説明

電気的プローブシステム

被検基板(10)を保持する保持機構(2)と、前記保持機構(2)に対し位置決め可能なプローブユニット(3)とを備え、前記プローブユニット(3)は、前記基板(10)の第1のパッド群(11k)に、第1のストローク変域(V1)内で、所定範囲(2ΔZ)の接触圧により弾接可能な第1のプローブ群(5a)と、前記基板(10)の第2のパッド群(11k)に、前記第1のストローク変域(V1)と異なる第2のストローク変域(V2)内で、前記所定範囲(2ΔZ)の接触圧により弾接可能な第2のプローブ群(5b)と、前記第1及び第2のプローブ群(5a,5b)が植設されたプローブホルダ(3d)とを備える電気的プローブシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、電気的プローブシステムに関し、特に、検査対象となる回路基板の電気接点(以下「パッド」と呼ぶ。)へ個別に接触して検査のための導電路を構成する複数のリパルジブコンタクタプローブ(弾発式導電性接触子、以下単に「プローブ」と呼ぶ。)を備えた電気的プローブシステムに関する。
【背景技術】
電気的プローブシステムは、通常、被検基板を保持する基板保持機構と、この保持機構に対しロボット等により三次元的に位置決め可能なプローブユニットとを備える。
従来のプローブユニットは、複数のプローブをプローブホルダの片面に同じ条件で植設した構成を有する。
従って、プローブの接触対象となるパッドの頂部を包絡する面がプローブホルダのプローブ植設面と平行であれば、それらのプローブとパッドとの接触圧が等しくなって、好ましい測定精度が得られ、検査を円滑に行える。
反面、被検基板が自重あるいは接触圧により変形して、パッド頂部の包絡面がプローブ植設面に平行でなくなると、プローブとパッドとの接触圧が均一さを欠き、測定精度にその影響がでる。
そこで、従来は、基板保持機構に工夫を施し、被検基板の変形を防止して所望の測定精度を維持するようにしていた。(日本国特開平11−153647号公報参照)
しかしながら、基板サイズの拡大化に伴って、変形防止に手間取り、その分、検査の円滑性が損なわれていた。
本発明は、基板サイズが大きくなっても、その変形防止のために検査の円滑性が損なわれることのない電気的プローブシステムを提供することを一つの課題とする。
【発明の開示】
本発明者等は、プローブをパッドに弾接させる電気的プローブシステムは、プローブの接触性能が良好なため、そのストローク(つまり、プローブの伸縮に伴う先端部の変位)が適宜な幅の中にあれば、所望の測定精度を維持可能な接触圧が得られることを知り、従って、プローブの植設条件を変えても、そのストローク変域を管理することにより、所望の測定精度を維持可能な範囲に接触圧を調整できることが分かって、前記課題を解決する次の発明を行った。
本発明は、被検基板を保持する保持機構と、前記保持機構に対し位置決め可能なプローブユニットとを備え、前記プローブユニットは、前記基板の第1のパッド群に、第1のストローク変域内で、所定範囲の接触圧により弾接可能な第1のプローブ群と、前記基板の第2のパッド群に、前記第1のストローク変域と異なる第2のストローク変域内で、前記所定範囲の接触圧により弾接可能な第2のプローブ群と、前記第1及び第2のプローブ群が植設されたプローブホルダとを備える電気的プローブシステムである。
本発明によれば、第1のプローブ群が所定範囲の接触圧により第1のパッド群に弾接可能な第1のストローク変域と、第2のプローブ群が同じ範囲の接触圧により第2のパッド群に弾接可能な第2のストローク変域とが異なる。
このため、第1のパッド群の頂部包絡面が第1のストローク変域に包含され、且つ、第2のパッド群の頂部包絡面が第2のストローク変域に包含されていれば、各包絡面の起伏或いは第1及び第2ストローク変域の違いに係わりなく、第1及び第2のプローブ群の接触圧が所定の範囲に収まり、所望の測定精度が維持される。
従って、保持機構で保持される被検基板の変形を予測し、それに応じて変位するパッド頂部の包絡面を段階的に分割して、隣り合う分割面の内の一方に対応するパッドを第1のパッド群とし、他方に対応するパッドを第2のパッド群として、それらのパッド群に対処可能なプローブ群を備えるプローブユニットを用意することにより、基板の変形を防止せずとも所望の測定精度で検査を行え、基板サイズが大きくなっても、その変形防止のために検査の円滑性が損なわれずに済む。
