説明

組電池

【課題】複数の素電池を組み合わせてなる加熱型の組電池において、素電池間の熱伝導を良くし、安定した動作を実現することができる組電池を提供する。
【解決手段】複数の素電池が組み合わされて筐体内に収納され、室温より高い温度にて動作させられる組電池であって、複数の前記素電池が高熱伝導材料を介して接するように配置されている組電池とした。特に、室温より高い温度で溶融する溶融塩を電解質として用いた溶融塩電池に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温より高い温度にて動作させられる組電池の構造に関する発明であって、特に溶融塩電池に適した組電池の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電力貯蔵や自動車用などに用いられる比較的大型の二次電池の開発が進められている。所望の電圧および所望の容量を得るためには、複数の素電池を直並列に組み合わせて一体型に構成した組電池が用いられる。リチウムイオン電池やニッケル水素電池等は常温で使用されるが、充放電に伴う発熱が電池性能の劣化を招くことから、組電池全体あるいは、個々の素電池を冷却する手段が種々考えられている。たとえば、特許文献1には側面に波状、矩形状等の凹凸をもつ空冷スペーサーを用いるリチウム二次電池が開示されている。また、特許文献2には、組電池内に冷媒を導入する構造を備えたフレームを用いて組み立てられる組電池が開示されている。
一方、室温よりも高い温度に加熱して動作させる加熱型電池としては、ナトリウム硫黄電池が知られている。かかる電池は、複数のナトリウム硫黄単電池を集合させて断熱容器に収納した構造をなし、約300℃の高温で運転される。安全性の問題から各単電池の間には砂等を充填し、局所的な異常加熱や活物質の漏洩を防止している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−112301号公報
【特許文献2】特許第4062273号公報
【特許文献3】特開2000−215908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、従来の二次電池においては組電池を構成するに際して、異常加熱を防止し、あるいは運転時の温度を低く維持する必要がある。このため、組電池を構成する素電池間に熱がこもらないように、あるいは熱が波及しないように、素電池間に冷却構造や断熱構造が設けられている。
本発明者らは、100℃以下の温度で動作し、過熱時の安全性の高い溶融塩電池を開発している。かかる溶融塩電池は、常温では固体の塩を比較的低温に加熱して溶融塩とし、電解質として用いる。このため、加熱手段を備えることで、電解質を溶融状態に維持しつつ運転する必要がある。また、運転停止時から運転状態にするためには、できるだけ早く運転温度まで加熱することも求められる。個々の素電池毎に加熱手段を設ければ良いが、組電池全体の大きさが大きくなり、またコスト増となり好ましくない。さらに、加熱手段から近い部分と遠い部分での温度差が生じると、電解液である溶融塩の温度にばらつきが生じる。この結果、電池の内部抵抗の不均一が発生し、特定の電池のみに過大な電流が流れるなどの負荷の分布による特性の低下、寿命の低下が生じることが判った。さらに温度分布が大きい場合には、一部の電池の溶融塩が固化したり、過熱分解したりする可能性も生じ得る。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、複数の素電池を組み合わせてなる加熱型の組電池において、素電池間の熱伝導を良くし、安定した動作を実現することができる組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願発明の組電池は、複数の素電池が組み合わされて筐体内に収納され、室温より高い温度にて動作させられる組電池であって、複数の前記素電池が高熱伝導材料を介して接するように配置されていることを特徴とする組電池とした(請求項1)。本発明によれば、素電池間の熱伝導が良くなるため、隣接する素電池の温度が均衡しやすく、結果として組電池全体の温度が均一に安定し易い。このため、電池寿命向上、電池立ち上り時間短縮、レート特性向上(電解質全体が良好に動作し、電流密度が上げられる)などの効果がある。
