説明

自動車のための電子的に作動可能なロック装置

【課題】自動車の主電源が故障していても、ロックを解錠できるようにする。
【解決手段】本発明は、主電源手段(3)およびロックのための緊急給電手段に接続されており、この主電源手段が故障した場合に、電気的に作動可能な自動車用ロック装置に関し、これら緊急給電手段は、電力保存部品(6)と、電気エネルギー保存手段(9)と、ユーザーの識別を保証する識別要素(4)(8D)とを備え、識別要素は、ユーザーを識別するための信号を発生できる要素と通信する少なくとも1つの信号受信機(4)を備えている。
一旦識別がなされ、認証された場合に、エネルギー保存手段(9)が前記電力保存部品(6)に給電するように、前記エネルギー保存手段(9)の接続が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主電源手段、およびこの主電源手段が故障した場合にロックに緊急給電する手段に接続されており、これら緊急給電手段は、電力保存部品を備えている自動車用の、電気的に作動可能なロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、スーパーコンデンサから成る電力保存部品を使用することを提案している。このスーパーコンデンサは、再充電可能で、かつコンパクトなエネルギー源を構成している。
【0003】
自動車が通常に使用されており、主電源手段が正常に作動している限り、このような電子部品は不要である。この主電源手段は、スーパーコンデンサを恒久的に充電し続ける。主電源手段が故障した後、主電源手段がロックを開けるための電気エネルギーを供給できなくなると、スーパーコンデンサが多数の開サイクルの間でロックを作動できるよう、電子カードが自動的にスーパーコンデンサを切り替える。
【0004】
かかる緊急装置は、例えば事故の場合のように、主電源手段が故障した後、比較的すぐにロックを開ける場合に、信頼できるものである。
【0005】
しかし、故障によって主電源手段が停止したときからロックを開けるまでに、比較的長い時間が経過する場合、受動状態にあるスーパーコンデンサは、比較的短時間のうちに放電してしまうので、このようなスーパーコンデンサが放電し、ロックが緊急機能手段を使用できなくなることがある。例えば自動車が駐車した場合、またはより一般的には、数日間使用しない場合が、このような場合に当てはまる。
【0006】
このような問題を解消するために、緊急手段に、電力保存部品に接続できる電子エネルギー保存手段を設けることが想到されている。
【0007】
このような例として、特許文献2および特許文献3に記載されているようなロックがある。
【0008】
これらの特許文献によれば、主電源手段が故障した場合、電力保存手段をオンにし、自動車の把手に結合されている電気エネルギー保存手段によって、これを充電できる。次に、エネルギー保存手段は、電力保存手段を充電し、十分な充電スレッショルドに一旦達すると、電力保存手段は、リモコンによって識別プロセスを不活性化(イネーブル)できる信号受信機に給電する。ロックの給電は、この受信機を介して行われる。
【0009】
ドアを開けるのに必要な動作を行うと、すなわち、把手を操作すると、エネルギー保存手段はイネーブルされ、1回の意図的な動作で、開放動作が実行される。
【特許文献1】ヨーロッパ特許第1130202号
【特許文献2】米国特許第5,497,641号
【特許文献3】米国特許第6,056,076号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、かかる緊急給電方法には、次のような技術的な問題がある。
【0011】
主電源手段が故障した場合に把手を操作すると、エネルギー保存手段はイネーブルされ、このエネルギー保存手段は、電力保存手段を再充電する。識別を行えるのは、この電力保存手段によって、信号受信機に給電されるときに限られる。
【0012】
その結果、把手を操作する不正を行う人がいると、エネルギー保存手段が放電してしまうことがあり得る。このことは、特に電池バッテリーのような比較的簡単なエネルギー保存手段を使用する時に不利である。
【0013】