【図面の簡単な説明】
本発明の上記その他の課題、特徴及び効果は、以下に添付図面を参照してなされる本発明を実施するための最良の形態の説明を読むことにより明らかとなる。添付図面中:
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電気的プローブシステムの斜視図;
図2は、図1の電気的プローブシステムのプローブの断面図;
図3は、図2のプローブの変更例を示す断面図;
図4は、図2のプローブの別の変更例を示す断面図;
図5は、図1の電気的プローブシステムの検査対象となる基板の平面図;
図6は、図5の基板を保持する基板保持機構の平面図;
図7は、図6の基板保持機構の変更例を示す平面図;
図8は、図6の基板保持機構に従来の変形防止方式を適用した比較例の説明図;
図9は、図6の基板保持機構で保持された基板の変形を予測する説明図;
図10は、本発明の原理説明図;
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る電気的プローブシステムの側面図;
図12は、図11の電気的プローブシステムのプローブユニットの底面図;
図13は、図12のプローブユニットのXIII−XIII線断面図;
図14は、本発明の第3の実施の形態に係る電気的プローブシステムのプローブユニットの底面図;
図15は、図14のプローブユニットのXV−XV線断面;
図16は、本発明の第4の実施の形態に係る電気的プローブシステムの側面図;
図17は、図16の電気的プローブシステムの下側プローブユニットの斜視図;
図18は、本発明の第5の実施の形態に係る電気的プローブシステムの要部断面図;
図19は、本発明の第6の実施の形態に係る電気的プローブシステムの要部断面図;そして
図20は、本発明の第7の実施の形態に係る電気的プローブシステムの要部断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面に基づき説明する。図中、同じ要素は同じ符号で表す。
(第1の実施の形態)
先ず、図1〜図7を参照して、本発明の第1の実施の形態及びその変更例を説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る電気的プローブシステムPS1の斜視図、図2は同プローブシステムPS1の任意なプローブ5n,m(1≦n≦N,1≦m≦M;N,M=自然数、以下総称的には5で示す。)の断面図、図3及び図4はそれぞれプローブ5n,mの変更例を示す断面図、図5はプローブシステムPS1の検査対象となる半導体基板10の平面図、図6は基板10を保持する基板保持機構2の平面図、図7は基板保持機構2の変更例12を示す平面図である。
第1の実施の形態に係る電気的プローブシステムPS1は、図1に示す様に、基板10を水平に保持する基板保持機構2と、この保持機構2に対しロボットアームRAにより三次元的に位置決め可能なプローブユニット3とを備える。
プローブユニット3は、「テスター」と呼ばれるコンピュータ支援多軸位置決めロボットのアームRAにより支持されたプローブモジュールとして構成され、略々平らな絶縁性のハウジングMHと、検査対象となる基板10専用に配置された中央及び左右のプローブブロック5a,5b,5aとから成る。各プローブブロック5a,5b,5aは、数百または数千のプローブ5n,mをモジュールハウジングMHの底面(3a,3b,3a)の中央領域3bに植設し、それぞれの接触下端部を所定の設計距離で露出させたマトリックスとして構成される。
モジュールハウジングMHの底面(3a,3b,3a)の左右の領域3aは、段差3cを介して持ち上げ、基板10の変形による当たりを回避する。図中、6,8は取付けねじ、7は位置決めピンの挿入孔である。
モジュールハウジングMHは、図2に示すように、板状の下側プローブホルダ3dと、この下側プローブホルダ3dの上に積層された板状の中間プローブホルダ3eと、この中間プローブホルダ3eの上に積層された板状の上側プローブホルダ3fと、この上側プローブホルダ3fの上に積層されリード導体W1が形成された絶縁性基板としての配線プレート3gとを含む。
