説明

近接場露光用マスク及び該マスクを用いたレジストパターンの形成方法

【課題】露光中におけるマスクの発熱を抑制し、ショット毎のレジストパターンサイズのばらつきを抑えることが可能となる近接場露光用マスク及び該マスクを用いたレジストパターンの形成方法を提供する。
【解決手段】透明マスク母材101と、該透明マスク母材上のシリコンを含む遮光層103と、該透明マスク母材と該遮光層の間に設けられた反射層102を有し、前記反射層102と前記遮光層103に露光波長λ(nm)より小さい開口パターンが設けられた近接場露光用マスクであって、 前記透明マスク母材101と前記反射層との界面からの反射率が、透明マスク母材上のシリコンを含む遮光層との間に反射層を有さない近接場露光用マスクにおける透明マスク母材と遮光層界面からの反射率よりも高い構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場露光用マスク及び該マスクを用いたレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリの大容量化やCPUプロセッサの高速化・大集積化の進展とともに、光リソグラフィーのさらなる微細化は必要不可欠のものとなっている。
一般に光リソグラフィー装置における微細加工限界は、用いる光の波長の3分の1程度である。
このため、光リソグラフィー装置に用いる光の短波長化が進み、50nm程度の微細加工が可能となっている。
このように微細化が進むフォトリソグラフィであるが、光の短波長化に伴い、露光装置の大型化、その波長域でのレンズの開発、装置のコスト、対応するレジストのコストなど、解決すべき課題が数多く浮上してきている。
【0003】
一方、光を用いてその波長以下の解像度の微細加工を行なうために、近接場光を用いる方法が提案されている。
近接場光リソグラフィでは、光の回折限界の制約を受けないため、光源波長の3分の1以下の空間分解能を得ることができる。
また、光源として水銀灯や半導体レーザを使えば、光源自体を小さくすることができることから、露光装置構成の小型化を図ることができ、コストも低くすることが可能となる。
【0004】
このような近接場光を用いる方法の一つとして、光ファイバーの先端をウエットエッチングにより先鋭化したプローブを走査する方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この方式では、1本または数本の加工用プローブで一書きのように微細加工を行っていく構成であるため、スループットを向上させるという点に問題を有していた。
このため、光源波長より狭い開口が形成された遮光層を有するフォトマスクをレジストに密着させ、一括露光を行なうことで、スループットの向上を図ることが可能となる近接場露光方式が提案されている(例えば、非特許文献1、特許文献2参照)。
このような密着露光方式による近接場光によって、微細なレジストパターンを形成するためには、遮光層に露光波長より小さい開口パターンが設けられてなる近接場露光用マスクを用い、近接場露光用マスクとレジストを密着する必要がある。
近接場光の強度分布は、微小開口から離れるに従って急激に減衰するためである。
近接場露光用マスクの遮光層とし、シリコンを用いることで、消衰係数が大きく、ドライエッチングによる微細加工が容易となり、これにより微細な遮光層パターンを形成することが可能となる。
従来において、このような遮光層による近接場露光用マスクを用いて、マスクパターンを露光により転写することで、微細なレジストパターンを形成することが知られている(非特許文献2)。
一方、投影露光用マスクにおいて、金属遮光層とマスク母材との間に反射層を設け、投影露光用マスク自体の熱歪みを抑制するための技術が、例えば、特許文献3などで知られている。
【特許文献1】特開平7−106229号公報
【特許文献2】特開平11−145051号公報
【特許文献3】特開2001−166453号公報
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,75,3560(1999)
【非特許文献2】2006年春季第53回応用物理学会予稿集、25a−ZB−1(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、遮光層を有するマスクをレジスト層に密着させて露光を行なう近接場露光においては、遮光層によるマスクの熱がレジスト層に伝わり、パターンサイズがばらつくという問題が生じる。
次に、これらについて、更に詳細に説明する。
上記近接場露光において、マスクの遮光層は、照射光を反射または吸収し、直下に暗部を形成する。
ここで、例えば、露光光として水銀灯光のi線(波長365nm)、マスク母材として窒化シリコン(i線における複素屈折率2.09+0i)、遮光層としてアモルファスシリコン(i線における複素屈折率3.90+2.66i)を用いた場合を考える。
このような場合において、フレネルの式から計算されるマスク母材と遮光層界面における露光光の反射率は21%である。
反射されなかった露光光は遮光層に吸収され、熱に変換される。
