説明

熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物及び当該樹脂で成形したプレモールドパッケージ

【課題】高輝度LED及びソーラセル用プレモールドパッケージとして好適な熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)熱硬化性シリコーン樹脂、(B)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と酸無水物との組み合わせ、またはこれらを反応させて得られたプレポリマー、(C)無機質充填剤、及び(D)硬化促進剤を含む熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性に優れ、得られる硬化物は耐熱性、耐光性、耐紫外線性に優れると共に、良好な強度を有し、熱による変色、特に黄変が生じがたいために、信頼性に優れた硬化物を与える熱硬化性樹脂組成物、該組成物の硬化物で成形したLED用やソーラセル用プレモールドパッケージ、並びに、該パッケージを用いたLED装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体・電子機器装置の封止材に要求される信頼性は、装置の薄型化、小型化と共に、高出力化によって、益々厳しくなっている。一例として、LEDやLD(lazer diode)等の半導体素子は、小型で効率よく鮮やかな色の発光をし、また半導体素子であるため球切れがなく、駆動特性が優れ、振動やON/OFF点灯の繰り返しに耐久性が高い。そのため、各種インジケータや種々の光源として利用されている。
このようなLEDなどの光半導体素子を用いたパッケージ材料のひとつとして、ポリフタルアミド樹脂(PPA)が現在広く使用されている。
【0003】
しかしながら、今日の光半導体技術の飛躍的な進歩により、光半導体装置の高出力化及び短波長化が著しい。そのため、高エネルギー光を発光又は受光可能なフォトカプラー等の光半導体装置では、特に無着色・白色の材料として従来のPPA樹脂を用いた半導体素子封止及びケースでは、長期間使用による劣化が著しく、色ムラの発生や封止樹脂の剥離、機械的強度の低下等が起こりやすい。このため、このような問題を効果的に解決することが望まれた。
【0004】
更に詳述すると、特許第2656336号公報(特許文献1)には、封止樹脂が、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を構成成分とするBステージ状の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記構成成分が分子レベルで均一に混合されている樹脂組成物の硬化体で構成されている光半導体装置が記載されている。この場合、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が主として用いられ、トリグリシジルイソシアネート等を使用し得ることも記載されている。しかし、トリグリシジルイソシアネートは、該特許文献1の実施例においてビスフェノール型エポキシ樹脂に少量添加使用されているもので、本発明者らの検討によれば、このBステージ状半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、特に高温・長時間の放置で黄変するという問題がある。
また、発光素子封止用エポキシ樹脂組成物にトリアジン誘導体エポキシ樹脂を使用することが、特開2000−196151号公報(特許文献2)、特開2003−224305号公報(特許文献3)、特開2005−306952号公報(特許文献4)に記載がある。しかし、これら樹脂組成物で製造したパッケージなどに高輝度のLEDを搭載した場合、長時間点灯で該パッケージが変色してくるといった不具合がある。
【0005】
なお、本発明に関連する公知文献としては、上記の公報に加えて、下記特許文献5〜7及び非特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2656336号公報
【特許文献2】特開2000−196151号公報
【特許文献3】特開2003−224305号公報
【特許文献4】特開2005−306952号公報
【特許文献5】特許第3512732号公報
【特許文献6】特開2001−234032号公報
【特許文献7】特開2002−302533号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】エレクトロニクス実装技術2004.4の特集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、シリコーン樹脂とエポキシ樹脂とのハイブリッド材料を用いることによりシリコーン樹脂の強度を改善し、長期間にわたり耐熱性、耐光性を保持し、均一でかつ黄変の少ない硬化物を与える熱硬化性樹脂組成物及び該組成物の硬化物で成形したLED用プレモールドパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、熱硬化性シリコーン樹脂、トリアジン誘導体エポキシ樹脂、酸無水物、硬化促進剤、無機質充填剤からなる熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物が、硬化性に優れ、耐熱性、耐光性に優れると共に、良好な強度を有する硬化物となり得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、第一に、
(A)熱硬化性シリコーン樹脂、
(B)(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(B−2)酸無水物との組み合わせ、またはこれらを反応させて得られたプレポリマー、
(C)無機質充填剤、及び
(D)硬化促進剤
を含み、
(A)成分/(B)成分の質量比が5/95〜95/5の範囲内であり、
(C)成分の量が(A)成分と(B)成分との総量100質量部に対して100〜1000質量部である熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物を提供する。
該熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物において、好ましくは、上記(A)成分の熱硬化性シリコーン樹脂が下記平均組成式(1):
