説明

試験装置

【課題】試験の異常時において被試験デバイスへの電源供給を高速に遮断する。
【解決手段】被試験デバイスを試験する試験装置であって、被試験デバイスに供給する電源電圧を発生する電源部と、電源部と被試験デバイスとの間の経路上に設けられた誘導負荷部と、誘導負荷部と被試験デバイスとの間の経路上に直列に接続された複数の半導体スイッチと、被試験デバイスへの電圧の供給を遮断する場合において、複数の半導体スイッチをオフとする制御部と、を備える試験装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導負荷に流れる電流をスイッチングする半導体スイッチ(例えばIGBT)の製造工程においては、アバランシェ破壊耐量の試験が実施される。特許文献1には、アバランシェ破壊試験用の試験装置が記載されている。
【0003】
特許文献1 特開2007−33042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アバランシェ破壊耐量の試験中において、被試験デバイスが短絡モードで故障した場合、被試験デバイスに過大な電流が流れる。このため、被試験デバイスの損傷が拡大して、故障原因の解析が困難となってしまう。また、被試験デバイスに過大な電流が流れることによって、試験装置自体が破損してしまう場合もある。
【0005】
このようなことを防止するため、アバランシェ破壊耐量を試験する試験装置では、被試験デバイスに異常な電流が流れた場合、誘導負荷と被試験デバイスとの間の接続を高速に遮断しなければならなかった。しかしながら、高耐圧で高速にスイッチングをするスイッチングデバイスは高価であり、試験装置のコストを大きくしてしまっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、被試験デバイスを試験する試験装置であって、前記被試験デバイスに供給する電源電圧を発生する電源部と、前記電源部と前記被試験デバイスとの間の経路上に設けられた誘導負荷部と、前記誘導負荷部と前記被試験デバイスとの間の経路上に直列に接続された複数の半導体スイッチと、前記被試験デバイスへの電圧の供給を遮断する場合において、前記複数の半導体スイッチをオフとする制御部と、を備える試験装置を提供する。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る試験装置10の構成を被試験デバイス200とともに示す。
【図2】IGBTである被試験デバイス200のアバランシェ破壊耐量の試験において、被試験デバイス200が正常に動作した場合における、被試験デバイス200のゲート電圧、コレクタ−エミッタ間電圧、コレクタ電流、遮断スイッチ28の制御信号および接続点Aの電圧の波形の一例を示す。
【図3】IGBTである被試験デバイス200のアバランシェ破壊耐量の試験において、被試験デバイス200が異常動作した場合における、被試験デバイス200のゲート電圧、コレクタ−エミッタ間電圧、コレクタ電流、遮断スイッチ28の制御信号および接続点Aの電圧の波形の一例を示す。
【図4】本実施形態において、遮断スイッチ28が電流を遮断する場合における被試験デバイス200に流れる電流の波形の一例を示す。
【図5】本実施形態の第1変形例に係る試験装置10の構成を被試験デバイス200とともに示す。
【図6】第1の半導体スイッチ50−1および第2の半導体スイッチ50−2のそれぞれ毎に、入力タイミングを変えた制御信号の一例を示す。
【図7】第1の半導体スイッチ50−1および第2の半導体スイッチ50−2のそれぞれ毎に、変化時における傾きを変えた制御信号の一例を示す。
【図8】本実施形態の第2変形例に係る試験装置10の構成を被試験デバイス200とともに示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る試験装置10の構成を被試験デバイス200とともに示す。本実施形態に係る試験装置10は、半導体スイッチである被試験デバイス200のアバランシェ破壊耐量を試験する。本実施形態において、被試験デバイス200は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)である。
【0011】
試験装置10は、電源部22と、誘導負荷部24と、電源スイッチ26と、遮断スイッチ28と、クランプ部30と、異常検出部32と、制御部34とを備える。
【0012】
