産業機械の防振装置
【課題】防振部の動力を低減するとともに、防振性能を向上させる、燃費および作業性を向上させた産業機械の防振装置を提供する。
【解決手段】動力軽減手段47は、圧送部37と、シリンダライナ33との間の流路36に、流路切換弁42,42a,42b,42d,42eと、アキュムレータ46とを備えるとともに、機体には、機体の振動を検出する振動検出器35を備え、流路切換弁42,42a,42b,42d,42eと、振動検出器35とを、制御部39に接続する。また、機体には振動検出器35を備え、流路切換弁42と、振動検出器35とを、制御部39に接続する。
【解決手段】動力軽減手段47は、圧送部37と、シリンダライナ33との間の流路36に、流路切換弁42,42a,42b,42d,42eと、アキュムレータ46とを備えるとともに、機体には、機体の振動を検出する振動検出器35を備え、流路切換弁42,42a,42b,42d,42eと、振動検出器35とを、制御部39に接続する。また、機体には振動検出器35を備え、流路切換弁42と、振動検出器35とを、制御部39に接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体を構成する上部体および下部体の間に防振部を備え、防振部は、圧送部およびリリーフ弁を設けた流路に接続した、防振部材を給排可能とするシリンダライナおよび、このシリンダライナ内を摺動自在とし、一端部を上部体または下部体に取付けたピストンからなるシリンダであって、上部体または下部体から伝播する振動の方向および振幅に応じて、シリンダライナ内に防振部材を給排し、シリンダライナ内の防振部材の量を調節することにより、シリンダライナの内部圧を振動負荷前後で一定に保持して、上部体もしくは下部体を防振する産業機械の防振装置に関するものであり、より詳細には、防振部が、動力軽減手段を備えるとともに、その防振性能の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトラクタなどの作業車両には、走行時に路面の凹凸に起因して車体へ入力される振動から、キャビンなどを有する操縦部を防振する方法として、機体とキャビンとの間に防振ゴムを備えるものがある。また、防振すべき操縦部に取付けられた油圧シリンダのピストン荷重につりあう油圧力をリリーフ弁で調整し、油圧シリンダのシリンダライナと一体の走行部が油圧シリンダの軸方向に加振されたとき、リリーフ弁の作動により油圧シリンダの内部圧を振動付加前後で一定に保持して、操縦部を防振する技術もある(例えば特許文献1および非特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−27342号公報
【非特許文献1】農業機械学会関西支部報第48号(昭和55年6月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような特許文献1の作業車両では、防振ゴムに振動を吸収させて操縦部が防振されるため、走行時に路面から受ける、特に中程度以上の振動に対しては操縦部を十分に防振することができない問題があった。そのため、非特許文献1のような防振技術を作業車両に用いた場合では、例えばミッションケース内の作動油を油圧ポンプにより油圧シリンダ内に供給し、油圧シリンダの内圧を振動付加前後で一定に保持して防振すべき部位を防振させるが、この油圧シリンダの内圧を保持するため、常時油圧ポンプを駆動させておく必要があり、過負荷による油圧ポンプの損傷や燃費が低下する問題があった。
また、上述した問題のほか、このような油圧シリンダでは、油圧シリンダの内圧を振動付加前後で一定に保持するために作動油などを給排させることでピストンが摺動されるが、このときピストンとシリンダライナとが、摩擦力の大きい静摩擦となるため、ピストンの円滑な摺動を妨げ、この油圧シリンダによる防振すべき部位の防振効果が低下する問題もあった。
そこで、この発明の目的は、防振部の動力を低減するとともに、防振性能を向上させる、燃費および作業性を向上させた産業機械の防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、機体を構成する上部体および下部体の間に防振部を備え、前記防振部は、圧送部およびリリーフ弁を設けた流路に接続した、防振部材を給排可能とするシリンダライナおよび、該シリンダライナ内を摺動自在とし、一端部を前記上部体または前記下部体に取付けたピストンからなるシリンダであって、前記上部体または前記下部体から伝播する振動の方向および振幅に応じて、前記シリンダライナ内に前記防振部材を給排し、前記シリンダライナ内の前記防振部材の量を調節することにより、前記シリンダライナの内部圧を振動負荷前後で一定に保持して、前記上部体もしくは前記下部体を防振する産業機械の防振装置において、前記防振部は、該防振部の駆動力を軽減する、動力軽減手段を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の産業機械の防振装置において、前記動力軽減手段は、前記圧送部と、前記シリンダライナとの間の前記流路に、流路切換弁と、アキュムレータとを備えるとともに、前記機体には、前記機体の振動を検出する振動検出器を備え、前記流路切換弁と、前記振動検出器とを、制御部に接続することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の産業機械の防振装置において、前記動力軽減手段は、前記ピストンに弾性体を挟入し、前記圧送部と、前記シリンダライナとの間の前記流路に、前記流路切換弁を備えるとともに、前記機体には前記振動検出器を備え、前記流路切換弁と、前記振動検出器とを、前記制御部に接続することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の産業機械の防振装置において、前記シリンダは、該シリンダを回転させる回転機構を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1および4に記載の産業機械の防振装置において、前記回転機構と、前記振動検出器とを、前記制御部に接続することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1および4に記載の産業機械の防振装置において、前記回転機構は、前記シリンダライナの内部圧を調整するリリーフ弁からの前記防振部材の排出流量により駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、機体を構成する上部体および下部体の間に防振部を備え、防振部は、圧送部およびリリーフ弁を設けた流路に接続した、防振部材を給排可能とするシリンダライナおよび、このシリンダライナ内を摺動自在とし、一端部を上部体または下部体に取付けたピストンからなるシリンダであって、上部体または下部体から伝播する振動の方向および振幅に応じて、シリンダライナ内に防振部材を給排し、シリンダライナ内の防振部材の量を調節することにより、シリンダライナの内部圧を振動負荷前後で一定に保持して、上部体もしくは下部体を防振する産業機械の防振装置において、防振部は、この防振部の駆動力を軽減する、動力軽減手段を備えるので、過負荷による油圧ポンプなど圧送部の損傷を防ぐとともに、機体の燃費を向上することができる。従って、燃費および作業性を向上させた産業機械の防振装置を提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、動力軽減手段は、圧送部と、シリンダライナとの間の流路に、流路切換弁と、アキュムレータとを備えるとともに、機体には、機体の振動を検出する振動検出器を備え、流路切換弁と、振動検出器とを、制御部に接続するので、機体に加わる振動が低振動時や必要時に応じた防振の際には、防振部が、圧送部からの防振部材によるシリンダの作動からアキュムレ−タの空気圧によるシリンダの作動に切り換えられ、圧送部の駆動力を軽減することができる。従って、燃費を向上させた産業機械の防振装置を提供することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、動力軽減手段は、ピストンに弾性体を挟入し、圧送部と、シリンダライナとの間の流路に、流路切換弁を備えるとともに、機体には振動検出器を備え、流路切換弁と、振動検出器とを、制御部に接続するので、機体に加わる振動が小さい場合には、圧送部で供給された防振部材によるシリンダの作動から、ピストンにおける弾性体の伸縮および、シリンダライナ内の防振部材の往来によるシリンダの作動に切り換えて防振すべき部位が防振されるため、圧送部の動力を軽減することができる。従って、燃費を向上させた産業機械の防振装置を提供することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、シリンダは、このシリンダを回転させる回転機構を備えるので、防振部のピストンに動摩擦を加えて、ピストンとシリンダライナとの摩擦力を小さくし、ピストンを円滑に摺動させることで、防振すべき部位の振動低減効果を向上することができる。従って、防振部の防振性能を向上した産業機械の防振装置を提供することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、回転機構と、振動検出器とを、制御部に接続するので、機体が大きな振動を受けた場合にのみ回転機構を駆動させ、この回転機構の動力を低減できるとともに、シリンダに動摩擦を付与することにより、ピストンとシリンダライナとの摺動面の摩擦を小さくすることで、シール材の耐久性を向上することができる。従って、コストダウンおよび燃費を向上させた産業機械の防振装置を提供することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、回転機構は、リリーフ弁から排出される防振部材の排出流量により駆動するので、回転機構を制御する装置を別途必要とせず、簡単な構成で回転機構を駆動することができる。従って、安価に防振部の防振性能を向上させた産業機械の防振装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は本発明の上部体および下部体を備える産業機械の一実施例を示す、作業車両としてのホイール式トラクタの左側面図、図2は同トラクタの平面図である。
【0018】
