説明

苗移植機

【課題】 苗箱同士の衝突時の衝撃を軽減する。
【解決手段】 本発明の苗移植機1は、苗載台14と、苗載台14の後端から隙間をあけた後方にスイッチバックゾーン7aを含み、苗載台14から供給される苗箱Nをスイッチバックして下方の苗押出装置6まで搬送する苗箱搬送路7とを備えており、苗載台14の後端から外れてスイッチバックゾーン7a上に移行した時の苗箱Nにおける下端の位置よりも相対的に苗箱搬送路7の下流側にわずかにずらした位置に配設された第一苗箱センサLS4と、苗押出装置6の手前に配設された第二苗箱センサLS5とを備えている。第一苗箱センサLS4が、先行する苗箱Nの通過を検知すると、苗載台14にある後続の苗箱Nを、スイッチバックゾーン7aに供給させるとともにそこで待機させておき、第二苗箱センサLS5が、前記先行する苗箱Nの通過を検知すると、待機させておいた前記後続の苗箱Nを苗押出装置6に向けて下降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台から供給される苗箱をスイッチバックして苗押出装置まで搬送する苗箱搬送路を備えた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の苗移植機としては、特許文献1に記載されたものを例示する。この苗移植機は、図9に示すように、複数の苗箱Nを載置する苗載台と、該苗載台から供給された苗箱Nをスイッチバックして下方に位置する苗押出装置106まで搬送する苗箱搬送路107を備え、前記苗載台は進行方向の前方側から後方に向けて下方傾斜する一方、苗箱搬送路107は前記苗載台の後方に位置すると共に後方側から前方に向けて下方傾斜し、かつ、前記苗載台は少なくとも二段の上段苗載台113と下段苗載台114からなり、下段苗載台114を上段苗載台113よりも長尺として、上段苗載台113よりも前記苗箱搬送路107に近接する位置まで延在させている。各苗載台113、114、苗箱搬送路107及び空箱搬送路108の要所には、苗箱Nの搬送用のモータM'1〜M'6と、苗箱Nの存在確認用の検出手段(リミットスイッチ)LS'1〜LS'6とが設置されている。なお、図9において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0003】
次に苗箱Nの搬送動作について説明する。事前準備として、まず、下段苗載台114に順次4枚の苗箱N(N1〜N4)を載置装填して所要位置まで搬送して位置決め保持し、次ぎに、上段苗載台113に2枚の苗箱N(N5,N6)を載置装填して所要位置まで搬送保持して位置決め保持し、合計6枚の苗箱Nを苗載台113、114、苗箱搬送路107に装填する。
【0004】
上記のように植付け作業の事前準備がなされた後、オペレータ(作業者)が操作し、圃場を走行して植付け作業が開始される。この開始に伴い、ストッパー爪107bが非作用位置に後退して、図9に示すように1枚目の苗箱N1が苗箱搬送路107を自由落下すると共に苗押出装置106が作動して、苗箱Nのポット部Naから苗が逐次押出され、押出された苗は植付装置によって圃場に植付けられてゆく。
【0005】
苗押出装置106の手前に配設されたリミットスイッチLS'5を1枚目の苗箱N1の後端が通過してリミットスイッチLS'5がオフになると、モータM'1、M'4が作動(正回転)して下段苗載台114の延在部114−1上に待機していた2枚目の苗箱N2が、スイッチバックゾーン107aに搬送され、リミットスイッチLS'1がオフになりモータM'1が停止するとともに、リミットスイッチLS'4がオンとなる。同時に、モータM'4が逆回転し2枚目の苗箱N1はスイッチバックゾーン107aから苗箱搬送路107を搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−11849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の苗移植機では、スイッチバックゾーン107aでは下段苗載台114から隙間Cを越えて受け渡された苗箱Nの下端部が前後に振動するので、この振動が減衰するのを待つための一定時間(約1秒)苗箱Nを停止させてから、苗押出装置106に向けて下降させるようにしている。