電池パック及びその製造方法
【課題】寸法精度及び機械的強度がいずれも高いうえに小型軽量化をも実現した電池パックを提供する。
【解決手段】正極11と負極12とセパレータ12a,13bから成る電池素子10を包装体17で包装した電池20と、電池20の保護回路基板2と、電池20及び保護回路基板2を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで電池20の端子を外部に導出した状態にして電池20及び保護回路基板2を一体的に被覆する外装材3を備えた電池パック1であって、前記外装材3が、電池20及び保護回路基板2を部分的に被覆する一次外装部3Aと、電池20及び保護回路基板2を部分的に被覆する少なくとも一つの二次外装部3Bを備えて、全外装部3A,3Bを一体化したことにより、寸法精度及び機械的強度がいずれも高いうえに小型軽量化をも実現した。
【解決手段】正極11と負極12とセパレータ12a,13bから成る電池素子10を包装体17で包装した電池20と、電池20の保護回路基板2と、電池20及び保護回路基板2を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで電池20の端子を外部に導出した状態にして電池20及び保護回路基板2を一体的に被覆する外装材3を備えた電池パック1であって、前記外装材3が、電池20及び保護回路基板2を部分的に被覆する一次外装部3Aと、電池20及び保護回路基板2を部分的に被覆する少なくとも一つの二次外装部3Bを備えて、全外装部3A,3Bを一体化したことにより、寸法精度及び機械的強度がいずれも高いうえに小型軽量化をも実現した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば非水電解質二次電池を含む電池パック及びその製造方法に関し、詳しくは、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子をラミネートフィルム等の包装体で包装した電池とその保護回路基板を一体化した電池パック及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型ビデオテープレコーダ、携帯電話及び携帯用コンピュータ等のポータブル電子機器が数多く登場し、その小型、軽量化が図られている。かかる電子機器の小型、軽量化に伴って、これらのポータブル電源として用いられる電池パックに対しても、高エネルギーを有し、小型、軽量化されることが求められている。このような電池パックに用いられる電池としては、高容量を有するリチウムイオン二次電池がある。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンをドープ・脱ドープすることができる正極及び負極を有する電池素子を備え、この電池素子を金属缶や金属ラミネートフィルムに封入すると共に、電池素子と電気的に接続した回路基板によって制御するようになっている。また、従来のリチウムイオン二次電池には、上下に二分割された収納ケースに回路基板とともに収納して電池パックを構成したものがある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3556875号
【特許文献2】特許第3614767号
【特許文献3】特許第3643792号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したような従来のリチウムイオン二次電池において、電池素子の封入に金属缶を用いたものでは、高い寸法精度を確保しやすいものの、厚みや重量が若干大きくなる。他方、電池素子の封入に金属ラミネートフィルムを用いたものでは、金属缶に比べて薄型で軽量になるが、電池素子の寸法のばらつきが大きいために寸法精度を高めることが難しいと共に、機械的強度が低いという欠点があった。
【0006】
また、従来の電池パックにおいて、リチウムイオン二次電池と回路基板を収納ケースに収納したものにあっては、リチウムイオン二次電池や回路基板を外部衝撃等から保護するために、収納ケースに充分な肉厚が必要となり、さらに、上下に分割した収納ケースを両面テープや超音波溶着で接合するに際しても、これらに対応し得るように収納ケースに充分な肉厚を確保しておく必要があることから、電池パック全体の厚みや重量が増大することとなり、ポータブル電源として好ましくないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたものであって、寸法精度及び機械的強度がいずれも高いうえに小型軽量化をも実現した電池パック及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電池パックは、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えた電池パックであって、前記外装材が、前記電池及び保護回路基板を部分的に被覆する一次外装部と、前記電池及び保護回路基板を部分的に被覆する少なくとも一つの二次外装部を備えて、全外装部を一体化して成る構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0009】
また、本発明の電池パックの製造方法は、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えた電池パックを製造するに際し、前記外装材の一部として前記電池及び保護回路基板の位置決め部を有する一次外装部を形成し、前記一次外装部の位置決め部に前記電池及び保護回路基板を配置した後、前記一次外装部、電池及び保護回路基板に対して、前記外装材の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部を形成することで、全外装部を一体化して前記外装材を形成することを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明の電池パックの製造方法は、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えた電池パックを製造するに際し、前記電池及び保護回路基板の位置決め部を有する成形型を用い、前記成形型に電池及び保護回路基板を配置し、前記電池及び保護回路基板に対して外装材の一部である一次外装部を形成し、次いで、前記一次外装部、電池及び保護回路基板に対して、前記外装材の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部を形成することで、全外装部を一体化して前記外装材を形成することを特徴としている。
【0011】
ここで、前記外装材として、とくに粘度の高い外装材を成形型の成形空間に充填するには、成形空間内に隙間が生じないように、外装材にある程度の圧力を加えて充填する。このとき、加圧充填する外装材によって電池及び保護回路基板が成形空間内における所定位置から移動しないようにする必要があり、例えば、成形型に位置決め用の突起を設けるなどの対策が考えられたが、この場合には、外装材の硬化後において位置決め用突起による凹部が意匠性を損ねたり、利用者の使用しにくい形状となるなどの障害があった。
【0012】
本発明では、成形型の成形空間内に外装材を充填するにあたって、電池及び保護回路基板を精度良く所定位置に位置決めすることができるので、電池の全面に対して、精度良くほぼ設計値どおりに強固な外装材の層が形成されることとなる。
【0013】
また、外装材の充填量を増減させることで、電池素子を包装体で包装した電池の製造において避けられない寸法のばらつきを、電池の全面で吸収し得ることから、非常に寸法精度の高い電池パックを安定して供給することが可能となる。
【0014】
さらに、当該製造方法では、外装材を複数の外装部に分けて形成する際に、前記電池及び保護回路基板を収容可能な外装を成形する工程を経ることで、熱可塑性樹脂を用いた従来のモールドパック等で必要だった位置決め治具が不要となる。また、複数回成形を行っても成形型の一部には同一型を用いることができるので成形型代を削減すると共に、最後の成形工程を除いて下型からの離型が不要であるため、生産時間の短縮と搬送がし易いという利点がある。
【0015】
さらに、当該製造方法では、外装材を複数の外装部に分けて形成するので、外装材の表面に各外装部の継ぎ目であるウエルドラインが形成されるが、製品としては、従来の熱可塑性樹脂を予め二つに分けて成形した後に電池素子を封入して超音波溶接したモールド樹脂と同等以上の外観を持つために、外装材の表面にシールを貼るのみならず、直接レーザー等で印字をしたりすることも可能であって、電池パックの意匠性が損なわれることがないうえに、高容量化や低コスト化を実現し得ることとなる。
【0016】
そしてさらに、本発明においては、前記電池及び保護回路基板を外装材で一体的に被覆するようにしているので、従来必要としていたハードカバーが廃止され、機械的強度の向上に加えて、さらなる小型軽量化をも実現し得ることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電池パック及びその製造方法によれば、上記の構成を採用したことにより、寸法精度及び機械的強度がいずれも高いうえに小型軽量化をも実現した電池パックを提供することができると共に、その電池パックを生産性よく提供することができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電池パックの一実施形態を説明する側部断面図(a)及び平面断面図(b)である。
【図2】外装材で被覆する前の電池を説明する分解斜視図である
【図3】電池素子を説明する斜視図である。
【図4】電池のサイド封止部を折り曲げる要領を示す端面説明図(a)(b)である。
【図5】電池パックの製造方法の第1実施形態を説明する各々断面図(a)〜(d)である。
【図6】電池パックの製造方法の第2実施形態を説明する各々断面図(a)〜(d)である。
【図7】電池パックの製造方法の第3実施形態を説明する各々断面図(a)〜(f)である。
【図8】図7に続いて電池パックの製造方法の第3実施形態を説明する各々断面図(a)〜(c)である。
【図9】第3実施形態により製造した電池パックを示す説明図である。
【図10】位置決め部品の一例を示す斜視図(a)及び各断面図(b)(c)である。
【図11】位置決め部品の他の例を示す説明図である。
【図12】位置決め部品のさらに他の例を示す側部断面図(a)及び正面断面図(b)である。
【図13】位置決め部品のさらに他の例を示す側部断面図(a)及び正面断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の電池パック及びその製造方法について詳細に説明する。なお、本明細書において、濃度、含有量及び充填量などについての「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0020】
<電池パックの一実施形態 >
本発明の電池パックは、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えている。そして、電池パックは、前記外装材が、前記電池及び保護回路基板を部分的に被覆する一次外装部と、前記電池及び保護回路基板を部分的に被覆する少なくとも一つの二次外装部を備えて、全外装部を一体化したものとなっている。
【0021】
すなわち、図1に示す電池パック1は、図2及び図3に示す如く正極11と負極12とをセパレータ13a,13bを介して巻回又は積層して成る電池素子10を包装体であるラミネートフィルム17で包装したポリマー型の非水電解質二次電池20と、この電池20の保護回路基板2を外装材3で一体的に被覆したものである。
【0022】
このとき、外装材3は、後に詳述するが、電池20及び保護回路基板2の片側を被覆する一次外装3A片と、電池20及び保護回路基板2の残る片側を被覆する二次外装部3Bを備え、両外装部3A,3Bを一体化したものである。両外装部3A,3Bの継ぎ目(界面)がウエルドラインWLとなる。そして、外装材3は、電池20の端子15a,15bを外部に導出状態にして電池20及び保護回路基板2を一体的に被覆している。また、図示の電池パック1は、平板状を成しており、図1中で左側のトップ側とその反対側のボトム側には、保護回路基板2や電池20を保護するための緩衝材4,5が埋設してある。
【0023】
電池20は、図2に示すように、包装体であるラミネートフィルム17に形成した矩形板状の凹部17aに電池素子10を収容して、その周辺部(折曲部を除く三辺)を熱溶着・封止するようになっており、その後は、図4に示すように、電池素子10を収容した凹部17aの両側のサイド部17bを凹部17aの方向に向けて折り曲げる。
【0024】
電池素子10は、図3に示すように、帯状の正極11と、セパレータ13aと、正極11と対向して配置された帯状の負極12と、セパレータ13bとを順に積層して、長手方向に巻回して成っており、正極11及び負極12の両面にはゲル状電解質14が塗布してある。
【0025】
この電池素子10からは、正極11と接続する正極端子15a及び負極12と接続する負極端子15bが導出させてあり(以下、特定の端子を指定しない場合は電極端子15と称する)、正極端子15a及び負極端子15bには、後にこれらを包装するラミネートフィルム17との接着性を向上させるために、無水マレイン酸変性されたポリプロピレン(PPa)等の樹脂片であるシーラント16a及び16b(以下、特定のシーラントを指定しない場合はシーラント16と適宜称する)が被覆してある。
