説明

電力変換装置

【課題】冷却ファンによる冷却作用を充分に得ることにより、温度上昇の低減を図りつつ装置の小型化を図つた電力変換装置を提供する。
【解決手段】パワー半導体を冷却する冷却フィン1を覆うケーシング2と、パワー半導体を駆動するドライバ回路を備えた主回路基板7と、主回路基板7を覆うカバー3とを備えた電力変換装置において、カバー3に設けられた吸気口A2よりも上側の主回路基板7に設けられた第1の通気口22と、第1の通気口22よりも下側で且つ冷却フィン1よりも下側に設けられた第2の通気口A3とを備え、冷却ファンによって第2の通気口からの空気を冷却フィン1に流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置であるインバータは、産業界をはじめ家電製品にも電動機の速度制御装置として多く採用されている。しかし、電力変換装置に用いられるIGBTなどの電力変換用のパワー半導体は電力変換時の電気的損失により発熱し、通常これらのパワー半導体には動作限界温度が決まっている。パワー半導体の動作限界温度を超えてもなお発熱したままにすれば、そのパワー半導体は動作しなくなる虞があるため、電力変換装置においては、このパワー半導体を冷却する構造を採用する必要がある。すなわち、冷却フィンと冷却ファンとを備え、発熱体たるパワー半導体からの熱を冷却フィンに熱伝導させ、冷却ファンによって冷却フィンに空気を送って熱交換させ、空冷方式によって放熱させている。
【0003】
特許文献1の段落(0019)には、「主回路部4と論理部5の間に遮蔽部材としての遮蔽板7を設けて、すき間を極力なくし、お互いの空気が流れ込まない様にするとともに遮蔽板7に断熱効果と磁気シールド効果をもたせるため、主回路側を絶縁材9で、論理部側を鉄板8等でそれぞれ構成し、しかもこの間を風洞として冷媒通路を形成し、空気を流す事によりさらに断熱効果をもたせたものである。これにより主回路部4と論理部5とは互いに独立した室内に設けられる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−237992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術は、自然空冷による冷却作用の効率化に十分な配慮がされているとはいえず、温度上昇の抑制と小型化の両立が十分に得られないという問題があった。つまり、装置の小型化を図るため回路基板上の素子の実装密度を高めた場合等には、従来技術においては冷却ファンによる冷却作用が充分に得られるものでなく、装置内部の温度上昇によって素子の寿命が短くなる虞があった。
【0006】
そして、上記の従来技術においては、主回路部と論理部の間に遮蔽部材を設けて熱に弱い論理部に主回路部の熱が流れないようにするものであり、論理部自体が発生する熱に対しては冷却作用が十分でないという問題があった。
本発明の目的は、電力変換装置の小型化を図りつつ冷却能力を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するための本発明の一態様は、電力変換装置において、パワー半導体と、このパワー半導体の熱を放熱するフィンと、前記パワー半導体を駆動するドライバ回路を有する回路基板と、前記フィンと前記回路基板との間に位置し、前記フィンを覆い、前記パワー半導体を挿入するための切り欠き部及び前記回路基板からの空気をフィンに流すための通気口を有するケーシングと、前記ケーシングと結合され、前記回路基板を覆うカバーと、前記通気口を介して前記回路基板からの空気をフィンに流すファンとを備えたものである。
【0008】
上記態様において、電力変換装置を壁に設置した際に、前記通気口は前記フィンよりも下側のケーシングに設けられたものであることが望ましい。そして、前記通気口は前記ケーシングの正面に設けられたものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電力変換装置の小型化を図りつつ冷却能力を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)本発明における実施例1を説明する電力変換装置を設置した際の斜視図(b)分解図。
【図2】本発明における実施例1の電力変換装置の側面図(図1の矢印の方向から見た図)。
【図3】本発明における実施例1の電力変換装置の分解斜視図。
【図4】本発明における実施例1の冷却フィンに対する回路部品の取付け状態を説明する図。
