説明

電気自動車

【課題】衝突時、モータの逆起電力により発生する電流によってコンデンサの放電時間が長くなってしまうことを防止する技術を提供する。
【解決手段】電気自動車100は、モータ6に電力を供給するインバータ4と、コンデンサ12と、放電デバイス20と、短絡リレー回路5と、コントローラ2を備える。コンデンサ12はインバータ4の入力端に接続されている。放電デバイス20は、コンデンサ12を放電する装置である。短絡リレー回路5は、モータ6から出ているUVW3相のモータ線14の接続先を、インバータ4から相互の短絡に切り換える。コントローラ2は、車両が衝突したことを示す信号が入力された場合に、モータ線14の接続先をインバータ4から相互の短絡に切り換えるとともに、放電デバイス20を作動させる。モータの逆起電力による誘導電流が放電デバイス20に流れ込まず、コンデンサ12が速やかに放電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪駆動用の電動機(モータ)を備える電気自動車に関する。本明細書における「電気自動車」には、燃料電池車、及び、車輪駆動用のモータとエンジンを共に備えるハイブリッド車も含まれる。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、バッテリの直流電力をモータ駆動に適した交流電力に変換するインバータを備える。インバータには、インバータのスイッチング動作に伴う電流の脈動を抑制するためにコンデンサが備えられる。以下ではそのようなコンデンサを平滑化コンデンサと称する。車輪駆動用のモータは消費電力が大きく、インバータが扱う電流も大電流となる。そのため、平滑化コンデンサにも大容量のものが備えられる。従って、車両が障害物に衝突した際には、安全のためにも平滑化コンデンサに残っている電荷を速やかに放出することが好ましい。
【0003】
平滑化コンデンサを放電する技術の例として、特許文献1や特許文献2には、インバータのスイッチングロスを活用してコンデンサに蓄えられた電気エネルギを放出する技術が提案されている。また、その他に平滑化コンデンサを放電する手法として、放電抵抗(電気抵抗が大きく、電流を流すと発熱して電気エネルギを散逸させることができるデバイス)を利用することが考えられている。放電抵抗に代えて、既存の電気デバイス、例えばヘッドライトやクラクションを放電デバイスとして用いることも提案されている。特許文献1や特許文献2の技術は、インバータそのものを放電デバイスとして活用するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−130845号公報
【特許文献2】特開2005−20952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
衝突の衝撃が大きいと、駆動輪が浮き、モータが回転したままとなる事態が起こり得る。モータが回転したままであると、モータの逆起電力により生じた電流がインバータへ流れ込む。放電デバイスにより平滑化コンデンサに蓄積された電気エネルギを放出している間にも逆起電力によって生成される電流まで放電デバイスに流れ込んでしまうと、放電に要する時間が長くなってしまう。本明細書は、衝突時、モータの逆起電力により発生する電流によって平滑化コンデンサの放電時間が長くなってしまうことを防止する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、車両が衝突した際(正確には、車両が衝突したことを示す信号が何らかのデバイスから発信された際)、インバータとモータ(3相交流モータ)を切り離す。本明細書が開示する技術は、モータをインバータから単に切り離すだけでなく、モータから出ているUVW3相のモータ線(モータの巻き線に繋がる電力供給線)を相互に短絡させる。モータ線を相互に短絡させることによって、モータの巻き線が閉じた回路を構成する。そうすると、モータの逆起電力によって誘導電流(交流電流)が発生するが、その誘導電流が電磁気作用によって力(ローレンツ力)を発生する。ローレンツ力はモータの回転を止める向きに作用する。即ち、複数のモータ線をインバータから切り離して相互に短絡することによって、誘導電流のインバータへの流入を防ぐと同時に、ローレンツ力による制動をモータに加えることができる。
