説明

軟質容器及びその製造方法

【課題】気密性を十分に確保しつつ生産性を向上でき、特に湿気硬化性シーリング材用に好適な軟質容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】導電性を有する薄膜10aの両面に樹脂フィルム10b、10cを積層状に設けた軟質フィルムからなる筒状の本体部10と、本体部10の上端外周部に設けたリング部材11と、本体部10の下端開口部を閉塞する底板部材12とを有し、リング部材11と底板部材12とを本体部10に対してインサートインジェクションにより一体成形した容器本体2と、容器本体2の上端開口部13を閉塞する蓋部材3とを備え、容器本体2内に内容物5を充填した状態で、蓋部材3の嵌合筒部20をリング部材11に内嵌させ、蓋部材3とリング部材11との嵌合部間に配置される本体部10の上端部を高周波誘導加熱することで、本体部10を介して蓋部材3をリング部材11に気密に融着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材等の高粘稠液を充填するのに好適な軟質容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シーリング材を充填した従来の容器としては、図14に示す容器100のように、先端部にシーリング材101の吐出用の吐出口102を形成し、基端部を開放した硬質な筒状の容器本体103と、容器本体103の基端開口部に内嵌装着したプランジャー104と、吐出口102を封止する封止蓋105と、吐出口102を閉塞するように、容器本体103の内面に融着した封止フィルム106とを備えたものが広く採用されている。この容器100では、封止蓋105を開放して封止フィルム106を切開してから、吐出口102に図示外のノズルを装着し、これを専用の吐出ガンに装着して、吐出ガンのレバー操作により、プランジャー104を容器本体103の内部先端側へ、シーリング材101に押圧力を加えながら移動させることで、ノズルからシーリング材101を吐出できるように構成されている。
【0003】
このような構成の容器100では、プランジャー104とシーリング材101間の空気を略完全に外部に排出することができ、しかもプランジャー104と容器本体103間の気密性も十分に確保できる。このため、湿気や空気により硬化してしまうシーリング材用の容器として現在広く使用されているが、容器本体103が硬質であるため、シーリング材101を使い切った後に容器本体103を小さく潰すことができず、容器本体103の減容化に限界があり、廃棄物が嵩張るという問題があった。
【0004】
そこで、シーリング材等の高粘稠液を充填する軟質容器として、軟質フィルムからなる筒状の本体部の下端部に底板部材を内嵌融着し、上端部にリング部材を内嵌融着した有底円筒状の容器本体と、容器本体のリング部材に気密状に嵌合される蓋部材と、蓋部材に形成した吐出口を閉塞するように蓋部材の下面に融着した封止フィルムとを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この軟質容器では、前記容器100と同様に、封止フィルム106を切開して吐出口を開口してから、吐出口にノズルを装着し、これを専用の吐出ガンに装着して、吐出ガンのレバー操作により、底板部材を蓋部材側へ移動させて、シーリング材に押圧力を加えるとともに本体部を長さ方向に潰すことで、ノズルからシーリング材を吐出できるように構成され、内容物を吐出させた後の軟質容器を大幅に減容化できるように構成されている。
【0005】
また、この特許文献1には、蓋部材とリング部材との嵌合部における気密性及び嵌合強度を十分に確保するため、蓋部材の外周部に下側へ向けて開口する環状溝からなる蓋側嵌合部を形成し、リング部材の上端部に該蓋側嵌合部に凹凸嵌合する環状の容器側嵌合部を形成し、封止フィルムの外縁部に蓋部材とリング部材との嵌合部に延びるシール部を形成し、蓋部材をリング部材に嵌合させた状態で、高周波誘導加熱装置によりシール部を加熱して、シール部を介して蓋部材とリング部材とを融着させるように構成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−36218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記特許文献1記載の発明では、蓋部材とリング部材間における十分な気密性を確保することができるが、リング部材及び底板部材を予め射出成形装置により製作して、これを筒状の本体部の上端部及び下端部にそれぞれ内嵌させ、外周側からヒートシールなどにより両者を融着している関係上、リング部材及び底板部材の成形装置を小型に構成して設備費を少なくできるものの、容器本体の製造工程が複雑で、生産性を十分に確保できないという問題がある。
