説明

研磨装置及び研磨方法

【課題】スループットを低下させることなく、エロージョンの発生を防ぎながら、余剰な導電膜を研磨除去できるようにする。
【解決手段】研磨面を有する研磨テーブル100と、導電膜6を表面に有する被研磨物を保持し、該導電膜6を研磨面に摺接させて研磨するトップリング10と、トップリング10で保持した被研磨物の導電膜6に向けて光を照射して該導電膜6で反射した反射光を受光し、反射光の反射率の変化を計測して導電膜6の研磨状態を監視する光学式センサ130と、被研磨物を研磨面に向けて押圧する押圧力を制御する制御部132を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置及び研磨方法に係り、特に半導体ウェハ等の基板表面の導電膜(金属膜)を研磨して平坦化する研磨装置及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスにおける配線形成プロセスとして、絶縁膜の内部に形成したトレンチやコンタクトホールの表面にバリアメタルを成膜し、このトレンチやコンタクトホールの内部に配線およびコンタクト材料としての銅等の金属を埋込んだ後、余分な金属を化学機械研磨法(CMP法)により除去する、ダマシンプロセスと呼ばれる方法が採用されている。配線とコンタクトを一度に形成する方法はデュアルダマシンプロセスと呼ばれる。
【0003】
デュアルダマシンプロセスによって銅配線を形成する一例を、図1を参照して説明する。先ず、図1(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上にSiOからなる酸化膜やLow−K材膜等の絶縁膜2を堆積し、この絶縁膜2の内部に、リソグラフィ・エッチング技術によりビアホール3とトレンチ4を形成し、その上にTaN等からなるバリアメタル(バリア層)5、更にその上に電解めっきの給電層としてシード層7を形成する。
【0004】
そして、図1(b)に示すように、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、ビアホール3及びトレンチ4内に銅を充填するとともに、絶縁膜2上に銅膜6を堆積する。その後、化学機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅膜6、シード層7及びバリアメタル5を除去して、ビアホール3及びトレンチ4に充填させた銅膜6の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すように、銅膜6からなる配線(銅配線)が形成される。
【0005】
基板表面の銅等の余剰な導電膜(金属膜)を研磨除去する研磨装置は、一般に研磨パッドからなる研磨面を有する研磨テーブルと、基板(被研磨物)を保持するトップリングとを備えている。そして、基板をトップリングで保持し基板表面の導電膜を研磨テーブルの研磨面に対して所定の圧力で押圧しながら、研磨テーブルとトップリングとを相対運動させ、同時に、シリカ(SiO)等の砥粒を含んだ研磨液を研磨テーブルの研磨面上に供給することで、導電膜表面を平坦かつ鏡面に研磨するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体デバイスの更なる高性能化(高集積化、高速化)の要求に応えるため、配線の微細化が進み、この配線の微細化に伴って、例えば45nm世代以降の半導体デバイスでは平坦化で求められる要求が益々厳しくなっている。例えば、基板表面の余剰な導電膜(金属膜)を研磨除去して配線を形成する研磨工程においては、エロージョンが発生しても回路への影響が少ない範囲を許容範囲として、マージンを設けることが広く行われているが、配線の微細化が進むと、この許容範囲が狭くなる。このため、エロージョンの発生量を低下させることが要求される。
【0007】
エロージョンの発生を防ぐためには、基板表面の導電膜を研磨面に押付る圧力を下げた低圧状態で導電膜表面の研磨を行うことが要求される。しかし、低圧状態での研磨は、研磨レートを下げる原因となり、低圧状態での研磨時間が長くなれば、その分、スループットが低下して、生産性が低下する。したがって、エロージョンの発生を防ぎながら、スループットを下げないためには、低圧状態での研磨時間を可能な限り短くすることが要求される。この要求に答えるためには、基板表面の導電膜の膜厚が可能な限り薄くなるまで低圧状態での研磨を行わないことが必要となる。
【0008】
従来、基板表面の余剰な導電膜(金属膜)を研磨除去する研磨工程では、渦電流センサを用いて研磨中の導電膜の膜厚を測定し、導電膜の膜厚が所定の値に達した時に、導電膜を研磨面に押付る圧力を下げた、低圧状態での研磨に切替ることが広く行われている。しかし、基板抵抗が低い、いわゆる低抵抗基板の表面に形成した導電膜を研磨するときに、渦電流センサで導電膜の膜厚を検出すると、この検出値に無視でない誤差が生じる場合がある。
【0009】
例えば、従来の一般的な基板は、基板抵抗が1Ω・cm以上であることが知られている。一方で、低抵抗基板の基板抵抗は、例えば0.03〜0.01Ω・cmの抵抗値を有する。従来の一般的な基板は、数Ω・cm程度の抵抗誤差を有し、低抵抗基板は、±0.005Ω・cmの抵抗誤差を有する。渦電流センサの特性として、基板抵抗が1Ω・cm以上の場合は、数Ω・cm抵抗差が存在しても、出力に影響がないが、0.01Ω・cmレベルにおいて、±0.005Ω・cm抵抗差が存在した場合は、渦電流センサ出力に与える影響が極めて大きくなる。
【0010】
つまり、渦電流センサは、基板抵抗と導電膜の合成抵抗を測定対象としているため、低抵抗基板上の導電膜の膜厚を渦電流センサで測定すると、前述した基板抵抗の誤差の影響を受けて、導電膜の除去終了点が基板毎に変動する。この変動を考慮して導電膜の膜厚を測定するためには、研磨前に予め膜厚測定が必要となる。
【0011】