【0007】
本明細書が開示する技術は、電気自動車に具現化することができる。その電気自動車は、車輪駆動用モータ(3相交流モータ)に電力を供給するインバータと、コンデンサ(平滑化コンデンサ)と、放電デバイスと、リレーと、コントローラを備える。コンデンサはインバータの入力端に並列に接続されている。放電デバイスは、コンデンサに並列に接続されており、コンデンサを放電する。リレーは、モータから出ているUVW3相のモータ線の接続先を、インバータから相互に短絡するように切り換える。なお、以下では、そのようなリレーを「短絡リレー」と称して他のリレーと区別する。コントローラは、車両が衝突したことを示す信号が入力された場合に、モータ線の接続先をインバータから相互の短絡に切り換えるように短絡リレーを制御するとともに、放電デバイスを作動させる。放電デバイスは、例えば放電抵抗でよい。この場合、放電デバイスを作動させることは、放電抵抗を平滑化コンデンサに接続することに相当する。
【0008】
モータの回転が低い場合には、逆起電力による誘導電流も小さく、これを考慮する必要もない。そこで、コントローラは、モータの回転数が予め定められた回転数閾値以下の場合は、モータ線の接続先をインバータから相互の短絡に切り換えることなく放電デバイスを作動させても良い。ただし、コントローラは、モータの回転数が回転数閾値を超えている場合は、モータ線の接続先をインバータから相互の短絡に切り換えるとともに放電デバイスを作動させる。
【0009】
あるいは、モータの逆起電力による誘導電流を考慮する必要がなければ、モータ自体を放電デバイスとして用いることも可能である。即ち、コントローラは、モータの回転数が予め定められた回転数閾値以下の場合は、モータ線の接続先をインバータから相互の短絡に切り換えることなく、コンデンサに蓄積された電力をモータへ放出しても良い。ただし、コントローラは、モータの回転数が回転数閾値を超えている場合は、モータ線の接続先をインバータから相互の短絡に切り換えるとともに放電デバイスを作動させる。
【0010】
短絡リレーの確実な動作を考えると、短絡リレーは、電力無供給時はモータ線を相互に短絡させ、電力が供給されるとモータ線をインバータに接続するように結線されていることが好ましい。
【0011】
さらに、放電デバイスを作動させる際、バッテリから電流が放電デバイスに流れ込むことも好ましくない。そこで、本明細書が開示する電気自動車のさらなる改良では、コンデンサと放電デバイスとインバータとが並列に接続された回路にバッテリを接続したり遮断する入力遮断リレーをさらに備え、コントローラは、車両が衝突したことを示す信号が入力された場合に、上記回路とバッテリとの接続を遮断するように入力遮断リレーを制御することが好ましい。その場合、入力遮断リレーは、電力無供給時は上記回路とバッテリとの接続を切断し、電力が供給されるとバッテリを上記回路に接続するノーマルオープンタイプであるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例の電気自動車の駆動系の回路図である。
【図2】放電処理のフローチャート図である(第1実施例)。
【図3】放電処理のフローチャート図である(第2実施例)。
【図4】放電処理のフローチャート図である(第3実施例)。
【図5】放電処理のフローチャート図である(第4実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施例)図1に、実施例に係る電気自動車100の駆動系の回路図を示す。電気自動車100は車輪駆動用のモータ6を有する1モータの車両である。モータ6は、3相交流モータである。なお、図1は、本発明を説明するのに必要なユニットだけを示しており、電気自動車が備えるべき全てのユニットを図示してはいないことに留意されたい。
【0014】
電気自動車100の駆動系は、主として、バッテリ9、入力遮断リレー3、放電デバイス20、平滑化コンデンサ12、インバータ4、短絡リレー回路5、モータ6、及び、コントローラ2で構成される。バッテリ9は、典型的には、出力電圧が300[V]の高電圧高出力のリチウムイオンバッテリである。なお、電気自動車100は、バッテリ9の他に、オーディオやナビゲーションシステム、及び、コントローラ2などの小電力デバイスを駆動するためのサブバッテリ(不図示)も有する。サブバッテリの出力電圧は典型的には12[V]あるいは24[V]である。