【0008】
また、特許文献1には、インサートインジェクションにより、リング部材及び底板部材を成形できる点についても明記されているが、例えばリング部材を本体部の内側に設けると、成形後容器本体をマンドレルから取り外すことが困難になるという問題があり、蓋部材とリング部材間の気密性を十分に確保しつつ、軟質容器の生産性を向上可能な構成までは明記されていない。
【0009】
本発明の目的は、気密性を十分に確保しつつ、生産性を向上可能な軟質容器及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る軟質容器は、導電性を有する薄膜の両面に樹脂層を積層状に設けた軟質フィルムからなる筒状の本体部と、本体部の上端外周部に設けたリング部材と、本体部の下端部に設けた底板部材とを有し、リング部材と底板部材とを本体部に対してインサートインジェクションにより一体成形してなる容器本体と、前記リング部材に内嵌合する嵌合筒部と内容物の吐出口とを有し、容器本体の開口部を閉塞する蓋部材とを備え、蓋部材の嵌合筒部をリング部材に内嵌させた状態で、両者の嵌合部間に配置される本体部の上端部を高周波誘導加熱することで、本体部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着したものである。
【0011】
この軟質容器では、本体部の上端外周部に設けられるリング部材と、本体部の下端部に設けられる底板部材とを、インサートインジェクションにより本体部に対して一体成形するので、リング部材と底板部材とを別個の射出成形装置で成形する場合と比較して、射出成形金型は大型になるが、本体部とリング部材及び底板部材間における気密性及び結合強度を十分に確保でき、しかも本体部に対してリング部材及び底板部材を同時に一体成形できるので、容器本体の製造工程数を減らし、容器本体の生産性を向上できる。また、蓋部材の嵌合筒部をリング部材に内嵌させた状態で、両者の嵌合部間に配置される本体部の上端部を高周波誘導加熱することで、本体部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着しているので、蓋部材とリング部材間における気密性及び嵌合強度も十分に確保できる。更に、蓋部材とリング部材との融着部分が外部に露出せず、変形もないように構成できるので、軟質容器の外観を向上できる。
【0012】
しかも、この軟質容器では、本体部が軟質フィルムで構成されているので、軟質容器を専用の吐出ガンに装着して、本体部を長さ方向に潰しながら内容物を吐出できるので、内容物を使い切った後の廃棄物は、本体部が扁平に潰れたものとなり、廃棄物を大幅に減容化できる。また、底板部材及びリング部材を硬質素材で構成すると、内容物を充填した状態で軟質容器が筒状に保形されるので、軟質容器の取扱性も十分に確保できる。
【0013】
ここで、前記蓋部材とリング部材の嵌合部間において本体部に折返部を形成し、折返部を高周波誘導加熱することで、折返部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着すること、前記蓋部材にリング部材の上面側へ延びる鍔部を形成し、鍔部とリング部材間において本体部の上端外周部にフランジ部を形成し、フランジ部を高周波誘導加熱することで、フランジ部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着すること、などが好ましい実施の形態である。つまり、高周波誘導加熱では、導電性を有する薄膜に形成される渦電流により、該薄膜が発熱してその周辺の合成樹脂を加熱するので、本体部の上端部に折返部やフランジ部を形成することで、嵌合部において発熱する導電性を有する薄膜の面積を増やして、嵌合部分を効率的に加熱融着することができる。また、加熱不要な部分が加熱されないように、高周波誘導加熱の出力を小さく設定しつつ、必要部分を十分に加熱することが可能となる。
【0014】
前記軟質フィルムにおける本体部の外面側と内面側とに、リング部材と蓋部材とに対してそれぞれ相溶性を有する樹脂層を積層状に設けることも好ましい実施の形態である。このように構成すると、リング部材及び蓋部材と本体部間を十分に融着させて気密性及び結合強度を十分に確保できる。特に、前記相溶性を有する樹脂として、ポリエチレンを用いると、シーリング材との接触により変質し難いことから、シーリング材の容器として好適な軟質容器を実現できる。
