電池モジュール
【課題】電池モジュール内の特定の素電池が急激に劣化することで、電池モジュールの寿命が短くなる可能性がある。
【解決手段】複数の素電池を熱伝導性材料からなるホルダーに収容し、素電池を冷却する冷却媒体を流す冷却経路を備えた電池モジュールであり、収容部と素電池との間には、熱抵抗層が設けられ、その熱抵抗値を冷却媒体の流れ方向に向かって次第に小さくするよう配置する。これにより、電池モジュールに収容される複数の電池の温度差の不均一性を解消する。
【解決手段】複数の素電池を熱伝導性材料からなるホルダーに収容し、素電池を冷却する冷却媒体を流す冷却経路を備えた電池モジュールであり、収容部と素電池との間には、熱抵抗層が設けられ、その熱抵抗値を冷却媒体の流れ方向に向かって次第に小さくするよう配置する。これにより、電池モジュールに収容される複数の電池の温度差の不均一性を解消する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルダー内に収容されている複数の素電池の充放電時における温度差の不均一性を解消した電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源又は省エネルギーの観点から、繰り返し使用できる二次電池を携帯型電子機器又は移動体通信機器等の電源として使用している。また、化石燃料の使用量の削減又は二酸化炭素の排出量の削減等の観点から、このような二次電池を車両又は蓄熱等の電源として使用することが検討されている。
【0003】
具体的には、二次電池(素電池)を電気的に接続して電池モジュールを構成し、この電池モジュールを車両等の電源として使用することが検討されている。このような電池モジュールは、多数の素電池が内蔵されているため、充放電時には素電池間に温度差が生じる。この温度差が大きい場合、特定の素電池が急激に劣化することで電池モジュールの寿命が短くなる可能性があるため、各々の素電池を効率よく均一に冷却し、充放電時における温度差の不均一性を解消させる必要がある。
【0004】
一般的な素電池の冷却方法として、例えば空冷方式を挙げることができる。空冷方式では、素電池の表面に冷却風を流すための冷却経路を形成し、素電池の熱を冷却風へ移動させることで、素電池を冷却する。
【0005】
しかしながら、車両等に用いられる電池モジュールは、ノートパソコン等に代表される民生用途よりも大電流で充放電が行われるため、素電池の発熱量は大きく、また、多くの素電池が搭載されているために、長い冷却経路が必要となる。そのため、冷却経路の上流では冷却風の温度が低く、冷却効率は高いが、下流に向かうに従って、素電池から受取った熱により冷却風の温度が上昇し、冷却効率は低下する。その結果、上流付近に配置される素電池と下流付近に配置される素電池との間に温度差が発生してしまう。
【0006】
上記のような充放電時の温度の不均一性を解消するために、例えば、特許文献1では、素電池を熱伝導性の筒で覆い、さらに筒の一部に素電池が露出する放熱領域を形成し、その放熱領域の面積を、冷却風の送風方向に向かって次第に大きくする提案がなされている。
【0007】
また、特許文献2では、冷却経路の上流側の素電池よりも、下流側の素電池に対する冷却効果の方が大きくなるように、例えば素電池を保持するホルダーの長さを、上流側より下流側の方を短くし、下流側の素電池の露出面積を大きくする提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−66773号公報
【特許文献2】特開2011−76841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような電池モジュールは、エネルギー密度を高めるために、複数の素電池を密に充填させて収容する必要がある。しかしながら、特許文献1又は2の電池モジュールでは、特に冷却経路の下流側に位置する素電池の露出面積が大きいため、1個の素電池が万一何
らかの異常により発熱した場合、近接する素電池において、その露出部分が、直接熱影響を受けてしまい、異常発熱を誘発する恐れがある。さらに、その発熱が連鎖し、多数の素電池において異常発熱が起こる危険性もある。したがって、安全性の観点からエネルギー密度を高めることが難しかった。
【0010】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、安全性を維持しつつ、充放電時における素電池の温度差の不均一性を解消することで、長寿命な電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数の素電池が配置されて構成された電池モジュールであって、前記複数の素電池は、熱伝導性材料からなるホルダーに形成された収容部に収容されており、前記電池モジュールには、前記素電池を冷却する冷却媒体が流れる冷却経路が備えられており、前記収容部と当該収容部に収容された素電池との間には、熱抵抗層が設けられており、各々の収容部に設けられる前記熱抵抗層の熱抵抗値が、前記冷却媒体の流れ方向に向かって次第に小さくなるよう配置されることを特徴とする。
【0012】
本発明の電池モジュールにおいて、複数の素電池は、熱伝導性材料からなるホルダーに形成された収容部に収容され、収容部とその収容部に収容された素電池との間(以下では「収容部内の隙間」と記す)には、熱抵抗層が設けられている。また、電池モジュールには、冷却媒体を流して素電池を冷却する冷却経路が備えられている。したがって、充放電時に素電池が発熱すると、その熱は収容部内の隙間に設けられた熱抵抗層を伝導して熱伝導性材料からなるホルダーに移動し、その熱を冷却媒体が奪うことによって、素電池は冷却される。
【0013】
また、本発明の電池モジュールでは、各々の収容部内の隙間に設けられる熱抵抗層は、その熱抵抗値が冷却媒体の流れ方向に向かって次第に小さくなるよう配置される。このような構造によれば、冷却経路の上流側では、熱抵抗値の大きい熱抵抗層が収容部に設けられることによって、素電池からホルダーへの熱移動が抑制され、冷却媒体の温度上昇を抑えることができる。一方、冷却経路の下流側では、上流側との冷却媒体の温度差が少なくなり、また収容部に設けられた熱抵抗層の熱抵抗値が低く、素電池からホルダーへ熱が伝導しやすいため、より素電池を冷却しやすくなる。したがって、上流側に配置される素電池と下流側に配置される素電池との温度差の不均一性を解消することができる。