【0026】
以下、上述の電池素子10及び電池20の構成要素について詳細に説明する。
[正極]
正極11は、正極活物質を含有する正極活物質層を正極集電体の両面状に形成して成るものである。正極集電体は、例えばアルミニウム(Al)箔などの金属箔により構成され、一方、正極活物質層は、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成される。ここで、正極活物質、導電剤、結着剤及び溶剤は、均一に分散していればよく、その混合比は不問である。
【0027】
正極活物質としては、目的とする電池の種類に応じて、金属酸化物、金属硫化物又は特定の高分子を用いることができる。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合、主として、次式(1)
LiXMO2…(1)
(式中のMは少なくとも一種の遷移金属を示し、Xは電池の充放電状態によって異なるが、通常は0.05〜1.10である)で表されるリチウムと遷移金属との複合酸化物を用いることができる。なお、リチウム複合酸化物を構成する遷移金属(M)としては、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)等を用いることができる。
【0028】
このようなリチウム複合酸化物として、具体的には、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4及びLiNiyCo1−yO2(0<y<1)等がある。また、遷移金属元素の一部を他の元素に置換した固溶体も使用可能であり、LiNi0.5Co0.5O2やLiNi0.8Co0.2O2等をその例として挙げることができる。これらのリチウム複合酸化物は、高電圧を発生でき、エネルギー密度が優れたものである。さらに、正極活物質としてTiS2、MoS2、NbSe2及びV2O5等のリチウムを有しない金属硫化物又は酸化物を使用してもよい。これらの正極活物質は、単独で又は複数種を混合して用いてもよい。
【0029】
また、導電剤としては、例えば、カーボンブラックやグラファイトなどの炭素材料等を用いることができる。さらに、結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリビニリデンフルオライド等を用いることができる。また、溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)等を用いることができる。
【0030】
上述の正極活物質、結着剤及び導電剤を均一に混合して正極合剤とし、この正極合剤を溶剤中に分散させてスラリー状にする。次いで、このスラリーをドクターブレード法などにより正極集電体上に均一に塗布した後、高温で乾燥させて溶剤を蒸発させ、プレスすることにより正極活物質層を形成する。
【0031】
正極11は、正極集電体の一端部にスポット溶接又は超音波溶接で接続した正極端子15aを有している。この正極端子15aは金属箔や網目状のものが望ましいが、電気化学的及び化学的に安定であり、通電がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。正極端子15aの材料としては、例えばアルミニウム等がある。
【0032】
[負極]
負極12は、負極活物質を含有する負極活物質層を負極集電体の両面上に形成して成るものである。負極集電体は、例えば銅(Cu)箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
【0033】
負極活物質層は、例えば、負極活物質と、必要に応じて導電剤と、結着剤とを含有して構成される。なお、負極活物質、導電剤、結着剤及び溶剤については、正極活物質と同様に、その混合比は不問である。
【0034】
負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金又はリチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料又は金属系材料と炭素系材料との複合材料を用いることができる。具体的にリチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料としては、グラファイト、難黒鉛化炭素及び易黒鉛化炭素等がある。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス)、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、及び活性炭等の炭素材料を使用することができる。さらに、リチウムをドープ・脱ドープできる材料としては、ポリアセチレン、ポリピロール等の高分子やSnO2等の酸化物を使用することができる。
【0035】
また、リチウムを合金化可能な材料としては、多様な種類の金属等が使用可能であるが、スズ(Sn)、コバルト(Co)、インジウム(In)、アルミニウム、ケイ素(Si)及びこれらの合金がよく用いられる。金属リチウムを使用する場合は、必ずしも粉体を結着剤で塗布膜にする必要はなく、圧延したリチウム金属箔を集電体に圧着しても構わない。
【0036】
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンやスチレンブタジエンゴム等を用いることができる。また、溶剤としては、例えばN−メチルピロリドンやメチルエチルケトン等を用いることができる。
【0037】
上述の負極活物質、結着剤、導電剤を均一に混合して負極合剤とし、溶剤中に分散させてスラリー状にする。次いで、正極11と同様の方法により負極集電体上に均一に塗布した後、高温で乾燥させて溶剤を飛散させ、プレスすることにより負極活物質層を形成する。
【0038】
負極12も正極11と同様に、集電体の一端部にスポット溶接又は超音波溶接で接続した負極端子15bを有しており、この負極端子15bは電気化学的及び化学的に安定であり、通電がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。負極端子15bの材料としては、例えば銅、ニッケル等がある。
【0039】
なお、正極端子15a及び負極端子15bは、上述したように、電池素子10が矩形板状を成す場合には、その一辺(通常は短辺の1つ)から同じ方向に導出させることが好ましいが、短絡等が起こらず電池性能にも問題がなければ、いずれの方向から導出させても問題はない。また、正極端子15a及び15bの接続箇所は、電気的接触がとれているのであれば、取り付ける場所や取り付ける方法は前記の例に限定されない。
【0040】
[電解液]
電解液としては、リチウムイオン電池に一般的に使用される電解質塩と非水溶媒が使用可能である。
【0041】
非水溶媒としては、具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネート、又はこれらの炭酸エステル類の水素をハロゲンに置換した溶媒等がある。これらの溶媒は一種類を単独で用いてもよいし、複数種を所定の組成で混合して用いてもよい。
【0042】
また、電解質塩の一例であるリチウム塩としては、通常の電池電解液に用いられる材料を使用することが可能である。具体的には、LiCl、LiBr、LiI、LiClO3、LiClO4,LiBF4、LiPF6、LiNO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiAlCl4及びLiSiF6等を挙げることができるが、酸化安定性の点からはLiPF6、LiBF4が望ましい。これらリチウム塩は単独で用いても複数種を混合して用いてもよい。リチウム塩を溶解する濃度は、非水溶媒に溶解することができる濃度であれば問題はないが、リチウムイオン濃度が非水溶媒に対して0.4mol/kg〜2.0mol/kgの範囲であることが好ましい。
【0043】
ゲル状電解質を用いる場合は、上述の電解液をマトリクスポリマでゲル化して用いる。マトリクスポリマは、非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液に相溶可能であり、ゲル化できるものであればよい。このようなマトリクスポリマとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、及びポリメタクリロニトリルを繰り返し単位に含むポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0044】
その中でも特に好ましいのは、マトリクスポリマとして、ポリフッ化ビニリデン又はポリフッ化ビニリデンにヘキサフルオロプロピレンが7.5%以下の割合で導入された共重合体である。かかるポリマーは、通常、数平均分子量が5.0×105〜7.0×105(50万〜70万)の範囲であるか、又は、重量平均分子量が2.1×105〜3.1×105(21万〜31万)の範囲にあり、固有粘度が1.7〜2.1dl/gの範囲にある。
【0045】
[セパレータ]
セパレータ13a,13bは、例えば、ポリプロピレン(PP)若しくはポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系の材料から成る多孔質膜、又は、セラミック製の不織布などの無機材料から成る多孔質膜により構成され、これらの二種以上の多孔質膜を積層した構造としてもよい。中でも、ポリエチレンやポリプロピレンの多孔質フィルムが最も有
効である。
【0046】
一般的に、セパレータ13a,13bの厚みとしては5〜50μmが好適に使用可能であるが、7〜30μmがより好ましい。セパレータ13a,13bは、厚すぎると活物質の充填量が低下して電池容量が低下するとともに、イオン伝導性が低下して電流特性が低下する。逆に薄すぎると、膜の機械的強度が低下する。
【0047】
[電池の作製]
上述のようにして作製したゲル状電解質溶液を正極11及び負極12に均一に塗布し、正極活物質層及び負極活物質層に含浸させた後、常温で保存するか、若しくは乾燥工程を経てゲル状電解質層14を形成する。
【0048】
次いで、ゲル状電解質層14を形成した正極11及び負極12を用い、正極11、セパレータ13a、負極12、セパレータ13bの順に積層した後巻回して電池素子10を形成し、続いて、この電池素子10をラミネートフィルム17の凹部17aに収容して外装し、ゲル状非水電解質二次電池を得る。
【0049】
なお、包装体であるラミネートフィルム17としては、従来公知の金属ラミネートフィルム、例えば、アルミニウムラミネートフィルムを用いることができる。アルミニウムラミネートフィルムとしては、絞り加工に適し、電池素子10を収容する凹部17aを形成するのに適したものがよい。
【0050】
通常、アルミニウムラミネートフィルムは、アルミニウム層の両面に接着層と表面保護層が配設された積層構造を有するもので、内側、即ち電池素子10の表面側から順に、接着層としてのポリプロピレン層(PP層)、金属層としてのアルミニウム層及び表面保護層としてのナイロン層又はポリエチレンテレフタレート層(PET層)が配設される。
【0051】
また、包装体であるラミネートフィルム17としては、アルミニウムラミネートフィルムのほかに、一層又は二層のフィルムであり且つポリオレフィンフィルムを含むものとすることができる。
【0052】
そして、本実施形態では、図2〜図4に示すように、上述のラミネートフィルム17で電池素子10を包装し、電池素子10の周囲を溶着・封止して電池20とする。
【0053】
前記外装材3の樹脂としては、熱硬化樹脂を用いることが好ましいが、生産性、位置決めの精度及び生産タクトの改善のために、一部に、熱可塑性樹脂、硬化済みの硬化性樹脂又は金属板や金属部品を用いてもよい。
【0054】
熱可塑性樹脂としては、従来公知の樹脂を用いることができるが、とくに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド及びポリカーボネートを用いることが好ましく、熱硬化樹脂との接着性及び難燃性や機械的強度の観点からポリアミドやポリカーボネートを用いるのがより好ましい。
【0055】
硬化性樹脂の場合も、従来公知の樹脂を用いることができるが、同様に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂を用いることが好ましく、成形型に充填する樹脂すなわち外装材の主成分である樹脂と同じ樹脂を用いれば、原材料コストの低減、生産設備の共有化、及び接着等の強度という観点でより好ましい。
【0056】
金属部品には、アルミニウム、銅、ステンレス、鉄及びニッケルなどの各種金属を用いることができるが、強度及び成形性の観点から、アルミニウムやステンレスを用いることが好ましい。金属部品は、導電性を有するので、タブや基板等との間の絶縁性を確保するためにテープ等で被覆することが好ましい。また、薄型の金属部品は、生産プロセス中で別部品を傷つけるような事態を防ぐために、エッジ加工などの処理が有効である。
【0057】
さらに、外装材3は、形状維持ポリマーと、金属酸化物や金属窒化物などのフィラーを含む複合材料とすることができる。このとき、外装材3を構成する形状維持ポリマーとしては、金属酸化物や金属窒化物などのフィラーと親和性、相溶性ないしは反応性を有し、且つ、高い寸法精度及び強度をもつ構成樹脂とするものが好ましく、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂のうちのいずれかの硬化性樹脂であることが好ましい。
