説明

進行波型光変調素子

【課題】信号電極の入力部から作用領域に至るまでの間でも、クロストーク現象が抑制可能であり、かつ製造コストの増加を抑制した進行波型光変調素子を提供する。
【解決手段】電気光学効果を有する基板1と、基板に形成された光導波路2と、光導波路を伝搬する光波を変調する変調電極とを有する進行波型光変調素子において、変調電極は、2本以上の信号電極31,32と接地電極から構成され、信号電極の全ての入力部P1,P2は、基板の第1の側面11側に設けられ、信号電極が形成する電界が光導波路に作用する作用領域の位置が、第1の側面に最も近い第1の信号電極31と、作用領域の位置が、第1の側面に対向する第2の側面12に最も近い第2の信号電極32については、各作用領域の作用開始部C1,C2において、第1の信号電極は第1の側面側から、第2の信号電極は第2の側面側から、各々導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は進行波型光変調素子に関し、特に、基板に光導波路と変調電極とを形成し、該光導波路を伝搬する光波を変調する進行波型光変調素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光計測分野において、ニオブ酸リチウム(LN)などの電気光学効果を有する基板上に光導波路と変調電極を形成した、光強度変調器などの進行波型光変調素子は広く使われている。
【0003】
進行波型光変調素子では、変調電極を構成する信号電極に高周波信号(マイクロ波)を印加し、該高周波信号が信号電極を伝搬するのに合わせて、光導波路を伝搬する光波を変調するよう構成されている。
【0004】
例えば、光導波路の一部にマッハツェンダー型導波路(MZ型導波路)を形成し、MZ型導波路を構成する2つの分岐導波路に沿って、独立した2つの信号電極を配置する場合のように、複数の信号電極を用いる場合には、信号電極を伝搬する変調信号が各光導波路に電界を印加するタイミングを正確に調整する必要がある。
【0005】
特許文献1や特許文献2に示すように、複数の信号電極を伝搬する変調信号が形成する電界が、各光導波路に印加されるタイミングを調整するため、信号電極の一部に遅延線路部分を設けることが知られている。
【0006】
他方、MZ型導波路の2つの分岐導波路に沿って配置された2つの信号電極のように、近接して信号電極を配置する場合には、片方の電極を伝搬している変調信号が、他方の信号電極に乗り移る、「クロストーク現象」が発生し易くなる。進行波型光変調素子では、図1に示すように、信号電極が形成する電界が光導波路2に作用する部分(作用領域)において、信号電極31,32が近接して配置されることが多い。このため、2つの信号電極の作用領域における間隔Gは、クロストーク現象が発生しないような距離に維持されている。
【0007】
また、図1のように、基板の同じ側面側に複数の信号電極の入力部P1,P2を配置すると共に、上述した遅延線路部を設ける場合には、符号S2で示すように、信号電極31及び32が互いに近接すると共に、近接した状態で作用領域まで並んで配置される場合が多くなる。しかも、これらの間隔S2は、作用領域における信号電極の間隔Gよりも狭くなっており、クロストーク現象がより発生し易くなっている。
【0008】
ここで、基板の同じ側面側に信号電極の入力部を集約することは、光変調素子モジュールを含む通信装置を小型化でき、光変調素子の高周波特性を改善する利点がある。例えば、図2に示すように、進行波型光変調素子モジュール100の高周波入力端子102を片側に配置することで、駆動ドライバなどの電気回路を備えた高周波基板(ボード)101を光変調素子モジュールの片側のみに配置でき、ボード上に必要な電気回路を集積化することも可能となる、これにより光変調素子モジュールやボードをコンパクトに配置することが出来る。しかも、高周波入力端子102に係る接続距離も短くなり、高周波特性を良好にすることが可能となるなど、多くの利点がある。符号104は光ファイバ、符号103は光変調素子のモニタ用端子などである。
【0009】
他方、特許文献3では、作用領域に至る信号電極間でクロストーク現象が発生するのを抑制するため、作用領域までの信号電極が配置されている配線部分を常誘電体の基板で形成し、作用領域に使用される強誘電体の基板と異なる基板で構成することが開示されている。
【0010】
しかしながら、信号電極の途中で基板材料を異ならせると、変調信号であるマイクロ波の反射や接続損失が発生し、光変調素子の特性劣化の原因となる。しかも、異なる基板を用いて電極形成を行うには、製造工程が複雑化し、高コスト化の原因ともなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3558529号公報