【0014】
さらに、本発明の電池モジュールは、熱伝導性材料からなるホルダーの収容部に素電池を収容しているため、素電池はホルダーで覆われている。したがって、1個の素電池が、万一、異常発熱した場合であっても、近傍の素電池がその熱影響を直接受けることがないため、異常発熱が誘発されることなく、安全性が維持される。
【0015】
ここで、「異常発熱」とは、素電池を通常の充放電させた時の発熱とは異なる発熱であり、例えば素電池において内部短絡または外部短絡が発生した時の発熱である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安全性を維持しつつ、充放電時における素電池の温度差の不均一性を解消することで、長寿命な電池モジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電池モジュールに用いられる素電池の縦断面図
【図2】本発明の第1の実施の形態における電池モジュールの横断面図
【図3】本発明の第1の実施の形態における電池モジュールの縦断面図
【図4】第1の実施の形態の変形例1における電池モジュールの縦断面図
【図5】第1の実施の形態の変形例2における電池モジュールの縦断面図
【図6】本発明の電池モジュールに用いられるホルダーの斜視図
【図7】本発明の電池モジュールに用いられるホルダーの変形例を示す斜視図
【図8】本発明の第2の実施の形態における電池モジュールの断面図
【図9】本発明の第2の実施の形態の変形例1における電池モジュールの断面図
【図10】本発明の第2の実施の形態の変形例2における電池モジュールの断面図
【図11】本発明の電池モジュールの変形例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、他の実施形態との組み合わせも可能である。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施形態における電池モジュールに使用される素電池10の構成を示した断面図である。なお、本発明の電池モジュールに使用する素電池10は、ノート型パソコン等の携帯用電子機器の電源として単体でも使用できる素電池であってもよい。この場合、高性能の汎用電池を、電池モジュールの素電池として使用することができるため、電池モジュールの高性能化、低コスト化をより容易に図ることができる。
【0020】
本実施形態における素電池10は、例えばリチウムイオン二次電池であり、図1に示すように、電池ケース7の開口部がガスケット9を介して封口板8で封止されて構成されている。電池ケース7内には、正極板2と負極板1とがセパレータ3を介して捲回されて構成された電極群4が、非水電解質と共に収容されている。正極板2は、正極リード5を介して正極端子を兼ねる封口板8に接続されている。また、負極板1は、負極リード6を介して、負極端子を兼ねる電池ケース7の底部に接続されている。なお、封口板8には、開放部8aが形成されおり、素電池10の異常によりガスが発生した場合、その異常ガスは開放部8aから電池ケース7の外部へ排出される。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施形態における電池モジュール200の横断面図である。なお、図2では、図面が複雑になることを避けるために、素電池10についてはその外形のみを記している。以下、図9〜図11においても同様である。
【0022】
電池モジュール200は、素電池10を収容するホルダー22、及び冷却経路25を形成する冷却ダクト24により構成されている。冷却ダクト24は、ホルダー22の側面に設けられており、ファン100を駆動することで、ホルダー22と冷却ダクト24との間に形成された冷却経路25に冷却風を流すことができる。
【0023】
また、複数の素電池10は、アルミニウム等の熱伝導性材料からなるホルダー22に形成された収容部22aに収容されている。各々の収容部22a内では、素電池10の長手方向は収容部22aの長手方向と略平行となっている。
【0024】
収容部22aとその収容部22aに収容された素電池10との間には、それぞれ隙間が存在しており、この隙間には、熱抵抗層23が設けられている。よって、例えば、充放電時に、電池モジュール200の素電池10が発熱すると、その熱は熱抵抗層23を経由してホルダー22に移動する。したがって、各々の収容部22aに配置する熱抵抗層23の熱抵抗値を制御することで、素電池10からホルダー22へ伝導する熱量を調整することができる。また、ホルダー22に移動した熱は冷却風により取り除かれ、電池モジュール200の外部に放出される。
【0025】
ここで、本発明における熱抵抗層23は、熱抵抗値が0.1K/W以上、40K/W以下であることが好ましい。熱抵抗値が0.1K/Wより低いと、冷却経路25の上流側において、素電池10からホルダー22へ移動する熱量が多くなりすぎるため、上流側と下流側に配置される素電池間の温度差が大きくなる。また熱抵抗値が40K/Wより大きいと、素電池10からホルダー22へ移動する熱量が小さくなりすぎるため、通常の充放電においても、素電池10の温度が過度に上昇し、素電池10の寿命が低下する可能性がある。
【0026】
また、熱抵抗層23を構成する材料としては、熱伝導率が0.02W/m・K以上、0.5W/m・K以下の材料を用いることが好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、空気層などが好ましい。
【0027】
また本発明では、各々の収容部22a内の隙間に設けられる熱抵抗層23は、その熱抵抗値が冷却風の流れ方向(図2の矢印方向)に向かって次第に小さくなるよう配置される。
【0028】
