説明

電子機器

【課題】 ヒンジ部を大型化することなく、ヒンジカバーを固定するネジを目立たない位置に配置する。
【解決手段】 ヒンジユニットとヒンジカバーとを固定する固定手段を、可動部を機器本体に対して回転させるときに回転中心となる回転軸に略平行であって、ヒンジユニット側からヒンジカバー側に向かう方向に挿入し、可動部の可動範囲を規制するための規制部材をヒンジユニットにおける回転軸を挟んだ一方側に配置し、ヒンジユニットとヒンジカバーとを固定する固定手段をヒンジユニットにおける回転軸を挟んだ他方側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部が機器本体に対して回転可能なように、ヒンジ機構により機器本体と可動部とを連結した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやビデオカメラ等の電子機器では、液晶ディスプレイ等の表示部を有する表示ユニットを機器本体に対して開閉可能に支持し、また、表示ユニットを開いた状態で回転可能に支持することで、様々な角度での撮影を容易に行うことを可能にしている。
【0003】
また、このような、いわゆるバリアングル型表示部を搭載した電子機器は、表示ユニットの開閉状態及び回転状態によって、表示部に表示される画像を上下、左右に反転するなどの表示の切り替えや点灯及び消灯を行い、操作者に違和感が無いようにしている。
【0004】
一方、ヒンジ機構は近年の小型化に伴い、高強度の金属部品から構成されており、回転規制やトルク発生機構など複雑な機構を備えているため、意匠的な観点からそのまま外観に露呈させることは好ましくない。また、ヒンジ機構部は機器本体と表示ユニットを電気的に接続する可撓性を有するワイヤーハーネスが挿通され、回転検出スイッチをヒンジ機構部に内包している場合がある。
【0005】
以上の理由から、例えば、特許文献1に記載された撮像装置のように、ヒンジ機構部の外観に露呈する部分をヒンジカバーにより覆い、ヒンジ機構部とヒンジカバーをネジにて締結するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−35766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたヒンジカバーを2本のネジを用いてヒンジ機構部内に設けられた専用の固定板金に固定する構成では、以下のような問題が生じる。
【0008】
図11(a)は特許文献1に記載されたヒンジ部及びヒンジカバーの斜視図であり、図11(b)はヒンジカバー固定ネジとヒンジカバーを取り外した状態の展開斜視図である。
【0009】
図11(a)において、113はヒンジ部の機構部品であるヒンジユニットであり、2本のヒンジカバー固定ネジ133により、樹脂からなるヒンジカバー132が、ヒンジユニット113に取り付いている。102は表示部筐体であり、不図示のネジによりヒンジユニット113に固定されている。ワイヤーハーネス119はヒンジユニットの内部に挿通されており、表示部筐体及び本体筐体を電気的に接続している。
【0010】
図11(b)において、141は、ヒンジカバー固定用板金でありヒンジユニットの構成部品となっている。図示した開閉軸を中心軸として、ヒンジユニットの構成部品である開閉板金124は開閉動作を行うが、前述の固定板金141は開閉板金124に取り付けられており、開閉板金124と固定板金141は一体的に開閉動作をする。
【0011】
143は回転規制板金であり、ヒンジユニットの回転規制を行うための規制部材となっている。142はヒンジユニットの回転状態を検出するスイッチ及び基板であり、この基板に半田付けされた線はワイヤーハーネス19に合流して本体筐体へと接続されている。
【0012】
このように、特許文献1に記載された構成では、ヒンジカバーを2本のネジによりヒンジユニット内の専用の固定板金に固定しているため、部品点数が増えコスト高となってしまう。
【0013】
図12(a)は特許文献1に記載された撮像装置に用いられるような従来のヒンジカバーの斜視図であり、図12(b)は側面図である。図13はヒンジユニット113にヒンジカバー132が組み付けられている様子を示す断面図である。図12(a)において、132dはヒンジカバー132の内壁に設けられた爪部である。図12(b)から明らかなように、ヒンジカバー132は断面形状が略U字形状であり、矢印の方向に変形しやすく、寸法及び形状が安定しないという問題があった。このヒンジカバー132をヒンジユニット113に取り付け、ヒンジカバー固定ネジ133にて固定しても、U字の片側だけ固定することになる。他端は爪部132dにて係合しているだけであるため、図13の波線で示すように、ヒンジカバー132の片側が寸法のバラツキによって浮いてしまう(外側に開いてしまう)という問題が考えられる。
