説明

電力変換装置

【課題】故障発生時に確実に放電を停止する。
【解決手段】電力変換装置200において、制御回路319は、スイッチ325を通電にして抵抗器324によるコンデンサー326の放電を開始した後の、測定回路317,319により測定されたコンデンサーの端子電圧が、予め設定された電圧低下特性を越えた場合に、スイッチ325を遮断にして抵抗器324によるコンデンサー326の放電を停止する。さらに制御回路319は、スイッチ325を遮断にして抵抗器324によるコンデンサー326の放電を停止するまでの期間に、測定回路317,319により測定されたコンデンサー326の端子電圧と電圧低下特性との比較に基づく放電の継続または停止の判定を予め定めた時間間隔で複数回行うように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源を開閉器を介して直流電源平滑用コンデンサーとインバーターへ供給する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車のモーター駆動用などに用いられるインバーターは、直流電源から供給された直流電力を回転電機などの交流電気負荷に供給するための交流電力に変換する機能、あるいは回転電機により発電された交流電力を直流電源に供給するための直流電力に変換する機能を備えている。これらの変換機能を果すために、インバーターはスイッチング素子による電力変換回路を備えており、スイッチング素子が導通と遮断を繰り返すことによって直流電力から交流電力へ、あるいは交流電力から直流電力への電力変換を行う。
このインバーターには、動作時の直流電源の電圧変動を安定化させる大容量の直流電源平滑用コンデンサーが設けられている。また、バッテリーと直流電源平滑用コンデンサーとの間にはコンタクターなどの断路器が設けられ、ハイブリッド自動車を走行させる際にはコンタクターを閉路(以下、オンと云う)させてコンデンサーを充電した後、インバーターを動作させ走行モーターを駆動する。一方、ハイブリッド自動車を停止させたときは、コンタクターを開路(以下、オフと云う) して放電回路を介してコンデンサーを放電している。
インバーターにおけるコンタクターと放電回路の故障を判定するために、ハイブリッド自動車が停止してからの直流電源平滑用コンデンサーの端子電圧を監視し、コンデンサーの端子電圧が停車後T1時間(40秒)を経過した時点で所定値以下に低下していれば異常なしと判定し、停車後T2時間(5分)を経過した時点で所定値以下に低下した場合は放電回路に異常があると判定し、停車後T2時間が経過しても低下しない場合はコンタクターに異常があると判定するようにした電気自動車の制御装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−257778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の制御装置では、停車後に放電回路によるコンデンサーの放電を開始してから何らかの原因でコンタクターがオン(閉路)すると、長時間にわたって放電回路に大きな電流が流れ続けることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)請求項1の発明は、直流電源を開閉器を介して直流電源平滑用コンデンサーとインバーターへ供給する電力変換装置であって、コンデンサーの電荷を放電する抵抗器と、抵抗器と直列に接続され、コンデンサーから抵抗器へ流れる放電電流の通電と遮断を行うスイッチと、コンデンサーの端子電圧を測定する測定回路と、スイッチの通電と遮断を制御する制御回路とを備え、制御回路は、スイッチを通電にして抵抗器によるコンデンサーの放電を開始した後の、測定回路により測定されたコンデンサーの端子電圧が、予め設定された電圧低下特性を越えた場合に、スイッチを遮断にして抵抗器によるコンデンサーの放電を停止し、さらに制御回路は、スイッチを遮断にして抵抗器による前記コンデンサーの放電を停止するまでの期間に、測定回路により測定されたコンデンサーの端子電圧と電圧低下特性との比較に基づく放電の継続または停止の判定を予め定めた時間間隔で複数回行うように設定されることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の電力変換装置において、電圧低下特性は、抵抗器によるコンデンサーの放電特性に応じて設定されることを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項2に記載の電力変換装置において、制御回路は、測定回路により測定された放電開始前のコンデンサーの端子電圧とコンデンサーの容量および抵抗器の抵抗値により決まる時定数を用いた指数関数に基づいて電圧低下特性が定められ、当該電圧低下特性と測定回路により測定されたコンデンサーの端子電圧とを比較して放電の継続または停止を判定することを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項3に記載の電力変換装置において、制御回路は、測定回路により前回測定されたコンデンサーの端子電圧に対する今回測定されたコンデンサーの端子電圧の比と、コンデンサーの容量および抵抗器の抵抗値により決まる時定数に基づき設定された係数とを比較して、放電の継続または停止を判定することを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電力変換装置において、制御回路は、放電を開始してからの経過時間に応じて時間間隔を長くすることを特徴とする。
(6)請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電力変換装置において、制御回路は、コンデンサーの端子電圧が電圧低下特性を越えたとして抵抗器によるコンデンサーの放電を停止した場合には、第1の所定時間が経過するまで放電を再開しないことを特徴とする。
(7)請求項7の発明は、請求項6に記載の電力変換装置において、制御回路は、コンデンサーの端子電圧が電圧低下特性を越えたことによる放電停止が初回の場合は、第1の所定時間より短い第2の所定時間が経過するまで放電の再開を待ち、放電停止が2回目以降の場合は、第1の所定時間が経過するまで放電の再開を待つことを特徴とする。
(8)請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電力変換装置において、スイッチは第1スイッチと第2スイッチが直列に接続されており、第1スイッチの短絡故障の発生を検知する検知回路を備え、制御回路は、通常は第2スイッチを通電にしたまま第1スイッチの通電と遮断により放電の開始と停止を行い、放電を停止するときに検知回路により第1スイッチの短絡故障の発生が検知された場合には、第2スイッチを遮断にして放電を停止することを特徴とする。
(9)請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電力変換装置において、抵抗器は、第1の抵抗値を有する第1抵抗器と、第1の抵抗値よりも低い第2の抵抗値を有する第2抵抗器からなり、スイッチは、第1抵抗器と直列に接続されてコンデンサーから第1抵抗器へ流れる放電電流の通電と遮断を行う第3スイッチと、第2抵抗器と直列に接続されてコンデンサーから第2抵抗器へ流れる放電電流の通電と遮断を行う第4スイッチとからなり、制御回路は、第3スイッチを通電にして第1抵抗器によりコンデンサーの放電を開始し、測定回路により測定されたコンデンサーの端子電圧が所定電圧以下になったら、第1抵抗器によるコンデンサーの放電に加え、第4スイッチを通電にして第2抵抗器によるコンデンサーの放電を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、抵抗器によるコンデンサーの放電中に開閉器が何らかの原因により閉路(オン)した場合でも、抵抗器によるコンデンサーの放電が確実に停止され、抵抗器に放電電流が流れ続けるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図
【図2】インバーター装置の電気回路図
【図3】一実施の形態の直流電源平滑用コンデンサー326の放電制御回路300の電気回路構成を示す図
【図4】正常な放電が行われた場合における放電制御回路300の各部動作を示すタイミングチャート