このような電池バッテリーの寿命は、自動車の寿命と一致させなければならない。すなわち、約10年間の寿命としなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような問題を克服するために、本発明は、主電源手段、およびこの主電源手段が故障した場合に、ロックに緊急給電する手段に接続されており、この緊急給電手段は、電力保存部品と、この電力保存部品に接続できるエネルギー保存手段と、ユーザーの識別を保証し、ユーザーを識別するための信号を発生できる要素と通信する少なくとも1つの信号受信機を有する識別要素とを備える、自動車用の電気的に作動可能なロック装置であって、一旦識別がなされ、認証された場合に、前記エネルギー保存手段が前記電力保存部品に給電するように、前記エネルギー保存手段の接続を制御するようになっていることを特徴とする、電気的に開放可能なロック装置を提案するものである。
【0015】
本発明の装置は、電気エネルギーの点で特に経済的である。
【0016】
好ましい実施例によれば、前記電力保存部品は、少なくとも1つのスーパーコンデンサを備えている。
【0017】
前記エネルギー保存手段は、直接前記識別要素に接続できることが好ましい。
【0018】
この場合、自動車に配置された外部制御ボタンにより、前記エネルギー保存手段は、不活性化(イネーブル)されることが好ましい。
【0019】
変形例によれば、前記識別要素は、キーによって操作されるシリンダをも備え、前記シリンダ内に収容された接点を操作することにより、前記エネルギー保存手段は、イネーブルされる。
【0020】
前記エネルギー保存手段は、少なくとも1つの電池、または蓄電式バッテリーによって構成されていることが好ましい。
【0021】
前記電力保存部品は、前記ロックに、直接、かつ電気的に接続されていることが好ましい。
【0022】
以下、本発明の好ましい実施例を示す図面を参照し、本発明について、以下により詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
種々の実施例において、電気的にアシストされた開放を行う自動車用ロック1は、外側からの開放、および内側からの開放を制御するように、外側把手2Aおよび内側把手2Bにリンクされている。このロックは、ロックを主電源手段および制御手段に接続するためのインターフェースを形成する電子カードを備えている。
【0024】
従って、このロックは、主電源手段、通常は自動車に搭載され、自動車に給電を行うバッテリー3に接続されている。このバッテリー3は、信号識別要素4、通常はRF受信機と、ロックの施錠および解錠を操作するロッキング管理電子回路5と、電力保存部品6、好ましくはスーパーコンデンサに給電するようになっている。
【0025】
電力保存部品6、すなわちスーパーコンデンサは、ロック1に電気的に直接接続されている。万一バッテリーが故障した場合、ロックの電子カードは、多数の開放サイクルの間でロック1を作動できるよう、スーパーコンデンサ6を自動的に切り替える。従って、このような緊急動作は、ユーザーにとってトランスペアレントである。
【0026】
既に分かっているように、このことは、緊急サービスが極めて短時間うちに行われる事故の場合のように、バッテリー3が故障してから、このような開放命令が発せられるまで経過する時間が、過度に長くないことを前提としている。
【0027】
次に、ヨーロッパ特許第1130202号に記載されているように、部品6は、自動車のドアを開けるのに必要な緊急給電を行う。
【0028】
図1に示す第1実施例によれば、RFリモコン7Aを使用して識別が行われる。
【0029】
バッテリー3が正常に作動している正常な作動モードでは、ユーザーは、自動車内に配置されており、RF受信機4と通信するこのリモコン7Aを作動させる。識別器が一旦認識されると、この受信機4は、管理電子回路5を切り替え、ロック1を解錠する。把手2Aが操作されると、バッテリーはロック1に給電し、ロック1を開放できる。
【0030】
万一バッテリーが故障した場合、ロックの電子カードは、スーパーコンデンサ6に自動的に切り替え、スーパーコンデンサは、例えば事故の場合でも、ロック1を開けることができる。
【0031】
例えば自動車が長時間駐車した後、このスーパーコンデンサ6が放電した場合、ユーザーがリモコン7Aを操作しようと試みても、なんの結果も得られない。
【0032】
ユーザーが意図的な動作により、好ましくは、自動車の外側にあるボタン10を操作すると、エネルギー保存手段9はイネーブルされ、このエネルギー保存手段9は、切り替えステージ8Aを介して、まず受信機4に給電する。
【0033】
次に、リモコン7Aと受信機4との間のRFリンクにより識別を行うことができる。ユーザーが認識されたときにしか、エネルギー保存手段が管理電子回路5およびスーパーコンデンサ6への給電を行うための切り換えを行うことができず、スーパーコンデンサ6は、数秒のうちに短時間で再充電される。