【0014】
また、特許文献1に記載された構成では、ヒンジカバーを固定する2本のネジは、画像表示部とほぼ同一面に配置されているため、意匠性を損ねるという問題がある。一般的にネジは目立たない位置に配置されることが望ましい。目立つ位置に配置したネジに対してネジ頭をラベルや化粧部品で覆い隠す方法が考えられるが、部品点数が増え製造工数も増加するという新たな問題が生じる。
【0015】
そこで、ヒンジカバーを安価に固定し、かつ、ネジを目立たない位置に配置する手法として、ヒンジカバーの内側にネジボスを設け、開閉板金124を挟むようにして開閉板金124の外観側から開閉軸C1方向に向かってネジ締め固定する方法が考えられる。しかしながら、特許文献1に記載されたヒンジ機構の構成では、開閉板金124上に回転検出スイッチ142や、回転規制板金143が配置されており、ヒンジカバーから延出させるネジボスを配置するスペースが無い。開閉板金を大型化すれば、ネジボスを配置するスペースを確保できるが、ヒンジ機構部そのものが大型化してしまう。
【0016】
そこで、本発明は、ヒンジ部を大型化することなく、ヒンジカバーを固定するネジを目立たない位置に配置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の電子機器は、機器本体に対して開閉及び回転が可能なように、ヒンジユニットにより当該機器本体と連結された可動部を有する電子機器であって、前記ヒンジユニットを覆うヒンジカバーと、前記ヒンジユニットと前記ヒンジカバーとに挿入され、当該ヒンジユニットと当該ヒンジカバーとを固定する固定手段と、前記可動部の可動範囲を規制するための規制部材と、を有し、前記固定手段は、前記可動部を前記機器本体に対して回転させるときに回転中心となる回転軸に略平行であって、前記ヒンジユニット側から前記ヒンジカバー側に向かう方向に挿入されていて、前記規制部材は、前記ヒンジユニットにおける前記回転軸を挟んだ一方側に配置され、前記固定手段は、前記ヒンジユニットにおける前記回転軸を挟んだ他方側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ヒンジ部を大型化することなく、ヒンジカバーを固定するネジを目立たない位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮像装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る撮像装置の表示部筐体の状態の遷移の一例を示す背面側から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る撮像装置の表示部筐体を本体筐体の外側に開いて表示パネルの表示面を被写体側へ向けた状態での背面側から見た分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る撮像装置のヒンジユニットの周辺を拡大した斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る撮像装置の表示部筐体を本体筐体の外側に開いて表示パネルの表示面を撮影者側へ向けた状態でのヒンジユニットの斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る撮像装置の表示部筐体を本体筐体の外側に開いて表示パネルの表示面を上面方向へ向けた状態のヒンジユニットを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る撮像装置のヒンジカバーを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る撮像装置のワイヤーハーネス挿入後のヒンジユニットにヒンジカバーを取り付けた状態を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る撮像装置のヒンジユニットに表示部筐体を組立てた状態の斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る撮像装置の表示部筐体を本体筐体の外側に開いて表示パネルの表示面を上面方向へ向けた状態を示す図である。
【図11】従来のヒンジユニット及び表示筐体を示す図である。
【図12】従来のヒンジカバーを示す図である。
【図13】従来のヒンジユニット及び表示筐体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る撮像装置(デジタルカメラ)の外観を示す斜視図であり、(a)は、正面側から見た斜視図、(b)は、背面側から見た斜視図である。