このような構成によれば、冷却経路25の上流側(図2では左側)は、温度上昇が小さく、低温の冷却風が流れるため、ホルダー22の熱を効率良く除去することができる。したがって、収容部22aに配置される熱抵抗層23の熱抵抗値が大きくても、素電池10を冷却することができる。また、熱抵抗層23の熱抵抗値を大きくすることで、素電池10からホルダー22へ移動する熱量が抑えられ、冷却風が除去する熱量を低減し、下流側に流れる冷却風の温度上昇を抑えることができる。
【0029】
一方、下流側(図2では右側)は、熱抵抗層23の熱抵抗値が小さいため、上流側に配置される素電池10よりも多くの熱をホルダー22に移動させることができる。また、上述したように下流側での冷却風の温度上昇が抑えられるため、下流側においてもホルダー22の熱を効率良く取り去ることができる。
【0030】
このように、冷却経路25の下流側においても素電池の冷却が十分に行われることで、電池モジュール全体を均一に冷却することができる。
【0031】
ここで、熱抵抗層23の熱抵抗値を冷却媒体の流れ方向に向かって次第に小さくする方法としては、各々の収容部22a内に配置する熱抵抗層23を、冷却媒体の流れ方向に向かって次第に薄くしてもよく、また熱伝導率の高い材料としてもよい。
【0032】
図3は、本発明の第1の実施形態における電池モジュール200の縦断面図である。ホルダー22の外表面には冷却ダクト24が配置され、冷却経路25が形成されている。また、ホルダー22の内側には熱抵抗層23が設けられ、素電池10の側面を覆うよう配置されている。ここで、熱抵抗層23(熱伝導率λ[W/m・K]、熱抵抗層の厚みd[m]、伝熱面積A[m2])の熱抵抗値θ[K/mW]は、θ=d/(λ×A)の式で算出することができる。なお、熱伝導率λは熱抵抗層23に用いられる材料における固有の値である。また、伝熱面積Aは素電池10と熱抵抗層23との接触面積である。
【0033】
図4は、第1の実施の形態の変形例1における電池モジュール200の縦断面図である。熱抵抗層23は単一の材料からなる層である必要はなく、図4のように複数の層が積層してなる構造であっても良い。
【0034】
なお、図4に示すように、第1の熱抵抗層23a(熱伝導率λa[W/m・K]、熱抵抗層の厚みda[m]、伝熱面積Aa[m2])と、第2の熱抵抗層23b(熱伝導率λ
b[W/m・K]、熱抵抗層の厚みdb[m]、伝熱面積Ab[m2])が積層して配置された熱抵抗層23の熱抵抗値θ[K/mW]は、第1の熱抵抗層23aの熱抵抗値θaと第2の熱抵抗層23bの熱抵抗値θbを用い、以下の関係式から導き出すことができる。
θ=θa+θb={da/(λa×Aa)}+{db/(λb×Ab)}
図5は、第1の実施の形態の変形例2における電池モジュール200の縦断面図である。図5に示したように、熱抵抗層23は複数の層が素電池10の長手方向に並列して配置される構造としてもよい。
【0035】
なお、図5に示すように、第1の熱抵抗層23a(熱伝導率λa[W/m・K]、熱抵抗層の厚みda[m]、伝熱面積Aa[m2])と、第2の熱抵抗層23b((熱伝導率λb[W/m・K]、熱抵抗層の厚みdb[m]、伝熱面積Ab[m2])が並列して配置された熱抵抗層23の熱抵抗値θ[K/mW]は、第1の熱抵抗層23aの熱抵抗値θaと第2の熱抵抗層23bの熱抵抗値θbを用い、以下の関係式から導き出すことができる。
1/θ=1/θa+1/θb={(λa×Aa)/da}+{(λb×Ab)/db}
上記図4、図5に示したように、複数の層によって熱抵抗層23を構成した場合は、熱抵抗値の調整が容易になる。また、1層を空気層とすることで、電池モジュールの小型化が可能となる。これは、空気層は熱伝導率が極めて低いため、薄い層でも高い熱抵抗値が得られるからである。また、空気層を用いることで、熱抵抗層を構成する材料の使用量を低減できるため、コストの面でも有利となる。
【0036】
本発明では、収容部22aに配置される熱抵抗層23において、その熱抵抗値が冷却風の流れ方向に向かって次第に小さくなるように設置されるが、その熱抵抗値の変化の割合は冷却風の風量や冷却経路の長さによって適宜調整することができる。
【0037】
例えば、風量が多い場合や冷却経路を短くした場合は、冷却風は、上流側と下流側とで温度差が小さくなるため、熱抵抗値の変化の割合も小さくことが好ましい。これに対し、風量が少ない場合や冷却経路を長くした場合は、冷却風は、上流側と下流側とで温度差が大きくなるため、熱抵抗値の変化の割合も大きくする方が好ましい。
【0038】
また、収容部22aに配置される熱抵抗層は、冷却風の流れ方向に沿って各々の収容部ごとに、熱抵抗値を変化させるように熱抵抗層を配置しても良いし、複数個の素電池ごと(例えば、素電池5個ごと)に熱抵抗値を次第に小さくするように配置しても良い。例えば、ホルダー22の材料として熱伝導性の高いアルミニウムを用いた場合、ホルダー22内の近傍の素電池10同士は均熱化される。よって、必ずしも素電池10ごとに熱抵抗値を変化させなくても、温度差の不均一性を解消することができる。
【0039】
なお、本発明において、「熱伝導性材料からなるホルダー」は、ホルダー全体の熱伝導率が所定値(例えば30W/m・K)以上であれば良い。したがって、ホルダーの材料は、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属でもよく、熱伝導率の高い材料(例えばカーボン)を含有するプラスチックや、炭素繊維からなっても良い。なかでも、アルミニウムやアルミニウム合金は高い熱伝導性を有しているため、ホルダー22内に収容されている素電池10の熱を外部へ伝導させやく、しかも軽量であるため、電池モジュールの軽量化を達成することができる。
【0040】
また、ホルダー22は、図6に示すように、1つの基材に複数の収容部22aを設けた形状でも良く、図7に示すように、複数の筒状のホルダー同士を接合した形状でも良い。複数の筒状のホルダー同士を接合させる手段には、ロウ付け、はんだ付け、溶接、接着剤固定、押圧による固定等が挙げられる。