この例の産業機械として、作業車両のトラクタ1は、車体フレーム2の前後に、前輪3および後輪4を備え、前輪3の上方にボンネット5を形成するとともに、その内側には原動機部としてのエンジン6およびクラッチハウジング7が配置され、さらにこのクラッチハウジング7の後部にはミッションケース8が配設されており、エンジン6からの動力が前輪3および後輪4に伝達される。このような構成を有する下部体1Bのボンネット5の後部に連続して車体フレーム2上には上部体1Aとしてのキャビン9が設けられる。なお、トラクタ1は、上述したようなキャビン仕様のほか、ロプス仕様であってもよい。
【0019】
次いで、キャビン9内には、操縦部として、ブレーキペダルやクラッチペダルなどの操作ペダル10、ステアリングハンドル11、シート12などが設けられる。また、シート12の両側方に有する図示しない左右フェンダには、例えば、主変速レバー14や副変速レバー、PTO変速レバーなどの各種操作レバーが突設されている。また、キャビン9の外周は、それぞれフロントガラス15、リヤガラス16、ドア17、屋根18などを取付けてもよい。
【0020】
そして、エンジン6の動力は、ミッションケース8から前後に突出した不図示のPTO軸に伝達され、このPTO軸の駆動により、車両後端部のユニバーサルジョイントや、リフトリンク19および左右ロアリンク20からなる三点リンク式などの作業機装着装置21を介して車両後端に装着された図示しない作業機が駆動される。
【0021】
次に、本願発明の、動力軽減手段を備える防振装置の防振部について、その具体的構成を説明する。図3は防振部を備えるトラクタを前方から見た斜視図、図4は防振部の設置位置を示す模式図、図5は防振部における動力軽減手段の一例を示す防振部の側面模式図である。
【0022】
まず、図3に示すように、操縦部を備えるキャビン9などの上部体1Aと、前輪3および後輪4を備え、車体フレーム2上に載置したエンジン6を内設するボンネット5やミッションケース8などから構成される下部体1Bとの間であって、その車体フレーム2上には、走行時に路面の凹凸に起因して車体へ入力される振動から上部体1Aを防振するための防振部31が設けられる。
【0023】
この防振部31は、例えば図4に示すように、ピストン32およびシリンダライナ33からなるシリンダsなどであって、例えば、下部体1Bの上端部に位置する車体フレーム2上における、上部体1A底部の前部中央近傍に1箇所、および上部体1A底部の後部の左右であって、車体フレーム2後部の左右に延設されるステー上に1箇所ずつ配設される。なお、防振部31の設置数および設置箇所は上記に限定されない。
【0024】
さらに、防振部31を以下に例を示しながら詳述する。図5には、上述した防振部31のシリンダsの1つを示すが、上部体1Aの底部に、ピストンヘッド32aを下方に向けたピストン32の上端部が固設される。また、下部体1Bの車体フレーム2上には、上方からピストンヘッド32aを挿入可能としたシリンダライナ33の下端部が固設される。
【0025】
また、上部体1Aまたは下部体1B(上部体1Aおよび下部体1Bの双方であってもよい)の適宜位置には、機体に加振される振動を検出する、例えば、静電容量式や渦電流式などの変位センサや、圧電素子式などの加速度センサなど、検出方式やセンサの種類は限定されない振動検出器35が設けられる。
【0026】
さらに、シリンダライナ33の中途部(シリンダライナ33の下端部と、このシリンダライナ33内に摺動可能に挿入されたピストンヘッド32aとの間)と、ミッションケース8内との間には、防振部材40を給排する配管などの流路36が接続される。
【0027】
また、ミッションケース8近傍の流路36には、油圧ポンプなどの圧送部37が備えられるとともに、圧送部37近傍のシリンダライナ33側(下流側)にはミッションケース8に接続した流路切換弁42が設けられる。さらに、流路切換弁42と、シリンダライナ33との間には、チェック弁43が設けられ、このチェック弁43よりもシリンダライナ33側に位置する流路36から分岐した流路36には、チェック弁44および絞り45を介してアキュムレ−タ46が接続される。
【0028】
次いで、チェック弁43と、流路切換弁42との間の流路36から分岐して、ミッションケース8内に戻る流路36には、リリーフ弁38が設けられる。そして、流路切換弁 42と、振動検出器35とは、コントローラなどの制御部39に接続される。
【0029】
このような、振動検出器35と、制御部39と、流路切換弁42と、チェック弁43,44と、アキュムレ−タ46とから構成される動力低減手段47を備える防振部31により、シリンダs内が、予めリリーフ弁38で設定した油圧力になるまで、ミッションケース8内などに有する防振部材40としての作動油(潤滑油)が、油圧ポンプ37の駆動によりシリンダライナ33内に導入され、ピストン32が作動油により押し上げられ、このピストン32により上部体1Aが支持される。
【0030】
そして、機体走行時に路面の凹凸に起因して機体へ入力され、下部体1Bより伝播される振動から、防振すべき上部体1Aを防振する場合には、シリンダライナ33と一体の下部体1Bがシリンダsの軸方向であって、上方または下方に加振され、ピストン32に作動油から上方または下方への力が加わるとき、リリーフ弁38が作動し、シリンダs内の作動油を給排することで、シリンダs内の圧力が一定に保持され、上部体1Aが防振される。
【0031】
ここで、機体に加わる振動が低振動(少振幅)の場合、動力低減手段47により防振部31の動力を低減させて上部体1Aを防振する方法について説明する。
【0032】
図5に示すように、振動検出器35は、適宜設定された振動以下の低振動が機体に加振されたことを検出するとともに、その検出情報が制御部39に送信される。次いで、制御部39は、前記検出情報に基づいて流路切換弁42を切り換えることにより、圧送部37からの防振部材40の送圧が流路切換弁42で遮断されるとともに、チェック弁43までの流路36内に有する防振部材40が逆流し、ミッションケース8内に排出される。
【0033】
このとき、ミッションケース8へ圧送部37から直接防振部材40が排出される。その際、防振部材40の排出圧力が増加する。この排出圧力を、チェック弁44のパイロットに利用することで、チェック弁44の逆流を可能とする。逆に、リリーフ弁38からミッションケース8へ排出される防振部材40は減少するため、この排出圧力をパイロットに利用するチェック弁43は逆流不能となる。即ち、上部体1Aは、アキュムレ−タ46内部の空気圧により、釣り合い支持された状態となり、アキュムレ−タ46の空気バネ効果によって、上部体1Aが防振支持される。また、アキュムレ−タ46への流路36中に絞り45を挿入し、防振部材40の流量を制限することで、減衰効果を向上させ、上部体1Aの防振性能が向上される。
【0034】
なお、この防振部31の動力低減手段47による低振動の防振作動中に、機体に大きな力が加わり、振動検出器35により適宜設定された振動以上の大きな振動(大きな振幅)が検出されたときには、制御部39は、この検出情報に基づいて流路切換弁42を切り換えることにより、防振部材40がリリーフ弁38を通過することとなる。その際、リリーフ弁38からミッションケース8へ排出される防振部材40の排出圧力が増加するため、これをパイロットに利用してチェック弁43の逆流を可能とする。その際、チェック弁44は、そのパイロット圧力が低下するため、逆流不能となる。即ち、圧送部37を用いた通常の防振方法に切り換えられる。
【0035】
動力低減手段47は、その構成配置を変更することもできる。図6〜7は、動力軽減手段の構成配置の変更例を示した防振部の側面模式図である。まず、図6に示すように、リリーフ弁38と、シリンダライナ33との間の流路36に流路切換弁42aを設け、この流路切換弁42aを介してアキュムレ−タ46がミッションケース8などに接続される。また、上述同様に、振動検出器35と、流路切換弁42aとが制御部39に接続される。
【0036】
ここで、上述同様に、振動検出器35が、機体に加振された低振動を検出した際、制御部39により流路切換弁42aが切り換えられることで、この流路切換弁42aにおいて圧送部37からの防振部材40の送圧が遮断されるとともに、アキュムレ−タ46内部の空気が、流路切換弁42aから流路36を介してシリンダライナ33内の防振部材40を押圧するため、上部体1Aはアキュムレ−タ46の空気バネ効果による防振状態となる。
【0037】
なお、上述同様に、低振動の防振作動中に、振動検出器35により大きな振幅が検出されたときには、制御部39は、この検出情報に基づいて流路切換弁42aを切り換えることで、流路切換弁42aにおいてアキュムレ−タ46からの空気圧供給を遮断し、圧送部37から流路切換弁42aを介してシリンダライナ33内に防振部材40を圧送する、圧送部37を用いた通常の防振方法に切り換えられる。
【0038】
次に、図7では、流路36を分岐させて、それぞれをピストンヘッド32aを挟んだシリンダライナ33の上下に連結させるとともに、アキュムレ−タ46が流路切換弁42bを介して流路切換弁42bと、リリーフ弁38との間の流路36に接続される。また、上述同様に、振動検出器35と、流路切換弁42bとが制御部39に接続される。
【0039】
ここで、上述同様に、振動検出器35が低振動を検出した際、制御部39により流路切換弁42bが切り換えられることで、この流路切換弁42aにおいて圧送部37からの防振部材40の送圧が遮断される。このとき、アキュムレ−タ46内の空気圧は、リリーフ弁38の設定圧力、即ち、シリンダs内の防振部材40の圧力とほぼ等しいため、流路切換弁42bを切換えた際、ピストン32は大きく移動しない。即ち、上部体1Aに流路切換による衝撃を生じさせず、アキュムレ−タ46の空気バネを利用した防振状態に変更できる。
【0040】
なお、図7では、ピストンヘッド32aを挟んでシリンダライナ33内の上部にも防振部材40を有する構造としているが、下部のみに防振部材40を有する構造としてもよい。そして、上述同様に、低振動の防振作動中に、振動検出器35により大きな振幅が検出されたときには、制御部39は、この検出情報に基づいて流路切換弁42bを切り換えることで、この流路切換弁42bにおいてアキュムレ−タ46からの空気圧供給を遮断し、圧送部37から流路切換弁42bを介してシリンダライナ33内に防振部材40を圧送する、圧送部37を用いた通常の防振方法に切り換えられる。
【0041】