【0015】
電気自動車100は、その他、センサとして、モータ6に電力を供給するUVW3相のモータ線14の各線に流れる電流を計測する電流センサ13、及び、モータ6の回転数を計測する回転数センサ15を備える。他にもインバータ4の入力電圧を計測する電圧センサやインバータ4の出力電圧を計測する電圧センサ等も有するがそれらの図示は省略している。
【0016】
まずインバータ4について説明する。インバータ4は、6個のスイッチング回路Sw1〜Sw6で構成される。即ち、ここでは、バッテリ9の直流電力から3相の交流電力を発生する6個のスイッチング回路群をインバータ4と称している。各スイッチング回路Sw1〜Sw6は、IGBTとダイオード(還流ダイオード)が逆並列に接続された回路構成を有している。なお、電流許容値の小さいIGBTで大電流を許容するスイッチング回路を構成するために、複数のIGBTを並列につないで一つのスイッチング回路を構成することもある。各スイッチング回路(IGBT)をON(導通)/OFF(開放)するPWM信号は、コントローラ2が供給する。
【0017】
インバータ4では、2個のスイッチング回路が直列に接続された組が3組並列に接続されており、直列の2個のスイッチング回路の接続点からモータ6へインバータ出力線が伸びている。インバータ4の出力は、UVWの3本であり、その3本の出力線は、短絡リレー回路5を通じてモータのUVW各線(モータ線14)に接続されている。3本の出力線の夫々と、その出力線に対応するスイッチング回路の組は「アーム」と呼ばれる。
【0018】
短絡リレー回路5は、モータから出ているUVW3相のモータ線14の各線の接続先を、インバータの対応する出力端から、相互に短絡するように切り換えるためのスイッチである。短絡リレー回路5は、3個のリレー5a、5b、及び、5cで構成され、モータ線14の各線の接続先を、インバータ出力から、共通の導通線5dへ切り換えることができる。3個のリレー5a〜5cは、コントローラ2からの指令により一斉に切り換わる。短絡リレー回路5は、3個のリレー5a〜5cの総称である。なお、各リレー5a〜5cは、接点を駆動するコイルに電圧が供給されているときにはモータ線14をインバータ4に接続し、電力無供給時は複数のモータ線14を相互に短絡するように結線されている。なお、以下では、表現上の便宜のため、複数のモータ線14を相互に短絡させることを、単純に相互短絡と称する場合がある。
【0019】
インバータ4の入力端4a、4bは、入力遮断リレー3を介してバッテリ9に接続されている。入力遮断リレー3は、バッテリ9の正極に繋がる正極線10aとバッテリ9の負極に繋がる負極線10bの双方に組み込まれており、両方のリレーともコントローラ2からの指令により同時に開閉する。正極線10aに組み込まれたリレーと負極線10bに組み込まれたリレーを、入力遮断リレー3と総称する。入力遮断リレー3は、接点を駆動するコイルに電圧が供給されている間は閉じ(即ちバッテリ9とインバータ4を接続し)、電力無供給時には開放となる(即ちバッテリ9とインバータ4を遮断する)。即ち入力遮断リレー3は、いわゆるノーマルオープンタイプである。
【0020】
インバータ4の入力側(直流側)において正極線10aと負極線10bの間に平滑化コンデンサ12が接続されている。即ち、平滑化コンデンサ12は、インバータの入力端(直流電力の入力端)に並列に接続されている。さらに別言すれば、インバータ4の2個の入力端4a、4bの間に平滑化コンデンサ12が接続されている。平滑化コンデンサ12は、インバータ4のスイッチング動作の影響による入力電流の脈動を抑制するために挿入されている。バッテリ9からインバータ4へ流れる大電流を平滑化するため、平滑化コンデンサ12は大容量である。衝突した際、平滑化コンデンサ12に蓄積された電気エネルギが不用意に他のデバイスに流れ込むことは好ましくない。そのため、車両が衝突した際には平滑化コンデンサ12に蓄積された電気エネルギは速やかに放出されることが好ましい。電気自動車100はそのために放電デバイス20を備えている。
【0021】
