説明

隠れ部屋のドア構造

【課題】
避難スペースとして利用する部屋を日常的にも使用できると共に、侵入者がドアの存在に気付きにくく、部屋への侵入を試みるおそれが少ない隠れ部屋のドア構造を提供する事を目的とする。
【解決手段】
第1の部屋と第2の部屋とを区画する壁面の出入口に設けられたドア枠と、このドア枠に開閉自在に取り付けられるドアからなるものであって、前記ドア枠は、壁面と段差なく形成すると共に壁面と同じ外装を施し、前記ドアは、室内側にのみ引き手を設けると共に、ドアを閉じる方向に付勢する付勢部材を室内側に取付け、さらに、閉じた状態で壁面と段差なく形成すると共に壁面と同じ外装を施し、ドア枠とドア間に、鍵穴を室外側に有しないロック装置を設けたことを特徴とする隠れ部屋のドア構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強盗などに襲われた際に避難して身を守るための部屋に取り付けられる隠れ部屋のドア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の犯罪の増加に伴って凶悪な事件が頻発している。特に家人や店員のいる住宅や店舗に侵入し、金庫等を開けさせたり暗証番号を聞き出すなどして金品を奪取するような犯罪の増加は、被害額の増加だけでなく殺傷事件につながる。そのため、防犯意識が高まってきており、自己防衛を図るための防犯用具の需要が増えつつある。
【0003】
不審者の浸入を察知した際に逃げ込んで身を守る防犯装置として、海外の犯罪先進国においてセーフルームやパニックルームと呼ばれる避難装置が知られており、本出願人によってこのような避難スペースを提供する避難装置についてすでに特許出願がなされている(特願2003−356001)。
【0004】
この避難装置はワードローブのような家具調の外観を有しており、一見して避難装置であることが分かり難く構成されている。また、本出願人によって耐衝撃性を有するドアについてすでに特許出願がなされている(特願2003−361635)。この耐衝撃性ドアは、一般住宅の部屋のドアと付替えることで、その部屋を避難スペースとして利用できる。
【0005】
しかし、タンスやワードローブのような家具は侵入者にとって探索の対象となるため、扉に鍵がかかっていて開かなければこじ開けようとするおそれがあり、家具調の狭い避難装置内に避難しても、扉をこじ開けようとする侵入者に対する恐怖感やストレスは非常に大きいものとなる。また、部屋のドアを耐衝撃性ドアに付替えて避難部屋に構成しても、開かないドアに対して侵入者が攻撃を加えたり、ドアをこじ開けたりして侵入を試みるおそれがあって恐怖感を感じたり強いストレスを受けることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、避難スペースとして利用する部屋を日常的にも使用できると共に、侵入者がドアの存在に気付きにくく、部屋への侵入を試みるおそれが少ない隠れ部屋のドア構造を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1記載のごとく、隠れ部屋のドアを隠れ部屋内に回転中心を有するヒンジにより内開きになるように取り付けると共にドア内側には引き手を設けて、このドアを閉鎖する方向に付勢するドア付勢手段を隠れ部屋内に設け、そしてこのドアの大きさを出入口の外側の開口面と同じに形成すると共に、出入口の内周の垂直面を削ってドア逃げ部を形成し、そしてドア閉鎖時にドアの表側と隠れ部屋の外側の壁を平坦にした。
【0008】
請求項2記載のごとく、隠れ部屋のドアを隠れ部屋内に回転中心を有するヒンジにより内開きになるように取り付けると共にドア内側に引き手を設け、このドアを閉鎖する方向に付勢するドア付勢手段を隠れ部屋内に設け、さらにドアの表側に家具状構造体を一体的に取り付けた。
【0009】
請求項3記載のごとく、隠れ部屋のドアを隠れ部屋内に回転中心を有するヒンジにより内開きになるように取り付けると共に、このドアを閉鎖する方向に付勢するドア付勢手段を隠れ部屋内に設け、ドアを透明な部材で形成すると共にドア内側に家具状構造体を一体的に取り付け、この家具状構造体の扉を隠れ部屋側に形成して、この扉に引き手を取り付けた。