上記プローブホルダ3d,3e,3f及び配線プレート3gは互いに密に接合され、プローブ5を個別に収容する支持孔SHが形成される。各支持孔SHは、下側ホルダ3dを縦通する下側支持孔SH1と、中間ホルダ3eを縦通する中間支持孔SH2と、上側ホルダ3fを縦通する上側支持孔SH3とからなる。下側支持孔SH1は、内方への段差を設けて下部SH4を縮径し、上側支持孔SH3も、内方への段差を設けて上端部SH5を縮径する。上側支持孔SH3の上端では、対応するリード導体W1の下端部が内方に露出する。
各プローブ5n,mは、導電性の針状部材である上下のプランジャPL1,PL2とその間に介装された導電性のコイルばねSP1とを有する弾発式の導電性接触子CP1として構成される。
上側のプランジャPL1は、中間支持孔SH2から上側支持孔SH3へかけて延在する比較的長寸の軸部PL11と、上側支持孔SH3の縮径部へ摺動可能に嵌合する比較的短寸の針頭部PL12と、上側支持孔SH3の大径部へ摺動可能に嵌合する中間鍔部PL13とを有する。
下側のプランジャPL2は、下側支持孔SH1の大径部中に延在する比較的短寸の軸部PL21と、下側支持孔SH1の縮径部へ摺動可能に嵌合して底面3bより突出する比較的長寸の針頭部PL22と、下側支持孔SH1の大径部へ摺動可能に嵌合する中間鍔部PL23とを有する。
コイルばねSP1は、上側プランジャPL1の鍔部PL13下側のボス部から軸部PL11に沿って延在するピッチ巻螺旋部SP11と、同軸部PL11の下端から下側プランジャPL2の鍔部PL23上側のボス部にかけて延在する密着巻螺旋部SP12とからなる。コイルばねSP1は、上側プランジャPL1の針頭部PL12がリード線W1下端に当接し且つ下側プランジャPL2の鍔部PL23が下側支持孔SH1の段差に係合する伸延状態(以下、しばしば「フリー状態」と呼ぶ。)と、上側プランジャPL1の針頭部PL12がリード線W1下端に当接し且つ下側プランジャPL2の針頭部PL22尖端がホルダ下面3bと略々面一になる縮退状態(以下、しばしば「コンプレッション状態」と呼ぶ。)との間で伸縮する。
上下のプランジャPL1,PL2は、ばねSP1により常時逆方向に付勢され、下側プランジャPL2は、鍔部PL23で下側支持孔SH1の段差に押し当てられ、これにより脱落阻止されて、針頭部PL22の尖端が外方へ突出し、基板10の対応領域11i,j(1≦i≦I,1≦j≦J;I,J=自然数)にあるパッド11kの頂部に弾接する。上側プランジャPL1は、針頭部PL12の尖端がリード導体W1の下端に押し当てられる。これにより、導電性接触子CP1(=5n,m)が、パッド11kとリード導体W1とを結ぶ導電路として機能する。
各プローブ5n,mの下側プランジャPL2の針頭部PL22は、コイルばねSP1の伸縮に応じて支持孔SHから出没し、その尖端が、コイルばねSP1のフリー状態に対応するフリーストローク位置PS1から、コイルばねSP1のコンプレッション状態に対応するコンプレッションストローク位置PS2までの(以下「フルストローク」と呼ぶ。)距離h内で変位する。
従って、基板10の検査領域11i,j内でプローブ5n,mに対応するパッド11kの頂部(より正確にはその上面)をホルダ仮面3bから距離dの位置におき、この距離dをフルストロークhより短くすれば、プローブ5n,mの下端(つまり下側プランジャ針頭部PL22の尖端)が、フリーストローク位置PS1からの圧縮量(h−d)に応じた接触圧Pn,mで、パッド11kの頂部に弾接する。この接触圧Pn,mは、フリーストローク位置PS1でほぼ零となり、コンプレッションストローク位置PS2で最大Pmaxとなる。
個別のプローブ5n,mによる測定の精度(即ち有効桁数)は、固有の上下限値(0<下限圧<上限圧<Pmax)により定義される圧閾幅(上限圧−下限圧)内で接触圧Pn,mに連続的に依存し、従って、プローブユニット3による測定の精度は、(良質なコイルばねの採用により)全プローブ5の圧閾幅に重なりを持たせれば、その重なり内で、接触圧Pn,mの絶対値に連続的に依存させることができ、個別プローブ5n,mの植設条件(部材仕様及び取付仕様を含む)に左右されずに済む。
これは、理論的な測定精度に対応する接触圧の基準値(即ち理論的な等圧値)を上記圧閾幅の重なり内に定め、この基準値の上下に(全プローブ5に関し)共通な微分領域を設定して、その領域内の接触圧で測定を行えば、その測定の精度が上記理論的精度の数学的近傍(つまり所望な精度の範囲)に包含されることを意味する。
一方、個別プローブ5n,mの接触圧は、その圧縮量h−d(=プローブ下端のストローク変位)に比例する。