電源部22は、被試験デバイス200に供給する電源電圧を発生する。電源部22は、一例として、600Vから2500Vの直流の電源電圧を発生する。本実施形態においては、電源部22は、IGBTである被試験デバイス200のコレクタ−エミッタ間に電源電圧を印加する。より具体的には、被試験デバイス200は、エミッタがグランドに接続される。そして、電源部22は、被試験デバイス200のコレクタに正の電源電圧を印加する。
【0013】
電源部22は、一例として、直流電源部42と、電源用キャパシタ44と、電源用ダイオード45とを有する。直流電源部42は、負端子がグランドに接続される。電源用キャパシタ44は、グランドと直流電源部42の正端子との間に接続される。電源用ダイオード45は、アノードが直流電源部42の正端子に接続される。このような電源部22は、電源用ダイオード45のカソードから電源電圧を発生する。
【0014】
誘導負荷部24は、インダクタンスを有し、電源部22と被試験デバイス200との間の経路上に設けられる。誘導負荷部24は、一例として、インダクタ46である。本実施形態において、誘導負荷部24は、電源部22の電源電圧の発生端と、IGBTである被試験デバイス200のコレクタとの間の経路上に設けられる。
【0015】
なお、誘導負荷部24は、異なるインダクタンスを有する複数のインダクタ46が切り換えられる構成であってもよい。これにより、誘導負荷部24は、被試験デバイス200の種類および試験内容に応じたインダクタンスを、電源部22と被試験デバイス200との間の径路上に設けることができる。
【0016】
電源スイッチ26は、電源部22と誘導負荷部24との間を接続または切断する。電源スイッチ26は、試験中において電源部22と誘導負荷部24との間を接続し、試験中以外の期間において、電源部22と誘導負荷部24との間を切断する。電源スイッチ26は、一例として、リレーまたはIGBT等の半導体スイッチである。
【0017】
遮断スイッチ28は、誘導負荷部24と被試験デバイス200との間の経路上に設けられる。本実施形態においては、遮断スイッチ28は、誘導負荷部24における電源部22が接続されていない側の端子と、IGBTである被試験デバイス200のコレクタとの間の経路上に設けられる。遮断スイッチ28は、通常時において誘導負荷部24と被試験デバイス200との間を接続し、異常時において誘導負荷部24と被試験デバイス200との間を切断する。
【0018】
遮断スイッチ28は、複数の半導体スイッチ50と、複数の絶縁増幅器52とを有する。複数の半導体スイッチ50は、誘導負荷部24と被試験デバイス200との間の径路上に直列に接続される。
【0019】
本実施形態においては、複数の半導体スイッチ50は、それぞれが絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)であり、コレクタ−エミッタ間が直列に接続される。即ち、最も誘導負荷部24側に配置された半導体スイッチ50は、コレクタが誘導負荷部24に接続され、エミッタが被試験デバイス200側に隣接した半導体スイッチ50のコレクタに接続される。
【0020】
また、最も被試験デバイス200側に配置された半導体スイッチ50は、エミッタが、被試験デバイス200のコレクタに接続される。そして、最も誘導負荷部24側に配置された半導体スイッチ50と最も被試験デバイス200側に配置された半導体スイッチ50以外の他の半導体スイッチ50のそれぞれは、エミッタが被試験デバイス200側に隣接した半導体スイッチ50のコレクタに接続される。
【0021】
複数の絶縁増幅器52のそれぞれは、複数の半導体スイッチ50のそれぞれに対応して設けられる。そして、複数の絶縁増幅器52のそれぞれは、外部から入力される制御信号に応じて、対応する半導体スイッチ50をオンまたはオフとする。本実施形態においては、複数の絶縁増幅器52のそれぞれは、IGBTである対応する半導体スイッチ50のゲート電圧を制御して、コレクタ−エミッタ間をオン(接続)またはオフ(切断)とする。
【0022】
さらに、複数の絶縁増幅器52のそれぞれは、制御信号を出力する外部の回路と、対応する半導体スイッチ50との間を絶縁する。これにより、複数の絶縁増幅器52のそれぞれは、電源部22から被試験デバイス200に供給される高電圧を、制御信号を出力する外部の回路に供給させないようにできる。
【0023】
なお、図1の例においては、遮断スイッチ28は、第1の半導体スイッチ50−1と、第2の半導体スイッチ50−2と、第1の絶縁増幅器52−1と、第2の絶縁増幅器52−2とを有する。第1の半導体スイッチ50−1および第2の半導体スイッチ50−2は、コレクタ−エミッタ間が直列に接続される。
【0024】