ところが、この待ち時間の間に、先行する苗箱Nと後続の苗箱Nとの間が広がってしまい、後続の苗箱Nの下端部が先行する苗箱の上端部に衝突するときの衝撃が大きくなり、苗箱Nから苗が飛び出したり、樹脂で成形されている苗箱Nが変形したり破損したりする恐れがある。そして、苗箱Nが変形したり破損したりすると、苗押出装置106への搬送に影響を及ぼして連続欠株となったり、再利用できなくなったりすることがある。
【0008】
この対策として、従来は、後続の苗箱Nが先行する苗箱Nに衝突する箇所の手前に、該後続の苗箱Nを苗箱搬送路107に押し付けるように付勢することにより、該後続の苗箱Nの下降速度を苗箱搬送路107との摩擦で低下させるための減速装置(図示略)を設けている。しかし、該減速装置による前記付勢の強さは、苗箱Nや苗箱搬送路107の汚れ具合、天候、気温などに応じて、調節する必要があり、しかも、前記付勢が強すぎると後続の苗箱Nが詰まってしまうし、該付勢が弱すぎると後続の苗箱Nが減速しなくなってしまうので、調節に手間が掛かるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の苗移植機は、
後方側へ上方傾斜した延在部を後端部に有し、複数の苗箱を載置するとともに後方側へ苗箱を供給する苗載台と、
該延在部の上端に対して隙間をあけた後方に、後方側へ上方傾斜したスイッチバックゾーンを含み、該苗載台から供給される苗箱を該スイッチバックゾーンによりスイッチバックして下方に位置する苗押出装置まで搬送する苗箱搬送路とを備えており、
前記苗箱搬送路に苗箱センサを設け、該苗箱センサにより先行する苗箱の状態を検知することにより、前記苗載台に載置された後続の苗箱を、スイッチバックゾーンに供給させるとともに該スイッチバックゾーンでスイッチバックさせて前記苗押出装置に向けて下降させるように構成した苗移植機において、
前記苗箱センサは、前記延在部の先端から外れて前記スイッチバックゾーン上に移行した時の苗箱における下端の位置よりも相対的に前記苗箱搬送路の下流側にわずかにずらした位置に配設された第一苗箱センサと、該第一苗箱センサよりも相対的に前記苗箱搬送路の下流側の位置であって、前記苗押出装置の手前に配設された第二苗箱センサとを備えており、
まず、前記第一苗箱センサが、先行する苗箱の通過を検知すると、前記苗載台に載置された後続の苗箱を、前記スイッチバックゾーンに供給させるとともに該スイッチバックゾーンで待機させておき、
次に、前記第二苗箱センサが、前記先行する苗箱の通過を検知すると、該スイッチバックゾーンで待機させておいた前記後続の苗箱を前記苗押出装置に向けて下降させるように構成した。
【0010】
前記苗箱センサとしては、所要位置における苗箱の存在を検出可能なセンサであれば、特に限定されないが、リミットスイッチや光学センサなどを例示する。
【0011】
このように本発明では、従来の苗移植機におけるリミットスイッチLS'5(前記苗押出装置に向けて後続の苗箱を下降させることができるタイミングの検出手段)に相当する前記第二苗箱センサの上流側に前記第一苗箱センサを設け、該第一苗箱センサにより、前記スイッチバックゾーンに対して後続の苗箱が供給可能になったタイミングを検知させ、このタイミングで後続の苗箱を予め前記スイッチバックゾーンに供給させるとともに待機させておくようにしているのである。そして、前記苗載台から前記隙間を越えて前記スイッチバックゾーンに受け渡された直後の苗箱は、その下端部が前後に振動するが、この振動は、該スイッチバックゾーンでの待機中に減衰する。このため、前記第二苗箱センサが前記タイミングを検知すると、すぐに後続の苗箱を前記苗押出装置に向けて下降させることができるので、先行する苗箱と後続の苗箱との間を従来の苗移植機よりも狭くすることができ、後続の苗箱の下端部が先行する苗箱の上端部に衝突するときの衝撃が小さくなり、苗箱の損傷を防止できる。しかも、該衝撃が小さいので、従来の苗移植機に設けられていた前記減速装置を省くことができるので、コストが低減できるとともに該減速装置について面倒な調整をする必要もなくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る苗移植機によれば、搬送中における苗箱同士の衝突による衝撃を軽減し、苗箱の変形や破損を軽減することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る苗移植機を示す全体側面図である。
