説明

車載用機器の前面パネル装置

【課題】 スライド部材の往復移動に連動して可動ノーズが回動するタイプの前面パネル装置において、外部からの振動に起因するラットルノイズを抑制し、可動ノーズをスムーズに回動させること。
【解決手段】 モータ12を駆動源として前後方向へ往復移動するスライド部材11に可動ノーズ5の両側面下部に設けられた支軸9を回動自在に連結し、可動ノーズ5の両側面上部に設けられたガイドピン8を前面パネル2の内側壁に設けられた上下方向へ延びるガイド溝10に係合させ、スライド部材11と支軸9との連結部分に一対の捩じりコイルばね25,26を巻装して可動ノーズ5を起立方向へ弾性付勢するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カーオーディオ等の車載用機器の本体装置前面に配置される前面パネル装置に係り、特に、スライド部材の往復移動に連動して可動ノーズが回動するタイプの前面パネル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に、カセットテーププレーヤやCDプレーヤ等の車載用機器には、本体装置の前面に取り付けられた前面パネルに各種操作キーや表示部あるいはテープカセット等の媒体を挿入するための挿入口が配設されているが、近年の多機能化に伴って表示部が大型化したり操作キーの数が増加してくると、これら表示部と操作キーおよび挿入口等の全てを前面パネルの限られたスペース内に配設することが困難になる。
【0003】これに対して、実開平6−4612号公報等に開示された前面パネル装置は、本体装置の開口内に取り付けられた前面パネル側に挿入口を配設すると共に、前面パネルを覆う可動ノーズ側に表示部と各種操作キーを配設し、この可動ノーズをスライド部材によって回動操作することにより、挿入口を選択的に開閉するように構成されている。前記スライド部材はモータを駆動源として本体装置の前後方向に移動可能であり、可動ノーズの下部両側面に設けられた支軸はスライド部材の先端に回動自在に連結されている。また、本体装置の開口の内部両側壁には上下方向へ延びるガイド溝が設けられており、可動ノーズの上部両側面に設けられたガイドピンはガイド溝に沿って移動可能に係合している。
【0004】このように構成された前面パネル装置において、スライド部材が後退位置に引き込まれている場合、可動ノーズは起立した状態にあり、挿入口は可動ノーズによって覆い隠されている。この状態でモータを一方向へ回転駆動し、スライド部材を後退位置から前進位置へ移動させると、可動ノーズの下部両側面に設けられた一対の支軸はスライド部材と共に前進するが、可動ノーズの上部両側面に設けられた一対のガイドピンはガイド溝に沿って上端から下端方向へ移動するため、可動ノーズは支軸を回動支点として回動しながらその下部側が手前側にせり出した状態となり、かかる可動ノーズの回動動作に伴って挿入口が露出される。また、この状態でモータを他方向へ回転駆動し、スライド部材を前進位置から後退位置へ移動させると、上記とは逆に、ガイドピンはガイド溝の下端から上端方向へ移動し、可動ノーズは支軸を回動支点として回動しながらその下部側が引き込まれて起立状態となり、挿入口は再び可動ノーズによって覆い隠される。
【0005】したがって、このような可動ノーズ式の前面パネル装置によれば、閉状態の可動ノーズの全面を表示領域やキー操作領域として活用することができ、媒体の挿入または排出時のみ可動ノーズを回動して挿入口を露出させれば良いため、限られたスペース内に比較的大型の表示部や多くの操作キーを配設できるという利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述した従来の可動ノーズ式前面パネル装置では、可動ノーズの上部側面に設けたガイドピンを本体装置の開口内側壁に設けたガイド溝と係合させると共に、可動ノーズの下部側面に設けた支軸をスライド部材に軸支させることにより、スライド部材の前後方向への往復移動に連動して可動ノーズが回動するように構成されているが、ガイドピンとガイド溝との間に多少のクリアランスが確保されていないと、ガイドピンをガイド溝に沿ってスムーズに移動させることができなくなる。
