説明

焦点検出装置および撮影装置

【課題】一対の像信号の位相差に基づいて検出された焦点ずれ量に補正を加えるための補正値を正確且つ簡単に求める。
【解決手段】キャリブレーションモードの際には、一対の像信号の位相差に基づいて焦点ずれ量を検出する第1の焦点検出手段101,100、像信号のコントラストの相対比較から焦点状態を検出する第2の焦点検出手段106,100、それぞれにて焦点ずれ量を検出し、各焦点ずれ量の差を補正値として算出する制御手段100を有し、キャリブレーションモードの際に、キャリブレーション用の擬似被写体画像を生成する擬似被写体画像生成手段102を設け、擬似被写体画像を焦点検出の対象として外部の表示装置200〜202に表示させた状態で、各焦点検出手段それぞれにて焦点ずれ量を検出させて補正値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出センサで光電変換された一対の像信号の位相差に基づいて焦点ずれ量を検出する第1の焦点検出手段と、撮像センサで光電変換された像信号のコントラストを評価して焦点ずれ量を検出する第2の焦点検出手段とを具備する焦点検出装置および撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラの自動焦点検出装置として、撮影レンズの異なる射出瞳領域を通過した被写体からの光束を、一対のラインセンサ上に結像させ、被写体像を光電変換して得られた一対の像信号の相対位置変位量を求めることにより、被写体のデフォーカス量を検出して、これに基づいて撮影レンズの駆動を行う、いわゆる位相差検出方式の自動焦点装置が良く知られている(特許文献1)。
【0003】
また、撮像素子を用いたデジタルスチールカメラでは、撮影レンズの焦点位置を変えながら、撮像素子で得られた被写体像のコントラスト評価を行うことで合焦位置を検出する、いわゆるコントラスト検出方式の自動焦点装置も良く知られている(特許文献2)。
【0004】
また、上記の位相差検出方式とコントラスト検出方式の両方を備えた撮像装置において、予め位相差検出方式で検出した合焦位置とコントラスト検出方式で検出した合焦位置の差を補正値として記憶しておき、通常撮影には位相差検出方式で検出した合焦位置と、記憶しておいた補正値から撮影レンズを駆動するという撮像装置も知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平09−054242号公報(図3参照)
【特許文献2】特開2001−004914号公報(図1参照)
【特許文献3】特開平2000−292684号公報(図14参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示の位相差検出方式の自動焦点装置は、ある焦点位置から合焦位置までのデフォーカス量を検出することができるので、合焦検出にかかる時間が短い。しかしながら、位相差検出方式で得られた被写体光路と、実際に撮影する場合の被写体光路は異なるため、位相差検出方式で検出した合焦位置と撮像面での合焦位置に誤差が生じる。
【0006】
また、特許文献2に開示のコントラスト検出方式の自動焦点装置は、撮影での被写体光路で焦点検出しているため、撮像面での合焦位置を精度よく検出することができる。しかしながら、撮影レンズの焦点位置を変えながらコントラスト評価演算をする必要があり、合焦位置に至るまでに時間がかかってしまうという問題が生じる。
【0007】
また、特許文献3に開示の撮像装置では、位相差検出方式により検出した合焦位置ずれを補正値により補正できるが、補正値を検出する際の被写体の条件によっては適切な補正値を検出できず、結果として正確な補正値を得ることが出来ないといった問題を有していた。例えば、被写体のコントラストが低い場合は、位相差検出方式の検出結果やコントラスト検出方式の検出結果の誤差が大きくなってしまうからである。
【0008】
また、コントラストの高い測定用の擬似被写体画像(以下、チャート画像とも記す)を用いる場合でも、チャート画像と焦点検出視野を正確に合わせるのが非常に困難であり、正しい補正値を求めることができない。
【0009】