【0010】
請求項4記載のごとく、前記扉を隠れ部屋内から外側を透視可能なハーフミラー状に形成した。
【0011】
請求項5記載のごとく、前記家具状構造体の内部に、展示物を固定する固定手段を設けた。
【0012】
請求項6記載のごとく、前記ドアにロック装置を設けた。
【0013】
請求項7記載のごとく、前記ロック装置は電気式ロック装置により構成し、この電気式ロック装置を施錠または開錠するロック制御装置を隠れ部屋内に配置した。
【0014】
請求項8記載のごとく、前記ロック装置は電気式ロック装置により構成し、この電気式ロック装置を施錠または開錠するロック制御装置を隠れ部屋内に配置すると共にロック制御装置に認証機能を設けた認証機能付きロック制御装置を隠れ部屋の外に配置した。
【0015】
請求項9記載のごとく、前記ドアを耐衝撃性部材により形成した。
【0016】
請求項10記載のごとく、前記ドアのフロント面の隠れ部屋側に出入口の隠れ部屋側に当接するつば部を設けた。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、請求項1記載のごとく、隠れ部屋に内開きにドアを取り付けて内側に引き手を設け、付勢手段を備えると共に、出入口の内周にドア逃げ部を形成して、ドア閉鎖時にドアの表側と隠れ部屋の外側の壁を平坦にしたことにより、普段は支障なく日常的に隠れ部屋を使用できると共に、ドア閉鎖時に侵入者にはそこにドアがあることを分かり難くして部屋の存在に気付かせ難くして部屋への侵入を試みることを防ぐことができる。
【0018】
請求項2記載のごとく、内開きのドアの表側に家具状構造体を一体的に形成し、隠れ部屋側にはドアの引き手とドア付勢手段とを設けたことにより、普段は支障なく使用できる隠れ部屋のドアであって、ドア閉鎖時には家具状構造体のために侵入者には家具であるように誤認させてそこにドアがあることを分かり難くすると共に、部屋の存在に気付かせ難くすることで侵入者が隠れ部屋への侵入を試みる可能性を低くすることができる。
【0019】
請求項3記載のごとく、内開きのドアの隠れ部屋側に家具状構造体を一体的に形成し、ドアを透明な部材で形成すると共に隠れ部屋側に家具状構造体の扉を形成して、この扉に引き手を設けたことにより、普段は支障なくドアを開閉できて隠れ部屋として使用でき、ドア閉鎖時には侵入者に家具であるように誤認させてそこにドアがあることを分かり難くすることで部屋の存在に気付かせ難くして、侵入者が隠れ部屋へ侵入を試みる可能性を低くすることができる。
【0020】
請求項4記載のごとく、家具状構造体の扉をハーフミラー状に形成したことにより、室外からは鏡状に見えて家具に高級感を持たせることができる一方、隠れ部屋内からは室外を透視して部屋の様子を観察できると共に、侵入者を監視することができる。
【0021】
請求項5記載のごとく、家具状構造体の内部に、展示物を固定する固定手段を固設したことにより、ドアの開閉によって家具状構造体の内部に展示した展示物が動いてずれたりすることがなく支障なく日常的に使用できると共に、ドア閉鎖時には侵入者に家具であるように誤認させ易くすることができる。
【0022】
請求項6記載のごとく、ドアにロック装置を設けたことにより、隠れ部屋に逃れた避難者が施錠することで、室外から侵入されるのを防ぐことができる。
【0023】
請求項7記載のごとく、ロック装置を電気式ロック装置で構成して、隠れ部屋内にこのロック装置を制御するロック制御装置を設けたことにより、外側には鍵穴を設ける必要がなくドアの外側を平坦に形成できると共に、鍵穴に鍵をさして施錠する手間を要せず、緊急時に迅速に施錠して身を守ることができる。
【0024】
請求項8記載のごとく、隠れ部屋の外に認証機能付きロック制御装置を設けたことにより、子供などが隠れ部屋内に入って施錠して閉じ込められたりしても隠れ部屋の外から開錠することができて安全であると共に、外出時などに室内に貴重品等を保管して施錠しておき、貴重品等の保管庫として使用することもできる一方、侵入者にはドアの開錠ができない。
