電力変換装置のスタック構造
【課題】電力変換回路に用いる電力用半導体素子モジュールを、放熱器上に有効に配置することにより、放熱器の小型化,低コスト化およびファン能力の低減化を図る。
【解決手段】3相の交流出力または入力を行なう電力変換回路に適用する電力用半導体素子モジュールMを、放熱器に配置するに当り、放熱器の冷却のための空気の通流方向(矢印参照)に対し2列構成とするとともに、U,V,Wの各相に対しU相とW相は奇数台(ここでは5台)の並列構成とし、V相は偶数台(ここでは6台)の並列構成とすることで、放熱器の上の隙間を少なくし、各モジュールMを効率よく配置できるようにする。
【解決手段】3相の交流出力または入力を行なう電力変換回路に適用する電力用半導体素子モジュールMを、放熱器に配置するに当り、放熱器の冷却のための空気の通流方向(矢印参照)に対し2列構成とするとともに、U,V,Wの各相に対しU相とW相は奇数台(ここでは5台)の並列構成とし、V相は偶数台(ここでは6台)の並列構成とすることで、放熱器の上の隙間を少なくし、各モジュールMを効率よく配置できるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力用半導体モジュールを並列接続して構成される、電力変換装置のスタック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に、電力変換装置の代表装置であるインバータの主回路図を示す。
同図において、11は直流電源(回路)、12はモータ(Mo)などの負荷、13は電力用半導体素子からなる電力変換部(インバータ)で、可変電圧・周波数の交流出力が可能である。直流電源(回路)11は通常、交流電源とダイオード整流器を介して、大容量の電解コンデンサで構成されるのが一般的である。
【0003】
インバータ部13の符号14はスイッチング素子としてのIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、15はこのIGBTと逆並列に接続されているダイオードであり、これらが6回路で構成されている。通常、電力用半導体モジュール(IGBTモジュール)は上下アーム2素子分を1組としているか、または6素子分を1組としており、一般に3相出力のインバータ構成とする場合に、或る程度の容量以上の装置は2素子入りのIGBTモジュールを、3の倍数台用いて構成することが多い。
【0004】
また、装置を大容量化する場合、素子の電流規格を大きくする必要がある。その場合、電流規格の大きいIGBTモジュールの適用や、IGBTモジュールの並列接続が必要となる。図7に、2素子入りのIGBTモジュールMを各相毎に3並列接続した場合の例を示す。また、図8に2素子入りIGBTモジュールMの外観を示す。モジュールMは図8のように、例えば正極としての端子16(P)、負極としての端子17(N)および出力端子18(U)などを備えている。
【0005】
IGBTモジュールは通常、その発生損失による発熱のため、冷却用の放熱器が必要である。その放熱器の代表的なものが、図9に示すアルミヒートシンクである。これは通常直方体構造で、受熱部19とフィン部20から構成され、フィン部20に風を流すことで冷却を行なうものである。図7の例で、3並列接続のIGBTモジュールは、図10または図11のように、全相分の9台が、また各相毎の場合は3台ずつが、それぞれ受熱部に設置される。
なお、2素子入りIGBTモジュールの形状や、3並列のIGBTモジュールを近接設置する例については、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−117783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、IGBTモジュールを並列接続する装置では、IGBTモジュールどうしの電流バランスを考慮し、並列接続されるIGBTモジュールは図10(9台のモジュール全てを1台の放熱器上に設置する場合)または図11(各相毎に3台ずつ放熱器上に設置する場合)のように、受熱部に近接して配置する必要がある。
ところが、図12のように並列数(5並列)が多くなると、3相分では図13のようにX(横)方向に長くなり、装置全体のコンパクト化の妨げとなるおそれがある。
【0008】