Si(OR(OH)(4−a−b−c)/2 (1)
(式中、Rは同一又は異種の炭素原子数1〜20の有機基、Rは同一又は異種の炭素原子数1〜4の有機基を示し、a、b及びcはそれぞれ0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、及び0.001≦c≦1.0を満たす数であり、但し0.8≦a+b+c<2である。)
で表されるものである。
該熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物の好ましい一実施形態において、上記(B)成分は(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂、及び(B−2)酸無水物からなるものである。
該熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物の別の好ましい一実施形態において、上記(B)成分が、(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(B−2)酸無水物とを、〔(B−1)成分が有するエポキシ基〕/〔(B−2)成分が有する酸無水物基〕のモル比0.6〜2.0で反応して得られた固体反応生成物からなるものである。
上記本発明の熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物において、(C)成分の無機質充填剤は、好ましくは、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、及び酸化チタンからなる群の中から選ばれる少なくとも一種である。
本発明は、また、上記本発明の熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物を成形して得られたプレモールドパッケージを提供する。
本発明は、さらに、上記本発明の熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物を成形して得られたプレモールドパッケージと、該パッケージに搭載されたLEDチップを有するLED装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物は、硬化性に優れ、良好な強度を有すると共に、長期間にわたり耐熱性、耐光性を保持し、均一でかつ黄変の少ない硬化物を与えるものである。そのため、本発明の組成物の硬化物にて成形したプレモールドパッケージは特に高輝度LED用やソーラセル用として産業上特に有用である。また、LED素子のアンダーフィル材としても有効である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
<(A)熱硬化性シリコーン樹脂>
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂としては、例えば、下記一般式(1):
Si(OR(OH)(4−a−b−c)/2 (1)
(式中、Rは同一又は異種の炭素原子数1〜20の有機基(特に炭化水素基)であり、例えば炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、又は炭素原子数7〜20のアラルキル基を示す。Rは同一又は異種の炭素原子数1〜4の有機基(特に炭化水素基)を示し、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦1.0 、0.8≦a+b+c<2 を満たす数である。)
で表される水酸基を含有するシリコーンポリマーである。
【0013】
一般式(1)で表される熱硬化性シリコーン樹脂は、下記式(2)
SiX4−d (2)
(式中、Rは前記の通りであり、Xはハロゲン原子、アルコキシ基で、dは1、2又は3である。)
で示されるオルガノシランの加水分解縮合物として得ることができる。
【0014】
ここで、Rで示されうる上記炭素原子数1〜20のアルキル基としては、炭素原子数1〜10のアルキル基がより好ましく、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0015】
で示されうる炭素原子数2〜20のアルケニル基としては、炭素原子数2〜10のアルケニル基がより好ましく、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基等が挙げられる。
【0016】
で示されうる上記炭素原子数6〜20のアリール基としては、炭素原子数6〜10のものがより好ましく、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0017】
で示されうる上記炭素原子数7〜20のアラルキル基としては、炭素原子数7〜10のものがより好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0018】
上記式(1)及び式(2)におけるRは、これらの中でも、特にメチル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0019】
上記Xで示されうるハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子等が挙げられ、このましくは塩素原子である。
【0020】
また、Xで示されうるアルコキシ基は炭素原子数1〜5、好ましくは炭素原子数1〜3のものが挙げられる。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等であり、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基である。
【0021】
また、上記式(2)におけるdは、1〜3の整数を表す。dが2又は3である場合、即ちRが複数ある場合,各Rは互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。dは、固体状のポリシロキサンを得ることができる点や高度な耐熱性、耐紫外線性を有することから、d=1であることが好ましい。
【0022】
