説明

特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板

【課題】薄肉化した特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板として、接地配線層にメッシュ構造を適用しつつ、その周辺部鋭角部分の問題を回避して、安定して特性インピーダンス制御を行い得るようにし、製品歩留まりの向上を図り得るようにする。
【解決手段】絶縁層の一方の面に信号線層を設け、他方の面にメッシュ構造で接地配線層を設け、接地配線層のメッシュ構造が、所定方向に連続的に延びる平行な連続帯状パターン部と、隣り合う連続帯状パタ−ン部の間を結ぶ非連続帯状パターン部とからなり、非連続帯状パターン部は、連続帯状パターン部の延びる方向に対する交差方向に沿うよう、間隔を置いて相互に平行に形成され、各連続帯状パターン部の幅方向の一方の側の非連続帯状部の位置が、他方の側の非連続帯状パターン部の延長位置に対して、連続帯状パターン部の延びる方向にずれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子・電気機器に使用されるプリント配線基板、特に信号線の特性インピーダンスを制御した特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板は、電子・電気機器内において、電子部品間の信号伝送経路を担うものであり、特に高周波信号、高速パルス信号が伝送される場合には、そのプリント配線基板内の信号線の特性インピーダンスを、入力インピーダンスに対して整合させることが強く望まれる。すなわち、高周波信号、高速パルス信号を伝送する場合、プリント基板の特性インピーダンスが入力インピーダンスに整合していない場合には、入力信号が反射されて信号が減衰されてしまい、また入力信号の波形が崩れてしまうのが通常であり、さらにはノイズが生じてしまうことも多い。そこで一般には、特性インピーダンスが、所定の値となるように制御したプリント基板、すなわち特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板が要求される。
【0003】
このような特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板は、基本的には、絶縁層の一方の面に、信号配線層として複数の信号配線のパターンを形成し、絶縁層の他方の面に接地配線層(グラウンド層)を設けた構成とし、絶縁層の誘電率およびその厚み(信号線層と接地配線層との間の距離)、信号配線の幅などを調整することによって、特性インピーダンス(接地配線層に対する信号配線層のインピーダンス)を調整している。なおこの特性インピーダンスの値としては、汎用の電子部品との関係から、一般には100Ωあるいは50Ωが採用されることが多い。
【0004】
また、電子機器の種類などによっては、差動信号を伝送しなければならないことも多く、その場合には差動信号を伝送する一対の信号配線間のインピーダンス(差動インピーダンス)を、入力側の電子部品の差動信号出力間のインピーダンスにマッチングさせることが、前記同様な理由により望まれる。このような差動インピーダンスを制御するためには、前述のような絶縁層の誘電率およびその厚み、信号配線の幅のほか、差動信号を伝送するための隣り合う一対の信号配線の間のスペースも重要なファクタとなる。この差動インピーダンスの値は、接地配線層に対する信号配線の特性インピーダンスの約2倍となるのが通常である。ここで、前述のところから明らかなように、特性インピーダンスと、差動インピーダンスとは、本来は異なるものであるが、文言上は、差動インピーダンスも特性インピーダンスに含まれると言うこともでき、また一般には差動インピーダンスを含めて特性インピーダンスと言うことも多いから、以下この明細書でも、特に断らない限りは、差動インピーダンスを含めて特性インピーダンスと称することとする。
【0005】
ところで、プリント配線基板を、その柔軟性の点から分類すれば、柔軟なフレキシブルプリント配線基板と、柔軟性に乏しいリジッドプリント配線基板とに分けられる。またそれらの両者を連続一体化させたフレックスリジッドプリント配線基板、すなわち一つのプリント配線基板として、フレキシブルプリント配線基板に相当するフレキシブル部と、リジッドプリント配線基板に相当するリジッド部とを有するプリント配線基板も使用されている。
【0006】
これらのうち、フレキシブルプリント配線基板や、フレックスリジッドプリント配線基板のフレキシブル部は、ガラスコアなどの硬質材料を用いることなく、絶縁層として例えばポリイミド樹脂フィルムなどの柔軟な材料を用いることによって、屈曲性(折り曲げ性)を持たせたものであり、主として独立した電子部品、電子装置の間で信号を伝送するために用いられるのが通常であり、これによって、限られた筐体内での電子部品、電子装置の配置の自由度を増すことができるとともに、振動による悪影響も低減することができる。またフレックスリジッドプリント配線基板は、絶縁層として例えばポリイミド樹脂フィルムなどの柔軟な材料を用い、かつそのフレキシブル部には、硬質なガラスコアや、プリプレグを用いずに屈曲性を持たせ、リジッド部にはこれらの硬質材料を用いて電子部品の搭載に適した構造とし、そのフレックスリジッドプリント配線基板のフレキシブル部を、独立した電子部品、電子装置の相互間での信号伝送箇所に適用するのが一般的である。またこれらのフレキシブルプリント配線基板やフレックスリジッドプリント配線基板のフレキシブル部の柔軟性には、絶縁層自体の厚みも大きな影響を与えるから、通常は、ポリイミド樹脂フィルムなどからなる絶縁層の厚みを、例えば100〜20μm程度まで薄くして、良好な屈曲性を確保するようにしている
【0007】