【図5】放電中に何らかの原因によりコンタクター304がオン(閉路)した場合における放電制御回路300の保護動作を示すタイミングチャート
【図6】放電制御回路300のマイコン319による保護動作を示すPAD
【図7】図6に示す保護動作の変形例を示すPAD
【図8】放電制御回路300のマイコン319による保護動作の他の実施例を示すPAD
【図9】放電指令信号の受信時にコンタクター304がオン(閉路)状態にある場合の放電保護動作を示すタイミングチャート
【図10】放電指令信号の受信時にコンタクター304が閉路状態にある場合の放電保護動作の他の実施例を示すタイミングチャート
【図11】スイッチング素子325と直列に第2のスイッチング素子1101を接続し、第1のスイッチング素子325のショートモード故障のバックアップを行う実施例の放電回路図
【図12】電圧Vの下がり方が緩やかになったら放電抵抗器の抵抗値を下げて放電時間を短縮するようにした実施例の放電回路図
【図13】図12に示す放電回路の放電波形を示す図
【図14】放電制御回路300のバッファー323の内部回路図
【図15】放電制御回路300のコレクター電圧検知回路322の内部回路図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明をハイブリッド自動車のモーター駆動用インバーターに適用した発明の一実施の形態を説明する。なお、本発明の直流電源平滑用コンデンサーの放電回路は、ハイブリッド自動車のモーター駆動用インバーターに限定されず、一般的な電気自動車に用いられるインバーターはもちろんのこと、電気車両、船舶、航空機などで用いられるインバーターやDC−DCコンバーターなどの電力変換装置、広く一般産業用として用いられるすべての電力変換装置、あるいは家庭の太陽光発電システムや家庭の電化製品を駆動する電動機の電力変換装置にも適用することができ、後述する一実施の形態のインバーターに適用した場合と同様な効果を得ることができる。
【0009】
図1はハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。自動車に搭載される電機システムの電力変換装置、特に車両駆動用電機システムに用いられるインバーターは、厳しい周囲環境や動作環境下に置かれる。車両駆動用インバーターは、車載バッテリーまたは車載発電装置から供給される直流電力を交流電力に変換し、交流電力を車両駆動用交流電動機に供給して駆動する一方、車両駆動用交流電動機が発生する交流電力を直流電力に逆変換し、直流電力を車載バッテリーに供給して充電する。
【0010】
図1において、ハイブリッド電気自動車(以下、HEVと記述する)110は1つの電動車両であり、2つの車両駆動用システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジン(ENG)120を動力源としたエンジンシステムである。このエンジンシステムは主としてHEV110の駆動源として用いられる。他の1つは、モータージェネレーター(MG1、MG2)192,194を動力源とした車載電機システムである。この車載電機システムは主としてHEV110の駆動源およびHEV110の電力発生源として用いられる。モータージェネレーター192,194は例えば同期機あるいは誘導機であり、運転方法によりモーターとしても発電機としても動作するので、この明細書ではモータージェネレーターと呼ぶ。
【0011】
車体のフロント部には前輪車軸114が回転可能に軸支されており、この前輪車軸114の両端には1対の前輪112が設けられている。一方、車体のリア部には後輪車軸(図示省略)が回転可能に軸支されており、この後輪車軸の両端には1対の後輪(不図示)が設けられている。この一実施の形態のHEV110は、動力によって駆動される主輪を前輪112とし、連れ回される従輪を後輪(不図示)とする、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆の後輪駆動方式のHEVに対しても本発明を適用することができる。
【0012】
前輪車軸114の中央部には、前輪側デファレンシャルギア(以下、前輪側DEFと呼ぶ)116が設けられている。前輪車軸114は前輪側DEF116の出力側に機械的に接続されている。また、前輪側DEF116の入力側には変速機118の出力軸が機械的に接続されている。前輪側DEF116は、変速機(T/M)118により変速され伝達された回転駆動力を左右の前輪車軸114に分配する差動式動力分配機構である。変速機118の入力側にはモータージェネレーター192の出力側が機械的に接続されている。さらに、モータージェネレーター192の入力側には、動力分配機構122を介してエンジン120の出力側およびモータージェネレーター194の出力側が機械的に接続されている。なお、モータージェネレーター192,194および動力分配機構122は、変速機118の筐体の内部に収納されている。
【0013】
モータージェネレーター192,194は回転子に永久磁石を備えた同期機であり、固定子の電機子巻線に供給される交流電力がインバーター装置(INV1、INV2)140,142によって制御され、これによりモータージェネレーター192,194の駆動制御が行われる。インバーター装置140,142にはバッテリー(BAT)136が電気的に接続されており、バッテリー136とインバーター装置140,142との間で電力の授受が行われる。
【0014】
この一実施の形態のHEV110は、モータージェネレーター192とインバーター装置140からなる第1電動発電ユニットと、モータージェネレーター194とインバーター装置142からなる第2電動発電ユニットとの2組の電動発電ユニットを備え、運転状態に応じてそれらを使い分ける。すなわち、エンジン120からの動力により車両を駆動している場合において、車両の駆動トルクをアシストする場合にはエンジン120の動力により第2電動発電ユニットを発電ユニットとして作動させ、その発電によって得られた電力を用いて第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。また、同様の場合において、車両の車速をアシストする場合にはエンジン120の動力により第1電動発電ユニットを発電ユニットとして発電させ、その発電によって得られた電力を用いて第2電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。
【0015】
また、この一実施の形態のHEV110では、バッテリー136の電力を用いて第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させ、モータージェネレーター192の動力のみで車両を駆動することができる。さらに、この一実施の形態のHEV110では、エンジン120の動力あるいは車輪からの動力により第1電動発電ユニットまたは第2電動発電ユニットを発電ユニットとして作動させ、バッテリー136を充電することができる。
【0016】
バッテリー136は、さらに補機用モーター(M)195を駆動するための電源としても用いられる。補機には、例えばエアコンディショナーのコンプレッサーを駆動するモーター、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモーターがあり、バッテリー136からインバーター装置(INV3)43に直流電力が供給され、インバーター装置43で交流電力に変換されてモーター195に供給される。この補機用のインバーター装置43は車両駆動用インバーター装置140や142と同様の機能を備え、モーター195に供給する交流の位相や周波数、電力を制御する。例えば、モーター195の回転子の回転に対し進み位相の交流電力を供給することによって、モーター195がトルクを発生する。逆に、遅れ位相の交流電力を発生することによって、モーター195が発電機として動作し、モーター195は回生制動運転となる。このようなインバーター装置43の制御機能はインバーター装置140や142の制御機能と同様である。モーター195の容量がモータージェネレーター192や194の容量より小さいので、インバーター装置43の最大変換電力がインバーター装置140や142より小さいが、インバーター装置43の回路構成は基本的にインバーター装置140や142の回路構成と同じである。
【0017】