次に、動力軽減手段は、大きな振動時にアキュムレ−タ46の圧力を用いて防振部31を作動させることもできる。図8は、アキュムレ−タを用いてシリンダ内を補圧する動力軽減手段を備える防振部の側面模式図である。
【0042】
この場合、圧送部37および流路切換弁42dが設けられた、ピストンヘッド32a下方のシリンダライナ33に接続される流路36に、チェック弁41aを介して設けられたアキュムレ−タ46を備え、この流路36から分岐された流路36を、ピストンヘッド32a上方のシリンダライナ33および流路切換弁42dを介してミッションケース8に接続し、その流路36の中途部には、高圧用のリリーフ弁38c、低圧用のリリーフ弁38dおよび各チェック弁41b,41c,41dが設けられる。また、振動検出器35と、流路切換弁42dとが制御部39に接続される。
【0043】
ここで、通常の防振時には、圧送部37による防振部材40が流路切換弁42dを介してシリンダsに供給され、防振部31の作動により上部体1Aが防振されるとともに、アキュムレ−タ46が流路36内の防振部材40によりチェック弁41aを介して昇圧される。また、シリンダライナ33の上部には、上部体1Aの支持には影響しない程度の低圧の防振部材40を封入する。この圧力は、リリーフ弁38dで設定を行う。そして、機体に加わる振動が小さいことを振動検出器35が検出すると、制御部39は流路切換弁42dを切り換えて、流路切換弁42dで圧送部37による防振部材40の供給を遮断する。
【0044】
このとき、大きな振動が加わってピストン32が上側に移動した場合、チェック弁41cを防振部材40が流れるため、これをパイロットとしてチェック弁41aが逆流可能となる。この状態においては、ピストン32が上方に移動しているため、シリンダライナ33の下部の防振部材40の圧力は低下している。そこで、この圧力低下をアキュムレ−タ46の空気圧にて補う。本状態を繰り返すことで、アキュムレ−タ46の空気圧は徐々に低下し、それに伴い防振性能は低下する。このため、振動検出器35にて、ある閾値以上の振動が検出された場合に、制御部39は流路切換弁42dを切り換えて、通常の防振状態に戻すとともに、アキュムレ−タ46を昇圧する。
【0045】
上述した大きな振動時にアキュムレ−タ46の圧力を用いて防振部31を作動させる方法は、図9に示すような構成にすることもできる。図9は、アキュムレ−タを用いてシリンダを補圧する動力軽減手段の別の例を示す防振部の側面模式図である。
【0046】
この場合、ピストンヘッド32a下方のシリンダライナ33に接続される流路36であって、圧送部37と、リリーフ弁38eとの間の流路36に設けたれた流路切換弁42eには、アキュムレ−タ46が接続されるとともに、流路切換弁42eと、アキュムレ−タ46との間の流路36には、リリーフ弁38fが設けられる。また、振動検出器35と、流路切換弁42eとが制御部39に接続される。
【0047】
ここで、上述同様に、通常防振状態においては、圧送部37により防振部材40は流路切換弁42eを介してシリンダsに供給される。このとき、振動検出器35が、低振動であることを検知した場合、流路切換弁42eを一旦図中の中央部に切換え、アキュムレ−タ46を設定時間の間、昇圧する。アキュムレ−タ46を昇圧した後、再度流路切換弁42eを切換え、圧送部37から供給される防振部材40が、直接ミッションケース8へ戻る構成とする。その際には、アキュムレ−タ46がシリンダsの下部と繋がる構成となる。このとき、アキュムレ−タ46内部の空気圧を利用した防振状態となる。本構成においては、何度かの振動を吸収した後、アキュムレ−タ46内部の空気圧は低下し、防振性能が低下する。そして、振動検出器35にて、閾値を超える振動を検出した場合、圧送部37とシリンダライナ33下部とを接続する通常の防振状態に戻す。以後、本切換え機構を繰り返す。
【0048】
次に、動力軽減手段47´は、防振部31のシリンダsのピストン32に弾性体を設けてもよい。図10は、シリンダのピストンに弾性体を設けてなる動力軽減手段を備えた防振部の側面模式図である。
【0049】
この動力軽減手段47´は、シリンダライナ33内であって、例えば、ピストンヘッド32aの下端部に取付けられたバネなどの弾性体50と、弾性体50の下端部に取付けられた、ピストン32の摺動に合わせて摺動可能とされるフリーピストン48とから構成される。また、シリンダライナ33の中途部内側には、シリンダライナ33内に有する防振部材40の流通路49が設けられる。
【0050】
そして、このようなシリンダsにおけるフリーピストン48下方のシリンダライナ33には、圧送部37、リリーフ弁38および流路切換弁42が設けられた流路36が接続されるとともに、ピストンヘッド32a上方のシリンダライナ33に接続された流路36は、流路切換弁42に接続される。なお、振動検出器35と、流路切換弁42とが制御部39に接続される。
【0051】
ここで、振動検出器35により機体に加わる振動が大きい場合には、防振部31が圧送部37を用いた防振部材40によるシリンダsの作動で、上部体1Aが防振される。なお、シリンダライナ33内であって、ピストンヘッド32a上方のスペースs1や、弾性体47を有するピストンヘッド32aとフリーピストン48との間のスペースs2、フリーピストン48とシリンダライナ33底部との間のスペースs3のそれぞれには、防振部材40が導入されている。
【0052】
次いで、振動検出器35により機体に加わる振動が小さい場合には、制御部39が流路切換弁42を切り換えることで、圧送部37から供給される防振部材40がこの流路切換弁42で遮断される。そして、小さな振動によるシリンダライナ33の摺動が、弾性体50の伸縮によって吸収されるとともに、スペースs1とスペースs2内の防振部材40が流通路49を介して移動することで減衰作用を得て、振動低減効果が向上する。また、このとき、圧送部37より防振部材40がスペースs1へ供給されるが、その流路36よりも上方に設けた流路36に防振部材40が達する場合は、ここからミッションケース8へ排出される。この状態において、機体に加わる振動が小さい場合のシリンダsによる防振には、圧送部37から供給される防振部材40は仕事をしないため、圧送部37の動力を軽減することができる。
【0053】
なお、機体に加わる振動が大きい場合には、シリンダライナ33がある程度上下に摺動されるため、流通路49の位置がピストンヘッド32aの側方からずれて、スペースs1とスペースs2との防振部材40の往来が閉ざされる。このため、スペースs3に圧送部37により供給される防振部材40の内圧をリリーフ弁38により一定に保持して、上部体1Aが防振される。
【0054】
以上のような構成にすることで、機体に加わる振動が小さい場合には、圧送部37による防振部材40でのシリンダsの作動から、ピストン32における弾性体47の伸縮および、シリンダライナ33内のスペースs1とスペースs2間における防振部材40の往来によるシリンダsの作動に切り換えて上部体1Aが防振されるため、圧送部37による防振部材40は仕事をしないため、圧送部37の動力を軽減することができる。
【0055】
以上のような動力軽減手段47,47´を備える防振部31において、その防振性能を向上させることができる。図11は、回転機構をピストン上部に備えるシリンダの側面模式図(a)および回転機構をシリンダライナ下部に備えるシリンダの側面模式図(b)、図12は、モータによるギヤ駆動でピストンを回転させる回転機構を示すシリンダの側面模式図、図13は、ピストンをモータと一体型とした回転機構を示すシリンダの側面模式図である。
【0056】
上述してきたように、下部体1Bに加わる振動により、防振部31が、シリンダsの摺動に伴い、シリンダsの内部圧を一定に保持させることで、上部体1Aに伝播されず、上部体1Aが防振されるが、このとき、シリンダsにおけるピストン32と、シリンダライナ33やフッ素樹脂などからなるシール材51との間に摩擦力が生じ、防振部31による防振効果が低下する。特に、低振動時には、ピストン32と、シリンダライナ33との相対変位が得られず、静摩擦状態となるため、大きな摩擦力が生ずる。これを動摩擦状態とすることで、低振動時にも防振効果を向上することができる。
【0057】
そこで、まず、図11(a)に示すように、例えば、上部体1Aと、シリンダsにおけるピストン32との間に、詳細を後述するピストン32を回転させる回転機構52を設け、常時ピストン32をシリンダライナ33内で水平方向に回転させることで、防振部31の作動時にピストン32と、シリンダライナ33とが軸方向に摺動されることと併せて、これらピストン32と、シリンダライナ33との摺動面が動摩擦となり、両者の摩擦力が小さくなる。
【0058】
この結果、ピストン32と、シリンダライナ33とが防振部31の作動時において軸方向に円滑に摺動されるため、シリンダsで振動を伝播してしまうことがなく、防振性能が向上する。
【0059】
また、図11(b)に示すように、例えば、シリンダライナ33底部に、シリンダライナ33を回転させる回転機構52´を設けてもよい。この場合、上述とは逆にシリンダライナ33を水平方向に回転させるため、防振部31の作動時にピストン32と、シリンダライナ33とが軸方向に摺動されることと併せて、これらピストン32と、シリンダライナ33との摺動面が動摩擦となり、両者の摩擦力が小さくなり、上述同様の効果が得られる。なお、シリンダライナ33底部の軸芯に流路36を設けることで、シリンダライナ33内における防振部材40の給排が可能とされる。なお、回転機構52,52´の設置位置は上述に限定されるものではない。
【0060】
次に、上記回転機構の構成を、ピストン32を回転させる回転機構52を例に説明する。まず、図12に示すように、例えば、上部体1A底部に設置したモータ53のモータ軸53aにギヤ54が取付けられるとともに、このギヤ54をピストン32の上部に嵌合したギヤ55に噛み合わせる。なお、モータ53の駆動は、図示しないバッテリからの電力供給によるものとされることが好ましい。また、符号56はボールベアリングである。
【0061】
このような構成により、モータ53の駆動力によってギヤ54,55を介しピストン32を強制的に回転させるため、ピストン32が常時安定的に回転されて、ピストン32と、シリンダライナ33との摺動面を確実に動摩擦状態とすることができる。
【0062】