このようにフレキシブルプリント配線基板やフレックスリジッドプリント配線基板のフレキシブル部には、屈曲性(折り曲げ性)が優れていることが必要であるが、最近では、電子機器のよりいっそうの小型化の要求に伴い、フレキシブルプリント配線基板やフレックスリジッドプリント配線基板のフレキシブル部についても、これまでよりもさらに屈曲性に優れていることが強く要求されるようになっている。そこで、これらのプリント配線基板の絶縁層についても、その厚みをさらに薄くして、これまでの半分程度の厚み、例えば25μm程度とすることが要求されている。そしてこのような要求は、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板としてのフレキシブルプリント配線基板やフレックスリジッドプリント配線基板のフレキシブル部についても同様である。
【0008】
ところで、従来の特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板における接地配線層は、その面内で全面的に連続する、いわゆるベタ層とするのが通常であった。このようなベタ層の接地配線層を有する特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、絶縁層の厚みを25μm程度まで薄くした場合、特性インピーダンスを100Ωあるいはそれ以下に制御するためには、信号配線の幅及び隣り合う信号配線間の間隔(スペース)を、例えば30μm程度と、著しく微細化せざるを得ず、その場合には安定した製造が困難となって、製品歩留まりが著しく低下してしまう、という問題が生じてしまう。
【0009】
一方、最近では、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板における接地配線層として、ベタ層ではなく、例えば特許文献1−4に示すように、交差メッシュ状のパターンの層、すなわち規則的に網目状のスペース部分が配列された構造のパタ−ンを適用することが多くなっている。この場合、接地配線層をメッシュ構造パターンとすることによって、ベタ層の場合と比較して、各信号配線が接地配線層に対向する面積が小さくなるため、特性インピーダンスの制御が容易となる。
【0010】
そして上述のような交差状のメッシュ構造パターンを、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板としてのフレキシブルプリント配線基板やフレックスリジッドプリント配線基板のフレキシブル部の接地配線層にも適用するようになっている。ここで、交差状のメッシュ構造パターンをフレキシブルプリント配線基板やフレックスリジッドプリント配線基板のフレキシブル部の接地配線層に適用すれば、特性インピーダンスの制御が容易となって、信号配線の幅及び隣り合う信号配線間の間隔(スペース)をさほど微細化しなくても(例えば75μm程度)としても、100Ω程度以下の特性インピーダンスを確保することが可能となると同時に、接地配線層を従来のベタ層からメッシュ構造パターンに変えることによって、その接地配線層自体の柔軟性が向上し、プリント配線基板の屈曲性の向上にも寄与することができる。
【0011】
しかしながら、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板としてのフレキシブルプリント配線基板やフレックスリジッドプリント配線基板のフレキシブル部の接地配線層に、従来提案されている交差状のメッシュ構造パターンをそのまま適用した場合、次のような問題がある。
【0012】
ここで、図7に、従来提案されている設置配線層のメッシュ構造パターンを示し、この図7に基づいてその問題点を説明する。
図7において、接地配線層10は、一定方向(X方向)に沿って所定の間隔SAを置いて平行に配列される幅WAの第1の帯状パターン10Aと、X方向とは角度αだけ異なるY方向(一例として、図7ではX方向に対してα=90°をなす方向)に沿って所定の間隔SB(一例として、図7では間隔SAと同じ)を置いて平行に配列される幅WBの第2の帯状パターン10Bとを重ね合わせたパターンとされている。言い換えれば、第1の帯状パターン10Aと第2の帯状パターン10Bとは、90°をなすように交差していることになる。そしてこのような接地配線層10に対し、図示しない絶縁層の反対側の面には、図7の仮想線で示すように、複数の信号配線12A、12Bが、所定の幅SW、所定の間隔SSをもって相互に平行に配列される。ここで、信号配線12A、12Bは、その長さ方向Pが、接地配線層10の各帯状パターン10A、10Bの長さ方向X、Yの両者に対して斜行するように(図7ではX方向に対する角度β=45°をなすように)配設されている。
【0013】
このような従来の交差状の接地配線層10のメッシュ構造パターンでは、第1の帯状パターン10Aと第2の帯状パターン10Bとの交差部分(重なり部分)10Cに対応する位置を信号配線が通る場合と、そうでない場合とで、信号配線と接地配線層10とのトータルの対向面積が相違することになる。すなわち、図7における信号配線12Aは、第1の帯状パターン10Aと第2の帯状パターン10Bとの交差部分(重なり部分)10Cに対応する位置を通過し、信号配線12Bは、交差部分(重なり部分)10Cに対応する位置を通過しない態様で示しているが、これら信号配線12A,12Bにおける単位長さ当たりで接地配線層10に対向する部分の数は、信号配線12Aの方が信号配線12Bより少ないことは明らかである。もちろん信号配線12Aにおける、一つの交差部分(重なり部分)10Cに対向する領域の面積自体は、信号配線12Bにおける、交差部分(重なり部分)ではない一つの部分に対向する領域の面積よりは若干大きくなるが、トータル的に見れば、信号配線12Aにおける単位長さ当たりで接地配線層10に対向する部分の数が信号配線12Bよりも顕著に少ないことに起因して、信号配線12Aの方が信号配線12Bよりも小さい面積で接地配線層10に対向していることになる。
【0014】