【0025】
請求項9記載のごとく、ドアを耐衝撃性部材で形成したことにより、軽量で耐衝撃性に優れたドアとすることができ、安心して避難することができる。
【0026】
請求項10記載のごとく、ドアのフロント部の隠れ部屋側に出入口に当接するつば部を設けたことにより、ドア閉鎖時にドアと出入口の外側との壁をより精密に平坦な状態にして扉の存在に気付かれ難くすると共に、隠れ部屋内の光が室外側に洩れることがなく、部屋の存在に気付かれ難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図1乃至図11を参照して本発明に係る隠れ部屋のドア構造について説明する。まず、図1乃至図3を参照して本発明の隠れ部屋のドア構造の第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態の隠れ部屋のドア構造の断面図である。
【0028】
第1の実施形態の隠れ部屋のドア構造は、第1の部屋A(隠れ部屋室外側)と第2の部屋B(隠れ部屋室内側)とを区画する壁2と、壁2の出入口に設けられるドア枠3と、このドア枠3にヒンジ4を介して開閉自在に取り付けられるドア1aとにより構成される。
【0029】
ドア1aは、隠れ部屋内に回転中心を有するようにドア枠3に取り付けられヒンジ4によって内開きに取付け、室内側にのみ引き手5を設けると共に、ドア1aを閉める方向に付勢する付勢部材としてドアクローザ6を室内側に設ける。さらに、ドア1aに電気式ロック装置10を内臓して少なくとも室外側には鍵穴を設けない構成とし、ドア1aの室外側面を平坦に形成すると共にドア1aの室外側面には壁2と同じ外装を施す。また、ドア1aのフロント部20の室内側にはドア枠3に係止させるためのつば部21を突設する。
【0030】
ドア1aは、ポリカーボネートなどの耐衝撃性部材により構成され、壁2の出入口の室外側の開口面と同じ大きさに形成される。例えば、ポリカーボネート板を加工してドア1aを形成したり、又はステンレス板、チタン板及び鋼板などの金属板とポリカーボネート板とでケイ酸カルシウムなどからなる断熱材を挟んで層状構造とし、耐衝撃性に優れると共に防刃性、耐火性及び耐熱性を備えた層状構造の耐衝撃性部材を構成して、この多層構造の耐衝撃性部材によりドア1aを形成する。
【0031】
付勢部材はドアクローザ6に限られず、ドア1aを付勢して閉じた位置に保持可能であればよい。ドアクローザ6は、ドア1aを実線で図示したドア閉鎖位置に付勢して保持する一方で、破線で示した開放位置に保持することもできるため日常の使用には便利で好ましい実施形態である。このドアクローザ6は、壁2又はドア枠3の室内側の側面や開口面の内周部に取り付けられる。
【0032】
本実施形態における電気式ロック装置10は、電源11と、施錠及び開錠信号を受信する受信部12と、ロックボルト13を駆動する駆動部14と、施錠又は開錠信号を送信するロック制御装置15とからなる。ロック制御装置15は第2の部屋Bに設けられ、このロック制御装置15から送信された信号を受信部12が受け取ると、駆動部14によってロックボルト13がフロント部20から飛び出し、ドア1aのフロント部20に対向して設けられたドア枠3の受穴26にこのロックボルト13が挿通されてドア1aが施錠されるか、又はロックボルト13が引き込まれてドア1aが開錠される。
【0033】
ドア枠3は、壁2との接続部が平坦になるように壁2に取り付けられて室外側面を滑らかに形成すると共に、ドア枠3と壁2とに同じ外装を施す。また、ドア1aのフロント部20に対向するドア枠3の側面に逃げ部25を形成する。逃げ部25は、受穴26を設けたドア枠3の側面を室外側から室内側へ向かって徐々に深く削って傾斜を設けて形成される。この傾斜は、ドア1aを開閉するときにフロント部20の室外側端縁がドア枠3の側面に当たらないように形成される。
【0034】
次に、図2及び図3を参照して第1の実施形態の隠れ部屋のドア構造の設置例について説明する。図2は第1の実施形態の隠れ部屋のドア構造の設置例を示す図であり、図3は第1の実施形態の隠れ部屋のドア構造の別の使用例を示す図である。
