説明

防臭靴

【課題】靴内の換気効率が良く、耐久性に優れていて補修が容易であると共に、香料や脱臭剤などの消耗品の交換などについてもメンテナンスが簡易で消費者が使いやすく優れた防臭靴とすることである。
【解決手段】防臭剤1を収容可能な窪み2を靴の内底3に形成し、防臭剤1を通気性のある弾性素材製の中蓋4で窪み2の底部に押し付けて固定すると共に、窪み2の上面開口を覆う通気孔5付きの上蓋6を設け、この上蓋6は踏圧で弾性変形可能な軟質合成樹脂からなるドーム形素材で形成し、その上に通気孔7を有する中敷8を敷いた防臭靴とする。足裏が中敷8を介して通気孔5付きの上蓋6を押えることにより、踏圧で上蓋6のドーム形湾曲部6aが平坦になるように弾性変形し、このとき窪み2内の防臭成分を含む空気は加圧されて、中蓋4の孔10および上蓋6の通気孔5から靴内に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、消臭、脱臭、マスキングなどの防臭機能により靴の不快臭を防ぐことが可能な防臭靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、つま先や甲が覆われた靴は、長時間履きつづけると内部で足が蒸れたり、靴の内側(裏打布)が湿ったり汚れたりし、雑菌が繁殖したりしやすくて、不快臭も生じやすいため、これを防止するための工夫が種々なされている。
【0003】
例えば、防臭機能を有する靴の構造として、中敷と踏底の間に風船状の換気装置(ポンプ)を設け、靴内で足裏が靴の内底と接したり離れたりする動きがあることを利用し、換気装置を作動させて靴内に空気流を起こし、換気するものが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、靴内換気装置の他の形態としては、靴のかかと底の内部に形成され、圧縮ばね等で弾性変形するポンプ型容器で靴内の前部へ換気流を送り出す装置が知られている(特許文献2)。また、このようなポンプ型容器は、悪臭を除去する化学物質を含んだ香料容器が採用される例もある。
【0005】
【特許文献1】特開平6−261803号公報
【特許文献2】特開平7−204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した従来の靴内の換気装置では、風船状の換気装置や圧縮ばねで弾性変形するポンプ型容器から送り出された空気が、靴内の前方ヘ溝またはパイプなどの細い流路を通過して移動するものであるから、長年の使用により繊維クズなどで配管が詰まる場合があり、また溝や配管などの構造や配置が複雑であるから、それら換気装置の補修や取替え、特にポンプ型容器と一体になった香料や脱臭剤の交換等の補修を使用者が容易に行なうことができないという問題点がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、靴内の換気効率が良く、耐久性に優れていて、補修が容易であると共に、香料や脱臭剤などの消耗品の交換などについてもメンテナンスが容易で消費者が使いやすく優れた防臭靴とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明においては、防臭剤を収容可能な窪みを靴の内底に形成し、前記防臭剤を収容した窪みの上面開口を覆う通気孔付きの蓋を設け、この蓋は踏圧で弾性変形可能なドーム形素材で形成してなる防臭靴としたのである。
【0009】
上記したように構成されるこの発明の防臭靴は、これを履いた使用者の足裏が直接または中敷を介して窪みの上面開口を覆う通気孔付きの蓋を押えることにより、踏圧で蓋のドーム形素材が平坦になるように弾性変形し、このとき窪み内の防臭成分を含むか、または防臭剤に接してその作用を受けた空気は加圧されて、通気孔から靴内に放出される。
【0010】
次いで、使用者が靴の踵(かかと)を上げるか、または適当な姿勢でドーム形素材に踏圧のかからない状態にすると、蓋が弾性で当初の上向きに膨らんだドーム形に復帰し、靴内の空気は通気孔から窪み内に吸い込まれ、防臭成分を含んだ空気が窪み内に蓄えられる。
