説明

電池パック

【課題】簡単な構造で強固にカバーを固定することができ、耐衝撃性に優れている電池パックを提供する。
【解決手段】素電池2に保護回路10及び保護素子7を取り付け、保護回路10及び保護素子7がカバー11内に収納されている電池パック1であって、カバー11内に内部フレーム6を備えており、内部フレーム6は、素電池2に固定され、かつ保護回路10を支持しており、内部フレーム6から突出したボス13が、カバー11に設けた孔12を挿通しており、ボス13の溶融変形により、カバー11が内部フレーム6に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素電池に保護回路及び保護素子を取り付け、これらがカバー内に収納されている電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電池パックは、小型化が進み電池パックの外装部品として樹脂製カバー、樹脂製フレーム型ケースを使用した電池パックが多くなっている。電池パックには、過充電・過電流・過放電等を防止する保護回路が搭載される。この保護回路を支持するために、樹脂製の内部フレームが用いられる。
【0003】
図7は、従来の電池パックの一例を示す斜視図である。(a)図は電池パック全体の斜視図、(b)図は(a)図のC部の拡大図である。素電池100に樹脂製の内部フレーム101が取り付けられている。内部フレーム101の内部には保護素子(図示せず)が収納され、内部フレーム101は保護回路102を支持している。
【0004】
内部フレーム101には固定爪103が設けられており、カバー104には孔105が設けられている。カバー104の孔105に、内部フレーム102の固定爪103を係合させることにより、カバー104が内部フレーム101に固定されることになる。
【0005】
また、下記特許文献1−3には、内部フレームに相当する部品に、カバーを取り付ける各種構成が記載されている。特許文献1には、素電池を囲むフレーム部に設けた係止爪を、キャップ部(カバー)に設けた係合孔に係合させて、カバーをフレーム部に取り付ける構造が記載されている。特許文献2には、外装ケース(カバー)に設けた嵌着凹部に、基板ホルダーに設けた嵌着凸部に係合させて、外装ケースを基板ホルダーに取り付ける構造が記載されている。特許文献3には、カバーに設けた孔にねじを挿通させ、このねじを素電池の端子部に設けたナット部に螺合させて、カバーを素電池に取り付ける構造が記載されている。
【0006】
他方、カバーと素電池との取付け構造には、電池パックの機械的強度を高めるために、カバーを係合により素電池に取り付けるのではなく、カバーを一体成形により素電池に取り付けるものもある。
【特許文献1】特開2005−142153号公報
【特許文献2】特開2006−164601号公報
【特許文献3】特開2006−302662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記の図7、特許文献1、2に記載されているような、カバーに設けられた嵌合用の凹部(又は孔)に、内部フレームに設けられた嵌合用の凸部を係合させる(スナップフィット)構造は、電池パックが落下等の衝撃を受けた際、この係合が外れカバーが脱落する可能性があり、耐衝撃性を高めるには不利な構造であった。
【0008】
また、特許文献3に記載されているような、ねじの螺合によりカバーを素電池に取り付ける構造や、カバーを一体成形により素電池に取り付ける構造は、部品点数、製造工程が増加し、コスト面で不利な構造であった。
【0009】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、簡単な構造で強固にカバーを固定することができ、耐衝撃性に優れた電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の電池パックは、素電池に保護回路及び保護素子を取り付け、前記保護回路及び前記保護素子がカバー内に収納されている電池パックであって、前記カバー内に内部フレームを備えており、前記内部フレームは、前記素電池に固定され、かつ前記保護回路を支持しており、前記内部フレームから突出したボスが、前記カバーに設けた孔を挿通しており、前記ボスの溶融変形により、前記カバーが前記内部フレームに固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電池パックは、簡単な構造で強固にカバーを固定することができ、耐衝撃性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の電池パックによれば、カバーと内部フレームとは、内部フレームと一体のボスの溶融変形により固定されている。このため、簡単な構造でありながら、カバーと内部フレームとが強固に固定され、耐衝撃性にも優れている。また、本発明の電池パックは、取付けねじを用いたり、カバーを素電池に一体成形するものと比べると、部品点数の削減や、製造工程の簡素化を図ることができ、コスト面でも有利になる。
【0013】