上記式(2)で表されるシラン化合物の具体例としては、メチルビニルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のジオルガノジクロロシラン、オルガノトリクロロシラン及びオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフエニルジエトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン等が挙げられる。特にメチルトリクロロシランを用いることが好ましい。
【0023】
上記加水分解性基を有するシラン化合物の加水分解及び縮合は、通常の方法で行えばよいが、例えば酢酸、塩酸、硫酸等の酸触媒、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ触媒の存在下で行うことが好ましい。例えば加水分解性基としてSi−クロル基を含有するシランを使用する場合は、水添加によって発生する塩酸を触媒として、目的とする適切な分子量の加水分解縮合物を得ることができる。
【0024】
式(2)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合の際に添加される水の量は、当業者には周知であり、例えばXが塩素原子である場合には、上記加水分解性基を有するシラン化合物中の加水分解性基(即ち、塩素原子)の合計量1モル当り、通常、0.9〜1.6モルであり、好ましくは1.0〜1.3モルである。この添加量が0.9〜1.6モルの範囲を満たすと、後述の組成物は作業性が優れ、その硬化物は強靭性が優れたものとなる。
【0025】
上記加水分解性基を有するシラン化合物は、通常、アルコール類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類、芳香族化合物類等の有機溶剤中で加水分解して使用することが好ましい。具体的には、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類が好ましく、組成物の硬化性及び硬化物の強靭性が優れたものとなるので、イソプロピルアルコールがより好ましい。
【0026】
この場合、加水分解及び縮合の反応温度は、好ましくは10〜120℃、より好ましくは20〜100℃である。反応温度がかかる範囲を満たすと、ゲル化することなく、次の工程に使用可能な固体の加水分解縮合物が得られる。
【0027】
このようにして得られる(A)成分の融点は、50℃〜100℃であり、好ましくは70℃〜80℃である。50℃未満及び100℃を超える場合は、次工程の混合・混練作業が難しくなることがある。
【0028】
上記平均組成式(1)中、Rは同一又は異種の炭素原子数1〜4の有機基(特に、炭化水素基)であり、例えばアルキル基又はアルケニル基が挙げられる。また、ORはシロキサン樹脂の末端基のうち、シラノ−ル基(Si−OH)以外の部分を示し、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられ、原料の入手が容易なメトキシ基、イソプロポキシ基が好ましい。
【0029】
上記平均組成式(1)中、a、b及びcは、0.8≦a≦1.5 、0≦b≦0.3、0.001≦c≦1.0、0.8≦a+b+c<2 を満たす数であり、より好ましくは、0.9≦a≦1.3 、0.001≦b≦0.2、0.001≦c≦0.5 、0.9≦a+b+c≦1.8である。Rの含有量aが0.8未満では硬くなりクラック防止性が低下し、1.5を超えると有機基が多くなって耐熱性や耐紫外線性が低下する。ORの含有量bが0.3を超えると末端基量が多くなり、反応性が低下し短時間で硬化させることができなくなり、生産性が低下する。OHの含有量cが1.0を超えるとシリコーン樹脂の熱による安定性が低下し、シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物調製時に増粘する不具合が発生する。cが0.001未満では、融点が高くなる傾向があり、作業性に問題が生じる。
【0030】
このような上記平均組成式(1)で表される(A)成分は、一般に4官能シラン由来のQ単位(SiO4/2)、3官能シラン由来のT単位(RSiO3/2)、2官能シラン由来のD単位(R2SiO2/2)、1官能シラン由来のM単位(RSiO1/2)の組み合わせで表現することができるが、(A)成分をこの表記法で表した時、全シロキサン単位の総モル数に対し、RSiO3/2で表されるT単位の含有モル数の比率が70モル%以上であることが好ましい。特に好ましくは90モル%以上である。T単位が70モル%未満では、耐熱性、耐紫外線性が低下するばかりか、硬化したシリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物の膨張係数が大きくなるため、耐クラック性なども低下する。なお、残部は、M、D、Q単位でよく、これらの和が30モル%以下であることが好ましい。
【0031】
このような上記平均組成式(1)の化合物の具体例としては、原料にメチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシランを使用した場合に得られる下記式(3)、(4)などが挙げられる。
(CH1.0Si(OCH0.06(OH)0.111.42 (3)
(C0.7(CH0.3Si(OCH0.07(OH)0.131.4 (4)
【0032】
<(B)成分>
本発明で用いられる(B)成分は、下記(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(B−2)酸無水物からなるもの、又はこれら(B−1)と(B−2)とを予め反応させたプレポリマーである。
【0033】
−(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂−
本発明で用いられるトリアジン誘導体エポキシ樹脂としては、エポキシ基を有する、好ましくは2〜3個有するトリアジン化合物(特に、1,3,5−トリアジン化合物)、特にエポキシ基を2〜3個有するイソシアヌレート環を有する化合物、即ち、イソシアヌレート環を有するエポキシ樹脂が好ましい。このようなイソシアヌレート環を有するエポキシ樹脂は、耐光性や電気絶縁性に優れており、1つのイソシアヌレート環に対して、2個の、より好ましくは3個のエポキシ基を有することが望ましい。具体的には、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(α−メチルグリシジル)イソシアヌレート等を用いることができる。