【0011】
以上の過程を繰り返して、靴内の空気は防臭剤による消臭、脱臭、マスキングなどの防臭作用を受けるから、靴の不快臭を防ぐことができる。
【0012】
このような防臭靴においては、防臭剤を通気性のある弾性素材製の中蓋で窪みの底部に押し付けて固定することが好ましい。このようにすると、通気性のある弾性素材製の中蓋が防臭剤を窪みの底部に動かないように固定され、この靴を履いて歩行する際に防臭剤が窪み内で常に遊動せず、使用者に不快な音や振動を感じさせない。
【0013】
また、防臭剤はその使用により経時的にその大きさを減少させる場合があるが、弾性素材製の中蓋が防臭剤の縮小に対応して弾性力で窪み内に押し付け確実に固定される。さらにまた踏圧で通気孔付きの蓋が押えられた時、弾性素材製の中蓋によって防臭剤に踏圧が急激にかかる衝撃を弱めるから、足裏の当りが和らいで履き心地が向上する。
【0014】
この発明に用いる通気孔付きの蓋は、ドーム形の軟質合成樹脂製の蓋を採用することが靴の軽量化および使用耐久性の向上のために好ましい。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、以上説明したように、防臭剤を収容可能な窪みを靴の内底に形成して、防臭剤を収容した窪みの上面開口を踏圧で弾性変形可能なドーム形素材からなる通気孔付きの蓋で覆った防臭靴としたので、靴内の換気効率が良く、耐久性に優れていて、補修が容易であると共に、香料や脱臭剤などの消耗品の交換などについてもメンテナンスが簡易で消費者が使いやすく優れた防臭靴となる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の実施形態を以下に添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、実施形態は、防臭剤1を収容可能な窪み2を靴の内底3に形成し、防臭剤1を通気性のある弾性素材製の中蓋4で窪み2の底部に押し付けて固定すると共に、窪み2の上面開口を覆う通気孔5付きの上蓋6を設け、この上蓋6は踏圧で弾性変形可能なドーム形湾曲部6aを設けた軟質合成樹脂板からなるドーム形素材で形成し、その上に通気孔7を有する中敷8を重ねて設けた防臭靴である。
【0017】
この発明に用いる防臭剤1は、特に限定した種類のものを採用するものではなく、消臭、脱臭、マスキングなどの防臭機能により靴の不快臭を防ぐことが可能な種々の防臭剤を採用できる。
【0018】
例えば、好適な消臭剤として、汗や足から出る脂肪酸系その他の悪臭成分の中和または酸化または還元の各化学反応を利用する市販の消臭剤を使用でき、脱臭剤としては、活性炭その他の多孔質材による悪臭成分の吸着、または微生物による分解をするもの、マスキング剤としては、各種の香料を発散させる市販の芳香剤などを使用すればよい。
【0019】
これら薬剤の形態は、固形状、液体状、半固形状のいずれであっても良く、またこれらは空気との接触効率のよい周知の通気性容器に入れたものを用いることができる。
【0020】
防臭剤1を収容する窪み2は、靴の内底3に適当な配置で形成すればよいが、特に充分に大きな容量の窪みを形成するためには、図示したように、かかと底9のある部分に形成することが好ましい。
【0021】
このような窪み2は、特にその形状や容積を限定したものでなくてもよいが、例えば図示した長穴状のものや、方形状の切り欠き、円穴などを靴の履き心地を阻害しない範囲で設計すれば良い。窪み2を形成するには、かかと底9をそのような穴を有するものとして成型するか、またはかかと底9と内底3を成型後に切削加工して形成することができる。
【0022】
窪み2の底または側壁には、防臭剤1を通気性のある弾性素材製の中蓋4で押し付けるなど防臭剤1を着脱自在に係止して固定しているが、その中蓋4の素材は、比較的軟質で弾性を有する合成樹脂やゴムなどを採用することが好ましく、例えば塩化ビニル、ポリエチレン、酢酸ビニル樹脂、シリコーン、ポリウレタンなどの比較的軟質な合成樹脂もしくはゴム、またはこれらを共重合させたその他の樹脂またはゴムなどを採用することができる。