【0015】
本発明に係る軟質容器の製造方法は、導電性を有する薄膜の両面に樹脂層を積層状に設けた軟質フィルムからなる筒状の本体部と、本体部の上端外周部に設けたリング部材と、本体部の下端開口部を気密に閉塞するように、本体部の下端部に設けた底板部材とを有する容器本体の製造工程であって、本体部を金型にセットして、リング部材と底板部材とを本体部に対してインサートインジェクションにより一体成形する容器本体の製造工程と、前記リング部材に内嵌合する嵌合筒部と内容物の吐出口を有する蓋部材の製造工程と、前記蓋部材の嵌合筒部をリング部材に内嵌合させて、蓋部材とリング部材の嵌合部間に配置される本体部の上端部を高周波誘導加熱装置により加熱して、本体部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着する蓋取付工程とを備えたものである。
【0016】
ここで、前記容器本体の製造工程において、本体部の上端部に折返部を形成し、これを金型にセットして容器本体を製造し、蓋取付工程において、高周波誘導加熱装置により折返部を加熱して、折返部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着すること、前記容器製造工程において、本体部の上端部に外方へ延びるフランジ部を形成し、これを金型にセットして容器本体を製造し、蓋取付工程において、高周波誘導加熱装置によりフランジ部を加熱して、フランジ部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着すること、前記軟質フィルムにおける本体部の外面側と内面側とに、リング部材と蓋部材とに対してそれぞれ相溶性を有する樹脂層を積層状に設けたこと、前記相溶性を有する樹脂として、ポリエチレンを用いたこと、前記蓋取付工程において、蓋部材の嵌合筒部をリング部材に内嵌合させた後、本体部の上端部が、リング部材と蓋部材の嵌合部間に挟持されるようにリング部材又は蓋部材を加圧しながら、高周波誘導加熱装置により本体部の上端部を加熱して、本体部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着すること、などが好ましい実施の形態である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る軟質容器及びその製造方法によれば、リング部材及び底板部材を本体部の両端外周部にインサートインジェクションにより一体成形しているので、設備コストは多少高くなるが、容器本体の生産性を大幅に向上でき、軟質容器の生産性を向上できる。しかも、リング部材と本体部間における気密性及び結合強度を十分に確保できるので、品質安定性に優れた良品の容器本体を製造できる。また、蓋部材をリング部材との嵌合部間に配置した本体部の上端部を、高周波誘導加熱装置により加熱して、蓋部材とリング部材とを気密に融着するので、蓋部材とリング部材間における気密性及び結合強度を十分に確保でき、しかも、蓋部材とリング部材との融着部分が外部に露出せず、変形しないように構成できるので、軟質容器の外観を向上できる。
【0018】
また、この軟質容器によれば、本体部を軟質フィルムで構成しているので、内容物を使い切った後の容器を大幅に減容化できること、底板部材及びリング部材を硬質素材で構成することにより、軟質容器の取扱性を向上できること、などの効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜図6に示すように、軟質容器1は、導電性を有する薄膜10a(図6参照)の両面に樹脂フィルム(樹脂層に相当する)10b、10cを積層状に設けた軟質フィルムからなる筒状の本体部10と、本体部10の上端外周部に設けたリング部材11と、本体部10の下端開口部を閉塞するように、本体部10の下端部に設けた底板部材12とを有し、リング部材11と底板部材12とを本体部10の両端外周部に対してインサートインジェクションにより一体成形した容器本体2と、リング部材11に内嵌合する嵌合筒部20と内容物5の吐出口21とを有し、容器本体2の上端開口部13を閉塞する蓋部材3と、蓋部材3の下面に融着されて吐出口21を閉鎖する封止フィルム4とを備え、容器本体2内に内容物5を充填した状態で、蓋部材3の嵌合筒部20をリング部材11に内嵌させ、蓋部材3とリング部材11との嵌合部間に配置される本体部10の上端部を高周波誘導加熱することで、本体部10を介して蓋部材3をリング部材11に気密に融着し、内容物5を軟質容器1内に気密に封入したものである。前記蓋部材3の吐出口21を閉鎖する封止フィルム4は、吐出口21を閉鎖可能な大きさであればよく、筒状の本体部10と嵌合する蓋部材3の側面まで貼着するものではないし、そのように構成する必要もない。