第1の半導体スイッチ50−1は、誘導負荷部24側に配置される。第2の半導体スイッチ50−2は、被試験デバイス200側に配置される。第1の絶縁増幅器52−1は、外部からの制御信号に応じて第1の半導体スイッチ50−1のゲート電圧を発生する。第2の絶縁増幅器52−2は、外部からの制御信号に応じて第2の半導体スイッチ50−2のゲート電圧を発生する。
【0025】
クランプ部30は、誘導負荷部24と遮断スイッチ28との間の経路(接続点A)の電圧を予め設定された範囲内に制限する。本実施形態においては、クランプ部30は、接続点Aの電圧が、電源電圧より高い予め定められたクランプ電圧(例えば電源電圧よりも数10%高い電圧)以上とならないように制限する。
【0026】
クランプ部30は、一例として、可変電圧源54と、クランプ用キャパシタ56と、ダイオード58とを有する。可変電圧源54は、負端子がグランドに接続され、外部から設定されたクランプ電圧を発生する。クランプ用キャパシタ56は、グランドと可変電圧源54の正端子との間に接続される。
【0027】
ダイオード58は、アノードが誘導負荷部24と遮断スイッチ28との間の経路(接続点A)に接続され、カソードが可変電圧源54の正端子に接続される。このようなクランプ部30は、接続点Aの電位がクランプ電圧以上となるとダイオード58がオンとなり、接続点Aに流れる電流を吸い込む。これにより、クランプ部30は、接続点Aの電位をクランプ電圧以下に制限することができる。
【0028】
異常検出部32は、当該試験装置10が異常な動作をしているかどうかを検出する。異常検出部32は、一例として、被試験デバイス200に異常な電流が流れたことまたは異常な電圧が発生したことを検出する。また、異常検出部32は、一例として、被試験デバイス200の温度が予め定められた値を超えた場合に異常な動作として検出してもよい。
【0029】
制御部34は、電源スイッチ26を制御する。より具体的には、制御部34は、試験開始時において電源スイッチ26をオンとし、試験終了時において電源スイッチ26をオフとする。これにより、制御部34は、試験時において、電源部22により発生された電源電圧を誘導負荷部24を介して被試験デバイス200へと供給することができる。
【0030】
また、制御部34は、被試験デバイス200を制御する。本実施形態においては、制御部34は、IGBTである被試験デバイス200のゲート電圧を与えて、被試験デバイス200をオンまたはオフに制御する。
【0031】
また、制御部34は、遮断スイッチ28を制御する。本実施形態においては、制御部34は、被試験デバイス200へ電圧を供給する場合に、遮断スイッチ28が有する複数の半導体スイッチ50をオンとする。そして、制御部34は、被試験デバイス200への電圧の供給を遮断する場合において、遮断スイッチ28が有する複数の半導体スイッチ50をオフとする。
【0032】
より具体的には、制御部34は、通常時(即ち、異常検出部32により異常な動作が検出されていない場合)において、複数の半導体スイッチ50をオンとする。そして、制御部34は、試験の異常時(即ち、異常検出部32により異常な動作が検出された場合)において、複数の半導体スイッチ50をオフとする。これにより、制御部34は、異常時において、被試験デバイス200への電流の供給を停止することができる。
【0033】
図2は、IGBTである被試験デバイス200のアバランシェ破壊耐量の試験において、被試験デバイス200が正常に動作した場合における、被試験デバイス200のゲート電圧、コレクタ−エミッタ間電圧、コレクタ電流、遮断スイッチ28の制御信号および接続点Aの電圧の波形の一例を示す。なお、図2において、Vgeは、被試験デバイス200のゲート電圧(ゲート−エミッタ間電圧)を表す。また、Vceは、被試験デバイス200のコレクターエミッタ間電圧を表す。Icは、被試験デバイス200のコレクタ電流を表す。SWは、遮断スイッチ28の制御信号の波形を表す。Vswは、誘導負荷部24と遮断スイッチ28との間の経路(接続点A)の電位を表す。
【0034】
IGBTである被試験デバイス200のアバランシェ破壊耐量を試験する場合、まず、制御部34は、被試験デバイス200をオフとし、電源スイッチ26をオンとする。また、制御部34は、異常は検出されていないので、遮断スイッチ28をオンとする。被試験デバイス200をオフおよび電源スイッチ26をオンとした後、接続点Aの電位(Vsw)は、電源電圧Vccとなる。また、被試験デバイス200のコレクタ−エミッタ間電圧(Vce)も、電源電圧Vccとなる。
【0035】