本発明は上記に鑑みて為されたもので、スループットを低下させることなく、エロージョンの発生を防ぎながら、余剰な導電膜を研磨除去できるようにした研磨装置及び研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、研磨面を有する研磨テーブルと、導電膜を表面に有する被研磨物を保持し、該導電膜を前記研磨面に摺接させて研磨するトップリングと、前記トップリングで保持した被研磨物の導電膜に向けて光を照射して該導電膜で反射した反射光を受光し、反射光の反射率の変化を計測して導電膜の研磨状態を監視する光学式センサと、前記被研磨物を前記研磨面に向けて押圧する押圧力を制御する制御部を有することを特徴とする研磨装置である。
【0013】
測定対象物に光を照射し、測定対象物から反射した光と、測定対象物を透過して測定対象物の下層膜との界面や基板からの反射した光との干渉に基づいて測定対象物の膜厚を算出する光学的センサを適用して、導電膜の膜厚を測定することにより、低抵抗基板の表面に形成した導電膜であっても、導電膜の膜厚を正確に測定することが可能となる。つまり、測定対象物が導電膜である場合、導電膜の膜厚が厚いときには、導電膜を透過した光は減衰してしまい、測定対象物の下層膜との界面や基板まで到達しないため、反射することはないが、導電膜が十分薄くなってくると、透過光が測定対象物の下層膜との界面や基板まで到達するため、反射して干渉を起こし、この結果、反射光における反射率が変動する。この反射率の変化を計測することにより、基板抵抗の大きさに影響されることなく、導電膜の膜厚を正確に測定することが可能となる。反射率の変化は、導電膜の下層膜の影響を受ける。したがって、反射率と膜厚との関係を算出する際には、下層膜の物性を研磨装置の記憶部に予め保存しておく必要がある。
【0014】
反射率を求める基準反射強度として、下記が挙げられる。
(1)基板がベアシリコンである時は、ベアシリコンの反射強度
(2)AlTiC基板など、基板がベアシリコンと異なる場合は実際に研磨で用いる基板の反射強度
(3)研磨する金属膜(Cu、Al、Wなど)の反射強度
反射率の計算は下記の通りとなる。
反射率(%)=測定対象物に照射した光の反射強度/基準反射強度×100
なお、反射率算出の基準反射強度として、研磨する金属膜を用いれば、光干渉開始点では必ず反射率が低下するため、その変化を捉えることで、下層膜の情報を用いることなく膜厚測定が可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記光学式センサは、前記導電膜が所定の膜厚になったことを検知した時に前記制御部に信号を送信し、前記制御部は、前記信号を基準に研磨条件を第1研磨条件から第2研磨条件に切替ることを特徴とする請求項1記載の研磨装置である。
【0016】
発明者は、導電膜に照射する光の波長を選択することにより、反射率の変化開始点が導電膜の膜厚によって異なることを見出した。つまり、図2に示すように、シリコン基板の表面に、500nmの酸化膜、10nmのTi膜、10nmのバリアメタルとしてのTiN膜及び180nmのタングステン膜(導電膜)を順次に形成した試料を用意し、(1)400nm、(2)600nm及び(3)800nmの反射光における反射率の変化を計測しながら試料表面のタングステン膜を研磨したところ、波長が400nmの反射光にあっては、タングステン膜の膜厚が約40nmに達した時に反射率が変化した。また、波長が600nmの反射光にあっては、タングステン膜の膜厚が約65nmに達した時に反射率が変化し、波長が800nmの反射光にあっては、タングステン膜の膜厚が80nmに達した時に反射率が変化した。この反射率の変化は、図3にAで示すように、微分値に顕著に表れる。
【0017】
また、TiNからなるバリアメタルと該バリアメタルの下層の酸化膜との研磨選択比が大きく、酸化膜が表出した際、研磨レートトが急激に低下する。これは実効値において、出力変化が急激に小さくなり、それが、図3にBで示すように、微分値波形において、出力変化が0に近づいている点となる。このため、微分値波形において、出力変化が0に近づいている点を検出することで、バリアメタルの除去の検出が可能となる。波長毎に微分値波形が0に近づくタイミングが異なるため、実研磨において、エロージョン量が最も低減される、最も0に近づくタイミングの早い長波長側、ここでは800nmが有利となる。
【0018】
また、図4に示すように、シリコン基板の表面に、500nmの酸化膜、10nmのバリアメタルとしてのTa膜、及び180nmの膜厚の銅膜(導電膜)を順次形成した試料を用意し、(1)400nm、(2)600nm及び(3)800nmの波長の反射光における反射率の変化を計測しながら試料表面の銅膜を研磨したところ、銅膜の膜厚が約100nmに達した時に反射率が変化した。なお、波長が400nmの反射光にあっては、銅膜の膜厚が約60nmに達した時に反射率が極大値となっており、このように光干渉開始後の変化点を捉えて残膜を検出しても良い。
【0019】
これらの現象を利用すると、特定の波長における反射光を反射率の変化を観察することにより、タングステンや銅等の導電膜の膜厚が所定の膜厚になったことを正確に検知して、研磨条件を切替ることが可能となる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、前記第2研磨条件は、前記第1研磨条件に比べて、被研磨物を前記研磨面に向けて押圧する押圧力が小さいことを特徴とする請求項2記載の研磨装置である。
これにより、導電膜の膜厚が所定の膜厚になったことを正確に検知して、導電膜の膜厚が所定の膜厚に達した時に、通常の研磨から低圧状態での研磨へ切替えることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、前記光学式センサは、第1研磨条件で研磨している時に反射率の変化を計測する波長と異なる波長を用いて、前記第2研磨条件で研磨している時の反射率の変化を計測することを特徴とする請求項2または3記載の研磨装置である。
請求項5に記載の発明は、前記導電膜はタングステン膜であり、前記光学式センサは、反射光のうち190〜800nmの波長における反射率の変化を計測することを請求項1乃至4のいずれか一項に記載の研磨装置である。