【0022】
図1において、撮像装置(以下、カメラとする)1は、表示パネル5を有するバリアングル型の可動部である表示部筐体2と、機器本体である本体筐体3と、表示部筐体2と本体筐体3とを連結するヒンジ部4とを備えている。ヒンジ部4は、いわゆる2軸ヒンジ機構を有している。これにより、表示部筐体2は、本体筐体3に対してヒンジ部4を介して開閉可能及び回転可能に連結されている。本体筐体3と表示部筐体2とがヒンジ部4により連結されていることで、撮影者は撮影を行う体勢に応じて表示部筐体2の角度を自由に変えることができ、ハイアングルやローアングルでも被写体を表示パネル5で確認しながら撮影を行うことができる。
【0023】
図2は、カメラ1の表示部筐体2の状態の遷移の一例を示す斜視図であり、(a)、(b)、(c)、(d)は、代表的な4つの状態を示している。
【0024】
図2において、カメラ1の本体筐体3には、図2(c)、(d)に示すように、表示部筐体2を本体筐体3に対して閉じた状態の時に表示部筐体2を収納する表示部筐体収納部6が設けられている。以下では、表示部筐体2を表示部筐体収納部6に収納した状態を閉じ状態、表示部筐体2を本体筐体3に対して外側に開いた状態を開き状態とする。
【0025】
図2(a)において、表示部筐体2は、本体筐体3に対し図示した開閉軸を中心軸として、約180度回転可能である。図2(c)において、表示部筐体2は、本体筐体3に対し図示した回転軸を中心軸として、反時計回り方向に約180度、時計回り方向に約90度回転可能である。
【0026】
図2(a)は、表示パネル5の表示面を撮影者側(外側)に向けた閉じ状態を示している。この状態は、本実施形態のカメラ1を、バリアングル型の表示部を持たない一般的なデジタルカメラと同様に、カメラ1の背面側から表示パネル5で被写体を確認しながら撮影を行う場合に適している。
【0027】
図2(b)は、表示パネル5の表示面をカメラ1の背面側(内側)に向けた閉じ状態(撮影者側とは反対側に向けた状態)を示している。この状態は、表示パネル5の表示面がカメラ1の外側に露出しないので、表示パネル5の表示面を傷つけることが無く、カメラ1を使用しない時などに表示パネル5の表示面を保護したい場合に適している。
【0028】
図2(c)は、表示パネル5の表示面を撮影者側に向けた開き状態を示している。この状態は、撮影者がカメラアングルに応じて表示パネル5の表示面の角度自由に変えられるため、様々な撮影状況に適している。
【0029】
図2(d)は、表示パネル5の表示面を被写体側へ向けた開き状態を示している。この状態は、被写体側から表示パネル5の表示面を確認しながら撮影することができるため、撮影者による自分自身の撮影(自分撮り)やセルフタイマ撮影などを行う場合に適している。
【0030】
このように、2軸ヒンジ機構のヒンジ部4により、表示パネル5の表示面を状況に応じた様々な方向に向けることができる。
【0031】
次に、表示部筐体2と本体筐体3の内部構成を図3を用いて説明する。図3は、表示パネル5の表示面を被写体側へ向けた開き状態での背面側から見た分解斜視図である。
【0032】
図3において、表示部筐体2の内部には、表示パネル5とバックライトユニットからなる表示パネルユニット31、表示パネル5の表示駆動に関わる回路が実装された表示部回路基板7が配置されている。表示部回路基板7には、コネクタ10a、コネクタ10bが実装されている。表示パネルフレキシブルプリント基板(以下表示パネルFPC)8は、表示パネル5とコネクタ10aに各々接続されている。バックライトFPC9は、バックライトユニットとコネクタ10bに各々接続されている。表示パネルユニット31は、表示パネルFPC8を介してコネクタ10aに接続されると共に、バックライトFPC9を介してコネクタ10bに接続されている。
【0033】
表示部筐体2と本体筐体3とは、ヒンジユニット13により連結されている。ヒンジユニット13は、本体筐体3側ではメインシャーシ14にネジにより固定されている。本体筐体3の内部には、撮影レンズ鏡筒ユニット15が配置されている。さらに、本体筐体3の内部には、撮影レンズ鏡筒ユニット15を挟んでヒンジユニット13の反対側にメイン回路基板16が配置されている。メイン回路基板16には、カメラ全体の制御及び信号処理を行う各種電子部品が実装されている。撮影レンズ鏡筒ユニット15とメイン回路基板16を、撮影レンズ鏡筒ユニット15の光軸方向に重ねて配置しないことは、カメラ全体の厚みを薄くするのに有効である。
【0034】
