説明

自走式二面草刈機

【課題】メインカッター及びサイドカッターへの動力伝達系の簡素化・合理化を図ることができるとともに、エンジンの始動操作性の向上等も図ることのできる自走式二面草刈機を提供する。
【解決手段】前輪11、後輪12、ハンドル13、メインカッター28、及び、駆動用のエンジン20が出力軸21を左右方向に向けた姿勢で配置された走行基体部10と、該走行基体部の左側にヒンジ15等を介して上下方向に傾動可能に連結されるとともに、サイドカッター38及び前記エンジンからの動力を前記サイドカッターに伝達するための動力伝達機構26が配置されたサイドカッター部40とを備えた自走式二面草刈機1において、前記エンジンの動力は、前記走行基体部における前記メインカッターの回転軸線Caと前記サイドカッターの回転軸線Cbとの間から取り出された後、左右に振り分けられて前記メインカッターと前記サイドカッターに伝達されるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインカッターを有する走行基体部に、上下方向に傾動可能にサイドカッター部が連結されてなる自走式二面草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自走式二面草刈機は、主として畦草刈りに使用するもので、通常、下記特許文献1にも見られるように、畦の上面に生えている草を刈り取るための短冊状のメインカッターを有する走行基体部の左側に、斜面(法面)に生えている草を刈り取るための短冊状のサイドカッターを有するサイドカッター部がヒンジ等を介して上下方向に傾動可能に連結されている。
【0003】
また、走行基体部には、走行用とカッター駆動用を兼ねるエンジンが出力軸を左右方向に向けた姿勢で後部側に搭載され、このエンジンの動力は、走行基体部の右側部に配置されたベルトプーリ式動力伝達機構を介して後輪に伝達され、さらに、前記ベルトプーリ式動力伝達機構からドライブシャフト及び回転軸線を直交する方向に変換するベベルギヤユニットからなるメインカッター用動力伝達機構を介してメインカッターに伝達されるとともに、走行基体部とサイドカッター部とを橋架するように配置されたドライブシャフト、ユニバーサルジョイント、及び回転軸線を直交する方向に変換するベベルギヤユニットからなるサイドカッター用動力伝達機構を介してやサイドカッターに伝達される。
【0004】
【特許文献1】特許第3459512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した如くの従来の自走式二面草刈機では、エンジンの動力を走行基体部の右側から取り出すようにされているため、メインカッター及びサイドカッターへの動力伝達系が長くて複雑なものとなる。また、エンジンのリコイルスタータは、動力取り出し側とは反対側の、走行基体部の左側、つまりサイドカッター部側(傾斜面側)に配置されることから、エンジンの始動操作がしづらいものとなっていた。この場合、通常の汎用エンジンでは、リコイルスタータを走行基体部の左側に配置すると、気化器のチョークが作業者から見てエンジンの前方(向こう側)に位置することになり、この点でも始動操作性が悪いものとなっていた。
【0006】
また、従来の自走式二面草刈機では、畦上から逸脱した際の復旧を容易にするため、走行基体部におけるメインカッターの回転軸線より後部側にエンジン(の主要部)が配置されているため、前輪には適正な荷重が加えられず、充分な直進安定性が得られないという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、メインカッター及びサイドカッターへの動力伝達系の簡素化・合理化を図ることができるとともに、エンジンの始動操作性の向上等も図ることのできる自走式二面草刈機を提供することにある。
【0008】
他の目的とするところは、前輪に適正な荷重を加えることができて、良好な直進安定性が得られるようにされた自走式二面草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る自走式二面草刈機は、基本的には、前輪、後輪、ハンドル、メインカッター、及び、走行用及び/又はカッター駆動用のエンジンが出力軸を左右方向に向けた姿勢で配置された走行基体部と、該走行基体部の左側にヒンジ等を介して上下方向に傾動可能に連結されるとともに、サイドカッター及び前記エンジンからの動力を前記サイドカッターに伝達するための動力伝達機構が配置されたサイドカッター部とを備える。
【0010】