そして上述のように、信号配線12Aと信号配線12Bとで、接地配線層10に対する対向面積が異なれば、信号配線12Aと接地配線層10との間のキャパシタンスと、信号配線12Bと設置配線層10との間のキャパシタンスとが異なり、その結果、特性インピーダンスも、信号配線12Aと信号配線12Bと異なることになる。したがって、図7に示すような接地配線層10の交差状のメッシュ構造パターンでは、各信号配線ごとに、特性インピーダンスのばらつきが生じることを避け得なかったのである。特に、絶縁層を薄肉化した場合、信号配線層と接地配線層との間の距離が小さくなるため、前述のような信号配線層における接地配線層に対する対向面積のばらつきは、特性インピーダンスに大きな影響を与え、各信号配線ごとの特性インピーダンスのばらつきを抑制することが困難とならざるを得なかったのである。
【0015】
そのため、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板としてのフレキシブルプリント配線基板あるいはフレックスリジッドプリント配線基板のフレキシブル部の屈曲性を改善するために、絶縁層を25μm程度まで薄肉化すると同時に、接地配線層に従来のメッシュ構造パターンを適用した場合は、特性インピーダンスのばらつきが大きく、製品として実用化することが困難であった。
【0016】
このような問題を解決するための手段として、特許文献5においては、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板であるフレキシブルプリント配線基板について、接地配線層自体に関しては、図7に示したような交差状のメッシュ構造パターンを前提としながらも、信号配線の延びる方向を図7のものから変えたプリント配線基板を提案している。すなわち、図7に示す従来例では、信号配線12A、12Bを、その長さ方向Pが、接地絶縁層10の各帯状パターン部10Aの延びる方向Xに対してβ=45°をなすように構成しているが、特許文献5の提案では、図8に示すように、信号配線12A、12Bの長さ方向を、β=45°のP方向からある角度γだけずらした構成としている。言い換えれば、接地絶縁層10の各帯状パターン部10A,10Bが交差する点が並ぶ方向に対し、信号配線12A、12Bの延びる方向が平行とならないように、信号配線10A,10Bと、接地絶縁層10のメッシュ構造パターンの相対的な位置関係を規制している。
このように特許文献5の提案では、信号配線12A、12Bの長さ方向を、各帯状パターン部10A,10Bの延びる方向に対し45°をなす方向に対し、角度γだけずらすことによって、各信号配線12A、12Bが接地配線層10に対向する面積のばらつきが少なくなり、特性インピーダンスのばらつきも小さくなるとされている。
【0017】
ところで、前記特許文献5の詳細な説明中の実施形態においては、信号配線12A、12Bの長さ方向が、接地絶縁層10の帯状パターン部10Bの延びる方向Yに対してなす角度は52°とされており、それ以外の具体的角度の数値は記載されていないから、角度としては、52°が最も望ましいと解される。しかしながら本発明者らが、前記特許文献5に示される技術を、詳細に検討したところ上述のような52°という、大きな角度で斜行させた場合、製造上の問題があることが判明した。
【0018】
すなわち、特許文献5の提案のプリント基板における、接地配線層の周辺部分の状況を図9に拡大して示す。メッシュ構造パターンの接地配線層では、その接地配線層の各部分の接地電位を平準化するため、一般にはメッシュ構造パターンの周辺部分を取り囲むように、基板周縁と平行な帯状に(全体として矩形状に)共通接地配線層10Cを形成して、その共通接地配線層10Cと、メッシュ構造パターンの帯状パターン部10A,10Bの端部とを連続させるのが通常である。しかるに特許文献5の実施形態のプリント配線基板では、メッシュ構造パターンの帯状パターン部10A,10Bの端部が、52°または38°の角度で共通接地配線層10Cに接することになる。ここで、これらの角度のうち、38°の角度は、かなりの鋭角であり、このように鋭角で接する部分では、例えばエッチングにより接地配線層のパターンを形成する場合、その鋭角で挟まれる隅部を確実かつ正確に抜くことができなくなりやすい。そして極端な場合、その鋭角で挟まれるスペース(例えば図9の符号14で示される3角形領域)の全体を抜けず、その領域14の全体が接地配線層10に残ってしまうことがある。このように領域14が接地配線層10に残ってしまえば、その部分での設置配線層の面積が局部的に大きくなるため、その近くに対向する信号配線の特性インピーダンスに悪影響を及ぼすことが判明した。特に本発明で対象としているような、絶縁層を薄肉化したプリント配線基板では、信号配線と接地配線層との間の距離が小さいため、上述のような局部的対向面積増大が、相対的に特性インピーダンスに大きな影響を与えてしまい、特性インピーダンス制御品質を劣化させてしまうことが判明した。このことは、本発明者らのTDR(時間領域反射)測定により確認されている。
また上述のように、特許文献5によるプリント配線基板では、接地配線層のメッシュ構造パターンの端部の鋭角部分で、設計通りの鋭角スペースが形成されないことが多いため、製品検査で不良とされる割合も高く、製品歩留まり上も問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平7−321463号公報
【特許文献2】特開2006―147837号公報
【特許文献3】特開2006―286738号公報
【特許文献4】特開2007―207997号公報