【図2】同苗移植機における苗載台の概略的平面図である。
【図3】同苗載台の搬送スプロケット部分を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は側断面図である。
【図4】同苗移植機に採用されるリミットスイッチの概略図であり、(a)は一例の図であり、(b)は別例の図である。
【図5】同苗移植機の苗載台及び苗箱搬送路で苗箱を搬送している第一の状態を示す側面図である。
【図6】同苗移植機の苗載台及び苗箱搬送路で苗箱を搬送している第二の状態を示す側面図である。
【図7】同苗移植機の苗載台及び苗箱搬送路で苗箱を搬送している第三の状態を示す側面図である。
【図8】同苗移植機の苗載台及び苗箱搬送路で苗箱を搬送している第四の状態を示す側面図である。
【図9】従来の苗移植機の苗載台及び苗箱搬送路を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図8は本発明を具体化した一実施形態の苗移植機を示している。本例の苗移植機1は、図1に示すように乗用型のものであり、前輪2及び後輪3に支持された機体4の後方に植付装置5を備えている。植付装置5の上方には、苗箱Nより苗を押し出す押出棒6a(図5参照)を備えた苗押出装置6を設けるとともに、その上方に傾斜した苗箱搬送路7を設けている。また、苗箱搬送路7は、苗押出装置6の設置部分から後方に下向きに湾曲する空箱搬送路8に連なり、この空箱搬送路8は後方に上方傾斜した後、前方に屈曲して、空箱収納部9に連なっている。機体4の上には、運転席10、操作ハンドル11及び予備苗載台(図示略)等が搭載されている。運転席10と苗箱搬送路7との間には、車両方向において後方下向き傾斜する1段の苗載台14が設置されている。なお、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0015】
苗載台14は、図2及び図3に示すように、断面コ字型の左右両側の側面レール14aと、平板からなる中央レール14bと、搬送方向に所要の空間を開けて配置された支持バー17とにより構成されている。空箱搬送路8も、この苗載台14と同様に構成されている。苗載台14の後端部には、苗箱搬送路7に近接する位置まで湾曲させた後に上方傾斜させた延在部14−1を設けている。延在部14−1の上端は、苗箱搬送路7と連結せずに、苗箱搬送路7との間に所要の隙間Cを設けている。この苗載台14は、機体4の幅方向に間隔を開けて複数列で設置されている。従って、苗箱搬送路7及び空箱搬送路8も、各苗載台14に対応して複数列が機体4の幅方向に間隔を開けて設置されている。図2は、苗載台14の1列分について示している。
【0016】
苗箱搬送路7は、左右両側に設けられた断面L字型のレール部と、該左右のレール部を接続する底板とにより構成されており、該底板には開口部が設けられている。この苗箱搬送路7は、苗載台14の延在部14−1の先端に対して隙間Cを開けて上方傾斜するスイッチバックゾーン7aを含み、このスイッチバックゾーン7aから前方に向けて下方傾斜して苗押出装置6にまで至っている。
【0017】
本例の苗移植機1で使用する苗箱Nは、図2及び図3に示すように、樹脂で成形されて可撓性を有する全体が矩形状のものであり、苗収容室となるポット部Naを縦横にマトリクス状に設けており、ポット部Naの底面には、苗押出装置6の押出棒6aが挿通できるように略Y字状のスリット(図示略)を設けているとともに、短辺方向の中央では隣接するポット部Naの間に他より大きな空隙Sを形成している。また、搬送方向と平行する長辺側の両側の端縁部Nbには、四角形状の多数の穴部Ncを搬送方向に沿って等間隔で直線状に設けている。
