説明

組電池

【課題】短時間に急速充電を実施して容量の一部を回復させて稼働時間を延長しようとする電動車両用等の組電池において、電池温度の上昇を抑制し、許容範囲を超えて電池温度が上昇することのない組電池を提供する。
【解決手段】複数の鉛蓄電池3を収納ケース4に収容し、前記鉛蓄電池3を直列に接続してなる組電池である。鉛蓄電池3は上面に複数個の正極端子2,2’と前記正極端子と同数の負極端子1,1’をそれぞれ備える。隣り合う鉛蓄電池3間の正極端子2,2’と負極端子1,1’の接続は、端子毎に個別の接続部材によりなされ、前記鉛蓄電池は、複数の同極性端子の1個あたりの電池容量を300Ah以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鉛蓄電池を収納ケースに収容して使用する組電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種産業界では、地球環境の保護や温暖化を抑制するために、二酸化炭素の排出量を削減する試みが、重要視されている。
フォークリフトなどの産業用車両においても、内燃機関により駆動される、いわゆるエンジン車に対して、燃焼ガスの排出の無い、電池によって駆動される、いわゆる電動車の比率が急速に増加している。
【0003】
しかしながら、エンジン車においては、給油により長時間連続して稼動することが可能であるのにくらべ、電動車の稼働時間は電池の容量によって制限され、長時間を要する充電中は稼動できないという欠点がある。これに対し、短時間に急速充電を実施して容量の一部を回復させ、稼働時間を延長しようとする試みがなされてきた。
【0004】
電動式フォークリフトには、数十個の鉛蓄電池を鉄製の収納ケースに収容し、鉛蓄電池を直列に接続した組電池が搭載・使用されている。これらの鉛蓄電池は、メンテナンスを容易とするため、全ての鉛蓄電池の上面が組電池の上面となるように配置されるとともに、充電終期における水の電気分解ガスによる電解液の攪拌(いわゆるエアリフト効果)が良好になるように、縦に細長い形状を採用して電解液の成層化による充電不足を回避している。また、価格の安いポリプロピレン製の電槽に極板群を収納している。そのため、細長い形状と剛性に欠ける電槽材質により、正極板、負極板及びセパレータの密着性を維持することが困難である。そこで、これを補うため、数十個の鉛蓄電池は鉄製の収納ケースに密接的に収容され、これにより正極板、負極板及びセパレータの密着性を維持している。収納ケース内の鉛蓄電池は、密接した状態で使用されるために放熱されにくいという問題があった。
【0005】
この対策として、特許文献1には、鉛蓄電池の電槽の側面にリブを形成するとともに、前記リブの周囲に金属箔を貼り付けた鉛蓄電池システムが開示されている。この鉛蓄電池システムは、リブの形成によって鉛蓄電池の電槽周囲に空間を設けて、鉛蓄電池の放熱を良好に行わせようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−19051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記組電池の充電は、組電池の正負極端子から引き出されたケーブルを介して直流電力を印加して行う。通常は、0.2CA程度の電流により夜間に充電される。この間、組電池は車体に搭載された状態で充電され、車体は稼動しないのが一般的である。充電操作にとらわれずに車体を稼動するためには、二組以上用意された組電池(スペアバッテリー)を入れ替え、車体からおろした状態で充電する必要がある。
【0008】
車体の長時間稼動を所望する場合には、上記のごとく、スペアバッテリーを用意して積み替えるという方法をとらざるを得ないが、組電池のコストが倍増するほか煩雑な積み替え作業が発生する。また、多少の稼働時間の延長のためにスペアバッテリーを用意することは無駄が多い。
これに対し、短時間に電池容量の一部を回復充電することにより稼働時間を延長することができれば、スペアバッテリーを用意することに比べて、コストや工数の面で非常に大きな効果がある。そのためには、1時間程度の短時間で電池容量の数十パーセントを充電する急速充電が必要となる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、急速充電による電池温度の上昇を抑制するには不十分であるという問題があった。