【0034】
本発明で用いるトリアジン誘導体エポキシ樹脂の軟化点は90〜125℃であることが好ましい。なお、本発明において、このトリアジン誘導体エポキシ樹脂としては、トリアジン環を水素化したものは包含しない。
【0035】
−(B-2)酸無水物−
本発明で用いられる(B−2)成分の酸無水物は、硬化剤として作用するものであり、耐光性を与えるために非芳香族であり、かつ炭素炭素二重結合を有さないものが好ましく、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物などが挙げられ、これらの中でもメチルヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。これらの酸無水物系硬化剤は、1種類を単独で使用してもよく、また2種類以上を併用してもよい。
【0036】
(B)成分を、(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と、(B−2)酸無水物との組み合わせとして構成する場合には、(B−2)酸無水物の配合量としては、上記した(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対し、酸無水物基が0.6〜2.0モルであり、好ましくは1.0〜2.0モル、更に好ましくは1.2〜1.6モルである。0.6モル未満では硬化不良が生じ、信頼性が低下する場合がある。また、2.0モルを超える量では未反応硬化剤が硬化物中に残り、得られる硬化物の耐湿性を悪化させる場合がある。
【0037】
また、(B)成分を、(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と、(B−2)酸無水物とを予め反応させて得たプレポリマーとして構成する場合には、(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(B−2)酸無水物とを、〔(B−1)成分が有するエポキシ基〕/〔(B−2)成分が有する酸無水物基〕のモル比0.6〜2.0で配合し、好ましくは(a)成分として後述するものと同じ酸化防止剤及び/又は(D)成分として後述するものと同じ硬化促進剤の存在下において反応して得られた固体生成物(即ち、プレポリマー)を樹脂成分として使用することもできる。このとき、該固体生成物は粉砕等により微粉末状態で用いることが好ましい。該微粉末の粒子径は10μm〜3mmの範囲が好ましい。上記のモル比は好ましくは1.2〜1.6である。このモル比が0.6未満では硬化不良が生じ、信頼性が低下する場合がある。また、2.0を超えると未反応硬化剤として酸無水物が硬化物中に残り、得られる硬化物の耐湿性を悪化させる場合がある。本発明の熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物としては(B)成分を上記固体状のプレポリマー(特に微粉末状で)として使用した方が作業性のよい固体の熱硬化性樹脂として使用できることから望ましい。
【0038】
上記プレポリマーを合成する際には、必要に応じて、(B−1)成分以外のエポキシ樹脂を本発明の効果を損なわない範囲で一定量以下併用することができる。このエポキシ樹脂の例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂又は4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂のようなビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、及びフェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂、等が挙げられる。これらエポキシ樹脂の中でも耐熱性や耐紫外線性から芳香環を水素化したエポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂が望ましい。また、その他のエポキシ樹脂の軟化点は70〜100℃であることが好ましい。
【0039】
上記プレポリマー合成の詳細な反応条件としては、上記した(B−1)成分と(B−2)成分を、好ましくは(B−1)成分、(B−2)成分、及び(a)成分の酸化防止剤を、70〜120℃、好ましくは80〜110℃にて4〜20時間、好ましくは6〜15時間反応させる。あるいは、(B−1)成分、(B−2)成分及び(D)成分の硬化促進剤を、好ましくは(B−1)成分、(B−2)成分、(a)成分、及び(D)成分を予め30〜80℃、好ましくは40〜60℃にて10〜72時間、好ましくは36〜60時間反応させる。こうして、軟化点が50〜100℃、好ましくは60〜90℃である固体生成物としてプレポリマーを得る。これを本発明の組成物に配合するには、粉砕等により微粉状化して行うことが好ましい。反応して得られる物質の軟化点が、50℃未満では固体とはならず、100℃を超える温度では組成物として成型の時に必要な流動性が低すぎるおそれがある。
【0040】
上記プレポリマーは、下記一般式(5)で示される化合物が例示される。
【0041】
【化1】

(式中、Rは酸無水物残基、nは0〜200の数である。)
【0042】
(A)成分と(B)成分との配合比率(A)/(B)(質量比)が、5/95〜95/5の範囲が望ましい。(A)/(B)が5/95未満では耐候性が不十分となり、95/5を超えると硬化物の強度が不十分となり、プレモールドパッケージの信頼性が不十分となる。より好ましくは(A)/(B)は10/90〜90/10、さらに好ましくは20/80〜80/20の範囲である。
【0043】
−(C)無機充填剤−
本発明のシリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物に配合される(C)成分の無機充填剤としては、通常エポキシ樹脂組成物やシリコーン樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、更にガラス繊維、ウォラステナイトなどの繊維状充填剤、三酸化アンチモン等が挙げられる。好ましくは、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、及び酸化チタンである。これら無機充填剤は一種単独でも二種以上併用してもよい。