なお、制御部34は、以後、電源スイッチ26をオンとした状態を維持する。また、制御部34は、以後、異常が検出されるまで、遮断スイッチ28をオンとした状態を維持する。
【0036】
続いて、制御部34は、時刻t1において、被試験デバイス200をオフからオンに切り換える。時刻t1において被試験デバイス200がオンとなった後、被試験デバイス200のコレクタ−エミッタ間電圧(Vce)は、被試験デバイス200の特性に応じた電圧となる。また、接続点Aの電位(Vsw)は、コレクタ−エミッタ間電圧(Vce)から遮断スイッチ28のオン電圧分シフトした電圧となる。
【0037】
また、時刻t1において被試験デバイス200がオンとなった後、被試験デバイス200のコレクタ電流Icは、誘導負荷部24のインダクタンスに応じた変化速度で増加する。そして、誘導負荷部24には、電源部22から供給される電力によってエネルギーが蓄積される。
【0038】
続いて、制御部34は、時刻t1から予め定められた時間が経過した時刻t2において、被試験デバイス200をオンからオフに切り換える。被試験デバイス200がオンからオフに切り換えられると、誘導負荷部24に流れる電流が遮断されて、誘導負荷部24には、逆起電力が発生する。従って、時刻t2において被試験デバイス200がオフとなった後、接続点Aの電位(Vsw)は、電源部22から発生される電源電位Vccと誘導負荷部24の逆起電力に応じた電圧とを加算した電圧に上昇する。
【0039】
また、時刻t2において被試験デバイス200がオフとなった後、誘導負荷部24は、時刻t1から時刻t2の間において蓄積したエネルギーを電流として放出する。被試験デバイス200は、誘導負荷部24から放出された電流をコレクタ電流Icを流すことにより吸収する。
【0040】
従って、被試験デバイス200は、時刻t2において被試験デバイス200がオフとなった後、誘導負荷部24に蓄積されたエネルギーが全て放出されるまでの間、コレクタ電流Icを流す。そして、このコレクタ電流Icは、誘導負荷部24のインダクタンスに応じた変化速度で減少する。なお、誘導負荷部24に蓄積されたエネルギーが電流として放出される期間を、アバランシェ期間Tavという。
【0041】
続いて、誘導負荷部24に蓄積されたエネルギーが全て放出されると(時刻t3)、コレクタ電流Icは、0となる。また、誘導負荷部24により発生された逆起電力も0となるので、接続点Aの電位(Vsw)は、電源電圧Vccとなる。また、被試験デバイス200のコレクタ−エミッタ間電圧(Vce)も、電源電圧Vccとなる。
【0042】
試験装置10は、アバランシェ破壊耐量の試験において、被試験デバイス200に対して以上のような制御を行う。そして、試験装置10は、以上の動作が正常に行われれば、即ち被試験デバイス200に過電流が流れたり破壊したりしなければ、被試験デバイス200が良品であると判定する。
【0043】
図3は、IGBTである被試験デバイス200のアバランシェ破壊耐量の試験において、被試験デバイス200が異常動作した場合における、被試験デバイス200のゲート電圧、コレクタ−エミッタ間電圧、コレクタ電流、遮断スイッチ28の制御信号および接続点Aの電圧の波形の一例を示す。なお、図3において、Vge、Vce、Ic、SWおよびVswは、図2と同様である。
【0044】
試験中において、被試験デバイス200が故障をしたとする。この場合、被試験デバイス200の動作に異常が生じる。
【0045】
例えば、アバランシェ期間Tav中である時刻t4において、被試験デバイス200が短絡モードで故障したとする。この場合、コレクタ電流Icは、急速に増加する。また、接続点Aの電位(Vsw)は、被試験デバイス200が短絡モードで故障したことによって電位が下がる。
【0046】
ここで、このように被試験デバイス200が故障した場合、被試験デバイス200へとコレクタ電流Icを流し続けると、コレクタ電流Icの増加により被試験デバイス200が破壊してしまう可能性が高い。本実施形態に係る異常検出部32は、このように被試験デバイス200が故障した場合、異常が発生したことを制御部34へ通知する。異常検出部32は、一例として、アバランシェ期間において、コレクタ電流Icが急速に上昇したことを検出して、制御部34へと通知する。
【0047】
そして、制御部34は、異常検出部32から通知を受けたことに応じて、遮断スイッチ28が有する複数の半導体スイッチ50をオンからオフに切り換える(時刻t5)。これにより、制御部34は、このように被試験デバイス200が故障した場合、被試験デバイス200へと急速に流れ込むコレクタ電流Icを遮断することができる。このとき、接続点Aの電位(Vsw)は、誘導負荷部24の逆起電力により上昇するが、クランプ電圧に制限される。そして、接続点Aの電位(Vsw)は、一定時間経過後、電源電圧Vccに下がる。