【0034】
従って、ボタン10への最初の意図的な動作の直後に、ユーザーはリモコンへの従来の動作により識別され、ロック1の解錠が可能となる。次に、把手2Aを操作することにより、再充電されたスーパーコンデンサ6によって、ロック1を開放できる。
【0035】
図2に示す第2実施例によれば、緊急機械式キー7Bが設けられたRFバッジを使用して識別が行われる。
【0036】
通常の作動モードにおいて、バッテリー3が正常に作動しているとき、ユーザーは、自動車からあるスレッショルド距離でアプローチし、ユーザーのRFバッジは、車両内部に配置されたRF受信機4と通信する。
【0037】
識別器が一旦認識されると、この受信機4は、管理電子回路5がロック1を解錠させるように、管理電子回路5を切り換える。把手2Aが操作されると、バッテリーはロック1に給電し、ロック1を開けることができる。
【0038】
バッテリーが故障した場合に、例えば事故が生じると、スーパーコンデンサ6がロック1を開けることができるように、電子カードは、スーパーコンデンサ6を自動的に切り換える。
【0039】
例えば自動車が、長時間の駐車により、このスーパーコンデンサが放電している場合、ユーザーが持っているバッジ7Bがあっても、なんの結果も得られない。
【0040】
次にユーザーは、自分のバッジ(7B)が着用しているか、またはバッジから離間している機械式キーを使用し、このキーをドア内のシリンダに挿入する。このシリンダ8Bは、エネルギー保存手段9を可能にする切り替えを実行する接点を備え、この切り替えにより、エネルギー保存手段9は、逐次または同時に受信機4、管理電子回路5およびスーパーコンデンサ6に給電を行い、スーパーコンデンサ6は急速に再充電される。
【0041】
シリンダ内での機械式キーの操作によるこのような意図的な動作の直後に、ユーザーのバッジと受信機4との間のRFリンクにより、ユーザーが識別され、ロック1の解錠が可能とされる。次に、把手2Aを操作することにより、再充電されたスーパーコンデンサ6によって、ロック1を開けることができる。
【0042】
図3に示す第3実施例によれば、RFバッジ7Cを使って識別が行われる。このバッジには、緊急機械式キーを設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0043】
通常の作動モードにおいて、バッテリー3が正常に作動しているとき、ユーザーは、自動車からあるスレッショルド距離でアプローチし、ユーザーのRFバッジは車両内部に配置されたRF受信機4と通信する。
【0044】
識別子が一旦認識されると、この受信機4は、管理電子回路5がロック1を解錠させるように、管理電子回路5を切り換える。把手2Aが操作されると、バッテリーはロック1に給電し、ロック1を開けることができる。
【0045】
バッテリーが故障すると、例えば事故が生じると、スーパーコンデンサ6がロック1を開けることができるように、電子カードは、スーパーコンデンサ6を自動的に切り換える。
【0046】
例えば自動車が、長時間の駐車により、このスーパーコンデンサが放電している場合、ユーザーが持っているバッジ7Bがあっても、なんの結果も得られない。
【0047】
意図的な動作、好ましくは自動車の外側にあるボタン10を操作することにより、ユーザーは、エネルギー保存手段9をイネーブルし、このエネルギー保存手段9は、まず切り替えステージ8cにより受信機4に給電する。
【0048】
次に、バッジ7Cと受信機4との間のRFリンクにより識別を行うことができる。ユーザーが認識されたときにしか、エネルギー保存手段が管理電子回路5、およびスーパーコンデンサ6への給電を行うための切り換えを行うことはできず、給電により、スーパーコンデンサ6は数秒のうちに急速に再充電される。
【0049】
従って、ボタン10への最初の故意の動作の直後に、リモコンへの従来の動作によりユーザーが識別され、ロック1の解錠が可能となる。
【0050】
次に、把手2Aを操作することにより、再充電されたスーパーコンデンサ6によって、ロック1を開放できる。
【0051】
本発明によれば、電気エネルギー保存手段9を、昇圧変換器に結合された一組の電池または蓄電式バッテリー、または1つの電池もしくは1つの蓄電式バッテリーとしてもよい。
【0052】
この電気エネルギー保存手段は、自動車の内部に設けてもよいし、またはポータブルとし、自動車の外部に接続できるようにしてもよい。