そして、前記エンジンの動力は、前記走行基体部における前記メインカッターの回転軸線と前記サイドカッターの回転軸線との間から取り出された後、左右に振り分けられて前記メインカッターと前記サイドカッターに伝達されるようになっていることを特徴としている。
前記エンジンのリコイルスタータは、好ましくは、前記走行基体部における右側部に配置される。
【0011】
本発明に係るもう一つの自走式二面草刈機は、前輪、後輪、ハンドル、メインカッター、及び、走行用及び/又はカッター駆動用のエンジンが配置された走行基体部と、該走行基体部の左側にヒンジ等を介して上下方向に傾動可能に連結されるとともに、サイドカッター及び前記エンジンからの動力を前記サイドカッターに伝達するための動力伝達機構が設けられたサイドカッター部とを備えた自走式二面草刈機において、前記走行基体部における前記メインカッターの回転軸線より前部側に前記エンジンの主要部が配置されていることを特徴としている。
【0012】
好ましい態様では、前記走行基体部における前記メインカッターの回転軸線より後部側に走行用駆動源としての電動モータが配置される。
前記電動モータは、好ましくは、前記エンジンにより駆動される発電機が発生する電力を利用するようにされる。
他の好ましい態様では、前輪及び後輪が共に駆動輪とされる。
他の好ましい態様では、前進と後進の切換手段を備える。
【0013】
前記前後進切換手段は、好ましくは、前記ハンドルに設けられた前後進切換スイッチ)と、該前後進切換スイッチの操作状態に応じて前記電動モータの正転/逆転の切換制御を行う制御手段とで構成される。
前記前後進切換手段は、他に、HST等の油圧式変速機又はリバースギヤが組み込まれた機械式変速機で構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記の如くの構成とされた本発明に係る自走式二面草刈機では、エンジンの動力は、走行基体部におけるメインカッターの回転軸線とサイドカッターの回転軸線との間から取り出された後、左右に振り分けられてメインカッターとサイドカッターに伝達されるようになっているので、走行基体部の右側部からエンジンの動力を取り出すようにされた従来の自走式二面草刈機に比して、メインカッター及びサイドカッターへの動力伝達系を簡素化できる。
【0015】
また、エンジンのリコイルスタータが、走行基体部における右側部に配置されることにより、始動操作性が向上する。
【0016】
加えて、走行基体部におけるメインカッター(の回転軸線)より前部側にエンジン(の主要部)が配置されることにより、運転者が後部のハンドルを支持して操縦する際に、前後輪間の作用力が左右不均衡となる歩行型二面草刈機であっても、前輪に適正な荷重を加えることができるので、良好な直進安定性を付与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の自走式二面草刈機の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1、図2、図3、図4は、それぞれ本発明に係る自走式二面草刈機の一実施形態を示す平面図、右側面図、左側面図、底面図である。
【0018】
図示例の自走式二面草刈機1は、走行基体部10と、この走行基体部10の左側にヒンジ15等を介して上下方向に傾動可能に連結されたサイドカッター部40を備えている。
走行基体部10には、前部から後部にかけて順に、前輪11、カッター駆動用のエンジン20、メインカッター28、後輪12、V字ないしY時状のハンドル13が配置され、サイドカッター部40には、サイドカッター38が配置されている。メインカッター28とサイドカッター38は、平面視短冊状(図1、図4参照)で側面視逆皿形状(図2、図3参照)であり、サイドカッター38の下側には接地部材39が取り付けられている。
【0019】
エンジン20は、出力軸21を左右方向に向けた姿勢で、走行基体部10におけるメインカッター28の回転軸線Caより前部側に搭載されており、このエンジン20の動力は、出力軸21の左端部、すなわち、走行基体部10におけるメインカッター28の回転軸線Caとサイドカッター38の回転軸線Cbとの間から取り出された後、左右に振り分けられてメインカッター28とサイドカッター38に伝達されるようになっている。また、エンジン20のリコイルスタータ22(スタータハンドル22a)は、出力軸21の右端部、つまり、走行基体部10の右側部に配置されている。
【0020】