コンデンサー326は直流電源平滑用であり、小容量のコンデンサーが並列もしくは直並列に接続されて大容量のコンデンサーモジュールを形成しているが、この明細書では単一のコンデンサーとして表す。コンデンサー326は、インバーター装置140や142およびインバーター装置43と電気的に密接な関係にあり、さらに発熱に対する対策が必要な点が共通している。また、装置の体積をできるだけ小さくすることが望まれている。これらの点から以下に詳述する電力変換装置は、インバーター装置140、142およびインバーター装置43、さらにコンデンサー326を電力変換装置の筐体内に内蔵している。このような構成によって小型で信頼性の高い装置を実現できる。
【0018】
また、インバーター装置140、142およびインバーター装置43、さらにコンデンサー326を一つの筐体に内蔵することによって、配線の簡素化やノイズ対策において効果がある。さらに、コンデンサー326とインバーター装置140、142およびインバーター装置43との接続回路のインダクタンスを低減でき、これによりスパイク電圧の発生を抑制できる上に、発熱の低減や放熱効率の向上を図ることができる。
【0019】
図2はインバーター装置の電気回路図を示す。図2によりインバーター装置140、142およびインバーター装置43の電気回路構成を説明する。インバーター装置140,142,43はいずれも同様な回路構成を備え、同様な作用および機能を有するので、ここではインバーター装置140を代表として説明する。
【0020】
電力変換装置200はインバーター装置140とコンデンサー326を備え、インバーター装置140はインバーター回路144とモーターコントローラー170を備えている。インバーター回路144は、上アームとして動作するIGBT(絶縁ゲート型バイポーラートランジスター)328およびダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330およびダイオード166とからなる上下アーム直列回路150を複数(図2の例では3つの上下アーム直列回路150)備え、それぞれの上下アーム直列回路150の中間電極169から交流端子159を介して交流電力線(交流バスバー)186と接続され、さらに交流電力線186を介してモータージェネレーター192へ接続される。モーターコントローラー170は、インバーター回路144を駆動制御するドライバー回路174と、ドライバー回路174へ信号線176を介して制御信号を供給する制御回路172とを備えている。
【0021】
上アームと下アームのIGBT328と330はスイッチング用パワー半導体素子であり、モーターコントローラー170からの駆動信号により動作し、バッテリー136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力はモータージェネレーター192の電機子巻線に供給される。インバーター回路144は3相ブリッジ回路により構成されており、3相分の上下アーム直列回路150はそれぞれ直流正極端子314と直流負極端子316との間に電気的に並列に接続され、これらの直流正極端子314と直流負極端子316はバッテリー136の正極側と負極側に接続されている。
【0022】
IGBT328,330は、コレクター電極153,163、エミッタ電極(信号用エミッタ電極端子155,165)、ゲート電極(ゲート電極端子154,164)を備えている。IGBT328,330のコレクター電極153,163とエミッタ電極との間にはダイオード156,166が図示のごとく電気的に接続されている。ダイオード156,166はカソード電極とアノード電極の2つの電極を備えており、IGBT328,330のエミッタ電極からコレクター電極に向かう方向が順方向となるように、カソード電極がIGBT328,330のコレクター電極に、アノード電極がIGBT328,330のエミッタ電極にそれぞれ電気的に接続されている。この一実施の形態では、スイッチング用パワー半導体素子としてIGBT328,330を用いた例を示すが、スイッチング用パワー半導体素子としてMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスター)を用いてもよい。この場合には、ダイオード156やダイオード166が不要になる。
【0023】
上下アーム直列回路150は、モータージェネレーター192の電機子巻線の各相巻線に対応して3相分設けられる。3つの上下アーム直列回路150はそれぞれ、IGBT328のエミッタ電極とIGBT330のコレクター電極163を接続する中間電極169から交流端子159を介してモータージェネレーター192のU相、V相、W相に接続されている。上下アーム直列回路どうしは電気的に並列接続されている。上アームのIGBT328のコレクター電極153は正極端子(P端子)157を介してコンデンサー326の正極側コンデンサー電極331に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は負極端子(N端子)158を介してコンデンサー326の負極側コンデンサー電極332にそれぞれ電気的に接続(直流バスバーで接続)されている。上アームのIGBT328のエミッタ電極と下アームのIGBT330のコレクター電極との接続部分にあたる中間電極169は、モータージェネレーター192の電機子巻線の対応する相巻線に交流コネクター188を介して電気的に接続されている。
【0024】
コンデンサー326は、IGBT328,330のスイッチング動作によって生じる直流電圧の変動を抑制する平滑回路を構成する。コンデンサー326の正極側コンデンサー電極331にはバッテリー136の正極側が、コンデンサー326の負極側コンデンサー電極332にはバッテリー136の負極側がそれぞれ直流コネクター138を介して電気的に接続されている。これにより、コンデンサー326は、上アームIGBT328のコレクター電極153およびバッテリー136の正極側と、下アームIGBT330のエミッタ電極およびバッテリー136の負極側との間、いわゆるインバーターのDCリンクに接続され、バッテリー136と上下アーム直列回路150に対して電気的に並列に接続されている。
【0025】
モーターコントローラー170はIGBT328,330を動作させる回路であり、他の制御装置やセンサーなどからの入力情報に基づいてIGBT328,330のスイッチングタイミングを制御するためのタイミング信号を生成する制御回路172と、制御回路172から出力されたタイミング信号に基づいてIGBT328,330をスイッチング動作させるためのドライブ信号を生成するドライブ回路174とを備えている。
【0026】
制御回路172は、IGBT328,330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピューター(以下、マイコンと呼ぶ)を備えている。このマイコンには、入力情報としてモータージェネレーター192に対して要求される目標トルク値、上下アーム直列回路150からモータージェネレーター192の電機子巻線に供給される電流値、およびモータージェネレーター192の回転子の磁極位置が入力されている。目標トルク値は不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものであり、電流値は電流センサー180から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。また、磁極位置はモータージェネレーター192に設けられた回転磁極センサー(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。この一実施の形態では3相分の交流電流値を検出する場合を例に挙げて説明するが、2相分の交流電流値を検出するようにしても構わない。
【0027】
制御回路172に内蔵されるマイコン(不図示)は、目標トルク値に基づいてモータージェネレーター192のd,q軸の電流指令値を演算し、演算結果のd,q軸の電流指令値と検出結果のd,q軸電流値との差分に基づいてd,q軸の電圧指令値を演算し、検出された磁極位置に基づいてd,q軸電圧指令値をU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。そして、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)とを比較してパルス状の変調波を生成し、この変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバー回路174へ出力する。