また、図13に示すように、例えば、上部体1A底部に設置したモータ53のモータ軸53aにピストン32の上端部を固設させて、ピストン32をモータ53と一体型にしてもよい。この結果、モータ53からピストン32に動力を伝達するギヤ54,55などの中間部材を必要とせず、直接モータ53から動力が高効率に伝達されたピストン32の回転によって、ピストン32が常時安定的に回転されて、ピストン32と、シリンダライナ33との摺動面を確実に動摩擦状態とすることができる。
【0063】
次に、上記回転機構の動力を軽減することもできる。図14は、振動の大きさにより回転機構の回転制御を行うシリンダの側面模式図、図15は、リリーフ弁からの防振部材の排出流量により回転機構を回転させるシリンダの側面模式図である。
【0064】
まず、図15に示す、前述したような、上部体1Aおよび下部体1Bの適宜位置に取付けられた振動検出器35と、モータ53とが制御部39に接続される。ここで、適宜設定された振動(振幅)以上の振動が機体に加振されたことを振動検出器35が検出した検出情報に基づいて、制御部39がモータ53を回転させ、ピストン32と、シリンダライナ33との摺動面を動摩擦状態にする。また、より大きな振動が生じた場合には、ピストン32と、シリンダライナ33とは相対変位が大きくなり、これに伴い自動的に動摩擦状態となるため、モータ53の駆動を停止させる。さらに、機体に適宜設定された振動(振幅)以下の振動が加振された、もしくは振動が加振されないことを振動検出器35が検出した検出情報に基づいて、制御部39がモータ53にその駆動を停止させる。
【0065】
この結果、機体に加わる振動が比較的小さな場合と大きな場合には、モータ53を停止させてピストン32の回転を止めることで、常時ピストン32を回転させる必要がなく、モータ53の耐久性向上および動力を軽減することができる。従って、ピストン32と、シリンダライナ33との相対変位が得られず、摺動面が静摩擦状態となる、限定された状態においてのみモータ53を駆動させることで、この回転機構52,52´の動力を低減することができる。なお、この回転機構52,52´の動力軽減は、上述のように回転機構52をシリンダsの上部に備えた場合、回転機構52´をシリンダsの下部に備えた場合、あるいはその他適宜位置に備えたあらゆる場合に適用される。
【0066】
また、モータ53は、リリーフ弁38からの防振部材40の排出流量を利用して駆動させることもできる。この場合、図16に示すように、ピストン32の上端部に固設し、上部体に設置される圧力モータ53´(流体駆動モータ)と、リリーフ弁38の排出口とが配管などで接続される。なお、圧力モータ53´(流体駆動モータ)は公知技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0067】
ここで、機体に振動が加振され、防振部31の作動中にシリンダsの摺動に伴い、シリンダライナ33内に有する防振部材40がリリーフ弁38から排出される際、この排出された防振部材40が圧力モータ53´内に流入することで圧力モータ53´が駆動され、ピストン32が回転し、ピストン32と、シリンダライナ33との摺動面が動摩擦状態となる。特に、防振部材40の排出量が多いほど、防振効果低減されているため、このような状況において、効果的にピストン32と、シリンダライナ33との摺動面を動摩擦状態にすることができる。
【0068】
この結果、機体に加わる振動が少なく、リリーフ弁38からの防振部材40の排出流量が少ない場合には、圧力モータ53´の駆動を休止でき、圧力モータ53´の耐久性向上および動力を軽減することができる。また、このような回転機構52,52´の駆動を制御する装置を別途設ける必要がなく、簡単な構成で回転機構52,52´の動力を軽減することができる。
【0069】
以上は、産業機械の一例として、ホイール式トラクタについて説明してきたが、この発明はこれに限定されるものではなく、クローラ式トラクタやコンバイン、田植機など農作業車両のほか、建設作業車両として、バックホーやブルトーザなど、また除雪車や救急車などの車両のほか、航空機、船舶など防振すべき部位を備えたあらゆる産業機械に適用することができる。
【0070】
さらに、この防振部31は、上述してきたような、機体の上部体1Aの防振に限定して適用されるものではなく、例えば、操縦部や客室などを機体の下部体1Bに備える吊り下げ式モノレールなど、防振すべき部位が例えば機体の下部体1Bに有するあらゆる産業機械にも適用することができる。
【0071】
なお、防振部材40は、上述してきたような作動油(潤滑油)に限定されず、防振部31において外気などを取り込んだ空気を用いてもよい。
【0072】
以上詳述したように、この例のトラクタ1(産業機械)は、機体を構成する上部体1Aおよび下部体1Bの間に防振部31を備え、防振部31は、圧送部37およびリリーフ弁38を設けた流路36に接続した、防振部材40を給排可能とするシリンダライナ33および、このシリンダライナ33内を摺動自在とし、一端部を上部体1Aまたは下部体1Bに取付けたピストン32からなるシリンダsであって、上部体1Aまたは下部体1Bから伝播する振動の方向および振幅に応じて、シリンダライナ33内に防振部材40を給排し、シリンダライナ33内の防振部材40の量を調節することにより、シリンダライナ33の内部圧を振動負荷前後で一定に保持して、上部体1Aもしくは下部体1Bを防振する産業機械の防振装置において、防振部31は、この防振部31の駆動力を軽減する、動力軽減手段47,47´を備えるものである。
【0073】
加えて、動力軽減手段47は、圧送部37と、シリンダライナ33との間の流路36に、流路切換弁42,42a,42b,42d,42eと、アキュムレータ46とを備えるとともに、機体には、機体の振動を検出する振動検出器35を備え、流路切換弁42,42a,42b,42d,42eと、振動検出器35とを、制御部39に接続する。また、動力軽減手段47´は、ピストン32に弾性体50を挟入し、圧送部37と、シリンダライナ33との間の流路36に、流路切換弁42を備えるとともに、機体には振動検出器35を備え、流路切換弁42と、振動検出器35とを、制御部39に接続する。
【0074】
さらに、シリンダsは、このシリンダsを回転させる回転機構52,52´を備え、回転機構52,52´と、振動検出器35とを、制御部39に接続するか、あるいは回転機構52,52´は、リリーフ弁38から排出される防振部材40の排出流量により駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は本発明の上部体および下部体を備える産業機械の一実施例を示す、作業車両としてのホイール式トラクタの左側面図である。
【図2】同トラクタの平面図である。
【図3】防振部を備えるトラクタを前方から見た斜視図である。
【図4】防振部の設置位置を示す模式図である。
【図5】防振部における動力軽減手段の一例を示す防振部の側面模式図である。
【図6】動力軽減手段の構成配置の変更例を示した防振部の側面模式図である。
【図7】動力軽減手段の構成配置の変更例を示した防振部の側面模式図である。
【図8】アキュムレ−タを用いてシリンダ内を補圧する動力軽減手段を備える防振部の側面模式図である。
【図9】アキュムレ−タを用いてシリンダを補圧する動力軽減手段の別の例を示す防振部の側面模式図である。
【図10】シリンダのピストンに弾性体を設けてなる動力軽減手段を備えた防振部の側面模式図である。
【図11】回転機構をピストン上部に備えるシリンダの側面模式図(a)および回転機構をシリンダライナ下部に備えるシリンダの側面模式図(b)である。
【図12】モータによるギヤ駆動でピストンを回転させる回転機構を示すシリンダの側面模式図である。
【図13】ピストンをモータと一体型とした回転機構を示すシリンダの側面模式図である。
【図14】振動の大きさにより回転機構の回転制御を行うシリンダの側面模式図である。
【図15】リリーフ弁からの防振部材の排出流量により回転機構を回転させるシリンダの側面模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1A 上部体
1B 下部体
2 車体フレーム
8 ミッションケース
9 キャビン
31 防振部
32 ピストン
32a ピストンヘッド
33 シリンダライナ
35 振動検出器
36 流路
37 圧送部
38,38a,38b,38c,38d,38e,38f リリーフ弁
39 制御部
40 防振部材
41a,41b,41c,41d,43,43´,44,44´ チェック弁
42,42a,42b,42d,42e 流路切換弁
46 アキュムレータ
47,47´ 動力軽減手段
50 弾性体
51 シール材
52,52´ 回転機構
53 モータ
53´ 圧力モータ
s シリンダ
s1,s2,s3 スペース
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体を構成する上部体および下部体の間に防振部を備え、防振部は、圧送部およびリリーフ弁を設けた流路に接続した、防振部材を給排可能とするシリンダライナおよび、このシリンダライナ内を摺動自在とし、一端部を上部体または下部体に取付けたピストンからなるシリンダであって、上部体または下部体から伝播する振動の方向および振幅に応じて、シリンダライナ内に防振部材を給排し、シリンダライナ内の防振部材の量を調節することにより、シリンダライナの内部圧を振動負荷前後で一定に保持して、上部体もしくは下部体を防振する産業機械の防振装置に関するものであり、より詳細には、防振部が、動力軽減手段を備えるとともに、その防振性能の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトラクタなどの作業車両には、走行時に路面の凹凸に起因して車体へ入力される振動から、キャビンなどを有する操縦部を防振する方法として、機体とキャビンとの間に防振ゴムを備えるものがある。また、防振すべき操縦部に取付けられた油圧シリンダのピストン荷重につりあう油圧力をリリーフ弁で調整し、油圧シリンダのシリンダライナと一体の走行部が油圧シリンダの軸方向に加振されたとき、リリーフ弁の作動により油圧シリンダの内部圧を振動付加前後で一定に保持して、操縦部を防振する技術もある(例えば特許文献1および非特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−27342号公報