【図5】本発明における実施例1の電力変換装置の外観を説明する図。
【図6】本発明における実施例1の主回路基板の主要部品配置を説明する図。
【図7】本発明における実施例1の主回路基板の概略を説明する図。
【図8】本発明における実施例1の装置内部の流速分布のシミュレーション例を説明する図。
【図9】本発明における実施例1を説明する電力変換装置を説明する主回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施例を図1〜7により説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明による電力変換装置の実施例1を説明する。
図1は本実施例における電力変換装置の斜視図(a)と装置の分解図(b)の概要図である。図1(a)は装置を設置した際の斜視図であり、正面の本体カバー3(カバー)と裏側の本体ケース2(ケーシング)とが接続されて構成されている。また、図1(b)は装置の分解図を示しており、カバー3は主回路基板7を覆うもので、ケーシング2と接続されている。そして、図1(b)に示すように、カバー3はその側面に通風孔スリットA2(吸気口)、主回路基板7は上部に切り欠き貫通孔22(第1の通気口)、ケーシングの正面に切り欠き通風孔A3(第2の通気口)がそれぞれ設けられている。
【0013】
ケーシング2の内部には冷却フィン1(フィン)が設けられ、このフィンには図示しないパワー半導体モジュール11が設置され、これによりパワー半導体モジュール11の熱を放熱する役割を果たす。
【0014】
図2は電力変換装置を図1(a)の矢印の方向から見た側面図である。
本実施例における内部の空気の流れを説明する。ケーシング2の上部には冷却ファン6(ファン)が備えられ、ケーシング内部の空気を吸い出す動作をしており、これにより冷却フィン1からの空気が冷却ファンに流れ、図示しないパワー半導体モジュール11の放熱が行われる。また、図2の矢印は、本実施例における電力変換装置内部の空気の流れを示している。つまり、ケーシング2の上部に設けられたファン6は吸い出し動作をするものであり、外部から吸気口A2に入った空気(カバー3と主回路基板との間の空間の空気)は主回路基板22の第1の通気口22を通り、主回路基板とケーシング2との間の空間を通った後、ケーシング2の第2の通気口を通り、冷却ファンによって外部に吸い出される。これらの通気口や吸気口の位置関係及び空気の流れの作用機能については後に詳述する。
【0015】
図3は、本実施例における電力変換装置の詳細な分解斜視図である。
なお、図1は、電力変換装置を設置した際の斜視図を示したものであったが、図3は製造工程における図面を示しており、電力変換装置を横にした際の斜視図を示す。つまり、図1において、正面に配置されたカバー3が図3においては上側に配置され、裏側に配置されたケーシング2は下側に配置されることになる。この図3を用いて電力変換装置内部の詳細な配置について説明する。
【0016】
図3において、1は冷却フィン、2は本体ケース(ケーシング)、3は本体カバー(カバー)、4は電線引き出し板、5は冷却ファン取付け板、そして、6は冷却ファン(ファン)である。7はドライバ回路や電源回路等からなる主回路基板、8は主回路電解コンデンサCBが搭載された基板、9は制御基板、そして、10は導体銅バーである。冷却フィン1(フィン)には、パワー素子である複合モジュール11(パワー半導体モジュール)が搭載されている。
【0017】
パワー半導体の集合体として構成された複合モジュール11は、大きな損失を発生するため、この損失による発熱を前記冷却フィン1に熱伝導させ、冷却ファン6により冷却フィン1を冷却する。この冷却ファン6により、複合モジュール11を温度上昇により過熱することから保護することができる。カバー3には、制御端子台TM1が2本のビスによって取付け線C1〜C2で示すように取付けられる。また、ケーシング2には、主回路基板7が3本のビスによって取付け線C4〜C6で示すように取付けられる。
【0018】
さらに、ケーシング2には、電解コンデンサ基板8が2本のビスによって取付け線C7〜C8で取付けられるように電解コンデンサCBが貫通する孔A1が10個設けられている。冷却ファン6は、寿命部品であるため着脱を容易にするため、冷却ファン取付け板5に収納し、冷却ファン取付け板5がケーシング2にビスを使用することなく勘合される構造に設計されている。このように本実施例における電力変換装置はケーシングに複合モジュールを備え、この筐体正面に主回路基板が重ねて配置され、さらにこの主回路基板を覆うようにカバー(本体カバー3)がされることにより構成されている。そして、筐体とカバーが接続されることで一体化して電力変換装置を形成する。
