力を受けて電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR1がオンになり、EPROM+Buf160、中央処理装置170、双方向無線機180に電源供給される(工程202)。電源供給を受けた中央処理装置170がイニシャライズを開始する(工程203)。電力消耗を押さえる為に使用しない双方向無線機180を通電制御状態にする(工程204)。中央処理装置170はデータ送信をする為のパケットのヘッダーを作成する(工程205)。次に、EEPROMに格納された各環境センサーの測定値を選択する(工程206)。選択(K=1の場合)が温度センサー101であれば、温度センサー101の測定値を選択する(工程207)。選択(K=2の場合)が湿度センサー102であれば、湿度センサー102の測定値を選択する(工程208)。選択(K=3の場合)が日照センサー103であれば、日照センサー103の測定値を選択する(工程209)。選択(K=4の場合)が臭気センサー104であれば、臭気センサー104の測定値を選択する(工程210)。次に、選択された環境センサー110の値を読み込む(工程211)。読み込まれた環境センサー110の値をパケットに組み込む(工程212)。次の環境センサー110を選択する(工程213)。選択を環境センサー110の全てにおいて行う(工程214)。
【0023】
全ての環境センサー110の測定値がパケットに組み込まれた後に、双方向無線機180を送信状態に切り替える(工程215)。そして、パケットを送信する(工程216)。双方向無線機180を受信モードにし、送信先からの信号を受信する(工程217)。送信先の受信確認を行う(工程218)。パケットが正しく受信されたことが確認されなかった場合は、工程216に戻り、パケットの再送を行う。一方、正しく受信された場合は次の工程219に進む。次に、命令等を受け取る受信に関してリトライの回数を指定する(工程219)。先ず、双方向無線機180を受信状態にする(工程220)。次に、双方向無線機180が命令等の情報の受信を行う(工程221)。受信が終わると双方向無線機180を通電制御状態にする(工程222)。条件等の受信があったかどうかの判断をする(工程223)。条件等の受信が無かった場合は、受信回数をインクリメントする(工程224)。受信回数が指定回数を越えた場合(工程225)は、電源カットオフ機能付き電圧制御半導体VR1をオフにして電源を切り(工程229)、受信回数が指定回数を越えない場合は一定時間待った後に(工程226)、再度、命令・条件等の受信を行う(工程221)。また、命令・条件等の受信があった場合(工程223)は、受信した情報から命令や条件等を解読して(工程227)、その値が条件の場合はEEPROM160に格納する(工程229)。
【0024】
図7は、第1のシーケンスと第2のシーケンスとの関係を示すフローチャートである。開始されると、変数Nに指定回数が入力され、現在の回数を表す変数Iに1が代入される(工程301)。なお、本実施例では、第1のシーケンスを3回行うことにする。つまり、環境センサー110の測定が3回であることになる。次に、環境データを収集するシーケンスが稼動する(工程302)。現在の測定回数に1を加算し(工程303)、現在の測定回数が指定回数に達したか否かを判断する(工程304)。現在の回数が指定回数に達しないと判断したとき、再び、データの収集シーケンスを稼動する(工程302)。一方、現在の測定回数が指定回数に達したか否かを判断する(工程304)。現在の回数が指定回数に達したと判断したとき、環境データを送信するシーケンスを稼動する(工程305)。すなわち、第2のシーケンスが1回、実行される。これは、環境センサー値の電送を1回行う事を意味する。そして、その後にシーケンス処理が終了する。
【実施例2】
【0025】
本実施例では本発明の無線装置の応用例について説明する。第1の応用例としてビルの空調を管理する環境センサーネットワークと、第2の応用例として電信柱に設置され、電信柱に付随する設備の情報提供を行う無線ネットワークについて説明する。
【0026】
図9は、ビルの空調管理を行う目的の環境センサーネットワークの模式図である。本応用例では3種類の無線装置910、920、930が使われる。先ずは環境センサー、例えば温度、湿度、日照等のセンサーを搭載した環境センサーノードと呼ばれる無線装置930である。次に、環境センサーを持たずに電波の中継を行うのみの機能を持つのが、通信用ノード920である。階の上下を有線ケーブルで結び、通信用ノード920や環境センサーノード930から発せられた電波を受け、又は電波を発する基地局910からなる。基地局に送られる送信パケットは、パケットの先頭であることを示す10101010にヘッダーが続く。その後に、3回の温度測定値、3回の湿度測定値、3回の日照測定値、3回の臭気測定値が続く。また、各測定値間には、SPが挿入される。3回目の臭気測定値の後は、CRCなどのパケット終了信号が続き。
【0027】