【0044】
特に、溶融シリカ、とりわけ溶融球状シリカが好適に用いられ、その粒径は特に限定されるものではないが、本発明の組成物の成形性、流動性からみて、平均粒径は4〜40μm、特には7〜35μmが好ましい。また、組成物をポッテイング又はアンダーフィル する際に高流動化するように、平均粒径が3μm以下の微細領域にある微粒子、4〜8μmの中粒径領域にある微粒子、そして10〜40μmの粗領域にある微粒子を組み合わせて使用することが望ましい。狭部を有するプレモールドパッケージを成形する場合やアンダーフィル材として使用する場合は狭部の厚みに対し平均粒径が、狭部の厚み幅の1/2以下である無機質充填剤を使用した方がよい。
【0045】
上記無機充填剤は、樹脂成分との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものでもよい。
【0046】
このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0047】
無機充填剤の充填量は、(A)成分、(B)成分の総量100質量部に対し、100〜1000質量部であり、特に200〜900質量部が好ましい。100質量部未満では、硬化物が十分な強度を得ることができないおそれがあり、1000質量部を超えると、組成物の増粘による未充填不良や柔軟性が失われることで、LED装置内の剥離等の不良が発生する場合がある。なお、この無機充填剤は、本発明の組成物全体の50〜93質量%、より好ましくは60〜90質量%、の範囲で含有することが好ましい。
【0048】
−(D)硬化促進剤−
該硬化促進剤は、(A)成分の熱硬化性シリコーン樹脂を硬化させる縮合触媒である。この縮合触媒としては、例えば、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジシアンジアミド等の塩基性化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート、コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、スズアセチルアセトナート、ジブチルスズオクチレート、ジブチルスズラウレート、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、等の含金属化合物類、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物、等が挙げられる。この中で特にオクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、アルミニウムトリイソプロポキシドが好ましい。中でも安息香酸亜鉛、有機チタンキレート化合物が好ましく使用される。
【0049】
硬化促進剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対し、好ましくは0.01〜10.0質量部、より好ましくは0.1〜6.0質量部である。
【0050】
<(E)その他添加剤>
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的、効果を損なわない限りその他の成分を添加することができる。代表的な任意成分として下記の(a)酸化防止剤、(b)シリコーン樹脂用硬化触媒、(c)白色顔料を挙げることができる。
【0051】
(a)酸化防止剤:
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いられる(a)成分の酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、硫黄系酸化防止剤を使用でき、酸化防止剤の具体例としては、以下のような酸化防止剤が挙げられる
【0052】
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられ、中でも2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールが好ましい。
【0053】
リン系酸化防止剤としては、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニルアルキル、亜リン酸フェニルジアルキル、亜リン酸トリ(ノニルフェニル)、亜リン酸トリラウリル、亜リン酸トリオクタデシル、トリフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、
ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ジ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホネート等が挙げられ、中でも亜リン酸トリフェニルが好ましい。
【0054】
また、硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0055】
これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で使用できるが、リン系酸化防止剤単独又はフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを組み合わせて使用することが特に好ましい。この場合、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との使用割合は、質量比でフェノール系酸化防止剤:リン系酸化防止剤=0:100〜70:30、特に0:100〜50:50とすることが好ましい。
【0056】
酸化防止剤の配合量は、本発明の樹脂組成物100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.03〜5質量部とすることが好ましい。配合量が少なすぎると十分な耐熱性が得られず、変色する場合があり、多すぎると硬化阻害を起こし、十分な硬化性、強度を得ることができない場合がある。
【0057】
(b)硬化触媒:
この(b)成分の硬化触媒としては、エポキシ樹脂組成物の硬化触媒として公知のものが使用でき、特に限定されないが、第三級アミン類、イミダゾール類、それらの有機カルボン酸塩、有機カルボン酸金属塩、金属−有機キレート化合物、芳香族スルホニウム塩、有機ホスフィン化合物類、ホスホニウム化合物類等のリン系硬化触媒、これらの塩類等の1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、イミダゾール類、リン系硬化触媒、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、メチル−トリブチルホスホニウム−ジメチルホスフェイト、及び第四級ホスホニウムブロマイドが好ましい。
【0058】
硬化触媒の使用量は、組成物全体の0.05〜5質量%、特に0.1〜2質量%の範囲内で配合することが好ましい。上記範囲を外れると、シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性及び耐湿性のバランスが悪くなるおそれがある。
(c)白色顔料:
該白色顔料は、白色着色剤として、白色度を高めるために配合するものであり、特にLED用プレモールドパッケージの製造に本発明組成物を使用する場合は、二酸化チタンを白色着色剤として白色度を高めるために配合する。この二酸化チタンの単位格子はルチル型、アナタース型のどちらでも構わない。また、平均粒径や形状も限定されないが少量で白色度を高めるためには微粉のものが望ましい。上記二酸化チタンは、樹脂や無機充填剤との相溶性、分散性、耐光性を高めるため、AlやSiなどの含水酸化物、シラン等で予め表面処理したルチル型のものを用いる方がよい。
【0059】
また、平均粒径や形状も限定されないが、平均粒径は通常0.05〜5.0μmである。上記二酸化チタンは、樹脂や無機充填剤との相溶性、分散性を高めるため、AlやSiなどの含水酸化物等で予め表面処理することができる。
なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0060】
また、白色顔料(白色着色剤)として、二酸化チタン以外にチタン酸カリウム、酸化ジルコン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を単独で又は二酸化チタンと併用して使用することもできる。
【0061】
白色顔料の充填量は、組成物全体の5〜40質量%、特に10〜30質量%が好ましい。5質量%未満では十分な白色度が得られない場合があり、40質量%を超えると組成物の流動性が低下し、成形性に不具合が生じ未充填やボイド等が発生する場合がある。
【0062】
そのほか例えば、本発明の組成物及び/又はその硬化物の性質を改善する目的で種々の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、シリコーン系等の低応力剤、ワックス類、シランやチタン系のカップリング剤、ハロゲントラップ剤等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加配合することができる。
【0063】
(B)成分のエポキシ樹脂組成物と(A)成分のシリコーン樹脂をほぼ同時に硬化させるためには、触媒(b)と硬化促進剤(D)を併用したり、場合によっては一種の触媒で両方の組成物を硬化させることもできる。
【0064】
(b)成分の硬化触媒の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対し、好ましくは0.01〜10.0質量部、より好ましくは0.1〜6.0質量部である。
【0065】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物を硬化させえ得られる硬化物の波長380nm〜750nmでの反射率は初期値で70%以上であり、かつ、180℃、24hr劣化テスト後の反射率が70%以上であることが好ましい。反射率が、70%未満であると、LED用半導体素子ケ−ス用として、使用上、使用期間が短くなる問題が発生する。
【0066】
本発明組成物を通常の半導体用封止材や車載用各種モジュールなどの封止に使用する場合、着色剤としてカーボンブラックなどを用いる。カーボンブラックとしては市販されているものであればどのようなものも使用できるが、望ましくはアルカリ金属やハロゲンを多く含まない純度のよいものが望ましい。
【0067】
本発明組成物の調製方法としてはシリコーン樹脂(A)、エポキシ樹脂組成物(B)、充填剤(C)及び硬化促進剤(D)を、必要に応じて添加されるその他の添加物、例えば硬化触媒(b)などとともに、所定の割合で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕してシリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物の成形材料とすることができる。
【0068】
このようにして得られた本発明のシリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物は成形性に優れ、その硬化物は耐熱性及び耐光性、特に耐紫外線性、に優れていることから白色や青色LED用、更には紫外LED用のプレモールドパッケージの製造に好適なばかりでなく、ソーラセル用のパッケージ材料としても最適なものである。
更に、リード部やパッド部が形成されたマトリックスアレー型の金属基板や有機基板上で、LED素子搭載部分のみを空けた状態で本材料を用い一括封止するプレモールドパッケージも本発明の範疇に入る。
また、通常の半導体用封止材や車載用各種モジュールなどの封止にも使用することができる。
【0069】
この場合、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物の封止の最も一般的な方法としては低圧トランスファー成形法が挙げられる。なお、本発明のシリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物の成形温度は150〜185℃で30〜180秒行うことが望ましい。後硬化を150〜185℃で2〜20時間行ってもよい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0071】
下記の実施例及び比較例で使用した原料を以下に示す。
(A)熱硬化性オルガノポリシロキサン
[合成例1]