前記本発明の電池パックにおいては、前記カバーの融点は、前記内部フレームの融点より高く、前記カバーの融点と前記内部フレームの融点との差が10℃以上であることが好ましい。この構成によれば、内部フレームのボスの溶融時に、外観部品であるカバーを溶融させることを防止でき、良好な外観を得ることができる。
【0014】
また、前記カバーに設けた孔は、前記カバーの表面から窪んだ位置にあり、かつ傾斜面で囲まれていることが好ましい。この構成によれば、溶融変形したリブの厚さを大きくすることができる。このことにより、リブのせん断力に対する強度が増すので、より強固にカバーを固定することができる。
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態に係る電池パックの分解斜視図である。まず、図1を参照しながら、電池パックの概略構成を説明する。図1は、電池パック1、及びこれに取り付ける各種付属部品を示している。素電池2は、厚さの薄い角形の外装缶内に、発電要素を内蔵したものである。素電池2は、例えば、角形リチウムイオン電池であり、携帯電話やモバイル機器等に用いられる。
【0017】
素電池2の下部には、両面テープ3を介して缶底カバー4が取り付けられる。素電池2の上部には、両面テープ5を介して内部フレーム6が取り付けられる。保護素子7の一端は素電池2の端子8に溶接により接合され、リード9の一端は素電池2の端子10に溶接により接合される。樹脂製の内部フレーム6は保護回路10を支持し、保護回路10は内部フレーム6に形成されたスリットを挿通したリード9に、溶接により接合される。保護素子7及び保護回路10は、過充電・過電流・過放電等を防止するための保護手段である。
【0018】
樹脂製のカバー11には、孔12が形成されている。この孔12に、内部フレーム6から突出したボス13が挿通する。孔12を挿通したボス13の先端部を溶融変形させて、カバー11は、内部フレーム6に固定される。このことにより、素電池2の上部全体がカバー11により覆われることになる。カバー11を取り付けた後に、素電池2の外周面には、ラベル14が巻き付けられる。
【0019】
以下、図2−6を参照しながら、本実施の形態に係る電池パックについて、より具体的に説明する。図2−5は、本実施の形態に係る電池パックを製造工程順に図示したものである。図2は、素電池2に内部フレーム6を固定するまでの工程を示している。図2(a)は、両面テープ貼り付け工程を示しており、素電池2の上部の端子8、10部を除いた部分に、両面テープ5が貼り付けられる。
【0020】
図2(b)は、リード9の溶接工程及び内部フレーム6の取り付け工程を示している。素電池1の端子10に、リード9の一端が溶接される。さらに、内部フレーム6に形成されたスリットにリード9を挿通させた後、素電池1の上部に貼り付けている両面テープ5の片面に、内部フレーム6を接着する。図2(c)は、保護素子7の溶接工程を示している。内部フレーム6の開口に露出している端子8に、保護素子7の一端が溶接される。
【0021】
図3は、保護回路10の取り付け工程を示している。図3(d)は保護回路10を取り付ける直前の状態の斜視図を示している。図3(e)は保護回路10を取り付けた状態の斜視図を示している。保護回路10を内部フレーム6上に設置した後、リード9を保護回路10側に折り曲げる。この状態で、保護回路7の一端と保護回路10の一端とを溶接し(図3(d)のa部)、リード9の一端と保護回路10の他端とを溶接する(図3(d)のb部)。
【0022】
図3(e)の状態では、内部フレーム6は両面テープ5を介して素電池1に取り付けられている(図2(c)参照)。一方、保護回路10は、a部において、素電池1に溶接された保護素子7に溶接されている。したがって、内部フレーム6は、素電池1の上部に保護素子7を介して強固に固定された保護回路10を支持していることになる。
【0023】
一方、保護回路10は、内部フレーム6のスリットを挿通し一端が素電池1の端子8に溶接されたリード9に溶接されている。このため、内部フレーム6は、リード9を介して素電池1の上部に強固に固定された保護回路10の下部にあることになる。したがって、内部フレーム6は、保護回路10、リード9、及び両面テープ5を介して素電池1に強固に固定されていることになる。
【0024】
図4は、カバーの取り付け工程を示している。図4(f)の状態において、カバー11の孔12に内部フレーム6のボス13を挿通させる。図4(g)は、カバー11の孔12にボス13を挿通させた後の状態を示している。この状態で金属製の加熱ロッド15をボス13に押し当てる。このことにより、ボス13を溶融させながら加圧し、ボス13を溶融変形させる。図4(h)は、ボス13を溶融変形させた後の斜視図を示している。
【0025】
図6は、図4(h)のA−A線における断面図を示している。図6(a)に示したように、溶融変形後のボス13の先端は外径が広がっており、ボス13全体としては、略T字状になっている。外径の広がったボス13の先端部が、ストッパーの機能を果たし、カバー11は内部フレーム6に強固に固定されることになる。
【0026】
図6(b)は、断面形状の別の例を示している。カバー11の表面から窪んだ位置にある孔12を傾斜面16で囲むことにより、ボス13の先端部のボス13の軸方向の厚さが、図6(a)のボス13に比べて大きくなっている。このことにより、カバー11を外す方向(矢印B方向)に力が加わった際のせん断力に対する強度が増すことになる。この構成は、より強固なカバーの固定が必要な場合に有効である。