このように、測定条件に応じて補正値が変化するため、本来の正しい補正値を検出するには所定の測定条件にする必要がある。しがしながら、工場などであれば所定の測定条件を作り出すのは容易であるが、一般ユーザーにとって所定の測定条件を作るのは非常に困難である。
【0010】
(発明の目的)
本発明の目的は、一対の像信号の位相差に基づいて検出された焦点ずれ量に補正を加えるための補正値を正確に且つ簡単に求めることのできる焦点検出装置および撮影装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、光電変換された一対の像信号の位相差に基づいて焦点ずれ量を検出する第1の焦点検出手段と、光電変換された複数の像信号のコントラストの相対比較から焦点状態を検出する第2の焦点検出手段と、キャリブレーションモードの際には、前記第1の焦点検出手段と前記第2の焦点検出手段それぞれにて焦点ずれ量を検出し、検出された各焦点ずれ量の差を補正値として算出する制御手段と、を有し、焦点検出時には、前記第1の焦点検出手段で検出された焦点ずれ量に前記補正値を加え、これを焦点検出情報とする焦点検出装置において、前記キャリブレーションモードの際に、キャリブレーション用の擬似被写体画像を生成する擬似被写体画像生成手段を設け、前記制御手段は、前記擬似被写体画像を焦点検出の対象として外部の表示装置に表示させた状態で、前記第1の焦点検出手段と前記第2の焦点検出手段それぞれにて焦点ずれ量を検出させて前記補正値を算出する焦点検出装置、または、該焦点検出装置を具備した撮像装置とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一対の像信号の位相差に基づいて検出された焦点ずれ量に補正を加えるための補正値を正確且つ簡単に求めることができる焦点検出装置または撮影装置を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例に示す通りである。
【実施例】
【0014】
図1は本発明の一実施例に係わる撮像装置であるところのカメラおよびAF(オートフォーカス)キャリブレーション時に生成されるチャート画像(擬似被写体画像)を表示する表示装置の回路構成を示すブロック図である。カメラ用マイクロコンピュータ(以下、CPUと記す)100には、カメラの各種操作スイッチ群114を検知するための信号入力回路104、撮像センサ106、測光用センサ107、シャッタマグネット118a,118bを制御するためのシャッタ制御回路108、カメラ側表示部109、焦点検出用センサ101が接続されている。また、後述の撮影レンズにはレンズ通信回路105を介してレンズ信号115が出力され、焦点位置や絞りの制御を行っている。
【0015】
カメラ用CPU100内には、AFキャリブレーションに使用するチャート画像を生成する画像生成回路102が内蔵されている。この画像生成回路102で生成されたチャート画像は、映像信号通信回路103を介して表示装置用CPU200へ送信される。表示装置用CPU200はカメラ用CPU100の指示に従って、映像表示回路201により表示部202に対して、チャート画像の表示制御を行ったり、表示部の大きさ情報などをカメラ用CPU100へ伝達する通信制御を行ったりする。
【0016】
カメラ用CPU100は、測光用センサ107、焦点検出用センサ101を制御することで、被写体の輝度を検出し、不図示の撮影レンズの絞り値やシャッタスピードを決定する。そして、レンズ通信回路105を介して絞り値を制御する。また、シャッタを制御回路108を介してシャッタマグネット118a,118bの通電時間の制御を行い、撮像センサ106を制御することで撮影動作を行う。また、カメラに内蔵されているカメラ側表示部109では、撮影画像を表示したり、ユーザーに対して、警告や指示の内容を表示したりする。
【0017】
カメラ用CPU100内には、カメラ動作を制御するプログラムを格納したROM(不図示)、変数を記憶するためのRAM(不図示)、諸パラメータを記憶するためのEEPROM(不図示)が内蔵されている。カメラの各種モードの設定はスイッチ群114の設定で決定される。
【0018】
図2は、図1のカメラと表示装置を接続した際の様子を示す外観図である。
【0019】
図2ではカメラと表示装置を画像通信ケーブルを用いて接続しているが、カメラ側で生成した画像をワイヤレスで表示装置へ送信するような構成でも良い。