【0007】しかしながら、このようなクリアランスに起因してガイドピンにガタが生じ易くなり、特に、可動ノーズが傾斜状態で開放している時に外部から振動が作用すると、ガイドピンがガイド溝の壁面に衝突してラットルノイズと称せられる異音を発生するという問題があった。また、可動ノーズの開放角度を水平近くまで大きく設定した場合、可動ノーズの自重によりガイドピンが全開状態の直前でガイド溝内を急激に落下してしまい、可動ノーズのスムーズな回動が妨げられるという問題もあった。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、前後方向に往復移動するスライド部材と可動ノーズの側面に設けられた下部支点との連結部分に捩じりコイルばねを巻装し、この捩じりコイルばねの弾発力によって可動ノーズを起立方向へ常時付勢することとする。このような捩じりコイルばねを付設すると、可動ノーズの上部支点がガイド溝の壁面に押し付けられるため、外部からの振動に起因するラットルノイズを抑制することができ、また、可動ノーズの開放角度を大きく設定した場合でも、可動ノーズをスムーズに回動させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明による車載用機器の前面パネル装置では、本体装置の前面に配置された可動ノーズと、この可動ノーズの両側面に設けられた一対の下部支点に回動自在に連結されたスライド部材と、このスライド部材を前記本体装置の前後方向に往復移動する駆動手段と、前記可動ノーズの両側面に設けられた一対の上部支点を前記本体装置の上下方向へ案内するガイド溝とを備えた車載用機器の前面パネル装置において、前記下部支点と前記スライド部材との連結部分に捩じりコイルばねを巻装し、この捩じりコイルばねの弾発力によって前記可動ノーズを起立方向へ常時付勢するように構成した。
【0010】このように構成すると、可動ノーズの上部支点が捩じりコイルばねの弾発力によってガイド溝の壁面に押し付けられるため、外部からの振動に起因するラットルノイズを抑制することができる。また、可動ノーズの開放角度を大きく設定した場合でも、可動ノーズの開放時における急激な落下が捩じりコイルばねによって防止されると共に、開放状態にある可動ノーズを起立させる時の力が捩じりコイルばねによって補足されるため、可動ノーズをスムーズに回動させることができる。
【0011】前記捩じりコイルばねは可動ノーズの少なくとも一方の側面に設けられていれば良いが、捩じりコイルばねを両下部支点とスライド部材のそれぞれの連結部分に巻装すると、左右のバランスがとれて好適である。この場合において、両捩じりコイルばねのいずれか一方にその巻回部を軸線方向へ伸長する方向の弾発力を付与すると、可動ノーズの左右方向のガタを抑えることができ、より効果的にラットルノイズを抑制することができる。
【0012】
【実施例】実施例について図面を参照して説明すると、図1は実施例に係る前面パネル装置の側面図、図2はスライド部材の駆動機構を示す平面図、図3は前面パネル装置の要部を示す分解斜視図、図4は第2の捩じりコイルばねの側面図、図5は図2のA−A線に沿う断面図、図6は図2のB−B線に沿う断面図である。
【0013】図1に示すように、カーオーディオ装置のシャーシ1の前面に前面パネル2が取り付けられており、これらシャーシ1と前面パネル2によって本体装置が構成されている。前面パネル2に第1の挿入口3と第2の挿入口4が上下2段に開設されており、第1の挿入口3は例えばCDを挿入・排出するための開口であり、第1の挿入口4は例えばテープカセットを挿入・排出するための開口である。前面パネル2の凹所内に可動ノーズ5が配置されており、第1および第2の挿入口3,4は可動ノーズ5の回動操作によって開閉される。図3に示すように、可動ノーズ5の表面に液晶ディスプレイ6やオープン/クローズ釦7aを含む複数の操作キー7が配設されており、また、可動ノーズ5の側面に上部支点であるガイドピン8と下部支点である支軸9が上下方向に所定の間隔をおいて突設されている。なお、ガイドピン8と支軸9は可動ノーズ5の左右両側面にそれぞれ設けられている。前面パネル2の左右両内側壁に上下方向へ延びるガイド溝10が設けられており、ガイドピン8はガイド溝10と移動可能に係合している。