【0028】
ドライバー回路174は、下アームを駆動する場合に上記PWM信号を増幅し、ドライブ信号として対応する下アームのIGBT330のゲート電極へ出力する。また、上アームを駆動する場合に、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、ドライブ信号として対応する上アームのIGBT328のゲート電極へ出力する。これにより、各IGBT328,330は、入力されたドライブ信号に基づいてスイッチング動作する。
【0029】
モーターコントローラー170は過電流、過電圧、過温度などの異常検知を行い、上下アーム直列回路150を保護している。このため、モーターコントローラー170にはセンシング情報が入力されている。例えば、各アームの信号用エミッタ電極端子155,165からは、各IGBT328,330のエミッタ電極に流れる電流の情報が対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合は対応するIGBT328,330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,330を過電流から保護する。また、上下アーム直列回路150に設けられた温度センサー(不図示)からは、上下アーム直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。さらに、マイコンには上下アーム直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知および過電圧検知を行い、過温度あるいは過電圧が検知された場合はすべてのIGBT328,330のスイッチング動作を停止させ、上下アーム直列回路150、あるいはこの回路150を含む半導体モジュールを過温度、過電圧から保護する。
【0030】
インバーター回路144の上下アームのIGBT328,330の導通および遮断動作が一定の順で切り替わり、この切り替わり時のモータージェネレーター192の固定子巻線の電流は、ダイオード156,166によって作られる回路を流れる。
【0031】
上下アーム直列回路150は、図2に示すように、Positive端子(P端子、正極端子)157、Negative端子(N端子158、負極端子)、上下アームの中間電極169からの交流端子159、上アームの信号用端子(信号用エミッタ電極端子)155、上アームのゲート電極端子154、下アームの信号用端子(信号用エミッタ電極端子)165、下アームのゲート端子電極164を備えている。また、電力変換装置200は、入力側に直流コネクター138、出力側に交流コネクター188をそれぞれ備え、各コネクター138,188を介してバッテリー136とモータージェネレーター192へ接続される。なお、モータージェネレーターへ出力する3相交流の各相の出力を発生する回路として、各相に2つの上下アーム直列回路を並列接続した回路構成の電力変換装置であってもよい。
【0032】
バッテリー136と直流電源平滑用コンデンサー326とは、コンタクター304を介して接続されている。コンタクター304は信号402によりオン(閉路)とオフ(開路)を制御されている。また、放電抵抗器324とスイッチング素子325の直列回路がコンデンサー326の両端に接続されている。放電制御回路300はスイッチング素子325をオン、オフ制御してコンデンサー326から放電抵抗器324への放電電流の通電と遮断を行う。なお、この明細書では放電抵抗器324を単一の抵抗器として表すが、放電抵抗器324は単一の抵抗器で構成してもよいし、あるいは小電力の抵抗器を並列または直列あるいは直並列に接続して大容量の放電抵抗器を構成してもよい。
【0033】
図3は、一実施の形態の直流電源平滑用コンデンサー326の放電制御回路300の電気回路構成を示す。図3において、図1および図2に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。電力変換装置200はコンタクター304を介してバッテリー136に接続されている。コンタクター304はバッテリーコントローラー303からの信号402により制御される。さらに、バッテリーコントローラー303は上位の車両走行コントローラ302により制御される。なお、上位の車両走行コントローラ302はモーターコントローラー170を介して電力変換装置200も制御する。
【0034】
放電制御回路300は、マイコン319、マイコン用電源318、フォトカプラー313,315、分圧回路317、バッファー323、コレクター電圧検知回路322から構成される。マイコン用電源318は、電力変換装置200の直流電源(DCリンク)からマイコン319へ電源電圧5Vを供給する。また、マイコン用電源318はマイコン319から送信されるPRUN信号320を受信する。PRUN信号320はマイコン319が正常に動作していることを示す信号である。マイコン用電源318がPRUN信号320によりマイコン319が正常に動作しなくなったことを検知した場合には、マイコン電源318はRESET信号321をマイコン319へ送信し、マイコン319をリセットする。
【0035】
フォトカプラー313は、モーターコントローラー170からの放電指令信号314をマイコン319へ伝達する。フォトカプラー315は、マイコン319からのエラー信号315をモーターコントローラー170へ伝達する。分圧回路317は、直流電源平滑用コンデンサー326の高電圧をマイコン319の電圧測定回路(AD変換回路)で測定できる電圧範囲に変換する。バッファー323は、マイコン319から出力される放電制御信号328(5Vレベル)をスイッチング素子325のゲート動作レベル信号(15Vレベル)に増幅し、スイッチング素子325のゲートに供給する。なお、バッファー323の回路例については後述する。
【0036】
コレクター電圧検知回路322は、スイッチング素子325のコレクター電圧が高電圧か低電圧かを検知してマイコン319へ伝達する。ここで、コレクター電圧が高電圧であればスイッチング素子325はオフ(遮断)状態にあり、コレクター電圧が低電圧であればスイッチング素子325がオン(通電)状態にある。なお、コレクター電圧検知回路322の回路例については後述する。マイコン319は、モーターコントローラー170からフォトカプラー313を介して放電指令信号314を受信し、スイッチング素子325を制御する放電制御信号328を出力する。また、マイコン319は、直流電源平滑用コンデンサー326の端子電圧を分圧回路317を介して測定し、コンデンサー326の端子電圧が放電の最終目標電圧まで下がったら放電を終了する。さらに、マイコン319は、コレクター電圧検知回路322によりスイッチング素子325がオン状態かオフ状態かを検知することによって、スイッチング素子325が正常に動作しているか否かを確認し、誤動作した場合はエラー信号316を出力する。なお、インバーター筐体にLEDの警告灯を設け、誤動作している場合や放電が完了していない場合に点灯するようにしてもよい。
【0037】
図14は放電制御回路300のバッファー323の内部回路図である。バッファー323は、NMOSインバーターゲート回路1401、PMOSインバーターゲート回路1402およびプルダウン抵抗器1403から構成される。入力端子1406はNMOSインバーターゲート回路1401の入力に接続されている。また、NMOSインバーターゲート回路1401の出力はPMOSインバーターゲート回路1402の入力に接続されている。PMOSインバーターゲート回路1402の出力は出力端子1407に接続されている。両方のインバーターゲート回路ともに電源は15V電源(Vcc15)1408に接続されている。ここで、NMOSインバーターゲート回路1401のNMOSのゲート電圧しきい値VGS(th)は2.5V程度となっている。
【0038】
このように、バッファー323はインバーターゲート回路が2段接続されているので、入力と出力の論理は同じになるが、NMOSインバーターゲート回路1401の論理しきい値は2.5V程度となっており、5Vレベルの信号を15Vレベルの信号に変換することができる。また、プルダウン抵抗器1403はNMOSインバーターゲート回路1401の入力とグランド1409の間に接続されており、入力端子1406がハイインピーダンスになっても、NMOSインバーターゲート回路1401の入力をローレベルにする。これにより、バッファー323は、前段が故障して入力がハイインピーダンスになった場合でもローレベルを出力し、放電状態にならない。