【0048】
これにより、試験装置10によれば、IGBTである被試験デバイス200のアバランシェ破壊耐量の試験において、過電流が流れて被試験デバイス200が破壊したり、試験装置10自体が破壊したりすることを防止することができる。
【0049】
図4は、本実施形態において、誘導負荷部24と被試験デバイス200との間に流れるコレクタ電流Icを遮断する場合における被試験デバイス200に流れる電流の波形の一例を示す。例えば、図4に示されるように、直列に接続された2つの半導体スイッチによりコレクタ電流Icを遮断する場合の遮断期間は、1つの半導体スイッチによりコレクタ電流Icを遮断する場合の遮断期間よりも短い。
【0050】
本実施形態においては、遮断スイッチ28は、直列に接続された複数の半導体スイッチ50により、誘導負荷部24と被試験デバイス200との間を接続(オン)または切断(オフ)する。従って、遮断スイッチ28は、1つの半導体スイッチ50により接続点Aと被試験デバイス200との間をオンからオフに切り換える場合と比較して、高速にオフとすることができる。
【0051】
これにより、本実施形態に係る試験装置10は、試験の異常時において、誘導負荷部24と被試験デバイス200との間に流れる電流を高速に遮断することができる。従って、試験装置10によれば、被試験デバイス200に過剰な電流が流れる前に電流を遮断して、被試験デバイス200の破壊および試験装置10自体の破壊を回避することができる。
【0052】
また、複数の半導体スイッチ50のそれぞれは、耐圧が比較的に低く、安価なものであってよい。複数の半導体スイッチ50は、一例として、IGBTである被試験デバイス200より耐圧が低いIGBTであってよい。これにより、試験装置10は、コストを小さくすることができる。
【0053】
図5は、本実施形態の第1変形例に係る試験装置10の構成を被試験デバイス200とともに示す。本変形例に係る試験装置10は、図1に示した同一符号の部材と略同一の構成および機能を採るので、以下相違点を除き説明を省略する。
【0054】
本変形例に係る試験装置10は、調整部60を更に備える。調整部60は、遮断スイッチ28が有する複数の半導体スイッチ50をオンまたはオフに制御するための複数の制御信号のそれぞれの波形を調整する。このような調整部60は、複数の半導体スイッチ50がオンからオフまたはオフからオンに変化するタイミングを、複数の半導体スイッチ50のそれぞれ毎に調整することができる。
【0055】
図6は、第1の半導体スイッチ50−1および第2の半導体スイッチ50−2のそれぞれ毎に、入力タイミングを変えた制御信号の一例を示す。調整部60は、一例として、複数の制御信号のそれぞれの複数の半導体スイッチ50のそれぞれへの入力タイミングを調整する。
【0056】
この場合、調整部60は、複数の半導体スイッチ50のそれぞれをオフからオンにさせる場合における複数の制御信号のそれぞれの入力タイミングを、被試験デバイス200により近い半導体スイッチ50ほどより遅くする。これにより、調整部60は、複数の半導体スイッチ50をオフからオンに遷移させる場合において、グランド電位側(即ち、被試験デバイス200側)の半導体スイッチ50を最後にオンとすることができる。
【0057】
また、調整部60は、複数の半導体スイッチ50のそれぞれをオンからオフにさせる場合における複数の制御信号のそれぞれの入力タイミングを、被試験デバイス200により近い半導体スイッチ50ほどより早くする。これにより、調整部60は、複数の半導体スイッチ50をオンからオフに遷移させる場合において、グランド電位側(即ち、被試験デバイス200側)の半導体スイッチ50を最初にオンとすることができる。
【0058】
このような調整部60によれば、誘導負荷部24に過大な電圧が発生している場合であっても、複数の半導体スイッチ50に対して平均化した電圧を印加させるので、即ち、1つの半導体スイッチ50のみに過大な電圧を印加させないので、半導体スイッチ50の故障を回避することができる。
【0059】
図7は、第1の半導体スイッチ50−1および第2の半導体スイッチ50−2のそれぞれ毎に、変化時における傾きを変えた制御信号の一例を示す。調整部60は、一例として、複数の制御信号のそれぞれの変化時における傾きを調整する。
【0060】