フォトマスクの遮光層において、透過率がほぼ0%であることは、説明するまでもないことである。
【0006】
一方、レジストは主として光反応により現像コントラストを発現するが、熱によっても反応が促進されることが一般に知られている。
特に、化学増幅型レジストや、光カチオン重合型レジストのような、光酸発生剤から生じた酸を触媒とする反応を起こすレジストにおいて、熱による反応の促進が顕著である。
このようなことから、遮光層を有するマスクをレジスト層に密着させて露光を行なう近接場露光において、遮光層でのマスクの熱がレジスト層に伝わることで、マスクの温度によってレジストの反応率が異なり、ショット毎にパターンサイズにばらつきが生じる。
その際、マスクの温度によるレジストの反応率が高い場合、例えば、ラインパターンであれば、ポジ型レジストでは線幅が細くなり、ネガ型レジストでは線幅が太くなる。
このような問題は、マスクとレジストが接触しない投影露光やプロキシミティ露光にはなかった、遮光層を有するマスクをレジスト層に密着させて露光を行なう近接場露光に特有の課題である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、露光中におけるマスクの発熱を抑制し、ショット毎のレジストパターンサイズのばらつきを抑えることが可能となる近接場露光用マスク及び該マスクを用いたレジストパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、つぎのように構成した近接場露光用マスク及び該マスクを用いたレジストパターンの形成方法を提供するものである。
本発明の近接場露光用マスクは、
透明マスク母材lと、該透明マスク母材上のシリコンを含む遮光層lと、該透明マスク母材と該遮光層の間に設けられた反射層lを有し、前記反射層lと前記遮光層lに露光波長λ(nm)より小さい開口パターンが設けられた近接場露光用マスクであって、
前記透明マスク母材lと前記反射層界面lからの反射率が、透明マスク母材上のシリコンを含む遮光層との間に反射層を有さない近接場露光用マスクにおける透明マスク母材と遮光層界面からの反射率よりも高いことを特徴とする。
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記反射層の材料の複素屈折率を(n+ik)とし、前記反射層の厚さをd(nm)とするとき、これらが下記の式(1)を満たすように設定されることを特徴とする。

【0009】
但し、m,nを0,1,2のいずれかの添え字とし、
m=(lm層の複素屈折率)=nm+ikm
mn=(Ym−Yn)/(Ym+Yn
mn=2(Ymn)0.5/(Ym+Yn
t=exp[(−2πkl/λ)d]
γ=(−2πnl/λ)d
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記反射層lを有する近接場露光用マスクにおいて、
前記遮光層lが、シリコンをモル分率で50%以上100%以下の範囲で含むことを特徴とする。
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記反射層lが、複数の層で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記反射層lが、アルミニウムであることを特徴とする。
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記反射層lが、銀であることを特徴とする。
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記反射層lが、クロムであることを特徴とする。
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記透明マスク母材lが、窒化シリコンであることを特徴とする。
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記透明マスク母材lが、シリコーンゴムであることを特徴とする。
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記透明マスク母材lが、合成樹脂であることを特徴とする。
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記透明マスク母材lが、スピン・オン・グラスであることを特徴とする。
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記透明マスク母材lが、石英であることを特徴とする。
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記透明マスク母材lと前記反射層lとの間に、中間母材が設けられることを特徴とする。
また、本発明の近接場露光用マスクは、前記中間母材が、石英またはスピン・オン・グラスであることを特徴とする。
また、本発明のレジストパターンの形成方法は、近接場露光用マスクを用い、該マスクをレジストに接触させた状態で露光を行なって、レジスト中にパターンを形成するレジストパターンの形成方法において、
