説明

電気錠システムの雷サージ対策アダプタ

【課題】電気錠及び制御盤を雷電流から保護する。
【解決手段】雷サージ対策アダプタ1は、サージアブソーバ11の一端11aが電気錠2の錠ケース6に配線接続され、サージアブソーバ11の他端11bが制御盤4のフレームグランドに配線接続される。サージアブソーバ11は、電気錠2の錠ケース6と制御盤4との電圧差が一定レベルを越えたときに放電し、雷電流が電気錠2の錠ケース6から制御盤4のフレームグランドにバイパスされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷電流が建物に流れた際に、電気錠システムを構築する電気錠及びこの電気錠を制御する制御盤を雷電流から保護することができる電気錠システムの雷サージ対策アダプタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばオフィスビルのエントランスや一般住宅の玄関等の扉には、例えば携帯型の無線リモコンキーのキー操作、テンキーのキー操作、さらにはICカードを用いた暗証番号入力などにより電気錠の解錠又は施錠を行う電気錠システムが採用されている。
【0003】
この種の電気錠システムでは、室外から電気錠の解錠又は施錠を行う場合、電気錠と配線接続された室内側の制御盤に例えば無線リモコンキー、テンキー、ICカードなどによって電気錠の解錠又は施錠を指示する情報が入力されると、この入力された情報の正当性、すなわち入力された情報が電気錠の解錠又は施錠を許可する情報か否かを制御盤が判別する。そして、制御盤は、入力された情報が電気錠の施解錠を許可して良い情報と判別すると、モータなどの駆動手段を駆動する。そして、この駆動手段の駆動により、扉枠の係止穴に対してデッドボルトが突出又は引き込まれ、電気錠が解錠制御又は施錠制御される。なお、この種の電気錠システムとしては、例えば下記特許文献1に開示されているものを含め、様々な形式のものが提案されている。
【0004】
ところで、この種の電気錠システムでは、雷電流が建物に流れた場合を想定して、電気錠自体や電気錠が繋がる制御盤の耐圧を向上する方法がとられていた。具体的には、駆動手段としてのモータの駆動軸に樹脂部品などを嵌めて耐圧を稼いでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−97107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電気錠システムにおける電気錠の制御には半導体が多く使用されており、その耐久も向上しているが、雷電流が建物に流れた際の耐圧破壊により半導体が破壊される事象が発生している。
【0007】
実際に雷電流が建物に流れると、電気錠ケースと通電したモータで絶縁破壊が発生し放電する。放電後は、サージ電流となって電気錠の内部回路を通過し、制御盤に流れる。そして、電気錠の内部回路を通過する際に、電気部品(ダイオードやトランジスタ)を破壊する。また、サージ電流が制御盤に流れると、インピーダンスの低い電源回路へ流れ、最終的にフレームグランドに落ちる。
【0008】
ここで、電気錠の中で耐圧の低いモータ部分で絶縁破壊が発生するため、従来はモータの駆動軸に樹脂部品などを嵌めて耐圧を稼いでいる反面、モータ部分での耐久性が低下してしまい、半導体を使用する効果が薄らぐという問題があった。このため、実際に雷に対応できる耐圧を確保するためには、相当大きな絶縁距離と絶縁部材が必要であった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、雷電流が建物に流れた際に、電気錠及び制御盤を雷電流から保護することができる電気錠システムの雷サージ対策アダプタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載された電気錠システムの雷サージ対策アダプタは、扉に設けられた施解錠機構を電気的に駆動して錠前を施解錠する電気錠と、前記錠前を施錠するための施錠指令又は前記錠前を解錠するための解錠指令を前記電気錠に出力する電気錠制御盤とを備えた電気錠システムの雷サージ対策アダプタであって、
一端が金属製の扉付属部品に配線接続され、他端が前記制御盤のフレームグランドに配線接続されるサージ防護用デバイスを備え、
該サージ防護用デバイスは前記電気錠と前記制御盤との電圧差が一定レベルを越えたときに放電することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載された電気錠システムの雷サージ対策アダプタは、請求項1の雷サージ対策アダプタにおいて、