放電デバイス20は、放電抵抗22とスイッチリレー21の組み合わせであり、平滑化コンデンサ12と並列に接続されている。放電抵抗22は、高抵抗でありかつ耐熱性の高い金属であり、電流が流れると発熱する。放電抵抗22は電気エネルギを熱エネルギに変換して散逸させるデバイスである。スイッチリレー21は、コントローラ2からの指令により開閉する。コントローラ2がスイッチリレー21を駆動し、放電抵抗22を平滑化コンデンサ12と接続することが「放電デバイスを作動させる」ことの一例に相当する。スイッチリレー21は、接点を駆動するコイルに電圧が供給されている間は接点を閉じ(即ち放電抵抗22を平滑化コンデンサ12に接続し)、電力無供給時は開放となる(即ち、放電抵抗22を平滑化コンデンサ12から切り離す)。スイッチリレー21もいわゆるノーマルオープンタイプである。
【0022】
電気自動車100には他に、加速度センサ24が備えられている。加速度センサ24は、エアバッグシステム(不図示)の一部であり、検知した加速度が所定の大きさ以上であると、信号を出力する。「検知した加速度が所定の大きさ以上である場合」は、車両が衝突したことを意味する。従って、コントローラ2が加速度センサ24から受ける信号が、「車両が衝突したことを示す信号」に相当する。以下、加速度センサ24が出力する「車両が衝突したことを示す信号」を単純に「衝突信号」と称する。なお、加速度センサ24からの信号とは別に、他のデバイスから「車両が衝突したことを示す信号」が送られることもあり得る。例えば、電子デバイス間の通信が途絶えたことを示す信号も、「車両が衝突したことを示す信号」の一つになり得る。「車両が衝突したことを示す信号」とは厳密には、「車両設計段階において、車両が衝突した際に起こり得ると想定した事象を通知する信号」である。
【0023】
コントローラ2は、衝突信号を受信すると、平滑化コンデンサ12に蓄積された電気エネルギ(電荷)を放出する処理を実行する。衝突信号を受信した際にコントローラ2が実行する処理(放電処理)のフローチャートを図2に示す。図2に示すように、コントローラ2は、衝突信号を受信すると、まずインバータ4を停止する(S2)。次いでコントローラ2は、短絡リレー回路5を切り換えて、モータ線14を相互短絡する(S4)。そしてコントローラ2は、放電デバイス20を作動させる(S6)。前述したように、「放電デバイスを駆作動させる」とは、スイッチリレー21を閉じ、放電抵抗22を平滑化コンデンサ12に接続することの一例である。
【0024】
上記の動作は、以下の利点を有する。第一に、複数のモータ線14を相互に短絡し、モータ6をインバータ4から切り離すことによって、逆起電力に起因する誘導電流がインバータ4へ逆流することを阻止する。インバータ側では放電デバイス20(放電抵抗22)が平滑化コンデンサ12の電気エネルギを散逸させているが、そこに誘導電流が加わることが阻止される。誘導電流が加わることによって平滑化コンデンサ12の放電完了が遅延することが防止される。第二に、衝突後に慣性によってモータ6が回転し続けたとしても、モータ線14を相互短絡させることによってモータ6に制動力を加えることができる。これは、相互短絡によってモータの巻き線が閉じた回路となり、逆起電力に起因する誘導電流がローレンツ力を誘起し、そのローレンツ力が制動力となってモータに作用するからである。
【0025】
コントローラ2が実行する放電処理にはいくつかの改良パターンがある。以下、他の放電処理を説明する。なお、ハードウエア構成は図1のものと同じでよいので、以下では図1の構成を参照しながら改良した放電処理を説明する。
【0026】
(第2実施例)図3に、第2実施例の放電処理のフローチャートを示す。第2実施例の放電処理では、モータの回転数に応じて、短絡リレーを切り換えるか否かを決定する。コントローラ2は、衝突信号を受信すると、まずインバータ4を停止する(S12)。次にコントローラ2は、回転数センサ15のセンサデータに基づき、モータ6の回転数が予め定められた回転数閾値Nth以下であるか否かを判断する(S14)。モータ6の回転数が閾値Nth以下である場合(S14:YES)、コントローラ2は、短絡リレー5回路を切り換えることなく(モータ線14を相互短絡させることなく)、直ちに放電デバイス20を作動させる(S18)。他方、コントローラ2は、モータ回転数が閾値Nthを超えている場合、短絡リレー回路5を切り換えてモータ線14を相互短絡した後に放電デバイス20を作動させる(S14:NO、S16、S18)。