すなわち、電動式フォークリフト等の駆動に際しては、比較的大きな電流の間欠放電となる場合が多く、抵抗発熱により電池温度が上昇することに加え、短時間での急速充電を行った場合には、大電流による連続通電となるため、発熱反応である充電反応熱と抵抗発熱による温度上昇もあり、許容範囲を超えて電池温度が上昇し、電池寿命が低下するという問題があり、場合により電池の故障を生じるという問題があった。
【0010】
本発明は、短時間に急速充電を実施して容量の一部を回復させて稼働時間を延長しようとする電動車両用等の組電池において、電池温度の上昇を抑制し、許容範囲を超えて電池温度が上昇することのない組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下のものに関する。
(1)複数の鉛蓄電池を収納ケースに収容し、前記鉛蓄電池を直列に接続してなる組電池であって、前記鉛蓄電池は上面に複数個の正極端子と前記正極端子と同数の負極端子をそれぞれ備え、隣り合う鉛蓄電池間の正極端子と負極端子の接続は、端子毎に個別の接続部材によりなされ、前記鉛蓄電池は、複数の同極性端子の1個あたりの電池容量が300Ah以下である組電池。
(2)項(1)において、鉛蓄電池の上面に備えた正極端子と負極端子は、それぞれ2個である組電池。
(3)項(1)〜(2)のいずれかにおいて、前記鉛蓄電池は、高さ400mm以上である組電池。
(4)項(1)〜(3)のいずれかにおいて、複数の鉛蓄電池を列方向にn個、行方向にm個(n、mはそれぞれ2以上で且つn≧m)で収納ケースに収容し、各鉛蓄電池はその複数の同極性端子が行方向に配列され、列方向に隣り合う鉛蓄電池同士ならびに行方向に隣り合う鉛蓄電池同士は、それぞれ異極性端子が相対するように配列されている組電池。ここで、「鉛蓄電池を列方向にn個、行方向にm個」とは、対応電圧との関係で、直列接続の最初又は最後において鉛蓄電池が欠落し、n個又はm個に満たないことがあることを含む。
(5)項(4)において、列方向の隣り合う鉛蓄電池の異極性端子間は列用接続かんで接続し、列方向末端における行方向に隣り合う鉛蓄電池の異極性端子間は、相対する異極性端子間を行用接続かんで接続するとともに、残りの異極性端子間を接続ケーブルで接続した組電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、短時間に急速充電を実施して容量の一部を回復させて稼働時間を延長しようとする電動車両用等の組電池において、電池温度の上昇を抑制し、許容範囲を超えて電池温度が上昇することのない組電池を提供することができる。これにより、短時間で電池容量の数十パーセントを充電する急速充電が可能となり、スペアバッテリーを用意することに比べて、コストや工数を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の鉛蓄電池を上面からみた説明図である。
【図2】比較例1の鉛蓄電池を上面からみた説明図である。
【図3】1CA放電試験結果である。
【図4】1CA放電試験結果である。
【図5】実施例1の組電池を上面からみた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
組電池に急速充電を行った場合、以下の要因によって電池温度の上昇を招き、結果的に許容範囲を超えた高温となることがある。
(a)大電流を通電することによる接続かんや端子部における抵抗発熱
(b)後述のごとく細長い極板を使用するため自動車用電池などと比べ抵抗が大きく、極板集電部における抵抗発熱
(c)充電反応は発熱反応であり大電流通電により発熱速度が大きい
(d)鉛蓄電池を密接した状態で配置することにより放熱性が悪い
これらの要因のうち、(b)は電解液の成層化を防止するためには変更することが困難であり、(c)は急速充電に対して付随的に発生するものであるので回避することが困難である。
本発明においては、(a)における抵抗発熱を抑制するとともに、(b)〜(d)の要因により上昇した電池内部の温度すなわち熱を伝熱により、隣り合う鉛蓄電池の異極性端子間の接続部材(接続かん)に導き放熱しようとするものである。
【0015】
<鉛蓄電池>
本発明にて述べる鉛蓄電池は、上面に複数個の正極端子と前記正極端子と同数の負極端子をそれぞれ備えている。この鉛蓄電池は、複数の同極性端子の1個あたりの電池容量を300Ah以下としている。そのほかは、特に制限されるものではなく、電槽と呼ばれるプラスチック製の容器に、セパレータを挟んで対向する正極と負極が交互に複数枚重ね合わされた極板群と電解液である希硫酸とを収納してなり、通常約2Vの電圧を有するものを使用することができる。