【特許文献5】特開2007―227469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたもので、従来よりも薄肉化した特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板として、接地配線層にメッシュ構造パターンを適用しながらも、前記特許文献5によるプリント配線基板の場合のような、接地絶縁層周辺部における問題、すなわち鋭角部分による問題が生じることなく、安定して特性インピーダンスの制御を行い得るようにするとともに、製品歩留まりの向上を図り得るようにしたプリント配線基板を提供することを課題とするものである。そしてまた本発明は、特に薄肉化により屈曲性を従来よりも格段に向上させたフレキシブルプリント配線基板も2004-しくはフレックスリジッドプリント配線基板として、上述の課題を解決した特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板では、基本的には、接地配線層に、メッシュパターン構造を適用しながらも、そのメッシュ構造のパターン形状を、特許文献5に示されるような交差状のパターンとは根本的に変えることによって、特許文献5のプリント配線基板で生じている問題を解決することとしている。すなわち、特許文献5のプリント配線基板では、図8に示したように(また図7の場合と同様に)、接地配線層10A、10Bのパターンを、それぞれその長さ方向に一直線状に連続させてそれぞれが互いに交差するように重ね合わせたパターンとしているが、本発明では、パターン形状についての発想を全く変えて、交差状ではなく、段違い状に接地配線層のパターンを形成することによって、前記課題を解決している。ここで、接地配線層についての段違い状のメッシュ構造パターンとは、より具体的に言えば、所定の方向に沿って連続的に延び、かつ所定の間隔を置いて平行に形成されている複数の連続帯状パターン部と、隣り合う連続帯状パタ−ン部の間を結ぶように形成されている複数の非連続帯状パターン部とからなり、前記非連続帯状パターン部が、連続帯状パターン部の延びる方向に対して交差する方向に沿うよう、所定の間隔を置いて相互に平行に形成されるとともに、各連続帯状パターン部の幅方向の一方の側の非連続帯状部の位置が、他方の側の非連続帯状パターン部の延長位置に対して、連続帯状パターン部の延びる方向にずれているパターン、と言うことができる。
【0022】
したがって本発明の基本的な形態(第1の形態)による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板は、
絶縁層における一方の面に信号線層のパターンを配列し、絶縁層の他方の面に、メッシュ構造パターンで接地配線層を設けた特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、
前記接地配線層のメッシュ構造パターンは、所定の方向に沿って連続的に延び、かつ所定の間隔を置いて平行に形成されている複数の連続帯状パターン部と、隣り合う連続帯状パタ−ン部の間を結ぶように形成されている複数の非連続帯状パターン部とからなり、
前記非連続帯状パターン部は、連続帯状パターン部の延びる方向に対して交差する方向に沿うよう、所定の間隔を置いて相互に平行に形成されるとともに、各連続帯状パターン部の幅方向の一方の側の非連続帯状部の位置が、他方の側の非連続帯状パターン部の延長位置に対して、連続帯状パターン部の延びる方向にずれていることを特徴とするものである。
【0023】
また本発明の第2の形態による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板は、前記第1の形態による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、連続帯状パターン部の延びる方向と非連続帯状パターン部の延びる方向とが、90°±2°の範囲内で交差するように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
さらに本発明の第3の形態による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板は、前記第2の形態による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、前記複数の連続帯状パターン部および前記複数の非連続帯状パターン部からなる接地配線層の周辺部分が、それらに接する共通接地配線層に取り囲まれ、かつその共通接地配線層に対する連続帯状パターン部および非連続帯状パターン部の角度が、45±2°の範囲内とされていることを特徴とするものである。
【0025】
そしてまた本発明の第4の形態による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板は、前記第1〜第3の形態のうちのいずれかの形態による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、接地配線層における連続帯状パターン部の幅方向の一方の側の非連続帯状部と、連続帯状パターン部の幅方向の他方の側の非連続帯状部とのずれ距離をDとし、非連続帯状部の幅をW2、非連続帯状部の間隔をS2としたとき、ずれ距離Dが次式、
W2/2≦D≦S2/2
を満たすように定められていることを特徴とするものである。
【0026】
さらに本発明の第5の形態による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板は、前記第1〜第4の形態のうちのいずれかの形態による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、前記信号配線層の接地配線層への投影面の長手方向が、連続帯状パターン部の延びる方向に対して45°±2°の範囲内で交差するように構成されていることを特徴とするものである。
【0027】
また本発明の第6の形態による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板は、前記第1〜第5の形態のうちのいずれかの形態による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、前記絶縁層を柔軟な材料で形成して、フレキシブルプリント配線基板としたことを特徴とするものである。
【0028】