【0022】
請求項6に記載の発明は、前記光学式センサは、前記タングステン膜の膜厚が80nmになったことを検知した時に前記制御部に信号を送信することを特徴とする請求項5記載の研磨装置である。
【0023】
前述のように、光干渉開始点からの変化点を捉えて、波長が800nmの反射光における反射率の変化を計測することで、タングステン膜の膜厚が約80nmに達したことを、波長が600nmの反射光における反射率の変化を計測することで、タングステン膜の膜厚が約65nmに達したことを、波長が400nmの反射光における反射率の変化を計測することで、タングステン膜の膜厚が40nmに達したことをそれぞれ検知することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明は、前記導電膜は銅膜であり、前記光学式センサは、反射光のうち190〜800nmの波長における反射率の変化を計測することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の研磨装置である。
【0025】
請求項8に記載の発明は、前記光学式センサは、前記銅膜の膜厚が100nm以下になったことを検知した時に前記制御部に信号を送信することを特徴とする請求項7記載の研磨装置である。
【0026】
前述のように、波長が600nmまたは800nmの反射光における反射率の変化を計測することで、銅膜の膜厚が約100nmに達したことを、波長が400nmの反射光における反射率の変化を計測することで、銅膜の膜厚が約60nmに達したことをそれぞれ検知することができる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、被研磨物の導電膜を研磨面に所定の押圧力で押圧しつつ摺接させて該導電膜表面を研磨し、研磨中に、被研磨物の導電膜に向けて光を照射して該導電膜で反射した反射光を受光し、反射光の反射率の変化を計測して、導電膜の研磨状態を光学式センサで監視し、前記導電膜が所定の膜厚になったことを前記光学式センサで検知した時に研磨条件を第1研磨条件から第2研磨条件に切替ることを特徴とする研磨方法である。
【0028】
請求項10に記載の発明は、前記第2研磨条件は、前記第1研磨条件に比べて、前記被研磨物の導電膜を前記研磨面に向けて押圧する押圧力が小さいことを特徴とする請求項9記載の研磨方法である。
【0029】
請求項11に記載の発明は、前記光学式センサは、第1研磨条件で研磨している時に反射率の変化を計測する波長と異なる波長を用いて、前記第2研磨条件で研磨している時の反射率の変化を計測することを特徴とする請求項9または10記載の研磨方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、導電膜の膜厚測定に、反射率の変化を利用した光学式センサを適用することで、低抵抗基板の表面に形成した導電膜であっても、基板抵抗に影響されることなく、導電膜の膜厚を正確に測定することが可能となる。これによって、低圧状態で研磨する時間を可能な限り減少させて、スループットを低下させることなく、エロージョンの発生を防ぎながら、余剰な導電膜を研磨除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図5は、本発明の実施の形態の研磨装置の概要を示す断面図である。図5に示すように、トップリング10の下方には、上面に研磨面となる研磨パッド101を貼付した研磨テーブル100が設置されている。また、研磨テーブル100の上方には研磨液供給ノズル102が設置されており、この研磨液供給ノズル102によって研磨テーブル100上の研磨パッド(研磨面)101上に研磨液Qが供給される。
【0032】
なお、市場で入手できる研磨パッドとしては種々のものがあり、例えば、ロームアンドハース社製およびニッタ・ハース社製のSUBA800、IC−1000、IC−1000/SUBA400(二層クロス)、フジミインコーポレイテッド社製のSurfin xxx−5、Surfin 000等がある。SUBA800、Surfin xxx−5、Surfin 000は繊維をウレタン樹脂で固めた不織布であり、IC−1000は硬質の発泡ポリウレタン(単層)である。発泡ポリウレタンは、ポーラス(多孔質状)になっており、その表面に多数の微細なへこみ又は孔を有している。
【0033】
トップリング10は、自在継手部20を介してトップリング駆動軸21に接続されており、トップリング駆動軸21は、トップリングヘッド110に固定されたトップリング用エアシリンダ111に連結されている。このトップリング用エアシリンダ111によってトップリング駆動軸21は上下動し、トップリング10の全体を昇降させると共に、トップリング本体12の下端に固定されたリテーナリング13を研磨テーブル100に押圧する。トップリング用エアシリンダ111は、レギュレータR1を介して圧力調整部120に接続されている。この圧力調整部120は、圧縮空気源から加圧空気等の加圧流体を供給することによって、あるいはポンプ等により真空引きすることによって、圧力の調整を行うものである。この圧力調整部120によって、トップリング用エアシリンダ111に供給される加圧空気の空気圧等を、レギュレータR1を介して調整することができる。これにより、リテーナリング13が研磨パッド101を押圧する押圧力を調整することができる。
【0034】
トップリング駆動軸21は、キー(図示せず)を介して回転筒112に連結されている。この回転筒112は、その外周部にタイミングプーリ113を備えている。トップリングヘッド110にはトップリング用モータ114が固定されており、タイミングプーリ113は、タイミングベルト115を介してトップリング用モータ114に設けられたタイミングプーリ116に接続されている。従って、トップリング用モータ114を回転駆動することによって、タイミングプーリ116、タイミングベルト115、及びタイミングプーリ113を介して、回転筒112及びトップリング駆動軸21が一体に回転し、トップリング10が回転する。なお、トップリングヘッド110は、フレーム(図示せず)に回転可能に支持されたトップリングヘッドシャフト117によって支持されている。