【0020】
図3は、上記構成のカメラの光学系の配置図である。
【0021】
撮影レンズ60を介して入射した被写体からの光束の大部分はクイックリターンミラー31で上方に反射され、ファインダスクリーン51上に結像する。カメラのユーザーはこの像をペンタプリズム52、接眼レンズ53を介して観察する。撮影光束の一部はクイックリターンミラー31を透過し、後方のサブミラー30で下方へ曲げられて、視野マスク32、赤外カットフィルタ33、フィールドレンズ34、絞り38、二次結像レンズ39を経て焦点検出用センサ101上に結像する。この像を光電変換して得られる像信号を処理することで、撮影レンズ60の焦点状態を検出することできる。撮影に際しては、クイックリターンミラー31が跳ね上がり、全光束は撮像センサ106上に結像され、被写体像の露光が行われる。
【0022】
この実施例におけるカメラは、2つの焦点検出方式を具備しており、第1の焦点検出方式は、焦点検出用センサ101を用いた周知の位相差検出方式であり、画面内の異なる5つの領域の焦点状態を検出することが可能である。
【0023】
図4は、焦点検出系の詳細な構成を示す図である。
【0024】
図3に示したサブミラー30で反射された被写体からの光束は、図4中の視野マスク32の近傍に一旦結像する。視野マスク32は画面内の焦点検出領域を決定するための遮光部材であり、中央に十字形の開口部とその周辺には縦長あるいは横長の開口部を4つ有している。フィールドレンズ34は3つのレンズで構成されており、後方には絞り38が配置され、中央部には上下と左右に一対ずつ計4つの開口部が、また周辺部には8つの開口部がそれぞれ設けられている。
【0025】
フィールドレンズ34は絞り38の各開口部を撮影レンズ60の射出瞳付近に結像する作用を有している。絞り38の後方には二次結像レンズ39があり、6対計12のレンズから構成され、それぞれのレンズは絞り38の各開口部に対応している。
【0026】
視野マスク32、フィールドレンズ34、絞り38、二次結像レンズ39を通過した各光束は、焦点検出用センサ101上の6対12のラインセンサ上に結像する。
【0027】
図5および図6は、各ラインセンサと画面内の焦点検出領域を画定する焦点検出枠の関係を示す図である。
【0028】
図5に示したラインセンサ111a,111b対が図6に示したファインダ80内の焦点検出枠81aに、図5に示したラインセンサ111c,111d対とラインセンサ111e,111f対が図6に示した焦点検出枠81bに、図5に示したラインセンサ111g、111hが図6に示した焦点検出枠81cに、図5に示したラインセンサ111i,111jが図6に示した焦点検出枠81dに、図5に示したラインセンサ111k,111lが図6に示した焦点検出枠81eに、それぞれ対応している。
【0029】
各ラインセンサ上の像を光電変換し、6対の像信号の相対位置変位を検出することで、画面上の中央1ヶ所、周辺4ヶ所の計5ヶ所の測距点について、焦点状態を検出することができる。
【0030】
本実施例では、以下、焦点検出枠81bのラインセンサ111c,111d対による焦点検出領域を「中央縦視野」、焦点検出枠81bのラインセンサ111e,111f対による焦点検出領域を「中央横視野」、とそれぞれ表わす。同様に、焦点検出枠81aのラインセンサ111a,111b対による焦点検出領域を「左縦視野」、焦点検出枠81cのラインセンサ111g,111h対による焦点検出領域を「右縦視野」、焦点検出枠81dのラインセンサ111i,111j対による焦点検出領域を「上横視野」、焦点検出枠81eのラインセンサ111k,111l対による焦点検出領域を「下横視野」、とそれぞれ記す。
【0031】
また、この実施例における第2の焦点検出方式は、撮像センサ106からの像信号を用いた周知のコントラスト検出方式であり、図6で示した焦点検出枠81a,81b,81c,81d,81eに対応した5つの領域の焦点状態を検出することが可能である。
【0032】
図7は、撮像センサ106とコントラスト演算を行う画素範囲の位置関係を示す図である。画素範囲は、各焦点検出枠、焦点検出視野に対応している。
【0033】