【0019】
温度上昇に最も弱い電解コンデンサCB(10本)は、電力変換装置の下部に並べて配置してある。ここでいう電力変換装置の下部とは壁掛け型構造の電力変換装置を壁に取付けた状態においての下部のことである。つまり、図1に示した図が取付けた状態を示している。図5においても、組み立てられた状態が示されているが、実際に設置するときはこの状態から装置を起こして設置することになる。このとき、電解コンデンサCBは、冷却ファン6による冷却空気の流通方向の最上流側、すなわち装置の下部に設置される。
【0020】
電力変換装置であるインバータは、一般的に壁掛け型構造で、パネル等の鉄板に垂直に取付けられ、極力小型でコンパクト化された装置が要求される。そして、側壁を有する箱型の部材の内面に冷却用のフィンが形成されたダイキャストケース等を用いて、これにパワー半導体、それに制御回路部などの回路装置を搭載した上で、このダイキャストケースを強制空冷し、電力変換装置内部の温度上昇を抑えるようにして小型化を図っている。
【0021】
そして、ケーシングの下部には、外部から空気を吸入するための通気孔スリットA4が設けられている。この吸気口である通気孔スリットA4は図2に示すように、ケーシングの下面だけでなく、側面下部にも設けられた構造となっている。そして、この通気孔スリットA4から吸入された外部からの空気が最初に送られることで電解コンデンサを充分に冷却することができる。
【0022】
電解コンデンサは、周知のように温度上昇による影響を強く受け、アレニウスの法則(10℃半減則)として知られているように、温度上昇に対して寿命が極端に低下してしまう。しかるに、本実施例によれば、電解コンデンサCBは、主な発熱源である複合モジュール11の下側で、且つ、冷却風の流入側(上流側)に配置されているので、発熱源にからの温度上昇による劣化が充分に抑えることが可能である。また、電解コンデンサのような消耗品の寿命を延ばすことができるため、コストの削減を図りつつ電力変換装置の信頼性を向上させることができる。
【0023】
本実施例において、電解コンデンサを1本ではなく10本用いている理由は、次の通りである。すなわち、本実施例は電力変換装置の容量や入力電圧が異なっても、ある程度までは同一の電解コンデンサ基板8やケーシング2で対応できるように共用化を図る点を特徴とするものである。
【0024】
図4は、冷却フィン1(フィン)に対する回路部品の取付け状態を示す説明図である。冷却フィンは上記のように複合モジュールの熱を熱交換によって放熱するものである。ケーシング2には、冷却フィン1が8本のビスによって取付け線C13〜C20で示すように取付けられる。また、冷却フィン1には、複合モジュール11が4本のビスによって取付け線C9〜C12で示すように取付けられる。
【0025】
ここで、ケーシング2の正面の下部、つまり通気孔スリットA4からの冷却用空気の上流側には、冷却用空気の通流方向とほぼ直角な方向(電力変換装置を設置したときの水平方向)に設けた切り欠き通風孔A3が設けてある。本実施例は、パワー半導体モジュールの熱がドライバ回路を有する主回路基板へいかないように遮蔽するものではなく、この切り欠き通風孔A3を設けることにより主回路基板において発生した熱を循環させるようにする。つまり、ケーシング内部の空気を吸い出すファンの動作により、この主回路基板からの空気を切り欠き通風孔を介して冷却フィンへ流すことができる。本実施例では、切り欠き通風孔A3が2箇所に設けてあるが、切り欠き通風孔A3の個数及び通風孔面積について限定するものではない。また、本実施例においては、切り欠き通風孔A3の位置を冷却フィンよりも下側に設け、ファンをケーシング上部に設けてケーシング内部の空気を吸い出し動作をさせることにより、切り欠き通風孔A3を介して主回路基板からの空気をフィンに流している。
【0026】
図5は、本実施例における電力変換装置の外観を示す図である。カバー3には、表面カバー14及び端子台カバー15が各々2本のビスによって取付け線C21〜C22及びC23〜C24で示すように取付けられる。また、表面カバー14には、ブラインドカバー16が取付けられた後、デジタル操作パネル17が取付けられる構造になっている。