これに対し、図14のようにIGBTモジュールが3並列で、3相分を1台の放熱器上に設置する図14(a)の場合、各相毎に1台の放熱器上に設置する図14(b)の場合、同様にIGBTモジュールが5並列で、3相分を1台の放熱器上に設置する図15(a)の場合、各相毎に1台の放熱器上に設置する図15(b)の場合のように、風の通流方向に対して2列で配置することにより、X(横)方向の伸びを抑えることができる。
【0009】
しかし、その場合にモジュールの並列数が偶数台ならば問題ないが、奇数台の場合は放熱器に対して、図14,15に点線21で示す(一部のみ示し、他の部分も同様)ようなデッドスペースが生じるため、放熱器の有効利用が図られているとは言い難い。
また、図16(IGBTモジュールが3並列の場合)のように風上側に5台、風下側に4台配置することにすると、図14,15の場合に比べてデッドスペースを減らすことが可能になるが、V相のIGBTモジュール2台が風下側に配置されるため、他相のIGBTモジュールに比べて上記2台の熱的負担が大きくなり、結果的にV相基準で熱設計する必要が生じる。
【0010】
図17に、IGBTモジュールを5並列とし放熱器を2台設置する例を示す。
この場合、放熱器1Aと1Bとでは設置されるIGBTモジュール数が異なるため、IGBTモジュール数が多い方の放熱器1A基準で熱設計を行なう必要があり、結果的に放熱能力の大きい放熱器やファンが必要になる、という問題がある。
したがって、この発明の課題は、放熱器の有効利用を図ることで放熱器の小型化,低コスト化及びファン能力の低減化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するため、請求項1の発明では、3相の交流出力または入力を行なう電力変換回路が、1相当り奇数台を基本として並列接続される電力用半導体素子モジュールから構成され、これらの電力用半導体素子モジュールを冷却するための放熱器を備えた電力変換装置のスタック構造において、
前記電力用半導体素子モジュールは、前記放熱器冷却のための空気の通風方向に対し、各相当りの並列数を第1相と第3相では奇数台、第2相では偶数台として前記放熱器上にそれぞれ2列となるように配置することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明では、3相の交流出力または入力を行なう電力変換回路が、1相当り奇数台を基本として並列接続される電力用半導体素子モジュールから構成され、これらの電力用半導体素子モジュールを冷却するための放熱器を備えた電力変換装置のスタック構造において、
前記電力用半導体素子モジュールは、前記放熱器冷却のための空気の通風方向に対し、各相当りの並列数を第1相と第3相では5並列、第2相では6並列にするとともに、前記放熱器を2台使用し、一方の放熱器には第1相の5台と第2相の3台、他方の放熱器には第2相の3台と第3相の5台を前記放熱器上にそれぞれ2列となるように配置することを特徴とする。
【0013】
上記請求項1または2の発明においては、前記偶数台設置される相は、前記放熱器の中央部に配置することができる(請求項3の発明)。また、上記請求項1〜3の発明においては、前記2列の電力用半導体素子モジュールを、通風方向に2分割し1列ずつにして放熱器上に配置することができる(請求項4の発明)。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、放熱器の有効利用を図ることで放熱器の小型化,低コスト化及びファン能力を低減化することができ、その結果電力変換装置のスタックや装置全体の小型化,低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態を示す構成図
【図2】図1で平列数の異なる場合を示す構成図
【図3】この発明の別の実施の形態を示す構成図
【図4】図1の変形例を示す構成図
【図5】図3の変形例を示す構成図
【図6】インバータの一般的な例を示す回路構成図
【図7】電力用半導体モジュールが3並列の場合のインバータ回路を示す構成図
【図8】2素子入り電力用半導体モジュールの外観図
【図9】アルミヒートシンクの外観図
【図10】3相分の電力用半導体モジュールを1放熱器上に設置する例を示す上面図
【図11】3相分の電力用半導体モジュールを3放熱器上に設置する例を示す上面図
【図12】1相分の電力用半導体モジュールを1放熱器上に設置する例を示す上面図
【図13】3相分の電力用半導体モジュールを3放熱器上に設置する例を示す上面図
【図14】3並列の電力用半導体モジュールを放熱器上に設置する例を示す上面図