【0020】
内容物5としては、シーリング材や接着剤や塗料などの高粘稠液が好適であるが、マヨネーズやジャムなどの食品類などの高粘稠液や、高粘稠液以外の液状やゲル状の内容物5をこの軟質容器1に収容することも可能である。特に、この軟質容器1は、両端部の気密性が十分に確保されるので、内容物として湿気や空気の影響を受け易いものの容器として好適である。本実施の形態の軟質容器1は、内容物5として湿気硬化性一液型シーリング材を充填してなるものである。
【0021】
本体部10は、図6に示すように、アルミニウム箔などの導電性を有する金属箔などからなる薄膜10aの両面に樹脂フィルム10b、10cをラミネートした複層構造の軟質フィルム材で構成され、この軟質フィルムを筒状に丸めて両側縁部を重ね合わせ、重ね合わせた部分をヒートシールや超音波シールや高周波誘導シールなどにより融着させることにより筒状に製作されている。本実施例では、アルミニウム箔からなる薄膜10aを樹脂フィルム10b、10c間に積層した3層構造乃至4層構造のフィルム材を用い、このフィルム材を筒状に丸めた状態で、側縁を重ね合わせてヒートシールすることで筒状に製作されている。ラミネートする樹脂フィルム10b、10cの素材としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンなどのヒートシール可能な熱可塑性樹脂が好適に利用できる。特に、リング部材11と底板部材12と蓋部材3とに対して相溶性を有するように同一素材で構成することが好ましく、また、内容物5として、シーリング材を容器本体2に充填する場合には、シーリング材との接触により変質等しないポリエチレンやポリプロピレンのフィルムを好適に利用でき、特に安価に入手できることからポリエチレンを用いることが望ましい。また、内容物5として、シーリング材を容器本体2に充填する場合には、内面側と外面側とでは使用条件が異なるので、使用条件に応じた素材からなる樹脂フィルム10b、10cを用いることもでき、例えば内面側の樹脂フィルム10bとして、シーリング材との接触により変質等しないポリエチレンやポリプロピレンのフィルムを用い、外面側の樹脂フィルム10cとして、強度面やガスバリヤ性を重視してポリエステルやナイロンのフィルムを用いることができる。
【0022】
本体部10は、その全長にわたって同一径に構成することも可能であるが、筒状に成形するときや、インサートインジェクションするときに使用する、円筒状又は円柱状のマンドレルから抜き取り易くするため、一端側を縮径させた緩やかなテーパ筒状に構成することが好ましい。
【0023】
リング部材11及び底板部材12は、本体部10との融着性を考慮して、本体部10の樹脂フィルム10b、10cと相溶性を有する素材で構成されている。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂材料で構成でき、特に安価に入手できることからポリエチレンで構成することが望ましい。
【0024】
図1〜図4に示すように、リング部材11の下半部にはリング部14が形成され、上半部にはリング部14よりもやや小径の容器側嵌合部15が上方へ突出状に形成され、容器側嵌合部15の基部外周面には環状の嵌合溝16が形成されている。リング部材11は本体部10の上端外周部にインサートインジェクションにより一体成形され、本体部10の上端部はリング部材11の内周面に気密に融着され、本体部10の上端部とリング部材11の上端部とは略同じ高さ位置に配置されている。
【0025】
底板部材12の外周部には上方へ延びる環状の縦壁部17が形成され、底板部材12は、縦壁部17が本体部10の下端外周部に位置するように、本体部10の下端部にインサートインジェクションにより一体成形され、本体部10の下端部は縦壁部17の内側に気密に融着固定されている。
【0026】