【0035】
図6は、トップリング10を示す縦断面図である。トップリング10は、内部に収容空間を有する円筒容器状のトップリング本体12と、トップリング本体12の下端に固定されたリテーナリング13とを備えている。トップリング本体12は、金属やセラミックス等の強度及び剛性が高い材料から形成されている。また、リテーナリング13は、剛性の高い樹脂材又はセラミックス等から形成されている。
【0036】
トップリング本体12は、円筒容器状のハウジング部12aと、ハウジング部12aの円筒部の内側に嵌合される環状の加圧シート支持部12bと、ハウジング部12aの上面の外周縁部に嵌合される環状のシール部12cとを備えている。トップリング本体12のハウジング部12aの下端にリテーナリング13が固定されている。リテーナリング13の下部は内方に突出している。なお、リテーナリング13をトップリング本体12と一体的に形成してもよい。
【0037】
トップリング本体12のハウジング部12aの中央部上方には、トップリング駆動軸21が配設されており、トップリング本体12とトップリング駆動軸21とは自在継手部20により連結されている。この自在継手部20は、トップリング本体12及びトップリング駆動軸21とを互いに傾動可能とする球面軸受機構と、トップリング駆動軸21の回転をトップリング本体12に伝達する回転伝達機構とを備えており、トップリング駆動軸21からトップリング本体12に対して互いの傾動を許容しつつ押圧力及び回転力を伝達する。
【0038】
トップリング本体12及び該トップリング本体12に一体に固定されたリテーナリング13の内部に画成された空間内には、トップリング10によって保持される半導体ウェハ等の基板(被研磨物)Wの外周縁部に当接するエッジバッグ14と、環状のホルダーリング15と、トップリング本体2の内部の収容空間内で上下動可能な概略円盤状のチャッキングプレート16と、エッジバッグ14の径方向内側で基板Wと当接するトルク伝達部材17とが収容されている。
【0039】
なお、チャッキングプレート16は金属材料から形成されていても、磁性を持たない材料、例えば、フッ素系樹脂やセラミックスなどの絶縁性の材料から形成されていてもよい。
【0040】
ホルダーリング15とトップリング本体12との間には弾性膜からなる加圧シート18が張設されている。この加圧シート18は、一端をトップリング本体12のハウジング部12aと加圧シート支持部12bとの間に挟み込み、他端をホルダーリング15の上端部15aとストッパ部15bとの間に挟み込んで固定されている。トップリング本体12、チャッキングプレート16、ホルダーリング15、及び加圧シート18によって、トップリング本体12の内部に圧力室22が形成されている。圧力室22には、チューブ、コネクタ等からなる流体路31が連通されており、圧力室22は、流体路31上に配置されたレギュレータR2を介して圧力調整部120に接続されている。なお、加圧シート18は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴムなどの強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0041】
トップリング本体12のシール部12cが嵌合されるハウジング部12aの上面の外周縁付近には、環状の溝からなる洗浄液路51が形成されている。この洗浄液路51は、シール部12cの貫通孔を介して流体路32に連通されており、この流体路32を介して、洗浄液(純水)が供給される。また、洗浄液路51から延び、ハウジング部12a、加圧シート支持部12bを貫通する連通孔53が複数箇所設けられており、この連通孔53は、エッジバッグ14の外周面とリテーナリング13との間の僅かな間隙Gへ連通されている。
【0042】
エッジバッグ14の下端面は、被研磨物である半導体ウェハ等の基板Wの外周縁部に接する。エッジバッグ14は、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度及び耐久性に優れたゴム材からなる断成膜によって構成されている。
【0043】
エッジバッグ14の内部には、上述した弾性膜によって(第1の)圧力室23が形成されている。この圧力室23には、チューブ、コネクタ等からなる流体路33が連通されており、圧力室23は、この流体路33上に配置されたレギュレータR3を介して圧力調整部120に接続されている。
【0044】
研磨の際、トップリング10の回転に伴い基板Wも回転するが、上述したエッジバッグ14だけでは基板Wとの接触面積が小さく、回転トルクを伝達しきれないおそれがある。このため、基板Wに当接して、基板Wに十分なトルクを伝達するトルク伝達部材17がチャッキングプレート16に固定されている。このトルク伝達部材17は、環状のバッグ形状をしており、基板Wに十分なトルクを伝達するだけの接触面積をもって基板Wと接触する。
【0045】
トルク伝達部材17は、基板Wの上面に当接する弾性膜71と、弾性膜71を着脱可能に保持するトルク伝達部材ホルダー72とから構成されており、これらの弾性膜71とトルク伝達部材ホルダー72によって、トルク伝達部材17の内部に空間60が形成されている。トルク伝達部材17の弾性膜71は、エッジバッグ14と同様に、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0046】
トルク伝達部材17の弾性膜71は、トルク伝達部材ホルダー72を介してチャッキングプレート16に接続される接続部71aを備えている。接続部71aには、内周側及び外周側の両方に複数の連通孔(図示せず)が形成されており、トルク伝達部材17の内部空間60と外部空間61,62とが互いに連通されている。
【0047】