図8は、図7の焦点検出枠81bの横視野に対応した画素範囲の拡大した図である。図8のように各画素の信号をS1,S2・・・Snで表すと、コントラスト評価値は次式で表すことができる。
【0034】
【数1】

図9に、位相差検出方式である第1の焦点検出方式で検出した合焦位置から所定間隔おきに焦点位置をシフトさせながら撮影し、撮像センサ106で得られた信号から上式でコントラスト評価値を演算した結果を示す。
【0035】
図9では、第1の焦点検出方式で検出した合焦位置から前後方向に5ポイント所定間隔おきに焦点位置をシフトさせたときのコントラスト評価結果を示しており、この例は−1の焦点位置が最もコントラスト評価値が最大となり、第2の焦点検出方式において検出した合焦位置ということになる。
【0036】
また、第1の焦点検出方式での合焦位置と第2の焦点検出方式での合焦位置の差分値が第1の焦点検出方式での補正量となる。
【0037】
次に、図10を用いて、画像生成回路102で生成するAFキャリブレーション用のチャート画像と、第1の焦点検出方式による焦点検出視野の位置関係について説明する。
【0038】
図10(a)は、画像生成回路102で横線チャート画像を生成し、焦点検出枠81aの左縦視野、焦点検出枠81bの中央縦視野、焦点検出枠81cの右縦視野に対して直交するように表示装置側の表示部202に表示した状態を示す図である。一方、図10(b)は、画像生成回路102で縦線チャート画像を生成し、焦点検出枠81bの中央横視野、焦点検出枠81dの上横視野、焦点検出枠81eの下横視野に対して直交するように表示装置側の表示部202に表示した状態を示す図である。
【0039】
このように、画像生成回路102は、焦点検出を行う視野の向きに対応して、チャート画像を切り換えるので、常に高いコントラストで焦点検出を行うことが可能となる。
【0040】
また、図10(a)および図10(b)では、チャート画像を黒色、それ以外を白色で描いているが、実際は、チャート画像を白色、それ以外を黒色とする。さらに、チャート画像の色は白色以外の色も切り換え可能であり、例えば、赤や緑、青などで表示させることもできる。
【0041】
次に、図1のように構成されたカメラおよびチャート画像を表示する表示装置の本発明に係わる部分の動作を、図11および図12のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0042】
まず、ステップS1001では、カメラ用CPU100は、スイッチ群114の状態からカメラモードがAFキャリブレーションモードに設定されているか否かを判定する。カメラモードがAFキャリブレーションモードに設定されている場合は、ステップS1001からステップS1003の動作へ進む。一方、カメラモードがAFキャリブレーションモード以外に設定されている場合は、ステップS1001からステップS1002の動作へ進み、そのモードに応じたカメラ動作を実行する。
【0043】
AFキャリブレーションモードが設定されているとしてステップS1003に進むと、カメラ用CPU100は、映像信号通信回路103を通して表示装置用CPU200と通信を行い、カメラと表示装置が正しく接続できているか否かを判定する。正しく接続されており、正常に通信できれば、次のステップS1004の動作に進む。通信異常である場合はステップS1001の動作に戻る。
【0044】
ステップS1004では、カメラ用CPU100は、スイッチ群114の状態によりAFキャリブレーションを開始するための開始釦が押されたか否かを判定する。開始釦が押された場合はステップS1005の動作へ進む。開始釦が押されなければステップS1001の動作へ戻る。
【0045】
ステップS1005では、カメラ用CPU100は、表示装置用CPU200と通信することで、表示装置における表示サイズの情報を取得する。ここでは、通信により表示サイズの情報を取得しているが、ユーザーによるスイッチ群114の操作により表示サイズを入力することでその情報を得てもよい。次のステップS1006では、カメラ用CPU100は、撮影レンズ60と通信することで、該撮影レンズ60の焦点距離情報を取得する。続くステップS1007では、カメラから表示装置までの距離情報を取得する。
【0046】