この場合、調整部60は、複数の半導体スイッチ50のそれぞれをオフからオンにさせる場合における複数の制御信号のそれぞれの傾きを、被試験デバイス200により近い半導体スイッチ50ほど緩やかにする。これにより、調整部60は、複数の半導体スイッチ50をオフからオンに遷移させる場合において、グランド電位側(即ち、被試験デバイス200側)の半導体スイッチ50を最後にオンとすることができる。
【0061】
また、調整部60は、複数の半導体スイッチ50のそれぞれをオンからオフにさせる場合における複数の制御信号のそれぞれの傾きを、被試験デバイス200により近い半導体スイッチ50ほどより急峻とする。これにより、調整部60は、複数の半導体スイッチ50をオンからオフに遷移させる場合において、グランド電位側(即ち、被試験デバイス200側)の半導体スイッチ50を最初にオンとすることができる。
【0062】
このような調整部60であっても、誘導負荷部24に過大な電圧が発生している場合であっても、複数の半導体スイッチ50に対して平均化した電圧を印加させるので、即ち、1つの半導体スイッチ50のみに過大な電圧を印加させないので、半導体スイッチ50の故障を回避することができる。
【0063】
図8は、本実施形態の第2変形例に係る試験装置10の構成を被試験デバイス200とともに示す。本変形例に係る試験装置10は、図1から図7において説明した試験装置10と同様の機能および構成を採るので、以下相違点を除き説明を省略する。
【0064】
試験装置10は、ウエハ部210に形成された複数の被試験デバイス200のアバランシェ破壊耐量を並行して試験する。なお、ウエハ部210は、ウエハ状に配置された複数の被試験デバイス200を保持するトレイ等であってもよい。また、ウエハ部210は、ウエハ状以外の配列で複数の被試験デバイス200を保持する部材(被試験ユニット)であってもよい。
【0065】
本実施形態において、複数の被試験デバイス200のそれぞれは、IGBTである。試験装置10は、試験回路70と、ステージ72と、プローブ74と、撮像部76と、特定部78とを備える。
【0066】
試験回路70は、試験対象となる複数の被試験デバイス200のそれぞれ毎に、図1に示した試験装置10と同一構成の回路を有する。試験回路70の説明については相違点を除き省略する。
【0067】
ステージ72は、ウエハ部210を載置して、複数の被試験デバイス200のそれぞれの裏面に配置された複数のパッドのそれぞれと接触する。ステージ72は、一例として、複数の被試験デバイス200のそれぞれのコレクタと接続する複数のパッドのそれぞれと接触する。そして、ステージ72は、試験回路70から供給される電源電圧を複数の被試験デバイス200のそれぞれのコレクタに印加する。
【0068】
プローブ74は、被試験デバイス200の表面に配置された複数のパッドのそれぞれと接触する。プローブ74は、一例として、複数の被試験デバイス200のそれぞれのゲートと接続する複数のパッドのそれぞれ、および、複数の被試験デバイス200のそれぞれのエミッタと接続する複数のパッドのそれぞれと接触する。そして、プローブ74は、試験回路70から出力されるゲート電圧を、複数の被試験デバイス200のそれぞれのゲートに印加する。また、プローブ74は、グランド電位を複数の被試験デバイス200のそれぞれのエミッタに印加する。
【0069】
撮像部76は、被写体における温度分布を検出するカメラにより、複数の被試験デバイス200が形成されたウエハ部210を撮像する。これにより、撮像部76は、ウエハ部210の表面の温度分布を検出することができる。
【0070】
特定部78は、撮像部76により得られた温度分布に応じてウエハ部210に含まれる複数の被試験デバイス200のうち故障した被試験デバイス200を特定する。特定部78は、一例として、被試験デバイス200の表面に配置されたパッドの温度に応じて、ウエハ部210に含まれる複数の被試験デバイス200のうち、故障した被試験デバイス200を特定する。例えば、特定部78は、温度が予め定められた基準温度より高くなった場所の周囲の被試験デバイス200を故障した被試験デバイス200として特定する。
【0071】
そして、特定部78は、特定した被試験デバイス200が故障したことを試験回路70へと通知する。試験回路70内における特定した被試験デバイス200の試験を制御する制御部34は、試験対象の被試験デバイス200が故障したことの通知を受けると、対応する被試験デバイス200へと電源電圧を供給する経路に設けられた複数の半導体スイッチ50を遮断する。そして、この制御部34は、対応する被試験デバイス200の試験を中止する。
【0072】