【0016】
極板としては、クラッド式、ペースト式又はチュードル式のもの等を用いることができるが、電動式フォークリフト等の産業用車両においては、正極板には耐久性に優れるクラッド式のものを用いることが好ましい。また、鉛蓄電池の形状は、電動式フォークリフト等の産業用車両においては、細長い極板を深い電槽に収納した縦長が好ましい。これは、充電終期の過充電領域における副反応で発生する水の電気分解ガスによるエアリフト効果によって電解液が上下方向に攪拌され、電解液の成層化による電池劣化を防止しやすいからである。
【0017】
鉛蓄電池の充放電反応には電解液である硫酸が関与し、放電時には硫酸が消費され、逆に充電時には硫酸が生成する。充電時の硫酸の生成はミクロ的には100%濃硫酸の生成であり、高比重の硫酸が生成することになる。硫酸の生成速度は充電電流値に依存するが、電流が大きく、生成した硫酸の拡散が間に合わない場合には比重差によって高濃度の硫酸が電槽の下部に移動し、上下に比重差すなわち濃度差が生じる。この現象を成層化と呼んでいる。
【0018】
成層化が起こると極板の下部において充電反応が進行しにくくなり、放電生成物である硫酸鉛が不働態化する、いわゆるサルフェーションによって劣化する。
成層化を抑制するためには、充電終期の過充電領域における副反応で発生する水の電気分解ガスによるエアリフト効果によって電解液を上下方向に攪拌することが一般的であるが、大きなエアリフト効果を得るために、細長い極板を深い電槽に収納して用いるのが好ましい。
【0019】
<収納ケース>
収納ケースは、上記の鉛蓄電池を複数収納できるものであれば、特に制限されるものではない。例えば、上方が開口した鉄製の容器(以下、鉄箱と記す)に上記縦長の鉛蓄電池を密接した状態で収納することができる。
プラスチック製の電槽は通常価格が安く耐酸性に優れたポリプロピレン製が用いられるが、剛性が十分ではないため、特に縦長の電槽では、電解液の質量により変形(中央部で膨らむ)し、セパレータを介した極板間の密接状態を維持できない場合が多い。鉄箱内に鉛蓄電池を密接した状態で収容することにより、鉄箱の強度によってセパレータを介した極板間の密接状態が維持される。
【0020】
<組電池>
組電池は、所定の出力を得るために複数の鉛蓄電池を直列に接続してなるものであり、その構造や構成は、特に制限されるものではない。例えば、24個の鉛蓄電池を直列に接続して高電圧(48V)の組電池とすることができる。
【0021】
鉛蓄電池の直列接続は、隣り合う鉛蓄電池間の正極端子と負極端子の接続が、端子毎に個別の接続部材によりなされる。例えば、メガネ状の形状を有する鉛合金製の接続かんの両端の穴を、隣り合う鉛蓄電池の鉛合金製の端子に嵌合し、両者を溶接して接続することができる。このほか、両端に穴の空いた銅板や両端に圧着端子を装着したケーブルをボルトやナットで固着することもできる。本発明では、接続部材とは、上記の接続かん、両端に穴の空いた銅板、両端に圧着端子を装着したケーブル等をいう。
【0022】
そして、鉛蓄電池の接続は、前述したとおり端子毎に個別の接続部材によりなされるが、1つの鉛蓄電池上面の複数の同極性端子の1個あたりの電池容量を300Ah以下とする。同極性端子の1個あたりの電池容量を300Ah以下とすることにより、大電流を通電することによる接続かんや端子部における抵抗発熱を抑制することができる。また、端子毎に個別の接続部材により接続し、電流の流れる経路を複数確保することにより、電圧特性が改善され、鉛蓄電池の電池容量を実質的に高容量化することができる。当該接続部材1個あたりの電池容量も300Ah以下とする。
【0023】
鉛蓄電池が、複数の同極性端子を有しこれ等端子に個別に接続部材を装着するので、接続部材間に隙間を設けることができ、接続部材における放熱の効果を高めることができる。
【0024】
鉛蓄電池上面に備えた正極端子と負極端子は、電池内部において極板群とをつなぐ部分が酸化性雰囲気にさらされるのが一般的であり、腐食による損傷によって大電流通電時に破断する心配がある。このとき、破断の瞬間に破断部に高電圧が生じスパークが発生して、水の電気分解ガス(爆鳴気)が存在するとこれに引火して爆発事故を起こす心配がある。複数の正極端子と負極端子を備える場合には、ひとつの端子が破断した場合においても破断部に高電圧が生じることが無く爆発事故を起こす心配を回避することができる。例えば、正負極端子をそれぞれ2個とすることができる。