【0027】
モータの回転数閾値Nthは、逆起電力による誘導電流が平滑化コンデンサ12の放電に大きな影響を与えない値に設定される。例えば、回転数閾値Nthは1000[rpm]に定められる。その程度の低回転であれば、逆起電力が平滑化コンデンサ12の放電に与える影響は小さい。第2実施例の放電処理では、モータの回転数が低い場合には直ちに放電デバイス20が駆動されるので、平滑化コンデンサ12の放電が速やかに実施される。
【0028】
(第3実施例)図4に、第3実施例の放電処理のフローチャートを示す。第3実施例の放電処理では、モータの回転数が低い場合には、放電デバイス20の代わりにモータ6を使って平滑化コンデンサ12を放電する。コントローラ2は、衝突信号を受信すると、まずインバータ4を停止する(S22)。次にコントローラ2は、回転数センサ15のセンサデータに基づき、モータ6の回転数が予め定められた回転数閾値Nth以下であるか否かを判断する(S24)。モータ6の回転数が閾値Nth以下である場合(S24:YES)、コントローラ2は、短絡リレー5回路を切り換えることなく(モータ線14を相互短絡させることなく)、モータ6を使って平滑化コンデンサ12を放電する(S29)。具体的には、コントローラ2は、インバータ4のスイッチング回路に適宜のスイッチング指令(PWM信号)を与える。そうすると、平滑化コンデンサ12に蓄えられた電気エネルギがインバータ4を通じてモータ6へと流れ、インバータ4のスイッチングロスとモータ6の動きによって電気エネルギが消費される。他方、コントローラ2は、モータ回転数が閾値Nthを超えている場合、短絡リレー回路5を切り換えてモータ線14を相互短絡した後に放電デバイス20を作動させる(S24:NO、S26、S28)。モータの回転数閾値Nthの大きさは、第2実施例の場合と同様にして定められる。
【0029】
第3実施例の場合、衝突信号受信時にモータの回転数が低い場合は、モータ6とインバータ4を放電デバイスとして活用する。放電抵抗22は発熱により電気エネルギを散逸させるので、消耗が激しい。第3実施例は、放電抵抗以外で平滑化コンデンサ12を放電できる場合には放電抵抗を使わずに済む。従って放電抵抗22の消耗が少なく済む。
【0030】
(第4実施例)図5に、第4実施例の放電処理のフローチャートを示す。第4実施例の放電処理では、放電デバイス20を作動させる際にバッテリ9を切り離す。放電デバイス20にバッテリ9からの電流が流れ込むことを阻止し、平滑化コンデンサ12の放電を速やかに行わせる。コントローラ2は、衝突信号を受信すると、インバータ4を停止する(S32)。次にコントローラ2は、短絡リレー回路5を切り換えてモータ線14を相互短絡する(S34)。次いでコントローラ2は、入力遮断リレー3を開放し、バッテリ9を放電デバイス20と平滑化コンデンサ12の回路から切り離す(S36)。その後、コントローラ2は、放電デバイス20を作動させる(S38)。
【0031】
第4実施例の場合、平滑化コンデンサ12の放電の間にバッテリ9から電流が放電デバイス20に流れ込まないので、平滑化コンデンサ12の放電が速やかに完了する。
【0032】
実施例に関する留意点を述べる。入力遮断リレー3を開放する処理(図5のステップS36)を、第2実施例あるいは第3実施例における放電処理に組み込むことも好適である。例えば、ステップS12(図3参照)の処理において、コントローラ2は、インバータ4を停止するとともに入力遮断リレー3を開放することも好適である。あるいは、ステップS22(図4参照)の処理においても、コントローラ2は、インバータ4を停止するとともに入力遮断リレー3を開放してもよい。いずれの場合も、バッテリ9を放電デバイス20と平滑化コンデンサ12の回路から切り離すことによって、平滑化コンデンサ12の放電を速やかに完了することができる。
【0033】
放電デバイス20は放電抵抗22に限られない。車両のオーディオやヘッドライト、あるいは、クラクションを放電デバイスとして活用してもよい。
【0034】
実施例の電気自動車100は1モータの車両であった。本明細書が開示する技術は、車輪駆動用のモータとエンジンの双方を有するハイブリッド車に適用することも好適である。
【0035】