【非特許文献1】農業機械学会関西支部報第48号(昭和55年6月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような特許文献1の作業車両では、防振ゴムに振動を吸収させて操縦部が防振されるため、走行時に路面から受ける、特に中程度以上の振動に対しては操縦部を十分に防振することができない問題があった。そのため、非特許文献1のような防振技術を作業車両に用いた場合では、例えばミッションケース内の作動油を油圧ポンプにより油圧シリンダ内に供給し、油圧シリンダの内圧を振動付加前後で一定に保持して防振すべき部位を防振させるが、この油圧シリンダの内圧を保持するため、常時油圧ポンプを駆動させておく必要があり、過負荷による油圧ポンプの損傷や燃費が低下する問題があった。
また、上述した問題のほか、このような油圧シリンダでは、油圧シリンダの内圧を振動付加前後で一定に保持するために作動油などを給排させることでピストンが摺動されるが、このときピストンとシリンダライナとが、摩擦力の大きい静摩擦となるため、ピストンの円滑な摺動を妨げ、この油圧シリンダによる防振すべき部位の防振効果が低下する問題もあった。
そこで、この発明の目的は、防振部の動力を低減するとともに、防振性能を向上させる、燃費および作業性を向上させた産業機械の防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、機体を構成する上部体および下部体の間に防振部を備え、前記防振部は、圧送部およびリリーフ弁を設けた流路に接続した、防振部材を給排可能とするシリンダライナおよび、該シリンダライナ内を摺動自在とし、一端部を前記上部体または前記下部体に取付けたピストンからなるシリンダであって、前記上部体または前記下部体から伝播する振動の方向および振幅に応じて、前記シリンダライナ内に前記防振部材を給排し、前記シリンダライナ内の前記防振部材の量を調節することにより、前記シリンダライナの内部圧を振動負荷前後で一定に保持して、前記上部体もしくは前記下部体を防振する産業機械の防振装置において、前記防振部は、該防振部の駆動力を軽減する、動力軽減手段を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の産業機械の防振装置において、前記動力軽減手段は、前記圧送部と、前記シリンダライナとの間の前記流路に、流路切換弁と、アキュムレータとを備えるとともに、前記機体には、前記機体の振動を検出する振動検出器を備え、前記流路切換弁と、前記振動検出器とを、制御部に接続することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の産業機械の防振装置において、前記動力軽減手段は、前記ピストンに弾性体を挟入し、前記圧送部と、前記シリンダライナとの間の前記流路に、前記流路切換弁を備えるとともに、前記機体には前記振動検出器を備え、前記流路切換弁と、前記振動検出器とを、前記制御部に接続することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の産業機械の防振装置において、前記シリンダは、該シリンダを回転させる回転機構を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1および4に記載の産業機械の防振装置において、前記回転機構と、前記振動検出器とを、前記制御部に接続することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1および4に記載の産業機械の防振装置において、前記回転機構は、前記シリンダライナの内部圧を調整するリリーフ弁からの前記防振部材の排出流量により駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、機体を構成する上部体および下部体の間に防振部を備え、防振部は、圧送部およびリリーフ弁を設けた流路に接続した、防振部材を給排可能とするシリンダライナおよび、このシリンダライナ内を摺動自在とし、一端部を上部体または下部体に取付けたピストンからなるシリンダであって、上部体または下部体から伝播する振動の方向および振幅に応じて、シリンダライナ内に防振部材を給排し、シリンダライナ内の防振部材の量を調節することにより、シリンダライナの内部圧を振動負荷前後で一定に保持して、上部体もしくは下部体を防振する産業機械の防振装置において、防振部は、この防振部の駆動力を軽減する、動力軽減手段を備えるので、過負荷による油圧ポンプなど圧送部の損傷を防ぐとともに、機体の燃費を向上することができる。従って、燃費および作業性を向上させた産業機械の防振装置を提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、動力軽減手段は、圧送部と、シリンダライナとの間の流路に、流路切換弁と、アキュムレータとを備えるとともに、機体には、機体の振動を検出する振動検出器を備え、流路切換弁と、振動検出器とを、制御部に接続するので、機体に加わる振動が低振動時や必要時に応じた防振の際には、防振部が、圧送部からの防振部材によるシリンダの作動からアキュムレ−タの空気圧によるシリンダの作動に切り換えられ、圧送部の駆動力を軽減することができる。従って、燃費を向上させた産業機械の防振装置を提供することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、動力軽減手段は、ピストンに弾性体を挟入し、圧送部と、シリンダライナとの間の流路に、流路切換弁を備えるとともに、機体には振動検出器を備え、流路切換弁と、振動検出器とを、制御部に接続するので、機体に加わる振動が小さい場合には、圧送部で供給された防振部材によるシリンダの作動から、ピストンにおける弾性体の伸縮および、シリンダライナ内の防振部材の往来によるシリンダの作動に切り換えて防振すべき部位が防振されるため、圧送部の動力を軽減することができる。従って、燃費を向上させた産業機械の防振装置を提供することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、シリンダは、このシリンダを回転させる回転機構を備えるので、防振部のピストンに動摩擦を加えて、ピストンとシリンダライナとの摩擦力を小さくし、ピストンを円滑に摺動させることで、防振すべき部位の振動低減効果を向上することができる。従って、防振部の防振性能を向上した産業機械の防振装置を提供することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、回転機構と、振動検出器とを、制御部に接続するので、機体が大きな振動を受けた場合にのみ回転機構を駆動させ、この回転機構の動力を低減できるとともに、シリンダに動摩擦を付与することにより、ピストンとシリンダライナとの摺動面の摩擦を小さくすることで、シール材の耐久性を向上することができる。従って、コストダウンおよび燃費を向上させた産業機械の防振装置を提供することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、回転機構は、リリーフ弁から排出される防振部材の排出流量により駆動するので、回転機構を制御する装置を別途必要とせず、簡単な構成で回転機構を駆動することができる。従って、安価に防振部の防振性能を向上させた産業機械の防振装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は本発明の上部体および下部体を備える産業機械の一実施例を示す、作業車両としてのホイール式トラクタの左側面図、図2は同トラクタの平面図である。
【0018】
この例の産業機械として、作業車両のトラクタ1は、車体フレーム2の前後に、前輪3および後輪4を備え、前輪3の上方にボンネット5を形成するとともに、その内側には原動機部としてのエンジン6およびクラッチハウジング7が配置され、さらにこのクラッチハウジング7の後部にはミッションケース8が配設されており、エンジン6からの動力が前輪3および後輪4に伝達される。このような構成を有する下部体1Bのボンネット5の後部に連続して車体フレーム2上には上部体1Aとしてのキャビン9が設けられる。なお、トラクタ1は、上述したようなキャビン仕様のほか、ロプス仕様であってもよい。
【0019】
次いで、キャビン9内には、操縦部として、ブレーキペダルやクラッチペダルなどの操作ペダル10、ステアリングハンドル11、シート12などが設けられる。また、シート12の両側方に有する図示しない左右フェンダには、例えば、主変速レバー14や副変速レバー、PTO変速レバーなどの各種操作レバーが突設されている。また、キャビン9の外周は、それぞれフロントガラス15、リヤガラス16、ドア17、屋根18などを取付けてもよい。
【0020】
そして、エンジン6の動力は、ミッションケース8から前後に突出した不図示のPTO軸に伝達され、このPTO軸の駆動により、車両後端部のユニバーサルジョイントや、リフトリンク19および左右ロアリンク20からなる三点リンク式などの作業機装着装置21を介して車両後端に装着された図示しない作業機が駆動される。
【0021】
次に、本願発明の、動力軽減手段を備える防振装置の防振部について、その具体的構成を説明する。図3は防振部を備えるトラクタを前方から見た斜視図、図4は防振部の設置位置を示す模式図、図5は防振部における動力軽減手段の一例を示す防振部の側面模式図である。
【0022】
まず、図3に示すように、操縦部を備えるキャビン9などの上部体1Aと、前輪3および後輪4を備え、車体フレーム2上に載置したエンジン6を内設するボンネット5やミッションケース8などから構成される下部体1Bとの間であって、その車体フレーム2上には、走行時に路面の凹凸に起因して車体へ入力される振動から上部体1Aを防振するための防振部31が設けられる。
【0023】
この防振部31は、例えば図4に示すように、ピストン32およびシリンダライナ33からなるシリンダsなどであって、例えば、下部体1Bの上端部に位置する車体フレーム2上における、上部体1A底部の前部中央近傍に1箇所、および上部体1A底部の後部の左右であって、車体フレーム2後部の左右に延設されるステー上に1箇所ずつ配設される。なお、防振部31の設置数および設置箇所は上記に限定されない。
【0024】
さらに、防振部31を以下に例を示しながら詳述する。図5には、上述した防振部31のシリンダsの1つを示すが、上部体1Aの底部に、ピストンヘッド32aを下方に向けたピストン32の上端部が固設される。また、下部体1Bの車体フレーム2上には、上方からピストンヘッド32aを挿入可能としたシリンダライナ33の下端部が固設される。