図6は、本実施例における主回路基板7の主要部品の配置を示す図である。ケーブル18は、制御基板9とのインターフェイス用である。スイッチングトランス19とスイッチング素子21はMOS−FETであり、DC/DCコンバータの基本部品である。ケーブル20は、冷却ファン6の電源用ケーブルである。
【0027】
図7は、本実施例における電力変換装置の主回路基板の概略図である。ここで、本実施例においては、主回路基板上には複数の切り欠き貫通孔22が設けている。この主回路基板7に切り欠き貫通孔22を設けたことにより、主回路基板7とそれを覆うカバー3との間の空気が、この切り欠き貫通孔22を介してケーシング正面に流れることになる。この空気の流れも図2及び図3に示すファン6の動作によるものである。つまり、本実施例においては、主回路基板7と複合モジュールとを熱的に遮蔽するものではなく、主回路基板7に切り欠き貫通孔22を設け、ケーシングに切り欠き通風孔A3を設けたため、ケーシング内部の空気をフィン1に流すファン6の吸い出し動作によって、主回路基板からの空気も循環させることが可能となる。
【0028】
さらに、本実施例においては、図1及び図3に示すように、カバー3の両側面には、通風孔スリットA2が設けてある。図3に示す分解斜視図において、主回路基板7をケーシング2に正規に取付け実装し、冷却ファン取付け板5をケーシング2に装着した状態で、カバー3の両側面に開いた通風孔スリットA2と切り欠き貫通孔22の位置関係について説明する。
【0029】
図3のD1−D2は通風孔スリットA2の最上部線である。つまり、ケーシング2の長手方向である前記冷却用空気の通流方向においてD1−D2は通風孔スリットA2の最下流を示す線である。そして、切り欠き貫通孔22は、このD1−D2と冷却ファン取付け板5との間の領域の主回路基板上に設けられている。つまり、図3のカバー3の両側面に開いた通風孔スリットA2の直行方向の最上部線D3−D4が図7の前記主回路基板7の投影線D3−D4に相当する。
【0030】
通風孔スリットA2の最上部線D1−D2と冷却ファン取付け板5との間の領域とは、図7における主回路基板7の矢印線Eの領域を示す。上記のように複数の切り欠き貫通孔22の配置個所をD1−D2と冷却ファン取付け板5との間(矢印線Eの領域)の間の領域の主回路基板上に配置するように設計する理由は、以下によるものである。
【0031】
上記のように第2の切り欠き貫通孔部22は、図6の矢印線Eの領域に対応する主回路基板上に配置されており、この領域はケーシングにおいては通風孔スリットA4からの冷却用空気の下流側であり、電力変換装置においては上部に対応する。本実施例における電力変換装置は壁掛け型構造であり、装置設置時には、冷却ファン5は電力変換装置の上部に設置される。
【0032】
そして、熱は通常、装置内部の下側から上側に向かって伝導するため、装置の冷却用空気の下流側(装置の上側)であればあるほど高温となり、冷却用空気の上流側(装置の下側)であればあるほど低くなる。この意味でも、装置の上部に配置された切り欠き貫通孔部22周りは、熱の溜まり場となり、装置内部の中で最も温度が高くなる。このことから、主回路基板上に実装された部品自身の発生損失が比較的大きい部品の近傍に切り欠き貫通孔部22が設けてある。前記主回路基板上に実装された部品自身の発生損失が比較的大きい部品は、スイッチングトランス19、21のDC/DCコンバータ用MOS−FET及び図示していない抵抗体などである。
【0033】
これらの位置関係と空気の流れについて図1を用いて説明する。主回路基板7の切り欠き貫通孔22は通風孔スリットA2より上側に設けられており、ケーシングの切り欠き通風孔A3は切り欠き貫通孔22よりも下側で且つ冷却フィンよりも下側に設けられている。これにより吸気口からの空気は主回路基板の上部に流れた後、切り欠き貫通孔22を介してケーシング下部の切り欠き通風孔A3へ流れる。この切り欠き通風孔A3を介して冷却フィン1を通った後、ファン5により外部に吸い出される。以上のように、これらの通気口及び吸気口の位置関係によって、より装置内部の空気を循環効率を高めることができる。
【0034】
このように空気が流れたときの作用について説明する。冷却ファン5が吸出し方式で回転することにより、上記のように吸気孔スリットA4から吸気された空気が電解コンデンサCBを冷却した後、冷却フィンに流れ熱交換が行われる。ここで、冷却フィン1には発熱体たるパワー半導体から熱伝導がなされているが、このパワー半導体の損失は大きいため、電解コンデンサCBを冷却した後の空気であっても冷却フィンの熱を奪い熱交換をすることが可能である。