実施例では、いくつかのフローチャートを説明した。フローチャートにおける処理の順番は、本明細書が開示する技術的思想を超えない範囲で変更してもよい。例えば、図2のフローチャートでは、短絡リレーを切り換えた後に(S4)、放電デバイスを作動させる(S6)。そのような処理の順番に代えて、短絡リレーを切り換えると同時に放電デバイスを動作させてもよい。放電デバイスを動作させた後に短絡リレーを切り換えてもよい。ただし、放電デバイスを動作させた後に短絡リレーを切り換えるのは、モータの逆起電力による電流が、放電デバイスによる放電時間の許容時間を超えない時間内とする必要があることに留意されたい。
【0036】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0037】
2:コントローラ
3:入力遮断リレー
4:インバータ
5:短絡リレー回路
5a、5b、5c:リレー
5d:共通導通線
6:モータ
9:バッテリ
10a:正極線
10b:負極線
12:平滑化コンデンサ
13:電流センサ
14:モータ線
15:回転数センサ
20:放電デバイス
21:スイッチリレー
22:放電抵抗
24:加速度センサ
100:電気自動車
Sw:スイッチング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪駆動用モータに電力を供給するインバータと、
インバータの入力端に並列に接続されているコンデンサと、
コンデンサに並列に接続されており、コンデンサを放電する放電デバイスと、
前記モータから出ているUVW3相のモータ線の接続先を、インバータから相互に短絡するように切り換える短絡リレーと、
車両が衝突したことを示す信号が入力された場合に、モータ線の接続先をインバータから、相互の短絡に切り換えるように短絡リレーを制御するとともに、放電デバイスを作動させるコントローラと、
を備えることを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
コントローラは、
モータの回転数が予め定められた回転数閾値以下の場合は、モータ線の接続先をインバータから相互の短絡に切り換えることなく放電デバイスを作動させ、
モータの回転数が前記回転数閾値を超えている場合は、モータ線の接続先をインバータから相互の短絡に切り換えるとともに放電デバイスを作動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
コントローラは、
モータの回転数が予め定められた回転数閾値以下の場合は、モータ線の接続先をインバータから相互の短絡に切り換えることなく、コンデンサに蓄積された電力をモータへ放出し、
モータの回転数が前記回転数閾値を超えている場合は、モータ線の接続先をインバータから相互の短絡に切り換えるとともに放電デバイスを作動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記短絡リレーは、電力無供給時はモータ線を相互に短絡させ、電力が供給されるとモータ線をインバータに接続することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電気自動車。
【請求項5】
バッテリの出力端に設けられており、コンデンサと放電デバイスとインバータとが並列に接続された回路にバッテリを接続したり遮断する入力遮断リレーをさらに備えており、
コントローラは、車両が衝突したことを示す信号が入力された場合に、バッテリとインバータとの接続を遮断するように入力遮断リレーを制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記入力遮断リレーは、電力無供給時は前記回路とバッテリとの接続を切断し、電力が供給されるとバッテリとインバータを接続するノーマルオープンタイプであることを特徴とする請求項5に記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−110838(P2013−110838A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253545(P2011−253545)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】