【0025】
また、上部体1Aまたは下部体1B(上部体1Aおよび下部体1Bの双方であってもよい)の適宜位置には、機体に加振される振動を検出する、例えば、静電容量式や渦電流式などの変位センサや、圧電素子式などの加速度センサなど、検出方式やセンサの種類は限定されない振動検出器35が設けられる。
【0026】
さらに、シリンダライナ33の中途部(シリンダライナ33の下端部と、このシリンダライナ33内に摺動可能に挿入されたピストンヘッド32aとの間)と、ミッションケース8内との間には、防振部材40を給排する配管などの流路36が接続される。
【0027】
また、ミッションケース8近傍の流路36には、油圧ポンプなどの圧送部37が備えられるとともに、圧送部37近傍のシリンダライナ33側(下流側)にはミッションケース8に接続した流路切換弁42が設けられる。さらに、流路切換弁42と、シリンダライナ33との間には、チェック弁43が設けられ、このチェック弁43よりもシリンダライナ33側に位置する流路36から分岐した流路36には、チェック弁44および絞り45を介してアキュムレ−タ46が接続される。
【0028】
次いで、チェック弁43と、流路切換弁42との間の流路36から分岐して、ミッションケース8内に戻る流路36には、リリーフ弁38が設けられる。そして、流路切換弁 42と、振動検出器35とは、コントローラなどの制御部39に接続される。
【0029】
このような、振動検出器35と、制御部39と、流路切換弁42と、チェック弁43,44と、アキュムレ−タ46とから構成される動力低減手段47を備える防振部31により、シリンダs内が、予めリリーフ弁38で設定した油圧力になるまで、ミッションケース8内などに有する防振部材40としての作動油(潤滑油)が、油圧ポンプ37の駆動によりシリンダライナ33内に導入され、ピストン32が作動油により押し上げられ、このピストン32により上部体1Aが支持される。
【0030】
そして、機体走行時に路面の凹凸に起因して機体へ入力され、下部体1Bより伝播される振動から、防振すべき上部体1Aを防振する場合には、シリンダライナ33と一体の下部体1Bがシリンダsの軸方向であって、上方または下方に加振され、ピストン32に作動油から上方または下方への力が加わるとき、リリーフ弁38が作動し、シリンダs内の作動油を給排することで、シリンダs内の圧力が一定に保持され、上部体1Aが防振される。
【0031】
ここで、機体に加わる振動が低振動(少振幅)の場合、動力低減手段47により防振部31の動力を低減させて上部体1Aを防振する方法について説明する。
【0032】
図5に示すように、振動検出器35は、適宜設定された振動以下の低振動が機体に加振されたことを検出するとともに、その検出情報が制御部39に送信される。次いで、制御部39は、前記検出情報に基づいて流路切換弁42を切り換えることにより、圧送部37からの防振部材40の送圧が流路切換弁42で遮断されるとともに、チェック弁43までの流路36内に有する防振部材40が逆流し、ミッションケース8内に排出される。
【0033】
このとき、ミッションケース8へ圧送部37から直接防振部材40が排出される。その際、防振部材40の排出圧力が増加する。この排出圧力を、チェック弁44のパイロットに利用することで、チェック弁44の逆流を可能とする。逆に、リリーフ弁38からミッションケース8へ排出される防振部材40は減少するため、この排出圧力をパイロットに利用するチェック弁43は逆流不能となる。即ち、上部体1Aは、アキュムレ−タ46内部の空気圧により、釣り合い支持された状態となり、アキュムレ−タ46の空気バネ効果によって、上部体1Aが防振支持される。また、アキュムレ−タ46への流路36中に絞り45を挿入し、防振部材40の流量を制限することで、減衰効果を向上させ、上部体1Aの防振性能が向上される。
【0034】
なお、この防振部31の動力低減手段47による低振動の防振作動中に、機体に大きな力が加わり、振動検出器35により適宜設定された振動以上の大きな振動(大きな振幅)が検出されたときには、制御部39は、この検出情報に基づいて流路切換弁42を切り換えることにより、防振部材40がリリーフ弁38を通過することとなる。その際、リリーフ弁38からミッションケース8へ排出される防振部材40の排出圧力が増加するため、これをパイロットに利用してチェック弁43の逆流を可能とする。その際、チェック弁44は、そのパイロット圧力が低下するため、逆流不能となる。即ち、圧送部37を用いた通常の防振方法に切り換えられる。
【0035】
動力低減手段47は、その構成配置を変更することもできる。図6〜7は、動力軽減手段の構成配置の変更例を示した防振部の側面模式図である。まず、図6に示すように、リリーフ弁38と、シリンダライナ33との間の流路36に流路切換弁42aを設け、この流路切換弁42aを介してアキュムレ−タ46がミッションケース8などに接続される。また、上述同様に、振動検出器35と、流路切換弁42aとが制御部39に接続される。
【0036】
ここで、上述同様に、振動検出器35が、機体に加振された低振動を検出した際、制御部39により流路切換弁42aが切り換えられることで、この流路切換弁42aにおいて圧送部37からの防振部材40の送圧が遮断されるとともに、アキュムレ−タ46内部の空気が、流路切換弁42aから流路36を介してシリンダライナ33内の防振部材40を押圧するため、上部体1Aはアキュムレ−タ46の空気バネ効果による防振状態となる。
【0037】
なお、上述同様に、低振動の防振作動中に、振動検出器35により大きな振幅が検出されたときには、制御部39は、この検出情報に基づいて流路切換弁42aを切り換えることで、流路切換弁42aにおいてアキュムレ−タ46からの空気圧供給を遮断し、圧送部37から流路切換弁42aを介してシリンダライナ33内に防振部材40を圧送する、圧送部37を用いた通常の防振方法に切り換えられる。
【0038】
次に、図7では、流路36を分岐させて、それぞれをピストンヘッド32aを挟んだシリンダライナ33の上下に連結させるとともに、アキュムレ−タ46が流路切換弁42bを介して流路切換弁42bと、リリーフ弁38との間の流路36に接続される。また、上述同様に、振動検出器35と、流路切換弁42bとが制御部39に接続される。
【0039】
ここで、上述同様に、振動検出器35が低振動を検出した際、制御部39により流路切換弁42bが切り換えられることで、この流路切換弁42aにおいて圧送部37からの防振部材40の送圧が遮断される。このとき、アキュムレ−タ46内の空気圧は、リリーフ弁38の設定圧力、即ち、シリンダs内の防振部材40の圧力とほぼ等しいため、流路切換弁42bを切換えた際、ピストン32は大きく移動しない。即ち、上部体1Aに流路切換による衝撃を生じさせず、アキュムレ−タ46の空気バネを利用した防振状態に変更できる。
【0040】
なお、図7では、ピストンヘッド32aを挟んでシリンダライナ33内の上部にも防振部材40を有する構造としているが、下部のみに防振部材40を有する構造としてもよい。そして、上述同様に、低振動の防振作動中に、振動検出器35により大きな振幅が検出されたときには、制御部39は、この検出情報に基づいて流路切換弁42bを切り換えることで、この流路切換弁42bにおいてアキュムレ−タ46からの空気圧供給を遮断し、圧送部37から流路切換弁42bを介してシリンダライナ33内に防振部材40を圧送する、圧送部37を用いた通常の防振方法に切り換えられる。
【0041】
次に、動力軽減手段は、大きな振動時にアキュムレ−タ46の圧力を用いて防振部31を作動させることもできる。図8は、アキュムレ−タを用いてシリンダ内を補圧する動力軽減手段を備える防振部の側面模式図である。
【0042】
この場合、圧送部37および流路切換弁42dが設けられた、ピストンヘッド32a下方のシリンダライナ33に接続される流路36に、チェック弁41aを介して設けられたアキュムレ−タ46を備え、この流路36から分岐された流路36を、ピストンヘッド32a上方のシリンダライナ33および流路切換弁42dを介してミッションケース8に接続し、その流路36の中途部には、高圧用のリリーフ弁38c、低圧用のリリーフ弁38dおよび各チェック弁41b,41c,41dが設けられる。また、振動検出器35と、流路切換弁42dとが制御部39に接続される。
【0043】
ここで、通常の防振時には、圧送部37による防振部材40が流路切換弁42dを介してシリンダsに供給され、防振部31の作動により上部体1Aが防振されるとともに、アキュムレ−タ46が流路36内の防振部材40によりチェック弁41aを介して昇圧される。また、シリンダライナ33の上部には、上部体1Aの支持には影響しない程度の低圧の防振部材40を封入する。この圧力は、リリーフ弁38dで設定を行う。そして、機体に加わる振動が小さいことを振動検出器35が検出すると、制御部39は流路切換弁42dを切り換えて、流路切換弁42dで圧送部37による防振部材40の供給を遮断する。
【0044】
このとき、大きな振動が加わってピストン32が上側に移動した場合、チェック弁41cを防振部材40が流れるため、これをパイロットとしてチェック弁41aが逆流可能となる。この状態においては、ピストン32が上方に移動しているため、シリンダライナ33の下部の防振部材40の圧力は低下している。そこで、この圧力低下をアキュムレ−タ46の空気圧にて補う。本状態を繰り返すことで、アキュムレ−タ46の空気圧は徐々に低下し、それに伴い防振性能は低下する。このため、振動検出器35にて、ある閾値以上の振動が検出された場合に、制御部39は流路切換弁42dを切り換えて、通常の防振状態に戻すとともに、アキュムレ−タ46を昇圧する。
【0045】
上述した大きな振動時にアキュムレ−タ46の圧力を用いて防振部31を作動させる方法は、図9に示すような構成にすることもできる。図9は、アキュムレ−タを用いてシリンダを補圧する動力軽減手段の別の例を示す防振部の側面模式図である。
【0046】
この場合、ピストンヘッド32a下方のシリンダライナ33に接続される流路36であって、圧送部37と、リリーフ弁38eとの間の流路36に設けたれた流路切換弁42eには、アキュムレ−タ46が接続されるとともに、流路切換弁42eと、アキュムレ−タ46との間の流路36には、リリーフ弁38fが設けられる。また、振動検出器35と、流路切換弁42eとが制御部39に接続される。