前記近接場露光用マスクに、上記したいずれかに記載の近接場露光用マスクを用いることを特徴とする。
また、本発明のレジストパターンの形成方法は、前記レジストに、前記密着露光で発生する酸を触媒とした反応により現像コントラストを生じるレジストが用いられることを特徴とする。
また、本発明のレジストパターンの形成方法は、前記レジストが、化学増幅型レジストであることを特徴とする。
また、本発明のレジストパターンの形成方法は、前記レジストが、光カチオン重合型レジストであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、露光中におけるマスクの発熱を抑制し、ショット毎のレジストパターンサイズのばらつきを抑えることが可能となる近接場露光用マスク及び該マスクを用いたレジストパターンの形成方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
シリコンを遮光層とする近接場露光において、ショット毎のパターンサイズのばらつきを抑えるためには、近接場露光用マスクとして露光中の発熱が小さいマスクを用いることが必要である。
このようなことから、本発明者らは、鋭意研究した結果、近接場露光用マスクのシリコン遮光層とマスク母材との間に反射層を設け、露光中における遮光層でのマスクの発熱を抑制することが可能となる新規な構成を見出した。
【0012】
ところで、前述したように、投影露光用マスクにおいては、金属遮光層とマスク母材との間に反射層を設ける技術が、特許文献3などで知られている。
しかし、この技術は、マスク自体の熱歪みを抑制するためのものであり、遮光層でのマスクの熱がレジスト層に伝わることで、パターンサイズにばらつきが生じるという本発明の上記課題を解決するためのものではない。
【0013】
以下に、これらについて更に詳細に説明する。
図1に、本実施の形態における反射層が設けられた近接場露光用マスクの基本構成を示す。
本実施の形態における近接場露光用マスクは、マスク母材101、反射層102、遮光層103、露光用光の波長よりも小さい幅の開口を少なくとも1つ以上含む微細パターン104を備える。
微細パターン104は、反射層102、遮光層103の双方をマスク母材が露出するまで貫通して形成される。
図1のような構成の近接場露光用マスクにおいて、微細パターンが形成されていない領域にけるマスク母材側から、マスクに対して垂直入射した光の、マスク母材と反射層界面からの反射率Rは、フレネルの式より、つぎの式(2)で表される。

【0014】
なお、遮光層の膜厚は後述するが、遮光層とレジスト界面からの反射光は、遮光層中でほぼ全て吸収されるものとして、上記式には考慮されていない。
一方、反射層のない場合のマスク母材と遮光層の界面の反射率R’は、つぎの式(3)で表される。

【0015】
ここで、R>R’が成立する場合、反射層内部及び遮光層内部に入射する光エネルギーが、反射層のない場合よりも小さい。
反射されずに入射した入射光は吸収され、あるいはは透過するが、フォトマスクとして、反射層及び遮光層の透過率はほぼ0である。
つまり、反射率と吸収率の和は1であるとして良く、反射率が高いほど吸収率が低いといえる。
光吸収が低いほど、光が熱に変換されることによる熱の発生も小さいため、レジストの反応率に及ぼす影響が小さいのである。
微細パターンが形成されている領域における反射率と吸収率も、前記に準ずるものと考えられる。
【0016】
マスク母材には、窒化シリコン、シリコーンゴム、合成樹脂、スピン・オン・グラス、石英など、露光波長に対して透明な材料を用いることができる。
シリコーンゴムや合成樹脂などは、露光光に対して透明でかつ低弾性率なので、レジスト基板のうねりへのマスクの追従性が高く、密着露光である近接場露光のマスク母材として、特に好ましい。
マスク母材の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.1μm〜1000μmであり、より好ましくは20μm〜300μmである。厚みが薄すぎる場合には、マスクの機械的強度が弱く、厚すぎると露光用光に対する透明性が低い。
シリコーンゴムとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられる。PDMSは波長250nm以上において透明である。
PDMSの具体例としては、ダウ・コーニング社(Dow Corning Company)によって製造され、Sylgardの商標で市販されているSylgard182、184および186などが挙げられる。
【0017】
合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、などが挙げられる。
さらに、これら以外に、ポリメチルメタクリル酸などのアクリル樹脂、ポリスチレンポリカーボネート、ポリイミドなどのようなプラスチックフィルムないしはシート等、公知のものが挙げられる。
透明性、耐熱性、耐薬品性などの観点から環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリル酸が好ましく用いることができる。