【0058】
硬化性樹脂では、熱可塑性樹脂に比べて、流れ込みの硬化時間を数十秒取ることができるのでこれまでの数百μmの厚みにくらべ百μm程度から数十μmや数μmの厚みの外装材3を形成することが可能であるが、あまり硬化時間が長いとタクトタイムが長くなり、装置の占有時間が長くなって生産性に劣ることとなる。 そこで、硬化時間は、電池20が耐えられる温度で高めに保持することが好ましい。この際の温度は、好ましくは30℃以上100℃以下であり、より好ましくは50℃以上90℃以下である。
【0059】
外装材3を構成する形状維持ポリマーは、機械的強度が必要であるが、表面硬さと落下時の耐衝撃性は両立しない。高分子のような物質は、個々の分子が長いこともあって、一見単純な固体に見える状態でも、結晶性の部分と非結晶の部分が混在している。
【0060】
非結晶の部分は、ミクロブラウン運動により、ミクロ的に見ると、分子が部分的な運動を行うことができるので、分子鎖がある程度変形したり移動したりすることが可能であって、曲げたり伸ばしたりすることができる。しかし、温度が下がると、分子鎖の部分的な運動性が失われてガラス状態となり、柔軟性が無くなり、硬い状態を保つことができる。
【0061】
よって、単純に硬さを追求すると、結晶性が高く、非結晶な部分もある程度高温でないと、分子鎖の自由な運動が阻害されるので簡単に割れてしまう。一方で、柔軟性を求めると、非結晶の部分が多く、大多数の分子鎖は常温付近でも自由に運動できるほど架橋されていないため、耐衝撃性には優れるものの機械的強度には劣ることとなる。
【0062】
このため、外装材3として使用する形状維持ポリマーは、剛性を保つためにある程度分子鎖が長くて、結晶性が高いことが好ましいが、落下時の衝撃にも耐え得る柔軟性を発現させるためには、あまりに架橋点が多いと簡単に割れてしまう虞がある。
【0063】
そこで、硬化剤としては、柔軟性に寄与する高分子鎖を長鎖にする架橋点が二つの硬化剤と、架橋点を多くして硬さと高いガラス転移点の実現に寄与する架橋点が三つ以上の硬化剤を併用することが好ましい。
【0064】
外装材3について、プラスチック−曲げ特性の試験方法(JIS−K7171)から求められる曲げ強度及び曲げ弾性率を試験したところ、曲げ強度は、10MPa以上120MPa以下が好ましく、さらに好ましくは70MPa以上100MPa以下であった。また、曲げ弾性率は、30MPa以上3000MPa以下が好ましく、さらに好ましくは1000MPa以上2500MPa以下であった。
【0065】
さらに、外装材3は、耐突き刺し性の指標ともなるJIS−K7215 プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法によれば、表面硬度は、好ましくはD30−D99の範囲が良く、さらに好ましくはD60−D85の範囲が良い。
【0066】
ガラス転移点は、ラミネートフィルムなどの包装体の圧力開放部及び外装体として強度に劣るように設定された圧力開放部が機能的に働くために、定常温度以上で且つ熱暴走温度以下であることが好ましく、さらに好ましくは45℃以上120℃以下の範囲であり、さらに好ましくは60℃以上110℃以下である。
【0067】
さらに、外装材3を構成する金属酸化物及び窒化物フィラーとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)及びマグネシウム(Mg)の酸化物、又はこれら酸化物及び窒化物の任意の混合物を挙げることができる。このような金属酸化物及び窒化物フィラーは、外装材3の硬さ及び放熱性を向上する機能を果たし、形状維持ポリマーと接触した状態で配置され、例えば、形状維持ポリマーに混入してもよく、この場合、形状維持ポリマーの全体に亘って均一に散在していることが好ましい。
【0068】
金属酸化物及び窒化物フィラーの混入量は、形状維持ポリマーのポリマー種などに応じて適宜変更することができるが、形状維持ポリマーの質量に対する混入量が0.1%未満の場合には、脱水剤として働く金属酸化物及び窒化物フィラーの量が不十分で安定した生産が困難になり樹脂特性に季節変動が起こることがあり、一方、混入量が60%を超える場合には、製造時の成形性やセラミックの脆性による問題が発生することがある。そこで、金属酸化物及び窒化物フィラーの混入量は、形状維持ポリマーの質量に対して0.1〜60%程度とすることが好ましい。
【0069】
また、金属酸化物及び窒化物フィラーの平均粒径を小さくすると、硬度が上がるものの、成形時の充填性に影響して生産性に不具合を来たす虞があり、逆に、金属酸化物及び窒化物フィラーの平均粒径を大きくすると、目的の強度が得難くなって、電池パック1としての寸法精度を十分に確保することができない可能性がある。そこで、金属酸化物及び窒化物フィラーの平均粒径は、0.5〜40μmとすることが好ましく、2〜20μmとすることがより好ましい。
【0070】
さらに、金属酸化物及び窒化物フィラーの形状としては、球状や鱗片状や板状や針状など様々な形状を採用することができる。特に限定されるものではないが、球状のものは、作製し易く平均粒径の揃ったものを安価に得られるので好ましく、針状でアスペクト比の大きいものは、フィラーとして強度を高め易いので好ましい。また、鱗片状のものは、フィラーの含有量を増したときに充填性を高め得る点で好ましい。なお、用途や材質に応じて、平均粒径の異なるフィラーを混合して用いたり、形状の異なるフィラーを混合して用いたりすることが可能である。
【0071】
上述のように、本発明の電池パック1における外装材3は、形状維持ポリマー及び所定の金属酸化物及び窒化物フィラーを有する以外に、各種添加剤を含有することが可能であり、例えば、形状維持ポリマー中に、紫外線吸収剤や、光安定剤や、硬化剤又はこれらの任意の混合物を添加して、金属酸化物及び窒化物フィラーと共存させることができる。
【0072】
外装材3は、その厚みが薄く、例えば、形状維持ポリマーの層の厚みが1000μm以下である。形状維持ポリマーの層の厚みが1000μmを超えると、この外装材3を用いて製造した電池パック1であったとしても、体積エネルギー密度の点でメリットを発揮し難いことがある。さらに好ましくは形状維持ポリマーの層の厚みが300μm以下であり、必要な機械的強度及び耐衝撃性を満たせるのであれば薄いほどよい。
【0073】
このように、外装材3は、従来より薄く、そして、高強度な電池パック1を実現し得るものであると共に、電池パック1の小型化及び軽量化をも実現し得るものである。また、上述のような金属酸化物及び窒化物フィラーとともに紫外線吸収材、光安定剤及び硬化剤のいずれかを用い、且つ、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂のうちのいずれかの硬化性樹脂を用いることにより、金属板よりも薄く、生産性に優れた加工を施すことができるため、得られる電池のエネルギ密度が向上するだけでなく、電池パック1の形成が容易であり、寸法精度が高くなって歩留まりが向上し、加えて、多種多様な用途に応じたサイズや形状や強度の設計の自由度が拡がることとなる。
【0074】
次に、上記構成を備えた電池パック1の製造方法の実施形態について説明する。
【0075】
<電池パックの製造方法の第1実施形態>
本発明の電池パック1の製造方法では、図5(a)に示すように、前記外装材3の一部として前記電池20及び保護回路基板2の位置決め部P1,P2を有する一次外装部3Aを形成する。
【0076】
この工程では、上下一対の分割型51A,51Bを備えた一次成形型51を使用し、主剤M1及び硬化剤M2を用いたRIM成形(反応射出成形)により一次外装部3Aを形成する。一次成形型51は、分割型51A,51Bのほか、主剤M1及び硬化剤M2の射出機IJ及びゲートGや、端子部分を形成するスライドコア51C等を有している。図示例の一次外装部3Aは、電池20及び保護回路基板2の片側を被覆するもので、凹状の位置決め部P1,P2を有している。
【0077】
次に、当該製造方法では、図5(b)に示すように、前記一次外装部3Aの位置決め部に前記電池20及び保護回路基板2を配置する。そして、図5(c)に示すように、一次外装部3A、電池20及び保護回路基板2に対して、前記外装材3の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部3Bを形成する。
【0078】
この工程では、一次成形型51において外装材外側を形成する分割型(下型)51Bと、この分割型51Bとの間でキャビティを形成する他方の分割型52Aとを備えた二次成形型52を使用する。そして、同じくRIM成形により二次外装部3Bを形成する。図示例の二次外装部3Bは、電池20及び保護回路基板2の残る片側を被覆するものであって、一次外装部3Aと一体化して前記外装材3を形成する。
【0079】
これにより、電池20及び保護回路基板2を外装材3で被覆して成る電池パック1が得られる。その後は、図5(d)に示すように、二次成形型52を開くと共に、ゲートGを切除し、例えばバキュームカップVCにより電池パック1を離型させる。
【0080】
ここで、当該製造方法では、より好ましい実施形態として、外装部3A,3B同士の界面に、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プライマー処理、接着剤処理及び溶剤処理のうちの少なくとも1つの処理を行うことで、両外装材3A、3Bを一体化して外装材3を形成する。これにより、界面のぬれ性を改質することができる。とくに、コロナ放電処理では、0.1秒から0.5秒程度で効果を発揮するので、生産性を高めることができる。
【0081】
また、当該製造方法は、界面の接着強度を高めるために、接着剤又はプライマーを用いることが好ましい。上記接着剤又はプライマーとしては、例えば、アクリル樹脂エマルション接着剤、ウレタン樹脂エマルション接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤、エポキシ樹脂エマルション接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤、水性高分子−イソシアネート系接着剤、スチレン−ブタジエンゴム系ラテックス接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤及びポリビニルアルコール系接着剤などを用いることができ、所望の接着強度や良好な取り回し性を実現することができる。
【0082】
さらに、上記の上記接着剤又はプライマーは、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、シリコーン系、スチレン・ブタジエンゴム系及びポリスチレン樹脂系の中から選択したものを用いることができ、また、α−オレフィン系接着剤、エーテル系セルロ−ス、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、シリコーン系、スチレン・ブタジエンゴム系及びポリスチレン樹脂系を用いれば、所望の接着強度や良好な取り回し性が得られる。
【0083】
さらに、中でも、アクリル樹脂系プライマー、エポキシ樹脂系プライマー、変性シリコーン系プライマー、及び一液系のウレタン系プライマーは、とくに好ましく、塗布だけでなくガス状にして噴霧することで所望の接着強度が得られ、生産性向上と性能向上の両立を実現することができる。
【0084】
さらに、当該製造方法では、より好ましい実施形態として、前記一次外装部3Aにおける二次外装部3との界面を粗面化することができる。このような界面は、同界面を形成する分割型の一面を粗面化しておくことで形成することができる。このように界面を粗面化すれば、界面同士の接触面積が増大すると共に、微小な凹凸によるいわゆるフック効果で界面同士が噛み合う状態となり、接着強度をより一層高めることができる。
【0085】
上記の電池パックの製造方法によれば、寸法精度及び機械的強度がいずれも高いうえに小型軽量化をも実現した電池パックを生産性よく提供することができる。また、当該製造方法では、上述したように、少なくとも一対の分割型51A,51Bを備えた一次成形型51を用いて一次外装部3Aを形成し、一次成形型51の一方の分割型51Bとこれに対応する他方の分割型52Aを備えた二次成形型52を用いて二次外装部3Bを形成する。これにより、一次外装部3Aの同一面に一つの離型痕が形成されて、電池パックの外観体裁が良好になるうえに、一部の分割型51Bを兼用することで設備の簡略化を実現し、設備費や製造コストのさらなる低減を図ることができる。
【0086】
なお、当該製造方法では、外装材3を少なくとも2回の工程で形成することで数百μmから1mm近くの寸法誤差を持つ不定形の電池素子を確実に位置決めすることが可能となる。外装材用の樹脂の吐出条件は、吐出機による充填(注型)とポッティング(樹脂盛り)のいずれも選択することができる。吐出機による充填は、吐出条件が安定する点で好ましい。ポッティングは、ゲート痕が残らず、ゲートカットの処理も不要である点、接着性の樹脂を用いることで接着テープを必要としない点、吐出機を占有しない点、及び成形型の占有時間を短く取れる点で好ましい。
【0087】
また、いずれの条件であっても、複数回成形した場合には、電池20及び保護回路基板2を外装材3で被覆した後、機械研磨や超ミクロトーム等で断面出しをしてその断面観察すれば、複数回成形時の界面の存在を確認することで、簡単に成形回数を判断することが可能である。すなわち、当該製造方法により得た電池パックを特定することができる。