【0039】
図15は、放電制御回路300のコレクター電圧検知回路322の内部回路図である。コレクター電圧検知回路322は、高耐圧ダイオード1501、プルアップ抵抗器1502およびバッファー1503から構成される。スイッチング素子325のコレクターは入力端子1504に接続される。高耐圧ダイオード1501のカソードは入力端子1504に接続され、アノードはバッファー1503の入力端子に接続されている。また、高耐圧ダイオード1501のアノードはプルアップ抵抗器1502を介して5V電源(Vcc5)1505に接続されている。さらに、バッファー1503の出力は出力端子1505に接続され、バッファー1503の電源は5V電源(Vcc5)1505に接続されている。
【0040】
スイッチング素子325のコレクターは放電抵抗器324を介して直流電源平滑用コンデンサー326の正極に接続されており、スイッチング素子325のオフ時には通常300V以上の高電圧となる。このとき、高耐圧ダイオード1501のカソード電位は300V以上に、またアノード電位は5V電源1506と同じ5Vとなるので、高耐圧ダイオード1501は逆バイアス状態となりオフになる。するとバッファー1503の入力が5Vすなわちハイレベルになり、出力端子1505にはハイレベルが出力される。一方、スイッチング素子325のオン時には、スイッチング素子325のコレクターが0〜1V程度になる。このとき、高耐圧ダイオード1501のカソード電位は0〜1Vに、またアノード電位は5V電源1506と同じ5Vとなるので、高耐圧ダイオード1501は順バイアス状態となりオンになる。するとバッファー1503の入力がハイレベルになり、出力端子1505にはローレベルが出力される。
【0041】
図4は、正常な放電が行われた場合における放電制御回路300の各部動作を示すタイミングチャートである。ここで、放電指令信号314はハイレベルが放電に対応している。まず、図4の時刻405において、放電に先立ち、車両走行コントローラー302がバッテリーコントローラー303を介してコンタクター制御信号402をハイレベルからローレベルにする。これにより、コンタクター304はオン(閉路)からオフ(開路)になる。続く時刻406では、車両走行コントローラー302がモーターコントローラー170に放電指令信号を出すと、モーターコントローラー170は放電制御回路300への放電指令信号314をローレベルからハイレベルにする。次に、時刻407においてマイコン319が放電制御信号328をローレベルからハイレベルにすると、スイッチング素子325がオン(通電)状態になって抵抗器324による直流電源平滑用コンデンサー326の放電が開始され、時刻408から直流電源平滑用コンデンサー326の電圧が低下し始める。そして、時刻409でコンデンサー326の電圧が放電目標電圧まで下がると、時刻410でマイコン319が放電制御信号328をハイレベルからローレベルにし、放電を停止する。その後、時刻411でモーターコントローラー170が放電指令信号314をハイレベルからローレベルにし、放電を完了する。
【0042】
図4に示すタイミングチャートでは、放電指令信号314は通常状態(放電停止状態)でローレベル、放電時にはハイレベルになるとして説明したが、通常状態(放電停止状態)ではデューティ25%のPWM信号とし、放電時にデューティ75%のPWM信号としてマイコン319を制御し、マイコン319によりスイッチング素子325をデューティー駆動するようにしてもよい。
【0043】
図5は、放電中に何らかの原因によりコンタクター304がオン(閉路)した場合における放電制御回路300の保護動作を示すタイミングチャートである。モーターコントローラー170から放電制御回路300へ出力される放電指令信号314がハイレベルになると、図5の時刻501でマイコン319は放電制御信号328をローレベルからハイレベルにし、放電を開始する。この放電開始時刻をT0とすると、時刻504から直流電源平滑用コンデンサー326の電圧が初期値V0から低下し始める。マイコン319は、コンデンサー326の電圧を一定時間ごとの時刻T1,T2,・・,T n-1に電圧V1,V2,・・,V n-1として測定し、コンデンサー326の放電時間に対する電圧低下特性(図5に破線で示す)503と比較する。時刻Tnでコンタクター304がオンすると、コンデンサー326の電圧はVnから急激に上昇し、電圧低下特性503を上回る。マイコン319は、放電中にも拘わらずコンデンサー326の電圧が電圧低下特性503より大きくなったことにより放電異常と判定し、時刻509で放電制御信号328をハイレベルからローレベルにし、放電を中止する。
【0044】
ここで、図5に示す電圧低下特性503は、直流電源平滑用コンデンサー326を放電抵抗器324を介して放電させた場合における、放電時間に対するコンデンサー電圧の低下を示す特性曲線であり、放電時間が長くなるにしたがってコンデンサー電圧が指数関数的に低下する。この電圧低下特性503は、コンデンサー326の容量Cと放電抵抗器324の抵抗値Rに基づいて演算により求めることができるが、コンデンサー326やスイッチング素子325の内部抵抗を考慮して演算するか、実測するのが望ましい。
【0045】
図6は、放電制御回路300のマイコン319による保護動作を示すPADである。ステップ601において、放電制御回路300はモーターコントローラー170から放電指令信号314を受信するとこの保護動作を開始し、その後、放電指令信号314を受信している間は所定時間Tごとに保護動作を繰り返し実行する。まず、ステップ602で、保護動作の繰り返し回数を計数するカウンターiを0にリセットする。放電指令信号314を受信中はT時間ごとに保護動作を繰り返すので、(i・T)が放電時間になる。続くステップ603で直流電源平滑用コンデンサー326の初期電圧V0を測定した後、ステップ604で放電制御信号328をハイレベルにしてスイッチング素子325をオンし、放電を開始する。
【0046】
ステップ605において、時間Tごとにステップ606〜615の処理を繰り返す。まず、T時間後のステップ606でカウンターiをインクリメントし、続くステップ607で時刻Tiにおけるコンデンサー326の電圧Viを測定する。ステップ608において、図5に示すように、時刻Tiにおけるコンデンサー電圧Viが電圧低下特性503を越えているか否かを次式により判別する。
Vi>K^i・V0 ・・・(1)
(1)式において、“^”はべき乗を表わす。また、Kは時刻Tiにおける電圧低下特性を決める係数Kであり、放電用抵抗器324の抵抗値をR、コンデンサー326の容量をCとすると、K≒exp(−T/RC)で表される。exp(−T/RC)は、容量Cのコンデンサーに充電された電荷を抵抗値Rの抵抗器で放電した場合の放電時間Tにおけるコンデンサー電圧Viの初期電圧V0に対する比である。つまり、容量Cのコンデンサーに充電された電荷を抵抗値Rの抵抗器で放電した場合の放電時間Tiにおけるコンデンサー電圧をVideal(Ti)とすると、Videal(Ti)≦K^i・V0となる。
【0047】
なお、ステップ608において、実際のKは、マイコン319の電圧測定誤差を考慮してK≧exp(−T/RC)に設定するのが望ましい。また、(K^i)も毎回べき乗計算をするのではなく、前回の結果(K^(i-1))を記憶しておき、これとKの積をとれば計算が節約できる。また、ここでは(1)式により時刻Tiにおけるコンデンサー電圧Viが電圧低下特性503を越えているか否かを判別する例を示すが、予め図5に破線で示すような電圧低下特性503の特性曲線を記憶しておき、時刻Tiにおける電圧低下特性を読み出して測定値Viと比較するようにしてもよい。
【0048】
ところで、放電中に何らかの理由でコンタクター304がオンになると、直流電源平滑用コンデンサー326の両端にはバッテリー136の端子電圧が印加されることになるため、コンデンサー電圧Viが急激に増大し、Vi>K^i・V0となる。ステップ608において判別式(1)を満たす場合はステップ609へ進み、放電制御信号328をローレベルにしてスイッチング素子325をオフし、放電を停止する(放電中止)。そしてステップ610で、所定時間Tintvの間休止する。この休止時間は放電抵抗器324の温度が十分に低下するまでの待ち時間である。休止時間Tintv経過後のステップ611で初期状態に戻る。