表示部回路基板7とメイン回路基板16とは、ヒンジユニット13に挿通される複数のケーブル(接続線)を束ねたワイヤーハーネス19により電気的に接続されている。ワイヤーハーネス19は、その両端にそれぞれ、表示部回路基板7に接続するためのコネクタ部12と、メイン回路基板16に接続するためのコネクタ部18を備えている。ワイヤーハーネス19のコネクタ部12は、表示部回路基板7に実装されたコネクタ11と接続され、ワイヤーハーネス19のコネクタ部18は、メイン回路基板16に実装されたコネクタ17と接続されている。32は樹脂から成るヒンジカバーであり、33はそのヒンジカバー32をヒンジユニットに固定するためのヒンジカバー固定ネジ(第1の固定ネジ)である。ヒンジカバー32及びヒンジカバー固定ネジ33は、表示部筐体2の開閉動作に伴って開閉軸を中心軸(回転中心)にして回転するが、表示部筐体2の回転動作(すなわち図2(c)から図2(d)状態への遷移)には連動しないように構成されている。
【0035】
次に、カメラ1のヒンジユニット13に関連する周辺構成の詳細を図4を用いて説明する。図4は、ヒンジユニット13の周辺を拡大した斜視図である。
【0036】
図4において、ヒンジユニット13は、表示部筐体2を本体筐体3に対して開閉を行うための開閉軸部21a、21bと、表示部筐体2を本体筐体3に対して回転を行うための回転軸部22を備えている。ヒンジユニット13は、図1に示すヒンジ部4の内部機構に相当する。開閉軸部21a及び回転軸部22は、それぞれワイヤーハーネス19を構成する複数のケーブルの挿通が可能な中空部分を有する。ワイヤーハーネス19を構成する複数のケーブルは、開閉軸部21a及び回転軸部22のそれぞれの中空部分を挿通されることで、図3で説明した経路で配線されている。
【0037】
開閉軸部21a及び回転軸部22のそれぞれの中空部分を挿通されるワイヤーハーネス19は、複数のケーブルの断面形状が略円形になるように束ねられると共に、テープ26が螺旋状に巻き付けられることでラッピング部として構成されている。ワイヤーハーネス19を構成する複数のケーブルをラッピングするテープ26としては、摺動性が良く丈夫で軟らかいものを使用することが望ましい。これにより、ケーブル同士の擦れ等による傷つきや断線を防止し、本体筐体3に対するヒンジユニット13を介した表示部筐体2の開閉及び回転の耐久性を向上させている。
【0038】
ワイヤーハーネス19は、ヒンジユニット13を通過したのち、本体筐体3の内部を横切りメイン回路基板16のコネクタ17に接続される。このようにして、表示部筐体2と本体筐体3はワイヤーハーネス19を介して電気的に接続される。
【0039】
ヒンジユニット13は主に、メインシャーシ14に固定される固定板金23、固定板金23に対し開閉する開閉板金24、開閉板金24に対し回転する回転板金25と、前述した開閉軸部21a、21b、回転軸部22とから構成されている。回転板金25は表示部筐体2とネジにて固定され、回転板金25と表示部筐体2とが連動して回転動作が行われるように構成されている。次に、本体筐体3に対する表示部筐体2の可動状態(開閉状態及び回転状態)を検出する方法について述べる。
【0040】
表示部筐体2には、2個の磁石29a、29bが設けられ、本体筐体3には、2個の磁気センサー30a、30bが設けられている。即ち、磁石29a、29bと磁気センサー30a、30bにより、表示部筐体2の開閉状態及び回転状態を検出する。なお、2個の磁石29a、29bは、それぞれから発生する磁界の向きが同じになるように向きが設定されている。
【0041】
表示部筐体2を本体筐体3側に閉じると、磁気センサー30aは、磁石29a、29bのいずれかが接近することを検出する。ここで、表示部筐体2が回転して表示パネル5の表示面が内外(撮影者側/被写体側)どちらを向いた状態でも、表示部筐体2を閉じた状態では、磁石29a、29bのいずれかが磁気センサー30aの検出領域に位置するように設定されている。これにより、表示パネル5の表示面が内外どちらを向いた状態でも表示部筐体2の開閉状態を検出することができる。
【0042】
一方、回転検出は磁気センサー30bと、磁石29bによって検出される。表示部筐体2の表示部を被写体側へ向けると(図4の状態)、磁気センサー30bに磁石29aが近接した状態になり磁気センサー30bが磁気を検出する。ここで、磁気センサー30bには磁束密度の強さだけで無く、磁界の向きについても判定できるセンサーを用いているものとする。図4の状態から回転軸C2を中心軸として、表示部筐体2を180度回転させると磁気センサー30bに磁石29bが近接する状態になる。この状態では、磁石29bから発生する磁界の向きが磁石29aから発生する磁界の向きと異なるため、磁気センサー30bは磁気検出しないようになっている。
【0043】
このように、2個の磁石と2個の磁気センサーによって、表示部筐体2の本体筐体3に対する可動状態(開閉状態及び回転状態)が検出できるようになっている。