【0018】
次に、苗載台14及び苗箱搬送路7における苗箱Nの搬送機構について説明する。
【0019】
図2及び図3に示すように、苗載台14には、それらの左右両側の側面レール14aに苗箱Nの左右両側部を摺動自在に内嵌させ、苗箱Nの底面を中央レール14b上に摺動自在に載置して苗箱Nを搬送している。苗載台14の左右両側の側面レール14aのうち一方の外側には、駆動モータM2が設置されている。この駆動モータM2の出力軸に連結された駆動軸19は、両側面レール14aの下方に苗載台14を横断するよう軸回転可能に支持されている。駆動軸19の両端部には、複数の爪20aを周方向に等間隔で備えた搬送用スプロケット(爪車)20,20を有している。スプロケット20,20の上半部は、断面コ字型の側面レール14aのした壁に形成された開口から突出し、爪20aが苗載台14上に載置された苗箱Nの穴部Ncに係入するようになっている。
【0020】
爪20aのスプロケット20の周方向における形成ピッチは、苗箱Nの穴部Ncの搬送方向における形成ピッチと略同じとされ、従って、モータM2の駆動によるスプロケット20の回転に伴い、爪20aが苗箱Nの穴部Ncに順次係入し、これによって苗箱Nに搬送力が付与され、苗箱Nが所望の方向に搬送されるようになっている。同様の構成が図1のM1及びM3に示す位置に設置されている。
【0021】
苗載台14、苗箱搬送路7及び空箱搬送路8の要所には、苗箱Nの存在確認用の検出手段としてのリミットスイッチLS1〜LS6が設置されている。これらのリミットスイッチの中で、LS4が苗箱搬送路7に配設された第一苗箱センサとなっており、LS5が該第一苗箱センサに対し相対的に下流側に配設された第二苗箱センサとなっている。本例では、リミットスイッチLS1及びLS2としては図4(a)に示すタイプのものが、リミットスイッチLS3〜LS6としては図4(b)に示すタイプのものが、それぞれ採用されている。本例のリミットスイッチLS1〜LS6はいずれもレバー型のオン・オフスイッチとなっている。LS2(LS1も同様。)は、図2に示すように、側面レール14aの側壁から内側に向けて傾斜させてレバーを突出させ、図4(a)に→で示す方向から苗箱Nの側面が接触すると、外側に揺動して苗箱Nを検出(ON)するように設定している。また、LS3〜LS6は、苗箱搬送路7及び空箱搬送路8の底壁から内側に向けてレバーを突出させ、図4(b)に→で示す方向から苗箱Nの側面や底面が接触すると、レバーが揺動して苗箱Nを検出(ON)するように設定している。なお、リミットスイッチLS1〜LS6には互いに接続させたチェックタイマーを付設し、上流側に隣接するリミットスイッチがオンしてから設定時間経過後に下流側のリミットスイッチがオンしない場合にすべての駆動モータMを停止する構成としている。
【0022】
以上の構成におけるモータM1〜M3、リミットスイッチLS1〜LS5の位置関係は次のとおりである。
(1)モータM1〜モータM2、モータM2〜モータM3の距離(各モータに連結されたスプロケット20間の距離、以下各モータ位置と各スプロケット位置は同じとして説明する)は、苗箱Nの搬送方向両端の穴部Ncに対応位置の各スプロケット20の爪20aが同時に係入噛み合い得る長さである。また、リミットスイッチLS2とモータM1との距離は、苗箱Nの搬送方向長さより長くなっていて、苗箱Nが搬送されて苗箱Nの先端がリミットスイッチLS2をオンしモータM1が停止したとき、苗箱Nの搬送方向の後端がモータM1のスプロケット20から外れる長さに設定されている。
【0023】
(2)前記延在部14−1の先端位置とリミットスイッチLS3との距離は、苗箱Nの上端(苗載台14の搬送方向の先端)がリミットスイッチLS3をオンにした時、苗箱Nの下端(苗載台14の搬送方向の後端)が延在部14−1の先端から外れ、苗載台14のガイド規制から解放される長さとされている。