【0041】
また、ホルダー22は、素電池10の表面の2/3以上を覆っていることが好ましい。そうすることで、ある素電池が異常発熱した際に、近傍の素電池がその熱の影響を直接受けることにより、異常発熱が誘発されることを防ぐことができる。また、ホルダー22は、少なくとも素電池10の長手方向の中央部を覆うように構成することが好ましい。充放電において、素電池10は、特にその中央部の温度が高くなる。したがって、少なくとも中央部を覆うように構成することで、より温度差の不均一性を解消しやすくなる。
【0042】
(実施の形態2)
図8は、本発明の第2の実施形態における電池モジュール300の断面図である。本実施形態の電池モジュール300においても、複数の素電池10は、ホルダー22に形成された収容部22aに収容されており、収容部内の隙間には、熱抵抗層23が設けられている。また、ホルダー22の側面には冷却ダクト24が設けられており、ファン100を駆動することで、ホルダー22と冷却ダクト24との間に形成された冷却経路25に冷却風を流すことができる。ここで、本実施形態の電池モジュール300では、冷却ダクト24とホルダー22との間に整流板26が備えられている。そして、その整流板26によって下流側に向かって冷却経路25が除々に狭められている。換言すると、冷却経路25の断面積が下流側に向かって次第に減少している。このような構成にすることで、下流側で冷却風の風速を大きくすることができるため、冷却効率が大きくなり、素電池10間の温度差の不均一性を、より効果的に解消することができる。
【0043】
図9は、第2の実施の形態の変形例1における電池モジュール300の断面図である。整流板26は、必ずしも図8のように冷却経路25の全範囲に設ける必要はなく、図9に示すように、下流側にのみ設けてもよい。
【0044】
また、図10は、第2の実施の形態の変形例2における電池モジュールの断面図である。冷却経路25の断面積は、必ずしも図8や図9のように連続的に減少させる必要はなく、図10に示すように、不連続に減少させてもよい。
【0045】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。
【0046】
上記実施形態においては、素電池10を円筒のリチウムイオン二次電池としたが、これ以外の二次電池(例えばニッケル水素電池)であってもよく、また角型であってもよい。
【0047】
なお、本発明において、複数の素電池は、ホルダー内において、一列に配置されても良いし、二次元的に配置されていても良い。また、複数の素電池を二次元的に配置するときは、格子状に配列しても良いし、千鳥状に配列しても良い。特に、千鳥状に配置すれば、電池モジュール内において素電池の配置されていないデッドスペースを低減できるため、電池モジュールの体積増加を抑制できる。
【0048】
また、複数の素電池は、ホルダー内において直列接続されていても良いし、並列接続されていても良い。また、複数の素電池を互いに電気的に接続するための構成は、特に限定されない。
【0049】
また、ホルダーの収容部に配置される熱抵抗層は、ホルダーと素電池の隙間の全体に形成する必要はなく、例えば素電池の長手方向において、両端部のみに形成してもよい。
【0050】
また、電池モジュールを構成するホルダーは、1個でもよく複数個であってもよい。また、複数個のホルダーで構成する場合は、図11に示したように、冷却ダクトを用いずに
対向するホルダーの側面により冷却経路を形成してもよい。また、ホルダーは、樹脂ケースや金属ケースに収容されていてもよい。その場合、ホルダーは樹脂ケースや金属ケースを介して冷却されることになるが、その場合でも、ホルダーの熱伝導率を高くすることで同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明は例えば車両用電源または蓄エネルギーシステム電源等に有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 負極板
2 正極板
3 セパレータ
4 電極群
5 正極リード
6 負極リード
7 電池ケース
8 正極端子(封口板)
8a 開放部
9 ガスケット
10 素電池
22 ホルダー
22a 収容部
23 熱抵抗層
23a 第1の熱抵抗層
23b 第2の熱抵抗層
24 冷却ダクト
25 冷却経路
26 整流板
100 ファン
200、300 電池モジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルダー内に収容されている複数の素電池の充放電時における温度差の不均一性を解消した電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源又は省エネルギーの観点から、繰り返し使用できる二次電池を携帯型電子機器又は移動体通信機器等の電源として使用している。また、化石燃料の使用量の削減又は二酸化炭素の排出量の削減等の観点から、このような二次電池を車両又は蓄熱等の電源として使用することが検討されている。
【0003】
具体的には、二次電池(素電池)を電気的に接続して電池モジュールを構成し、この電池モジュールを車両等の電源として使用することが検討されている。このような電池モジュールは、多数の素電池が内蔵されているため、充放電時には素電池間に温度差が生じる。この温度差が大きい場合、特定の素電池が急激に劣化することで電池モジュールの寿命が短くなる可能性があるため、各々の素電池を効率よく均一に冷却し、充放電時における温度差の不均一性を解消させる必要がある。
【0004】
一般的な素電池の冷却方法として、例えば空冷方式を挙げることができる。空冷方式では、素電池の表面に冷却風を流すための冷却経路を形成し、素電池の熱を冷却風へ移動させることで、素電池を冷却する。
【0005】
しかしながら、車両等に用いられる電池モジュールは、ノートパソコン等に代表される民生用途よりも大電流で充放電が行われるため、素電池の発熱量は大きく、また、多くの素電池が搭載されているために、長い冷却経路が必要となる。そのため、冷却経路の上流では冷却風の温度が低く、冷却効率は高いが、下流に向かうに従って、素電池から受取った熱により冷却風の温度が上昇し、冷却効率は低下する。その結果、上流付近に配置される素電池と下流付近に配置される素電池との間に温度差が発生してしまう。