【0007】
特に、素電池が室温より高い温度で溶融する溶融塩を電解質として用いた溶融塩電池であると、本発明の効果が著しく好ましい(請求項2)。特に、内部に電熱ヒーターを設けた溶融塩電池では、電熱ヒーターに近い部分は高温となり、遠い部分は低温となるので、溶融塩電池内の温度が不均一となりやすい。一般に、溶融塩は温度が高いほど導電性が向上するので、温度が高いほど例えば溶融塩電池の出力性能は向上する。内部の温度が不均一な状態で溶融塩電池を使用した場合は、内部の温度の内で低い方の温度が溶融塩電池の性能に大きく影響してしまう。また電池モジュール内の高温の部分は、過充電又は過放電の状態になり易く、高温部分の劣化が早くなる。本発明のように素電池間の熱伝導を良くし、組電池全体の温度を均一に安定させることで、溶融塩電池全体の効率を上げ、また寿命を延ばすことが可能となる。
【0008】
ここで、高熱伝導材料としては、金属、樹脂などが考えられ、たとえばアルミニウム等の熱伝導率の高い金属板も好ましく用いられる。しかし、金属板のような硬質の部材においては素電池ケースとの間に隙間が生じ易く、ケース表面に凹凸が存在する場合には特に隙間が避けられない。そこで、変形しやすく弾性のあるような樹脂性の板を用いることも好ましい。例えば、ゴムや樹脂中に金属粉等の粒子を分散させたシートなどが適用できる。金属板に比して熱伝導率は劣るものの、ケースに密着することにより効率の良い熱伝達が期待できる。
【0009】
さらに好ましくは、高熱伝導材料はペーストであり、前記素電池同士が密着するように前記素電池間に介在していると良い(請求項3)。ペーストであれば隣接する素電池表面を隙間なく埋めることができ、また薄く塗布することで隣接する素電池同士の距離を極力短く密着配置することができる。さらに素電池の熱膨張、収縮にも追随が容易とできるため好ましい。ペーストは素電池同士の組み立て時にペースト状であることで塗布できるが、塗布後は固化するものでも良い。
【0010】
このような高熱伝導材料として高熱伝導粉末を分散させたペーストが特に好ましく用いられる。金属粉末を分散させたペーストが好ましく、例えば銀ペーストや銅ペーストを用いることができる。特性として動粘性値20〜500mm/秒、熱伝導度1〜25W/m・Kのものが、塗布の作業性と熱伝導の効果の点で好ましく用いられる。放熱用シリコーン(ゴムシートやオイル等)も好ましい。また、オイル状またはグリース状のシリコーン類や流動性パラフィン類等に、カーボンナノチューブ等の炭素系粉末、あるいは窒化ケイ素粉末等を混合したものも用いることができる。その他、ゲル状もしくはゴム状の固体であっても良い。
【0011】
また、素電池間の熱伝導の効果を上げるため、ケースの材質は金属が好ましく、ケースの軽量化の要請や耐食性等も考慮すると、特に、アルミニウム、マグネシウムが好ましく用いられる。素電池の面同士がペーストを介して密着する様に、平面の加工精度を高くすることが好ましい。結果として、結果として、表面粗さRaを5μm以下に加工すると密着の観点から好ましい。さらに、素電池ケースは略直方体形状であり、前記密着される面とは異なる面に、電極を有するようにすると、熱伝達に寄与する接触面積を大きく取ることができるため好ましい。組電池の構成において、素電池には互いを直列または並列に接続するための電極や互いを固着するための連結機構などが必要である。また、端子の他に圧力弁の様な突起部、ケースの蓋の噛みあわせや溶接部など、わずかに盛り上がる箇所などが存在し得る。このような突起部を隣接する素電池と対向する面に有さない構造とすることが密着させる上で好ましい。特に、電極は外部に接続する配線等が必要になるため、対向する面側に存在すると、密着構造を構成し難い。最も好ましくは、対向する面には何も設けない構造が良いが、突起部が存在しても、それが互いに嵌合したり、突起部を避ける構造となって、密着する平面を十分に確保できる構造であっても良い。なお、ここで略直方体としたのは、全体的に直方体であるが端子部や蓋部等の細部は平面でないために厳密な直方体では無いという意味である。
【0012】