【特許文献2】特開2002−182172号公報
【特許文献3】特開2010−181489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した問題を解消し、信号電極の入力部から作用領域に至るまでの間でも、クロストーク現象が抑制可能であり、かつ製造コストの増加を抑制した進行波型光変調素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調する変調電極とを有する進行波型光変調素子において、該変調電極は、2本以上の信号電極と接地電極から構成され、該信号電極の全ての入力部は、該基板の第1の側面側に設けられ、該信号電極が形成する電界が該光導波路に作用する作用領域の位置が、該第1の側面に最も近い第1の信号電極と、該作用領域の位置が、該第1の側面に対向する第2の側面に最も近い第2の信号電極については、各作用領域の作用開始部において、該第1の信号電極は該第1の側面側から、該第2の信号電極は該第2の側面側から、各々導入されることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の進行波型光変調素子において、該入力部における互いの信号電極の間隔は、該作用領域における互いの信号電極の距離の最小値より大きく、該入力部から該作用領域までの間の信号電極間の距離の最小値が、該作用領域における互いの信号電極の距離の最小値よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の進行波型光変調素子において、該入力部から該作用領域までの間の信号電極の当該信号電極自身の最も短い距離が、該作用領域における互いの信号電極の距離の最小値より大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の進行波型光変調素子において、各信号電極は、該入力部から該作用領域に至るまでの間で、変調信号の伝搬に係る電気的距離が等しく設定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の進行波型光変調素子において、該信号電極間に配置される接地電極は、各信号電極に沿った複数の接地電極で構成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の進行波型光変調素子において、該作用領域における該信号電極間にある複数の接地電極は、部分的に他の接地電極と電気接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明により、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調する変調電極とを有する進行波型光変調素子において、該変調電極は、2本以上の信号電極と接地電極から構成され、該信号電極の全ての入力部は、該基板の第1の側面側に設けられ、該信号電極が形成する電界が該光導波路に作用する作用領域の位置が、該第1の側面に最も近い第1の信号電極と、該作用領域の位置が、該第1の側面に対向する第2の側面に最も近い第2の信号電極については、各作用領域の作用開始部において、該第1の信号電極は該第1の側面側から、該第2の信号電極は該第2の側面側から、各々導入されるため、作用領域以外において信号電極の間隔を広げることが可能となり、作用領域外におけるクロストーク現象を抑制することが可能となる。しかも、信号電極の配線パターンを調整することにより達成できるため、製造コストの増加を抑制することも可能となる。
【0020】
請求項2に係る発明により、入力部における互いの信号電極の間隔は、作用領域における互いの信号電極の距離の最小値より大きく、該入力部から該作用領域までの間の信号電極間の距離の最小値が、該作用領域における互いの信号電極の距離の最小値よりも大きくなるように設定されているため、常に、入力部から作用領域までの信号電極の間隔を広く設定でき、入力部から作用領域までの間でクロストーク現象が発生するのを効果的に抑制することが可能となる。
【0021】
請求項3に係る発明により、入力部から作用領域までの間の信号電極の当該信号電極自身の最も短い距離が、該作用領域における互いの信号電極の距離の最小値より大きくなるように設定されているため、作用領域外における単一の信号電極内におけるクロストーク現象までも抑制することが可能となる。
【0022】
請求項4に係る発明により、各信号電極は、入力部から作用領域に至るまでの間で、変調信号の伝搬に係る電気的距離が等しく設定されているため、各信号電極間において、作用領域に印加される変調信号のタイミングを精確に調整することが可能となる。しかも、電気的距離を等しくするため遅延線路部を利用した場合でも、信号電極の入力部から作用領域に至るまでの間でクロストーク現象が抑制されるため、光変調特性の劣化が少ない進行波型光変調素子を提供することが可能となる。