【0024】
(3)第一苗箱センサとしてのリミットスイッチLS4は、延在部14−1の先端から外れてスイッチバックゾーン7a上に移行した時の苗箱Nにおける下端の位置よりも相対的に苗箱搬送路7の下流側にわずかにずらした位置に配設されている。このため、苗箱Nがスイッチバックされると、すぐに苗箱Nの下端(苗箱搬送路7の搬送方向の先端)がリミットスイッチLS4をオンし、該苗箱Nの上端(苗箱搬送路7の搬送方向の後端)がリミットスイッチLS4を通過すると、リミットスイッチLS4がオフになる。本例では、スイッチバックされた苗箱Nの作用により、リミットスイッチLS4がオンからオフになったタイミングを検知することにより、後続の苗箱Nを苗箱搬送路7のスイッチバックゾーン7aに搬送可能になったことを検知するようにしている。
【0025】
(4)モータM3、リミットスイッチLS5及びストッパー爪7bの位置関係は、モータM3が逆回転し、苗箱Nが苗箱搬送路7を搬送されてその上端(苗箱搬送路7の搬送方向の後端)がモータM3を外れた時にストッパー爪7bに当たるように設定されており、そのわずか手前でリミットスイッチLS5がオンとなるように設定されている。このように、第二苗箱センサとしてのリミットスイッチLS5は、第一苗箱センサ(LS4)よりも相対的に苗箱搬送路7の下流側の位置であって、苗押出装置6の手前に配設されている。本例では、苗箱Nの作用により、このリミットスイッチLS5がオンからオフになったタイミングを検知することにより、スイッチバックゾーン7aに待機させておいた後続の苗箱Nを苗押出装置6に向けて下降可能になったことを検知するようにしている。
【0026】
次に、苗載台14及び苗箱搬送路7における苗箱Nの搬送動作について説明する。
【0027】
植付作業開始前では、苗載台14、苗箱搬送路7及び空箱搬送路8にはまだ苗箱Nが存在していないので、すべてのリミットスイッチLS1〜LS6はレバーが内側に突出したオフの状態である。この状態から、以下に詳述する事前準備として、まず、苗載台14に順次3枚の苗箱N (N1〜N3)を載置装填し所要位置まで搬送させて位置決め保持させることにより、図5に示すように、合計3枚の苗箱Nを苗載台14、苗箱搬送路7に装填する。
【0028】
この事前準備は、まず、苗載台14に苗箱N(N1)を載置装填し、リミットスイッチLS1が苗箱Nの側面に接触してオンになると、モータM1〜M3が作動(正回転)し、モータM1〜M3に連結された各スプロケット20の作用によって苗箱Nが搬送され、リミットスイッチLS2がオンとなるとモータM1が停止する。リミットスイッチLS4がオフなので、モータM2、M3の回転により苗箱Nの搬送が継続されてスイッチバックゾーン7aに至り、苗箱Nが作用してリミットスイッチLS3がオンになると、モータM2が停止すると共にモータM3が逆回転し、スイッチバックゾーン7aに至った苗箱Nはスイッチバックして苗箱搬送路7を下降し、リミットスイッチLS4をオンした後、苗押出装置6の上流側近傍のストッパー爪7bに至りリミットスイッチLS5がオンになるとモータM3が停止し、1枚目の苗箱N(N1)はこの位置で保持される。
【0029】
次いで、2枚目の苗箱N(N2)を苗載台14に載置装填するが、この時、リミットスイッチLS4、LS5のみがオンの状態で、苗箱Nの載置装填によりリミットスイッチLS1がオンとされ、これによりモータM1、M2が正回転し、2枚目の苗箱Nが搬送される。この苗箱Nの上端(苗載台14の搬送方向の先端)の作用によってリミットスイッチLS2がオンとされると、モータM1が停止する。このとき、リミットスイッチLS4がオンなので、モータM2も停止し、苗箱Nはその上端部分がモータM2のスプロケット20に係止保持され、延在部14−1上に静止する。この時、2枚目の苗箱Nの上端は、スイッチバックゾーン7aに先行苗箱Nがあったとしてもその自由落下(スイッチバック)を妨げない位置にあり、後端はモータM1のスプロケット20から外れている。
【0030】