【0035】
図2及び図3は、第1の部屋A(隠れ部屋室外側)から見たドア1aを示している。図2では、ドア1aの室外側には引き手5や鍵穴を設けておらず、ドア1a、壁2及びドア枠3には同じ外装が施され、それらの境界も平滑に形成されているためドア1aとドア枠3との境界線がわかり難く、ドアの存在に気付き難くなっている。また、図3では、ドア1aの第1の部屋側に家具Cや額縁D等を配置してドア1aとドア枠3との境界線を隠しているため、さらにドア1aの存在に気付き難い。
【0036】
前記のごとく構成した隠れ部屋のドア構造は、壁2と段差なく形成されたドア枠3に取り付けられるドア1aの室内側にのみ引き手5を設けると共に、鍵穴を室外側に有しないロック装置を設けてドア1aの室外側面を平坦に形成する一方、ドア1aを閉じる方向に付勢する付勢部材を室内側に設けて、さらにドア枠3に逃げ部25を形成してドア1aを閉じた時のドア枠3とドア1aとの隙間を小さくすると共に、ドア1aのフロント部20の室内側端縁にドア枠3に当接するつば部21を設けて高い精度でドア1aとドア枠3との段差を無くして平坦に形成し、ドア1aとドア枠3とに壁2と同じ外装を施したことにより、ドア1a、壁2及びドア枠3とを平滑に形成して、そこにドア1aがあることを分かり難くして部屋の存在に気付かせないようにすることで部屋へ侵入を試みることを防ぐことができる、という効果を奏する。
【0037】
次に、図4乃至図5を参照して本発明の隠れ部屋のドア構造の第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態の隠れ部屋のドア構造の断面図である。ドア1bの材質、ドア枠3への取付け方法、電気式ロック装置10などの構成は第1の実施形態と同一のため説明を省略する。
【0038】
本実施形態に係るドア1bは、ドア1bの第1の部屋A側(隠れ部屋室外側)に家具状構造体30が一体的に形成されており、家具状構造体30はドア1bを背面部としている。また、ドア1bを開閉する際に家具状構造体30がドア枠3と衝突することがないように、家具状構造体30の側面は、その前面を背面よりも狭く傾斜させる。この家具状構造体30は、例えばキュリオケースやコレクションケースなどの、奥行きが浅く軽量なものがよい。この場合、家具状構造体30の前面は透明な材質で構成し、内部に飾る物品等を固定する固定手段38を設ける。
【0039】
図5は、第2の実施形態の隠れ部屋のドア構造の設置例を示す図である。本設置例においては、ドア1bの室外側に家具状構造体30を一体的に形成しているため、そこにドア1bがあることに気付き難い。
【0040】
前記のごとく構成した隠れ部屋のドア構造は、ドア1bにキュリオケースなどの家具状構造体30を一体的に取付けて第1の部屋側(隠れ部屋室外側)に突出させているため、ドア1bが他の家具等と調和し、侵入者がこのドア1bを家具であると誤認してそれがドアであることに気付き難い。
【0041】
次に、図6乃至図8を参照して本発明の隠れ部屋のドア構造の第3の実施形態について説明する。図6は、第3の実施形態の隠れ部屋のドア構造の断面図である。本実施形態においては、ドア1cの室内側に家具状構造体30を一体的に形成している。
【0042】
ドア1cは、透明な耐衝撃性部材からなる表板22をドアフレーム23に嵌め込み、このドアフレーム23に家具状構造体30を取り付けて構成する。ドアフレーム23には外装材24を取り付ける。また、ドアフレーム23のフロント部20の室内側端縁につば部21を形成する。このドア1cを隠れ部屋内に回転中心を有するヒンジ4を介してドア枠3に取り付ける。
【0043】
家具状構造体30は、ドアフレーム23に取り付けられる側面板31と、側面板31にヒンジ33を介して取り付けられる扉板32と、図示しない天井板及び底板により構成される。側面板31はビス34によってドアフレーム23に固定され、扉板32には引き手35aが取り付けられている。また、扉板32の室外側には内装材36を取り付ける。
【0044】