ここで、カメラから表示装置までの距離情報の取得の一例を説明する。カメラ用CPU100は、ユーザーにカメラから表示装置までの距離の入力を要求する。ここでは、カメラに備えられたカメラ側表示部109に要求内容を表示する。この表示を見ることにより、ユーザーはスイッチ群114の操作によりカメラから表示装置までの距離を入力することになる。これにより、カメラ用CPU100は距離情報を取得することができる。
【0047】
図11に戻り、次のステップS1008では、カメラ用CPU100は、上記ステップS1006で得られた撮影レンズ60の焦点距離情報や上記ステップS1007で得られた距離情報を基に、表示装置に表示させるチャート画像の表示範囲を決定する。
【0048】
上記チャート画像の表示範囲の決定方法について、図13(a),(b)を用いて説明する。
【0049】
図13(a)は、カメラから表示装置までの距離と焦点検出範囲の関係を示した図である。ここでの焦点検出範囲とは、左縦視野から右縦視野までの範囲を示している。距離が近いほど焦点検出範囲は狭くなり、反対に、距離が遠いほど焦点検出範囲は広くなる。この焦点検出範囲に合わせてチャート画像の表示範囲を決定する。
【0050】
図13(b)は、撮影レンズ60の焦点距離と焦点検出範囲の関係を示した図である。焦点距離が長く、画角が狭いほど焦点検出範囲は狭くなり、チャート画像の表示範囲も狭くなる。反対に、焦点距離が短く、画角が広いほど焦点検出範囲は広くなり、チャート画像の表示範囲も広くなる。
【0051】
図13(a),(b)の焦点検出範囲は、左縦視野から右縦視野までの範囲を示しているが、上横視野から下横視野までの範囲も同じことが言える。
【0052】
このように、カメラから表示装置までの距離情報や撮影レンズ60の焦点距離情報により、焦点検出範囲が変化する。そして、この焦点検出範囲に合わせるように、チャート画像の表示範囲を決定する。チャート画像の表示範囲は、距離と撮影レンズ60の焦点距離の各パラメータで予め計算、あるいは測定し、カメラ用CPU100内のEEPROMなどの記憶部に記憶しておく。あるいは、距離と撮影レンズ60の焦点距離の各パラメータからチャート画像の表示範囲を求められる式を、カメラ用CPU100内のEEPROMなどの記憶手段に記憶しておく。
【0053】
次のステップS1009では、カメラ用CPU100は、上記ステップS1008で決定したチャート画像の範囲と上記ステップS1005で取得した表示装置の表示範囲を比較して、チャート画像の範囲が表示範囲以内に収まっているか否かを判定する。チャート画像の範囲が表示範囲以内に収まっている場合はステップS1011の動作に進む。一方、チャート画像の範囲が表示範囲を超えている場合はステップS1010の動作へ進む。そして、ユーザーに対して、チャート画像の範囲が表示範囲を超えていることを警告したり、カメラから表示装置までの距離や焦点距離を変更したりするように指示を行う。
【0054】
ステップS1011へ進むと、カメラ用CPU100は、上記ステップS1008で決定したチャート画像の表示範囲内に横線チャート画像を表示できるように画像生成回路102にて生成する。そして、表示装置用CPU200と通信することにより、生成したチャート画像を表示部202に表示する。次のステップS1012では、焦点検出センサ101からの信号により、チャート画像の位置が各視野に対して所定位置になるように調整する。また、チャート画像の間隔についても所定の大きさなるように調整する。
【0055】
ここで、チャート画像の位置の調整について、図14および図15(a),(b)を用いて説明する。
【0056】
図14は、焦点検出視野81a,81b,81cと横線チャート画像の位置関係を示した図である。破線で表した横線チャート画像は、各焦点検出視野に対して少しずれている。この時の焦点検出視野81aに対応しているラインセンサ111aからの信号波形を、図15(a)に示す。横線チャート画像は焦点検出視野81aの中心に対してずれているため、視野の端でしかチャート画像波形を受光できていない。このチャート画像波形が図15(b)のように視野の中心で受光できるように、画像生成回路102でチャート画像を変更する。図15(b)の波形になるように、チャート画像の調整を行うことで、図11(a)の実線で表した横線チャート画像のように、焦点検出視野81aの中心近傍に位置させることができる。