より詳細には、エンジン20の動力は、図1〜図4に加えて図5を参照すればよくわかるように、走行基体部10の左側部に配置されたテンションクラッチ付きのベルトプーリ式動力伝達機構25、ドライブシャフト及び回転軸線を直交する方向に変換するベベルギヤユニットからなるメインカッター用動力伝達機構23を介してメインカッター28に伝達されるとともに、走行基体部10とサイドカッター部40とを橋架するように配置されたドライブシャフト、ユニバーサルジョイント、及び回転軸線を直交する方向に変換するベベルギヤユニットからなるサイドカッター用動力伝達機構26を介してやサイドカッター38に伝達される。
【0021】
また、前記走行基体部10におけるメインカッター28の回転軸線Caより後部側には、走行用駆動源としての電動モータ30が配置されている。この電動モータ30は、図5に示される如くに、エンジン20により駆動される発電機50が発生する電力を利用するようにされている。なお、発電機50が発生する電力はバッテリ90(図5参照)にも蓄電されるようになっている。
【0022】
この電動モータ30の回転駆動力は、図2及び図5に示される如くに、ベルトプーリ式あるいはチェーン式の後輪用巻掛伝動機構31を介して後輪12に伝達されるとともに、中継用巻掛伝動機構32及び前輪用巻掛伝動機構33を介して前輪11に伝達される。したがって、本実施例の自走式二面草刈機1は、前輪11及び後輪12が共に駆動輪とされている。なお、メインカッター28の地上高を調整するため、前輪11は、中継用プーリ軸34と共通の中心軸線を支点として上下方向に揺動可能となっている。
【0023】
また、前記ハンドル13には、ハンドル角度調節レバー16、サイドカッター部40の傾斜角度調節用レバー18、前記カッター28、38への動力伝達断接用(テンションクラッチ用)のクラッチレバー52、エンジン20のスロットル開度調整用のスロットルレバー51、メイン/エンジン停止スイッチ53、走行速度調整ボリューム54、前後進切換スイッチ55等が設けられている。
【0024】
一方、前記電動モータ30の制御を行うべく、図5に示される如くに、コントロールユニット100が備えられている。このコントロールユニット100には、メイン/エンジン停止スイッチ53、走行速度調整ボリューム54、前後進切換スイッチ55、走行用リミットスイッチ56等からそれらの操作状態をあらわす信号が供給され、コントロールユニット100は、走行速度調整ボリューム54から得られる信号に基づいて、電動モータ30への電力供給量を制御して無段変速を実現し、また、前後進切換スイッチ55の操作状態に応じて電動モータ30の正転/逆転の切換制御を行って、後進機能を付加するものである。
【0025】
なお、走行用駆動源として電動モータ30を用いない場合は、HST等の油圧式変速機又は機械式変速機を用いることになるが、機械式変速機であっても、適当なリバースギアが組み込まれたものを用いれば、後進機能を付与できる。
【0026】
上記の如くの構成とされた本実施形態の自走式二面草刈機では、エンジン20の動力は、走行基体部10におけるメインカッター28の回転軸線Caとサイドカッター38の回転軸線Cbとの間から取り出された後、左右に振り分けられてメインカッター28とサイドカッター38に伝達されるようになっているので、走行基体部10の右側部からエンジン20の動力を取り出すようにされた従来の自走式二面草刈機に比して、メインカッター28及びサイドカッター38への動力伝達系を簡素化できる。
【0027】
また、エンジン20のリコイルスタータ22が、走行基体部10における右側部に配置されることにより、始動操作性が向上する。
【0028】
加えて、走行基体部10におけるメインカッター28(の回転軸線Ca)より前部側にエンジン20(の主要部)が配置されているので、前輪11に適正な荷重を加えることができ、そのため、良好な直進安定性を得ることができる。
【0029】
さらに、メインカッター28及びサイドカッター38の駆動はエンジン20で行い、走行用駆動源として電動モータ30が用いられているので、レイアウト自由度の向上、動力伝達系の簡素化、エンジンのクラスダウン化を図ることができるとともに、円滑な発進、停止動作等が得られ、さらに、容易に後進機能を付加することができて、使い勝手や作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る自走式二面草刈機の一実施形態を示す平面図。
【図2】本発明に係る自走式二面草刈機の一実施形態を示す右側面図。
【図3】本発明に係る自走式二面草刈機の一実施形態を示す左側面図。
【図4】本発明に係る自走式二面草刈機の一実施形態を示す底面。