蓋部材3は、図1〜図5に示すように、リング部材11に内嵌される嵌合筒部20と、嵌合筒部20の下端部から内側へ延びて容器本体2の上端開口部13を閉鎖する蓋本体22と、嵌合筒部20の上端部から外側へ延びる鍔部23とから一体的に形成されている。鍔部23にはリング部材11の容器側嵌合部15に外嵌合する環状溝からなる蓋側嵌合部24が下方へ向けて開口するように形成され、鍔部23の外周端にはリング部材11の嵌合溝16に嵌合する環状の係止爪25が形成されている。蓋本体22の略中央部には上方へ突出する吐出部26が形成され、吐出部26内には容器本体2内に連通する吐出口21が形成されている。尚、リング部材11の嵌合溝16と蓋部材3の係止爪25とは省略することが可能である。またリング部材11の容器側嵌合部15と蓋部材3の蓋側嵌合部24とは省略することも可能である。
【0027】
リング部材11に対して蓋部材3を打栓するときに、容器本体2内に空気が残留しないようにするため、蓋部材3の嵌合筒部20の下端外周面には下方へ向けて縮径するテーパ部27が形成され、嵌合筒部20の途中部には下端が容器本体2内に開口し、上端部が嵌合筒部20の高さ方向の略中央部まで延びるガス抜き用の溝部28が円周方向に間隔をあけて形成されている。
【0028】
蓋本体22の下面には吐出口21を閉塞する封止フィルム4が気密に融着されている。この封止フィルム4は、ガスバリア性を十分に確保するため、本体部10を構成する軟質フィルムと同じ構成のラミネートフィルムで構成されている。ただし、単層の樹脂フィルムや金属箔で構成することもできる。軟質容器1から内容物5を取り出す際には、吐出口21内の封止フィルム4を切開して、吐出部26に図示外のノズルを取付け、ノズルから内容物5を吐出させることになる。この封止フィルム4は吐出口21を閉鎖するだけのものでよく、蓋部材22の側面は覆わなくてもよい。
【0029】
この軟質容器1では、蓋部材3の嵌合筒部20をリング部材11の内嵌合させるとともに、蓋部材3の蓋側嵌合部24をリング部材11の容器側嵌合部15に嵌合させ、更に蓋部材3の鍔部23の外周端に形成した係止爪25をリング部材11の嵌合溝16に嵌合させることによって、蓋部材3がリング部材11に取り付けられている。また、この状態で図4に示すように、リング部材11の内周面と蓋部材3の嵌合筒部20の外周面との嵌合部11a、20a間には本体部10の上端部が介装され、この本大部10の上端部における導電性の薄膜10aを高周波誘導加熱により発熱させて、該薄膜10aに積層された樹脂フィルム10b、10cと、それに対面する嵌合部11a、20aの樹脂部分とを加熱融着することで、リング部材11と蓋部材3とは本体部10を介して気密に融着固定されている。嵌合部20aの形成範囲は、蓋部材3の嵌合筒部20にはその下端部から高さ方向の略中央部まで延びる溝部28が形成されているので、溝部28の上端部から鍔部23までの範囲に形成され、嵌合部11aの形成範囲は、嵌合部20aに対応する範囲に形成される。嵌合部11a、20aの高さ方向の形成範囲は、嵌合部11a、20a間における気密性及び結合強度を考慮して適宜に設定することになる。
【0030】
次に、内容物5を充填した軟質容器1の製造方法について説明する。
この軟質容器1の製造方法は、容器本体2の製造工程と、蓋部材3の製造工程と、容器本体2に内容物5を充填してリング部材11に蓋部材3を気密に嵌合固定する内容物封入工程とから構成されている。尚、内容物封入工程において、リング部材11に対して蓋部材3を嵌合固定する工程が蓋取付工程に相当する。
【0031】
容器本体2の製造工程では、軟質フィルムをマンドレルに巻き付けてその両側縁をヒートシールや超音波シールや高周波誘導シールなどにより融着し、略円筒状の本体部10を製作する。次に、図7に示すように、この本体部10をマンドレル30に外装させた状態で金型31、32にセットして、金型31、32に形成した成形空間33、34内に溶融樹脂を射出し、インサートインジェクションにより、本体部10の上端外周部にリング部材11を一体成形するとともに、本体部10の下端開口部を気密に閉塞するように、本体部10の下端部に底板部材12と一体成形する。このようにインサートインジェクションによりリング部材11及び底板部材12を本体部10に一体成形するので、リング部材11と本体部10間及び底板部材12と本体部10間とを確実に気密に融着させることができ、しかも結合強度を十分に確保することができる。また、射出成形装置の金型31、32内において、リング部材11及び底板部材12の成形と、リング部材11及び底板部材12と本体部10との融着を同時に行うことができるので、リング部材11と底板部材12を別個に製作して、これらを本体部10に融着する場合と比較して、容器本体2の生産性を格段に向上することができる。
【0032】