従って、所望の精度を得る上で理想的なストローク変位の基準値を「局所的に」定め、この基準値の上下で(全プローブ5に関し)幅が共通な差分領域ΔZを設定して、その設定変域(2ΔZ)内のストロークで測定を行えば、所望の測定精度を維持することができる。
この点、個別プローブ5n,mのストローク(h−d)は、測定対象となる基板領域11i,jの対応部位におけるホルダ下面3b側への変形に対応するので、この局所的変形を包含するストローク変域を上記設定変域(2ΔZ)として選定すれば、基板10が変形した状態で測定しても所望の測定精度が得られる。
なお、プローブシステムPS1は、保持機構2で基板10を裏表逆に保持することにより、基板10裏面のパッド列を検査することができる。
この点、基板10を裏表逆に保持する代わりに、プローブユニット3をロボットアームRAにより基板10の裏側に移動させてもよく、その場合、前記プローブ5n,mとして、図3に示す上向き検査用導電性接触子CP2又は図4に示す総ばね形導電性接触子CP3を用いることができる。
図3の導電性接触子CP2は、中央のコイルばね部材SP2と、このばね部材SP2の両端部に連結される上側導電性針状体PL3及び下側導電性針状体PL4とを有する。上側の針状体PL3は、大径の胴部PL31と、先端に爪部PL32が形成された小径の軸部PL33とを備え、その間に抜け止め段差PL34が画成される。爪部PL32は検査対象となる基板領域11i,jの裏面に設けられたパッド要素としてのハンダボールHBに弾接する。針状体PL3の段差PL34の位置を上げて、接触子CP2を可動部材と共に上方へ抜き取り可能な構成にしても良い。下側の針状体PL4は、小径の軸部PL41と、配線プレートの導体に弾接する錐状基部PL42との間に鍔部PL43を設ける。ばね部材SP2は、上側の針状体PL3の胴部PL31下側のボス部に嵌合する密着巻螺旋部SP21と、下側の針状体PL4の鍔部PL43上側のボス部に嵌合するピッチ巻螺旋部SP22とを有する。
図4の導電性接触子CP3は、その全体がコイルばね部材からなり、所要の剛性を与える上下の密着巻螺旋部SP3,SP5とその間を連結しばね力を与えるピッチ巻螺旋部SP4とを有する。上下の密着巻螺旋部SP3,SP5は、いずれも、その大径コイル部SP31,SP51と小径コイル部SP32,SP52との境界部に段部SP33,SP53が形成され、これにより抜け止めされる。
以上において、被検基板10は、プローブシステムPS1による検査の後工程で切断分離される総数IxJ個の半導体基板11i,j(以下、総称的には11で表す。)を図5に示すようにマトリックス状にパッケージ化した主部10aと、それを囲繞する四辺の縁部10bとで構成される。
各半導体基板11は、長さL/3x幅Wの寸法を有し、その表裏には多数のパッド11kが所定位置に形成されている。
プローブユニット3は、連続する3個の半導体基板11i,j,11i+1,j,11i+2,j(例えば、図中に射影をつけて示した長さLx幅Wの領域)を同時に検査する。
被検基板10を保持する基板保持機構2は、図6に示すように、一隅が欠けた矩形状の外枠2aと、その3つの角隅2d,2e,2f及び四辺部2g,2h,2i,2j沿いに延在する内縁2bと、外枠2aの欠隅部2cに摺動自在に嵌合する押当部材2mと、この押当部材2mを外枠2aの内方に付勢する押ばね2kと、図1に示すように、外枠2aを外方より支承し、必要に応じ搬送、位置決めする保持枠FRとを有する。
被検基板10は、若干の押し代を残して内縁2bに落し掛け、押当部材2mの切欠部2nを基板10の一角に当てがい、押ばね2kで押して、他の三つの角を内縁2bの三隅2p,2q,2rに押し込むことにより、外枠2aに対する位置決めを行う。
被検基板10は、図6の基板保持機構2に代え、図7に示す基板保持機構12で保持しても良い。この保持機構12は、一対のコーナー部材12a,12fと、これを保持する不図示の保持枠とで構成され、各コーナー部材12a,12fは、直角な角12b,12g画成する小寸外辺枠12c,12d及び12h,12iと、それに対応する内縁12e,12jとを備え、基板10は、その対角部を内縁12e,12jの角隅12p,12qにあてがって位置決めする。
ここで、図8〜図10を参照して、プローブシステムPS1による基板10の検査方法につき説明を行う。