【0035】
また一方で、カバー3の両側面に設けてある通風孔スリットA2から吸い込まれた空気は、同様に冷却ファン5が吸出し動作をすることにより電力変換装置内部を循環する。まず、前記主回路基板上に設けた切り欠き貫通孔22(第1の通気口)を通過した後、主回路基板とケーシングとの間の空間を通流し、切り欠き通風孔A3(第2の通気口)に向かう。このとき、切り欠き貫通孔22(第1の通気口)の近傍に澱んだ暖かい空気を装置内部に循環させることができる。つまり、電力変換装置内部の暖かい空気を通流させ、熱の溜まり場となる熱の澱みを排除することが可能である。
【0036】
このように、本実施例においては、通風孔スリットA2(吸気口)からの空気は主回路基板とカバーとの間の第1の空間に流れ、この第1の空間から主回路基板と前記正面との間の第2の空間に流れる。そしてこの第2の空間からケーシング内部に流れた後、ファン6により、電力変換装置外部に吸い出される。このとき、上記のように第1の空間と第2の空間を連通する切り欠き貫通孔22(第1の通気口)は通風孔スリットA2(吸気口)よりも上側になるように配置される。また、第2の空間とケーシング内部とを連通する第2の通気口は第1の通気口よりも下側で且つケーシングが覆う冷却フィンよりも下側になるように配置されている。
【0037】
さらに、ケーシング内部の空気をケーシング上部に設けられたファンにより吸い出すことにより、第2の通気口からの空気は冷却フィンで熱交換された後、電力変換装置外部に放出される。このようにファンは第2の通気口からの空気を冷却フィンに流すように動作しており、その配置はケーシング上部に限定されるものではない。
【0038】
図8は、本発明による電力変換装置の一実施例における筐体内部の流速分布のシミュレーション例を示す説明図である。
(a)は、ケーシング2の切り欠き通風孔A3を冷却用空気の下流側に通流方向とほぼ直角な方向に設け、主回路基板上には切り欠き貫通孔部22を設けていない場合のインバータ装置内部の流速分布シミュレーション例である。
(b)は、本発明による実施例であり、ケーシング2の切り欠き通風孔A3(第2の通気口)を冷却用空気の上流側(装置の下部)に設け、切り欠き通風孔A3の向きは通流方向とほぼ直角な方向としている。また、主回路基板上には切り欠き貫通孔22(第1の通気口)を設けた場合のインバータ装置内部の流速分布シミュレーション例である。
この場合には、インバータ装置内部の流速分布が一様にまんべんなく流れており、熱の澱みが発生しないことが判る。
【0039】
装置の小型化を図るには、主回路基板上の素子の実装密度を高める必要があるが、そうすると装置内部の温度が上昇しやすくなる。そこで、本実施例においては、上記のように発生損失が比較的大きい部品を図5の領域Eに配置すると共に、その周辺に切り欠き貫通孔(第1の通気口)を設けて、これらの部品周辺の空気を装置内部に循環させるようにしている。これにより、図8のシミュレーション(b)に示すように、熱の澱みの発生を抑制することができるので、電力変換装置の小型化を図りつつ冷却能力を向上させることが可能となる。
【0040】
以上のように、本実施例によれば、交流電動機に可変電圧可変周波数の交流電力を供給できるようにした装置において、実装密度を高めても冷却ファン(ファン)による冷却作用が充分に得られ、温度上昇の虞を伴うことなく充分に小型化が図れるようにした電力変換装置を提供することができる。
【0041】
図9は電力変換装置の主回路構成図である。本実施例のインバータ装置は、電力変換回路として、交流電力を直流電力に変換する順変換器CONと、平滑コンデンサCBと、直流電力を任意の周波数の交流電力に変換する逆変換器INVとを備え、交流電動機IMを所望の周波数で運転可能としている。そして、冷却ファン6は、順変換器CON及び逆変換器INV内のパワーモジュールを冷却可能な位置に取付けられる。
【0042】
電力変換装置の各種制御データは、操作パネル17から設定及び変更が可能である。操作パネル17には異常表示が可能な表示部が設けられており、電力変換装置の異常が検出されると当該表示部に表示される。本実施例の操作パネル17としては、特に種類が限られるものではないが、デジタル操作パネルとして装置使用者の操作性を考慮して表示部の表示を見ながら操作が行えるように構成している。なお、表示部は必ずしも操作パネル17と一体に構成する必要はないが、操作パネル17の操作者が、表示を見ながら操作できるように一体構成とすることが望ましい。操作パネル17から入力された電力変換装置の各種制御データは図示しない記憶部に格納される。