【図15】5並列の電力用半導体モジュールを放熱器上に設置する例を示す上面図
【図16】図14(a)の変形例を示す上面図
【図17】5並列の電力用半導体モジュールを2放熱器上に設置する例を示す上面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1はこの発明の実施の形態を示す構成図である。これは、U相とW相のIGBTモジュールMを5並列とし、V相のIGBTモジュールMを6並列とする例である。こうすることで、放熱器1の受熱部のデッドスペースが無くなって放熱器1の有効利用が可能になるとともに、熱的負担が大きくなるV相については他相よりも1台多くすることで、図17の場合よりも熱的負担を小さくできるようにしている。
図2はU相とW相のIGBTモジュールMを3並列とし、V相のIGBTモジュールMを4並列とする場合、つまり並列数が異なる以外は図1と全く同様なので、説明を省略する。
【0017】
図3にこの発明の別の実施の形態を示す。
これは、図1と同様にU相とW相のIGBTモジュールMを5並列とし、V相のIGBTモジュールMを6並列とするが、放熱器を1A,1Bと2台設ける例である。こうすることで、放熱器1Aと放熱器1Bの熱的負担(IGBTモジュールの総発生損失)が等しくなるとともに、図17と比べてV相モジュール1台当りの発生損失が5/6に低減するため、放熱器全体の熱的負担(IGBTモジュールの総発生損失)が軽減され、放熱器の小型化やファン能力の軽減が可能となる。
【0018】
図4に図1または図2の変形例を示す。
これは、2列の放熱器1を上下2つに分割し、1列目のモジュールMを放熱器1Aに、また2列目のモジュールMを放熱器1Bに配置したもので、こうすることで、放熱器1Aと放熱器1Bの熱的負担を等しくするものである。
図5は図3の変形例を示し、図3の1列目のモジュールMを放熱器1A,1Bに、また2列目のモジュールMを放熱器1C,1Dにそれぞれ配置したもので、こうすることにより、放熱器1A〜1Dの熱的負担を等しくするものである。
【0019】
以上ではIGBTモジュールを3並列,5並列の場合を説明したが、7並列(このときのV相は8並列),9並列(このときのV相は10並列)の場合など、並列数の基本数が奇数個の場合一般に適用することができる。また、素子としてはIGBTに限らずMOSFETやダイオードなどの電力用半導体モジュール、さらには変換装置としてはコンバータなどの交流入力を行なう電力変換装置についても、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1,1A,1B,1C,1D…冷却器、M…IGBT(電力用半導体)モジュール、11…直流電源(回路)、12…負荷(モータMo)、13…電力変換部(インバータ)、14…IGBT、15…ダイオード、16…正側直流端子(P)、17…負側直流端子(N)、18…出力端子(U)、19…受熱部、20…冷却フィン。
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力用半導体モジュールを並列接続して構成される、電力変換装置のスタック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に、電力変換装置の代表装置であるインバータの主回路図を示す。
同図において、11は直流電源(回路)、12はモータ(Mo)などの負荷、13は電力用半導体素子からなる電力変換部(インバータ)で、可変電圧・周波数の交流出力が可能である。直流電源(回路)11は通常、交流電源とダイオード整流器を介して、大容量の電解コンデンサで構成されるのが一般的である。
【0003】
インバータ部13の符号14はスイッチング素子としてのIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、15はこのIGBTと逆並列に接続されているダイオードであり、これらが6回路で構成されている。通常、電力用半導体モジュール(IGBTモジュール)は上下アーム2素子分を1組としているか、または6素子分を1組としており、一般に3相出力のインバータ構成とする場合に、或る程度の容量以上の装置は2素子入りのIGBTモジュールを、3の倍数台用いて構成することが多い。
【0004】