前記扉付属部品が前記電気錠の錠ケースであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、雷電流が建物に流れた際に、サージ電流が電気錠から制御盤のフレームグランドにバイパスされ、電気錠及び制御盤の各々の内部に雷電流が流れることがなく、電気錠及び制御盤を雷電流から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る雷サージ対策アダプタを採用した電気錠システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係る雷サージ対策アダプタの一例を示す外観図である。
【図3】本発明に係る雷サージ対策アダプタの接続部分の構成例を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係る雷サージ対策アダプタを採用した電気錠システムの概略構成を示す図、図2は本発明に係る雷サージ対策アダプタの一例を示す外観図、図3は本発明に係る雷サージ対策アダプタの接続部分の構成例を示す部分拡大図である。
【0015】
本発明に係る雷サージ対策アダプタ(以下、アダプタと略称する)1は、各種建物の扉に装備される電気錠2と、電気錠2とケーブル3を介して配線接続され電気錠2を制御するべく室内側に配設される制御盤4とを備えて構築される従来より周知の電気錠システムに採用されるものである。
【0016】
尚、電気錠システムは、背景技術でも説明したように、例えば無線リモコンキー、テンキー、ICカードなどによって電気錠2の解錠又は施錠を指示する情報が制御盤4に入力され、この入力された情報を制御盤4が正常認証したときに、制御盤4からの通電により電気錠2が解錠制御又は施錠制御されるものである。
【0017】
本発明に係るアダプタ1は、基本的に、電気錠2と制御盤4との間の電位差により雷サージが発生することから、電気錠2側の金属製の扉付属部品5と制御盤4との間に配線接続される。
【0018】
ここで、上記金属製の扉付属部品5とは、電気錠2の錠ケース6を含み、この錠ケース6と電気的導通が図れる扉周りの他の金属製部品(例えば錠ケース6を扉に取り付けるためのフロント取付板、金属製の扉の場合の蝶番など)を意味するものである。
【0019】
図1の例では、金属製の扉付属部品5が錠ケース6であり、アダプタ1は、電気錠2の錠ケース6と制御盤4のフレームグランドFGとの間に取り付けられる。
【0020】
さらに説明すると、アダプタ1は、電気錠2の錠ケース6と制御盤4との電位差が一定レベルを越えたときに放電するサージ防護用デバイス11を備えている。サージ防護用デバイス11は、雷電流が建物に流れたときの過渡的な過大電圧から電気錠2及び制御盤4を保護するサージアブソーバで構成される。
【0021】
この種のサージアブソーバとしては、例えばバリスタ、シリコン・サージ防護素子、ガス避雷管などがあり、電圧ー電流特性、サージ耐量(電流耐量、エネルギー耐量)、応答時間、静電容量、漏洩電流などに応じて最適なものが選択される。
【0022】
サージ防護用デバイス11は、図2に示すように、保護用チューブなどの保護部材12によって保護され、一端11aが電気錠側ケーブル13を介して電気錠2の錠ケース6の外面に取り付けられる。具体的には、電気錠側ケーブル13の先端に設けられた金属端子14が錠ケース6にネジ止めされる。また、金属端子14の取り付けには、錠ケース6を扉に取り付ける際のフロント取付板(金属製の扉付属部品5)のネジ穴を用いることができる。さらに、扉が金属製であれば、錠ケース6のフロント取付板、扉枠、蝶番のそれぞれが導電性を有するので、蝶番(金属製の扉付属部品5)に金属端子14を取り付けることもできる。
【0023】
また、サージ防護用デバイス11の他端11bは、制御盤4のフレームグランドFGに接続される。具体的には、制御盤4のフレームグランドFGに直結されたフレームグランドケーブル15にサージ防護用デバイス11の他端11bが接続される。この他、制御盤4に設けられた断線やケーブルのインピーダンス調整用の予備線をフレームグランドケーブル15としてサージ防護用デバイス11の他端11bに接続することもできる。
【0024】
ところで、アダプタ1として、図3に示すようなクリップタイプのケーブル連結部材(商品名:エレクトロタップ)21を用いる構成としても良い。このケーブル連結部材21には、サージ防護用デバイス11の他端11bに接続される制御盤側ケーブル16と制御盤4側のフレームグランドケーブル15のそれぞれの外形に合った断面半円状の長溝22,22が本体21aの長手方向に並設して形成されている。また、ケーブル連結部材21の本体21aの両側には、それぞれの長溝22,22に対応して断面半円状の長溝23,23が形成されたカバー部24,24が開閉自在に設けられている。さらに、ケーブル連結部材21の本体21aには、2つの長溝22,22間に跨がって金属片からなる導通部材25が取り付けられている。この導通部材25には、各ケーブル15,16の外形よりも小さい径を有するU字状の受溝25a,25aが形成されており、この受溝25a,25aに制御盤側ケーブル16とフレームグランドケーブル15を押し込むことで各ケーブル15,16の被覆を破り、導通部材25を介してケーブル15,16間の電気的導通を図っている。