さらに本発明の第7の形態による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板は、前記第1〜第5の形態のうちのいずれかの形態による特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、前記絶縁層を柔軟な材料で形成して、そのプリント配線基板の長手方向の少なくとも一部をフレキシブル部とするとともに、そのプリント配線基板の長手方向の他の部分には相対的に硬質な絶縁材料を積層して、電子部品を搭載し得るリジッド部として、フレックスリジッドプリント配線基板を構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、特性インピーダンスコントロールプリント配線基板として、その接地配線層に、従来提案されている交差状のメッシュ構造パターンとは全く異なる段違い状のメッシュ構造パターンを適用しているため、その接地配線層が周辺の共通接地配線層に接する部分の付近のスペースの隅部に小さい角度の鋭角が生じることを回避でき、そのためスペースの隅部をも確実かつ正確に抜いて、設計通りのパターンの接地配線層を容易に形成することができるから、製品歩留まりを向上させることができるとともに、スペースの隅部に導体層が残って、信号配線の特性インピーダンスに悪影響を与えるおそれも少なく、したがって、安定して特性インピーダンスを制御することができ、特に信号配線層と接地配線層との間の絶縁層を、例えば25μm程度まで薄肉化した場合に、その効果は大きい。
また本発明の特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板においては、前記絶縁層を薄肉化しても安定して特性インピーダンスを制御できるため、基板全体の薄肉化、ひいては屈曲性(折り曲げ性)の向上に効果があるから、フレキシブルプリント配線基板あるいはフレックスリジッドプリント配線基板に適用して、顕著な効果を得ることができる。
但し、本発明は、リジッドプリント配線基板に適用してもよく、その場合にも、薄肉化を図れると同時に、特性インピーダンス制御を安定に行い得る効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の基本的な実施形態の特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板の原理的な断面構造を、略解的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の基本的な実施形態の特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板における、接地配線層のメッシュ構造パターンを平面的に示す略解図である。
【図3】図2の要部を拡大して示す略解図である。
【図4】図2、図3に示されるメッシュ構造パターンを有する接地配線層の周辺部分の状況を拡大して示す略解的図である。
【図5】本発明の基本的な実施形態の特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板における、図2、図3に示される接地絶縁層と信号配線層との関係を示す、平面的な略解図である
【図6】本発明の別の実施形態の特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板の断面構造を、略解的に示す縦断面図である。
【図7】従来の特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板における接地配線層の交差状のメッシュ構造パターンを示す略解図である。
【図8】先行技術としての特許文献5に示されている特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板の接地配線層における交差状のメッシュ構造パターンを示す略解図である。
【図9】図8に示される特許文献5における接地配線層の交差状のメッシュ構造パターンの周辺部分を拡大して示す略解図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態につぃて、図面を参照して詳細に説明する。
図1には、本発明の基本的な実施形態、すなわち信号配線層が1層で、接地配線層が1層の基本的なフレキシブルプリント配線基板に適用した例の原理的な態様として示す。
【0032】
図1は、その実施形態のプリント配線基板の断面構造を模式的に示すものであり、ポリイミド樹脂などの柔軟な絶縁材料からなる絶縁層16の一方の面には、複数の信号配線120からなる信号配線層12が形成され、絶縁層16の他方の面には、接地配線層(グラウンド層)10が形成されている。なお、図示は省略しているが、信号配線層12の表面側、及び接地配線層(グラウンド層)10の表面側には、その一部もしくは全部に、柔軟性を有する絶縁材料、例えばポリイミド樹脂からなる被覆層(カバーレイ)あるいはレジストの保護膜が形成されるのが通常であるが、ここでは本発明の本質には関係しないから、その詳細な説明は省略する。
【0033】
ここで、前記絶縁層16の厚みは、基本的には特に限定されないが、本発明で目標とするような屈曲性向上のために薄肉化したプリント配線基板としては、例えば12〜50μm程度、望ましくは25μm程度以下とされる。また信号配線層12は、例えば銅箔などの導電性薄膜からなるものであり、通常は20μm〜50μm程度の厚みとされる。なおこの信号配線層12は、フレキシブルプリント配線基板の場合、あるいは後述するフレックスリジッドプリント配線基板のフレキシブル部の場合、所定の幅を有する帯状の複数本の信号配線120が、相互に平行となるように、エッチングなどのパターン加工によって形成されるのが通常である。各信号配線120の幅SW、および間隔(信号配線間のスペース)SSは、プリント配線基板の適用対象などに応じて任意に定められるが、一般には幅SWは50〜200μm程度、間隔(信号配線間のスペース)SSは50〜200μm程度とされることが多い。一方、接地配線層(グラウンド層)10も、信号配線層12と同様に、例えば銅箔などの導電性薄膜からなるものであり、通常は20μm〜50μm程度の厚みとされる。そしてこの接地配線層10は、次に図2、図3を参照して詳細に述べるように、エッチングなどのパターン加工によって、特有のメッシュ構造パターンとなるように形成される。