より具体的には、JSR(株)製ARTON、日本ゼオン(株)製ZEONOR(R)、ZEONEX(R)(以上、環状ポリオレフィン)、東レ(株)製ルミラー(R)が好ましく用いることができる。
あるいは、帝人デュポンフィルム(株)製テトロン(R)(以上、ポリエチレンテレフタラート)、帝人化成パンライト(R)(ポリカーボネート)が好ましく用いることができる。
【0018】
遮光層は、金属などを含有していても良い。その場合、その組成比を変えることによって遮光層の光学定数を自在に変化させることが可能である。
本実施の形態におけるマスクに採用される遮光層を構成する膜のシリコン原子の含有比率は、モル分率で50%以上100%以下の範囲とされ、90%以上100%以下とするのがより好ましい。
含有比率が50%未満の場合にはドライエッチングによる遮光層の加工が困難となる。
シリコンがモル分率で100%であるアモルファスシリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンが特に好ましい。
シリコン遮光層の成膜方法としては、スパッタリング、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法、減圧Chemical Vapor Deposition(LPCVD)などが挙げられる。
得られたシリコンがアモルファスであった場合、熱またはレーザによるアニーリングを行なって、結晶化させても良い。
【0019】
遮光層の膜厚は、透過率が、露光波長に対して0.1以下、好ましくは0.01以下となるように、膜厚及び/または消衰係数を調整することが好ましい。
透過率が0.1以上だと、露光部と未露光部の光強度コントラストが低く、解像性が高いレジストパターンが形成されない。消衰係数は、成膜条件や、前述したような金属の添加などで調整可能である。
消衰係数k、膜厚tの遮光層の、露光波長λに対する透過率Tは、つぎの式(4)で算出することができる。
T=exp(−4πk/λ)………式(4)
例えば、厚さ50nmの遮光層のi線における透過率は、消衰係数kが1.338以上の場合0.1以下、2.675以上の場合0.01以下である。
アモルファスシリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンのi線における消衰係数は2.6〜2.8程度である。
ここで、遮光層の膜厚は、例えば10〜100nmの厚さとすることが好ましく、30〜70nmの厚さが特に好ましい。
薄すぎると遮光性が低く、厚すぎるとドライエッチングによる微細パターンの加工が困難である。
反射層は、上記した式(1)を満たす材料及び膜厚とする。
材料としては、金属や半導体の単体もしくはそれらを2種以上含んでなる混合物を、用いることが好ましい。
しかし、アルミニウム(i線における複素屈折率0.41+4.43i)、銀(i線における複素屈折率0.19+1.61i)、クロム(i線における複素屈折率1.40+3.26i)の3種の材料によるものが、i線の反射率が高く、より好ましい。
マスク母材と反射層の密着性が低い場合には、両層の間に他の材料を下敷き層として成膜しても良い。
また、反射層を、複数の層で構成するようにしても良い。
【0020】
図2に、マスク母材を石英、遮光層をアモルファスシリコンとした本実施の形態の近接場露光用マスクにおいて、反射層を上記3種の材料とした場合の反射層の膜厚と、上記した式(1)に基づいて計算された反射率の関係を示す。
上記3種の材料は、0nm以上の任意の膜厚で、反射層のない場合(反射層厚0nm)の反射率36%よりも高い反射率を示すことがわかる。
特に、アルミニウムの場合、反射率が最大90%となる。
つまり、反射層がない近接場露光用マスクに吸収されるエネルギーが64%だったのに対し、本実施の形態のマスクでは10%である。
【0021】
露光によるマスクの発熱量も、本実施の形態においては、吸収される光エネルギーの低減に準じて低減されるものと期待される。
この理由により、本実施の形態における近接場露光用マスクの、露光中の温度が安定する。
本実施の形態において、反射層の膜厚は、アルミニウムは30nm以上、銀は90nm以上、クロムは40nm以上が特に好ましいことが明らかとなった。
ただし、本発明は、上記した式(1)を満たす材料、膜厚であれば、アルミニウム、銀、クロムに限定されるものではない。
また、材料によっては、膜厚によって反射層がない場合よりも反射率が低い場合もあるので、上記した式(1)に基づいて慎重に膜厚を設定すべきである。
【0022】
図3に示すように、マスク母材301と反射層302との間に中間母材305として、石英やスピン・オン・グラスのような屈折率1.5前後の透明材料を積層すると、上記した式(2)から計算してわかるように、反射率がより高くなる。
したがって、このような中間母材をマスク母材と反射層との間に積層する構成を採ることが、より好ましい。
中間母材305の厚みは特に限定されないが、好ましくは5〜5000nmであり、より好ましくは10〜1000nmであり、特に好ましくは20〜500nmである。