メチルトリクロロシラン100質量部、トルエン200質量部を1Lのフラスコに入れ、これらの混合液に、氷冷下で水8質量部、及びイソプロピルアルコール60質量部の混合液を滴下した。フラスコ内液温−5〜0℃で5〜20時間かけて滴下し、その後得られた反応液を加熱して還流温度で20分間撹拌した。それから該反応液を室温まで冷却し、水12質量部を30℃以下の温度で30分間かけて滴下し、その後20分間撹拌した。得られた混合液に更に水25質量部を滴下後、40〜45℃で60分間撹拌した。こうして得た混合液に水200質量部を加えて分離した有機層を採取した。この有機層を中性になるまで洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップに供することにより、下記式(6)で示される無色透明の固体(融点76℃)として36.0質量部の熱硬化性オルガノポリシロキサン(A−1)を得た。
(CH3)1.0Si(OC3H7)0.07(OH)0.10O1.4 (6)
【0072】
[合成例2]
メチルトリクロロシラン80質量部、テトラエトキシシラン20質量部、及びトルエン200質量部を1Lのフラスコに入れ、これらの混合液に氷冷下で水8質量部とイソプロピルアルコール60質量部の混合液を滴下した。フラスコ内液温−5〜0℃で5〜20時間かけて滴下し、その後得られた反応液を加熱して還流温度で20分間撹拌した。それから該反応液を室温まで冷却し、水12質量部を30℃以下の温度で、30分間かけて滴下し、その後20分間撹拌した。得られた混合液に更に水25質量部を滴下後、40〜45℃で60分間撹拌した。こうして得た混合液に水200質量部を加えて、分離した有機層を採取した。この有機層を中性になるまで洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップに供することにより、下記式(7)で示される無色透明の固体(融点76℃)として36.0質量部の熱硬化性オルガノポリシロキサン(A−2)を得た。
(CH3)0.5Si(OC3H7)0.06(OH)0.15O1.65 (7)
【0073】
(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂
トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(TEPIC−S:日産化学(株)製商品名、エポキシ当量100)
【0074】
(B−2)酸無水物
炭素炭素二重結合不含有酸無水物:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(リカシッドMH:新日本理化(株)製商品名)
炭素炭素二重結合含有酸無水物:テトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドTH:新日本理化(株)製商品名)
【0075】
(C)無機充填剤
・溶融球状シリカ:MSR−4500TN((株)龍森製商品名:平均粒径 45μm)
・球状アルミナ:A0−809((株)アドマッテクス製商品名:平均粒径 10μm)とAO−820((株)アドマッテクス製商品名:平均粒径 20μm)との質量比50/50の混合物
【0076】
(D)硬化促進剤
シリコーン樹脂用硬化触媒:安息香酸亜鉛(純正化学(株)社製)
【0077】
(E)その他添加剤
(a)酸化防止剤
・リン系酸化防止剤:亜リン酸トリフェニル(和光純薬(株)製)
・フェノール系酸化防止剤:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール BHT(和光純薬(株)製)
【0078】
(b)硬化触媒
・リン系硬化触媒:メチル−トリブチルホスホニウム−ジメチルホスフェイト、商品名:PX−4MP(日本化学(株)製)
【0079】
(c)白色顔料
・二酸化チタン:ルチル型 R−45M(堺化学工業(株)製商品名:平均粒径 0.29μm)
(d)離型剤;ステアリン酸カルシュウム
【0080】
[合成例3]エポキシ樹脂プレポリマー((B)成分)の製造
(B)成分であるプレポリマー(1)〜(4)を、下記表1に示す原料成分を表示の割合で配合し、所定の反応条件で加熱することによりエポキシ樹脂(B-1)と酸無水物(B-2)を反応させて合成した。
【0081】
【表1】

【0082】
[実施例1〜6、比較例1〜5]
表2に示す割合で各種成分を配合し、均一に混合した後、熱二本ロールで混練することで白色のシリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物を得た。得られたそれぞれの組成物について、下記の測定方法により各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0083】
《スパイラルフロー値》
EMMI規格に準じた金型を使用して、175℃、6.9N/mm、成形時間120秒の条件で測定した。
【0084】
《溶融粘度》
高化式フローテスターを用い、25kgfの加圧下、内径1mmのノズルを用い、温度175℃で粘度を測定した。
【0085】
《曲げ強度》
EMMI規格に準じた金型を使用して、175℃、6.9N/mm、成形時間120秒の条件で測定した。
【0086】
《耐熱性及び黄変性》
175℃、6.9N/mm、成形時間2分の条件で直径50×厚さ3mmの円盤を成形し、得られた円盤を180℃で24時間放置した後、円盤表面を目視で観察して下記基準で黄変状態を評価した。
◎ 無色透明
○ 黄変なし
△〜○ 微黄色
△ 黄色
× 黄褐色
【0087】
《耐紫外線性》
175℃、6.9N/mm、成形時間2分の条件で直径50×3mmの円盤を成形し、得られた円盤を120℃の温度下、大気中で、波長405nmの紫外線を24時間照射した。その後、円盤表面を目視で観察して変色状態を下記基準で評価した。
○ 黄変なし
△〜○ 微黄色
△ 黄色
× 黄褐色
【0088】
【表2】

【0089】
[実施例7]
(LED装置の組み立て)
実施例2、4及び5で調製した熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物のおのおので、全面銀メッキした銅リードフレームを用い、トップビュータイプのプレモールドパッケージを各20個成形した。 成形は、下記の条件で行った。
・成形温度:170℃、
・成形圧力:70kg/cm
・成形時間:3分、その後更にポストキュアを170℃で2時間行った。