【0088】
<電池パックの製造方法の第2実施形態>
この実施形態における電池パック1の製造方法では、図6(a)に示すように、凹状の位置決め部P1,P2を有する一次成形型61を用い、まず、一次成形型61の位置決め部P1,P2に電池20及び保護回路基板2を夫々配置する。
【0089】
一次成形型61は、図6(b)に示すように、位置決め部P1,P2を有する一方の分割型61Aと、これに対応する他方の分割型61Bを備えている。また、一方の分割型61Aは、各位置決め部P1,P2から型外に連通する通し孔H1,H2を有しており、電池20及び保護回路基板2をセットした後、各通し孔H1,H2を外部から吸引することにより、その負圧で電池20及び保護回路基板2を固定する。
【0090】
当該製造方法では、図6(a)に示す如く一方の分割型61Aに電池20及び保護回路基板2をセットした後、図6(b)に示すように、吸引を行いつつ一次成形型61を閉じてキャビティに樹脂を供給し、電池20及び保護回路基板2に対して外装材3の一部である一次外装部3Aを形成する。図示例の一次外装部3Aは、先の第1実施形態と同様に、電池20及び保護回路基板2の片側を被覆する。
【0091】
その後、当該製造方法では、図6(c)(d)に示すように、一次外装部3A、電池20及び保護回路基板2に対して、前記外装材3の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部3Bを形成する。図示例の二次外装部3Bは、電池20及び保護回路基板2の残る片側を被覆する。これにより、全外装部3A,3Bを一体化して前記外装材3を形成し、電池20及び保護回路基板2を外装材3で被覆した電池パック1を得る。
【0092】
この工程では、一次成形型61において一次外装部3Aの外側を形成する他方の分割型61Bを二次成形型62に兼用する。すなわち、図6(c)に示すように、二次成形型62は、一次成形型61の他方の分割型61Bを上下逆にし、同分割型61B及びこれに対応する分割型62Aで構成される。これにより、第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0093】
<電池パックの製造方法の第3実施形態>
この実施形態における電池パック1の製造方法では、図7(a)に示すように、凹状の成形空間を有する下型71に、主剤M1及び硬化剤M2を供給する。下型71は、複数の分割型71A〜71Cで構成してある。次に、図7(b)に示すように、下型71とこれに対応する上型72を閉じることで、図7(c)に示すように、外装材3の一部である一次外装部3Aを形成する。図示例の一次外装部3Aは、電池20の片側を被覆する。
【0094】
その後、当該製造方法では、一次外装部3Aに対して電池20及び保護回路基板2を配置した後、外装材3の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部を形成する。この実施形態では、複数の二次外装部を形成する。
【0095】
すなわち、この実施形態では、図7(d)に示すように、電池20及び保護回路基板2をセットし、さらに、固定具73で電池20を抑えてから、図7(e)に示すように、保護回路基板2側から樹脂を供給して第1の二次外装部3B1を形成する。その後は、図7(f)に示すように、ゲートを有するプレート74で下型71を閉塞し、その内部に樹脂を供給して、図8(a)に示すように第2の二次外装部3B2を形成する。これにより、各外装部3A,3B1,3B2を一体化した外装材4が形成される。
【0096】
そして、図8(b)に示すようにプレート74を外してゲートカットをした後、図8(c)に示すように下型71を分解することで、図9に示す如く電池20及び保護回路基板2を外装材3で被覆して成る電池パック1が得られる。
【0097】
ここで、上記の製造方法においては、図10〜図13に示すような位置決め部品を用いることにより、電池20及び保護回路基板2の位置決め精度をより高めることができる。これらの位置決め部品は、成形型において電池20及び保護回路基板2の位置決め部として機能するうえに、外装材3に埋設状態となり、電池パックの補強材等として機能させることができる。
【0098】
図10(a)に示す位置決め部品G1は、電池20の周囲三辺に沿うフレーム構造を有するものである。この位置決め部品G1は、図10(b)に示すように電池20の凹部17aとサイド部17bとの間に挟み込んだり、図10(c)に示すように電池20に接着したりする。この接着には、接着剤や接着テープなどを使用する。このような位置決め部品G1を用いた場合にも、離型性に優れるものとなる。最大面側からエジェクトピンを出せばその打痕が残らないためである。
【0099】
図11に示す位置決め部品G2は、電池20に対応した矩形のフレーム構造を有するもので、成形型のエジェクトピンに対応する部分にエジェクトピンの受け部75を有している。図示例では、フレーム構造の四隅に、外装材の表面の一部となる受け部75を有している。これにより、離型の際に、外装材の表面にエジェクトピンの打痕が生じるのを防ぎ、電池パックの外観体裁をより一層高めることができる。
【0100】
なお、受け部75の形状は、図示例の扇形以外に、円形や多角形などの各種形状を採用することができる。また、上記の受け部75を有する位置決め部品G2を用いた場合には、エジェクトピンの打痕が無く、ラベルなどを貼らなくてもレーザー印字が可能なので、コストの低減と共に電池の高容量化を達成することもできる。
【0101】
図10及び図11に示すようなフレーム構造を有する位置決め部品G1,G2を採用した場合には、後に充填した樹脂が型開きのパーティングラインの面に存在しないので、離型性に優れるという利点がある。
【0102】
図12に示す位置決め部品G3は、位置決め機能に加えて、外装材の成形後には保護回路基板2の金端子76がある面を覆うトップカバーとしても機能する。この位置決め部品G3は、成形型に係合する複数(図示例は2個)のノッチ82を有すると共に、相対向する側壁に溝77及び開口部78を有しており、溝77に保護回路基板2の端部を嵌合して、金端子76がある面を密着させた状態で保護回路基板2を保持する。
【0103】
この位置決め部品G3を用いる場合には、開口部78に対応した突起79を有する成形型80を使用し、突起79により保護回路基板2を押え付けることで、外装材の成形に際して保護回路基板2の位置決めをより確実なものにすると共に、樹脂の軟化温度以上での保護回路基板2のずれを防止する。
【0104】
図13に示す位置決め部品G4は、図12に示す部品と同様に、位置決め機能に加えて、外装材の成形後には保護回路基板2の金端子76がある面を覆うトップカバーとしても機能する。この位置決め部品G4は、成形型に係合する複数(図示例は2個)ノッチ82を有すると共に、相対向する側壁に複数の爪部81を有している。この爪部81は、少なくとも3個設けることが望ましく、図示例のように、一方の側壁に2個の爪部81を適当な間隔で配置し、他方の側壁の中央に1個の爪部81を配置する。
【0105】
上記の位置決め部品G4は、爪部81の弾性変形を伴って保護回路基板2を嵌合することで、爪部81のばね作用により保護回路基板2の金端子76がある面を密着させた状態に維持し、外装材の成形に際して保護回路基板2の位置決めをより確実なものにすると共に、樹脂の軟化温度以上での保護回路基板2のずれを防止する。
【0106】
図12及び図13に示す位置決め部品G3,G4のように、保護回路基板2の金端子76がある面をトップカバー部分とする構成では、保護回路基板2の裏面側からの充填樹脂の染み出しを防ぐことができ、保護回路基板2の金端子76が樹脂で被覆されるような事態を阻止し得る。
【0107】
さらに、上記の別部品を使用しない場合には、容量、強度及びコストの面でメリットがより高い。別部品を使わない場合には、接着性の樹脂が離型しやすいほど好ましい。離型剤としては、従来公知のあらゆるものを使うことができるが、とくに、特にシリコン系やフッ素系の離型剤が好ましい。
【0108】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0109】
(実施例1〜12及び比較例1〜3)
外装材の樹脂、樹脂に含むフィラー、硬化方式、樹脂の伸び率、樹脂の注液回数、電池及び保護回路基板以外の部品及び包装体の材料を異ならせて、実施例1〜12及び比較例1〜3の各電池パックを作製した。そして、各電池パックの定格密度、充放電500サイクル後の容積維持率及び寸法変化率、厚みのばらつき、成形型への樹脂充填から離型までの時間、及び過充電試験での最大温度を調べた。その結果を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
表1から明らかなように、実施例1〜12の電池パックは、比較例1〜3に比べて、いずれの結果も良好であり、充分な機械的強度を有すると共に、厚みのばらつきも無く、寸法精度が高いものであることを確認した。
【0112】
(実施例13〜35)
本発明の電池パックの製造方法に従って外装材を複数回で形成した電池パックのうち、外装部同士の界面に処理を施していない実施例13〜32と、処理を施した実施例33から35について、JIS K6849による接着剤の引っ張り接着強さ試験を実施し、引っ張り剪断接着強さを評価した。その結果を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
表2から明らかなように、外装部同士の界面に処理を施していない実施例13〜32についても、充分な引っ張り剪断接着強さが得られたが、外装部同士の界面に処理を施した実施例13〜32については、引っ張り剪断接着強さが著しく増すことを確認した。
【0115】
なお、本発明に係わる電池パック及びその製造方法は、構成が上記各実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成を適宜変更することができる。また、上記各実施形態では、単一の電池と保護回路基板を外装材で被覆した構成を例示したが、複数の電池から成る電池群を備え、この電池群と保護回路基板を外装材で被覆した電池パック及びその製造方法とすることも当然可能である。
【符号の説明】
【0116】
1…電池パック、2…保護回路基板、3…外装材、10…電池素子、11…正極、12…負極、13a,13b…セパレータ、17…ラミネートフィルム(包装体)、20…電池、3A…一次外装部、3B,3B1,3B2…二次外装部、51,61…一次成形型、51A,51B…分割型、61A,61B…分割型、52,62…二次成形型、52A,62A…分割型、71…成形型、G1〜G4…位置決め部品(位置決め部)P1,P2…位置決め部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば非水電解質二次電池を含む電池パック及びその製造方法に関し、詳しくは、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子をラミネートフィルム等の包装体で包装した電池とその保護回路基板を一体化した電池パック及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型ビデオテープレコーダ、携帯電話及び携帯用コンピュータ等のポータブル電子機器が数多く登場し、その小型、軽量化が図られている。かかる電子機器の小型、軽量化に伴って、これらのポータブル電源として用いられる電池パックに対しても、高エネルギーを有し、小型、軽量化されることが求められている。このような電池パックに用いられる電池としては、高容量を有するリチウムイオン二次電池がある。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンをドープ・脱ドープすることができる正極及び負極を有する電池素子を備え、この電池素子を金属缶や金属ラミネートフィルムに封入すると共に、電池素子と電気的に接続した回路基板によって制御するようになっている。また、従来のリチウムイオン二次電池には、上下に二分割された収納ケースに回路基板とともに収納して電池パックを構成したものがある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3556875号
【特許文献2】特許第3614767号
【特許文献3】特許第3643792号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したような従来のリチウムイオン二次電池において、電池素子の封入に金属缶を用いたものでは、高い寸法精度を確保しやすいものの、厚みや重量が若干大きくなる。他方、電池素子の封入に金属ラミネートフィルムを用いたものでは、金属缶に比べて薄型で軽量になるが、電池素子の寸法のばらつきが大きいために寸法精度を高めることが難しいと共に、機械的強度が低いという欠点があった。
【0006】