【0034】
図2、図3には、本発明における接地配線層10の代表的な例を示す。
図2、図3において、接地配線層10のメッシュ構造パターンは、基本的には、所定の方向(X方向)に沿って連続的に延び、かつ所定の間隔S1を置いて平行に形成されている所定の幅W1の複数の連続帯状パターン部102と、隣り合う連続帯状パタ−ン部102の間を結ぶように形成されている所定のW2の複数の非連続帯状パターン部104とからなり、その非連続帯状パターン部104は、連続帯状パターン部の延びる方向(X方向)に対して交差する方向(図2のY方向)に沿うよう、所定の間隔S2を置いて相互に平行に形成されるとともに、各連続帯状パターン部102の幅方向の一方の側の非連続帯状部の位置が、他方の側の非連続帯状パターン部の延長位置に対して、連続帯状パターン部の延びる方向(X方向)に距離Dだけずれるような、段違い状のパターンとされている。
【0035】
ここで、連続帯状パターン部102の延びる方向(X方向)は、非連続帯状パターン部104の延びる方向(X方向)に対し90°をなすように定めているが、寸歩誤差、加工誤差などを考慮すれば、90°±2°程度は許容される。
また連続帯状パターン部102の幅W1は、特に限定されるものではないが、通常は50μm〜200μm程度とされ、またその間隔S1も、特に限定されるものではないが、通常は100μm〜300μm程度とされる。一方、非連続帯状パターン部104の幅W2も、特に限定されるものではないが、通常は50μm〜200μm程度とされ、またその間隔S2も、特に限定されるものではないが、通常は100μm〜300μm程度とされる。なお、非連続帯状パターン部104の幅W2および間隔S2は、それぞれ連続帯状パターン部102の幅W1および間隔S1と同一とする必要はないが、図示の例では、非連続帯状パターン部104の幅W2は、連続帯状パターン部102の幅W1と同一としている。
【0036】
なお、接地配線層10の周辺部分は、図4に示しているように、接地配線層10の各部分の接地電位を平準化するため、メッシュ構造パターンの周辺部分を取り囲むように、基板周縁と平行に帯状に共通接地配線層10Cが形成され、その共通接地配線層10Cと、メッシュ構造パターンの各連続帯状パターン部102の端部、及び複数の非連続帯状パターン部104のうち、周辺部分に位置する非連続帯状パターン部104とが連続一体化されている。ここで、共通接地配線層10Cは、基板周縁と平行となるよう、矩形状に連続したパターンで形成され、したがってその共通接地配線層10Cの各辺の長手方向は、信号配線層12の各信号線配線120の延びる方向と平行もしくは直交する方向となる。そしてメッシュ構造パターンの接地配線層10の連続帯状パターン部102、及び非連続帯状パターン部104の端部が、45°±2°の角度で共通接地配線層10Cに接することになる。
【0037】
上述のように、段違い状のメッシュ構造パターンの接地配線層10の連続帯状パターン部102、及び非連続帯状パターン部104帯状パターン部10A,10Bの端部は、45°±2°という比較的大きな角度で共通接地配線層10Cに接することから、特許文献5に記載されているような、38°という小さな鋭角となる場合と比較して、接地配線層10におけるスペースの隅部をも確実かつ正確に抜いて、設計通りのパターンの接地配線層10を容易に形成することができるから、製品歩留まりを向上させることができる。また、スペースの隅部に導体層が残って、信号配線の特性インピーダンスに悪影響を与えるおそれも少なく、したがって、安定して特性インピーダンスを制御することができ、特に信号配線層12と接地配線層10との間の絶縁層を、例えば25μm程度まで薄肉化した場合に、その効果は顕著に現れる。
【0038】
さらに絶縁層16の一方の面側の信号配線層12の各信号配線120と、前述のような段違い状のメッシュ構造パターンの接地配線層10との位置関係について、図5を参照して説明する。
【0039】
図5においては、接地配線層10の表面に信号配線層12の各信号配線120を投影させた位置を、仮想線にて示している。各信号配線120は、接地配線層10における連続帯状パターン部102が延びる方向X、非連続帯状パターン部104が延びる方向Yに対して、45°をなすようにP方向に配列されている。この図5から理解できるように、接地配線層10に段違い構造のメッシュ構造パターンを適用することによって、各信号配線120が接地配線層10に対向する面積は、いずれの信号配線120についても、ほぼ同等となっている。すなわち、ある連続帯状パターン部102に接する非連続帯状パターン部104の端部をその連続帯状パターン部102内に延長させた領域を、交差領域Q(図3、図5参照:仮想線で示している矩形の領域)とすれば、その交差領域Qに各信号配線120が対向する箇所が出現する頻度は、各信号配線120を通じて平均的に少なく、各信号配線120が、その単位長さ当たりで接地配線層10に対向する箇所の数は、いずれの位置の信号配線120でも、ほぼ同等となり、その結果、各信号配線120が接地配線層10に対向する面積が、いずれの信号配線120についても、ほぼ同等となっているのである。そのため、各信号配線120についての特性インピーダンスのばらつきも少なくなり、特性インピーダンス制御品質を向上させることができる。
【0040】