さらに、素電池が密着する方向に素電池を加圧する加圧手段を筐体内に有することが好ましい(請求項4)。密着の効果が高まるからである。筐体内には筐体自体がその構造の一部として加圧手段を有する場合も含まれる。また、上述の通り素電池を加熱するヒーターを備える場合に密着の効果が発揮されやすい(請求項5)。ヒーターは特に限定されないが板状ヒーターであると構成が容易であり、素電池の側面(例えば最も面積が大きく鉛直な面)に平行になる様に組電池の中に複数個設置しやすい。ヒーターとしては、セラミックヒーター等が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の素電池を組み合わせてなる加熱型の組電池において、素電池間の熱伝導を良くし、安定した動作を実現することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る組電池の一例としての全体構造を説明する斜視図である。
【図2】図1のA−A’部で切った断面を模式的に示した図である。
【図3】本発明に係る組電池の一例として、図1に用いる単位組電池の構成を説明する図である。
【図4】本発明の組電池に用いる素電池の一例としての溶融塩電池の構成を示す図であり、Aは溶融塩電池の内部構成を模式的に示す上面図、Bは同縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。図1は、本願発明に係る組電池の全体構造を説明する斜視図であり、内部を説明するために一部を開口して表現している。図1は、素電池が4個直列に接続されてなる単位組電池を9個並列に接続されてなる組電池の構成例である。図1において、組電池10を構成する筐体2内には、9個の単位組電池1が収納されている。単位組電池1は直方体形状であり、両端部側面に充放電のための端子が形成されている。本例において筐体2の大きさは700×280×420mmである。9個の各単位組電池1は、並列に並べられ、接続端子板4aおよび4bにボルト5によりそれぞれ固定されて電気的に並列に接続されている。接続端子板はその端部を筐体2の外部に引き出す構造になっており、接続端子板4aがプラス極、接続端子板4bがマイナス極として利用される。また各単位組電池1は複数のヒーター3により加熱される。ヒーターは外部からの配線(図示せず)により通電され、その発熱により組電池10を室温よりも高温状態に維持できるように加熱する。温度調節は温度センサと制御回路による既知の制御手段により行うことができる。
【0016】
図2を用いて内部構成をさらに説明する。図2は図1のA−A’部で切った断面を模式的に示した図である。筐体2の内面は断熱材7に覆われ、筐体内全体を保温するように構成されている。筐体2および断熱材7の材質は特に限定されず、組電池全体の機械的保護、保温等の観点で選択される材料を用いることができる。たとえば筺体2をアルミニウム合金で構成すると軽量化および強度の両立の点で好ましい。内部には9個の単位組電池1が並べられ、その3個毎の単位組電池間に、および両端側面にヒーター3として板状ヒーターが配置されている。単位組電池1およびヒーター3の間には、互いの隙間を埋め、密着するように高熱伝導材料としてのペースト8の薄い層が設けられている。また、これら互いの密着を確実にするために、筐体2内には板バネ6が設けられて単位組電池の並列方向に加圧付勢されている。ヒーターは板状ヒーターを例示しており、これに限定されるものではないが、個々の単位組電池、あるいはその構成要素となる個々の素電池を効率よく、また出来るだけ均一に加熱するために、単位組電池の側面と同程度に面積の大きな板状ヒーターが好ましい。また配置は本例のように単位組電池の間に挟み込むものに限定されず、またその数も本例に限定されるものではない。加熱の点で最も好ましくは個々の単位組電池毎にヒーターを設ける方が良い。しかしヒーターの数を増やすと組電池全体のコスト増および容積増を招く。逆に例えばヒーターを筐体内面だけに設けることもでき、コストや容積の点で好ましいが、内蔵する個々の電池とヒーターとの距離による温度差が生じやすくなる。本例はそのバランスを考慮して3個毎の単位組電池1の間にヒーター3を配置した例を示したものである。
【0017】