図9では、5個の環境センサーノード930a、930b、930c、930d、930eと4個の通信ノード920a、920b、920c、920dが基地局910と通信する様を示している。この場合、環境センサーノード930a、930b、930c、930d、930eも通信用ノード920a、920b、920c、920dと同様、マルチホップの通信用ノード920a、920b、920c、920dの役目を担う。図9で示す「行き」の矢印に従って電波のホッピングが遂行されるときは、どのような順路で終端の環境センサーノード930a、930b、930c、930d、930eまで到達するかを決定する。信号が終端の環境センサーノード930a、930b、930c、930d、930eまで到達し、順路が確定されると、その順路を逆送し、今度は基地局910に向かって信号が発せられる。信号が環境センサーノード930a、930b、930c、930d、930eに到達すると、環境センサーから得られた情報を信号の最後尾又は指定された部分に付加する。環境センサーノード930a、930b、930c、930d、930eは、情報が新たに付加された信号を順路に従って発信する。順路内の環境センサーノード930a、930b、930c、930d、930eで同様の作業が繰り返し行われるので、信号が基地局910に届くときには、図9にある環境センサーノード930a、930b、930c、930d、930eが検知した数値を基地局910が入手できる事となる。これらのデータを基に、空調システムがきめの細かい温度管理を行うことが可能となる。環境センサーのー度と通信ノードに付いては、特定の位置に設置されることは希であるため、電源は電池、例えば乾電池や小型バッテリーである。通常、温度センサーのレスポンス時間は概ね数分である。従って、環境センサー情報は十数分に1回程度である。即ち、稼働時間に対し、待ち時間の割合が非常に長いので、本発明の無線装置を使う事で電池の消耗を低く押さえる効果を持つ。電池の消耗を押さえる事により、電池交換頻度を低く押さえる事ができる。また、消費電力を低く押さえる事で発電能力の低い発電器、例えば太陽電池やピエゾ効果電池と2次電池の組み合わせると、電池交換不要の無線装置が可能となる。
【0028】
次に、電信柱の管理を目的とした無線ネットワークに付いて説明する。図10は、電信柱の管理を目的とした無線ネットワークを示す模式図である。測定ノード1010a、1010b、1010c、1010dを各電信柱1030a、1030b、1030c、1030dに取り付ける。測定ノード1010a、1010b、1010c、1010dは、電信柱1030a、1030b、1030c、1030dに関する状態、例えば変圧トランス1020a、1020cの発熱状態、電線断線、過電流及び電線のたるみ、電信柱の傾斜1030bや破断などの測定を行う。同様に気象情報、例えば気温、湿度、風向、風速、日照、天気情報を収集する目的も持つ。
測定ノード1010a、1010b、1010c、1010dは電灯線から電気の供給を受けることが出来るため、通常は電池で駆動しなくてもよい。しかし、災害時などの緊急時に電気の供給が止まった時の為に、予備の電源として電池を装備しておく必要がある。また、電源の供給を実施例1の無線装置と同じにしておく事で、緊急時に電灯線が送電出来なくなった時に長時間稼働する事が可能になる。また、通常時でも電信柱1030a、1030b、1030c、1030dの状態を確認する作業の頻度は多くて1日1回と見込まれるので、その他の時間は電源供給を止めておく事で、消費する電流量を削減できる。一般的に、一つの電力会社が使用する電信柱の数は300万本以上である為、実施例1の無線装置の電源供給方法を用いれば、大きな省エネルギー効果をもたらし、同時にオペレーションコストを大幅に下げる効果を持つ。
【0029】
一方、電信柱の管理を目的とした無線ネットワークで用いられる無線の規格は、電信柱の間隔が40m以上にも及ぶ事が有るため、特定省電力無線規格を用いるのが好ましい。特定電力無線規格の無線機は、微弱無線規格の無線機と比較して一般的に10倍以上の電力を消費するが、通常は電灯線から電気の供給を受ける為、継続作動が可能である。但し、特定省電力無線の規格は高周波出力を空中線電力で規定している為、送信電力を指向性空中線を用いて送信する相手の方向に集中させることができる為、送信電力を押さえ、且つ混信を押さえて通信することが出来る。
【0030】
図10では、変圧トランスが発熱した場合1030cと電信柱が傾斜した場合1030bを示しているが、変圧トランス1020cの発熱は温度センサーで、電信柱の傾斜1030bは水準モニターで測定することができる。
【0031】
なお、命令を発したり測定値を収集したりする基地局は、図10では示されていないが、図10の右側に位置する。基地局は、通常、電力会社のコンピュータや有線・無線ネットワークに接続されている。本実施例で示す電信柱1030a、1030b、1030c、1030dの管理を目的とした無線ネットワークは、電信柱1030a、1030b、1030c、1030dに測定ノード1010a、1010b、1010c、1010dが敷設されている為、緊急事態や故障等で測定ノード1010a、1010b、1010c、1010dが連続的に数個破損すると、破損した測定ノード以降の情報が取れなくなる危険性がある。それを補うのが、固定された基地局の機能をも持つ移動式基地局である。移動式基地局は、固定された本来の基地局が持つのと同等の通信機能を持ち、任意の測定ノード、例えば破損した測定ノード以降の測定ノードと通信して、任意の測定ノードの情報や破損した測定ノード以降の情報を簡易的に得る事が出来る装置である。