蓋部材3の製造工程では、周知の射出成形方法により蓋部材3を成形し、蓋部材3の底面に吐出口21を閉塞する封止フィルム4をヒートシールや超音波シールや高周波誘導シールなどにより融着固定する。
【0033】
内容物封入工程では、図8(a)に示すように、容器本体2のリング部材11を図示外の保持手段により保持して、容器本体2を縦向きに支持した状態で、内容物5の注入管40を容器本体2の奥部内まで挿入し、この状態で注入管40から容器本体2内に内容物5を注入しながら、容器本体2を注入管40に対して相対的に下降させ、内容物5に気泡が入らないように、容器本体2内に内容物5を必要量だけ注入する。内容物5を注入した状態で、図8(b)に示すように、内容物5の液面は、内容物5の粘度が高いことから、中央部が盛り上がった山形状になる。次に、図8(c)に示すように、内容物5を注入した容器本体2の本体部10の途中部を図示外の押圧部材により押圧して、内容物5の液面を隆起させ、注入した内容物5の見かけ上の注入量を多めに調整する。このとき、内容物5の液面は、注入時の山形状を略維持した状態で隆起する。次に、押圧部材による押圧を解放してから、予め封止フィルム4を下面に融着した蓋部材3を図示外の打栓手段により下方へ突き出して、本体部10を元の形状に復帰させながら、図8(d)に示すように、容器本体2のリング部材11に蓋部材3の嵌合筒部20を挿入することになる。このとき蓋部材3は、先ず図9に示すように、内容物5の液面の頂部に密着し、次に液面の頂部を潰しながら、つまり液面と蓋部材3との密着部分を外周側へ広げながら、内容物5の液面に密着するので、蓋部材3と内容物5間の空気は排出され、更に蓋部材3がリング部材11に挿入され始めると、ガス抜き用の溝部28内において、封止フィルム4とリング部材11間に隙間が形成され、この隙間を通って外部に略完全に排出され、図10に示すように、蓋部材3がリング部材11に挿入される。
【0034】
また、このとき蓋部材3がリング部材11内に押し込まれ、図3に示すように、蓋部材3の蓋側嵌合部24にリング部材11の容器側嵌合部15が嵌合されるとともに、蓋部材3の係止爪25がリング部材11の嵌合溝16に嵌合し、蓋部材3をリング部材11に嵌合させる。尚、本体部10は柔軟な薄膜10aで構成しているので、押圧部材による本体部10の押圧を解放しないで、押圧部材の押圧力よりも大きな力で蓋部材3をリング部材11に挿入し、打栓することもできる。但し、内容物5として気泡が多少混入されても品質低下等の問題が発生しないものを容器本体2に充填する場合には、容器本体2内に内容物5を充填した後、本体部10の途中部を図示外の押圧部材により押圧するなどの処理を行うことなく、蓋部材3を打栓することも可能である。
【0035】
こうして、蓋部材3を打栓してから、図11に示すように、高周波誘導加熱装置の誘導コイル41に、例えば900kHzの周波数で2.5kWの電力を供給しながら、図示外の加圧部材により矢印で示すように、蓋部材3を内側へ0.2〜0.4MPaの加圧力で1.5〜2.5秒間加圧して、リング部材11の内周面と蓋部材3の嵌合筒部20の外周面との嵌合部11a、20a間において本体部10の上端部を挟持しながら、誘導コイル41により本体部10の上端部を構成する軟質フィルムの薄膜10aを発熱させ、薄膜10aにより本体部10の上端部の樹脂フィルム10b、10c及びその付近の嵌合部11a、20aの樹脂部分を加熱溶融させて、本体部10の上端部を介して蓋部材3及びリング部材11を融着し、蓋部材3をリング部材11に気密状に固定することになる。加圧力は、0.2MPa未満では、融着不良が発生し、0.4MPaを超える場合には、蓋部材3やリング部材11が変形するので、0.2〜0.4MPaに設定することが好ましく、加圧時間は1.5秒未満の場合には、融着不良が発生し、2.5秒を超える場合には、過融着により蓋部材3やリング部材11が変形するので、1.5〜2.5秒間に設定することが好ましい。また、高周波誘導加熱の出力及び加熱時間は、リング部材11よりも下側の本体部10が加熱により変形したり変質したりしない範囲内に設定し、好ましくはテーパ部27よりも上側の嵌合部11a、20a間に配置される本体部10の上端部のみが加熱されるように設定することになる。但し、蓋部材3をリング部材11に強く嵌合させる場合には、加圧部材による蓋部材3の内側への加圧は省略することができる。また、蓋部材3の上側に誘導コイル41を配置させたが、蓋部材3の外周を取り囲むように蓋部材の外周側に誘導コイル41を配置させることも可能である。
【0036】