本例において、単位組電池1の隣り合う面同士(例えば図2の最も右に図示される単位組電池1の面11aとその左となりの単位組電池1の面11b)は電極等の突起を有さない平面で構成されており、間にペースト8を介して互いに密着している。板バネ6はペーストを介して並べられた単位組電池1とヒーター3のそれぞれの間に隙間が生じないように付勢するものである。同様の加圧手段であれば板バネに限定されるものではない。加圧手段を設けることにより、密着の程度がさらに向上し、また組電池全体の振動や断熱材等の長期的な変形などがあっても密着が崩れない効果がある。
【0018】
ペーストの塗布は、隣り合う組電池の向き合う面の一方または双方にペーストを塗布した後、密着させて板バネで押圧固定する。加熱が必要なペーストの場合は、電池に許容される温度範囲内、例えば190℃未満等で全体を加熱する。塗布のためのペーストとしては、シリコーンオイルに銀粉末を分散させたものが例示でき、特性として動粘性値20〜500mm/秒、熱伝導度1〜25W/m・Kのものが挙げられる。
【0019】
単位組電池の表面は金属が好ましい。単位組電池の表面は後述の例のように単位組電池を構成する素電池の表面そのものであっても良いし、素電池の組を収納する別なケースの表面であってもよい。金属は熱伝導が良好であることから好ましく用いられる。電池全体の軽量化も考慮すると、ケースにはアルミニウムまたはその合金が好ましく用いられる。さらに軽量化を目的としてマグネシウム合金を用いることも好ましい。また、ケースの前記密着される面の表面粗さRaが5μm以下であると好ましい。密着の度合いが高まり、効果的に熱が伝わるからである。本例では具体的にはアルミニウム合金(材質A5052)を用い、表面を研磨して、表面粗さをRa4.8μmとした。ここで表面粗さRaはJIS−B0601−2001によって測定される算術平均粗さ(高さ)である。
【0020】
上記構成において素電池の形状は直方体で無くても良い。隣り合う素電池間の熱伝達を良くする意味から、対向する面積が広い方が好ましい。たとえば、アルミニウム箔などの金属箔やラミネートシートなどを袋状にした変形可能なケースなども例示される。これらの場合にもペーストを表面に塗布して素電池の袋同士を密着させることで熱伝導を良くすることができる。
【0021】
このように単位組電池同士を高熱伝導材料を介して密着させる構成とすることで、以下の効果がある。まず、室温状態から加熱して電池を作動させる場合において、ヒーター3のそれぞれに通電を開始してから、9個の単位組電池が動作可能な温度になる過程を考える。ヒーター3自体が均一に発熱すると過程した場合であっても、ヒーターに接している単位組電池と、ヒーターとは直接には接していない単位組電池とでは、ヒーターに接している単位組電池の方が先に温度が上がる。組電池全体が作動するには、最もヒーターから遠い部分での温度が動作可能な温度に達するのを待つ必要がある。単位組電池同士の熱伝導が悪い場合には、これらの温度差が顕著に表れ、ヒーター通電開始から組電池の動作開始までに時間がかかる。単位組電池同士の熱伝導が良好な構造とすることで、このような時間を短くすることが可能となる。また、運転状態においても、高熱伝導材料により熱伝導を良好に保つことで、単位組電池同士の温度差を小さく保つことができ、全体の特性を効果的に引き出すことが可能となる。
【0022】
図3は、上記の単位組電池1の内部構造を説明する縦断面図である。単位組電池1は、複数の素電池を電気的に直列接続して電池電圧を高くした組電池である。単位組電池自体も本発明の組電池となる。本例では図3のように4つの素電池20を連結した例を示すが、連結数は4つに限定されるものではない。例えば素電池が電圧3Vの溶融塩電池であれば連結数を4つとすることで、単位組電池としての公称電圧が12Vとなり、既存の自動車用鉛蓄電池等に相当する電池として使用でき、また既存の電池に用いられる機器(例えば充電器)の流用が容易にできる点で好ましく用いられる。図4は、図3を構成する素電池20としての溶融塩電池の構造を説明する図であり、図4のAは溶融塩電池の内部構成を模式的に示す上面図、Bは同溶融塩電池の構成を模式的に示す縦断面図である。
【0023】