図8は基板保持機構2に従来の変形防止方式を適用した比較例の説明図、図9は基板保持機構2で保持された基板10の変形を予測する説明図、図10は本発明の原理説明図である。
従来は、図8に示すように、NxM個のプローブ5による接触圧PoxNxM(及び基板10の自重)を打ち消す反力Pcを加えて、基板10の撓みを補正し、検査対象領域11i,j,11i+1,j,11i+2,jのパッド11kの頂部を包絡する面をホルダ下面3bと平行にしていた。つまり、所望の検査精度を得るためにプローブ5の等接触圧(Po)面(以下「検査基準面」と呼ぶ。)を平らな検査基準面RS0に変えて検査していた。この基準面RS0は、全プローブ5に対して単一設定され、パッド11k頂部の包絡面に一致する。
本発明では、上記反力Pcによる撓み補正を行わずに検査を行い、撓み補正の手間を省く。このため、従来方式に合わせて考えれば、図9に示すように、プローブ5の等接触圧(P1)面が下方に撓んだ検査基準面RS1になり、容易に実現し難い。この基準面RS1もパッド11k頂部の包絡面に一致する。
この点、本発明は、図10に示すように、上記検査基準面RS1を、次の表1に示す有限個(この場合3つ)の空間領域V1,V2,V3で覆われる基準面RS−11,RS−12,RS−13に分け、それぞれのストローク変位の基準値(つまり、対応するストローク変域2ΔZの中点)に対応する平らな基準面RS−21,RS−22,RS−23で置換え、これらの基準面を合成した新たな検査基準面RS2に基づき検査しており、円滑な検査が可能である。

ところで、被検基板10は、そのパッド11kのピッチが年々微小化し、現在ではピッチ0.2mm程度のものが通常化している。これに伴いプローブ5のピッチが微小化し、そのストロークも0.5mm程度のものが常用され、しかも基板10が1.0mm以下に薄化する傾向にある。
また基板10のサイズが大きくなり(例えば、一辺30mm以上)、プローブユニット3の荷重による反りも大きくなっている。
この点、プローブユニット3の荷重を小さくして基板10を保護する試みもあるが、それには、プローブ5のストロークを大きくして安定接触を図る必要がある。
しかしながら、基板10への接触安定性を図ろうとすると、プローブのストロークが約0.5mmと短くなった分、更に近づくので、上部プローブユニットの下部の外周エッジ部と基板10の被検査面との干渉を防止する必要がある。
本発明は、検査時に、基板に対するプローブの接触安定性を容易に図れるようにすることも目的としている。
この目的を達成するため、本実施例では、被検基板10に対向するプローブユニット3の面に、プローブ5のパッド11kへの当接による負荷で生じる基板10の反りを許容する段差3cを設けている。
(第2及び第3の実施の形態)
次に、図11〜図13を参照して、本発明の第2の実施の形態およびその変更例に相当する第3の実施の形態を説明する。なお、以下の実施の態様において、第1の実施の態様と同様な要素は、その参照番号の前に実施態様の番号を付して示す。
図11は第2の実施の形態に係る電気的プローブシステムPS2の側面図、図12はプローブシステムPS2のプローブユニット23の底面図、図13は図12のXIII−XIII線断面図、図14は第3の実施の形態に係る電気的プローブシステムPS3のプローブユニット33の底面図、図15は図14のXV−XV線断面である。
プローブユニット23は、被検基板10のパッド11kに対応する複数のプローブ25を備え、その基板10への対向面Bに、プローブ5のパッドへの当接による負荷で生じる基板10の反りを許容する段差部23cを有する。
プローブユニット23は、片面検査の場合、基板10の上側に位置する。
このプローブユニット23は、周縁部が基板押えチャック22で支持された基板10の上方から、シリンダ等の駆動により、各プローブ5を対応するパッド11kに弾接させて検査を行う。このとき、基板10は、プローブユニット23の負荷により、プローブユニット23の対向面Bの中央部に対応する部位が谷となる方向に反る。
この検査時、プローブユニット23は、図12に示すように、基板10の反りを、上記対向面Bに形成された段差部23aで逃がし、プローブユニット3の基板10の被検査面Cに対するエッジ部Aの当接を回避し、反りに起因する対向面Bと被検査面Cの谷部との隙間dを小さくする。