側面板31、扉板32及び天井板や底板など家具状構造体30はポリカーボネート等のプラスチックにより充分な強度を備えると共に軽量に形成し、またドアフレーム23もアルミなどで形成することにより、軽量で十分な強度を有するドア1cを構成する。
【0045】
また、家具状構造体30の内部には、展示する物がドア1cの開閉によって動いてずれないように展示物を固定する固定手段38を設ける。この固定手段38は、扉板32に額縁を取り付けたり、額縁を取り付ける係止具を設けたり、また内部に設置される棚板37に固設したフォトスタンド、時計などを置く台座や小物を入れておくトレイなどにより構成される。
【0046】
図7に本実施形態の別の実施例を示す。前述の第1の実施例において家具状構造体30の扉板32は両開きに構成されているが、本図に示すように、片開きに構成してもよい。このとき、扉板32は引き手35bによって開閉し、ドア1cは引き手35cによって開閉する。また、扉板32の内側面はハーフミラー状に形成されており、室外側から見ると鏡になって家具状構造体30に高級感をもたせることができる一方、室内からは室外を透視することができて隠れ部屋に避難した時に室外の様子観察し、侵入者があるときはその動きを監視することができる。扉板32の材質としては、軽量なアクリルやポリカーボネート等をハーフミラー状に加工したものを用いるとよい。
【0047】
図8は、隠れ部屋のドア構造の第3の実施形態を第1の部屋(隠れ部屋室外側)から見た正面図である。ドア1cを閉じる方向に付勢する付勢部材はドアクローザ6により構成されている。ドアクローザ6は、隠れ部屋内に突出して設けられた家具状構造体30と干渉しないように、ドア1cの上端に取り付けられている。また、電気式ロック装置10はドアフレーム23に内蔵されている。家具状構造体30には棚板37が設けられ、この棚板37には固定手段38として写真立て38a、小物を入れるトレイ38b及び額縁38cが取り付けられている。扉板32を開いて隠れ部屋内から展示する物をいれ、この固定手段38に固定して展示することができる。
【0048】
前記のごとく構成した隠れ部屋のドア構造は、ドア1cに家具状構造体30を一体的に取り付けて第2の部屋(隠れ部屋側)に突出させており、侵入者はドア1cを家具と誤認し易くドアであることに気付き難いため、そこに部屋があることが分からず、部屋への侵入を試みるのを防ぐことができる。また、展示物は固定手段38によって固定されているためドア1cの開閉によって動いてずれたりすることがなく、家具状構造体30は隠れ部屋内から開閉する構成のため、家具状構造体30の展示物を持ち去られることがない。さらに、家具状構造体30は棚板37に載せるものの重さに耐えるだけの強度でよく、コストを抑えることができる。
【0049】
家具状構造体30の具体例としては、キュリオケースやコレクションケースがある。また、薄型のテレビなどを棚板37に戴置して第1の部屋A側からテレビが見れるように構成することもでき、この場合、家具状構造体30の底部にキャスターを取り付けて、重さによって歪まないようにすると共にドア1bの開閉を補助するように構成する。以上の例は、本実施形態の家具状構造体30を上記したキュリオケースやコレクションケースに限定する主旨ではない。
【0050】
次に、図9乃至図10を参照して本発明の隠れ部屋のドア構造の第4の実施形態について説明する。図9は第4の実施形態の隠れ部屋のドア構造の断面図であり、図10は第4の実施形態の隠れ部屋のドア構造の正面図である。
【0051】
ドア1dは、半透明板27と耐衝撃性板28とを重ね合わせ、半透明部材27を室外側に配置してドアフレーム23に取り付けて構成されている。半透明板27は、一方からは光が反射して鏡のように見え、他方からは光が透過するように形成されたものである。そして、耐衝撃性板28は透明なポリカーボネートにより形成し、この耐衝撃性板28の室内側に電気式ロック装置10を取り付ける。
【0052】
このように構成した隠れ部屋のドア構造は、半透明板27が壁面に一体的に形成された全身鏡のように見えて第2の部屋Bへの出入口であることが分かり難いうえに、室外側からは全身鏡として使用でき、室内側からはドア1dを透視して室外側を観察することができる。