厚みが薄すぎる場合には、反射率の増大効果が小さくなり、厚すぎる場合には、マスクを被露光基板へ密着させた際の、被露光基板のうねりに対するマスクの追従性が低くなる。したがって、中間母材305の厚みを、上記した範囲とすることが好ましい。
【0023】
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用した近接場露光マスク及びその作製方法について説明する。
図4に、本実施例の近接場露光マスクの作製方法を説明する図を示す。
近接場露光マスクの作製に際し、まず、合成樹脂などのマスク母材401に、アルミニウムなどの反射層402を上記した式(1)に基づいて計算された膜厚で成膜する(図4(a))。
成膜の方法としてはスパッタリング、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法、減圧Chemical Vapor Depositionなどが挙げられる。
次に、反射層402上にa−Siなどの遮光層403を成膜する(図4(b))。
成膜の方法としてはスパッタリング、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法、減圧Chemical Vapor Deposition(LPCVD)などが挙げられる。
次に、遮光層403及び反射層402に微細パターン404を形成する(図4(c))。
【0024】
微細パターン404のパターニングは、Focused Ion Beam(FIB)加工装置を用いた直接加工、またはElectron Beam(EB)描画装置でパターニングされたレジストをマスクとしたエッチング加工で行なう。
本実施例では、微細パターン404の開口幅は、近接場露光で用いる露光光源の波長よりも狭くする。
EB描画装置を用いたエッチング加工では、遮光層403上にEBレジストを直接塗布するか、遮光層403上に酸化物層、金属層などのハードマスク層を形成し、その上にEBレジストを塗布する。
その際、ハードマスク層、遮光層403及び反射層402のエッチングは、ドライエッチングでもウエットエッチングでも良い。
ドライエッチングはCF4、C26、C38、CCl2F2、CCl4、CBrF3、BCl3、PCl3、SF6、Cl2、HCl、HBrなどのガスを用いて行なう。
ウエットエッチングは水酸化カリウムやテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどのアルカリ性水溶液を用いて行なう。
ドライエッチングでは、垂直かつ微細な開口パターンを形成可能であり、本実施例では、特に好ましい。
【0025】
以上により、図1に示すように、微細パターン104が、反射層102、遮光層103の双方をマスク母材が露出するまで貫通して形成された、シリコン遮光層103とマスク母材101との間に反射層102を有する近接場露光マスクが得られる。
本実施例の上記近接場露光マスクを近接場露光に用いることで、露光中における遮光層によるマスクの発熱を抑制することができ、ショット毎のレジストパターンサイズのばらつきを抑えることが可能となる。
【0026】
[実施例2]
本発明の実施例2として、中間母材をマスク母材と反射層との間に積層して構成した近接場露光マスク及びその作製方法について説明する。
図5に、本実施例の近接場露光マスクの作製方法を説明する図を示す。
近接場露光マスクの作製に際し、まず、合成樹脂などのマスク母材501に、石英などの中間母材505を成膜する(図5(a))。
成膜の方法としては、石英やSi34の場合、スパッタリング、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法、LPCVDなどが挙げられる。
スピン・オン・グラスの場合、スピン塗布、スプレー塗布、気相蒸着、浸漬などで成膜した後、ホットプレートやオーブンを用いて加熱硬化する。
反射層502の成膜(図5(b))、遮光層503の成膜(図5(c))、微細パターン504の形成(図5(d))は、実施例1と同様に行なう。
【0027】
これにより、中間母材505をマスク母材501と反射層502との間に積層して構成した遮光層503を有する近接場露光マスクが得られる。
本実施例の上記近接場露光マスクを近接場露光に用いることで、反射率をより高くして、露光中における遮光層によるマスクの発熱をより抑制することができ、ショット毎のレジストパターンサイズのばらつきをより一層抑えることが可能となる。
【0028】
[実施例3]
実施例3として、本発明の近接場露光マスクを用いた近接場露光方法について説明する。
図6に、本実施例の近接場露光方法を説明するための図を示す。
近接場露光に際し、まず、マスク母材として合成樹脂を用いた近接場露光用マスク612の、マスク母材側に、露光用光に対して透明な剛体を設置する。
なお、本実施例においては石英ガラス613としたが、これに限定されるものではない。
近接場露光用マスク612の、遮光膜側に、レジストが塗布された被露光基板611を設置する。