プローブユニット23は、基板10の反りを矯正せず、そのまま受け入れる。例えば、チャック22による支持部でも応力集中がおきない。
エッジ部Aの被検査面Cへの当接を避けるので、エッジ部Aによる基板10の損傷がない。このエッジ部の不具合については、段差部23aの境界となる段部23cの中央エッジ部Eも、チャック22からの離間距離Dがエッジ部Aの同様な離間距離に比べて充分長いので、中央エッジ部Eの接触荷重はエッジ部Aのそれと比べて充分小さくなる。
基板10の反りに起因する隙間dを小さくでき、その分プローブ25のストロークを稼げ、プローブの接触荷重の増大による接触安定性を図れる。
図12,図13および図14,図15に示すように、段差部は、対向面Bの中央部に形成された高位部23b,33bの側部に形成され対向面Bの他の部分を高位部23b,33bより低位に形成する低位部23a,33aとして構成される。
図12,図13のプローブユニット23では、対向面Bの中央部に幅方向に横断するようにして高位部23bが形成され、低位部23aは高位部23bの両側部分に段部23cを境界として形成される。
図14,図15のプローブユニット33では、対向面Bの中央部に矩形平面の高位部33bが形成され、低位部33aは高位部33bを取巻き、高位部33bの周囲に形成された段部33cを境界とする。
基板10の反りを、プローブユニット23,33の対向面Bに低位部23a,33aとして形成した段差部で逃がし、プローブユニット23,33の外周エッジ部が基板10の被検査面Cに干渉するのを回避でき、また対向面Bの中央部を高位部23b,33bにしたので、対向面Bと被検査面Cの谷部との隙間dを小さくでき、プローブ25,35の接触安定性を確実に図れ、被検査面Cが損傷しない。
低位部23a,33aは、高位部23b,33bとの高低差がプローブ25,35のフルストロークhの15%以上になる。この高低差は段部23c,33cの高さH1に相当する。
基板10の反りを、プローブユニット23,33の対向面Bに形成した低位部23a,33aで逃がす際、反り部が低位部23a,33aに漸近し、そこのプローブ25a,35aは、高位部23b,33bのプローブ25b,35bより大きいストロークを確保でき、低位部23a,33aにあるプローブ25a,35aの被検査面Cに対する接触荷重を増大させ、プローブの接触安定性を図れる。
低位部23a,33aと高位部23b,33bとの高低差をプローブ25,35のフルストロークhの15%以上としたのは、プローブの被検査面Cに対する接触安定性を得、プローブユニット23,33の外周エッジ部を干渉させないためである。
図中、23d,23e,23f及び33d,33e,33fはプローブの下側ホルダ、中間ホルダ、上側ホルダ、23g及び33gは配線プレート、L2,L21,L3,L31,L32は長さ寸法、W2,W21,W3,W31,W32は幅寸法、26,36,27,37はねじ、28a,29a,38a,39aは位置決めピン28b,29b,38b,39bの挿入孔である。
(第4の実施の形態)
次に、図16〜図17を参照して、本発明の第4の実施の形態を説明する。
図16は第4の実施の形態に係る両面同時検査用電気的プローブシステムPS4の側面図、図17はプローブシステムPS4の下側プローブユニット44斜視図である。
プローブシステムPS4は、基板10を上下から挟持する上部および下部プローブユニット43,44を、シリンダ等で駆動し、それぞれのプローブ45a,45bおよび45c,45dを対応するパッドに弾接させて検査を行う。
上部プローブユニット43は、高位部43b及び基板10の反りを許容する段差部(低位部)43aを有し、下部プローブユニット44にも、段差部(低位部)44a及び高位部44bが形成され、基板10の反りが干渉しない。
下部プローブユニット44の低位部44aのプローブ45cは、高位部44bのプローブ45dよりも検査時のストロークが小さい。この点、下部プローブユニット44による被検査面はマザーボード取付側となり、マザーボード取付側のパッドの配置はチップ搭載側に比べてピッチが相対的に広く、また下部プローブユニット44のプローブ45c,45dは、上部プローブユニット43のプローブ45a,45bに比ベストロークを大きくでき、しかもマザーボード取付側はパッド数がチップ搭載側よりかなり少なく、プローブの接触が安定する。
図中、44d,44e,44fはプローブの上側ホルダ、中間ホルダ、下側ホルダ、44gは配線プレートである。