【0053】
また第4の実施形態の別の実施例として、耐衝撃性板28は、ステンレス板、チタン板及び鋼板などの金属板とポリカーボネート板とでケイ酸カルシウムなどからなる断熱材を挟んで多層に形成した物を用いてもよい。この場合は半透明板27の代わりに普通の鏡を用いることができる。
【0054】
このように構成した隠れ部屋のドア構造は、室外側からは鏡として見えるため第2の部屋Bへの出入口であることが分かり難く、より耐衝撃性能に優れた耐衝撃板28を用いて身を守ることができる。
【0055】
また、第4の実施形態のさらに別の実施例として、耐衝撃性板28を透明なポリカーボネートの板で形成し、このポリカーボネート板の片面側を半透明状に加工した物を用いてドア1dを形成してもよい。
【0056】
このように構成した隠れ部屋のドア構造は、室外側からは鏡として見えるため第2の部屋への出入口であることが分かり難いうえに、鏡を割られるおそれがなく、しかも室内側からはドア1dを透視して室外側を観察することができる。
【0057】
前記各実施形態において、施錠又は開錠信号を送信するロック制御装置15は第2の部屋Bに設けられていたが、このロック制御装置15を第1の部屋Aなど第2の部屋B以外の場所に配置してもよい。
【0058】
この場合、ロック制御装置15の操作には暗証番号を確認したり指紋や虹彩などの生体認証を行なう認証機能を取り付けて認証機能付きロック制御装置(図示せず)とする。また、認証機能付きロック制御装置を第1の部屋Aに設ける場合には、本発明の隠れ部屋のドア構造の付近には設けないようにしたり、一見してロック制御装置であることが分からないような外見にすることが好ましい。
【0059】
第2の部屋B以外の場所に認証機能付きロック制御装置を設けることにより、外出する際などに第2の部屋Bに貴重品を置いて施錠することで、不在時に泥棒などが侵入しても貴重品を盗まれるのを防ぐことができるし、また子供などが第2の部屋Bに閉じ込められたりするおそれがなくなってより安全である。
【0060】
また、電気式ロック装置10はドア1a〜1dに取り付けられていたが、扉枠3や壁2に電気式ロック装置10を設けてドア1a〜1dにロックボルト13が挿入される受穴26を形成してもよく、ドア1a〜1dに加工する必要がないため強度を確保することができる。また、ドア1a〜1dの施錠は電気式ロック装置10によるものに限られず、室外側に鍵穴を設けないものであれば室内側には鍵穴を備えていてもよい。
【0061】
また電気式ロック装置10は、ドア1a〜1dの上下にそれぞれ1個づつ設けるなど、複数個の電気式ロック装置10を設けてもよい。
【0062】
また、ドア1a〜1dは室内側に開閉可能に構成されており、室外側から入るときはドア1a〜1dを押して開け、室内側から出るときはこのドアクローザ6によってドア1a〜1dを閉める。さらに、ドアクローザ6によってドア1aを開放した状態に保持することもでき、日常的に頻繁に使用する場合はドア1a〜1dを開放しておくこともできる。
【0063】
また、ドア1a〜1dは、壁2の出入口に設けられたドア枠3に取付けられているが、ドア枠3でなく直に壁2に取り付けてもよい。
【0064】
本発明に係る隠れ部屋のドア構造は、例えば図11に示すごとく、ウォークインクローゼットのドアなどに用いるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る隠れ部屋のドア構造の断面図
【図2】第1の実施形態に係る隠れ部屋のドア構造の設置例を示す図
【図3】第1の実施形態に係る隠れ部屋のドア構造の別の設置例を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態に係る隠れ部屋のドア構造の断面図
【図5】第2の実施形態に係る隠れ部屋のドア構造の設置例を示す図
【図6】本発明の第3の実施形態に係る隠れ部屋のドア構造の断面図
【図7】第3の実施形態に係る隠れ部屋のドア構造の別の実施例を示す断面図
【図8】第3の実施形態に係る隠れ部屋のドア構造の正面図