まず図4および図3を参照して素電池20から説明する。本例の溶融塩電池では、複数(図では6つ)の矩形平板状の負極21と、袋状のセパレータに各別に収容された複数(図では5つ)の矩形平板状の正極41とが、上下方向に沿う状態で交互に対向して横方向(図では前後方向)に並設されている。1組の負極21、セパレータ31及び正極41が1つの発電要素を構成し、本実施の形態では5つの発電要素及び1つの他の負極21が積層されて、直方体状のアルミニウム合金からなる電池容器内に収容されている。電池容器は、上面に開口部を有する容器本体25と、容器本体25の開口部の内周に形成された段部に内嵌されて開口部を塞ぐ矩形平板状の蓋体26とを有している。電池容器の内側は、フッ素樹脂コーティングによって絶縁処理が施されている。
【0024】
負極21のそれぞれの上端部には、容器本体25の短辺側に位置する一方の側壁25Aに近い側に、電流を取り出すための矩形のアルミニウム合金からなる接続タブ22の下端部がそれぞれ接合されている。接続タブ22及びその上部は、平面視が側壁25B側に開いたコの字状をなす接続部材23が有する2つの腕部231及び231の相対向する2面に夫々溶接されている。接続部材23は、面方向が腕部231と平行な矩形の接続板部232を有し、該接続板部232の上部中央には、側壁25Aに開設された貫通孔25Hと対向する取付孔233が設けられている。
【0025】
正極41のそれぞれの上端部には、容器本体25の短辺側に位置する他方の側壁25Bに近い側に、電流を取り出すための矩形のアルミニウム合金からなる接続タブ42の下端部がそれぞれ接合されている。接続タブ42及びその上部は、平面視が側壁25A側に開いたコの字状をなす接続部材43が有する2つの腕部431及び431の相対向する2面に夫々溶接されている。接続部材43は、面方向が腕部431と平行な矩形の接続板部432を有し、該接続板部432の上部中央には、側壁25Bに開設された貫通孔25Hと対向する取付孔433が設けられている。このように、上述した5つの発電要素及び1つの負極21が電気的に並列接続されて、電池容量が大きい溶融塩電池を構成する。
【0026】
負極21は、負極活物質である錫がメッキされたアルミニウム箔からなる。アルミニウムは、正/負各電極の集電体に適した材料であり、且つ溶融塩に対して耐腐食性を有する。負極21は活物質を含めた厚さが約0.14mmであり、縦方向及び横方向夫々の寸法が、100mm及び120mmである。なお容器本体の大きさは150×180×38mmである。
【0027】
正極41は、アルミニウム合金の多孔質体を集電体とし、該集電体にバインダと導電助剤と正極活物質であるNaCrOとを含む合剤を充填して、約1mmの板厚に形成してある。正極41の縦方向及び横方向夫々の寸法は、デンドライトの発生を防止するために、負極21の縦方向及び横方向の寸法より小さくしてあり、正極41の外縁が、セパレータ31を介して負極21の周縁部に対向するようになっている。尚、正極41の集電体は、例えば、繊維状のアルミからなる不織布であってもよい。
【0028】
セパレータ31は、溶融塩電池が動作する温度で溶融塩に対する耐性を有するフッ素樹脂の膜からなり、多孔質に且つ袋状をなすように形成されている。セパレータ31は、負極21及び正極41と共に、直方体状の電池容器内に満たされた溶融塩30の液面下約10mmの位置から下側に浸漬されている。これにより、多少の液面低下が許容される。
【0029】
接続部材23及び43の夫々は、負極21及び正極41と外部の電気回路とを接続するための外部電極の役割を果たすものであり、溶融塩30の液面より上側に位置するようにしてある。溶融塩30は、FSI(ビスフルオロスルフォニルイミド)又はTFSI(ビストリフルオロメチルスルフォニルイミド)系アニオンと、ナトリウム及び/又はカリウムのカチオンとからなるが、これに限定されるものではない。
【0030】
上述した構成において、外部の加熱手段を用いて電池容器全体を85℃〜95℃に加熱することにより、溶融塩30が融解して、接続部材23,43を介しての充電及び放電が可能となる。
【0031】