このようにして容器本体2内に内容物5を注入し打栓した軟質容器1においては、蓋部材3付近における空気の残留を効果的に防止でき、残留空気による内容物5の劣化や硬化を効果的に防止することが可能となる。また、本体部10の樹脂フィルム10b、10cが蓋部材3及びリング部材11にそれぞれ融着することで、嵌合部24、15間における気密性を十分に確保できるので、蓋部材3とリング部材11間の隙間から外気が侵入することによる、内容物5の硬化や品質劣化を効果的に防止できる。それ故、特に、内容物5として湿気硬化性組成物からなるシーリング材を充填した場合でも、容器本体2内への湿気の侵入を確実に防止して、湿気による内容物5の硬化を防止できる。
【0037】
尚、図12に示す軟質容器1Aのように、蓋部材3とリング部材11の嵌合部24、15間において折返部50を本体部10Aの上端部に形成した容器本体2Aを用い、この容器本体2Aのリング部材11に蓋部材3を嵌合させた状態で、折返部50を高周波誘導加熱することで、折返部50を介して蓋部材3をリング部材11に気密に融着することもできる。この場合には、リング部材11と蓋部材3間に配置される導電性を有する薄膜10aが重なるので、高周波誘導加熱による薄膜10aの発熱部分の面積を増やして発熱量を増大でき、本体部10の上端部を挟持する、蓋部材3の嵌合筒部20の外周面とリング部材11の内周面を効率的に加熱することができる。このような折返部50を有する容器本体2Aを成形する際には、本体部10Aに予め折返部50を形成した状態で、これを金型31、32内にセットして、インサートインジェクションにより、リング部材11及び底板部材12を成形することで容易に成形できる。
【0038】
また、図13に示す軟質容器1Bのように、鍔部23とリング部材11間に配置されるフランジ部51を本体部10Bの上端部に形成した容器本体2Bを用い、この容器本体2Bに蓋部材3を嵌合させた状態で、フランジ部51を高周波誘導加熱することで、フランジ部51を介して蓋部材3をリング部材11に気密に融着することもできる。この場合には、誘導コイル41で蓋部材3を下側に加圧して、蓋部材3とリング部材11間にフランジ部51を挟持することができ、フランジ部51を挟持するための加圧部材やその駆動手段を別途に設ける必要がないので好ましい。また、蓋部材3の嵌合筒部20の外周面とリング部材11の内周面間に配置される本体部10の上端部だけでなく、フランジ部51をも高周波誘導加熱により発熱させて、それに対面する蓋部材3及びリング部材11の樹脂部分を効率よく加熱することができる。このようなフランジ部51を有する容器本体2Bを成形する際には、本体部10Bに予めフランジ部51を形成した状態で、これを金型31、32内にセットして、インサートインジェクションにより、リング部材11及び底板部材12を成形することで容易に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】内容物を充填した軟質容器の斜視図
【図2】軟質容器要部の分解斜視図
【図3】内容物を充填した軟質容器要部の縦断面図
【図4】内容物を充填した軟質容器のリング部材付近の要部縦断面図
【図5】封止フィルムを除去した状態での蓋部材の側面図
【図6】本体部を構成する軟質フィルムの積層構造を示す縦断面図
【図7】インサートインジェクションの説明図
【図8】(a)〜(d)は軟質容器に対して内容物を充填し密封する方法の説明図
【図9】容器本体に対する蓋部材の打栓途中の説明図
【図10】容器本体に対する蓋部材の打栓途中の説明図
【図11】容器本体に対する蓋部材の融着時の説明図
【図12】他の構成の軟質容器のリング部材付近の要部縦断面図
【図13】他の構成の軟質容器のリング部材付近の要部縦断面図
【図14】従来の技術に係るシーリング材充填容器の縦断面図
【符号の説明】
【0040】
1 軟質容器 2 容器本体
3 蓋部材 4 封止フィルム
5 内容物
10 本体部 10a 薄膜
10b 樹脂フィルム 10c 樹脂フィルム
11 リング部材 11a 嵌合部
12 底板部材 13 上端開口部
14 リング部 15 容器側嵌合部
16 嵌合溝 17 縦壁部
20 嵌合筒部 20a 嵌合部
21 吐出口 22 蓋本体
23 鍔部 24 蓋側嵌合部
25 係止爪 26 吐出部
27 テーパ部 28 溝部
30 マンドレル 31 金型
32 金型 33 成形空間
34 成形空間
40 注入管 41 誘導コイル
1A 軟質容器 2A 容器本体
10A 本体部 50 折返部
1B 軟質容器 2B 容器本体