【図5】図1〜図4に示される自走式二面草刈機に備えられた制御系の説明に供される図。
【符号の説明】
【0031】
1 自走式二面草刈機
10 走行基体部
11 前輪
12 後輪
13 ハンドル
20 エンジン
22 リコイルスタータ
23 メインカッター用動力伝達機構
25 ベルトプーリ式動力伝達機構
26 サイドカッター用動力伝達機構
28 メインカッター
30 電動モータ
38 サイドカッター
40 サイドカッター部
50 発電機
54 速度調整用ボリューム
55 前後進切換スイッチ
100 コントロールユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(11)、後輪(12)、ハンドル(13)、メインカッター(28)、及び、走行用及び/又はカッター駆動用のエンジン(20)が出力軸(21)を左右方向に向けた姿勢で配置された走行基体部(10)と、該走行基体部(10)の左側にヒンジ(15)等を介して上下方向に傾動可能に連結されるとともに、サイドカッター(38)及び前記エンジン(10)からの動力を前記サイドカッター(38)に伝達するための動力伝達機構(26)が配置されたサイドカッター部(40)とを備えた自走式二面草刈機(1)において、
前記エンジン(20)の動力は、前記走行基体部(10)における前記メインカッター(28)の回転軸線(Ca)と前記サイドカッター(38)の回転軸線(Cb)との間から取り出された後、左右に振り分けられて前記メインカッター(28)と前記サイドカッター(38)に伝達されるようになっていることを特徴とする自走式二面草刈機。
【請求項2】
前記エンジン(20)のリコイルスタータ(22)は、前記走行基体部(10)における右側部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の自走式二面草刈機。
【請求項3】
前輪(11)、後輪(12)、ハンドル(13)、メインカッター(28)、及び、走行用及び/又はカッター駆動用のエンジン(20)が配置された走行基体部(10)と、該走行基体部(10)の左側にヒンジ(15)等を介して上下方向に傾動可能に連結されるとともに、サイドカッター(38)及び前記エンジン(10)からの動力を前記サイドカッター(38)に伝達するための動力伝達機構(26)が設けられたサイドカッター部(40)とを備えた自走式二面草刈機(1)において、
前記走行基体部(10)における前記メインカッター(28)の回転軸線(Ca)より前部側に前記エンジン(20)の主要部が配置されていることを特徴とする自走式二面草刈機。
【請求項4】
前記走行基体部(10)における前記メインカッター(28)の回転軸線(Ca)より後部側に走行用駆動源としての電動モータ(30)が配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自走式二面草刈機。
【請求項5】
前記電動モータ(30)は、前記エンジン(20)により駆動される発電機(50)が発生する電力を利用するようにされていることを特徴とする請求項4に記載の自走式二面草刈機。
【請求項6】
前輪(11)及び後輪(12)が共に駆動輪とされていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の自走式二面草刈機。
【請求項7】
前進と後進の切換手段を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の自走式二面草刈機。
【請求項8】
前記前後進切換手段は、前記ハンドル(13)に設けられた前後進切換スイッチ(55)と、該前後進切換スイッチ(55)の操作状態に応じて前記電動モータ(30)の正転/逆転の切換制御を行う制御手段(100)とで構成されていることを特徴とする請求項7に記載の自走式二面草刈機。
【請求項9】
前記前後進切換手段は、HST等の油圧式変速機又はリバースギヤが組み込まれた機械式変速機で構成されていることを特徴とする請求項7に記載の自走式二面草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−113598(P2008−113598A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299170(P2006−299170)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000141990)株式会社共立 (110)
【Fターム(参考)】