【0047】
ここで、上述同様に、通常防振状態においては、圧送部37により防振部材40は流路切換弁42eを介してシリンダsに供給される。このとき、振動検出器35が、低振動であることを検知した場合、流路切換弁42eを一旦図中の中央部に切換え、アキュムレ−タ46を設定時間の間、昇圧する。アキュムレ−タ46を昇圧した後、再度流路切換弁42eを切換え、圧送部37から供給される防振部材40が、直接ミッションケース8へ戻る構成とする。その際には、アキュムレ−タ46がシリンダsの下部と繋がる構成となる。このとき、アキュムレ−タ46内部の空気圧を利用した防振状態となる。本構成においては、何度かの振動を吸収した後、アキュムレ−タ46内部の空気圧は低下し、防振性能が低下する。そして、振動検出器35にて、閾値を超える振動を検出した場合、圧送部37とシリンダライナ33下部とを接続する通常の防振状態に戻す。以後、本切換え機構を繰り返す。
【0048】
次に、動力軽減手段47´は、防振部31のシリンダsのピストン32に弾性体を設けてもよい。図10は、シリンダのピストンに弾性体を設けてなる動力軽減手段を備えた防振部の側面模式図である。
【0049】
この動力軽減手段47´は、シリンダライナ33内であって、例えば、ピストンヘッド32aの下端部に取付けられたバネなどの弾性体50と、弾性体50の下端部に取付けられた、ピストン32の摺動に合わせて摺動可能とされるフリーピストン48とから構成される。また、シリンダライナ33の中途部内側には、シリンダライナ33内に有する防振部材40の流通路49が設けられる。
【0050】
そして、このようなシリンダsにおけるフリーピストン48下方のシリンダライナ33には、圧送部37、リリーフ弁38および流路切換弁42が設けられた流路36が接続されるとともに、ピストンヘッド32a上方のシリンダライナ33に接続された流路36は、流路切換弁42に接続される。なお、振動検出器35と、流路切換弁42とが制御部39に接続される。
【0051】
ここで、振動検出器35により機体に加わる振動が大きい場合には、防振部31が圧送部37を用いた防振部材40によるシリンダsの作動で、上部体1Aが防振される。なお、シリンダライナ33内であって、ピストンヘッド32a上方のスペースs1や、弾性体47を有するピストンヘッド32aとフリーピストン48との間のスペースs2、フリーピストン48とシリンダライナ33底部との間のスペースs3のそれぞれには、防振部材40が導入されている。
【0052】
次いで、振動検出器35により機体に加わる振動が小さい場合には、制御部39が流路切換弁42を切り換えることで、圧送部37から供給される防振部材40がこの流路切換弁42で遮断される。そして、小さな振動によるシリンダライナ33の摺動が、弾性体50の伸縮によって吸収されるとともに、スペースs1とスペースs2内の防振部材40が流通路49を介して移動することで減衰作用を得て、振動低減効果が向上する。また、このとき、圧送部37より防振部材40がスペースs1へ供給されるが、その流路36よりも上方に設けた流路36に防振部材40が達する場合は、ここからミッションケース8へ排出される。この状態において、機体に加わる振動が小さい場合のシリンダsによる防振には、圧送部37から供給される防振部材40は仕事をしないため、圧送部37の動力を軽減することができる。
【0053】
なお、機体に加わる振動が大きい場合には、シリンダライナ33がある程度上下に摺動されるため、流通路49の位置がピストンヘッド32aの側方からずれて、スペースs1とスペースs2との防振部材40の往来が閉ざされる。このため、スペースs3に圧送部37により供給される防振部材40の内圧をリリーフ弁38により一定に保持して、上部体1Aが防振される。
【0054】
以上のような構成にすることで、機体に加わる振動が小さい場合には、圧送部37による防振部材40でのシリンダsの作動から、ピストン32における弾性体47の伸縮および、シリンダライナ33内のスペースs1とスペースs2間における防振部材40の往来によるシリンダsの作動に切り換えて上部体1Aが防振されるため、圧送部37による防振部材40は仕事をしないため、圧送部37の動力を軽減することができる。
【0055】
以上のような動力軽減手段47,47´を備える防振部31において、その防振性能を向上させることができる。図11は、回転機構をピストン上部に備えるシリンダの側面模式図(a)および回転機構をシリンダライナ下部に備えるシリンダの側面模式図(b)、図12は、モータによるギヤ駆動でピストンを回転させる回転機構を示すシリンダの側面模式図、図13は、ピストンをモータと一体型とした回転機構を示すシリンダの側面模式図である。
【0056】
上述してきたように、下部体1Bに加わる振動により、防振部31が、シリンダsの摺動に伴い、シリンダsの内部圧を一定に保持させることで、上部体1Aに伝播されず、上部体1Aが防振されるが、このとき、シリンダsにおけるピストン32と、シリンダライナ33やフッ素樹脂などからなるシール材51との間に摩擦力が生じ、防振部31による防振効果が低下する。特に、低振動時には、ピストン32と、シリンダライナ33との相対変位が得られず、静摩擦状態となるため、大きな摩擦力が生ずる。これを動摩擦状態とすることで、低振動時にも防振効果を向上することができる。
【0057】
そこで、まず、図11(a)に示すように、例えば、上部体1Aと、シリンダsにおけるピストン32との間に、詳細を後述するピストン32を回転させる回転機構52を設け、常時ピストン32をシリンダライナ33内で水平方向に回転させることで、防振部31の作動時にピストン32と、シリンダライナ33とが軸方向に摺動されることと併せて、これらピストン32と、シリンダライナ33との摺動面が動摩擦となり、両者の摩擦力が小さくなる。
【0058】
この結果、ピストン32と、シリンダライナ33とが防振部31の作動時において軸方向に円滑に摺動されるため、シリンダsで振動を伝播してしまうことがなく、防振性能が向上する。
【0059】
また、図11(b)に示すように、例えば、シリンダライナ33底部に、シリンダライナ33を回転させる回転機構52´を設けてもよい。この場合、上述とは逆にシリンダライナ33を水平方向に回転させるため、防振部31の作動時にピストン32と、シリンダライナ33とが軸方向に摺動されることと併せて、これらピストン32と、シリンダライナ33との摺動面が動摩擦となり、両者の摩擦力が小さくなり、上述同様の効果が得られる。なお、シリンダライナ33底部の軸芯に流路36を設けることで、シリンダライナ33内における防振部材40の給排が可能とされる。なお、回転機構52,52´の設置位置は上述に限定されるものではない。
【0060】
次に、上記回転機構の構成を、ピストン32を回転させる回転機構52を例に説明する。まず、図12に示すように、例えば、上部体1A底部に設置したモータ53のモータ軸53aにギヤ54が取付けられるとともに、このギヤ54をピストン32の上部に嵌合したギヤ55に噛み合わせる。なお、モータ53の駆動は、図示しないバッテリからの電力供給によるものとされることが好ましい。また、符号56はボールベアリングである。
【0061】
このような構成により、モータ53の駆動力によってギヤ54,55を介しピストン32を強制的に回転させるため、ピストン32が常時安定的に回転されて、ピストン32と、シリンダライナ33との摺動面を確実に動摩擦状態とすることができる。
【0062】
また、図13に示すように、例えば、上部体1A底部に設置したモータ53のモータ軸53aにピストン32の上端部を固設させて、ピストン32をモータ53と一体型にしてもよい。この結果、モータ53からピストン32に動力を伝達するギヤ54,55などの中間部材を必要とせず、直接モータ53から動力が高効率に伝達されたピストン32の回転によって、ピストン32が常時安定的に回転されて、ピストン32と、シリンダライナ33との摺動面を確実に動摩擦状態とすることができる。
【0063】
次に、上記回転機構の動力を軽減することもできる。図14は、振動の大きさにより回転機構の回転制御を行うシリンダの側面模式図、図15は、リリーフ弁からの防振部材の排出流量により回転機構を回転させるシリンダの側面模式図である。
【0064】
まず、図15に示す、前述したような、上部体1Aおよび下部体1Bの適宜位置に取付けられた振動検出器35と、モータ53とが制御部39に接続される。ここで、適宜設定された振動(振幅)以上の振動が機体に加振されたことを振動検出器35が検出した検出情報に基づいて、制御部39がモータ53を回転させ、ピストン32と、シリンダライナ33との摺動面を動摩擦状態にする。また、より大きな振動が生じた場合には、ピストン32と、シリンダライナ33とは相対変位が大きくなり、これに伴い自動的に動摩擦状態となるため、モータ53の駆動を停止させる。さらに、機体に適宜設定された振動(振幅)以下の振動が加振された、もしくは振動が加振されないことを振動検出器35が検出した検出情報に基づいて、制御部39がモータ53にその駆動を停止させる。
【0065】
この結果、機体に加わる振動が比較的小さな場合と大きな場合には、モータ53を停止させてピストン32の回転を止めることで、常時ピストン32を回転させる必要がなく、モータ53の耐久性向上および動力を軽減することができる。従って、ピストン32と、シリンダライナ33との相対変位が得られず、摺動面が静摩擦状態となる、限定された状態においてのみモータ53を駆動させることで、この回転機構52,52´の動力を低減することができる。なお、この回転機構52,52´の動力軽減は、上述のように回転機構52をシリンダsの上部に備えた場合、回転機構52´をシリンダsの下部に備えた場合、あるいはその他適宜位置に備えたあらゆる場合に適用される。
【0066】
また、モータ53は、リリーフ弁38からの防振部材40の排出流量を利用して駆動させることもできる。この場合、図16に示すように、ピストン32の上端部に固設し、上部体に設置される圧力モータ53´(流体駆動モータ)と、リリーフ弁38の排出口とが配管などで接続される。なお、圧力モータ53´(流体駆動モータ)は公知技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0067】