また、装置を大容量化する場合、素子の電流規格を大きくする必要がある。その場合、電流規格の大きいIGBTモジュールの適用や、IGBTモジュールの並列接続が必要となる。図7に、2素子入りのIGBTモジュールMを各相毎に3並列接続した場合の例を示す。また、図8に2素子入りIGBTモジュールMの外観を示す。モジュールMは図8のように、例えば正極としての端子16(P)、負極としての端子17(N)および出力端子18(U)などを備えている。
【0005】
IGBTモジュールは通常、その発生損失による発熱のため、冷却用の放熱器が必要である。その放熱器の代表的なものが、図9に示すアルミヒートシンクである。これは通常直方体構造で、受熱部19とフィン部20から構成され、フィン部20に風を流すことで冷却を行なうものである。図7の例で、3並列接続のIGBTモジュールは、図10または図11のように、全相分の9台が、また各相毎の場合は3台ずつが、それぞれ受熱部に設置される。
なお、2素子入りIGBTモジュールの形状や、3並列のIGBTモジュールを近接設置する例については、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−117783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、IGBTモジュールを並列接続する装置では、IGBTモジュールどうしの電流バランスを考慮し、並列接続されるIGBTモジュールは図10(9台のモジュール全てを1台の放熱器上に設置する場合)または図11(各相毎に3台ずつ放熱器上に設置する場合)のように、受熱部に近接して配置する必要がある。
ところが、図12のように並列数(5並列)が多くなると、3相分では図13のようにX(横)方向に長くなり、装置全体のコンパクト化の妨げとなるおそれがある。
【0008】
これに対し、図14のようにIGBTモジュールが3並列で、3相分を1台の放熱器上に設置する図14(a)の場合、各相毎に1台の放熱器上に設置する図14(b)の場合、同様にIGBTモジュールが5並列で、3相分を1台の放熱器上に設置する図15(a)の場合、各相毎に1台の放熱器上に設置する図15(b)の場合のように、風の通流方向に対して2列で配置することにより、X(横)方向の伸びを抑えることができる。
【0009】
しかし、その場合にモジュールの並列数が偶数台ならば問題ないが、奇数台の場合は放熱器に対して、図14,15に点線21で示す(一部のみ示し、他の部分も同様)ようなデッドスペースが生じるため、放熱器の有効利用が図られているとは言い難い。
また、図16(IGBTモジュールが3並列の場合)のように風上側に5台、風下側に4台配置することにすると、図14,15の場合に比べてデッドスペースを減らすことが可能になるが、V相のIGBTモジュール2台が風下側に配置されるため、他相のIGBTモジュールに比べて上記2台の熱的負担が大きくなり、結果的にV相基準で熱設計する必要が生じる。
【0010】
図17に、IGBTモジュールを5並列とし放熱器を2台設置する例を示す。
この場合、放熱器1Aと1Bとでは設置されるIGBTモジュール数が異なるため、IGBTモジュール数が多い方の放熱器1A基準で熱設計を行なう必要があり、結果的に放熱能力の大きい放熱器やファンが必要になる、という問題がある。
したがって、この発明の課題は、放熱器の有効利用を図ることで放熱器の小型化,低コスト化及びファン能力の低減化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するため、請求項1の発明では、3相の交流出力または入力を行なう電力変換回路が、1相当り奇数台を基本として並列接続される電力用半導体素子モジュールから構成され、これらの電力用半導体素子モジュールを冷却するための放熱器を備えた電力変換装置のスタック構造において、
前記電力用半導体素子モジュールは、前記放熱器冷却のための空気の通風方向に対し、各相当りの並列数を第1相と第3相では奇数台、第2相では偶数台として前記放熱器上にそれぞれ2列となるように配置することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明では、3相の交流出力または入力を行なう電力変換回路が、1相当り奇数台を基本として並列接続される電力用半導体素子モジュールから構成され、これらの電力用半導体素子モジュールを冷却するための放熱器を備えた電力変換装置のスタック構造において、