【0025】
電動式フォークリフトにおいては、鉛蓄電池はパワーソースであると共にウエイトバランスの役割を併せ持っており、車体の重心との位置関係が重要である。また、狭い倉庫などにおける旋回性などの作業性から、車体の幅や長さは制約を受ける。前述のように、フォークリフト用鉛蓄電池は縦に細長い形状が一般的であるが、大容量電池では高さの高いものとなり、極板部分の抵抗も大きくなる。本発明は充放電電流の大きな大容量電池において有効であるが、鉛蓄電池が、高さ400mm以上である大容量電池において特に効果が顕著である。
【0026】
個々の鉛蓄電池の内部においては、交互に積層された複数の正極板及び負極板をそれぞれ溶接してストラップと呼ぶ並列接続部分を形成する。ストラップは極板の積層方向と同方向に形成されるため、複数の端子を設ける場合には該積層方向と同方向に同極の端子が並ぶのが一般的である。複数の鉛蓄電池を列方向にn個、行方向にm個(n、mはそれぞれ2以上且つn≧m)で収納ケースに収容した組電池において、極板の積層方向が行方向である場合、各鉛蓄電池はその複数の同極性端子が行方向に配列され、列方向に隣り合う鉛蓄電池同士ならびに行方向に隣り合う鉛蓄電池同士は、それぞれ異極性端子が相対するように配列される。「鉛蓄電池を列方向にn個、行方向にm個」とは、対応電圧との関係で、直列接続の最初又は最後において鉛蓄電池が欠落し、n個又はm個に満たないことがあることを含み、例えば、列方向に5個、行方向に5個で、電圧48V対応の場合は、鉛電池の個数24個となり、直列接続の最初又は最後で1個欠落する。
【0027】
上記のように配列して、列方向の隣り合う鉛蓄電池の異極性端子間の接続は、端子毎に列用接続かんで接続して複数の接続とすることにより大多数の接続かんが隙間を有して平行に配置され放熱効果が最大になる。列方向末端における行方向に隣り合う鉛蓄電池の異極性端子間は、全ての端子を相対して配置することはできないで、隣接する異極性端子間を行用接続かんで接続するとともに、残りの異極性端子間を接続ケーブルで接続する。このような接続ケーブルによる接続の数を最小にして放熱性を高めるために、n≧mとする。
【0028】
上記の実施の形態では、鉛蓄電池の上面に正極端子と負極端子をそれぞれ複数個備えたが、正極端子と負極端子をそれぞれ1つ備え、隣り合う鉛蓄電池の接続は、1つの端子に、複数の接続部材を装着することもできる。この場合、鉛蓄電池は、隣り合う鉛蓄電池を接続する接続部材1個あたりの電池容量を300Ah以下とする。正極端子、負極端子それぞれは、複数の接続部材を装着できる十分なスペースを確保する。
さらに、鉛蓄電池の上面に正極端子と負極端子をそれぞれ複数備える場合にも、各端子に複数の接続部材を装着することができる。
【実施例】
【0029】
以下、図面を用いて、比較例とともに、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0030】
<実施例1>
一般的な電動式フォークリフト用として用いられる、幅が158mm、長さが144mm、高さが427mmで、2V−400Ah(公称容量)の鉛蓄電池を用いて組電池を構成した。鉛蓄電池の正極板はクラッド式とした。この鉛蓄電池3は、図1に上面図を示すように、負極端子1、1’と正極端子2、2’をそれぞれ2本備えている。
図5は、上記の鉛蓄電池3を一般的な電動式フォークリフト用鉄箱4に収納した状態を示す平面図である。鉛蓄電池3を、鉄箱4に列方向に6個、行方向に4個の計24個が密接した状態で収容している。
各鉛蓄電池3はその複数の同極性端子が行方向に配列され、列方向に隣り合う鉛蓄電池3同士ならびに行方向に隣り合う鉛蓄電池3同士は、それぞれ異極性端子が相対するように配列した組電池である。すなわち、各鉛蓄電池3の正極端子2,2’、負極端子1,1’は、行方向に並んでいる。また、列方向に隣り合う鉛蓄電池3同士は、一方の鉛蓄電池3の正極端子2,2’と他方の鉛蓄電池3の負極端子1,1’が相対しており、行方向に隣り合う鉛蓄電池3同士は、一方の鉛蓄電池3の正極端子と他方の鉛蓄電池3の負極端子が相対している。
【0031】