【0044】
次に、図5及び図6を用いてヒンジユニット13の構成について詳細に述べる。
【0045】
図5(a)は、表示パネル5の表示面を撮影者側へ向けた開き状態でのヒンジユニット13の組み立て状態の斜視図であり、図5(b)は、その展開状態の斜視図を示している。図6(a)は、表示パネル5の表示面を上面方向へ向けた開き状態の装置側面方向から見たヒンジユニット13の図であり、図6(b)は、装置背面方向から見たヒンジユニットの図である。図6(c)は、図6(b)におけるX−X断面図、図6(d)は、図6(b)におけるY−Y断面図をそれぞれ示している。
【0046】
図5(a)において、23は固定板金であり、前述したメインシャーシ14への固定板金である。24は開閉板金であり、中空状の金属からなる開閉軸部21a及び中実の開閉軸部21bによって、固定板金23に対し開閉軸C1を中心軸として開閉可能となるように軸支されている。後述するように、中空状の開閉軸部21aは、ヒンジユニット13における回転軸C2を挟んだヒンジカバー固定ネジ33及びネジボス32bが配置されていない側に設けられる。25は回転板金であり、中空状の金属からなる回転軸部22によって、回転軸C2を中心軸として開閉板金24に対し、回転可能となるように軸支されている。34は回転規制板金であり、回転規制板金固定ネジ35(第2の固定ネジ)によって開閉板金24に、開閉板金24の回転板金25側(外側)から開閉軸C1側(内側)に向かってネジ固定されている。
【0047】
開閉軸部21a、21bは、固定板金23の穴部23a、23bと開閉板金24の穴部24i、24jにそれぞれ通した後、金属カシメを行うことによって固定板金23に固定される。つまり開閉軸部21a、21bは固定板金23に固定されているため、可動しない。回転軸部22は、開閉板金24の穴部24kと回転板金25の穴部25aに通した後、金属カシメを行い、回転板金25に固定される。つまり、回転軸部22及び回転板金25は一体的に開閉板金24に対し回転可能になっている。前述した表示部筐体2はこの回転板金25に取り付けられる。
【0048】
図5(b)において、36は開閉トルク及びクリックを発生させるための部品群であり、皿バネ、クリック板、ワッシャーとからなる。これらは、開閉軸部21bに軸支される。
【0049】
37は回転トルク及びクリックを発生させるための部品群であり、皿バネ、クリック板、ワッシャー、化粧筒とからなる。これらは、回転軸部22に軸支される。皿バネの付勢力を用いてクリック板を相手板金に押し当てて、摩擦抵抗を増しトルクを発生させている。一般的に付勢力発生手段は皿バネの他にコイルバネが用いられることもあるが、本実施形態ではスペース効率を考慮し、皿バネを用いた構成を説明する。トルク発生及びクリック発生の仕組みについて一般的な構成であるため、ここでは詳細な説明を割愛する。
【0050】
回転規制板金34の開閉板金24対する位置決めは、開閉板金24より半抜き加工にて設けられた凸状の位置決め軸24a、24bに対し、回転規制板金34に設けられた凹部(不図示)に係合することで行われる。回転規制板金34は開閉板金24の内側に配置され、回転規制板金固定ネジ35は、開閉板金24の外側から内側に向かって開閉板金24を挟む様にして、回転規制板金34に設けられたタップ部34aに螺合し、回転規制板金34は開閉板金24に固定される。ここで、回転規制板金固定ネジ35は逆方向すなわち内側から外側へ締めるように配置することも可能であるが、開閉板金24は回転規制板金34よりも板厚が薄いため、ネジ係り量が十分にとれない。後述するが、回転規制板金34は開閉及び回転を規制する規制部材であるため、ネジ係り量が十分にとれないと動作耐久やストッパー位置でのストッパーに逆らう様に外力を与えるとネジが緩んだり螺合部が変形破壊したりという問題を引き起こしかねない。開閉板金24の厚みを増せばネジ係り量を増やせるが、ヒンジユニット全体が大型化してしまう。これらの理由により、本実施形態では、回転規制板金固定ネジ35は、ネジ係り量が比較的自由にとれる、回転規制板金34にタップ部を設け螺合させている。
【0051】
回転規制板金34には、開閉軸部21aを規制位置にて当接させる開閉規制面34dと、回転軸部22を規制位置にて当接させる回転規制面34b及び34cが設けられている。回転規制板金34によって開閉動作及び回転動作における可動範囲が規制されている様子については後に述べる。
【0052】