ここで、接地配線層10における、ある連続帯状パターン部102の幅方向の一方の側の非連続帯状部104と、同じ連続帯状パターン部102の幅方向の他方の側の非連続帯状部104とのずれ距離(正確には、各連続帯状パターン部102の幅方向の一方の側の非連続帯状パターン部104の中心線と他方の側の非連続帯状パターン部104の中心線との間の距離)をDとすれば、そのずれ距離Dを、非連続帯状部104の幅W2、非連続帯状部104の間隔S2に対して、次の式(1)、
W2/2≦D≦S2/2 ・・・・・・(1)
を満たすように定めることが望ましい。この式(1)により定められるずれ距離Dの範囲に対応する、非連続帯状パターン部104の中心線が位置する範囲を、図3の符号22で示す。このような範囲内にずれ距離Dを設定することによって、各信号配線120が接地配線層10に対向する面積を、いずれの位置の信号配線についても同等化することが確実に可能となる。
なおここで、各信号配線120が、その単位長さ当たりで接地配線層10に対向する箇所の数のばらつきが、30%程度以内であれば、各信号配線120が接地配線層10に対向する面積がほほ同等となって、特性インピーダンスを安定化し得ることが、本発明者らの実験により判明している。
【0041】
なお以上の説明では、信号配線層が1層で、接地配線層が1層の基本的なプリント配線基板に適用した例について説明したが、図6に示すように、信号配線層12が2層で、接地配線層10が2層の4層構造のプリント配線基板、すなわちいわゆる1−2−1構成のプリント配線基板にも適用できることはもちろんである。すなわち図6の例では、中心絶縁層(コア層)20として、ポリイミド樹脂などの柔軟な絶縁材料が用いられ、その両面に、それぞれ前述の接地配線層10が配設され、さらに各接地配線層10における中心絶縁層(コア層)20に対して反対側の面に、それぞれ信号配線層12が形成されている。そして各接地配線層10は、それぞれ既に説明したと同様の特有の段違い状のメッシュ構造パターンで形成されている。さらに、図示しないが、4層を超える多層構造のプリント配線基板においても、接地配線層に前記と同様な段違い構造のメッシュ構造パターンを適用し得ることももちろんである。
【0042】
また前述の実施形態では、フレキシブルプリント配線基板に適用するものとして説明したが、長さ方向の少なくとも一部にフレキシブル部を有し、他の部分にリジッド部を有するフレックスリジッドプリント配線基板の場合にも、接地配線層に前記と同様な段違い構造のメッシュ構造パターンを適用することができる。
さらには、絶縁層16、あるいはさらにコア層としての中心絶縁層20として、前述のようなポリイミド樹脂などの柔軟な絶縁材料に代えて、例えばガラス、あるいはプリプレグなどの硬質材料を用い、リジッドプリント配線基板とした場合にも、接地配線層に前記と同様な段違い構造のメッシュ構造パターンを適用することができる。
【0043】
次に本発明の特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板における、特性インピーダンスの安定化についての効果を検証した例を示す。
ここで使用した特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板は、基本的な積層構造は、図6に示したものと同様な1−2−1構造の4層プリント基板であり、信号配線層12の各信号配線120及び接地配線層10としては、厚みが18μmの銅箔を用い、中心絶縁層20としてはポリイミド樹脂フィルムを用いてその厚みを25μmとし、信号配線層12と各接地配線層10とによって挟まれる各絶縁層16の厚みは60μmとした。接地配線層10としては、図2、図3に示した段違い状のメッシュ構造パターンを適用した。また各信号配線120は、表1に示すように、幅SWは75μmで一定とし、相互間の間隔(スペース)SSを、75μm、100μm、125μm、150μmの4段階に変化させた。
【0044】
さらに、接地配線層10の連続帯状パターン部102の幅W1および間隔S1を、表2に示すように種々変化させ、また非連続帯状パターン部104の幅W2および間隔S2を、表3に示すように種々変化させ、さらに非連続帯状パターン部104の段違いのずれDを、表4に示すように種々変化させて、それらを表5中に示すように組み合わせて、それぞれの組み合わせについて、信号配線120の間隔(スペース)SSを前述のように75μmから150μmまでの4段階に変えて、特性インピーダンスの測定を行った。なお特性インピーダンスとしては、差動インピーダンスについてTDR測定を行った。ここで、目標とする差動インピーダンスの値は、信号配線120の間隔SSが100μmの場合において100Ωとした。
【0045】
ここで、図5に示している信号配線120の間隔SSを変化させれば、各信号配線が接地配線層に対向する面積がたとえ同じであっても、差動インピーダンスが変化することはもちろんである。そして、信号配線120の間隔SS以外の条件が変わらないと仮定すれば、差動インピーダンスは、信号配線120の間隔SSの変化に伴って直線的に変化すると予測される。したがって、上記の検証試験において測定された上記各間隔SSでの実際の差動インピーダンスの値(測定値)の、直線上予想値からのずれの程度によって、上記間隔SSの変化に起因する差動インピーダンスのばらつきを評価することができる。また一方、信号配線120の間隔SSを変化させることは、接地配線層10のパターンに対する信号配線120の相対的な位置を変化させることを意味する。しがって信号配線120の間隔(スペース)SSを変えたときの差動インピーダンスのばらつきがないことは、信号配線120の位置による特性インピーダンスのばらつきがないことを意味し、逆に信号配線120の間隔(スペース)SSを変えたときの差動インピーダンスのばらつきが大きいことは、信号配線120の位置による特性インピーダンスのばらつきが大きいことを意味する。
【0046】
そこでこの検証実験では、上述のようにTDR測定により信号配線120の間隔(スペース)SSを前述のように75μmから150μmまでの4段階に変えて差動インピーダンスを調べ、その値の前記直線上予想値からのずれの程度を、ばらつきとして評価した。その評価結果を、表5中に示す。