【0023】
請求項5に係る発明により、信号電極間に配置される接地電極は、各信号電極に沿った複数の接地電極で構成されているため、信号電極間のクロストーク現象をより一層抑制することが可能となる。また、信号電極間の間隔が広くなっても、各々の信号電極に対応する接地電極を有するため、例えば、信号電極間に1つの接地電極を形成する場合と比較し、接地電極が占める面積を少なくすることができ、電極と基板との間の熱膨張差による内部応力の発生を抑制できると共に、電極の製造に係る材料コストも抑制することができる。
【0024】
請求項6に係る発明により、作用領域における信号電極間にある複数の接地電極は、部分的に他の接地電極と電気接続されているため、高周波特性が改善された進行波型光変調素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の進行波型光変調素子の一例を示す平面図である。
【図2】進行波型光変調素子を組み込んだモジュールと高周波基板との位置関係を説明する図である。
【図3】本発明の進行波型光変調素子の第1の実施例を示す平面図である。
【図4】図3の一点鎖線A−Aにおける断面図である。
【図5】本発明の進行波型光変調素子の第2の実施例を示す平面図である。
【図6】図5の一点鎖線A−Aにおける断面図である。
【図7】本発明の進行波型光変調素子の第3の実施例を示す平面図である。
【図8】本発明の進行波型光変調素子の第4の実施例を示す平面図である。
【図9】本発明の進行波型光変調素子の第5の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の進行波型光変調素子について、以下に詳細に説明する。
図3に示すように、本発明の進行波型光変調素子は、電気光学効果を有する基板1と、該基板に形成された光導波路2と、該光導波路を伝搬する光波を変調する変調電極とを有する進行波型光変調素子において、該変調電極は、2本以上の信号電極(31,32)と接地電極(不図示)から構成され、該信号電極の全ての入力部(P1,P2)は、該基板の第1の側面(11)側に設けられ、該信号電極が形成する電界が該光導波路に作用する作用領域の位置が、該第1の側面に最も近い第1の信号電極31と、該作用領域の位置が、該第1の側面に対向する第2の側面(12)に最も近い第2の信号電極32については、各作用領域の作用開始部(C1,C2)において、該第1の信号電極は該第1の側面側から、該第2の信号電極は該第2の側面側から、各々導入されることを特徴とする。つまり、図3において、第1の信号電極31は、作用開始部C1に対して基板1の第1の側面(11)側から上がってきており、第2の信号電極32は、作用開始部C2に対して基板1の第2の側面(12)側から下がってきている。
【0027】
本発明に利用される基板としては、誘電体基板や電気光学効果を有する材料を用いた基板が利用でき、例えば、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)、及び石英系の材料、並びにこれらの材料を組み合わせた基板が利用可能である。特に、電気光学効果の高いニオブ酸リチウム(LN)結晶が好適に利用される。
【0028】
基板に光導波路を形成する方法としては、Tiなどを熱拡散法やプロトン交換法などで基板表面に拡散させることにより形成することができる。また、光導波路以外の基板をエッチングしたり、光導波路の両側に溝を形成するなど、基板に光導波路に対応する部分を凸状としたリッジ形状の導波路を利用することも可能である。
【0029】
進行波型光変調素子では、基板上に信号電極や接地電極などの変調電極が形成される。このような電極は、Ti・Auの電極パターンの形成及び金メッキ方法などにより形成することが可能である。さらに、必要に応じて光導波路形成後の基板表面に誘電体SiO等のバッファ層を設け、バッファ層の上に変調電極を形成することも可能である。
【0030】
変調電極は、2本以上の信号電極(31,32)を有し、通常、当該信号電極を挟むように接地電極が配置され、コプレーナ型線路を形成している。図3では、マッハツェンダー型導波路(MZ型導波路)を有する光導波路2が形成され、MZ型導波路の一端から入射光L1を導入し、他端から出射光L2を出力している。
【0031】
各信号電極(31,32)は、MZ型導波路を構成する分岐導波路(21,22)に対して電界を印加するよう構成されている。また、信号電極の入力部(P1,P2)から分岐導波路がある作用領域までの間で、必要に応じて、信号電極の長さを調整するため遅延線路部分(例えば、図3の信号電極31の蛇行部分)が形成されている。
【0032】