更に、3枚目の苗箱N(N3)を苗載台14に載置装填するが、この時、リミットスイッチLS2、LS4、LS5がオンになっているので、リミットスイッチLS1がオンとなっても、モータM1は作動せず、苗箱Nは苗載台14上を自由落下し、モータM1は停止しているからそのスプロケット20に係止保持されると、図5の状態になる。
【0031】
以上のように植付け作業の事前準備がなされた後、オペレータ(作業者)が運転席に着座し、ハンドル11等を操作し、圃場を走行して植付け作業が開始される。
【0032】
この開始に伴い、ストッパー爪7bが非作用位置に後退して1枚目の苗箱N1が苗箱搬送路7を自由落下すると共に苗押出装置6が作動して、苗箱Nのポット部Naから苗が逐次押出され、押出された苗は植付装置5によって圃場に植付けられてゆく。
【0033】
1枚目の苗箱N1の上端(苗箱搬送路の搬送方向の後端)がリミットスイッチLS4を通過してリミットスイッチLS4がオフになると(図6参照)、モータM2、M3が作動(正回転)して苗載台14の延在部14−1上に待機していた2枚目の苗箱N2が、1枚目の苗箱N1と同様にスイッチバックゾーン7aに搬送され、リミットスイッチLS2がオフになるとモータM2が停止し、リミットスイッチLS3がオンとなるとモータM3が停止する。さらに、1枚目の苗箱N1の上端(苗箱搬送路7の搬送方向の後端)がリミットスイッチLS5を通過してリミットスイッチLS5がオフになると(図7参照)、モータM3が逆回転し2枚目の苗箱N2はスイッチバックゾーン7aから苗箱搬送路7を搬送され(図8参照)、その下端(苗箱搬送路7の搬送方向の先端)がリミットスイッチLS4をオンにすると、モータM1、M2が作動し、苗載台14上の3枚目の苗箱N3が搬送され、その上端がリミットスイッチLS2をオンにすると、モータM1が停止するとともに、リミットスイッチLS4がオンなのでモータM2も停止し、3枚目の苗箱N3は延在部14−1上に保持される。
【0034】
1枚目の苗箱N1について、苗押出装置6による押出処理が進行し、その搬送方向の先端がリミットスイッチLS6をオンとすると、これによりモータM4、M5の作動が開始され、苗箱Nの自重によりその先端がモータM4のスプロケット20に係止されると、その搬送力と、その後のモータM5のスプロケット20の係止搬送力により、空になった苗箱Nが空箱搬送路8を搬送される。この空箱搬送路8上の苗箱Nは、後続の苗箱Nの推進力が加わり、やがて空箱収納部9に順次積層収納される。
【0035】
このような繰り返しによって、圃場への苗の植付けが順次なされてゆく。そして、1台の苗載台当り苗箱Nを3枚とすることができるから、1サイクルの苗植付け効率が高く、苗載台14の数を複数とすれば更にこの苗植付け効率を高くすることができる。
【0036】
なお、苗載台14を複数列配設したものを例示したが、圃場の規模や需要者の要望によっては、1列のものとすることも可能である。その他、植付装置5及び苗押出装置6の詳細説明は省略したが、従来公知のものがこれらに充当し得ることは言うまでもない。
【0037】
以上詳述したように本例の苗移植機1は、延在部14−1の先端から外れてスイッチバックゾーン7a上に移行した時の苗箱Nにおける下端の位置よりも相対的に苗箱搬送路7の下流側にわずかにずらした位置に配設された第一苗箱センサ(LS4)と、該第一苗箱センサ(LS4)よりも相対的に苗箱搬送路7の下流側の位置であって、苗押出装置6の手前に配設された第二苗箱センサ(LS5)とを備えており、まず、第一苗箱センサ(LS4)が、先行する苗箱Nの通過を検知すると、苗載台14に載置された後続の苗箱Nを、スイッチバックゾーン7aに供給させるとともに該スイッチバックゾーン7aで待機させておき、次に、第二苗箱センサ(LS5)が、前記先行する苗箱Nの通過を検知すると、該スイッチバックゾーン7aで待機させておいた前記後続の苗箱Nを苗押出装置6に向けて下降させるように構成している。
【0038】