【0047】
なお表5において、ばらつき評価欄の各記号は次の通りである。
×: 各間隔SSにおける前記直線上予想値からの差動インピーダンス測定値のずれが、15%程度を越えた、ばらつき大のケース。
△: 各間隔SSにおける前記直線上予想値からの差動インピーダンス測定値のずれが、10〜15%程度の、ばらつき中程度のケース。
○: 各間隔SSにおける前記直線上予想値からの差動インピーダンス測定値のずれが、5〜10%程度の、ばらつき小のケース。
◎: 各間隔SSにおける前記直線上予想値からの差動インピーダンス測定値のずれが、5パーセント程度以下の、ばらつき極小のケース。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
表5から、特性インピーダンスのばらつきには、段違いのずれ距離Dが大きな影響を及ぼし、ずれ距離Dがゼロの例(No.1、No.10、No.14)では、特性インピーダンスのばらつきが大きいことが分かる。また、ずれを付与した例のうちでも、特にずれ距離Dを、前記式(1)の範囲内とした例(No.3〜8、No.11、No.12、No.15〜17では、特性インピーダンスのばらつきを確実に抑制できたことが分かる。
【符号の説明】
【0054】
10 接地絶縁層
12 信号配線層
16 絶縁層
102 連続帯状パターン部
104 非連続帯状パターン部
120 信号配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層における一方の面に信号線層のパターンを配列し、絶縁層の他方の面に、メッシュ構造パターンで接地配線層を設けた特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、
前記接地配線層のメッシュ構造パターンは、所定の方向に沿って連続的に延び、かつ所定の間隔を置いて平行に形成されている複数の連続帯状パターン部と、隣り合う連続帯状パタ−ン部の間を結ぶように形成されている複数の非連続帯状パターン部とからなり、
前記非連続帯状パターン部は、連続帯状パターン部の延びる方向に対して交差する方向に沿うよう、所定の間隔を置いて相互に平行に形成されるとともに、各連続帯状パターン部の幅方向の一方の側の非連続帯状部の位置が、他方の側の非連続帯状パターン部の延長位置に対して、連続帯状パターン部の延びる方向にずれていることを特徴とする、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、
連続帯状パターン部の延びる方向と非連続帯状パターン部の延びる方向とが、90°±2°の範囲内で交差するように構成されていることを特徴とする、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板。
【請求項3】
請求項2に記載の特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、
前記複数の連続帯状パターン部および前記複数の非連続帯状パターン部からなる接地配線層の周辺部分が、それらに接する共通接地配線層に取り囲まれ、かつその共通接地配線層に対する連続帯状パターン部および非連続帯状パターン部の角度が、45±2°の範囲内とされていることを特徴とする、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか1の請求項に記載された特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、
接地配線層における連続帯状パターン部の幅方向の一方の側の非連続帯状部と、連続帯状パターン部の幅方向の他方の側の非連続帯状部とのずれ距離をDとし、非連続帯状部の幅をW2、非連続帯状部の間隔をS2としたとき、ずれ距離Dが次式、
W2/2≦D≦S2/2
を満たすように定められていることを特徴とする、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載された特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、
前記信号配線層の接地配線層への投影面の長手方向が、連続帯状パターン部の延びる方向に対して45°±2°の範囲内で交差するように構成されていることを特徴とする、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちのいずれか1の請求項に記載された特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、
前記絶縁層を柔軟な材料で形成して、フレキシブルプリント配線基板としたことを特徴とする、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のうちのいずれか1の請求項に記載された特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板において、
前記絶縁層を柔軟な材料で形成して、そのプリント配線基板の長手方向の少なくとも一部をフレキシブル部とするとともに、そのプリント配線基板の長手方向の他の部分には相対的に硬質な絶縁材料を積層して、電子部品を搭載し得るリジッド部として、フレックスリジッドプリント配線基板を構成したことを特徴とする、特性インピーダンスコントロール対応プリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−94646(P2012−94646A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239988(P2010−239988)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(597079681)株式会社 大昌電子 (42)
【Fターム(参考)】