以下、単位組電池1について図3および図4を参照して説明する。素電池20としての4つの溶融塩電池が、隣り合う容器本体25の短辺側の側壁同士が高熱伝導材料9を介して接するように配置される。この場合は接触する側壁の面積が大きくはないため、高熱伝導材料を必ずしも用いる必要はない。しかし、高熱伝導材料を介して密着することにより、一定の前述の効果が得られる。各容器本体25内には、接続部材23,43によって並列接続された前記5つの発電要素(負極21、セパレータ31に包まれた正極41)及び1つの負極21と溶融塩30とが組み込まれている。対向する側壁の上部中央には、横方向に貫通する貫通孔25Hが設けられており、この貫通孔25Hにテフロン(登録商標)等からなる絶縁性のブッシング(軸受筒)を解して、アルミニウム合金からなるボルト51が挿通されている。ボルト51は、同じくアルミニウム合金からなるナット52により締め付けられ、素電池20が固定されると共に電気的に直列に接続される。
【0032】
次に、溶融塩電池に用いた導電材料について説明する。溶融塩30のような電解質に接する部位にイオン化傾向が異なる金属(導電材料)を置いた場合、一方の金属から他の金属に電流が流れることによって電蝕が発生する。このため、本実施の形態では、上述したように、接続タブ22,42、接続部材23,43、ボルト51及びナット52は、負極21及び正極41と同種の導電材料(本実施の形態ではアルミニウム合金)を含むようにしてあり、電蝕の発生が防止されている。上述したように、電池容器もアルミニウム合金からなる。
【0033】
以上の通り、素電池20同士はその電池容器の側面が高熱伝導材料を介して接するように配置されて単位組電池1を構成し、また、単位組電池1同士はその構成要素としての素電池20の側面を高熱伝導材料を介して接するように配置されて全体の組電池10を構成している。これにより、加熱手段であるヒーター3により生じた熱が、それぞれの面において高熱伝導材料を介して隣接する単位組電池あるいは素電池に効率よく伝わる。よって、このように加熱手段を伴い常温よりも高温の状態に保持して運転される電池に特有の効果として、組み込まれた各素電池の温度を均一に保ち、また短時間で昇温することにより運転開始時間を短くすることができるなどの利点が得られる。
【0034】
以上本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0035】
1 単位組電池
2 筐体
3 ヒーター
4a,4b 接続端子板
5 ボルト
6 板バネ
7 断熱材
8 ペースト
9 高熱伝導材料
10 組電池
11a,11b 面
20 素電池
21 負極
22 接続タブ
23 接続部材
231 腕部
232 接続板部
233 取付孔
25 容器本体
25A,25B 側壁
25H 貫通孔
26 蓋体
30 溶融塩
31 セパレータ
41 正極
42 接続タブ
43 接続部材
431 腕部
432 接続板部
433 取付孔
51 ボルト
52 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素電池が組み合わされて筐体内に収納され、室温より高い温度にて動作させられる組電池であって、
複数の前記素電池が高熱伝導材料を介して接するように配置されていることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記素電池は、室温より高い温度で溶融する溶融塩を電解質として用いた溶融塩電池であることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記高熱伝導材料はペーストであり、前記素電池同士が密着するように前記素電池間に介在していることを特徴とする請求項1または2に記載の組電池。
【請求項4】
前記素電池が密着する方向に前記素電池を加圧する加圧手段を前記筐体内に有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項5】
前記筐体内に前記素電池を加熱するヒーターを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−174572(P2012−174572A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36598(P2011−36598)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】