(第5及び第6の実施の形態)
次に、図18〜図19を参照して、本発明の第5の実施の形態およびその変更例に相当する第6の実施の形態を説明する。
図18は第5の実施の形態に係る電気的プローブシステムPS5の要部断面図、図19は第6の実施の形態に係る電気的プローブシステムPS6の要部断面図である。
プローブシステムPS5、PS6のプローブユニット54,64は、基板10のパッドに対応したプローブ55,65を備え、基板10の被検査面Cと、それCに対向するプローブユニット54,64の面Bとの離間距離が、プローブ55,65の弾接負荷で生じる基板10の反りに沿い相違する。
プローブ55,65は、基板10の反りに沿ってグループ化(55c,55d,55c;65c,65d,65c)され、グループ毎に上記離間距離に応じた突出量が設定される。
プローブユニット55は、基板10の反りの凹面側の被検査面Cにプローブ部が弾接し、基板10の凹面の谷部に対応するプローブ55dが最大突出量グループG1となり、基板10の凹面谷部の両側の斜面に対応するプローブ55cが最小突出量グループG2となる。
プローブユニット65は、基板10の反りの凸面側の被検査面Cにプローブが弾接し、基板10の凸面の頂部に対応するプローブ65dが最小突出量グループG2となり、基板10の凸面頂部両側の斜面に対応するプローブ65cが最大突出量グループG1となる。
プローブユニット55は片面検査時の上部プローブユニットとして使用でき、またプローブユニット55,65は、それぞれ両面同時検査時の上部プローブユニット、下部プローブユニットとして使用できる。
プローブユニット55,65のプローブ55,65は、基板10の反りに沿ってグループ化され、グループ毎に基板10の被検査面Cとプローブユニットの対向面Bとの離間距離に応じた突出量を持つので、前記離間距離の相違にも拘わらず、被検査面C全体に安定接触する。
この接触安定性は、基板10の反りを矯正せず、大略残したまま得られので、接触時の応力集中がない。
好ましくは、最大突出量グループG1と最小突出量グループG2との突出量差gを最大突出量の20%以上に設定する。
例えば、グループG1の突出量2mm、グループG2の突出量1.5mmとする。
検査時は、先ず、最大突出量グループG1のプローブが被検査面Cに当接して基板10に反りを生じさせ、プローブユニット54,64内に後退する。最大突出量グループG1のプローブがその突出量の少なくとも20%を越えて後退した後に、最小突出量グループG2のプローブが被検査面Cに当接し、その後さらに最大および最小突出量グループG1,G2のプローブが共に後退する。これにより、各グループG1,G2のプローブに必要な接触荷重が得られる。
プローブユニット54,64は、最大突出量グループG1と最小突出量グループG2との中間の突出量を有するグループを備えても良い。
最大突出量グループG1と最小突出量グループG2との突出量差gが最大突出量の20%未満の場合には、プローブの被検査面Cに対する接触が安定しない。
(第7の実施の形態)
次に、図20を参照して、本発明の第5及び第6の実施の形態の変更例である第7の実施の形態を説明する。
図20は第7の実施の形態に係る電気的プローブシステムPS7の要部断面図である。
プローブシステムPS7は、最大突出量グループG1が、プローブユニット74の被検査面に対向する対向面の内で高位部分74bに設けられたプローブ75dによって構成され、最小突出量グループG2が、上記対向面の内で低位部分74aに設けられたプローブ75cよって構成される。
上記各部74a,74bからのプローブの突出量aは同一で、高位部分74bと低位部分74aとの段差により、最大突出量の20%以上となる突出量差gを確保する。
本発明によれば、被検基板の反りをプローブユニットの対向面に形成した段差部で逃がすことにより、プローブユニットの外周エッジ部が被検基板の被検査面に干渉するのを回避でき、反りに起因するプローブユニットの対向面と被検基板の被検査面の谷部との隙間を小さくできるので、基板に対するプローブの接触安定性を容易に図れる。
被検基板の反りをプローブユニットの対向面に低位部として形成した段差部で逃がすことにより、プローブユニットの外周エッジ部が被検基板の被検査面に干渉するのを回避でき、対向面の中央部を高位部に形成すれば、反りに起因するプローブユニットの対向面と被検基板の被検査面の谷部との隙間を一層小さくできる。