また、従来の電池パックにおいて、リチウムイオン二次電池と回路基板を収納ケースに収納したものにあっては、リチウムイオン二次電池や回路基板を外部衝撃等から保護するために、収納ケースに充分な肉厚が必要となり、さらに、上下に分割した収納ケースを両面テープや超音波溶着で接合するに際しても、これらに対応し得るように収納ケースに充分な肉厚を確保しておく必要があることから、電池パック全体の厚みや重量が増大することとなり、ポータブル電源として好ましくないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたものであって、寸法精度及び機械的強度がいずれも高いうえに小型軽量化をも実現した電池パック及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電池パックは、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えた電池パックであって、前記外装材が、前記電池及び保護回路基板を部分的に被覆する一次外装部と、前記電池及び保護回路基板を部分的に被覆する少なくとも一つの二次外装部を備えて、全外装部を一体化して成る構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0009】
また、本発明の電池パックの製造方法は、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えた電池パックを製造するに際し、前記外装材の一部として前記電池及び保護回路基板の位置決め部を有する一次外装部を形成し、前記一次外装部の位置決め部に前記電池及び保護回路基板を配置した後、前記一次外装部、電池及び保護回路基板に対して、前記外装材の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部を形成することで、全外装部を一体化して前記外装材を形成することを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明の電池パックの製造方法は、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えた電池パックを製造するに際し、前記電池及び保護回路基板の位置決め部を有する成形型を用い、前記成形型に電池及び保護回路基板を配置し、前記電池及び保護回路基板に対して外装材の一部である一次外装部を形成し、次いで、前記一次外装部、電池及び保護回路基板に対して、前記外装材の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部を形成することで、全外装部を一体化して前記外装材を形成することを特徴としている。
【0011】
ここで、前記外装材として、とくに粘度の高い外装材を成形型の成形空間に充填するには、成形空間内に隙間が生じないように、外装材にある程度の圧力を加えて充填する。このとき、加圧充填する外装材によって電池及び保護回路基板が成形空間内における所定位置から移動しないようにする必要があり、例えば、成形型に位置決め用の突起を設けるなどの対策が考えられたが、この場合には、外装材の硬化後において位置決め用突起による凹部が意匠性を損ねたり、利用者の使用しにくい形状となるなどの障害があった。
【0012】
本発明では、成形型の成形空間内に外装材を充填するにあたって、電池及び保護回路基板を精度良く所定位置に位置決めすることができるので、電池の全面に対して、精度良くほぼ設計値どおりに強固な外装材の層が形成されることとなる。
【0013】
また、外装材の充填量を増減させることで、電池素子を包装体で包装した電池の製造において避けられない寸法のばらつきを、電池の全面で吸収し得ることから、非常に寸法精度の高い電池パックを安定して供給することが可能となる。
【0014】
さらに、当該製造方法では、外装材を複数の外装部に分けて形成する際に、前記電池及び保護回路基板を収容可能な外装を成形する工程を経ることで、熱可塑性樹脂を用いた従来のモールドパック等で必要だった位置決め治具が不要となる。また、複数回成形を行っても成形型の一部には同一型を用いることができるので成形型代を削減すると共に、最後の成形工程を除いて下型からの離型が不要であるため、生産時間の短縮と搬送がし易いという利点がある。
【0015】
さらに、当該製造方法では、外装材を複数の外装部に分けて形成するので、外装材の表面に各外装部の継ぎ目であるウエルドラインが形成されるが、製品としては、従来の熱可塑性樹脂を予め二つに分けて成形した後に電池素子を封入して超音波溶接したモールド樹脂と同等以上の外観を持つために、外装材の表面にシールを貼るのみならず、直接レーザー等で印字をしたりすることも可能であって、電池パックの意匠性が損なわれることがないうえに、高容量化や低コスト化を実現し得ることとなる。
【0016】
そしてさらに、本発明においては、前記電池及び保護回路基板を外装材で一体的に被覆するようにしているので、従来必要としていたハードカバーが廃止され、機械的強度の向上に加えて、さらなる小型軽量化をも実現し得ることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電池パック及びその製造方法によれば、上記の構成を採用したことにより、寸法精度及び機械的強度がいずれも高いうえに小型軽量化をも実現した電池パックを提供することができると共に、その電池パックを生産性よく提供することができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電池パックの一実施形態を説明する側部断面図(a)及び平面断面図(b)である。
【図2】外装材で被覆する前の電池を説明する分解斜視図である
【図3】電池素子を説明する斜視図である。
【図4】電池のサイド封止部を折り曲げる要領を示す端面説明図(a)(b)である。
【図5】電池パックの製造方法の第1実施形態を説明する各々断面図(a)〜(d)である。
【図6】電池パックの製造方法の第2実施形態を説明する各々断面図(a)〜(d)である。
【図7】電池パックの製造方法の第3実施形態を説明する各々断面図(a)〜(f)である。
【図8】図7に続いて電池パックの製造方法の第3実施形態を説明する各々断面図(a)〜(c)である。
【図9】第3実施形態により製造した電池パックを示す説明図である。
【図10】位置決め部品の一例を示す斜視図(a)及び各断面図(b)(c)である。
【図11】位置決め部品の他の例を示す説明図である。
【図12】位置決め部品のさらに他の例を示す側部断面図(a)及び正面断面図(b)である。
【図13】位置決め部品のさらに他の例を示す側部断面図(a)及び正面断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の電池パック及びその製造方法について詳細に説明する。なお、本明細書において、濃度、含有量及び充填量などについての「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0020】
<電池パックの一実施形態 >
本発明の電池パックは、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えている。そして、電池パックは、前記外装材が、前記電池及び保護回路基板を部分的に被覆する一次外装部と、前記電池及び保護回路基板を部分的に被覆する少なくとも一つの二次外装部を備えて、全外装部を一体化したものとなっている。
【0021】
すなわち、図1に示す電池パック1は、図2及び図3に示す如く正極11と負極12とをセパレータ13a,13bを介して巻回又は積層して成る電池素子10を包装体であるラミネートフィルム17で包装したポリマー型の非水電解質二次電池20と、この電池20の保護回路基板2を外装材3で一体的に被覆したものである。
【0022】
このとき、外装材3は、後に詳述するが、電池20及び保護回路基板2の片側を被覆する一次外装3A片と、電池20及び保護回路基板2の残る片側を被覆する二次外装部3Bを備え、両外装部3A,3Bを一体化したものである。両外装部3A,3Bの継ぎ目(界面)がウエルドラインWLとなる。そして、外装材3は、電池20の端子15a,15bを外部に導出状態にして電池20及び保護回路基板2を一体的に被覆している。また、図示の電池パック1は、平板状を成しており、図1中で左側のトップ側とその反対側のボトム側には、保護回路基板2や電池20を保護するための緩衝材4,5が埋設してある。
【0023】
電池20は、図2に示すように、包装体であるラミネートフィルム17に形成した矩形板状の凹部17aに電池素子10を収容して、その周辺部(折曲部を除く三辺)を熱溶着・封止するようになっており、その後は、図4に示すように、電池素子10を収容した凹部17aの両側のサイド部17bを凹部17aの方向に向けて折り曲げる。
【0024】
電池素子10は、図3に示すように、帯状の正極11と、セパレータ13aと、正極11と対向して配置された帯状の負極12と、セパレータ13bとを順に積層して、長手方向に巻回して成っており、正極11及び負極12の両面にはゲル状電解質14が塗布してある。
【0025】
この電池素子10からは、正極11と接続する正極端子15a及び負極12と接続する負極端子15bが導出させてあり(以下、特定の端子を指定しない場合は電極端子15と称する)、正極端子15a及び負極端子15bには、後にこれらを包装するラミネートフィルム17との接着性を向上させるために、無水マレイン酸変性されたポリプロピレン(PPa)等の樹脂片であるシーラント16a及び16b(以下、特定のシーラントを指定しない場合はシーラント16と適宜称する)が被覆してある。
【0026】
以下、上述の電池素子10及び電池20の構成要素について詳細に説明する。
[正極]
正極11は、正極活物質を含有する正極活物質層を正極集電体の両面状に形成して成るものである。正極集電体は、例えばアルミニウム(Al)箔などの金属箔により構成され、一方、正極活物質層は、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成される。ここで、正極活物質、導電剤、結着剤及び溶剤は、均一に分散していればよく、その混合比は不問である。
【0027】
正極活物質としては、目的とする電池の種類に応じて、金属酸化物、金属硫化物又は特定の高分子を用いることができる。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合、主として、次式(1)
LiXMO2…(1)
(式中のMは少なくとも一種の遷移金属を示し、Xは電池の充放電状態によって異なるが、通常は0.05〜1.10である)で表されるリチウムと遷移金属との複合酸化物を用いることができる。なお、リチウム複合酸化物を構成する遷移金属(M)としては、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)等を用いることができる。
【0028】
このようなリチウム複合酸化物として、具体的には、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4及びLiNiyCo1−yO2(0<y<1)等がある。また、遷移金属元素の一部を他の元素に置換した固溶体も使用可能であり、LiNi0.5Co0.5O2やLiNi0.8Co0.2O2等をその例として挙げることができる。これらのリチウム複合酸化物は、高電圧を発生でき、エネルギー密度が優れたものである。さらに、正極活物質としてTiS2、MoS2、NbSe2及びV2O5等のリチウムを有しない金属硫化物又は酸化物を使用してもよい。これらの正極活物質は、単独で又は複数種を混合して用いてもよい。
【0029】
また、導電剤としては、例えば、カーボンブラックやグラファイトなどの炭素材料等を用いることができる。さらに、結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリビニリデンフルオライド等を用いることができる。また、溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)等を用いることができる。
【0030】
上述の正極活物質、結着剤及び導電剤を均一に混合して正極合剤とし、この正極合剤を溶剤中に分散させてスラリー状にする。次いで、このスラリーをドクターブレード法などにより正極集電体上に均一に塗布した後、高温で乾燥させて溶剤を蒸発させ、プレスすることにより正極活物質層を形成する。
【0031】
正極11は、正極集電体の一端部にスポット溶接又は超音波溶接で接続した正極端子15aを有している。この正極端子15aは金属箔や網目状のものが望ましいが、電気化学的及び化学的に安定であり、通電がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。正極端子15aの材料としては、例えばアルミニウム等がある。
【0032】
[負極]
負極12は、負極活物質を含有する負極活物質層を負極集電体の両面上に形成して成るものである。負極集電体は、例えば銅(Cu)箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
【0033】
負極活物質層は、例えば、負極活物質と、必要に応じて導電剤と、結着剤とを含有して構成される。なお、負極活物質、導電剤、結着剤及び溶剤については、正極活物質と同様に、その混合比は不問である。
【0034】