【0049】
ステップ608において判別式(1)を満たさない場合、つまりコンデンサー電圧Viが時刻Tiにおける電圧低下特性(K^i・V0)以下の場合には、コンタクター304はオフしたままであると判断し、放電を続ける。この場合にはステップ612へ進み、コンデンサー電圧Viが予め設定した放電目標電圧に達したか否かを判別し、放電目標電圧に達していればステップ613へ進み、放電制御信号328をローレベルにしてスイッチング素子325をオフし、放電を停止する(放電完了)。その後、ステップ614で所定時間Tintvの間休止する。この休止時間は放電抵抗器324の温度が十分に低下するまでの待ち時間である。休止時間Tintv経過後のステップ614で初期状態に戻る。
【0050】
図6のステップ608における判別式(1)に代えて、図7のステップ701に示す判別式(2)により、コンデンサー電圧Viが時刻Tiにおける電圧低下特性を越えるか否かを判別するようにしてもよい。
Vi/V i-1>K ・・・(2)
(2)式において、Viは時刻Tiにおけるコンデンサー電圧測定値、Vi-1は時刻Ti-1におけるコンデンサー電圧測定値である。また、Kは時刻Tiにおける電圧低下特性を決める係数であり、放電抵抗器324の抵抗値をR、コンデンサー326の容量をCとすると、K≒exp(−T/RC)で表される。(2)式による判別結果が肯定される場合には、コンタクター304が何らかの理由によりオンしたと判断し、放電を中止する。なお、図7においてステップ701以外のステップについては図6に示す処理と同様であり、説明を省略する。
【0051】
ところで、マイコン319による電圧測定には誤差があり、測定電圧が低いほど誤差の影響が大きくなる。そこで、コンデンサー電圧が低くなるほど測定時間間隔を長くし、コンデンサー電圧の変化が測定誤差より大きくなるようにした保護動作を説明する。図8は、放電制御回路300のマイコン319による保護動作の他の実施例を示すPADである。図8において、図6に示す処理と同様な処理を行うステップに対しては同一のステップ番号を付して相違点を中心に説明する。図6に示す保護動作では、直流電源平滑用コンデンサー326の電圧Viを一定時間間隔Tで測定したのに対し、図8に示す保護動作では、放電によりコンデンサー326の電圧が低くなっていくに従って電圧を測定する時間間隔を長くしていく。この保護動作では、コンデンサー電圧Viの測定時間間隔Tdeltaを、
Tdelta =−RC・ln(exp(−Ti/RC)−Verror/V0) ・・・(3)
とする。(3)式において、lnは自然対数、Verrorは測定誤差である。
【0052】
コンデンサー電圧の前回と今回の差が測定誤差Verrorとなる時間間隔をTdeltaとすると、
Verror=Vi+1−Vi=V0(exp(−(Ti+Tdelta)/RC)−exp(−Ti/RC)) ・・・(4)
となり、これをT delta について解くと、
Tdelta=−RC・ln(exp(−Ti/RC)−Verror/V0) ・・・(5)
となる。そこで、図6のステップ605の代わりに図8のステップ801では時間によらず以降の判定処理を繰り返すことにし、ステップ612の後に新たにステップ802を設けてTdelta時間だけ待機する。
【0053】
図9は、放電指令信号の受信時にコンタクター304がオン(閉路)状態にある場合の放電保護動作を示すタイミングチャートである。時刻405で放電指令信号314がローレベルからハイレベルになったのにともない、時刻407で放電制御信号328をハイレベルにして放電を開始するが、コンタクター制御信号402がハイレベル(オン)のままになっており、コンタクター304がオン(閉路)したままである。上述したように、放電時にコンタクター304が閉路すると、直流電源平滑用コンデンサー326の電圧が正常時のように低下せず(時刻408)、図5に示す電圧低下特性503を越えるため、時刻902でマイコン319が放電制御信号328をハイレベルからローレベルに戻して放電を中止する。
【0054】
その後、時間Tintvの間休止した後、放電指令信号314を受信した時点の処理に戻るが、放電指令信号314はハイレベルのままであり、ふたたび放電制御信号328をハイレベルにして放電を開始する。しかし、コンタクター304が閉路したままであるため、コンデンサー電圧は低下せず、ふたたびコンデンサー電圧が電圧低下特性503を越えるため、放電制御信号328をハイレベルからローレベルに戻して前回と同様に放電を中止する。この動作をコンタクター304が閉路している間、繰り返す。休止時間Tintv中の時刻901においてコンタクター制御信号402がローレベルになり、コンタクター304がオフ(開路)されると、休止時間Tintv後の時刻904でコンデンサー電圧が正常に低下し(905)、放電が完了する。
【0055】
図10は、放電指令信号の受信時にコンタクター304が閉路状態にある場合の放電保護動作の他の実施例を示すタイミングチャートである。自動車によってはシステムが正常であってもコンタクター制御信号402が放電指令信号314よりわずかに遅れることが想定される。このような場合に図9に示す放電保護動作では、1回目の放電は異常判定で放電中止となり、時間Tintvの間休止した後、2回目の放電で正常に放電が行われるため、放電指令信号314が出されてから放電が完了するまでの時間は休止時間Tintv以上に増大する。しかし、放電回路としては放電指令信号314が出されてから放電が完了するまでの時間は短い方が望ましい。
【0056】
そこで、図10に示す放電保護動作では、1回目の放電における休止時間に上記休止時間Tintvより短い休止時間Tintv0を設定する。図10に示す放電保護動作では、時刻405において放電指令信号314がローレベルからハイレベルになり、時刻407で放電制御信号328もローレベルからハイレベルになるが、コンタクター制御信号402がまだハイレベルのままであり、放電を中止する。ところが、その直後の時刻409でコンタクター制御信号402がハイレベルからローレベルになった場合に、図9に示す放電保護動作では、図10に破線で示すように休止時間Tintvの後の時刻1004で放電制御信号328が出され、放電を開始してコンデンサー電圧が破線1005で示すように低下する。これに対し図10に示す放電保護動作では、短い休止時間Tintv0後の時刻1002で放電制御信号328が出され、放電を開始してコンデンサー電圧が実線1003で示すように低下する。つまり、図10に示す放電保護動作では、図9に示す放電保護動作に比べて早く2回目の放電を開始することができ、早く放電を完了することができる。
【0057】
実際に、直流電源平滑用コンデンサー326の容量Cを2000μF、放電抵抗器324の抵抗値Rを400Ω、係数Kを0.9、放電初期電圧V0を300V、放電目標電圧Vgoalを50V、電圧測定誤差 Verrorを5Vとしたシステムでは、例えば休止時間Tintvを10秒、休止時間Tintv0を1秒とする。
【0058】
以上説明したように、放電中にコンタクター304が閉路しても放電を中止するので、放電抵抗器324に電流が流れ続けることはなく、放電回路を破損から保護することができる。
【0059】
直流電源平滑用コンデンサー326の充電電荷を放電抵抗器324を介して放電中に、コンタクター304が閉路するなどの異常が発生した場合には、スイッチング素子325をオフして放電を中止するが、スイッチング素子325にショートモード故障が発生するとオフできなくなり、放電抵抗器324を介して放電電流が流れ続ける。そこで、図11に示すように、スイッチング素子325と直列に第2のスイッチング素子1101を接続し、第1のスイッチング素子325のショートモード故障のバックアップを行う実施例を説明する。なお、図11では、図3に示す放電制御回路300の内のこの実施例に関係する部分のみを示す。この実施例では、図3に示す放電制御回路300のスイッチング素子325のエミッターとグランドとの間に、第2のスイッチング素子1101としてMOSFETを直列に接続する。さらに、マイコン319から第2のスイッチング素子1101をオン、オフする制御信号1103を出力し、バッファー1102を介して第2のスイッチング素子1101を制御する。