【0014】図2に示すように、シャーシ1上にスライド部材11が載置されており、このスライド部材11はモータ12を駆動源としてシャーシ1の前後方向に移動可能である。すなわち、モータ12の回転軸に取り付けられたウォームギヤ13が歯車列14の一部と歯合し、歯車列14の他部がスライド部材11に設けられたラック11aと歯合している。モータ12はブラケット15に取り付けられており、図5に示すように、ブラケット15はシャーシ1の底面に立設された一対のスタッド16にネジ17を用いて固定されている。このスタッド16には下から順に金属製のローラ18、滑性に優れた樹脂ワッシャ19、円椀状にフォーミングされた曲げワッシャ20、合成樹脂性のスペーサ21が挿入されており、ローラ18はスライド部材11に穿設された長孔11bと係合している。このようにスライド部材11とスペーサ21を直接当接させず、両者の間に樹脂ワッシャ19と曲げワッシャ20を介設する構造を採用しているため、外部からの振動に起因するスライド部材11の上下方向のガタを曲げワッシャ20によって吸収することができ、しかも、スライド部材11の摺動性を滑性に優れた樹脂ワッシャ19によって高めることができる。また、図6に示すように、スライド部材11の裏面に板ばね22がリベット止めされており、この板ばね22をシャーシ1の表面に弾接させることにより、シャーシ1とスライド部材11の導通状態を維持するようになっている。この板ばね22もスライド部材11の上下方向のガタを吸収する機能を有する。なお、シャーシ1の後端とスライド部材11の後端との間にコイルばね23が張架されており、このコイルばね23はスライド部材11の前後方向のガタを吸収すると共に、このスライド部材11を後退させるためのモータ12の駆動力を補足する機能を有する。
【0015】図1と図3に戻り、スライド部材11の先端に斜め上方に突出する一対の腕部11cが形成されており、これら腕部11cの外側からねじ24を両支軸9に締着することにより、可動ノーズ5とスライド部材11は両支軸9を回動支点として回動可能に連結されている。左側の腕部11cと可動ノーズ5の左側面との間に第1の捩じりコイルばね25が介設されており、その両端を可動ノーズ5とスライド部材11に掛止することにより、第1の捩じりコイルばね25は可動ノーズ5を起立方向へ回動付勢している。第1の捩じりコイルばね25の巻回部25aは緊密に巻かれており、支軸9に挿入することによって位置決めされている。また、右側の腕部11cと可動ノーズ5の右側面との間に第2の捩じりコイルばね26が介設されており、その両端を可動ノーズ5とスライド部材11に掛止することにより、第2の捩じりコイルばね26も可動ノーズ5を起立方向へ回動付勢している。図4に示すように、第2の捩じりコイルばね26の巻回部26aは無負荷状態で緩く巻かれており、この巻回部26aを支軸9に挿入して可動ノーズ5と腕部11c間で圧縮することにより、第2の捩じりコイルばね26には巻回部26aの軸線方向へ伸長する方向の弾発力も付与されている。かかる巻回部26aの軸線方向への弾発力により、可動ノーズ5は常時左方向へ弾性付勢されるため、外部からの振動に起因する可動ノーズ5の左右方向のガタが吸収され、ラットルノイズを抑制することができる。
【0016】このように構成された前面パネル装置において、可動ノーズ5が図1の実線で示す起立状態にある時、前面パネル2に開設された第1および第2の挿入口3,4は可動ノーズ5によって覆い隠されており、スライド部材11は後退位置にある。かかる可動ノーズ5の起立状態でオープン/クローズ釦7aを押圧操作すると、モータ12が正転してその回転力がウォームギヤ13から歯車列14を介してラック11aに伝達され、スライド部材11が後退位置から前進位置への移動を開始する。スライド部材11が前進すると、可動ノーズ5の下部両側面に設けられた一対の支軸9はスライド部材11と共に前進するが、可動ノーズ5の上部両側面に設けられた一対のガイドピン8はガイド溝10に沿って上端から下端方向へ移動するため、可動ノーズ5は両支軸9を回動支点として回動しながらその下部側が手前側がせり出し、可動ノーズ5は図1の2点鎖線で示す開放状態となる。かかる可動ノーズ5の回動動作に伴って第1および第2の捩じりコイルばね25,26の両端の開放角度が狭められるため、その反力によってガイドピン8はガイド溝10内をゆっくりと下降し、可動ノーズ5が自重によって全開状態の直前で急激に倒れることを防止できる。なお、可動ノーズ5が全開状態になると、第1および第2の挿入口3,4が露出されるため、これら挿入口3,4からCDやテープカセット等の媒体を挿入・排出することができる。
【0017】また、可動ノーズ5が開放状態にある時にオープン/クローズ釦7aを押圧操作すると、モータ12が逆転して上記と逆の動作が行われる。すなわち、スライド部材11が前進位置から後退位置への移動を開始し、それに伴ってガイドピン8がガイド溝10の下端から上端方向へ移動することにより、可動ノーズ5は図1の実線で示す起立状態に戻る。その際、スライド部材11は全開状態にある可動ノーズ5を起立させるのに大きな力を要するが、十分に撓められた第1および第2の捩じりコイルばね25,26の反力が可動ノーズ5を起立させる方向へ作用しているため、可動ノーズ5の起立方向への回動が第1および第2の捩じりコイルばね25,26によって補足される。しかも、本実施例では、シャーシ1の後端とスライド部材11の後端との間にコイルばね23が張架されているため、このコイルばね23がスライド部材11を後退させる力を助長し、可動ノーズ5を起立方向へスムーズに回動させることができる。