このように本発明では、従来の苗移植機におけるリミットスイッチLS'5(苗押出装置6に向けて後続の苗箱Nを下降させることができるタイミングの検出手段)に相当する前記第二苗箱センサ(LS5)の上流側に前記第一苗箱センサ(LS4)を設け、該第一苗箱センサ(LS4)により、スイッチバックゾーン7aに対して後続の苗箱Nが供給可能になったタイミングを検知させ、このタイミングで後続の苗箱Nを予め前記スイッチバックゾーン7aに供給させるとともに待機させておくようにしているのである。そして、苗載台14から隙間Cを越えてスイッチバックゾーン7aに受け渡された直後の苗箱Nは、その下端部が前後に振動するが、この振動は、スイッチバックゾーン7aでの待機中に減衰する。このため、第二苗箱センサ(LS5)が前記タイミングを検知すると、すぐに後続の苗箱Nを苗押出装置6に向けて下降させることができるので、先行する苗箱Nと後続の苗箱Nとの間を従来の苗移植機よりも狭くすることができ、後続の苗箱Nの下端部が先行する苗箱Nの上端部に衝突するときの衝撃が小さくなり、苗箱Nの損傷を防止できる。しかも、該衝撃が小さいので、従来の苗移植機に設けられていた前記減速装置を省くことができるので、コストが低減できるとともに該減速装置について面倒な調整をする必要もなくなる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)特許文献1と同様に少なくとも上下二段の苗載台を備えた苗移植装置に本発明を適用すること。
(2)苗箱Nの存在確認用検出手段として、リミットスイッチLSに代えて、光学センサ等の各種センサを採用すること。
【符号の説明】
【0040】
1 苗移植機
2 前輪
3 後輪
4 機体
5 植付装置
6 苗押出装置
7 苗箱搬送路
7a スイッチバックゾーン
7b ストッパー爪
8 空箱搬送路
9 空箱収納部
10 運転席
11 ハンドル
14 苗載台
14−1 延在部
14a 側面レール
14b 中央レール
17 支持バー
19 駆動軸
20 スプロケット
20a 爪
C 隙間
S 空隙
F 機体前側
LS リミットスイッチ
M モータ
N 苗箱
Na ポット部
Nb 端縁部
Nc 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方側へ上方傾斜した延在部を後端部に有し、複数の苗箱を載置するとともに後方側へ苗箱を供給する苗載台と、
該延在部の上端に対して隙間をあけた後方に、後方側へ上方傾斜したスイッチバックゾーンを含み、該苗載台から供給される苗箱を該スイッチバックゾーンによりスイッチバックして下方に位置する苗押出装置まで搬送する苗箱搬送路とを備えており、
前記苗箱搬送路に苗箱センサを設け、該苗箱センサにより先行する苗箱の状態を検知することにより、前記苗載台に載置された後続の苗箱を、スイッチバックゾーンに供給させるとともに該スイッチバックゾーンでスイッチバックさせて前記苗押出装置に向けて下降させるように構成した苗移植機において、
前記苗箱センサは、前記延在部の先端から外れて前記スイッチバックゾーン上に移行した時の苗箱における下端の位置よりも相対的に前記苗箱搬送路の下流側にわずかにずらした位置に配設された第一苗箱センサと、該第一苗箱センサよりも相対的に前記苗箱搬送路の下流側の位置であって、前記苗押出装置の手前に配設された第二苗箱センサとを備えており、
まず、前記第一苗箱センサが、先行する苗箱の通過を検知すると、前記苗載台に載置された後続の苗箱を、前記スイッチバックゾーンに供給させるとともに該スイッチバックゾーンで待機させておき、
次に、前記第二苗箱センサが、前記先行する苗箱の通過を検知すると、該スイッチバックゾーンで待機させておいた前記後続の苗箱を前記苗押出装置に向けて下降させるように構成した苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−170439(P2012−170439A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38254(P2011−38254)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】