【0043】
温度検出器THMは、順変換器CON及び逆変換器INV内のパワーモジュールの温度を検出する。この温度検出器THMは、予め設定された温度で出力接点がオンあるいはオフする温度リレーを用いても、温度により抵抗値が変化するサーミスタを用いても差し支えない。なお、サーミスタとしては、温度上昇とともに抵抗値が上昇する特性のものでも減少する特性のものであってもよい。
【0044】
本実施例において、制御回路9は、インバータ装置全体の制御を司る。
制御回路9は、操作パネル17によって入力される各種の制御データに基づいて逆変換器INVのスイッチング素子を制御する他、装置全体に必要な制御処理を行う。内部構成は省略するが、各種の制御データが格納された記憶部の記憶データからの情報に基づいて演算を行うマイコン(制御演算装置)が搭載されている。
【0045】
ドライバ回路7は、制御回路9からの指令に基づいて逆変換器INVのスイッチング素子を駆動する。また、後述するように、ドライバ回路7内にはスイッチングレギュレータ回路(DC/DCコンバータ)が搭載されており、電力変換装置の運転に必要な各直流電圧を生成し、これらを各構成に対して供給する。
【符号の説明】
【0046】
CON…順変換器、CB…平滑用電解コンデンサ、INV…逆変換器、IM…交流電動機、1…冷却フィン(フィン)、2…本体ケース(ケーシング)、3…本体カバー(カバー)、4…電線引き出し板、5…冷却ファン取付け板、6…冷却ファン(ファン)、THM…温度検出器(温度センサ)、7…主回路基板、8…電解コンデンサ基板、9…制御基板、10…導体銅バー、11…複合モジュール(パワー半導体の集合体)、12…制御電源保持基板、13…底板、14…表面カバー、15…端子台カバー、16…ブラインドカバー、17…デジタル操作パネル、18…フラットケーブル、19…スイッチングトランス、20…冷却ファン用電源ケーブル、21…DC/DCコンバータ用MOS−FET、22…主回路基板上に設けた切り欠き貫通孔(第1の通気口)、TM1…制御回路端子台、TM2…主回路端子台、R…抵抗体、A1…電解コンデンサCBが貫通する孔、A2…カバー3の両側面に開いた通風孔スリット、A3…ケーシング2に設けた切り欠き通風孔(第2の通気口)、A4…ケーシングの下部に設けた通風孔スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体と、
このパワー半導体の熱を放熱するフィンと、
前記パワー半導体を駆動するドライバ回路を有する回路基板と、
前記フィンと前記回路基板との間に位置し、前記フィンを覆い、前記パワー半導体を挿入するための切り欠き部及び前記回路基板からの空気をフィンに流すための通気口を有するケーシングと、
前記ケーシングと結合され、前記回路基板を覆うカバーと、
前記通気口を介して前記回路基板からの空気をフィンに流すファンと、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記通気口は前記フィンよりも下側のケーシングに設けられたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記通気口は前記ケーシングの正面に設けられたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置において、
前記回路基板は前記正面に対して前記フィンと反対側に配置されたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項3と4のいずれかに記載の電力変換装置おいて、
前記回路基板は、前記カバーと前記回路基板との間の第1の空間からの空気を前記回路基板と前記正面との第2の空間へ流すための通気口を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置において、
前記カバーは外部からの空気を前記第1の空間に流すための吸気口を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電力変換装置において、
前記回路基板が有する通気口は前記吸気口よりも上側に設けられたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電力変換装置において、