チャッキングプレート16と基板Wとの間に形成される空間は、複数の空間、即ち、エッジバッグ14の径方向内側の圧力室23、トルク伝達部材17の内部の空間60、エッジバッグ14とトルク伝達部材17との間の空間61、トルク伝達部材17の径方向内側の空間62に区画することができる。トルク伝達部材17の接続部71aには連通孔が設けられているため、空間61、空間60、空間62はこの連通孔73を介して互いに連通されて、エッジバッグ14の径方向内側に(第2の)圧力室24が形成される。
【0048】
トルク伝達部材17内の空間60には、チューブ、コネクタ等からなる流体路34が連通されており、空間60は、この流体路34上に配置されたレギュレータR4を介して圧力調整部120に接続されている。また、エッジバッグ14とトルク伝達部材17との間の空間61には、チューブ、コネクタ等からなる流体路35が連通されており、空間61は、この流体路35上に配置されたレギュレータR5を介して圧力調整部120に接続されている。更に、トルク伝達部材17の径方向内側の空間62には、チューブ、コネクタ等からなる流体路36が連通されており、空間62は、流体路36上に配置されたレギュレータ(図示せず)を介して圧力調整部120に接続されている。なお、上記圧力室22〜24は、トップリングシャフト110の上端部に設けられたロータリージョイント(図示せず)を介して各レギュレータに接続される。
【0049】
上述したように空間61、空間60、空間62は互いに連通されているため、このように複数の流体路を設けなくても、1つの流体路からの加圧流体の供給によって圧力室23の圧力を均一に保つことはできるが、複数の流体路34,35,36を設けることで、圧力室23の圧力を変化させたときの応答を良くすることができる。ただし、レギュレータは、必ずしも流体路34,35,36ごとに設ける必要はなく、流体路34,35,36を1つのレギュレータに接続して圧力制御を行ってもよい。
【0050】
上述したチャッキングプレート16の上方の圧力室22及び上記圧力室23,24には、各圧力室22〜24に連通される流体路31,33,34〜36を介して加圧空気等の加圧流体を供給する、あるいは大気圧や真空にすることができるようになっている。即ち、圧力室22〜24の流体路31,33,34〜36上に配置されたレギュレータによって、それぞれの圧力室22〜24に供給される加圧流体の圧力を調整することができる。これにより各圧力室22〜24の内部の圧力を各々独立に制御する、又は大気圧や真空にすることができるようになっている。このような構成により、圧力室24の圧力により基板Wの外周縁部を除く全面を均一な力で研磨面に押圧すると共に、圧力室23の圧力を圧力室24の圧力とは独立に制御することができ、基板Wの外周縁部における研磨速度の制御、即ち外周縁部における研磨プロファイルの制御ができる。更には、リテーナリング13の押圧力も制御することにより、より細かな制御が可能になる。
【0051】
チャッキングプレート16には、エッジバッグ14とトルク伝達部材17との間に位置して、下方に突出する吸着部40が、この例では4個設けられている。この吸着部40には、チューブ、コネクタ等からなる流体路37に連通する連通孔40aが形成されており、吸着部40は、この流体路37上に配置されたレギュレータ(図示せず)を介して圧力調整部120に接続されている。この圧力調整部120により吸着部40の連通孔40aの開口端に負圧を形成し、吸着部40に基板Wを吸着することができる。吸着部40の下端面には薄いゴムシート等からなる弾性シート40bが貼着されており、吸着部40は基板Wを柔軟に吸着保持するようになっている。
【0052】
研磨テーブル100には、トップリング10で基板Wを保持して、該基板Wの表面の、例えば図1に示す銅膜6等の導電膜を研磨パッド(研磨面)101に押圧して研磨している時に、導電膜の研磨状態を監視する光学式センサ130が上方に開放して埋設されており、研磨パッド101の該光学式センサ130の埋設位置と対応する位置には開口が設けられている。そして、この光学式センサ130の出力信号は、制御部132に入力され、この制御部132からの出力信号で、圧力調整部120及びレギュレータR1〜R5が制御され、これによって、研磨中に、トップリング10で保持された基板Wを研磨テーブル100の研磨パッド101に向けて押圧する押圧力が制御される。
【0053】
光学式センサ130は、測定対象物に向けて光を照射する光源と、測定対象物から反射した光と測定対象物を透過して反射した光を受光する受光部を備え、測定対象物から反射した光と測定対象物を透過して反射した光の干渉に基づく反射率の変化によって、測定対象物の膜厚を算出するように構成されている。この例では、光源として白色光等の多波長光を用い、この反射光を分光して特定波長成分の反射率変化を観察するようにしているが、短波長の光源を複数用いるようにしても良い。
【0054】
測定対象物が、例えば図1に示す銅膜6等の導電膜である場合、導電膜の膜厚が厚いときには、導電膜を透過した光は減衰して反射することはないが、導電膜が十分薄くなってくると、透過光が反射して干渉を起こし、この結果、反射率が変動する。このように、反射率の変化を利用した光学的センサ130を適用して、導電膜の膜厚を測定することにより、たとえ低抵抗基板の表面に形成した導電膜であっても、基板抵抗に影響されることなく、導電膜の膜厚を正確に測定することが可能となる。
【0055】
つまり、前述の図2及び図3に示すように、(1)400nm、(2)600nm及び(3)800nmの波長の反射光における反射率の変化を計測しながらタングステン膜を研磨すると、タングステン膜の膜厚が約80nmに達した時に反射率が変化する。なお、波長が400nmの反射光にあっては、タングステン膜の膜厚が約20nmに達した時に反射率が極大値となっており、このように光干渉開始後の変化点を捉えて残膜を検出することができる。また、波長が600nmの反射光にあっては、タングステン膜の膜厚が約65nmに達した時に反射率の上昇が顕著となっており、閾値を設定することにより、残膜を検出することができる。
【0056】