10B 本体部 51 フランジ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する薄膜の両面に樹脂層を積層状に設けた軟質フィルムからなる筒状の本体部と、本体部の上端外周部に設けたリング部材と、本体部の下端部に設けた底板部材とを有し、リング部材と底板部材とを本体部に対してインサートインジェクションにより一体成形してなる容器本体と、
前記リング部材に内嵌合する嵌合筒部と内容物の吐出口とを有し、容器本体の開口部を閉塞する蓋部材と、
を備え、蓋部材の嵌合筒部をリング部材に内嵌させた状態で、両者の嵌合部間に配置される本体部の上端部を高周波誘導加熱することで、本体部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着したことを特徴とする軟質容器。
【請求項2】
前記蓋部材とリング部材の嵌合部間において本体部に折返部を形成し、折返部を高周波誘導加熱することで、折返部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着した請求項1項記載の軟質容器。
【請求項3】
前記蓋部材にリング部材の上面側へ延びる鍔部を形成し、鍔部とリング部材間において本体部の上端外周部にフランジ部を形成し、フランジ部を高周波誘導加熱することで、フランジ部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着した請求項1又は2記載の軟質容器。
【請求項4】
前記軟質フィルムにおける本体部の外面側と内面側とに、リング部材と蓋部材とに対してそれぞれ相溶性を有する樹脂層を積層状に設けた請求項1〜3のいずれか1項記載の軟質容器。
【請求項5】
前記相溶性を有する樹脂として、ポリエチレンを用いた請求項4記載の軟質容器。
【請求項6】
導電性を有する薄膜の両面に樹脂層を積層状に設けた軟質フィルムからなる筒状の本体部と、本体部の上端外周部に設けたリング部材と、本体部の下端部に設けた底板部材とを有する容器本体の製造工程であって、本体部を金型にセットして、リング部材と底板部材とを本体部に対してインサートインジェクションにより一体成形する容器本体の製造工程と、
前記リング部材に内嵌合する嵌合筒部と内容物の吐出口を有する蓋部材の製造工程と、
前記蓋部材の嵌合筒部をリング部材に内嵌合させて、蓋部材とリング部材の嵌合部間に配置される本体部の上端部を高周波誘導加熱装置により加熱して、本体部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着する蓋取付工程と、
を備えたことを特徴とする軟質容器の製造方法。
【請求項7】
前記容器本体の製造工程において、本体部の上端部に折返部を形成し、これを金型にセットして容器本体を製造し、蓋取付工程において、高周波誘導加熱装置により折返部を加熱して、折返部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着する請求項6記載の軟質容器の製造方法。
【請求項8】
前記容器製造工程において、本体部の上端部に外方へ延びるフランジ部を形成し、これを金型にセットして容器本体を製造し、蓋取付工程において、高周波誘導加熱装置によりフランジ部を加熱して、フランジ部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着する請求項6又は7記載の軟質容器の製造方法。
【請求項9】
前記軟質フィルムにおける本体部の外面側と内面側とに、リング部材と蓋部材とに対してそれぞれ相溶性を有する樹脂層を積層状に設けた請求項6〜8のいずれか1項記載の軟質容器の製造方法。
【請求項10】
前記相溶性を有する樹脂として、ポリエチレンを用いた請求項9記載の軟質容器の製造方法。
【請求項11】
前記蓋取付工程において、蓋部材の嵌合筒部をリング部材に内嵌合させた後、本体部の上端部が、リング部材と蓋部材の嵌合部間に挟持されるようにリング部材又は蓋部材を加圧しながら、高周波誘導加熱装置により本体部の上端部を加熱して、本体部を介して蓋部材をリング部材に気密に融着する請求項6〜10のいずれか1項記載の軟質容器の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−269385(P2007−269385A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99272(P2006−99272)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】