【0057】
また、チャート画像の大きさの一つの要素である間隔の調整について、図16および図17(a),(b)を用いて説明する。
【0058】
図16は、焦点検出視野81a,81b,81cと横線チャート画像の位置関係を示した図である。破線で表した横線チャート画像は、焦点検出視野に対してチャート画像の間隔が広くなっている。このときの焦点検出視野81aに対応しているラインセンサ111aからの信号波形を、図17(a)に示す。横線チャート画像の間隔は、焦点検出視野81aに対して広くなっているため、横線チャート画像の一部しか受光できていない。このチャート画像波形が図17(b)の波形になるように、チャート画像の間隔の調整を行うことで、図16の実線で表した横線チャート画像のような焦点検出視野81aでチャート画像全体を受光できるようになる。
【0059】
このように、焦点検出用センサ101の信号波形からチャート画像の位置や間隔のずれ量(大きさ)を判定して、所定のチャート位置、大きさになるように、画像生成回路102によりチャート画像を生成する。
【0060】
再び図11に戻り、次のステップS1013では、カメラ用CPU100は、縦視野について位相差方式による焦点検出結果に対する補正値の測定および記憶動作を行う(詳細は後述する)。続くステップS1014では、上記ステップS1008で決定したチャート表示範囲内に縦線チャート画像を表示させるように画像生成回路102によりチャート画像を生成する。そして、表示装置用CPU200と通信することにより、生成したチャート画像を表示部202に表示する。
【0061】
次のステップS1015では、カメラ用CPU100は、焦点検出用センサ101からの信号により、チャート画像の位置が各視野に対して所定位置になるように調整する。また、チャート画像の間隔についても所定の大きさなるように調整する。調整方法は上記のステップS1012の動作と同様である。続くステップS1016では、横視野について位相差検出方式による焦点検出結果に対する補正値の測定および記憶動作を行う。そして、ステップS1017にて、画像生成回路102によるチャート画像の生成および表示を終了し、一連のAFキャリブレーション動作を終了する。
【0062】
次に、図11のステップS1013での動作の詳細を、図12のフローチャートを用いて説明する。
【0063】
ステップS2001では、縦視野についてAFキャリブレーションを行う最初の焦点検出視野を選択する。ここでは、中央縦視野を選択する。もちろん、中央縦視野以外の焦点検出視野を選択してもよい。次のステップS2002では、上記ステップS2001で選択した焦点検出視野あるいは、後に説明するステップS2008,S2010で選択した焦点検出視野について、焦点検出センサ101よりの信号から位相差検出方式による焦点検出動作を行う。そして、ステップS2003にて、上記ステップS2002の動作で得られた位相差検出方式による焦点検出結果が合焦しているか否かの判定を行う。合焦していると判定した場合はステップS2005の動作へ進む。合焦していないと判定した場合はステップS2004の動作へ進む。
【0064】
合焦していないとしてステップS2004へ進むと、上記ステップS2002で検出した焦点ずれ量分、フォーカスレンズの駆動を行い、ステップS2002の動作へ戻る。
【0065】
一方、合焦しているとしてステップS2005へ進むと、ここでは上記ステップS2002からステップS2004までの焦点検出動作で検出した焦点検出視野について、撮像センサ106よりの信号からコントラスト検出方式による焦点検出動作を行う。位相差検出方式による合焦位置(ステップS2002〜S2004)で検出した該合焦位置から所定のフォーカス範囲、間隔で検出したコントラスト評価値(図9参照)を基に合焦位置を検出する。コントラスト検出方式による焦点検出についても、位相差検出方式に用いたチャート画像をそのまま使用する。しかしながら、コントラスト検出方式は、デフォーカス位置やチャート画像の空間周波数によって、図18のように、本来の合焦位置でないところに擬似コントラストによる極値が発生し、誤った焦点検出を行ってしまう場合がある。この擬似コントラストによる極値はチャート空間周波数が変わると移動するので、コントラスト検出方式による焦点検出を行う際は、位相差検出方式に用いたチャート画像をそのまま使用した場合の焦点検出結果とチャート画像空間周波数を変えた場合の焦点検出結果とを比較し、両者の結果に差が出た場合は、検出するデフォーカス範囲を広げ、本来の合焦位置を検出する。