【0006】
上記のような充放電時の温度の不均一性を解消するために、例えば、特許文献1では、素電池を熱伝導性の筒で覆い、さらに筒の一部に素電池が露出する放熱領域を形成し、その放熱領域の面積を、冷却風の送風方向に向かって次第に大きくする提案がなされている。
【0007】
また、特許文献2では、冷却経路の上流側の素電池よりも、下流側の素電池に対する冷却効果の方が大きくなるように、例えば素電池を保持するホルダーの長さを、上流側より下流側の方を短くし、下流側の素電池の露出面積を大きくする提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−66773号公報
【特許文献2】特開2011−76841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような電池モジュールは、エネルギー密度を高めるために、複数の素電池を密に充填させて収容する必要がある。しかしながら、特許文献1又は2の電池モジュールでは、特に冷却経路の下流側に位置する素電池の露出面積が大きいため、1個の素電池が万一何
らかの異常により発熱した場合、近接する素電池において、その露出部分が、直接熱影響を受けてしまい、異常発熱を誘発する恐れがある。さらに、その発熱が連鎖し、多数の素電池において異常発熱が起こる危険性もある。したがって、安全性の観点からエネルギー密度を高めることが難しかった。
【0010】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、安全性を維持しつつ、充放電時における素電池の温度差の不均一性を解消することで、長寿命な電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数の素電池が配置されて構成された電池モジュールであって、前記複数の素電池は、熱伝導性材料からなるホルダーに形成された収容部に収容されており、前記電池モジュールには、前記素電池を冷却する冷却媒体が流れる冷却経路が備えられており、前記収容部と当該収容部に収容された素電池との間には、熱抵抗層が設けられており、各々の収容部に設けられる前記熱抵抗層の熱抵抗値が、前記冷却媒体の流れ方向に向かって次第に小さくなるよう配置されることを特徴とする。
【0012】
本発明の電池モジュールにおいて、複数の素電池は、熱伝導性材料からなるホルダーに形成された収容部に収容され、収容部とその収容部に収容された素電池との間(以下では「収容部内の隙間」と記す)には、熱抵抗層が設けられている。また、電池モジュールには、冷却媒体を流して素電池を冷却する冷却経路が備えられている。したがって、充放電時に素電池が発熱すると、その熱は収容部内の隙間に設けられた熱抵抗層を伝導して熱伝導性材料からなるホルダーに移動し、その熱を冷却媒体が奪うことによって、素電池は冷却される。
【0013】
また、本発明の電池モジュールでは、各々の収容部内の隙間に設けられる熱抵抗層は、その熱抵抗値が冷却媒体の流れ方向に向かって次第に小さくなるよう配置される。このような構造によれば、冷却経路の上流側では、熱抵抗値の大きい熱抵抗層が収容部に設けられることによって、素電池からホルダーへの熱移動が抑制され、冷却媒体の温度上昇を抑えることができる。一方、冷却経路の下流側では、上流側との冷却媒体の温度差が少なくなり、また収容部に設けられた熱抵抗層の熱抵抗値が低く、素電池からホルダーへ熱が伝導しやすいため、より素電池を冷却しやすくなる。したがって、上流側に配置される素電池と下流側に配置される素電池との温度差の不均一性を解消することができる。
【0014】
さらに、本発明の電池モジュールは、熱伝導性材料からなるホルダーの収容部に素電池を収容しているため、素電池はホルダーで覆われている。したがって、1個の素電池が、万一、異常発熱した場合であっても、近傍の素電池がその熱影響を直接受けることがないため、異常発熱が誘発されることなく、安全性が維持される。
【0015】
ここで、「異常発熱」とは、素電池を通常の充放電させた時の発熱とは異なる発熱であり、例えば素電池において内部短絡または外部短絡が発生した時の発熱である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安全性を維持しつつ、充放電時における素電池の温度差の不均一性を解消することで、長寿命な電池モジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電池モジュールに用いられる素電池の縦断面図
【図2】本発明の第1の実施の形態における電池モジュールの横断面図
【図3】本発明の第1の実施の形態における電池モジュールの縦断面図
【図4】第1の実施の形態の変形例1における電池モジュールの縦断面図
【図5】第1の実施の形態の変形例2における電池モジュールの縦断面図
【図6】本発明の電池モジュールに用いられるホルダーの斜視図
【図7】本発明の電池モジュールに用いられるホルダーの変形例を示す斜視図
【図8】本発明の第2の実施の形態における電池モジュールの断面図
【図9】本発明の第2の実施の形態の変形例1における電池モジュールの断面図
【図10】本発明の第2の実施の形態の変形例2における電池モジュールの断面図
【図11】本発明の電池モジュールの変形例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、他の実施形態との組み合わせも可能である。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施形態における電池モジュールに使用される素電池10の構成を示した断面図である。なお、本発明の電池モジュールに使用する素電池10は、ノート型パソコン等の携帯用電子機器の電源として単体でも使用できる素電池であってもよい。この場合、高性能の汎用電池を、電池モジュールの素電池として使用することができるため、電池モジュールの高性能化、低コスト化をより容易に図ることができる。