図6(a)において、24fは開閉板金24の一部切り欠かれた部分であり、後述するヒンジカバー32の爪32dが係合する部位である。開閉板金24に設けられた24d、24eは穴部であり、後に述べるヒンジカバー32の位置決め及びネジ固定用に用いられる。ヒンジユニット13単体の状態(表示部筐体2が回転板金25に取り付けられていない状態)では、回転板金25を回転させると、回転規制板金固定ネジ35は回転板金25に対し、回転規制板金固定ネジ35の取り外し方向において重ならない位置になっている。そのため、この時点では回転規制板金固定ネジ35の着脱は可能である。
【0053】
次に回転板金25の開閉板金24に対する回転規制の構造を説明する。図6(c)において、波線で示した様に回転軸部22は図示した状態から時計周りに90度回転すると、回転規制板金34の規制面34cに面接触しそれ以上回転しないようになる。同様に、回転軸部22は反時計方向に180度回転すると、回転規制板金34の規制面34bに面接触しそれ以上回転しないようになる。前述したように、回転板金25と回転軸部22は金属カシメにより一体的に開閉板金24に対し規制された角度内で可動する。回転板金25に固定される表示部筐体2も同様に規制された角度内で可動が可能である。
【0054】
図6(d)において、ネジ固定で一体となった開閉板金24及び回転規制板金34が、固定板金23に金属カシメにより固定されている開閉軸部21aを中心にして波線で示した様に可動する。回転規制板金34の規制面34dに開閉軸部21aが面接触しそれ以上回転しないようになる。
【0055】
ここまで説明してきたように、1つの回転規制板金34に対し回転軸及び開閉軸をそれぞれの規制面に当接させることで、回転規制及び開閉規制を実現している。
【0056】
次に図7を用いてヒンジカバー32について詳細に述べる。
【0057】
ヒンジカバー32は略U字形状の断面形状から成っており、組み立て完成状態では開閉軸C1に垂直な断面が略U字形状となる。内側にヒンジユニット13の開閉板金位置決め用の穴部24dに嵌合する位置決め軸32a、及びヒンジカバー固定ネジ33を挿入させるための挿入部としてのネジボス32bが設置されている。ネジボス32bは、略U字形状の凹部側から開口側に延出していて、ヒンジカバー固定ネジ33は略U字形状の開口側から挿入される。また、開閉板金24の切り欠き部24fに入り込む爪32d、ヒンジカバー32をヒンジユニット13に取り付け時に、回転規制板金に当接するリブ32eが配置されている。また、ネジボス32bから延び略U字形状のヒンジカバー32の内壁に連結されているリブ32cによって、図7(b)の波線矢印の様に略U字形状が開いたり閉じたりする寸法のバラツキ抑制や、部品の強度アップが実現されている。
【0058】
ヒンジカバー32のヒンジユニット13への取り付けは、組立てられたヒンジユニット13にワイヤーハーネス19を挿通した後に行われる。位置決め軸32aがヒンジユニット13の開閉板金24の穴部24dに挿入されると同時に、爪32dがヒンジユニット13の開閉板金24の切欠部24fに係合する。最後にヒンジカバー固定ネジ33を開閉板金24の外側から内側に向かって、開閉板金24の挟むようにしてネジボス32bに螺合させ、ヒンジカバー32をヒンジユニット13に固定する。
【0059】
次に、図8を用いて、ヒンジカバー32、ヒンジカバー固定ネジ33、回転規制板金34、回転規制板金固定ネジ35、ワイヤーハーネス19の位置関係について詳細に述べる。
【0060】
図8(a)は、ワイヤーハーネス19がヒンジユニット13に挿通され、ヒンジカバー32をヒンジカバー固定ネジ33にてヒンジユニット13に取り付け固定した状態を示している。ヒンジカバー32の位置決め軸32aは開閉板金24の穴部24dに係合しており、ヒンジカバー32の爪32dは開閉板金24の切り欠き部24fに係合している。ヒンジカバー32のネジボス32bに螺合しているヒンジカバー固定ネジ33及び回転規制板金固定ネジ35は、この状態ではどちらも回転板金25とネジ取り外し方向において重なっていないため、どちらのネジも取り外すことが可能である。
【0061】
しかしながら、製造工程などにおいて何らかの理由でヒンジカバー32を取り外そうとした時に、ヒンジカバー32を取り外すためにどちらのネジを外せばよいか判断しにくい。誤って回転規制板金固定ネジ35を外すと、ヒンジカバー32が取り外せないだけでなく、回転規制板金34が外れ落ちてしまうため、再組み立てに手間がかかってしまう。そのため、目印として開閉板金24のヒンジカバー固定ネジ33の上部に略三角形状の凹部24gを設け、作業者がどちらのネジを外すべきか分かりやすくしてある。
【0062】