【0018】なお、可動ノーズ5を起立位置と全開位置の間で自由な開放角度に設定するチルト機能をもたせることも可能であり、この場合において、可動ノーズ5が所定のチルト角で斜めに開放している時に外部から振動が作用しても、ガイドピン8が第1および第2の捩じりコイルばね25,26の弾発力によってガイド溝10の壁面に押し付けられているため、外部からの振動に起因するラットルノイズを抑制することができる。
【0019】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0020】前後方向に往復移動するスライド部材と可動ノーズの側面に設けられた下部支点との連結部分に捩じりコイルばねを巻装し、この捩じりコイルばねの弾発力によって可動ノーズを起立方向へ常時付勢するように構成すると、可動ノーズの上部支点が捩じりコイルばねの弾発力によってガイド溝の壁面に押し付けられるため、外部からの振動に起因するラットルノイズを抑制することができる。また、可動ノーズの開放角度を大きく設定した場合でも、可動ノーズの開放時における急激な落下が捩じりコイルばねによって防止されると共に、開放状態にある可動ノーズを起立させる時の力が捩じりコイルばねによって補足されるため、可動ノーズをスムーズに回動させることができる。
【0021】また、前記捩じりコイルばねを両下部支点とスライド部材のそれぞれの連結部分に巻装すると、左右のバランスがとれて好適であり、さらに、両捩じりコイルばねのいずれか一方にその巻回部を軸線方向へ伸長する方向の弾発力を付与すると、可動ノーズの左右方向のガタを抑えることができ、より効果的にラットルノイズを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る前面パネル装置の側面図である。
【図2】スライド部材の駆動機構を示す平面図である。
【図3】前面パネル装置の要部を示す分解斜視図である。
【図4】第2の捩じりコイルばねの側面図である。
【図5】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図2のB−B線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 シャーシ
2 前面パネル
3 第1の挿入口
4 第2の挿入口
5 可動ノーズ
8 ガイドピン(上部支点)
9 支軸(下部支点)
10 ガイド溝
11 スライド部材
12 モータ
25 第1の捩じりコイルばね
25a 巻回部
26 第2の捩じりコイルばね
26a 巻回部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 本体装置の前面に配置された可動ノーズと、この可動ノーズの両側面に設けられた一対の下部支点に回動自在に連結されたスライド部材と、このスライド部材を前記本体装置の前後方向に往復移動する駆動手段と、前記可動ノーズの両側面に設けられた一対の上部支点を前記本体装置の上下方向へ案内するガイド溝とを備えた車載用機器の前面パネル装置において、前記下部支点と前記スライド部材との連結部分に捩じりコイルばねを巻装し、この捩じりコイルばねの弾発力によって前記可動ノーズを起立方向へ常時付勢したことを特徴とする車載用機器の前面パネル装置。
【請求項2】 請求項1の記載において、前記捩じりコイルばねを前記両下部支点と前記スライド部材のそれぞれの連結部分に巻装したことを特徴とする車載用機器の前面パネル装置。
【請求項3】 請求項2の記載において、前記両捩じりコイルばねのいずれか一方にその巻回部を軸線方向へ伸長する方向の弾発力を付与したことを特徴とする車載用機器の前面パネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−76838(P2000−76838A)
【公開日】平成12年3月14日(2000.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−241920
【出願日】平成10年8月27日(1998.8.27)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】