【0020】
本実施形態における素電池10は、例えばリチウムイオン二次電池であり、図1に示すように、電池ケース7の開口部がガスケット9を介して封口板8で封止されて構成されている。電池ケース7内には、正極板2と負極板1とがセパレータ3を介して捲回されて構成された電極群4が、非水電解質と共に収容されている。正極板2は、正極リード5を介して正極端子を兼ねる封口板8に接続されている。また、負極板1は、負極リード6を介して、負極端子を兼ねる電池ケース7の底部に接続されている。なお、封口板8には、開放部8aが形成されおり、素電池10の異常によりガスが発生した場合、その異常ガスは開放部8aから電池ケース7の外部へ排出される。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施形態における電池モジュール200の横断面図である。なお、図2では、図面が複雑になることを避けるために、素電池10についてはその外形のみを記している。以下、図9〜図11においても同様である。
【0022】
電池モジュール200は、素電池10を収容するホルダー22、及び冷却経路25を形成する冷却ダクト24により構成されている。冷却ダクト24は、ホルダー22の側面に設けられており、ファン100を駆動することで、ホルダー22と冷却ダクト24との間に形成された冷却経路25に冷却風を流すことができる。
【0023】
また、複数の素電池10は、アルミニウム等の熱伝導性材料からなるホルダー22に形成された収容部22aに収容されている。各々の収容部22a内では、素電池10の長手方向は収容部22aの長手方向と略平行となっている。
【0024】
収容部22aとその収容部22aに収容された素電池10との間には、それぞれ隙間が存在しており、この隙間には、熱抵抗層23が設けられている。よって、例えば、充放電時に、電池モジュール200の素電池10が発熱すると、その熱は熱抵抗層23を経由してホルダー22に移動する。したがって、各々の収容部22aに配置する熱抵抗層23の熱抵抗値を制御することで、素電池10からホルダー22へ伝導する熱量を調整することができる。また、ホルダー22に移動した熱は冷却風により取り除かれ、電池モジュール200の外部に放出される。
【0025】
ここで、本発明における熱抵抗層23は、熱抵抗値が0.1K/W以上、40K/W以下であることが好ましい。熱抵抗値が0.1K/Wより低いと、冷却経路25の上流側において、素電池10からホルダー22へ移動する熱量が多くなりすぎるため、上流側と下流側に配置される素電池間の温度差が大きくなる。また熱抵抗値が40K/Wより大きいと、素電池10からホルダー22へ移動する熱量が小さくなりすぎるため、通常の充放電においても、素電池10の温度が過度に上昇し、素電池10の寿命が低下する可能性がある。
【0026】
また、熱抵抗層23を構成する材料としては、熱伝導率が0.02W/m・K以上、0.5W/m・K以下の材料を用いることが好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、空気層などが好ましい。
【0027】
また本発明では、各々の収容部22a内の隙間に設けられる熱抵抗層23は、その熱抵抗値が冷却風の流れ方向(図2の矢印方向)に向かって次第に小さくなるよう配置される。
【0028】
このような構成によれば、冷却経路25の上流側(図2では左側)は、温度上昇が小さく、低温の冷却風が流れるため、ホルダー22の熱を効率良く除去することができる。したがって、収容部22aに配置される熱抵抗層23の熱抵抗値が大きくても、素電池10を冷却することができる。また、熱抵抗層23の熱抵抗値を大きくすることで、素電池10からホルダー22へ移動する熱量が抑えられ、冷却風が除去する熱量を低減し、下流側に流れる冷却風の温度上昇を抑えることができる。
【0029】
一方、下流側(図2では右側)は、熱抵抗層23の熱抵抗値が小さいため、上流側に配置される素電池10よりも多くの熱をホルダー22に移動させることができる。また、上述したように下流側での冷却風の温度上昇が抑えられるため、下流側においてもホルダー22の熱を効率良く取り去ることができる。
【0030】
このように、冷却経路25の下流側においても素電池の冷却が十分に行われることで、電池モジュール全体を均一に冷却することができる。
【0031】
ここで、熱抵抗層23の熱抵抗値を冷却媒体の流れ方向に向かって次第に小さくする方法としては、各々の収容部22a内に配置する熱抵抗層23を、冷却媒体の流れ方向に向かって次第に薄くしてもよく、また熱伝導率の高い材料としてもよい。
【0032】
図3は、本発明の第1の実施形態における電池モジュール200の縦断面図である。ホルダー22の外表面には冷却ダクト24が配置され、冷却経路25が形成されている。また、ホルダー22の内側には熱抵抗層23が設けられ、素電池10の側面を覆うよう配置されている。ここで、熱抵抗層23(熱伝導率λ[W/m・K]、熱抵抗層の厚みd[m]、伝熱面積A[m2])の熱抵抗値θ[K/mW]は、θ=d/(λ×A)の式で算出することができる。なお、熱伝導率λは熱抵抗層23に用いられる材料における固有の値である。また、伝熱面積Aは素電池10と熱抵抗層23との接触面積である。
【0033】
図4は、第1の実施の形態の変形例1における電池モジュール200の縦断面図である。熱抵抗層23は単一の材料からなる層である必要はなく、図4のように複数の層が積層してなる構造であっても良い。
【0034】
なお、図4に示すように、第1の熱抵抗層23a(熱伝導率λa[W/m・K]、熱抵抗層の厚みda[m]、伝熱面積Aa[m2])と、第2の熱抵抗層23b(熱伝導率λ
b[W/m・K]、熱抵抗層の厚みdb[m]、伝熱面積Ab[m2])が積層して配置された熱抵抗層23の熱抵抗値θ[K/mW]は、第1の熱抵抗層23aの熱抵抗値θaと第2の熱抵抗層23bの熱抵抗値θbを用い、以下の関係式から導き出すことができる。