段差部としての低位部と、高位部との高低差を、プローブのフルストロークの15%以上として接触安定性が得られる。
プローブを被検基板の反りに沿ってグループ化し、グループ毎に被検基板の被検査面とプローブユニットの対向面との離間距離に応じた突出量を付与したので、離間距離の相違に拘わらず被検査面全体で接触安定性が得られる。
この接触安定性は、被検基板の反りを矯正するのではなく、反り状態を大略残したまま得られるので、その接触状態での応力集中を避けることができる。
最大突出量グループと最小突出量グループとの突出量差を最大突出量の20%以上として、接触安定性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、基板サイズが大きくなっても、その変形防止のために検査の円滑性が損なわれることのない電気的プローブシステムが提供される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検基板(10)を保持する保持機構(2)と、前記保持機構(2)に対し位置決め可能なプローブユニット(3)とを備え、前記プローブユニット(3)は、前記基板(10)の第1のパッド群(11k)に、第1のストローク変域(V1)内で、所定範囲(2ΔZ)の接触圧により弾接可能な第1のプローブ群(5a)と、前記基板(10)の第2のパッド群(11k)に、前記第1のストローク変域(V1)と異なる第2のストローク変域(V2)内で、前記所定範囲(2ΔZ)の接触圧により弾接可能な第2のプローブ群(5b)と、前記第1及び第2のプローブ群(5a,5b)が植設されたプローブホルダ(3d)とを備える電気的プローブシステム。
【請求項2】
被検基板のパッドに対応して複数のプローブを備えた基板検査用プローブユニットであって、
前記被検基板に対向する前記プローブユニットの対向面に、前記プローブの前記パッドへの当接による負荷で生じる前記被検基板の反りを許容する段差部が設けられていることを特徴とする基板検査用プローブユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の基板検査用プローブユニットであって、
前記段差部は、前記対向面の中央部に形成された高位部の側部に形成され前記対向面の他の部分を前記高位部より低位に形成する低位部として構成されていることを特徴とする基板検査用プローブユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の基板検査用プローブユニットであって、
前記低位部は、前記高位部との高低差が前記プローブのフルストロークの15%以上になるように形成されていることを特徴とする基板検査用プローブユニット。
【請求項5】
被検基板のパッドに対応して複数のプローブを備えた基板検査用プローブユニットであって、
前記被検基板の被検査面と、該被検査面に対向する前記プローブユニットの対向面との離間距離は、前記プローブの前記パッドへの当接による負荷で生じる前記被検基板の反りに沿って相違しており、
前記複数のプローブは、前記被検基板の反りに沿って適宜グループ化されると共に、各グループ毎に前記離間距離に応じた突出量を有して取り付けられている
ことを特徴とする基板検査用プローブユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の基板検査用プローブユニットであって、
前記複数のプローブは、最大突出量グループと最小突出量グループを少なくとも有してグループ化されており、かつ
前記最大突出量グループと最小突出量グループとの突出量差が最大突出量の20%以上となるように設定されていることを特徴とする基板検査用プローブユニット。

【国際公開番号】WO2004/046739
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【発行日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553201(P2004−553201)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014717
【国際出願日】平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】