【0053】
既に理解されていると思うが、本発明は、可能な場合には、緊急機械式キーと共にRFリモコンまたはRFバッジによる識別に関連したロック、またはキーとシリンダによる機械式識別に関連したロックにも適用できる。
【0054】
更に本発明は、ドアモジュールに挿入されたロックにも適用できる。このようなロックでは、自動車のドア内に、識別要素とロッキング管理電子回路とが一体化されている。
【0055】
本発明は、任意のバッジタイプの識別器、またはリモコンタイプの識別器にも適用できる。例えば、受信機とRFバッジの代わりに、ホール効果センサタイプの無接点近接検出器をトリガーする識別器により付勢される、トランスポンダを備えるシステムにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】RFリモコンを使用して識別を行うようにした、本発明にかかわるロック装置の作動を示すブロック図である。
【図2】RFリモコンおよび緊急機械式キーが設けられたバッジを使って識別を行うようにした、本発明にかかわるロック装置の作動を示すブロック図である。
【図3】いわゆるハンズフリーRFバッジを使用して識別を行うようにした、本発明にかかわるロック装置の作動を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ロック
2A 外側把手
2B 内側把手
3 バッテリー
4 識別要素
5 ロック管理電子回路
6 電力保存部品
7A リモコン
8A 切り替えステージ
9 エネルギー保存手段
10 ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源手段(3)、およびこの主電源手段(3)が故障した場合に、ロックに緊急給電する手段に接続されており、この緊急給電手段は、電力保存部品(6)と、この電力保存部品(6)に接続できるエネルギー保存手段(9)と、ユーザーの識別を保証し、ユーザーを識別するための信号を発生できる要素と通信する少なくとも1つの信号受信機(4)を有する識別要素(4)(8D)とを備える、自動車用の電気的に作動可能なロック装置において、
一旦識別がなされ、認証された場合に、前記エネルギー保存手段(9)が前記電力保存部品(6)に給電するように、前記エネルギー保存手段(9)の接続を制御するようになっていることを特徴とする、電気的に開放可能なロック装置。
【請求項2】
前記電力保存部品(6)は、少なくとも1つのスーパーコンデンサを備えていることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記エネルギー保存手段(9)は、直接前記識別要素(4)に接続できるようになっていることを特徴とする、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
自動車に配置された外部制御ボタン(10)により、前記エネルギー保存手段(9)は、不活性化されるようになっていることを特徴とする、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記識別要素は、キーによって操作されるシリンダ(8B)を備え、このシリンダ(8B)内に収容された接点を操作することにより、前記エネルギー保存手段(9)は、不活性化されるようになっていることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項6】
前記エネルギー保存手段(9)は、少なくとも1つの電池または蓄電式バッテリーによって構成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記電力保存部品(6)は、前記ロック(1)に、直接かつ電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−513844(P2009−513844A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518211(P2006−518211)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051334
【国際公開番号】WO2005/014960
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(505205661)ヴァレオ セキュリテ アビタクル エス・ア・エス (16)
【Fターム(参考)】