θ=θa+θb={da/(λa×Aa)}+{db/(λb×Ab)}
図5は、第1の実施の形態の変形例2における電池モジュール200の縦断面図である。図5に示したように、熱抵抗層23は複数の層が素電池10の長手方向に並列して配置される構造としてもよい。
【0035】
なお、図5に示すように、第1の熱抵抗層23a(熱伝導率λa[W/m・K]、熱抵抗層の厚みda[m]、伝熱面積Aa[m2])と、第2の熱抵抗層23b((熱伝導率λb[W/m・K]、熱抵抗層の厚みdb[m]、伝熱面積Ab[m2])が並列して配置された熱抵抗層23の熱抵抗値θ[K/mW]は、第1の熱抵抗層23aの熱抵抗値θaと第2の熱抵抗層23bの熱抵抗値θbを用い、以下の関係式から導き出すことができる。
1/θ=1/θa+1/θb={(λa×Aa)/da}+{(λb×Ab)/db}
上記図4、図5に示したように、複数の層によって熱抵抗層23を構成した場合は、熱抵抗値の調整が容易になる。また、1層を空気層とすることで、電池モジュールの小型化が可能となる。これは、空気層は熱伝導率が極めて低いため、薄い層でも高い熱抵抗値が得られるからである。また、空気層を用いることで、熱抵抗層を構成する材料の使用量を低減できるため、コストの面でも有利となる。
【0036】
本発明では、収容部22aに配置される熱抵抗層23において、その熱抵抗値が冷却風の流れ方向に向かって次第に小さくなるように設置されるが、その熱抵抗値の変化の割合は冷却風の風量や冷却経路の長さによって適宜調整することができる。
【0037】
例えば、風量が多い場合や冷却経路を短くした場合は、冷却風は、上流側と下流側とで温度差が小さくなるため、熱抵抗値の変化の割合も小さくことが好ましい。これに対し、風量が少ない場合や冷却経路を長くした場合は、冷却風は、上流側と下流側とで温度差が大きくなるため、熱抵抗値の変化の割合も大きくする方が好ましい。
【0038】
また、収容部22aに配置される熱抵抗層は、冷却風の流れ方向に沿って各々の収容部ごとに、熱抵抗値を変化させるように熱抵抗層を配置しても良いし、複数個の素電池ごと(例えば、素電池5個ごと)に熱抵抗値を次第に小さくするように配置しても良い。例えば、ホルダー22の材料として熱伝導性の高いアルミニウムを用いた場合、ホルダー22内の近傍の素電池10同士は均熱化される。よって、必ずしも素電池10ごとに熱抵抗値を変化させなくても、温度差の不均一性を解消することができる。
【0039】
なお、本発明において、「熱伝導性材料からなるホルダー」は、ホルダー全体の熱伝導率が所定値(例えば30W/m・K)以上であれば良い。したがって、ホルダーの材料は、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属でもよく、熱伝導率の高い材料(例えばカーボン)を含有するプラスチックや、炭素繊維からなっても良い。なかでも、アルミニウムやアルミニウム合金は高い熱伝導性を有しているため、ホルダー22内に収容されている素電池10の熱を外部へ伝導させやく、しかも軽量であるため、電池モジュールの軽量化を達成することができる。
【0040】
また、ホルダー22は、図6に示すように、1つの基材に複数の収容部22aを設けた形状でも良く、図7に示すように、複数の筒状のホルダー同士を接合した形状でも良い。複数の筒状のホルダー同士を接合させる手段には、ロウ付け、はんだ付け、溶接、接着剤固定、押圧による固定等が挙げられる。
【0041】
また、ホルダー22は、素電池10の表面の2/3以上を覆っていることが好ましい。そうすることで、ある素電池が異常発熱した際に、近傍の素電池がその熱の影響を直接受けることにより、異常発熱が誘発されることを防ぐことができる。また、ホルダー22は、少なくとも素電池10の長手方向の中央部を覆うように構成することが好ましい。充放電において、素電池10は、特にその中央部の温度が高くなる。したがって、少なくとも中央部を覆うように構成することで、より温度差の不均一性を解消しやすくなる。
【0042】
(実施の形態2)
図8は、本発明の第2の実施形態における電池モジュール300の断面図である。本実施形態の電池モジュール300においても、複数の素電池10は、ホルダー22に形成された収容部22aに収容されており、収容部内の隙間には、熱抵抗層23が設けられている。また、ホルダー22の側面には冷却ダクト24が設けられており、ファン100を駆動することで、ホルダー22と冷却ダクト24との間に形成された冷却経路25に冷却風を流すことができる。ここで、本実施形態の電池モジュール300では、冷却ダクト24とホルダー22との間に整流板26が備えられている。そして、その整流板26によって下流側に向かって冷却経路25が除々に狭められている。換言すると、冷却経路25の断面積が下流側に向かって次第に減少している。このような構成にすることで、下流側で冷却風の風速を大きくすることができるため、冷却効率が大きくなり、素電池10間の温度差の不均一性を、より効果的に解消することができる。
【0043】
図9は、第2の実施の形態の変形例1における電池モジュール300の断面図である。整流板26は、必ずしも図8のように冷却経路25の全範囲に設ける必要はなく、図9に示すように、下流側にのみ設けてもよい。
【0044】
また、図10は、第2の実施の形態の変形例2における電池モジュールの断面図である。冷却経路25の断面積は、必ずしも図8や図9のように連続的に減少させる必要はなく、図10に示すように、不連続に減少させてもよい。
【0045】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。
【0046】
上記実施形態においては、素電池10を円筒のリチウムイオン二次電池としたが、これ以外の二次電池(例えばニッケル水素電池)であってもよく、また角型であってもよい。
【0047】