上記において、列方向に隣り合う鉛蓄電池3の相対する2組の異極性端子間を、列用接続かん5,5’で接続している。そして、列方向末端における行方向に隣り合う鉛蓄電池3の異極性端子間は、相対する異極性端子間を行用接続かん6で接続するとともに、残りの異極性端子間を接続ケーブル7で接続している。列用接続かんと行用接続かんは、通常の電動式フォークリフト用組電池で用いられる鉛合金製の接続かんを使用した。また、1セル目と24セル目からは、2個の同極性端子を纏めた外部入出力用ケーブル8,8’を引き出している。
【0032】
<比較例1>
組電池を構成する鉛蓄電池3の上面図を図2に示す。負極端子1と正極端子2は、それぞれ1個である。従って、隣り合う鉛蓄電池同士の直列接続は、通常の電動式フォークリフト用組電池で用いられる鉛合金製の接続かんを1本使用した。各鉛蓄電池の上面に備える正極端子と負極端子を1つとする以外は実施例1と同様とした。
【0033】
上記の実施例1及び比較例1の組電池の抵抗発熱の影響を確認するため、次の試験を実施した。すなわち、上記実施例と比較例の組電池状態を再現するために、前記各例に準じて鉛蓄電池を3個直列に接続した組電池を準備した。そして、環境温度25℃で6時間以上静置した後、放電反応熱の影響を受けない1CA放電を実施し、端子電圧及び接続かん温度の経時変化を測定した。その結果を図3、図4に示す。
【0034】
<1CA放電試験結果>
図3から明らかなように、放電中を通じて、実施例1は、比較例1と比較して端子電圧が約0.2V低い。放電電流値は400Aであるから、実施例1は、比較例1と比較して抵抗損失が約80W低いことが理解できる。
また、図4から明らかなように、接続かん温度は、放電開始直後から上昇を初め、約10分後には上昇が緩やかになるが、約36分後の放電終了時まで上昇が続いている。このとき、外気温度は20〜25℃であった。そして、比較例1では、接続かんが約110℃まで上昇しているのに対し、実施例1の到達温度は約45℃であり(比較例1に比べて約55℃の温度差が生じており)、放電時の接続かんの発熱を抑制できることが理解できる。なお、本実施例では、放電による接続かんの発熱を測定したものであるが、充電時には放電時と同様の抵抗発熱による温度上昇に加えて電池内部の充電反応熱による温度上昇が伝熱により重畳される。そのため、充電開始後の急激な温度上昇を経た後の緩やかな温度上昇が続く領域の到達温度がやや高くなるが50℃以上の温度差が生じる点は同様である。
【符号の説明】
【0035】
1,1’…負極端子
2,2’…正極端子
3…鉛蓄電池
4…鉄箱
5,5’…列用接続かん
6…行用接続かん
7…接続ケーブル
8,8’…外部入出力用ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉛蓄電池を収納ケースに収容し、前記鉛蓄電池を直列に接続してなる組電池であって、前記鉛蓄電池は上面に複数個の正極端子と前記正極端子と同数の負極端子をそれぞれ備え、隣り合う鉛蓄電池間の正極端子と負極端子の接続は、端子毎に個別の接続部材によりなされ、前記鉛蓄電池は、複数の同極性端子の1個あたりの電池容量が300Ah以下である組電池。
【請求項2】
請求項1において、鉛蓄電池の上面に備えた正極端子と負極端子は、それぞれ2個である組電池。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかにおいて、前記鉛蓄電池は、高さ400mm以上である組電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、複数の鉛蓄電池を列方向にn個、行方向にm個(n、mはそれぞれ2以上且つn≧m)で収納ケースに収容し、各鉛蓄電池はその複数の同極性端子が行方向に配列され、列方向に隣り合う鉛蓄電池同士ならびに行方向に隣り合う鉛蓄電池同士は、それぞれ異極性端子が相対するように配列されている組電池。
【請求項5】
請求項4において、列方向の隣り合う鉛蓄電池の異極性端子間は列用接続かんで接続し、列方向末端における行方向に隣り合う鉛蓄電池の異極性端子間は、相対する異極性端子間を行用接続かんで接続するとともに、残りの異極性端子間を接続ケーブルで接続した組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−146222(P2011−146222A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5550(P2010−5550)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】