図8(b)は、図8(a)のZ−Z位置における断面図である。図8(b)では、回転軸C2を挟んで一方側にヒンジカバー固定ネジ33用のネジボス32bを設け、ヒンジカバー固定ネジ33を用いて開閉板金24を間に介在させ、ヒンジカバー32をネジ固定している。また、回転軸C2を挟んで他方側にヒンジユニット13の開閉規制及び回転規制を行う回転規制板金34をヒンジユニット13内に配置している。また、開閉板金24を間に介在させ、回転規制板金固定ネジ35を用いて回転規制板金34をネジ固定している。また、ヒンジカバー固定ネジ33が回転軸C2と略平行な方向に挿入されている。ヒンジカバー固定ネジ33及び回転規制板金固定ネジ35はどちらも、開閉板金24の外側から内側(ヒンジユニット側からヒンジカバー側)に向かう方向に挿入され締め付けられている。ワイヤーハーネス19は、回転軸C2を挟んでヒンジカバー固定ネジ用のネジボス32bが配置されていない側に配線されている。
【0063】
図9は、ヒンジユニット13に表示部筐体2及びヒンジカバー32を組立てた状態の斜視図である。この状態にて、固定板金23を本体筐体3の構成部品であるメインシャーシ14に組み付ける。組付け後は、図9に示すようにヒンジ部4のネジは外観の目立つ位置に露出しない。
【0064】
図10は、カメラ1の組立て完成状態であり、表示パネル5の表示面を上面方向へ向けた開き状態での側面図である。先ほども述べたが、製造工程においてカメラ1が完成した状態でも、ヒンジカバー32に傷が発見された際など、ヒンジカバー32を容易に外したいという要求がある。図10の状態では、ヒンジカバー固定ネジ33は、表示部筐体2によって、ネジ取り付け及び取り外し方向に重なっていない。すなわち、ヒンジカバー固定ネジ33は、表示部筐体2の回転角度が所定角度のときに、取り外し方向において表示部筐体2と重ならない位置に配置されている。このような配置により、長いビットのドライバーを用いればヒンジカバー固定ネジ33は取り外す事ができ、ヒンジカバー32も取り外しが可能である。
【0065】
また、ヒンジカバー固定ネジ33の近傍には、回転規制板金固定ネジ35が配置されていて、ヒンジカバー固定ネジ33と回転規制板金固定ネジ35はネジ取り付け及び取り外し方向が略等しい。
【0066】
回転規制板金固定ネジ35はヒンジユニット13内に配置されている回転規制板金34を固定していて、回転規制板金固定ネジ35を誤って外してしまうと回転規制が効かなくなる。そのため、表示部筐体2が必要以上に回転可能になってしまい、ワイヤーハーネス19に捩じりストレスがかかり、断線してしまう可能性がある。また再度組み立てなおすのも、非常に手間がかかる。従って、回転規制板金固定ネジ35は組み立て完成状態では容易に外せないのが望ましい。
【0067】
そこで、図10に示すように、回転規制板金固定ネジ35は、表示部筐体2がいかなる状態でも回転規制板金固定ネジ35のネジ取り付け及び取り外し方向に表示部筐体が重なり、ドライバーが回転規制板金固定ネジ35の十字穴に到達できない位置に配置してある。すなわち、回転規制板金固定ネジ35は、表示部筐体2の回転角度によらず、取り外し方向において表示部筐体2と少なくとも一部が重なる位置に配置される。ヒンジカバー固定ネジ33の位置と回転規制板金固定ネジ35の位置とを比較すると、ヒンジカバー固定ネジ33の位置は、回転規制板金固定ネジ35の位置よりも回転軸C2から離れた位置である。
【0068】
このように配置により、回転規制板金固定ネジ35を誤って外してしまうことを防止できるとともに、ヒンジカバー32を外す場合に取り外さなければならないネジがどちらか容易に判断することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態では、開閉及び回転の2軸を有するヒンジユニットにおいて、開閉規制及び回転規制を1つの部材で成り立たせるとともに、回転検出スイッチのヒンジユニット内の配置をやめ、磁石と磁気センサーにて回転検出を行う構成にした。こうしてヒンジユニットを省部品化及び機構部品を高効率配置することで生じたスペースを、ヒンジカバーとヒンジユニットの固定用のスペースに用いた。こうした構成により、従来は外観の目立つ位置に露出していたヒンジカバー固定用のネジを外観の目立たない位置に配置することが可能である。さらに、ヒンジ部の小型性を維持しながらヒンジカバー固定用の専用固定板金を必要としない、安価で品質安定性がある構成とすることが可能である。
【0070】
また、ヒンジカバーを外すために取り外さなければならないビスの近傍に取り外し方向が同じビスが存在しても、どちらのビスを外せばよいか容易に判断することが可能である。
【0071】
なお、本実施形態では、デジタルカメラを一つの例として挙げたが、ヒンジ付きの携帯電話やビデオカメラ等の電子機器においても、同様に実施することが可能である。
【0072】