いずれの組成物から得られたプレモールドパッケージもリードと硬化樹脂との密着性が良好であった。また、いずれの組成物で成形したプレモールドパッケージも光反射率は91%以上であった。
【0090】
次に、こうして成形したプレモールドパッケージを用い、次のようにして青色LED装置を組み立てた。
LED素子をプレモールドパッケージのダイパッド上にシリコーンダイボンド剤(品名:LPS8433、信越化学(株)製)を介して置いた後、該シリコーンダイボンド剤を150℃で1時間硬化させた。こうしてLED素子を上記ダイパッド上に搭載した後、金線で該パッケージのリード部と素子を接続した。その後、シリコーン封止剤(LPS3419:信越化学(株)製)でLED素子を被覆し、120℃で1時間、更に150℃で1時間硬化させ、該素子を封止した。こうしてLED装置を組み立てた。
【0091】
[比較例6]
(LED装置の組み立て)
実施例2、4及び5で調製した熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物の代りに比較例1の樹脂組成物を用いて成形したプレモールドパッケージを用いた以外は、実施例7と同じ材料、同じ条件でLED装置を組み立てた。
【0092】
[比較例7]
(LED装置の組み立て)
実施例2、4及び5で調製した熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物の代りにPPA樹脂を用いて成形したプレモールドパッケージを用いた以外は、実施例7と同じ材料、同じ条件でLED装置を組み立てた。
【0093】
《接着耐久性の評価》
実施例7及び比較例6、7で組み立てたLED装置をそれぞれ5個づつを、25℃、80%RHの雰囲気中に48時間放置した後、260℃のリフロー炉に3回通した。その後、パッケージ表面及び素子表面と封止樹脂との接着状態を調べた。
実施例7で得られたLED装置ではいずれも装置でも接着状態が良好で、全く剥離不良は生じなかった。一方、比較例6得られたLED装置では2個のLED装置に剥離不良が発生した。また、比較例7で得られたLED装置では4個のLED装置に剥離不良が発生した。
【産業上の利用分野】
【0094】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物はLED用やソーラセル用プレモールドパッケージ、並びに、該パッケージを用いたLED装置の製造に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱硬化性シリコーン樹脂、
(B)(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(B−2)酸無水物との組み合わせ、またはこれらを反応させて得られたプレポリマー、
(C)無機質充填剤、及び
(D)硬化促進剤
を含み、
(A)成分/(B)成分の質量比が5/95〜95/5の範囲内であり、
(C)成分の量が(A)成分と(B)成分との総量100質量部に対して100〜1000質量部である熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
上記(A)成分の熱硬化性シリコーン樹脂が下記平均組成式(1):
Si(OR(OH)(4−a−b−c)/2 (1)
(式中、Rは同一又は異種の炭素原子数1〜20の有機基、Rは同一又は異種の炭素原子数1〜4の有機基を示し、a、b及びcはそれぞれ0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、及び0.001≦c≦1.0を満たす数であり、但し0.8≦a+b+c<2である。)
で表される請求項1に係る熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
上記(B)成分において、(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(B−2)酸無水物との比が、〔(B−1)成分が有するエポキシ基〕/〔(B−2)成分が有する酸無水物基〕のモル比0.6〜2.0である請求項1または2に係る熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
上記(C)成分の無機質充填剤がシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、及び酸化チタンからなる群の中から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれか1項に係る熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(A)熱硬化性シリコーン樹脂、
(B)(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(B−2)酸無水物との組み合わせ、またはこれらを反応させて得られたプレポリマー、
(C)無機質充填剤、及び
(D)硬化促進剤
を含み、
(A)成分/(B)成分の質量比が5/95〜95/5の範囲内であり、
(C)成分の量が(A)成分と(B)成分との総量100質量部に対して100〜1000質量部である熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物を成形して得られたプレモールドパッケージ。
【請求項6】
(A)熱硬化性シリコーン樹脂、
(B)(B−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(B−2)酸無水物との組み合わせ、またはこれらを反応させて得られたプレポリマー、
(C)無機質充填剤、及び
(D)硬化促進剤
を含み、
(A)成分/(B)成分の質量比が5/95〜95/5の範囲内であり、
(C)成分の量が(A)成分と(B)成分との総量100質量部に対して100〜1000質量部である熱硬化性シリコーン樹脂−エポキシ樹脂組成物を成形して得られたプレモールドパッケージと、該パッケージに搭載されたLEDチップを有するLED装置。

【公開番号】特開2010−31269(P2010−31269A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154747(P2009−154747)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】