前記電力用半導体素子モジュールは、前記放熱器冷却のための空気の通風方向に対し、各相当りの並列数を第1相と第3相では5並列、第2相では6並列にするとともに、前記放熱器を2台使用し、一方の放熱器には第1相の5台と第2相の3台、他方の放熱器には第2相の3台と第3相の5台を前記放熱器上にそれぞれ2列となるように配置することを特徴とする。
【0013】
上記請求項1または2の発明においては、前記偶数台設置される相は、前記放熱器の中央部に配置することができる(請求項3の発明)。また、上記請求項1〜3の発明においては、前記2列の電力用半導体素子モジュールを、通風方向に2分割し1列ずつにして放熱器上に配置することができる(請求項4の発明)。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、放熱器の有効利用を図ることで放熱器の小型化,低コスト化及びファン能力を低減化することができ、その結果電力変換装置のスタックや装置全体の小型化,低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態を示す構成図
【図2】図1で平列数の異なる場合を示す構成図
【図3】この発明の別の実施の形態を示す構成図
【図4】図1の変形例を示す構成図
【図5】図3の変形例を示す構成図
【図6】インバータの一般的な例を示す回路構成図
【図7】電力用半導体モジュールが3並列の場合のインバータ回路を示す構成図
【図8】2素子入り電力用半導体モジュールの外観図
【図9】アルミヒートシンクの外観図
【図10】3相分の電力用半導体モジュールを1放熱器上に設置する例を示す上面図
【図11】3相分の電力用半導体モジュールを3放熱器上に設置する例を示す上面図
【図12】1相分の電力用半導体モジュールを1放熱器上に設置する例を示す上面図
【図13】3相分の電力用半導体モジュールを3放熱器上に設置する例を示す上面図
【図14】3並列の電力用半導体モジュールを放熱器上に設置する例を示す上面図
【図15】5並列の電力用半導体モジュールを放熱器上に設置する例を示す上面図
【図16】図14(a)の変形例を示す上面図
【図17】5並列の電力用半導体モジュールを2放熱器上に設置する例を示す上面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1はこの発明の実施の形態を示す構成図である。これは、U相とW相のIGBTモジュールMを5並列とし、V相のIGBTモジュールMを6並列とする例である。こうすることで、放熱器1の受熱部のデッドスペースが無くなって放熱器1の有効利用が可能になるとともに、熱的負担が大きくなるV相については他相よりも1台多くすることで、図17の場合よりも熱的負担を小さくできるようにしている。
図2はU相とW相のIGBTモジュールMを3並列とし、V相のIGBTモジュールMを4並列とする場合、つまり並列数が異なる以外は図1と全く同様なので、説明を省略する。
【0017】
図3にこの発明の別の実施の形態を示す。
これは、図1と同様にU相とW相のIGBTモジュールMを5並列とし、V相のIGBTモジュールMを6並列とするが、放熱器を1A,1Bと2台設ける例である。こうすることで、放熱器1Aと放熱器1Bの熱的負担(IGBTモジュールの総発生損失)が等しくなるとともに、図17と比べてV相モジュール1台当りの発生損失が5/6に低減するため、放熱器全体の熱的負担(IGBTモジュールの総発生損失)が軽減され、放熱器の小型化やファン能力の軽減が可能となる。
【0018】
図4に図1または図2の変形例を示す。
これは、2列の放熱器1を上下2つに分割し、1列目のモジュールMを放熱器1Aに、また2列目のモジュールMを放熱器1Bに配置したもので、こうすることで、放熱器1Aと放熱器1Bの熱的負担を等しくするものである。
図5は図3の変形例を示し、図3の1列目のモジュールMを放熱器1A,1Bに、また2列目のモジュールMを放熱器1C,1Dにそれぞれ配置したもので、こうすることにより、放熱器1A〜1Dの熱的負担を等しくするものである。
【0019】