ここで、レジストは、使用する光源に対して光感度を有するものであれば、ポジ型、ネガ型を問わずに使用できる。
ポジ型レジストとしては、例えば、ジアゾナフトキノン−ノボラック型、化学増幅ポジ型が挙げられる。
ネガ型レジストとしては、例えば、化学増幅ネガ型、光カチオン重合型、光ラジカル重合型、ポリヒドロキシスチレン−ビスアジド型、環化ゴム−ビスアジド型、ポリケイ皮酸ビニル型などが挙げられる。化学増幅ポジ型及び化学増幅ネガ型のレジストを使用すると、ライン・エッジ・ラフネスの小さいパターンが形成されるため、本発明では特に好ましい。
【0029】
次に、露光用光652を遮らないように荷重651を印加する(図6(b))。
合成樹脂は一般的に柔軟性が高いため、被露光基板の表面のうねりに追従して、局所的に変形しながら、広い面積にわたって密着する。
被露光基板のうねりは、300mmΦシリコンウエハで1000nm程度とされるウエハ基板の平坦度や、レジストの膜厚ムラに由来するものである。
図6では説明のため、被露光基板のうねりを誇張して示している。
【0030】
また、本実施例では、近接場露光用マスクと被露光基板を密着させるための機構として荷重印加機構を示したが、気圧や液圧を利用しても良い。
その際、図7に示すような近接場露光装置を用いることができる。
図7において、710はステージ、711は被露光基板、712は近接場露光用マスク、713は透明な剛体、714は圧力調整機構、715は露光用光源、716は照明光学系、717はガラス窓である。
図7に示す機構においては、近接場露光用マスクと被露光基板を密着させるための機構として、図6の荷重印加機構の代わりに、圧力調整機構714によって近接場露光用マスク712に圧力を印加する構成が異なるだけで、他は図6と基本的に変わらない。
【0031】
近接場露光用マスクと被露光基板が、パターンを形成する領域で完全に密着した状態で露光する(図6(c))。
近接場露光の露光用光源(図7の露光用光源715参照)としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプなどが用いられる。
あるいは、YAGレーザ、Arイオンレーザ、半導体レーザ、F2エキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、可視光、などが用いられる。
これら光源は1つまたは複数で使用できる。本発明においては365nmより短い波長の光が特に好ましく使用できる。
シリコンは365nmより短い波長に対して高い消衰係数を有するためである。露光により近接場露光用マスクの遮光膜の開口部から近接場光が発生し、被露光基板上のレジストにパターン614の潜像が転写される。
近接場露光されたレジスト層は、必要に応じて被露光基板を加熱した後、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤などで現像される(図6(d))。
現像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。これにより近接場レジストパターンが形成される。
【0032】
従来例における反射層を有さない近接場露光用マスクを用いた場合には、同一の照度、同一の露光時間で露光しても、マスクの温度によってレジストの反応率が異なるため、ラインパターンの線幅やドット/ホールパターンの径がばらつく。
これに対して、上記本実施例による近接場露光方法では、従来例の近接場露光用マスクよりも発熱を抑制することができることから、マスクの温度がより安定し、レジストパターンサイズのばらつきを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態における反射層が設けられた近接場露光用マスクの基本構成を示す図。
【図2】本発明の実施の形態における近接場露光用マスクの反射層の膜厚と反射率の関係を説明するための図。
【図3】本発明の実施の形態における近接場露光用マスクとして、マスク母材と反射層との間に中間母材を積層した構成例を説明するための図。
【図4】本発明の実施例1における近接場露光用マスクの作製方法を説明するための図。
【図5】本発明の実施例2における近接場露光用マスクの作製方法を説明するための図。
【図6】本発明の実施例3における近接場露光方法を説明するための図。
【図7】本発明の実施例3における近接場露光方法に用いられる近接場露光装置を説明するための図。
【符号の説明】
【0034】
101:マスク母材
102:反射層
103:遮光層
104:微細パターン
301:マスク母材
302:反射層
303:遮光層
304:微細パターン
305:中間母材
401:マスク母材
402:反射層
403:遮光層
404:微細パターン
501:マスク母材
502:反射層
503:遮光膜
504:微細パターン
505:中間母材
611:被露光基板
612:近接場露光用マスク
613:石英ガラス
614:レジストパターン
651:荷重
652:露光用光
710:ステージ
711:被露光基板
712:近接場露光用マスク
713:透明な剛体
714:圧力調整機構
715:露光用光源
716:照明光学系