【0023】
また、中蓋4は、上記の弾性的な材質により踏圧に対する緩衝性を充分に発揮できるように、1〜10mm、好ましくは3〜7mm程度の所要の厚さに形成し、窪み2の開口形状に整合し、これをぴったり嵌る形状にすることが防臭剤1を確実に固定するために好ましい。また、中蓋4に所要の通気性は、中蓋4を貫通する複数の孔10により確保することができる。
【0024】
窪み2の上面開口を覆う通気孔付きの上蓋6は、踏圧で弾性変形可能な軟質合成樹脂からなるドーム形素材で形成する。このような上蓋6は、前記した中蓋4と一体的な2層以上の多層構造の蓋としてもよく、また同質の多孔質弾性材料または通気孔を形成した中空成形体などで設けることもできる。
【0025】
図示した上蓋6は、複数の通気孔5を形成した長円形のドーム形湾曲部6aと、その周囲に連続して設ける略一定幅の密着用の縁部6bとからなるものであり、通常、ドーム形湾曲部6aを上向きに突出させた状態にし、窪み2の開口周囲に接着剤や、両面粘着テープ11等の粘着剤を設けて縁部6bを接着(粘着の場合を含む。)固定し、または内底2との嵌め合わせ構造(図示せず。)などの周知の係止手段で取り付けることができる。
【0026】
ドーム形湾曲部6aは、縁部6bに比べて少なくとも前記した中蓋4を収容する厚みだけ膨出するように湾曲させたドーム形に形成すればよく、靴内の換気効率と履き心地を勘案して必要なだけ僅かに膨らませたドーム形に形成することが好ましい。
【0027】
以上説明した部品類の上に、上蓋6の複数の通気孔5に対応する位置に通気孔7を形成した中敷8を敷いて防臭靴の作製を完了させる。中敷8は、適宜に設けることもできるものであり、中敷8に開口部を形成して上蓋6のドーム形湾曲部6aが露出するようにしてもよく、中敷8を省略してもよい。
【0028】
実施形態の防臭靴は、これを履いた使用者の足裏が中敷8を介して通気孔5付きの上蓋6を押えることにより、踏圧で上蓋6のドーム形湾曲部6aが平坦になるように弾性変形し、このとき窪み2内の防臭成分を含む空気は加圧されて、中蓋4の孔10および上蓋6の通気孔5から靴内に放出される。
【0029】
次いで、使用者が靴の踵を上げるなどドーム形湾曲部6aに踏圧のかからない状態にすると、上蓋6が弾性で当初の上向きに膨らんだドーム形に復帰し、靴内の空気は通気孔5から窪み2内に吸い込まれ、防臭成分を含んだ空気が窪み2内に蓄えられる。
使用者が靴を着用している際には、以上の過程が通常の自然な行為に伴って繰り返されるため、靴内の空気は防臭剤による作用を受けて不快臭を発しない防臭靴になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態を示す部品分解斜視図
【図2】実施形態の要部を切り欠いて示す側面図
【符号の説明】
【0031】
1 防臭剤
2 窪み
3 内底
4 中蓋
5、7 通気孔
6 上蓋
6a ドーム形湾曲部
6b 縁部
8 中敷
9 かかと底
10 孔
11 両面粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防臭剤を収容可能な窪みを靴の内底に形成し、前記防臭剤を収容した窪みの上面開口を覆う通気孔付きの蓋を設け、この蓋は踏圧で弾性変形可能なドーム形素材で形成してなる防臭靴。
【請求項2】
防臭剤を通気性のある弾性素材製の中蓋で窪みの底部に押し付けて固定した請求項1に記載の防臭靴。
【請求項3】
蓋が軟質合成樹脂製の蓋である請求項1に記載の防臭靴。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−122412(P2006−122412A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315648(P2004−315648)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(504404629)株式会社スカイホークシューズ (1)
【Fターム(参考)】