【0025】
そして、この図3の構成において、制御盤側ケーブル16とフレームグランドケーブル15を連結させる場合には、ケーブル連結部材21の本体21aの長溝22,22に制御盤側ケーブル16とフレームグランドケーブル15を沿わせて配置し、各ケーブル15,16を導通部材25の受溝25a,25aに押し込んでカバー部24,24を閉める。これにより、制御盤側ケーブル16とフレームグランドケーブル15とがケーブル連結部材21に固定して連結され、ケーブル15,16間が導通部材25を介して電気的に導通する。
【0026】
尚、図示はしないが、サージ防護用デバイス11をヒューズタイプで構成し、電気錠側ケーブル13とフレームグランドケーブル15にそれぞれ配線接続される導通用の取付金具にヒューズタイプのサージ防護用デバイス11を脱着可能に取り付ける構成としてもよい。これにより、サージ防護用デバイス11の保護や交換を行なうことができる。
【0027】
このように、本発明によれば、一端が電気錠2側の金属製の扉付属部品5(錠ケース6)に配線接続され、他端が制御盤4のフレームグランドに配線接続されるサージ防護用デバイス11を備えたアダプタ1を用いた構成により、サージ電流が電気錠2の錠ケース6から制御盤4のフレームグランドにバイパスされ、電気錠2及び制御盤4の各々の内部に雷電流が流れることがないので、電気錠2及び制御盤4を雷電流から保護することができる。
【0028】
サージ防護用デバイス11を備えたアダプタ1は、後からでも外付けが可能な構成なので、電気錠システムが既存か新規かを問わず採用することができる。
【0029】
アダプタ1は、金属端子14が電気錠2の錠ケース6の外部に取り付けられるので、電気錠2の大きさに影響されずに装着することができる。また、電気錠2の錠ケース6に限らず電導があればアダプタ1の装着が可能であり、例えば錠ケース6のフロント取付板や蝶番などを利用できるので、アダプタ1の適用範囲が広い。
【0030】
アダプタ1に備えたサージ防護用デバイス11を構成するサージアブソーバは、放電開始電圧にバリエーションがあるので、対象の耐圧が違っても対応可能である。
【0031】
図3の構成を採用したアダプタ1では、ケーブル連結部材21により他のケーブルと電気的接続を取ることができ、接続を容易に行なうことができる。
【0032】
ところで、電気錠システムでは、断線や配線が長くなった場合に備えて制御盤4に予線を引っ張っているので、制御盤4の予線ーアダプタ1ー電気錠2と繋げば、簡易的にサージ対策を行なうことができる。また、サージ防護用デバイス11をヒューズタイプで構成し、ケーブル間に電気的に接続された取付金具に脱着可能な構成とすれば、サージ防護用デバイス11を定期的に交換でき、メンテナンスにも役立てることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 アダプタ(雷サージ対策アダプタ)
2 電気錠
3 ケーブル
4 制御盤
5 扉付属部品
6 錠ケース
11 サージ防護用デバイス
12 保護部材
13 電気錠側ケーブル
14 金属端子
15 フレームグランドケーブル
16 制御盤側ケーブル
21 ケーブル連結部材
22,23 長溝
24 カバー部
25 導通部材
FG フレームグランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉に設けられた施解錠機構を電気的に駆動して錠前を施解錠する電気錠と、前記錠前を施錠するための施錠指令又は前記錠前を解錠するための解錠指令を前記電気錠に出力する電気錠制御盤とを備えた電気錠システムの雷サージ対策アダプタであって、
一端が金属製の扉付属部品に配線接続され、他端が前記制御盤のフレームグランドに配線接続されるサージ防護用デバイスを備え、
該サージ防護用デバイスは前記電気錠と前記制御盤との電圧差が一定レベルを越えたときに放電することを特徴とする電気錠システムの雷サージ対策アダプタ。
【請求項2】
前記扉付属部品が前記電気錠の錠ケースであることを特徴とする請求項1記載の電気錠システムの雷サージ対策アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−275836(P2010−275836A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132210(P2009−132210)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】