717:ガラス窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明マスク母材lと、該透明マスク母材上のシリコンを含む遮光層lと、該透明マスク母材と該遮光層の間に設けられた反射層lを有し、前記反射層lと前記遮光層lに露光波長λ(nm)より小さい開口パターンが設けられた近接場露光用マスクであって、
前記透明マスク母材lと前記反射層界面lからの反射率が、透明マスク母材上のシリコンを含む遮光層との間に反射層を有さない近接場露光用マスクにおける透明マスク母材と遮光層界面からの反射率よりも高いことを特徴とする近接場露光用マスク。
【請求項2】
前記反射層の材料の複素屈折率を(n+ik)とし、前記反射層の厚さをd(nm)とするとき、これらが下記の式(1)を満たすように設定されることを特徴とする請求項1に記載の近接場露光用マスク。
ク。

但し、m,nを0,1,2のいずれかの添え字とし、
=(l層の複素屈折率)=n+ik
m,n=(Y−Y)/(Y+Y
m,n=2(Y0.5/(Y+Y
t=exp[(−2πk/λ)d]
γ=(−2πn/λ)d
【請求項3】
前記反射層lを有する近接場露光用マスクにおいて、
前記遮光層lが、シリコンをモル分率で50%以上100%以下の範囲で含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の近接場露光用マスク。
【請求項4】
前記反射層lが、複数の層で構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の近接場露光用マスク。
【請求項5】
前記反射層lが、アルミニウムであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の近接場露光用マスク。
【請求項6】
前記反射層lが、銀であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の近接場露光用マスク。
【請求項7】
前記反射層lが、クロムであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の近接場露光用マスク。
【請求項8】
前記透明マスク母材lが、窒化シリコンであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の近接場露光用マスク。
【請求項9】
前記透明マスク母材lが、シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の近接場露光用マスク。
【請求項10】
前記透明マスク母材lが、合成樹脂であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の近接場露光用マスク。
【請求項11】
前記透明マスク母材lが、スピン・オン・グラスであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の近接場露光用マスク。
【請求項12】
前記透明マスク母材lが、石英であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の近接場露光用マスク。
【請求項13】
前記透明マスク母材lと前記反射層lとの間に、中間母材が設けられることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の近接場露光用マスク。
【請求項14】
前記中間母材が、石英またはスピン・オン・グラスであることを特徴とする請求項13に記載の近接場露光用マスク。
【請求項15】
近接場露光用マスクを用い、該マスクをレジストに接触させた状態で露光を行なって、レジスト中にパターンを形成するレジストパターンの形成方法において、
前記近接場露光用マスクに、請求項1から14のいずれか1項に記載の近接場露光用マスクを用いることを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項16】
前記レジストに、前記密着露光で発生する酸を触媒とした反応により現像コントラストを生じるレジストが用いられることを特徴とする請求項15に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項17】
前記レジストが、化学増幅型レジストであることを特徴とする請求項16に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項18】
前記レジストが、光カチオン重合型レジストであることを特徴とする請求項16に記載のレジストパターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−98263(P2008−98263A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276052(P2006−276052)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】