また、図4に示すように、(1)400nm、(2)600nm及び(3)800nmの波長の反射光における反射率の変化を計測しながら銅膜を研磨すると、銅膜の膜厚が約100nmに達した時に反射率が変化する。なお、波長が400nmの反射光にあっては、銅膜の膜厚が約60nmに達した時に反射率が極大値となっており、このように光干渉開始後の変化点を捉えて残膜を検出することができる。
【0057】
これにより、導電膜の研磨中に、光学的センサ130によって、複数種類の特定波長の反射光における反射率の変化を常時計測することで、導電膜の研磨状態をモニタすることができる。
なお、反射率の変化は、導電膜の下層膜の影響を受ける。したがって、反射率と膜厚との関係を算出する際には、下層膜の物性を制御部132の記憶部に予め保存しておく必要がある。あるいは、反射率算出の基準として、研磨する金属とすれば、光干渉開始点では必ず反射率が低下するため、その変化を捉えることで、下層膜の情報を用いることなく膜厚測定が可能となる。
【0058】
なお、図5に示すように、光学式センサ130に、渦電流センサ131や研磨テーブル100の回転トルクを検出するトルクセンサ(図示せず)を併用して、導電膜の研磨状態をモニタリングすることが好ましい。つまり、光学式センサ130で膜厚を測定できるようになるのは、例えば導電膜の膜厚が100nm以下になった時以降であり、従って、研磨中の大部分は導電膜の膜厚の変化を測定できない。渦電流センサ131を併用することで、絶対的な導電膜の膜厚を知ることは初期膜厚を計測していない場合は困難であるが、相対的な導電膜の膜厚の変化は知ることができる。例えば、渦電流センサ131の信号から研磨レートを算出することができる。
【0059】
また、渦電流センサ131を併用することにより、光学式センサ130の誤検出を防ぐことができる。つまり、渦電流センサ131は、初期膜厚を測定しなくても相対膜厚を測定でき、出力変化は導電膜の膜厚が薄くなるにつれて低下する。これにより、出力が低下している領域において、例えば光学式センサ130の出力にノズルが乗って、反射強度が変化し、誤検出する場合においても、渦電流センサ131が出力を低下し続けることを確認することにより、光学式センサ130の誤検出を防ぐことができる。
【0060】
また、研磨条件によっては導電膜が除去された時点において、テーブル回転トルクが変化するので、導電膜除去の終点検出はテーブル回転トルクセンサを併用しても良い。つまり、光学式センサ130とトルクセンサとを併用した場合、光学式センサ130が導電膜除去の終点と判断した時であっても、トルクセンサが導電膜除去の終点を検知していない場合には、光学式センサ130の判断を誤検知としてキャンセルする。その逆も同様であり、両センサが導電膜除去終点を検知した時を真の研磨終点であると検知することができる。
【0061】
次に、このように構成された研磨装置の作用について詳細に説明する。
上記構成の研磨装置において、基板Wの搬送時には、トップリング10の全体を基板Wの移送位置に位置させ、吸着部40の連通孔40aを流体路37を介して圧力調整部120に接続する。この連通孔40aの吸引作用により吸着部40の下端面に基板Wが真空吸着される。そして、基板Wを吸着した状態でトップリング10を移動させ、トップリング10の全体を研磨面(研磨パッド101)を有する研磨テーブル100の上方に位置させる。なお、基板Wの側端部は、リテーナリング13によって保持され、基板Wがトップリング10から飛び出さないようになっている。
【0062】
研磨時には、吸着部40による基板Wの吸着を解除し、トップリング10の下面に基板Wを保持させると共に、トップリング駆動軸21に連結されたトップリング用エアシリンダ111を作動させて、トップリング10の下端に固定されたリテーナリング13を所定の押圧力で研磨テーブル100の研磨面に押圧する。この状態で、圧力室23及び圧力室24にそれぞれ所定の圧力の加圧流体を供給して、基板Wの表面の、例えば銅膜6(図1参照)等の導電膜を研磨テーブル100の研磨面に向けて所定の押圧力(第1押圧力)で押圧する。そして、予め研磨液供給ノズル102から研磨液Qを流すことにより、研磨パッド101に研磨液Qが保持され、基板Wの下面の銅膜6等の導電膜と研磨パッド101との間に研磨液Qが存在した状態で、第1研磨条件での研磨が行われる。
【0063】
ここで、基板Wの圧力室23及び圧力室24の下方に位置する部分は、それぞれ圧力室23及び圧力室24に供給される加圧流体の圧力で研磨面に押圧される。従って、基板Wに加わる研磨圧力は、圧力室23及び圧力室24に供給される加圧流体の圧力をそれぞれ制御することにより、基板Wの外周縁部を除く全面を均一な力で研磨面に押圧すると共に、基板Wの外周縁部における研磨レートを制御することができ、基板Wの外周縁部における研磨プロファイルの制御を行うことができる。また、同様に、レギュレータR1によってシリンダ111に供給される加圧流体の圧力を調整し、リテーナリング13が研磨パッド101を押圧する押圧力を変更することができる。上述のようにして、トップリング用エアシリンダ111によるリテーナリング13の研磨パッド101への押圧力と、圧力室23及び圧力室24に供給する加圧流体による基板Wの研磨パッド101への押圧力とを適宜調整して基板Wの研磨が行われる。
【0064】
この研磨中に、光学式センサ130で基板Wの表面に形成した銅膜6等の導電膜の研磨状態をモニタする。つまり、光学式センサ130の光源から導電膜(銅膜6)に向けて光(多波長光)を照射し、導電膜で反射した反射光を受光部で受光する。そして、反射光を分光して、特定波長成分の反射率の変化を計測(モニタ)する。そして、導電膜の膜厚が所定の値に達したこと光学式センサ130で検知した時に、研磨条件を第1研磨条件から第2研磨条件に切替る。
【0065】
つまり、前述のように、導電膜がタングステン膜である時には、タングステン膜の膜厚が約80nmに達した時に反射率が変化する。なお、波長が400nmの反射光にあっては、タングステン膜の膜厚が約20nmに達した時に反射率が極大値となっており、このように光干渉開始後の変化点を捉えて残膜を検出することができる。また、波長が600nmの反射光にあっては、タングステン膜の膜厚が約65nmに達した時に反射率の上昇が顕著となっており、閾値を設定することにより、残膜を検出することができる。そこで、例えば、光干渉開始点から、タングステン膜(導電膜)の膜厚が80nmに達したことを検知して、研磨条件を第1研磨条件から第2研磨条件に切替る。