このような試験装置10によれば、ウエハ部210に形成された複数の被試験デバイス200を並行して試験する場合において、一部の被試験デバイス200が故障した場合には、その被試験デバイス200のみの試験を中止して、他の被試験デバイス200の試験を継続することができる。これにより、試験装置10によれば、一部の被試験デバイス200が故障したことに応じて全ての被試験デバイス200の試験を中断しなくてもよいので、効率良く試験をすることができる。
【0073】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0074】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0075】
10 試験装置、22 電源部、24 誘導負荷部、26 電源スイッチ、28 遮断スイッチ、30 クランプ部、32 異常検出部、34 制御部、42 直流電源部、44 電源用キャパシタ、45 電源用ダイオード、46 インダクタ、50 半導体スイッチ、52 絶縁増幅器、54 可変電圧源、56 クランプ用キャパシタ、58 ダイオード、60 調整部、70 試験回路、72 ステージ、74 プローブ、76 撮像部、78 特定部、200 被試験デバイス、210 ウエハ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスに供給する電源電圧を発生する電源部と、
前記電源部と前記被試験デバイスとの間の経路上に設けられた誘導負荷部と、
前記誘導負荷部と前記被試験デバイスとの間の経路上に直列に接続された複数の半導体スイッチと、
前記被試験デバイスへの電圧の供給を遮断する場合において、前記複数の半導体スイッチをオフとする制御部と、
を備える試験装置。
【請求項2】
前記制御部は、試験の異常時において前記複数の半導体スイッチをオフとする
請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記電源部と前記誘導負荷部との間の経路上に設けられた電源スイッチを更に備える
請求項1または2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記被試験デバイスおよび前記複数の半導体スイッチのそれぞれは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタであり、
前記複数の半導体スイッチは、コレクタ−エミッタが直列に接続されている
請求項1から3の何れか一項に記載の試験装置。
【請求項5】
前記複数の半導体スイッチをオンまたはオフに制御するための複数の制御信号のそれぞれの波形を調整する調整部を更に備える
請求項1から4の何れか一項に記載の試験装置。
【請求項6】
前記調整部は、前記複数の制御信号のそれぞれの前記複数の半導体スイッチのそれぞれへの入力タイミングを調整する
請求項5に記載の試験装置。
【請求項7】
前記調整部は、前記複数の制御信号のそれぞれの変化時における傾きを調整する
請求項5に記載の試験装置。
【請求項8】
前記誘導負荷部と前記複数の半導体スイッチとの間の経路の電圧を予め設定された範囲内に制限するクランプ部を更に備える
請求項1から7の何れか一項に記載の試験装置。
【請求項9】
被写体における温度分布を検出するカメラにより複数の前記被試験デバイスを含む被試験ユニットを撮像する撮像部と、
得られた温度分布に応じて前記被試験ユニットに含まれる複数の前記被試験デバイスのうち故障した前記被試験デバイスを特定する特定部と
を備える請求項1から8の何れか一項に記載の試験装置。
【請求項10】
前記撮像部は、複数の前記被試験デバイスが形成されたまたはウエハ状態に並べられた複数の前記被試験デバイスを含むウエハ部を撮像し、
前記特定部は、前記ウエハ部の温度分布に応じて故障した被試験デバイスを特定する
請求項9に記載の試験装置。
【請求項11】
前記特定部は、前記被試験デバイスに配置されたパッドの温度に応じて故障した被試験デバイスを特定する
請求項10に記載の試験装置。
【請求項12】
前記特定部は、温度が予め定められた基準温度より高くなった場所の周囲の前記被試験デバイスを故障した被試験デバイスとして特定する
請求項10または11に記載の試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−127808(P2012−127808A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279619(P2010−279619)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】