負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金又はリチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料又は金属系材料と炭素系材料との複合材料を用いることができる。具体的にリチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料としては、グラファイト、難黒鉛化炭素及び易黒鉛化炭素等がある。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス)、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、及び活性炭等の炭素材料を使用することができる。さらに、リチウムをドープ・脱ドープできる材料としては、ポリアセチレン、ポリピロール等の高分子やSnO2等の酸化物を使用することができる。
【0035】
また、リチウムを合金化可能な材料としては、多様な種類の金属等が使用可能であるが、スズ(Sn)、コバルト(Co)、インジウム(In)、アルミニウム、ケイ素(Si)及びこれらの合金がよく用いられる。金属リチウムを使用する場合は、必ずしも粉体を結着剤で塗布膜にする必要はなく、圧延したリチウム金属箔を集電体に圧着しても構わない。
【0036】
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンやスチレンブタジエンゴム等を用いることができる。また、溶剤としては、例えばN−メチルピロリドンやメチルエチルケトン等を用いることができる。
【0037】
上述の負極活物質、結着剤、導電剤を均一に混合して負極合剤とし、溶剤中に分散させてスラリー状にする。次いで、正極11と同様の方法により負極集電体上に均一に塗布した後、高温で乾燥させて溶剤を飛散させ、プレスすることにより負極活物質層を形成する。
【0038】
負極12も正極11と同様に、集電体の一端部にスポット溶接又は超音波溶接で接続した負極端子15bを有しており、この負極端子15bは電気化学的及び化学的に安定であり、通電がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。負極端子15bの材料としては、例えば銅、ニッケル等がある。
【0039】
なお、正極端子15a及び負極端子15bは、上述したように、電池素子10が矩形板状を成す場合には、その一辺(通常は短辺の1つ)から同じ方向に導出させることが好ましいが、短絡等が起こらず電池性能にも問題がなければ、いずれの方向から導出させても問題はない。また、正極端子15a及び15bの接続箇所は、電気的接触がとれているのであれば、取り付ける場所や取り付ける方法は前記の例に限定されない。
【0040】
[電解液]
電解液としては、リチウムイオン電池に一般的に使用される電解質塩と非水溶媒が使用可能である。
【0041】
非水溶媒としては、具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネート、又はこれらの炭酸エステル類の水素をハロゲンに置換した溶媒等がある。これらの溶媒は一種類を単独で用いてもよいし、複数種を所定の組成で混合して用いてもよい。
【0042】
また、電解質塩の一例であるリチウム塩としては、通常の電池電解液に用いられる材料を使用することが可能である。具体的には、LiCl、LiBr、LiI、LiClO3、LiClO4,LiBF4、LiPF6、LiNO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiAlCl4及びLiSiF6等を挙げることができるが、酸化安定性の点からはLiPF6、LiBF4が望ましい。これらリチウム塩は単独で用いても複数種を混合して用いてもよい。リチウム塩を溶解する濃度は、非水溶媒に溶解することができる濃度であれば問題はないが、リチウムイオン濃度が非水溶媒に対して0.4mol/kg〜2.0mol/kgの範囲であることが好ましい。
【0043】
ゲル状電解質を用いる場合は、上述の電解液をマトリクスポリマでゲル化して用いる。マトリクスポリマは、非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液に相溶可能であり、ゲル化できるものであればよい。このようなマトリクスポリマとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、及びポリメタクリロニトリルを繰り返し単位に含むポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0044】
その中でも特に好ましいのは、マトリクスポリマとして、ポリフッ化ビニリデン又はポリフッ化ビニリデンにヘキサフルオロプロピレンが7.5%以下の割合で導入された共重合体である。かかるポリマーは、通常、数平均分子量が5.0×105〜7.0×105(50万〜70万)の範囲であるか、又は、重量平均分子量が2.1×105〜3.1×105(21万〜31万)の範囲にあり、固有粘度が1.7〜2.1dl/gの範囲にある。
【0045】
[セパレータ]
セパレータ13a,13bは、例えば、ポリプロピレン(PP)若しくはポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系の材料から成る多孔質膜、又は、セラミック製の不織布などの無機材料から成る多孔質膜により構成され、これらの二種以上の多孔質膜を積層した構造としてもよい。中でも、ポリエチレンやポリプロピレンの多孔質フィルムが最も有
効である。
【0046】
一般的に、セパレータ13a,13bの厚みとしては5〜50μmが好適に使用可能であるが、7〜30μmがより好ましい。セパレータ13a,13bは、厚すぎると活物質の充填量が低下して電池容量が低下するとともに、イオン伝導性が低下して電流特性が低下する。逆に薄すぎると、膜の機械的強度が低下する。
【0047】
[電池の作製]
上述のようにして作製したゲル状電解質溶液を正極11及び負極12に均一に塗布し、正極活物質層及び負極活物質層に含浸させた後、常温で保存するか、若しくは乾燥工程を経てゲル状電解質層14を形成する。
【0048】
次いで、ゲル状電解質層14を形成した正極11及び負極12を用い、正極11、セパレータ13a、負極12、セパレータ13bの順に積層した後巻回して電池素子10を形成し、続いて、この電池素子10をラミネートフィルム17の凹部17aに収容して外装し、ゲル状非水電解質二次電池を得る。
【0049】
なお、包装体であるラミネートフィルム17としては、従来公知の金属ラミネートフィルム、例えば、アルミニウムラミネートフィルムを用いることができる。アルミニウムラミネートフィルムとしては、絞り加工に適し、電池素子10を収容する凹部17aを形成するのに適したものがよい。
【0050】
通常、アルミニウムラミネートフィルムは、アルミニウム層の両面に接着層と表面保護層が配設された積層構造を有するもので、内側、即ち電池素子10の表面側から順に、接着層としてのポリプロピレン層(PP層)、金属層としてのアルミニウム層及び表面保護層としてのナイロン層又はポリエチレンテレフタレート層(PET層)が配設される。
【0051】
また、包装体であるラミネートフィルム17としては、アルミニウムラミネートフィルムのほかに、一層又は二層のフィルムであり且つポリオレフィンフィルムを含むものとすることができる。
【0052】
そして、本実施形態では、図2〜図4に示すように、上述のラミネートフィルム17で電池素子10を包装し、電池素子10の周囲を溶着・封止して電池20とする。
【0053】
前記外装材3の樹脂としては、熱硬化樹脂を用いることが好ましいが、生産性、位置決めの精度及び生産タクトの改善のために、一部に、熱可塑性樹脂、硬化済みの硬化性樹脂又は金属板や金属部品を用いてもよい。
【0054】
熱可塑性樹脂としては、従来公知の樹脂を用いることができるが、とくに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド及びポリカーボネートを用いることが好ましく、熱硬化樹脂との接着性及び難燃性や機械的強度の観点からポリアミドやポリカーボネートを用いるのがより好ましい。
【0055】
硬化性樹脂の場合も、従来公知の樹脂を用いることができるが、同様に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂を用いることが好ましく、成形型に充填する樹脂すなわち外装材の主成分である樹脂と同じ樹脂を用いれば、原材料コストの低減、生産設備の共有化、及び接着等の強度という観点でより好ましい。
【0056】
金属部品には、アルミニウム、銅、ステンレス、鉄及びニッケルなどの各種金属を用いることができるが、強度及び成形性の観点から、アルミニウムやステンレスを用いることが好ましい。金属部品は、導電性を有するので、タブや基板等との間の絶縁性を確保するためにテープ等で被覆することが好ましい。また、薄型の金属部品は、生産プロセス中で別部品を傷つけるような事態を防ぐために、エッジ加工などの処理が有効である。
【0057】
さらに、外装材3は、形状維持ポリマーと、金属酸化物や金属窒化物などのフィラーを含む複合材料とすることができる。このとき、外装材3を構成する形状維持ポリマーとしては、金属酸化物や金属窒化物などのフィラーと親和性、相溶性ないしは反応性を有し、且つ、高い寸法精度及び強度をもつ構成樹脂とするものが好ましく、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂のうちのいずれかの硬化性樹脂であることが好ましい。
【0058】
硬化性樹脂では、熱可塑性樹脂に比べて、流れ込みの硬化時間を数十秒取ることができるのでこれまでの数百μmの厚みにくらべ百μm程度から数十μmや数μmの厚みの外装材3を形成することが可能であるが、あまり硬化時間が長いとタクトタイムが長くなり、装置の占有時間が長くなって生産性に劣ることとなる。 そこで、硬化時間は、電池20が耐えられる温度で高めに保持することが好ましい。この際の温度は、好ましくは30℃以上100℃以下であり、より好ましくは50℃以上90℃以下である。
【0059】
外装材3を構成する形状維持ポリマーは、機械的強度が必要であるが、表面硬さと落下時の耐衝撃性は両立しない。高分子のような物質は、個々の分子が長いこともあって、一見単純な固体に見える状態でも、結晶性の部分と非結晶の部分が混在している。
【0060】
非結晶の部分は、ミクロブラウン運動により、ミクロ的に見ると、分子が部分的な運動を行うことができるので、分子鎖がある程度変形したり移動したりすることが可能であって、曲げたり伸ばしたりすることができる。しかし、温度が下がると、分子鎖の部分的な運動性が失われてガラス状態となり、柔軟性が無くなり、硬い状態を保つことができる。
【0061】
よって、単純に硬さを追求すると、結晶性が高く、非結晶な部分もある程度高温でないと、分子鎖の自由な運動が阻害されるので簡単に割れてしまう。一方で、柔軟性を求めると、非結晶の部分が多く、大多数の分子鎖は常温付近でも自由に運動できるほど架橋されていないため、耐衝撃性には優れるものの機械的強度には劣ることとなる。
【0062】
このため、外装材3として使用する形状維持ポリマーは、剛性を保つためにある程度分子鎖が長くて、結晶性が高いことが好ましいが、落下時の衝撃にも耐え得る柔軟性を発現させるためには、あまりに架橋点が多いと簡単に割れてしまう虞がある。
【0063】
そこで、硬化剤としては、柔軟性に寄与する高分子鎖を長鎖にする架橋点が二つの硬化剤と、架橋点を多くして硬さと高いガラス転移点の実現に寄与する架橋点が三つ以上の硬化剤を併用することが好ましい。
【0064】
外装材3について、プラスチック−曲げ特性の試験方法(JIS−K7171)から求められる曲げ強度及び曲げ弾性率を試験したところ、曲げ強度は、10MPa以上120MPa以下が好ましく、さらに好ましくは70MPa以上100MPa以下であった。また、曲げ弾性率は、30MPa以上3000MPa以下が好ましく、さらに好ましくは1000MPa以上2500MPa以下であった。
【0065】
さらに、外装材3は、耐突き刺し性の指標ともなるJIS−K7215 プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法によれば、表面硬度は、好ましくはD30−D99の範囲が良く、さらに好ましくはD60−D85の範囲が良い。
【0066】
ガラス転移点は、ラミネートフィルムなどの包装体の圧力開放部及び外装体として強度に劣るように設定された圧力開放部が機能的に働くために、定常温度以上で且つ熱暴走温度以下であることが好ましく、さらに好ましくは45℃以上120℃以下の範囲であり、さらに好ましくは60℃以上110℃以下である。
【0067】
さらに、外装材3を構成する金属酸化物及び窒化物フィラーとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)及びマグネシウム(Mg)の酸化物、又はこれら酸化物及び窒化物の任意の混合物を挙げることができる。このような金属酸化物及び窒化物フィラーは、外装材3の硬さ及び放熱性を向上する機能を果たし、形状維持ポリマーと接触した状態で配置され、例えば、形状維持ポリマーに混入してもよく、この場合、形状維持ポリマーの全体に亘って均一に散在していることが好ましい。
【0068】
金属酸化物及び窒化物フィラーの混入量は、形状維持ポリマーのポリマー種などに応じて適宜変更することができるが、形状維持ポリマーの質量に対する混入量が0.1%未満の場合には、脱水剤として働く金属酸化物及び窒化物フィラーの量が不十分で安定した生産が困難になり樹脂特性に季節変動が起こることがあり、一方、混入量が60%を超える場合には、製造時の成形性やセラミックの脆性による問題が発生することがある。そこで、金属酸化物及び窒化物フィラーの混入量は、形状維持ポリマーの質量に対して0.1〜60%程度とすることが好ましい。