【0060】
通常、マイコン319からの制御信号1103は第2のスイッチング素子1101をオン状態にするように出力される。しかし、放電を停止させなければならない時に、第1のスイッチング素子325がショートモード故障に陥ってできなくなった場合には、第2のスイッチング素子1101をオフにすることによって、放電を停止させる。なお、第1のスイッチング素子325がショートモード故障に陥れば、マイコン319はコレクター電圧検知回路322によってそれを感知することができる。マイコン319が第1のスイッチング素子325がオフとなるような制御信号328を出力しているのに、コレクター電圧検知回路322がローレベルを送信していれば、第1のスイッチング素子325はオン状態のまま、すなわちショートモード故障状態にあることがわかる。
【0061】
このように、第1のスイッチング素子325がショートモード故障に陥っても、第2
のスイッチング素子1101によって放電を確実に停止させることができるので、放電中にコンタクター304が何らかの原因でオン(閉路)した場合でも、放電抵抗器324に電流が流れ続けるのを防止でき、放電回路を破損から保護することができる。
【0062】
一般に、抵抗値Rの放電抵抗器Rによって容量Cのコンデンサーに充電された電荷を放電する場合、コンデンサー電圧Vは時定数RCで低下する。つまり、初期電圧V0、時間tに対して放電中の電圧Vは、
V=V0exp(−t/RC) ・・・(6)
となる。ここで電圧Vの下がり方は時間が経過して電圧Vが低くなるほど緩やかになる。つまり、電圧Vが低くなるほど電圧低下の時間的効率が悪くなり、放電時間が長期化してしまう。
【0063】
そこで、電圧Vの下がり方が緩やかになったら放電抵抗器の抵抗値を下げて放電時間を短縮するようにした実施例を説明する。図12にこの実施例の放電回路を示す。なお、図12では、図3の示す放電制御回路300の内のこの実施例に関係する部分のみを示す。この実施例では、図3に示す放電制御回路300に対して、第2の放電抵抗器1301、第2のスイッチング素子1202、第2のバッファー1203、第2のコレクター電圧検知回路1204を新たに設ける。これらの第2の放電機器の動作は、第1の放電抵抗器324、第1のスイッチング素子325および第1のバッファー323からなる第1の放電機器の動作と同様であるが、第1の放電機器とは別個に独立してマイコン319の制御を受ける。第2の放電抵抗器1301の抵抗値R2は、
R2={(Vmax+Vgoal)/2Vmax}^2・R1 ・・・(7)
程度とし、第1の放電抵抗器324の抵抗値R1よりも低い値とするのが望ましい。な
お、(7)式においてVmaxは放電最高電圧である。
【0064】
図13は、図12に示す放電回路の放電波形を示す図である。まず、第1のスイッチング素子325をオンして第1の放電抵抗器324だけで放電を開始すると、直流電源平滑用コンデンサー326の電圧は実線1301に沿って低下する。そして、コンデンサー326の電圧がVsw=(Vmax+Vgoal)/2になったら、第2のスイッチング素子1202をオンして第2の放電抵抗器1301による放電を開始する。これ以降、第1の放電抵抗器324と第2の放電抵抗器1301による放電が行われ、コンデンサー326の電圧は実線1302に沿って低下する。なお、破線1303は第1の放電抵抗器324だけで最後まで放電した場合の電圧波形を示す。実線で示す電圧波形1301,1302と破線で示す電圧波形1303とを比較すると、この実施例により放電時間が短縮されていることがわかる。
【0065】
なお、第2の放電抵抗器1301に第1の放電抵抗器324と同じ定格電力の抵抗器を使うとすれば、第2の放電抵抗器1301の抵抗値R2は、両放電抵抗器324、1301の最大電力を等しいと仮定して、
Vmax^2/R1={(Vmax+Vgoal)/2}^2/R2
∴ R2={(Vmax+Vgoal)/2}・R1/Vmax^2 ・・・(8)
が得られる。なお、放電最大電圧Vmaxを600V、コンデンサー326の容量Cを2000μF、放電目標電圧Vgoalを50Vとした場合、例えば、第1の放電抵抗器324の抵抗値R1が400Ω、第2の放電抵抗器1301の抵抗値R2が120Ωとなる。
【0066】
図12、図13に示す実施例によれば、定格電力の大きな、大型の放電抵抗器を使わなくても放電時間を短縮することができる。
【0067】
なお、上述した実施例とそれらの変形例において、実施例どうし、または実施例と変形例とのあらゆる組み合わせが可能である。
【0068】
上述した実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。まず、バッテリー136の直流電源をコンタクター(開閉器)304を介して直流電源平滑用コンデンサー326とインバーター装置140へ供給する電力変換装置200に用いられる前記直流電源平滑用コンデンサー136の放電回路であって、コンデンサー326の電荷を放電する抵抗器324と、抵抗器324と直列に接続され、コンデンサー326から抵抗器324へ流れる放電電流の通電と遮断を行うスイッチング素子325と、コンデンサー326の端子電圧を測定する回路317、319と、スイッチ325の通電と遮断を制御するマイコン319とを備え、マイコン319は、スイッチング素子325を通電にして抵抗器324によるコンデンサー326の放電を開始した後の、測定回路317,319により測定されたコンデンサーの端子電圧が、予め設定された電圧低下特性を越えた場合に、スイッチング素子325を遮断にして抵抗器324によるコンデンサー326の放電を停止するようにしたので、抵抗器324によるコンデンサー316の放電中にコンタクター304が何らかの原因により閉路(オン)した場合でも、抵抗器324によるコンデンサー316の放電が確実に停止され、抵抗器324に放電電流が流れ続けるのを防止できる。
【0069】
また、上述した実施の形態によれば、電圧低下特性を、抵抗器324によるコンデンサー326の放電特性に応じて設定するようにしたので、放電中のコンタクター304の閉路(オン)故障を正確に素早く検知することができる。
【0070】
さらに、上述した実施の形態によれば、マイコン319は、測定回路317,319により測定されたコンデンサー326の端子電圧と電圧低下特性との比較に基づく放電の継続または停止の判定を予め定めた時間間隔で行うようにしたので、マイコン319の負担を軽減しながら放電中のコンタクター304の閉路(オン)故障を素早く検知することができる。
【0071】
一実施の形態によれば、マイコン319によって、測定回路317,319により測定された放電開始前のコンデンサー326の端子電圧とコンデンサー326の容量および抵抗器324の抵抗値により決まる時定数とに基づいて電圧低下特性を演算により求め、演算結果の電圧低下特性と測定回路317,319により測定されたコンデンサー326の端子電圧とを比較して放電の継続または停止を判定するようにしたので、放電中のコンタクター304の閉路(オン)故障を正確に検知することができる。
【0072】
なお、一実施の形態に示すように、マイコン319によって、測定回路317,319により前回測定されたコンデンサー326の端子電圧に対する今回測定されたコンデンサー326の端子電圧の比と、コンデンサー326の容量および抵抗器324の抵抗値により決まる時定数に基づき設定された係数とを比較して、放電の継続または停止を判定するようにしてもよい。これにより、電圧低下特性を演算により求める場合に比べ、マイコン319の負担を軽減しながら放電中のコンタクター304の閉路(オン)故障を正確に検知することができる。
【0073】
一実施の形態によれば、マイコン319によって、放電を開始してからの経過時間に応じて放電の継続または停止の判定を行う時間間隔を長くするようにしたので、測定誤差を排除してコンデンサー326の電圧を正確に測定することができ、放電中のコンタクター304の閉路(オン)故障の発生を正確に判定することができる。
【0074】
一実施の形態によれば、マイコン319によって、コンデンサー326の端子電圧が電圧低下特性を越えたとして抵抗器324によるコンデンサー326の放電を停止した場合には、所定時間Tintvが経過するまで放電を再開しないようにしたので、放電によりすでに温度が上昇している抵抗器324による放電を防止することができ、抵抗器324が十分に冷却してから放電を再開することができる。