【0066】
導電膜が銅膜である場合には、銅膜の膜厚が約100nmに達した時に反射率が変化する。なお、波長が400nmの反射光にあっては、銅膜の膜厚が約60nmに達した時に反射率が極大値となっており、このように光干渉開始後の変化点を捉えて残膜を検出することができる。そこで、例えば、光干渉開始点から、銅膜(導電膜)の膜厚が100nmに達したことを検知して、研磨条件を第1研磨条件から第2研磨条件に切替る。
【0067】
この第2研磨条件では、基板Wの表面の、例えば銅膜6等の導電膜を研磨テーブル100の研磨面(研磨パッド101)に押圧する押圧力(第2押圧力)を前記第1研磨条件による押圧力(第1押圧力)より低くする。つまり、圧力室23及び圧力室24に供給される加圧流体の圧力を低下させる。これによって、より低ディッシング、低エロージョン及び低スクラッチ等となるようする。
【0068】
このように、導電膜の膜厚測定に、反射率の変化を利用した光学式センサ130を適用することで、低抵抗基板の表面に形成した導電膜であっても、基板抵抗に影響されることなく、導電膜の膜厚を正確に測定することが可能となる。そして、導電膜が所定の膜厚に達した時に、研磨条件を低圧での研磨に切替ることで、低圧状態で研磨する時間を可能な限り減少させて、スループットを低下させることなく、エロージョンの発生を防ぎながら、余剰な導電膜を研磨除去することができる。
【0069】
そして、基板Wの表面の、例えば銅膜6等の余剰な導電膜が完全に除去されたことを光学式センサ130で検知し、しかる後、必要に応じて、基板Wに局部的に残った導電膜を確実に除去するため、O.P.(オーバポリッシュ)を行う。ここで、オーバポリッシュとは、所定時間、所定条件で研磨を行うことをいい、上述の第1研磨条件による研磨、及び第2研磨条件による研磨と異なり、センサによる終点検出や運転中における研磨条件の変更は行わない。
以上の研磨処理を纏めると以下のようになる。
【0070】
(1)第1ステップ
導電膜の膜厚が所定の膜厚に達するまで、導電膜を所定の押圧力(第1押圧力)で研磨面に押圧して研磨する(第1研磨条件による研磨)。導電膜の好ましい膜厚は、半導体ウェハ等の構造および研磨プロセスに最適な薄膜値により決定する。この所望の残膜検出に光学式センサ130を用いる。
【0071】
(2)第2ステップ(第2研磨条件による研磨)
導電膜の膜厚が所定の値に達したことを光学センサで式検知した後、厳しい平坦化特性を満たすため、第1押圧力より低い所定の押圧力(第2押圧力)で導電膜を研磨面に押圧して研磨する(第2研磨条件による研磨)。つまり、高圧状態での研磨から低圧状態での研磨に切替る。これにより、より低ディッシング、低エロージョン及び低スクラッチなどとなるようする。この時の終点検出は、光学式センサ130を用いるが、渦電流センサやトルクセンサを使用してもよい。
【0072】
(3)(O.P.(オーバポリッシュ))
被研磨面のエロージョンをマージン内に収めるため、必要に応じて、O.P.(オーバポリッシュ)を行う。つまり、所定の研磨条件で、所定時間に亘る研磨を行う。このO.P.は、上述の第1ステップ、第2ステップと異なり、センサによる終点検出や研磨運転中の条件変更を行わない。
【0073】
そして、研磨が終了した際は、基板Wを吸着部40の下端面に再び真空吸着する。この時、圧力室23及び圧力室24への加圧流体の供給を止め、大気圧に開放することにより、吸着部40の下端面を基板Wに当接させる。また、圧力室23内の圧力を大気圧に開放するか、もしくは負圧にする。これは、圧力室23の圧力を高いままにしておくと、基板Wの吸着部40に当接している部分のみが、研磨面に強く押圧されることになってしまうためである。
【0074】
上述のように基板Wを吸着させた後、トップリング10の全体を基板の移送位置に位置させ、吸着部40の連通孔40aから基板Wに流体(例えば、圧縮空気もしくは窒素と純水を混合したもの)を噴射して基板Wをリリースする。
【0075】
エッジバッグ14の外周面とリテーナリング13との間の僅かな間隙Gには、研磨に用いられる研磨液Qが侵入してくるが、この研磨液Qが固着すると、ホルダーリング15、チャッキングプレート16、及びエッジバッグ14などの部材のトップリング本体12及びリテーナリング13に対する円滑な上下動が妨げられる。そのため、流体路32を介して洗浄液路51に洗浄液(純水)を供給する。これにより、複数の連通孔53より間隙Gの上方に純水が供給され、純水が間隙Gを洗い流して上述した研磨液Qの固着が防止される。この純水の供給は、研磨後の基板がリリースされ、次に研磨される基板が吸着されるまでの間に行われるのが好ましい。
【0076】
上述の実施形態では、流体路31,33〜37をそれぞれ別個に設けたが、これらの流体路を統合したり、各圧力室同士を連通させたりするなど、基板Wに加えるべき押圧力の大きさや加える位置により自由に改変することが可能である。
【0077】
図7は、前記第1ステップ(1st Step)、第2ステップ(2nd Step)及びオーバーポリッシュ(O.P.)の研磨プロセスを、光学式センサを使用した、(1)400nm、(2)600nm、及び(3)800nmの波長の反射光における反射率の変化の他に、更に(4)トルクセンサ、(5)渦電流センサも併用してモニタリングしたものである。
【0078】
図7より、光学式センサが導電膜の膜厚を測定できるようになるのは、導電膜の厚さが、例えば100nm以下になった時以降であることが判る。従って、研磨中の大部分は膜厚の変化を測定できないこととなるが、渦電流センサを併用することで、絶対的な膜厚を知ることは初期膜厚を計測していない場合は困難であるが、相対的な膜厚の変化は知ることができ、例えば、渦電流センサの信号から研磨レートを算出することができる。また、トルクセンサを併用することにより、光学式センサの誤検知を防ぐことができる。
【0079】