【0069】
また、金属酸化物及び窒化物フィラーの平均粒径を小さくすると、硬度が上がるものの、成形時の充填性に影響して生産性に不具合を来たす虞があり、逆に、金属酸化物及び窒化物フィラーの平均粒径を大きくすると、目的の強度が得難くなって、電池パック1としての寸法精度を十分に確保することができない可能性がある。そこで、金属酸化物及び窒化物フィラーの平均粒径は、0.5〜40μmとすることが好ましく、2〜20μmとすることがより好ましい。
【0070】
さらに、金属酸化物及び窒化物フィラーの形状としては、球状や鱗片状や板状や針状など様々な形状を採用することができる。特に限定されるものではないが、球状のものは、作製し易く平均粒径の揃ったものを安価に得られるので好ましく、針状でアスペクト比の大きいものは、フィラーとして強度を高め易いので好ましい。また、鱗片状のものは、フィラーの含有量を増したときに充填性を高め得る点で好ましい。なお、用途や材質に応じて、平均粒径の異なるフィラーを混合して用いたり、形状の異なるフィラーを混合して用いたりすることが可能である。
【0071】
上述のように、本発明の電池パック1における外装材3は、形状維持ポリマー及び所定の金属酸化物及び窒化物フィラーを有する以外に、各種添加剤を含有することが可能であり、例えば、形状維持ポリマー中に、紫外線吸収剤や、光安定剤や、硬化剤又はこれらの任意の混合物を添加して、金属酸化物及び窒化物フィラーと共存させることができる。
【0072】
外装材3は、その厚みが薄く、例えば、形状維持ポリマーの層の厚みが1000μm以下である。形状維持ポリマーの層の厚みが1000μmを超えると、この外装材3を用いて製造した電池パック1であったとしても、体積エネルギー密度の点でメリットを発揮し難いことがある。さらに好ましくは形状維持ポリマーの層の厚みが300μm以下であり、必要な機械的強度及び耐衝撃性を満たせるのであれば薄いほどよい。
【0073】
このように、外装材3は、従来より薄く、そして、高強度な電池パック1を実現し得るものであると共に、電池パック1の小型化及び軽量化をも実現し得るものである。また、上述のような金属酸化物及び窒化物フィラーとともに紫外線吸収材、光安定剤及び硬化剤のいずれかを用い、且つ、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂のうちのいずれかの硬化性樹脂を用いることにより、金属板よりも薄く、生産性に優れた加工を施すことができるため、得られる電池のエネルギ密度が向上するだけでなく、電池パック1の形成が容易であり、寸法精度が高くなって歩留まりが向上し、加えて、多種多様な用途に応じたサイズや形状や強度の設計の自由度が拡がることとなる。
【0074】
次に、上記構成を備えた電池パック1の製造方法の実施形態について説明する。
【0075】
<電池パックの製造方法の第1実施形態>
本発明の電池パック1の製造方法では、図5(a)に示すように、前記外装材3の一部として前記電池20及び保護回路基板2の位置決め部P1,P2を有する一次外装部3Aを形成する。
【0076】
この工程では、上下一対の分割型51A,51Bを備えた一次成形型51を使用し、主剤M1及び硬化剤M2を用いたRIM成形(反応射出成形)により一次外装部3Aを形成する。一次成形型51は、分割型51A,51Bのほか、主剤M1及び硬化剤M2の射出機IJ及びゲートGや、端子部分を形成するスライドコア51C等を有している。図示例の一次外装部3Aは、電池20及び保護回路基板2の片側を被覆するもので、凹状の位置決め部P1,P2を有している。
【0077】
次に、当該製造方法では、図5(b)に示すように、前記一次外装部3Aの位置決め部に前記電池20及び保護回路基板2を配置する。そして、図5(c)に示すように、一次外装部3A、電池20及び保護回路基板2に対して、前記外装材3の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部3Bを形成する。
【0078】
この工程では、一次成形型51において外装材外側を形成する分割型(下型)51Bと、この分割型51Bとの間でキャビティを形成する他方の分割型52Aとを備えた二次成形型52を使用する。そして、同じくRIM成形により二次外装部3Bを形成する。図示例の二次外装部3Bは、電池20及び保護回路基板2の残る片側を被覆するものであって、一次外装部3Aと一体化して前記外装材3を形成する。
【0079】
これにより、電池20及び保護回路基板2を外装材3で被覆して成る電池パック1が得られる。その後は、図5(d)に示すように、二次成形型52を開くと共に、ゲートGを切除し、例えばバキュームカップVCにより電池パック1を離型させる。
【0080】
ここで、当該製造方法では、より好ましい実施形態として、外装部3A,3B同士の界面に、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プライマー処理、接着剤処理及び溶剤処理のうちの少なくとも1つの処理を行うことで、両外装材3A、3Bを一体化して外装材3を形成する。これにより、界面のぬれ性を改質することができる。とくに、コロナ放電処理では、0.1秒から0.5秒程度で効果を発揮するので、生産性を高めることができる。
【0081】
また、当該製造方法は、界面の接着強度を高めるために、接着剤又はプライマーを用いることが好ましい。上記接着剤又はプライマーとしては、例えば、アクリル樹脂エマルション接着剤、ウレタン樹脂エマルション接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤、エポキシ樹脂エマルション接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤、水性高分子−イソシアネート系接着剤、スチレン−ブタジエンゴム系ラテックス接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤及びポリビニルアルコール系接着剤などを用いることができ、所望の接着強度や良好な取り回し性を実現することができる。
【0082】
さらに、上記の上記接着剤又はプライマーは、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、シリコーン系、スチレン・ブタジエンゴム系及びポリスチレン樹脂系の中から選択したものを用いることができ、また、α−オレフィン系接着剤、エーテル系セルロ−ス、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、シリコーン系、スチレン・ブタジエンゴム系及びポリスチレン樹脂系を用いれば、所望の接着強度や良好な取り回し性が得られる。
【0083】
さらに、中でも、アクリル樹脂系プライマー、エポキシ樹脂系プライマー、変性シリコーン系プライマー、及び一液系のウレタン系プライマーは、とくに好ましく、塗布だけでなくガス状にして噴霧することで所望の接着強度が得られ、生産性向上と性能向上の両立を実現することができる。
【0084】
さらに、当該製造方法では、より好ましい実施形態として、前記一次外装部3Aにおける二次外装部3との界面を粗面化することができる。このような界面は、同界面を形成する分割型の一面を粗面化しておくことで形成することができる。このように界面を粗面化すれば、界面同士の接触面積が増大すると共に、微小な凹凸によるいわゆるフック効果で界面同士が噛み合う状態となり、接着強度をより一層高めることができる。
【0085】
上記の電池パックの製造方法によれば、寸法精度及び機械的強度がいずれも高いうえに小型軽量化をも実現した電池パックを生産性よく提供することができる。また、当該製造方法では、上述したように、少なくとも一対の分割型51A,51Bを備えた一次成形型51を用いて一次外装部3Aを形成し、一次成形型51の一方の分割型51Bとこれに対応する他方の分割型52Aを備えた二次成形型52を用いて二次外装部3Bを形成する。これにより、一次外装部3Aの同一面に一つの離型痕が形成されて、電池パックの外観体裁が良好になるうえに、一部の分割型51Bを兼用することで設備の簡略化を実現し、設備費や製造コストのさらなる低減を図ることができる。
【0086】
なお、当該製造方法では、外装材3を少なくとも2回の工程で形成することで数百μmから1mm近くの寸法誤差を持つ不定形の電池素子を確実に位置決めすることが可能となる。外装材用の樹脂の吐出条件は、吐出機による充填(注型)とポッティング(樹脂盛り)のいずれも選択することができる。吐出機による充填は、吐出条件が安定する点で好ましい。ポッティングは、ゲート痕が残らず、ゲートカットの処理も不要である点、接着性の樹脂を用いることで接着テープを必要としない点、吐出機を占有しない点、及び成形型の占有時間を短く取れる点で好ましい。
【0087】
また、いずれの条件であっても、複数回成形した場合には、電池20及び保護回路基板2を外装材3で被覆した後、機械研磨や超ミクロトーム等で断面出しをしてその断面観察すれば、複数回成形時の界面の存在を確認することで、簡単に成形回数を判断することが可能である。すなわち、当該製造方法により得た電池パックを特定することができる。
【0088】
<電池パックの製造方法の第2実施形態>
この実施形態における電池パック1の製造方法では、図6(a)に示すように、凹状の位置決め部P1,P2を有する一次成形型61を用い、まず、一次成形型61の位置決め部P1,P2に電池20及び保護回路基板2を夫々配置する。
【0089】
一次成形型61は、図6(b)に示すように、位置決め部P1,P2を有する一方の分割型61Aと、これに対応する他方の分割型61Bを備えている。また、一方の分割型61Aは、各位置決め部P1,P2から型外に連通する通し孔H1,H2を有しており、電池20及び保護回路基板2をセットした後、各通し孔H1,H2を外部から吸引することにより、その負圧で電池20及び保護回路基板2を固定する。
【0090】
当該製造方法では、図6(a)に示す如く一方の分割型61Aに電池20及び保護回路基板2をセットした後、図6(b)に示すように、吸引を行いつつ一次成形型61を閉じてキャビティに樹脂を供給し、電池20及び保護回路基板2に対して外装材3の一部である一次外装部3Aを形成する。図示例の一次外装部3Aは、先の第1実施形態と同様に、電池20及び保護回路基板2の片側を被覆する。
【0091】
その後、当該製造方法では、図6(c)(d)に示すように、一次外装部3A、電池20及び保護回路基板2に対して、前記外装材3の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部3Bを形成する。図示例の二次外装部3Bは、電池20及び保護回路基板2の残る片側を被覆する。これにより、全外装部3A,3Bを一体化して前記外装材3を形成し、電池20及び保護回路基板2を外装材3で被覆した電池パック1を得る。
【0092】
この工程では、一次成形型61において一次外装部3Aの外側を形成する他方の分割型61Bを二次成形型62に兼用する。すなわち、図6(c)に示すように、二次成形型62は、一次成形型61の他方の分割型61Bを上下逆にし、同分割型61B及びこれに対応する分割型62Aで構成される。これにより、第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0093】
<電池パックの製造方法の第3実施形態>
この実施形態における電池パック1の製造方法では、図7(a)に示すように、凹状の成形空間を有する下型71に、主剤M1及び硬化剤M2を供給する。下型71は、複数の分割型71A〜71Cで構成してある。次に、図7(b)に示すように、下型71とこれに対応する上型72を閉じることで、図7(c)に示すように、外装材3の一部である一次外装部3Aを形成する。図示例の一次外装部3Aは、電池20の片側を被覆する。
【0094】
その後、当該製造方法では、一次外装部3Aに対して電池20及び保護回路基板2を配置した後、外装材3の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部を形成する。この実施形態では、複数の二次外装部を形成する。
【0095】
すなわち、この実施形態では、図7(d)に示すように、電池20及び保護回路基板2をセットし、さらに、固定具73で電池20を抑えてから、図7(e)に示すように、保護回路基板2側から樹脂を供給して第1の二次外装部3B1を形成する。その後は、図7(f)に示すように、ゲートを有するプレート74で下型71を閉塞し、その内部に樹脂を供給して、図8(a)に示すように第2の二次外装部3B2を形成する。これにより、各外装部3A,3B1,3B2を一体化した外装材4が形成される。
【0096】
そして、図8(b)に示すようにプレート74を外してゲートカットをした後、図8(c)に示すように下型71を分解することで、図9に示す如く電池20及び保護回路基板2を外装材3で被覆して成る電池パック1が得られる。
【0097】
ここで、上記の製造方法においては、図10〜図13に示すような位置決め部品を用いることにより、電池20及び保護回路基板2の位置決め精度をより高めることができる。これらの位置決め部品は、成形型において電池20及び保護回路基板2の位置決め部として機能するうえに、外装材3に埋設状態となり、電池パックの補強材等として機能させることができる。