【図9】本発明の第4の実施形態に係る隠れ部屋のドア構造の断面図
【図10】第4の実施形態に係る隠れ部屋のドア構造の正面図
【図11】本発明に係る隠れ部屋のドア構造の設置例を示す図
【符号の説明】
【0066】
1a〜1d ドア
2 壁
3 ドア枠
4 ヒンジ
5 引き手
6 ドアクローザ
10 電気式ロック装置
11 電源
12 受信部
13 ロックボルト
14 駆動部
15 ロック制御装置
20 フロント部
21 つば部
22 表板
23 ドアフレーム
24 外装材
25 逃げ部
26 受穴
27 半透明板
28 耐衝撃性板
30 家具状構造体
31 側面板
32 扉板
33 ヒンジ
34 ビス
35a〜35c 引き手
36 内装材
37 棚板
38 固定手段
A 第1の部屋
B 第2の部屋
C 家具
D 額縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隠れ部屋のドアを隠れ部屋内に回転中心を有するヒンジにより内開きになるように取り付けると共にドア内側に引き手を設け、
このドアを閉鎖する方向に付勢するドア付勢手段を隠れ部屋内に設け、
そしてこのドアの大きさを出入口の外側の開口面と同じに形成すると共に、出入口の内周の垂直面を削ってドア逃げ部を形成し、ドア閉鎖時にドアの表側と隠れ部屋の外側の壁を平坦にしたことを特徴とする隠れ部屋のドア構造。
【請求項2】
隠れ部屋のドアを隠れ部屋内に回転中心を有するヒンジにより内開きになるように取り付けると共にドア内側に引き手を設け、
このドアを閉鎖する方向に付勢するドア付勢手段を隠れ部屋内に設け、
さらにドアの表側に家具状構造体を一体的に取り付けたことを特徴とする隠れ部屋のドア構造。
【請求項3】
隠れ部屋のドアを隠れ部屋内に回転中心を有するヒンジにより内開きになるように取り付けると共に、このドアを閉鎖する方向に付勢するドア付勢手段を隠れ部屋内に設け、
ドアを透明な部材で形成すると共にドア内側に家具状構造体を一体的に取り付け、この家具状構造体の扉を隠れ部屋側に形成して、この扉に引き手を取り付けたことを特徴とする隠れ部屋のドア構造。
【請求項4】
前記扉を隠れ部屋内から外側を透視可能なハーフミラー状に形成した事を特徴とする請求項3記載の隠れ部屋のドア構造。
【請求項5】
前記家具状構造体の内部に、展示物を固定する固定手段を設けたことを特徴とする請求項3記載の隠れ部屋のドア構造。
【請求項6】
前記ドアにロック装置を設けたことを特徴とする請求項1乃至3記載の隠れ部屋のドア構造。
【請求項7】
前記ロック装置は電気式ロック装置により構成し、この電気式ロック装置を施錠または開錠するロック制御装置を隠れ部屋内に配置したことを特徴とする請求項6記載の隠れ部屋のドア構造。
【請求項8】
前記ロック装置は電気式ロック装置により構成し、この電気式ロック装置を施錠または開錠するロック制御装置を隠れ部屋内に配置すると共にロック制御装置に認証機能を設けた認証機能付きロック制御装置を隠れ部屋の外に配置したことを特徴とする請求項6記載の隠れ部屋のドア構造。
【請求項9】
前記ドアを耐衝撃性部材により形成したことを特徴とする請求項1乃至3記載の隠れ部屋のドア構造。
【請求項10】
前記ドアのフロント面の隠れ部屋側に出入口の隠れ部屋側に当接するつば部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3記載の隠れ部屋のドア構造。

【図2】
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【図11】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−316435(P2006−316435A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137811(P2005−137811)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(399034253)株式会社レニアス (21)
【Fターム(参考)】