上述した実施形態においては、研磨パッドにより研磨面を形成しているが、これに限られるものではない。例えば、固定砥粒により研磨面を形成してもよい。固定砥粒は、砥粒をバインダ中に固定し板状に形成されたものである。固定砥粒を用いた研磨においては、固定砥粒から自生した砥粒により研磨が進行する。固定砥粒は、砥粒とバインダと気孔により構成されており、例えば砥粒には平均粒径0.5μm以下の酸化セリウム(CeO)、バインダにはエポキシ樹脂を用いる。このような固定砥粒は硬質の研磨面を構成する。また、固定砥粒には、上述した板状のものの他に、薄い固定砥粒層の下に弾性を有する研磨パッドを貼付して二層構造とした固定砥粒パッドも含まれる。その他の硬質の研磨面としては、上述したIC−1000がある。
【0080】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】デュアルダマシンプロセスによって銅配線を形成する一例を工程順に示す図である。
【図2】タングステン膜の研磨中に、(1)400nm、(2)600nm及び(3)800nmの反射光における反射率の変化を計測した時のグラフである。
【図3】タングステン膜の研磨中に、(1)400nm、(2)600nm及び(3)800nmの反射光における反射率の変化を計測した時の実効値と微分値とを対応させて示す図である。
【図4】銅膜の研磨中に、(1)400nm、(2)600nm及び(3)800nmの反射光における反射率の変化を計測した時のグラフである。
【図5】本発明の実施の形態における研磨装置の全体構成を示す断面図である。
【図6】図5の研磨装置におけるトップリングを示す縦断面図である。
【図7】前記第1ステップ(1st Step)、第2ステップ(2nd Step)及びオーバーポリッシュ(O.P.)の研磨プロセスを、光学式センサを使用した、(1)400nm、(2)600nm、及び(3)800nmの波長の反射光における反射率の変化の他に、更に(4)トルクセンサ、(5)渦電流センサも併用してモニタリングした時のグラフである。
【符号の説明】
【0082】
5 バリアメタル
6 銅膜(導電膜)
10 トップリング
13 リテーナリング
14 エッジバッグ
15 ホルダーリング
16 チャッキングプレート
17 トルク伝達部材
18 加圧シート
20 自在継手部
22〜24 圧力室
101 研磨パッド
100 研磨テーブル
120 圧力調整部
130 光学式センサ
131 渦電流センサ
132 制御部
R1,R2,R3,R4,R5 レギュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有する研磨テーブルと、
導電膜を表面に有する被研磨物を保持し、該導電膜を前記研磨面に摺接させて研磨するトップリングと、
前記トップリングで保持した被研磨物の導電膜に向けて光を照射して該導電膜で反射した反射光を受光し、反射光の反射率の変化を計測して導電膜の研磨状態を監視する光学式センサと、
前記被研磨物を前記研磨面に向けて押圧する押圧力を制御する制御部を有することを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記光学式センサは、前記導電膜が所定の膜厚になったことを検知した時に前記制御部に信号を送信し、前記制御部は、前記信号を基準に研磨条件を第1研磨条件から第2研磨条件に切替ることを特徴とする請求項1記載の研磨装置。
【請求項3】
前記第2研磨条件は、前記第1研磨条件に比べて、被研磨物を前記研磨面に向けて押圧する押圧力が小さいことを特徴とする請求項2記載の研磨装置。
【請求項4】
前記光学式センサは、第1研磨条件で研磨している時に反射率の変化を計測する波長と異なる波長を用いて、前記第2研磨条件で研磨している時の反射率の変化を計測することを特徴とする請求項2または3記載の研磨装置。
【請求項5】
前記導電膜はタングステン膜であり、前記光学式センサは、反射光のうち190〜800nmの波長における反射率の変化を計測することを請求項1乃至4のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記光学式センサは、前記タングステン膜の膜厚が80nmになったことを検知した時に前記制御部に信号を送信することを特徴とする請求項5記載の研磨装置。
【請求項7】
前記導電膜は銅膜であり、前記光学式センサは、反射光のうち190〜800nmの波長における反射率の変化を計測することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記光学式センサは、前記銅膜の膜厚が100nm以下になったことを検知した時に前記制御部に信号を送信することを特徴とする請求項7記載の研磨装置。
【請求項9】
被研磨物の導電膜を研磨面に所定の押圧力で押圧しつつ摺接させて該導電膜表面を研磨し、
研磨中に、被研磨物の導電膜に向けて光を照射して該導電膜で反射した反射光を受光し、反射光の反射率の変化を計測して、導電膜の研磨状態を光学式センサで監視し、
前記導電膜が所定の膜厚になったことを前記光学式センサで検知した時に研磨条件を第1研磨条件から第2研磨条件に切替ることを特徴とする研磨方法。
【請求項10】
前記第2研磨条件は、前記第1研磨条件に比べて、前記被研磨物の導電膜を前記研磨面に向けて押圧する押圧力が小さいことを特徴とする請求項9記載の研磨方法。
【請求項11】
前記光学式センサは、第1研磨条件で研磨している時に反射率の変化を計測する波長と異なる波長を用いて、前記第2研磨条件で研磨している時の反射率の変化を計測することを特徴とする請求項9または10記載の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−129970(P2009−129970A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300511(P2007−300511)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】