前記正面に設けられた通気口は前記回路基板が有する通気口よりも下側に設けられたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電力変換装置において、
前記ファンは前記フィンよりも上側に配置され、前記通気口を介して前記回路基板からの空気を前記フィンに流すことを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電力変換装置において、
前記ケーシングは、前記正面に設けられた通気口よりも下側に外部からの空気を前記フィンに流すための吸気口を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電力変換装置において、
前記ケーシングは、前記正面に設けられた通気口よりも下側で且つ前記ケーシングに設けられた吸気口よりも上側に電解コンデンサを有し、
前記ファンは、外部からの空気を前記吸気口を介して前記電解コンデンサに流すことを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電力変換装置において、
前記回路基板は前記カバーに設けられた吸気口より上側に前記ドライバ回路に用いられるスイッチング素子を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
パワー半導体を冷却する冷却フィンを正面で覆うケーシングと、
このケーシングの前記正面に対して前記冷却フィンと反対側に配置され、前記パワー半導体を駆動するドライバ回路を備えた主回路基板と、
前記ケーシングと結合され、前記主回路基板を覆うカバーと、
を備えた電力変換装置において、
前記冷却フィンよりも下側の前記正面に設けられ、前記主回路基板からの空気が前記ケーシング内部に流れる通気口と、
この通気口からの空気を前記冷却フィンに流す冷却ファンと、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項13に記載の電力変換装置において、
前記通気口よりも下側に備えられた平滑コンデンサと、
この平滑コンデンサよりも下側に設けられた吸気口と、
を備え、
前記冷却ファンは前記吸気口から前記平滑コンデンサへ流れた空気を前記冷却フィンに流すことを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
請求項13または14において、前記通気口は水平方向に空気が流れるように設けられたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項16】
パワー半導体を冷却する冷却フィンを正面で覆うケーシングと、
このケーシングの前記正面に対して前記冷却フィンと反対側に配置され、前記パワー半導体を駆動するドライバ回路を備えた主回路基板と、
前記ケーシングと結合され、前記主回路基板に対して前記正面と反対側から前記主回路基板を覆うカバーと、
を備えた電力変換装置において、
前記主回路基板と前記カバーとの間の第1の空間と、
前記主回路基板と前記正面との間の第2の空間と、
前記カバーに設けられた吸気口よりも上側の前記主回路基板に設けられ、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する第1の通気口と、
この第1の通気口よりも下側で且つ前記冷却フィンよりも下側の前記正面に設けられ、前記第2の空間と前記ケーシング内部とを連通する第2の通気口と、
この第2の通気口からの空気を前記冷却フィンに流す冷却ファンと、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項17】
請求項16に記載の電力変換装置において、
前記ドライバ回路に用いられるスイッチング素子は前記吸気口より上側の前記主回路基板に配置されたことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−165643(P2012−165643A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92580(P2012−92580)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【分割の表示】特願2007−196892(P2007−196892)の分割
【原出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】