【0066】
次のステップS2006では、位相差方式による合焦位置(ステップS2002〜S2004)とコントラスト方式による合焦位置(ステップS2005)の差分値を演算し、位相差方式による焦点検出の補正値としてカメラ用CPU100内のEEPROMに記憶する。続くステップS2007では、縦視野について補正値の測定および記憶動作(ステップS2002〜S2006)を行っているか否かを判定を行う。左縦視野について補正値の測定および記憶動作を行っている場合はステップS2009の動作へ進む。
【0067】
また、左縦視野について補正値の測定および記憶動作を行っていない場合はステップS2008の動作へ進む。そして、このステップS2008では、AFキャリブレーションを行う焦点検出視野として、左縦視野を選択し、ステップS2002の動作へ戻る。
【0068】
ステップS2009へ進むと、今度は右縦視野について補正値の測定および記憶動作(ステップS2002〜S2006)を行っているか否かを判定を行う。右縦視野について補正値の測定および記憶動作を行っている場合は、一連の動作を終了する。
【0069】
また、右縦視野について補正値の測定および記憶動作を行っていない場合はステップS2010の動作へ進む。そして、このステップS2010では、AFキャリブレーションを行う焦点検出視野として、右縦視野を選択し、ステップS2002の動作へ戻る。
【0070】
図11のステップS1016では、横方向の各焦点検出視野(中央横視野、上横視野、下横視野)に対応した焦点検出用センサ101を成すラインセンサや、撮像センサ106を成す画素範囲を使用し、図12のフローチャートと同じ動作を行われるので、ここでの説明は省略する。
【0071】
以上のように、AFキャリブレーションで使用する焦点検出用のチャート画像をカメラ内で生成し、そのチャート画像を外部の表示装置で表示させて前記補正値を求めるようにしている。よって、常にコントラストの高いチャート画像でAFキャリブレーションを行うことができ、精度のよい補正値を得ることができる。
【0072】
また、焦点検出用センサ101からの信号波形を基に、チャート画像が焦点検出視野に合うようにその位置や大きさ(間隔)を決定するようにしているので、ユーザーによる面倒な位置合わせなどの作業を簡素化できるともに、チャート画像と焦点検出視野の位置のずれ等によるAFキャリブレーション動作の失敗を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施例に係わるカメラ及び表示装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】図1のカメラと表示装置を接続した際の様子を示す外観図である。
【図3】図1のカメラの光学系配置図である。
【図4】本発明の実施例に係わる位相差方式の焦点検出装置の光学系配置図である。
【図5】図4の位相差方式の焦点検出装置に具備されるラインセンサを示す図である。
【図6】図4の位相差方式の焦点検出装置における画面内の焦点検出枠を示す図である。
【図7】本発明の実施例に係わる撮像センサとコントラスト検出方式でコントラスト評価値を計算する画素範囲の位置関係を示す図である。
【図8】図7の焦点検出枠81bの中央横視野に対応した画素範囲の拡大した図である。
【図9】本発明の実施例に係わる撮像センサで得られた信号のコントラスト評価値を演算した結果を示す図である。
【図10】本発明の実施例に係わるファインダ内の焦点検出枠とチャートの位置関係を示す図である。
【図11】本発明の実施例におけるAFキャリブレーション動作を説明するためのメインルーチンフローチャートである。
【図12】本発明の実施例におけるAFキャリブレーション動作を説明するためのサブルーチンフローチャートである。
【図13】図1のカメラから表示装置までの距離、撮影レンズの焦点距離、および焦点検出範囲の関係を示した図である。
【図14】本発明の実施例において焦点検出視野とチャート画像位置の関係を示した図である。