以上ではIGBTモジュールを3並列,5並列の場合を説明したが、7並列(このときのV相は8並列),9並列(このときのV相は10並列)の場合など、並列数の基本数が奇数個の場合一般に適用することができる。また、素子としてはIGBTに限らずMOSFETやダイオードなどの電力用半導体モジュール、さらには変換装置としてはコンバータなどの交流入力を行なう電力変換装置についても、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1,1A,1B,1C,1D…冷却器、M…IGBT(電力用半導体)モジュール、11…直流電源(回路)、12…負荷(モータMo)、13…電力変換部(インバータ)、14…IGBT、15…ダイオード、16…正側直流端子(P)、17…負側直流端子(N)、18…出力端子(U)、19…受熱部、20…冷却フィン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相の交流出力または入力を行なう電力変換回路が、1相当り奇数台を基本として並列接続される電力用半導体素子モジュールから構成され、これらの電力用半導体素子モジュールを冷却するための放熱器を備えた電力変換装置のスタック構造において、
前記電力用半導体素子モジュールは、前記放熱器冷却のための空気の通風方向に対し、各相当りの並列数を第1相と第3相では奇数台、第2相では偶数台として前記放熱器上にそれぞれ2列となるように配置することを特徴とする電力変換装置のスタック構造。
【請求項2】
3相の交流出力または入力を行なう電力変換回路が、1相当り奇数台を基本として並列接続される電力用半導体素子モジュールから構成され、これらの電力用半導体素子モジュールを冷却するための放熱器を備えた電力変換装置のスタック構造において、
前記電力用半導体素子モジュールは、前記放熱器冷却のための空気の通風方向に対し、各相当りの並列数を第1相と第3相では5並列、第2相では6並列にするとともに、前記放熱器を2台使用し、一方の放熱器には第1相の5台と第2相の3台、他方の放熱器には第2相の3台と第3相の5台を前記放熱器上にそれぞれ2列となるように配置することを特徴とする電力変換装置のスタック構造。
【請求項3】
前記偶数台設置される相は、前記放熱器の中央部に配置することを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置のスタック構造。
【請求項4】
前記2列の電力用半導体素子モジュールを、通風方向に2分割し1列ずつにして放熱器上に配置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置のスタック構造。
【請求項1】
3相の交流出力または入力を行なう電力変換回路が、1相当り奇数台を基本として並列接続される電力用半導体素子モジュールから構成され、これらの電力用半導体素子モジュールを冷却するための放熱器を備えた電力変換装置のスタック構造において、
前記電力用半導体素子モジュールは、前記放熱器冷却のための空気の通風方向に対し、各相当りの並列数を第1相と第3相では奇数台、第2相では偶数台として前記放熱器上にそれぞれ2列となるように配置することを特徴とする電力変換装置のスタック構造。
【請求項2】
3相の交流出力または入力を行なう電力変換回路が、1相当り奇数台を基本として並列接続される電力用半導体素子モジュールから構成され、これらの電力用半導体素子モジュールを冷却するための放熱器を備えた電力変換装置のスタック構造において、
前記電力用半導体素子モジュールは、前記放熱器冷却のための空気の通風方向に対し、各相当りの並列数を第1相と第3相では5並列、第2相では6並列にするとともに、前記放熱器を2台使用し、一方の放熱器には第1相の5台と第2相の3台、他方の放熱器には第2相の3台と第3相の5台を前記放熱器上にそれぞれ2列となるように配置することを特徴とする電力変換装置のスタック構造。
【請求項3】
前記偶数台設置される相は、前記放熱器の中央部に配置することを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置のスタック構造。
【請求項4】
前記2列の電力用半導体素子モジュールを、通風方向に2分割し1列ずつにして放熱器上に配置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置のスタック構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−157138(P2012−157138A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13252(P2011−13252)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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