【0027】
ここで、内部フレーム6を形成する樹脂を低融点のものとし、カバー11を形成する樹脂を高融点のものとすることにより、内部フレーム6のボス13の溶融時に、外観部品であるカバー11が溶融することを防止でき、良好な外観を得ることができる。より具体的には、カバー11を形成する樹脂の融点は、内部フレーム6を形成する樹脂の融点に比べ、10℃以上高いことが好ましい。
【0028】
内部フレーム6とカバー11の材料の組み合わせの例として、内部フレーム6をPP(融点170℃)、カバー11をPC(融点240℃)とすることが挙げられる。また、内部フレーム6をPC(融点240℃)、カバー11をPET(融点260℃)としてもよい。
【0029】
図5は、缶底カバーの取り付けから電池パック完成までを示している。図5(i)に示したように、缶底カバー4を両面テープ3を介して素電池1の下部に貼り付ける。図5(j)は、素電池1の全周にラベル14(図1参照)を貼り付け、電池パック1が完成した状態を示している。
【0030】
本実施の形態の電池パックによれば、カバーと内部フレームとは、内部フレームと一体のボスの溶融変形により固定されている。このため、簡単な構造でありながら、カバーと内部フレームとが強固に固定され、耐衝撃性にも優れている。また、本実施の形態の電池パックは、取付けねじを用いたり、カバーを素電池に一体成形するものと比べると、部品点数の削減や、製造工程の簡素化を図ることができ、コスト面でも有利になる。
【0031】
なお、前記実施の形態では、カバー11は、素電池2の上部のみを覆う形状の例で説明したが、カバー11は、少なくとも素電池2の上部を覆う形状であればよく、素電池2全体を覆うケース状のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明の電池パックは、簡単な構造で強固にカバーを固定することができ、耐衝撃性に優れているので、例えば、携帯電話やモバイル機器に用いる電池パックとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電池パックの分解斜視図。
【図2】本発明の一実施の形態に係る素電池2に内部フレーム6を固定するまでの工程を示す斜視図であり、(a)図は両面テープ貼り付け工程、(b)図は保護素子7及びリード9の溶接工程、(c)図は内部フレーム6の取り付け工程を示している。
【図3】本発明の一実施の形態に係る保護回路10の取り付け工程を示す斜視図であり、(d)図は保護回路10を取り付ける直前の状態の斜視図、(e)図は保護回路10を取り付けた状態の斜視図。
【図4】本発明の一実施の形態に係るカバーの取り付け工程を示す斜視図であり、(f)図は孔12にボス13を挿通させる直前の斜視図、(g)図はカバー11の孔12にボス13を挿通させた後の状態を示す斜視図、(h)図は、ボス13を溶融変形させた後の斜視図。
【図5】本発明の一実施の形態に係る缶底カバー取り付けから電池パック完成までを示す斜視図であり、(i)図は缶底カバー4の貼り付け工程を示す斜視図、(j)図は電池パック1が完成した状態を示す斜視図。
【図6】(a)図は図4(h)のA−A線における断面図、(b)図は別の例に係る断面形状。
【図7】従来の電池パックの一例を示す斜視図であり、(a)図は電池パック全体の斜視図、(b)図は(a)図のC部の拡大図。
【符号の説明】
【0034】
1 電池パック
2 素電池
6 内部フレーム
7 保護素子
10 保護回路
11 カバー
12 孔
13 ボス
15 加熱ロッド
16 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素電池に保護回路及び保護素子を取り付け、前記保護回路及び前記保護素子がカバー内に収納されている電池パックであって、
前記カバー内に内部フレームを備えており、
前記内部フレームは、前記素電池に固定され、かつ前記保護回路を支持しており、
前記内部フレームから突出したボスが、前記カバーに設けた孔を挿通しており、
前記ボスの溶融変形により、前記カバーが前記内部フレームに固定されていることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記カバーの融点は、前記内部フレームの融点より高く、前記カバーの融点と前記内部フレームの融点との差が10℃以上である請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記カバーに設けた孔は、前記カバーの表面から窪んだ位置にあり、かつ傾斜面で囲まれている請求項1又は2に記載の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−110708(P2009−110708A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279221(P2007−279221)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】