なお、本発明において、複数の素電池は、ホルダー内において、一列に配置されても良いし、二次元的に配置されていても良い。また、複数の素電池を二次元的に配置するときは、格子状に配列しても良いし、千鳥状に配列しても良い。特に、千鳥状に配置すれば、電池モジュール内において素電池の配置されていないデッドスペースを低減できるため、電池モジュールの体積増加を抑制できる。
【0048】
また、複数の素電池は、ホルダー内において直列接続されていても良いし、並列接続されていても良い。また、複数の素電池を互いに電気的に接続するための構成は、特に限定されない。
【0049】
また、ホルダーの収容部に配置される熱抵抗層は、ホルダーと素電池の隙間の全体に形成する必要はなく、例えば素電池の長手方向において、両端部のみに形成してもよい。
【0050】
また、電池モジュールを構成するホルダーは、1個でもよく複数個であってもよい。また、複数個のホルダーで構成する場合は、図11に示したように、冷却ダクトを用いずに
対向するホルダーの側面により冷却経路を形成してもよい。また、ホルダーは、樹脂ケースや金属ケースに収容されていてもよい。その場合、ホルダーは樹脂ケースや金属ケースを介して冷却されることになるが、その場合でも、ホルダーの熱伝導率を高くすることで同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明は例えば車両用電源または蓄エネルギーシステム電源等に有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 負極板
2 正極板
3 セパレータ
4 電極群
5 正極リード
6 負極リード
7 電池ケース
8 正極端子(封口板)
8a 開放部
9 ガスケット
10 素電池
22 ホルダー
22a 収容部
23 熱抵抗層
23a 第1の熱抵抗層
23b 第2の熱抵抗層
24 冷却ダクト
25 冷却経路
26 整流板
100 ファン
200、300 電池モジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素電池が配置されて構成された電池モジュールであって、
前記複数の素電池は、熱伝導性材料からなるホルダーに形成された収容部に収容されており、
前記電池モジュールには、前記素電池を冷却する冷却媒体が流れる冷却経路が備えられており、
前記収容部と当該収容部に収容された素電池との間には、熱抵抗層が設けられており、各々の収容部に設けられる前記熱抵抗層の熱抵抗値が、前記冷却媒体の流れ方向に向かって次第に小さくなるよう配置される電池モジュール。
【請求項2】
前記熱抵抗層は、熱伝導率が0.02W/m・K以上、0.5W/m・K以下の材料からなる層を、少なくとも1層含む請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記熱抵抗層が、空気層である請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記ホルダーは、当該ホルダーの収容部に収容された素電池の表面を2/3以上覆っている請求項1から3の何れか1つに記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記冷却媒体の流速は、下流側が上流側よりも大きい請求項1から4の何れか1つに記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記ホルダーの熱伝導率は、30W/m・K以上である請求項1から5の何れか1つに記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記ホルダーは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる請求項1から6の何れか1つに記載の電池モジュール。
【請求項1】
複数の素電池が配置されて構成された電池モジュールであって、
前記複数の素電池は、熱伝導性材料からなるホルダーに形成された収容部に収容されており、
前記電池モジュールには、前記素電池を冷却する冷却媒体が流れる冷却経路が備えられており、
前記収容部と当該収容部に収容された素電池との間には、熱抵抗層が設けられており、各々の収容部に設けられる前記熱抵抗層の熱抵抗値が、前記冷却媒体の流れ方向に向かって次第に小さくなるよう配置される電池モジュール。
【請求項2】
前記熱抵抗層は、熱伝導率が0.02W/m・K以上、0.5W/m・K以下の材料からなる層を、少なくとも1層含む請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記熱抵抗層が、空気層である請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記ホルダーは、当該ホルダーの収容部に収容された素電池の表面を2/3以上覆っている請求項1から3の何れか1つに記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記冷却媒体の流速は、下流側が上流側よりも大きい請求項1から4の何れか1つに記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記ホルダーの熱伝導率は、30W/m・K以上である請求項1から5の何れか1つに記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記ホルダーは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる請求項1から6の何れか1つに記載の電池モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−77432(P2013−77432A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216351(P2011−216351)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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