【0032】
移動式基地局には大きく分けると、車載型とハンディーターミナル型の2種類ある。図11は、ハンディーターミナル型の移動式基地局の外観図を示す。本実施例のハンディーターミナル1100は、主たる表示装置1110と2つの補助表示装置1120a、1120bを持ち、入力装置としてファンクションキー1130を持つ。ハンディーターミナル1100の表示装置1110、1120a、1120bは情報、例えば主たる表示装置1110で通信した測定ノードから受け取った情報、予備の表示装置1120a、1120bは通信状態、を表示する。ファンクションキー1130は予め決められた命令、例えば測定命令の発信、受信データの表示、通信の切り替え等、を発する為の入力装置である。アンテナ1140は、測定ノードと送受信を行うために、測定ノードからの信号を受信し、測定ノードに命令等を送信する。ハンディーターミナル1100は、屋外で使用されることから高温や低温に対する対温度特性、防水性、堅牢性等の性能が要求される。
【0033】
ハンディーターミナル1100の使い方としては無線ネットワークが破断した際に、現地に保守要員等が赴き、現場に於いて破損した測定ノード以降の無線ネットワークの情報を収集したり、破損の原因の究明などに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】環境センサー搭載の無線装置のブロック回路図
【図2】VR1及びVR2の出力タイミングチャート
【図3】第1のシーケンスの電源供給タイムチャート
【図4】第2のシーケンスの電源供給タイムチャート
【図5】第1のシーケンスのフローチャート
【図6】第2のシーケンスのフローチャート
【図7】総合シーケンスのフローチャート
【図8】パケットの形式
【図9】ビル空調管理の模式図
【図10】電信柱管理用無線ネットワークの模式図
【図11】ハンディーターミナルの模式図
【符号の説明】
【0035】
10 無線装置
101 温度センサー
102 湿度センサー
103 日照センサー
104 臭気センサー
110 環境センサー
120 水晶発信子
125 リアルタイムクロック
130 電源
140 マルチプレクサー
150 半導体素子OPE-A+A/DC
160 記憶素子EPROM+Buf
170 中央処理装置
180 双方向無線機
190 空中線
910 基地局
920、920a、920b、920c、920d 通信用ノード
930、930a、930b、930c、930d、930e 環境センサーノード
1010a、1010b、1010c、1010d 測定ノード
1020a、1020c 変圧トランス
1030a、1030b、1030c、1030d 電信柱
1100 ハンディーターミナル
1110 主たる表示装置
1120a、1120b 補助表示装置
1130 ファンクションキー
VR1、VR2 電源カットオフ機能付き電圧制御半導体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶発信子と、
前記水晶発信子発振した信号を受けて作動するリアルタイムクロックと、
前記リアルタイムクロックの信号でそれぞれ個別に電圧制御を行う複数の電圧制御半導体と、
前記電圧制御半導体に電源を供給する電源と、
前記電源により環境データを測定する環境センサーと、
前記電源により前記環境センサーで測定された前記環境データをアナログ・ディジタル変換する半導体素子と、
前記電源により前記半導体素子で変換された前記環境データを送信し、命令や条件の受信を行う双方向無線機と、
を有する無線装置。
【請求項2】
前記電圧制御半導体は、前記環境センサーが前記環境データの測定が終了すると、前記電源が前記環境センサーに電力供給を停止する請求項1に記載した無線装置。
【請求項3】
前記電圧制御半導体は、前記双方向無線機が前記環境データを送信した後、前記双方向無線機に電力供給を停止するように前記電源を制御する請求項1又は2に記載した無線装置。
【請求項4】
部屋の中に取り付けて、前記部屋の環境を測定する請求項1乃至3のいずれか1つに記載した無線装置。
【請求項5】
電信柱に取り付けて、前記電信柱が倒壊しているか否かの情報を測定する請求項1乃至3のいずれか1つに記載した無線装置。
【請求項6】
電信柱に取り付けて、前記電信柱に取り付けられたトランスに異常が発生したか否かの情報を測定する請求項1乃至3のいずれか1つに記載した無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−79669(P2007−79669A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263354(P2005−263354)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(305018823)盛岡セイコー工業株式会社 (51)
【Fターム(参考)】