【0098】
図10(a)に示す位置決め部品G1は、電池20の周囲三辺に沿うフレーム構造を有するものである。この位置決め部品G1は、図10(b)に示すように電池20の凹部17aとサイド部17bとの間に挟み込んだり、図10(c)に示すように電池20に接着したりする。この接着には、接着剤や接着テープなどを使用する。このような位置決め部品G1を用いた場合にも、離型性に優れるものとなる。最大面側からエジェクトピンを出せばその打痕が残らないためである。
【0099】
図11に示す位置決め部品G2は、電池20に対応した矩形のフレーム構造を有するもので、成形型のエジェクトピンに対応する部分にエジェクトピンの受け部75を有している。図示例では、フレーム構造の四隅に、外装材の表面の一部となる受け部75を有している。これにより、離型の際に、外装材の表面にエジェクトピンの打痕が生じるのを防ぎ、電池パックの外観体裁をより一層高めることができる。
【0100】
なお、受け部75の形状は、図示例の扇形以外に、円形や多角形などの各種形状を採用することができる。また、上記の受け部75を有する位置決め部品G2を用いた場合には、エジェクトピンの打痕が無く、ラベルなどを貼らなくてもレーザー印字が可能なので、コストの低減と共に電池の高容量化を達成することもできる。
【0101】
図10及び図11に示すようなフレーム構造を有する位置決め部品G1,G2を採用した場合には、後に充填した樹脂が型開きのパーティングラインの面に存在しないので、離型性に優れるという利点がある。
【0102】
図12に示す位置決め部品G3は、位置決め機能に加えて、外装材の成形後には保護回路基板2の金端子76がある面を覆うトップカバーとしても機能する。この位置決め部品G3は、成形型に係合する複数(図示例は2個)のノッチ82を有すると共に、相対向する側壁に溝77及び開口部78を有しており、溝77に保護回路基板2の端部を嵌合して、金端子76がある面を密着させた状態で保護回路基板2を保持する。
【0103】
この位置決め部品G3を用いる場合には、開口部78に対応した突起79を有する成形型80を使用し、突起79により保護回路基板2を押え付けることで、外装材の成形に際して保護回路基板2の位置決めをより確実なものにすると共に、樹脂の軟化温度以上での保護回路基板2のずれを防止する。
【0104】
図13に示す位置決め部品G4は、図12に示す部品と同様に、位置決め機能に加えて、外装材の成形後には保護回路基板2の金端子76がある面を覆うトップカバーとしても機能する。この位置決め部品G4は、成形型に係合する複数(図示例は2個)ノッチ82を有すると共に、相対向する側壁に複数の爪部81を有している。この爪部81は、少なくとも3個設けることが望ましく、図示例のように、一方の側壁に2個の爪部81を適当な間隔で配置し、他方の側壁の中央に1個の爪部81を配置する。
【0105】
上記の位置決め部品G4は、爪部81の弾性変形を伴って保護回路基板2を嵌合することで、爪部81のばね作用により保護回路基板2の金端子76がある面を密着させた状態に維持し、外装材の成形に際して保護回路基板2の位置決めをより確実なものにすると共に、樹脂の軟化温度以上での保護回路基板2のずれを防止する。
【0106】
図12及び図13に示す位置決め部品G3,G4のように、保護回路基板2の金端子76がある面をトップカバー部分とする構成では、保護回路基板2の裏面側からの充填樹脂の染み出しを防ぐことができ、保護回路基板2の金端子76が樹脂で被覆されるような事態を阻止し得る。
【0107】
さらに、上記の別部品を使用しない場合には、容量、強度及びコストの面でメリットがより高い。別部品を使わない場合には、接着性の樹脂が離型しやすいほど好ましい。離型剤としては、従来公知のあらゆるものを使うことができるが、とくに、特にシリコン系やフッ素系の離型剤が好ましい。
【0108】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0109】
(実施例1〜12及び比較例1〜3)
外装材の樹脂、樹脂に含むフィラー、硬化方式、樹脂の伸び率、樹脂の注液回数、電池及び保護回路基板以外の部品及び包装体の材料を異ならせて、実施例1〜12及び比較例1〜3の各電池パックを作製した。そして、各電池パックの定格密度、充放電500サイクル後の容積維持率及び寸法変化率、厚みのばらつき、成形型への樹脂充填から離型までの時間、及び過充電試験での最大温度を調べた。その結果を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
表1から明らかなように、実施例1〜12の電池パックは、比較例1〜3に比べて、いずれの結果も良好であり、充分な機械的強度を有すると共に、厚みのばらつきも無く、寸法精度が高いものであることを確認した。
【0112】
(実施例13〜35)
本発明の電池パックの製造方法に従って外装材を複数回で形成した電池パックのうち、外装部同士の界面に処理を施していない実施例13〜32と、処理を施した実施例33から35について、JIS K6849による接着剤の引っ張り接着強さ試験を実施し、引っ張り剪断接着強さを評価した。その結果を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
表2から明らかなように、外装部同士の界面に処理を施していない実施例13〜32についても、充分な引っ張り剪断接着強さが得られたが、外装部同士の界面に処理を施した実施例13〜32については、引っ張り剪断接着強さが著しく増すことを確認した。
【0115】
なお、本発明に係わる電池パック及びその製造方法は、構成が上記各実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成を適宜変更することができる。また、上記各実施形態では、単一の電池と保護回路基板を外装材で被覆した構成を例示したが、複数の電池から成る電池群を備え、この電池群と保護回路基板を外装材で被覆した電池パック及びその製造方法とすることも当然可能である。
【符号の説明】
【0116】
1…電池パック、2…保護回路基板、3…外装材、10…電池素子、11…正極、12…負極、13a,13b…セパレータ、17…ラミネートフィルム(包装体)、20…電池、3A…一次外装部、3B,3B1,3B2…二次外装部、51,61…一次成形型、51A,51B…分割型、61A,61B…分割型、52,62…二次成形型、52A,62A…分割型、71…成形型、G1〜G4…位置決め部品(位置決め部)P1,P2…位置決め部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えた電池パックであって、
前記外装材が、前記電池及び保護回路基板を部分的に被覆する一次外装部と、前記電池及び保護回路基板を部分的に被覆する少なくとも一つの二次外装部を備えて、全外装部を一体化して成る電池パック。
【請求項2】
前記外装材の樹脂が、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂のうちのいずれかの硬化性樹脂である請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記包装体が、アルミラミネートフィルムである請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えた電池パックを製造するに際し、
前記外装材の一部として前記電池及び保護回路基板の位置決め部を有する一次外装部を形成し、前記一次外装部の位置決め部に前記電池及び保護回路基板を配置した後、前記一次外装部、電池及び保護回路基板に対して、前記外装材の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部を形成することで、全外装部を一体化して前記外装材を形成する電池パックの製造方法。
【請求項5】
正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えた電池パックを製造するに際し、
前記電池及び保護回路基板の位置決め部を備えた成形型を用い、
前記成形型に電池及び保護回路基板を配置し、前記電池及び保護回路基板に対して外装材の一部である一次外装部を形成し、次いで、前記一次外装部、電池及び保護回路基板に対して、前記外装材の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部を形成することで、全外装部を一体化して前記外装材を形成する電池パックの製造方法。
【請求項6】
少なくとも一対の分割型を備えた一次成形型を用いて、前記一次外装部を形成し、前記一次成形型の一方の分割型とこれに対応する他方の分割型を備えた二次成形型を用いて、前記二次外装部を形成することで、一次外装部の同一面に一つの離型痕を形成する請求項4又は5に記載の電池パックの製造方法。
【請求項7】
前記外装部同士の界面に、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プライマー処理、接着剤処理及び溶剤処理のうちの少なくとも1つの処理を行う請求項4又は5に記載の電池パックの製造方法。
【請求項8】
前記接着剤及びプライマーの少なくとも一方が、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、シリコーン系、スチレン・ブタジエンゴム系及びポリスチレン樹脂系の中から選択したものである請求項7に記載の電池パックの製造方法。
【請求項9】
前記一次外装部における二次外装部との界面を粗面化する請求項4又は5に記載の電池パックの製造方法。
【請求項1】
正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えた電池パックであって、
前記外装材が、前記電池及び保護回路基板を部分的に被覆する一次外装部と、前記電池及び保護回路基板を部分的に被覆する少なくとも一つの二次外装部を備えて、全外装部を一体化して成る電池パック。
【請求項2】
前記外装材の樹脂が、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂のうちのいずれかの硬化性樹脂である請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記包装体が、アルミラミネートフィルムである請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えた電池パックを製造するに際し、
前記外装材の一部として前記電池及び保護回路基板の位置決め部を有する一次外装部を形成し、前記一次外装部の位置決め部に前記電池及び保護回路基板を配置した後、前記一次外装部、電池及び保護回路基板に対して、前記外装材の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部を形成することで、全外装部を一体化して前記外装材を形成する電池パックの製造方法。
【請求項5】
正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、前記電池の保護回路基板と、前記電池及び保護回路基板を収容した成形型の成形空間に樹脂を充填して硬化させることで前記電池の端子を外部に導出した状態にして電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備えた電池パックを製造するに際し、
前記電池及び保護回路基板の位置決め部を備えた成形型を用い、
前記成形型に電池及び保護回路基板を配置し、前記電池及び保護回路基板に対して外装材の一部である一次外装部を形成し、次いで、前記一次外装部、電池及び保護回路基板に対して、前記外装材の残り部分となる少なくとも一つの二次外装部を形成することで、全外装部を一体化して前記外装材を形成する電池パックの製造方法。
【請求項6】
少なくとも一対の分割型を備えた一次成形型を用いて、前記一次外装部を形成し、前記一次成形型の一方の分割型とこれに対応する他方の分割型を備えた二次成形型を用いて、前記二次外装部を形成することで、一次外装部の同一面に一つの離型痕を形成する請求項4又は5に記載の電池パックの製造方法。
【請求項7】
前記外装部同士の界面に、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プライマー処理、接着剤処理及び溶剤処理のうちの少なくとも1つの処理を行う請求項4又は5に記載の電池パックの製造方法。
【請求項8】
前記接着剤及びプライマーの少なくとも一方が、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、シリコーン系、スチレン・ブタジエンゴム系及びポリスチレン樹脂系の中から選択したものである請求項7に記載の電池パックの製造方法。
【請求項9】
前記一次外装部における二次外装部との界面を粗面化する請求項4又は5に記載の電池パックの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−3294(P2011−3294A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143171(P2009−143171)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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