【図15】図14の焦点検出視野とチャート画像位置に対応したラインセンサからの信号波形を示した図である。
【図16】本発明の実施例において焦点検出視野とチャート画像間隔の関係を示した図である。
【図17】図16の焦点検出視野とチャート画像間隔に対応したラインセンサからの信号波形を示した図である。
【図18】擬似コントラストによるコントラスト方式の焦点誤検出を説明するための図である。
【符号の説明】
【0074】
100 カメラ用CPU
101 焦点検出用センサ
103 映像信号通信回路
104 信号入力回路
114 スイッチ群
105 レンズ通信回路
115 レンズ通信信号
106 撮像センサ
107 測光用センサ
109 カメラ側表示部
200 表示装置用CPU
201 映像表示回路
202 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換された一対の像信号の位相差に基づいて焦点ずれ量を検出する第1の焦点検出手段と、
光電変換された複数の像信号のコントラストの相対比較から焦点状態を検出する第2の焦点検出手段と、
キャリブレーションモードの際には、前記第1の焦点検出手段と前記第2の焦点検出手段それぞれにて焦点ずれ量を検出し、検出された各焦点ずれ量の差を補正値として算出する制御手段と、
を有し、焦点検出時には、前記第1の焦点検出手段で検出された焦点ずれ量に前記補正値を加え、これを焦点検出情報とする焦点検出装置において、
前記キャリブレーションモードの際に、キャリブレーション用の擬似被写体画像を生成する擬似被写体画像生成手段を設け、
前記制御手段は、前記擬似被写体画像を焦点検出の対象として外部の表示装置に表示させた状態で、前記第1の焦点検出手段と前記第2の焦点検出手段それぞれにて焦点ずれ量を検出させて前記補正値を算出することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
前記擬似被写体画像生成手段は、前記焦点検出センサにて焦点検出を行う焦点検出視野の向きに応じて前記擬似被写体画像の向きを切り換えることを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項3】
前記擬似被写体画像生成手段は、撮影レンズの焦点距離情報に基づいて、前記焦点検出視野に合うように前記擬似被写体画像の位置および大きさを決定することを特徴とする請求項1または2に記載の焦点検出装置。
【請求項4】
前記擬似被写体画像生成手段は、前記表示装置までの距離情報に基づいて、前記焦点検出視野に合うように前記擬似被写体画像の位置および大きさを決定することを特徴とする請求項1または2に記載の焦点検出装置。
【請求項5】
前記擬似被写体画像生成手段は、前記表示装置での表示可能範囲の情報を取得し、これに基づいて前記擬似被写体画像の位置および大きさを決定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の焦点検出装置。
【請求項6】
前記擬似被写体画像生成手段は、前記擬似被写体画像が前記焦点検出視野の中央付近で得られるように、前記擬似被写体画像の位置および大きさを決定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の焦点検出装置。
【請求項7】
前記擬似被写体画像生成手段は、前記焦点検出センサからの信号波形に基づいて、前記擬似被写体画像の位置および大きさが前記焦点検出視野に合うようにすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の焦点検出装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の焦点検出装置を具備したことを特徴とする撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−41095(P2007−41095A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222464(P2005−222464)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】