ここで、機体に振動が加振され、防振部31の作動中にシリンダsの摺動に伴い、シリンダライナ33内に有する防振部材40がリリーフ弁38から排出される際、この排出された防振部材40が圧力モータ53´内に流入することで圧力モータ53´が駆動され、ピストン32が回転し、ピストン32と、シリンダライナ33との摺動面が動摩擦状態となる。特に、防振部材40の排出量が多いほど、防振効果低減されているため、このような状況において、効果的にピストン32と、シリンダライナ33との摺動面を動摩擦状態にすることができる。
【0068】
この結果、機体に加わる振動が少なく、リリーフ弁38からの防振部材40の排出流量が少ない場合には、圧力モータ53´の駆動を休止でき、圧力モータ53´の耐久性向上および動力を軽減することができる。また、このような回転機構52,52´の駆動を制御する装置を別途設ける必要がなく、簡単な構成で回転機構52,52´の動力を軽減することができる。
【0069】
以上は、産業機械の一例として、ホイール式トラクタについて説明してきたが、この発明はこれに限定されるものではなく、クローラ式トラクタやコンバイン、田植機など農作業車両のほか、建設作業車両として、バックホーやブルトーザなど、また除雪車や救急車などの車両のほか、航空機、船舶など防振すべき部位を備えたあらゆる産業機械に適用することができる。
【0070】
さらに、この防振部31は、上述してきたような、機体の上部体1Aの防振に限定して適用されるものではなく、例えば、操縦部や客室などを機体の下部体1Bに備える吊り下げ式モノレールなど、防振すべき部位が例えば機体の下部体1Bに有するあらゆる産業機械にも適用することができる。
【0071】
なお、防振部材40は、上述してきたような作動油(潤滑油)に限定されず、防振部31において外気などを取り込んだ空気を用いてもよい。
【0072】
以上詳述したように、この例のトラクタ1(産業機械)は、機体を構成する上部体1Aおよび下部体1Bの間に防振部31を備え、防振部31は、圧送部37およびリリーフ弁38を設けた流路36に接続した、防振部材40を給排可能とするシリンダライナ33および、このシリンダライナ33内を摺動自在とし、一端部を上部体1Aまたは下部体1Bに取付けたピストン32からなるシリンダsであって、上部体1Aまたは下部体1Bから伝播する振動の方向および振幅に応じて、シリンダライナ33内に防振部材40を給排し、シリンダライナ33内の防振部材40の量を調節することにより、シリンダライナ33の内部圧を振動負荷前後で一定に保持して、上部体1Aもしくは下部体1Bを防振する産業機械の防振装置において、防振部31は、この防振部31の駆動力を軽減する、動力軽減手段47,47´を備えるものである。
【0073】
加えて、動力軽減手段47は、圧送部37と、シリンダライナ33との間の流路36に、流路切換弁42,42a,42b,42d,42eと、アキュムレータ46とを備えるとともに、機体には、機体の振動を検出する振動検出器35を備え、流路切換弁42,42a,42b,42d,42eと、振動検出器35とを、制御部39に接続する。また、動力軽減手段47´は、ピストン32に弾性体50を挟入し、圧送部37と、シリンダライナ33との間の流路36に、流路切換弁42を備えるとともに、機体には振動検出器35を備え、流路切換弁42と、振動検出器35とを、制御部39に接続する。
【0074】
さらに、シリンダsは、このシリンダsを回転させる回転機構52,52´を備え、回転機構52,52´と、振動検出器35とを、制御部39に接続するか、あるいは回転機構52,52´は、リリーフ弁38から排出される防振部材40の排出流量により駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は本発明の上部体および下部体を備える産業機械の一実施例を示す、作業車両としてのホイール式トラクタの左側面図である。
【図2】同トラクタの平面図である。
【図3】防振部を備えるトラクタを前方から見た斜視図である。
【図4】防振部の設置位置を示す模式図である。
【図5】防振部における動力軽減手段の一例を示す防振部の側面模式図である。
【図6】動力軽減手段の構成配置の変更例を示した防振部の側面模式図である。
【図7】動力軽減手段の構成配置の変更例を示した防振部の側面模式図である。
【図8】アキュムレ−タを用いてシリンダ内を補圧する動力軽減手段を備える防振部の側面模式図である。
【図9】アキュムレ−タを用いてシリンダを補圧する動力軽減手段の別の例を示す防振部の側面模式図である。
【図10】シリンダのピストンに弾性体を設けてなる動力軽減手段を備えた防振部の側面模式図である。
【図11】回転機構をピストン上部に備えるシリンダの側面模式図(a)および回転機構をシリンダライナ下部に備えるシリンダの側面模式図(b)である。
【図12】モータによるギヤ駆動でピストンを回転させる回転機構を示すシリンダの側面模式図である。
【図13】ピストンをモータと一体型とした回転機構を示すシリンダの側面模式図である。
【図14】振動の大きさにより回転機構の回転制御を行うシリンダの側面模式図である。
【図15】リリーフ弁からの防振部材の排出流量により回転機構を回転させるシリンダの側面模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1A 上部体
1B 下部体
2 車体フレーム
8 ミッションケース
9 キャビン
31 防振部
32 ピストン
32a ピストンヘッド
33 シリンダライナ
35 振動検出器
36 流路
37 圧送部
38,38a,38b,38c,38d,38e,38f リリーフ弁
39 制御部
40 防振部材
41a,41b,41c,41d,43,43´,44,44´ チェック弁
42,42a,42b,42d,42e 流路切換弁
46 アキュムレータ
47,47´ 動力軽減手段
50 弾性体
51 シール材
52,52´ 回転機構
53 モータ
53´ 圧力モータ
s シリンダ
s1,s2,s3 スペース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を構成する上部体および下部体の間に防振部を備え、
前記防振部は、圧送部およびリリーフ弁を設けた流路に接続した、防振部材を給排可能とするシリンダライナおよび、該シリンダライナ内を摺動自在とし、一端部を前記上部体または前記下部体に取付けたピストンからなるシリンダであって、前記上部体または前記下部体から伝播する振動の方向および振幅に応じて、前記シリンダライナ内に前記防振部材を給排し、前記シリンダライナ内の前記防振部材の量を調節することにより、前記シリンダライナの内部圧を振動負荷前後で一定に保持して、前記上部体もしくは前記下部体を防振する産業機械の防振装置において、
前記防振部は、該防振部の駆動力を軽減する、動力軽減手段を備えることを特徴とする産業機械の防振装置。
【請求項2】
前記動力軽減手段は、前記圧送部と、前記シリンダライナとの間の前記流路に、流路切換弁と、アキュムレータとを備えるとともに、
前記機体には、前記機体の振動を検出する振動検出器を備え、
前記流路切換弁と、前記振動検出器とを、制御部に接続することを特徴とする、請求項1に記載の産業機械の防振装置。
【請求項3】
前記動力軽減手段は、前記ピストンに弾性体を挟入し、
前記圧送部と、前記シリンダライナとの間の前記流路に、前記流路切換弁を備えるとともに、前記機体には前記振動検出器を備え、
前記流路切換弁と、前記振動検出器とを、前記制御部に接続することを特徴とする、請求項1に記載の産業機械の防振装置。
【請求項4】
前記シリンダは、該シリンダを回転させる回転機構を備えることを特徴とする、請求項1に記載の産業機械の防振装置。
【請求項5】
前記回転機構と、前記振動検出器とを、前記制御部に接続することを特徴とする、請求項1および4に記載の産業機械の防振装置。
【請求項6】
前記回転機構は、前記シリンダライナの内部圧を調整するリリーフ弁からの前記防振部材の排出流量により駆動することを特徴とする、請求項1および4に記載の産業機械の防振装置。
【請求項1】
機体を構成する上部体および下部体の間に防振部を備え、
前記防振部は、圧送部およびリリーフ弁を設けた流路に接続した、防振部材を給排可能とするシリンダライナおよび、該シリンダライナ内を摺動自在とし、一端部を前記上部体または前記下部体に取付けたピストンからなるシリンダであって、前記上部体または前記下部体から伝播する振動の方向および振幅に応じて、前記シリンダライナ内に前記防振部材を給排し、前記シリンダライナ内の前記防振部材の量を調節することにより、前記シリンダライナの内部圧を振動負荷前後で一定に保持して、前記上部体もしくは前記下部体を防振する産業機械の防振装置において、
前記防振部は、該防振部の駆動力を軽減する、動力軽減手段を備えることを特徴とする産業機械の防振装置。
【請求項2】
前記動力軽減手段は、前記圧送部と、前記シリンダライナとの間の前記流路に、流路切換弁と、アキュムレータとを備えるとともに、
前記機体には、前記機体の振動を検出する振動検出器を備え、
前記流路切換弁と、前記振動検出器とを、制御部に接続することを特徴とする、請求項1に記載の産業機械の防振装置。
【請求項3】
前記動力軽減手段は、前記ピストンに弾性体を挟入し、
前記圧送部と、前記シリンダライナとの間の前記流路に、前記流路切換弁を備えるとともに、前記機体には前記振動検出器を備え、
前記流路切換弁と、前記振動検出器とを、前記制御部に接続することを特徴とする、請求項1に記載の産業機械の防振装置。
【請求項4】
前記シリンダは、該シリンダを回転させる回転機構を備えることを特徴とする、請求項1に記載の産業機械の防振装置。
【請求項5】
前記回転機構と、前記振動検出器とを、前記制御部に接続することを特徴とする、請求項1および4に記載の産業機械の防振装置。
【請求項6】
前記回転機構は、前記シリンダライナの内部圧を調整するリリーフ弁からの前記防振部材の排出流量により駆動することを特徴とする、請求項1および4に記載の産業機械の防振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−196479(P2009−196479A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39554(P2008−39554)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]