また、上記の実施形態では、ヒンジカバー32の取り外し時に取り外すビスを間違わないように、ヒンジカバー固定ネジ33の上部に略三角形状の凹部24gを設けるとともに回転規制板金固定ネジ35が表示部筐体2と取り外し方向において重なるようにしている。上記の両方を備えた構成であればヒンジカバー32の取り外し時にどちらのビスを取り外せばよいか容易に判断できるが、凹部24gが設けられていれば判断できるため、回転規制板金固定ネジ35が表示部筐体2と取り外し方向において重ならない構成でもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 撮像装置
2 表示部筐体
3 本体筐体
4 ヒンジ部
13 ヒンジユニット
19 ワイヤーハーネス
32 ヒンジカバー
33 ヒンジカバー固定ネジ
34 回転規制板金
35 回転規制板金固定ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体に対して開閉及び回転が可能なように、ヒンジユニットにより当該機器本体と連結された可動部を有する電子機器であって、
前記ヒンジユニットを覆うヒンジカバーと、
前記ヒンジユニットと前記ヒンジカバーとに挿入され、当該ヒンジユニットと当該ヒンジカバーとを固定する固定手段と、
前記可動部の可動範囲を規制するための規制部材と、を有し、
前記固定手段は、前記可動部を前記機器本体に対して回転させるときに回転中心となる回転軸に略平行であって、前記ヒンジユニット側から前記ヒンジカバー側に向かう方向に挿入されていて、
前記規制部材は、前記ヒンジユニットにおける前記回転軸を挟んだ一方側に配置され、前記固定手段は、前記ヒンジユニットにおける前記回転軸を挟んだ他方側に配置されることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記ヒンジユニットは、前記可動部を前記機器本体に対して開閉させるための中空状の開閉軸部と、前記可動部を前記機器本体に対して回転させるための中空状の回転軸部と、を有し、
前記中空状の開閉軸部及び前記中空状の回転軸部の中空部分には前記機器本体と前記可動部とは電気的に接続する接続線が通っていて、
前記中空状の開閉軸部は、前記ヒンジユニットにおける前記回転軸を挟んだ前記固定手段が配置されていない側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記規制部材は、前記中空状の開閉軸部と当接することで前記可動部の開閉動作における可動範囲を規制し、前記中空状の回転軸部と当接することで前記可動部の回転動作における可動範囲を規制することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記ヒンジカバーは、前記可動部を前記機器本体に対して開閉させるときに回転中心となる開閉軸に垂直な断面が略U字形状であり、略U字形状の開口側から前記固定手段が挿入されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記ヒンジカバーは、前記固定手段が挿入される挿入部を有していて、
前記挿入部は、略U字形状の凹部側から開口側に延出していることを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記ヒンジカバーは、前記挿入部と略U字形状の内壁とを連結するリブを有することを特徴とする請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記固定手段は、前記可動部の回転角度が所定角度のときに、当該固定手段の取り外し方向において前記可動部と重ならない位置に配置されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記ヒンジユニットと前記規制部材とに挿入され、当該ヒンジユニットと当該規制部材とを固定する、前記固定手段とは異なる第2の固定手段を有し、
前記第2の固定手段は、前記固定手段が挿入されている方向と略等しい方向に挿入されていて、
前記第1の固定手段の位置は、前記第2の固定手段の位置よりも前記回転軸から離れた位置であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第2の固定手段は、前記可動部の回転角度によらず、当該第2の固定手段の取り外し方向において前記可動部と少なくとも一部が重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−45935(P2013−45935A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183519(P2011−183519)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】