信号電極(31,32)に印加される変調信号(M1,M2)の位相が揃っている場合には、通常、各信号電極の入力部から作用領域までの変調信号の伝搬に係る電気的距離は同じになるように遅延線路部分を含む線路の長さや、線路のマイクロ波に対する屈折率などが設定されている。
【0033】
本発明の進行波型光変調素子では、信号電極のうち作用領域が、第1の側面(11)側に最も近い第1の信号電極31と、第1の側面に対向する第2側面(12)側に最も近い第2の信号電極32とが、各信号電極が形成する電界が光導波路2に作用する作用領域の各作用開始部(C1,C2)において、外側の側面側から導入されるため、信号電極間の距離を広くすることが可能となる。
【0034】
また、入力部(P1,P2)における互いの信号電極の間隔(S1)は、該作用領域における互いの信号電極の距離Gの最小値より大きく、該入力部から該作用領域までの間の信号電極間の距離(S2)の最小値が、前記距離Gの最小値よりも大きくなるように設定することで、該入力部から該作用領域に至るまでの間において、確実にクロストーク現象の発生を抑制することが可能となる。
【0035】
ところで、第1の信号電極31の遅延線路部分のように、信号電極が蛇行又は折れ曲がることで、単一の信号電極自身で近接する部分が発生する。このような場合でも、信号入力部から作用領域までの間の信号電極の当該信号電極自身の最も短い距離S3が、該作用領域における互いの信号電極の距離Gの最小値より大きくなるように設定することで、蛇行又は折れ曲がっている部分での同一信号電極内におけるクロストークを抑制することができる。
【0036】
また、図3のように、遅延線路部分を有す場合でも、信号電極の間隔S1〜S3を、常に、作用領域の両者の近接距離Gの最小値より大きくなるように設定しているため、信号電極の入力部から作用領域までの間で、クロストーク現象が発生するのを効果的に抑制することが可能となる。しかも、信号電極の配線パターンを調整するだけで、容易に実現することが可能であるため、製造コストの増加も抑制される。
【0037】
また、各信号電極は、入力部から作用領域に至るまでの間で、変調信号の伝搬に係る電気的距離を等しく設定することで、信号電極間において、作用領域に印加される変調信号のタイミングを精確に設定することが可能となる。勿論、遅延線路部などの信号電極の長さを調整するだけでなく、線路の屈折率を調整しマイクロ波の伝搬速度を調整することでも、結果として最終的な電気的距離が等しい場合には、各変調信号を同相状態で作用開始部に印加することが可能となる。
【0038】
図4は、図3の一点鎖線A−Aにおける断面図を示している。図4は、2つの信号電極の間に1つの接地電極(GND2)を配置している例である。符号21,22は、分岐導波路を示す。この場合には、2つの信号電極(31,32)の間隔Gが近接する場合には、クロストーク現象が発生し易くなる。これを抑制するには、図5に示すように、信号電極間に配置される接地電極を、GND2aとGND2bに分けることで、クロストーク現象を抑制することが可能となる。
【0039】
図6は、図5の一点鎖線A−Aにおける断面図であり、接地電極(GND2)を2つ(GND2a,GND2b)に分けている。しかも、図5に示すように、入力部(P1,P2)から作用領域までの信号電極の間隔は、作用領域での両者の間隔よりも広くなるように設定することで、信号電極間に1つの接地電極を形成する場合と比較し、接地電極が占める面積を少なくすることができる。電極が占める面積が多い場合には、電極と基板との間の熱膨張差による内部応力が発生し易く、温度ドリフト現象などの弊害が発生する。また、光導波路を伝搬する光波を接地電極が吸収し易くなり、信号光の伝搬損失も増加する。
【0040】
ただし、作用領域における信号電極間にある複数の接地電極は、図5及び6に示すように、金線4又は4’で、信号電極間にある接地電極(GND2a,GND2b)同士、又は信号電極を跨いで接地電極(GND1とGND2a,GND3とGND2b)同士を、部分的に電気接続することで、接地電極の動作が不安定化するのを抑制でき、進行波型光変調素子の高周波特性を改善することが可能となる。金線4(又は4’)の間隔は、入力する最大周波数の波長の1/10以下が望ましい。それ以上であると金線の間がアンテナとなる。
【0041】
本発明の進行波型光変調素子では、信号電極の入力部は、基板の同じ側面側に配置しているが、出力部の端子は、図3に示すように、基板の対向する異なる側面側に配置することで、信号電極の平行部分を少なくでき、作用領域以外で作用領域から出力部に至る間でのクロストーク現象の発生を一層抑制することが可能となる。
【0042】