【0075】
一実施の形態によれば、マイコン319によって、コンデンサー326の端子電圧が電圧低下特性を越えたことによる放電停止が初回の場合は、所定時間Tintvより短い所定時間Tintv0が経過するまで放電の再開を待ち、放電停止が2回目以降の場合は、所定時間Tintvが経過するまで放電の再開を待つようにしたので、上位システムから送られるコンタクター304の開路指令信号402が放電開始指令314よりわずかに遅れた場合でも、長い所定時間Tintvの間、放電の再開ができなくなるのを防止でき、放電完了までの時間を短縮できる。
【0076】
一実施の形態によれば、スイッチを第1のスイッチ325と第2のスイッチ1101を直列に接続して構成するとともに、第1のスイッチ325の短絡故障の発生を検知するコレクター電圧検知回路322を設け、マイコン319によっては、通常は第2のスイッチ1101を通電にしたまま第1のスイッチ325の通電と遮断により放電の開始と停止を行い、放電を停止するときにコレクター電圧検知回路322により第1のスイッチ325の短絡故障の発生が検知された場合には、第2のスイッチ1101を遮断にして放電を停止するようにしたので、第1のスイッチ325に短絡故障が発生した場合でも確実に放電を停止することができ、抵抗器324に放電電流が流れ続けるのを防止できる。
【0077】
一実施の形態によれば、コンデンサー326の放電を行う抵抗器を、第1の抵抗値を有する第1の抵抗器324と、第1の抵抗値よりも低い第2の抵抗値を有する第2の抵抗器1301とにより構成するとともに、放電電流の通電と遮断を行うスイッチを、第1の抵抗器324と直列に接続されてコンデンサー326から第1の抵抗器324へ流れる放電電流の通電と遮断を行う第3のスイッチ325と、第2の抵抗器1301と直列に接続されてコンデンサー326から第2の抵抗器1301へ流れる放電電流の通電と遮断を行う第4のスイッチ1202とにより構成し、マイコン319によって、第3のスイッチ325を通電にして第1の抵抗器324によりコンデンサー326の放電を開始し、測定回路317,319により測定されたコンデンサー326の端子電圧が所定電圧Vsw以下になったら、第1の抵抗器324によるコンデンサー326の放電に加え、第4のスイッチ1202を通電にして第2の抵抗器1301によるコンデンサー326の放電を開始するようにしたので、小さい電力の第1の抵抗器324と第2の抵抗器1301を用いてコンデンサー326の放電時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0078】
43,140,141;インバーター装置、144;インバーター回路、200;電力変換装置、300;放電制御回路、304;コンタクター、317;分圧回路、319;マイコン、322;コレクター電圧検知回路、324,1301;放電抵抗器、325、1101,1202;スイッチング素子、326;直流電源平滑用コンデンサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源を開閉器を介して直流電源平滑用コンデンサーとインバーターへ供給する電力変換装置であって、
前記コンデンサーの電荷を放電する抵抗器と、
前記抵抗器と直列に接続され、前記コンデンサーから前記抵抗器へ流れる放電電流の通電と遮断を行うスイッチと、
前記コンデンサーの端子電圧を測定する測定回路と、
前記スイッチの通電と遮断を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記スイッチを通電にして前記抵抗器による前記コンデンサーの放電を開始した後の、前記測定回路により測定された前記コンデンサーの端子電圧が、予め設定された電圧低下特性を越えた場合に、前記スイッチを遮断にして前記抵抗器による前記コンデンサーの放電を停止し、
さらに前記制御回路は、前記スイッチを遮断にして前記抵抗器による前記コンデンサーの放電を停止するまでの期間に、前記測定回路により測定された前記コンデンサーの端子電圧と前記電圧低下特性との比較に基づく放電の継続または停止の判定を予め定めた時間間隔で複数回行うように設定されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記電圧低下特性は、前記抵抗器による前記コンデンサーの放電特性に応じて設定されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記制御回路は、前記測定回路により測定された放電開始前の前記コンデンサーの端子電圧と前記コンデンサーの容量および前記抵抗器の抵抗値により決まる時定数を用いた指数関数に基づいて前記電圧低下特性が定められ、当該電圧低下特性と前記測定回路により測定された前記コンデンサーの端子電圧とを比較して放電の継続または停止を判定することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置において、
前記制御回路は、前記測定回路により前回測定された前記コンデンサーの端子電圧に対する今回測定された前記コンデンサーの端子電圧の比と、前記コンデンサーの容量および前記抵抗器の抵抗値により決まる時定数に基づき設定された係数とを比較して、放電の継続または停止を判定することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記制御回路は、放電を開始してからの経過時間に応じて前記時間間隔を長くすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記制御回路は、前記コンデンサーの端子電圧が前記電圧低下特性を越えたとして前記抵抗器による前記コンデンサーの放電を停止した場合には、第1の所定時間が経過するまで放電を再開しないことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電力変換装置において、
前記制御回路は、前記コンデンサーの端子電圧が前記電圧低下特性を越えたことによる放電停止が初回の場合は、前記第1の所定時間より短い第2の所定時間が経過するまで放電の再開を待ち、放電停止が2回目以降の場合は、前記第1の所定時間が経過するまで放電の再開を待つことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記スイッチは第1スイッチと第2スイッチが直列に接続されており、
前記第1スイッチの短絡故障の発生を検知する検知回路を備え、
前記制御回路は、通常は前記第2スイッチを通電にしたまま前記第1スイッチの通電と遮断により放電の開始と停止を行い、放電を停止するときに前記検知回路により前記第1スイッチの短絡故障の発生が検知された場合には、前記第2スイッチを遮断にして放電を停止することを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記抵抗器は、第1の抵抗値を有する第1抵抗器と、前記第1の抵抗値よりも低い第2の抵抗値を有する第2抵抗器からなり、
前記スイッチは、前記第1抵抗器と直列に接続されて前記コンデンサーから前記第1抵抗器へ流れる放電電流の通電と遮断を行う第3スイッチと、前記第2抵抗器と直列に接続されて前記コンデンサーから前記第2抵抗器へ流れる放電電流の通電と遮断を行う第4スイッチとからなり、
前記制御回路は、前記第3スイッチを通電にして前記第1抵抗器により前記コンデンサーの放電を開始し、前記測定回路により測定された前記コンデンサーの端子電圧が所定電圧以下になったら、前記第1抵抗器による前記コンデンサーの放電に加え、前記第4スイッチを通電にして前記第2抵抗器による前記コンデンサーの放電を開始することを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−120436(P2012−120436A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−558(P2012−558)
【出願日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【分割の表示】特願2009−184259(P2009−184259)の分割
【原出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】