図7は、光導波路2に、MZ型導波路の2つの分岐導波路に、他のMZ型導波路(23,24)を入れ子型に配置した進行波型光変調素子を示している。このような複数のMZ型導波路を有する場合には、2本以上の信号電極が設けるケースが多く、本発明を利用して、信号電極の入力部から作用領域までの信号電極間の間隔S2を、作用領域における信号電極の近接距離より広く構成することで、入力部から作用領域までの間におけるクロストーク現象を効果的に抑制することが可能となる。
【0043】
図8及び図9は、図7の光導波路に対して、MZ型導波路(23,24)の各分岐導波路に信号電極を配置したものである。このように4つの信号電極(31〜34)を配置する場合でも、信号電極のうち最も外側に位置する第1の信号電極31及び第2の信号電極32が、各信号電極が形成する電界が光導波路2に作用する作用領域の各作用開始部(C1,C2)において、外側から導入されるため、信号電極間の距離を広くすることが可能となる。
【0044】
つまり、作用領域における信号電極間の距離の最小値(G1,G2,G3の最小値)よりも、入力部の間隔(S11,S12,S13)や、入力部から作用領域までの信号電極間の距離の最小値(S21,S22,S23の最小値)や、信号電極自身の最も短い距離(S3)の方が大きくなるように設定されている。
【0045】
図8は、MZ型導波路23と24との間隔G2が広い場合は、作用開始部に入る直前まで、信号電極31と33、又は32と34とが離れて配線できる。図9のように、両者の間隔G2が狭い場合には、信号電極31と33、又は32と34とは、同方向から作用開始部に近接してくる。この場合も、信号電極31と33、又は32と34との間隔(S21,S23)を十分広く確保することが好ましいことは、言うまでもない。勿論、信号電極33と34との間の距離(S22)についても同様である。なお、図8及び図9では、各信号電極の電気的距離を調整するため、遅延線路部分等を適宜設けることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、信号電極の入力部から作用領域に至るまでの間でも、クロストーク現象が抑制可能であり、かつ製造コストの増加を抑制した進行波型光変調素子を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1 基板
2 光導波路
31,32 信号電極
P1,P2 信号電極の入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調する変調電極とを有する進行波型光変調素子において、
該変調電極は、2本以上の信号電極と接地電極から構成され、
該信号電極の全ての入力部は、該基板の第1の側面側に設けられ、
該信号電極が形成する電界が該光導波路に作用する作用領域の位置が、該第1の側面に最も近い第1の信号電極と、
該作用領域の位置が、該第1の側面に対向する第2の側面に最も近い第2の信号電極については、
各作用領域の作用開始部において、該第1の信号電極は該第1の側面側から、該第2の信号電極は該第2の側面側から、各々導入されることを特徴とする進行波型光変調素子。
【請求項2】
請求項1に記載の進行波型光変調素子において、該入力部における互いの信号電極の間隔は、該作用領域における互いの信号電極の距離の最小値より大きく、該入力部から該作用領域までの間の信号電極間の距離の最小値が、該作用領域における互いの信号電極の距離の最小値よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする進行波型光変調素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の進行波型光変調素子において、該入力部から該作用領域までの間の信号電極の当該信号電極自身の最も短い距離が、該作用領域における互いの信号電極の距離の最小値より大きくなるように設定されていることを特徴とする進行波型光変調素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の進行波型光変調素子において、各信号電極は、該入力部から該作用領域に至るまでの間で、変調信号の伝搬に係る電気的距離が等しく設定されていることを特徴とする進行波型光変調素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の進行波型光変調素子において、該信号電極間に配置される接地電極は、各信号電極に沿った複数の接地電極で構成されていることを特徴とする進行波型光変調素子。
【請求項6】
請求項5に記載の進行波型光変調素子において、該作用領域における該信号電極間にある複数の接地電極は、部分的に他の接地電極と電気接続されていることを特徴とする進行波型光変調素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate