説明

電源システム

【課題】DCDCコンバータ12のDuty信号の更新周期を短くしてかつ、電源システムの異常の有無を判断することのできる電源システムを提供する。
【解決手段】出力側電圧センサ26の検出値等を入力として、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれから出力されるDuty信号に基づきスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2のオン状態とされる期間が互いに重ならないように、これら制御回路16,18のそれぞれによってDuty信号を生成する。そして、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれに入力された上記検出値同士の比較に基づき、電源システムに異常が生じているか否かを判断する。そして、電源システムに異常が生じている旨判断された場合、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のうちDuty信号のオン時間が短い方に対応する制御回路から出力されるDuty信号のオン時間を2倍にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子のオン状態及びオフ状態の1周期に対するオン時間の比率を規定する時比率信号を生成する制御回路を有して且つ、前記生成される時比率信号に基づく前記スイッチング素子のオンオフ操作によって出力電圧が制御されるDCDCコンバータを備える電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1,2に見られるように、スイッチング素子のオン状態及びオフ状態の1周期に対するオン時間の比率を規定する時比率信号(Duty信号)をコントローラによって生成し、生成されたDuty信号に基づくスイッチング素子のオンオフ操作によって出力電圧が制御されるDCDCコンバータを備える電源システムが知られている。
【0003】
また、電源システムとしては、下記特許文献3に見られるように、複数のDCDCコンバータの並列接続体を備えるものも知られている。こうした構成は、電源システムの信頼性を向上させたり、電源システムの給電先への供給電流の最大値を増大させたりすることを目的としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−94690号公報
【特許文献2】特開2006−101680号公報
【特許文献3】特開2007−318949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、DCDCコンバータの出力電圧の応答性を高めたり、スイッチング速度を高周波数としてDCDCコンバータを構成する部品の小型化を図ったりすることを目的として、Duty信号の更新周期を短くすることが考えられる。しかしながら、Duty信号を生成するコントローラの演算速度の制約などから、Duty信号の更新周期の短縮を十分に図れない場合には、上述した目的を達成できないことが懸念される。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、DCDCコンバータの時比率信号の更新周期を短くすることのできる新たな電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、スイッチング素子のオン状態及びオフ状態の1周期に対するオン時間の比率を規定する時比率信号を生成する制御回路を有して且つ、前記生成される時比率信号に基づく前記スイッチング素子のオンオフ操作によって出力電圧が制御されるDCDCコンバータを備える電源システムにおいて、前記制御回路は、1つの前記DCDCコンバータに複数備えられ、複数の前記制御回路のそれぞれは、これら制御回路のそれぞれから出力される前記時比率信号に基づき前記スイッチング素子のオン状態とされる期間が互いに重ならないように前記時比率信号を生成することを特徴とする。
【0009】
上記発明では、1つのDCDCコンバータに複数の制御回路が備えられている。そして、複数の制御回路のそれぞれから出力される時比率信号に基づきスイッチング素子のオン状態とされる期間が互いに重ならないように、これら制御回路のそれぞれによって時比率信号が生成される。こうした構成によれば、時比率信号の更新周期を短くすることができる。これにより、DCDCコンバータの出力電圧の応答性を高めたり、スイッチング周波数を高周波数としてDCDCコンバータを構成する部品の小型化を図ったりすることができる。
【0010】
なお、上記発明において、電源システムに備えられるDCDCコンバータは1つであってもよいし、複数であってもよい。ここで、電源システムに備えられるDCDCコンバータが複数の場合、複数のDCDCコンバータのそれぞれに複数の制御回路が備えられることとなる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、当該電源システムの電流流通経路の電圧又は電流を検出する検出手段を更に備え、複数の前記制御回路のそれぞれは、前記検出手段の検出値を入力として前記時比率信号を生成し、複数の前記制御回路のそれぞれに入力された前記検出手段の検出値同士の比較、及び複数の前記制御回路のそれぞれによって生成された前記時比率信号同士の比較のうち少なくとも1つに基づき、当該電源システムに異常が生じているか否かを判断する異常判断手段を更に備えることを特徴とする。
【0012】
上記発明では、DCDCコンバータが備える複数の制御回路のそれぞれにおいて、検出手段の検出値を入力として時比率信号が生成される。ここで、検出手段や、検出手段及び制御回路の間を接続する信号経路、更には制御回路に生じる異常等、電源システムに異常が生じることがある。この場合、制御回路から出力される時比率信号が適切な信号からずれることに起因して、DCDCコンバータの出力電圧が想定した電圧から大きくずれ、種々の不都合が生じるおそれがある。詳しくは、例えば、DCDCコンバータの出力電圧が想定した電圧よりも過度に高くなることで、DCDCコンバータの出力電圧が給電先となる機器の定格電圧を大きく上回り、機器の信頼性が低下するおそれがある。また、例えば、DCDCコンバータの出力電圧が想定した電圧よりも過度に低くなることで、給電先となる機器に対する電力供給が不足するおそれがある。
【0013】
ここで、電源システムに異常が生じると、制御回路において用いられる検出手段の検出値が真値から大きくずれ得る。また、電源システムに異常が生じると、上述したように、制御回路において生成される時比率信号が適切な信号ではなくなり得る。すなわち、複数の制御回路を有するDCDCコンバータが備えられる電源システムにおいてこのシステムに異常が生じる場合、これら制御回路のそれぞれに入力された検出手段の検出値同士が大きく相違したり、これら制御回路のそれぞれによって生成された時比率信号同士が大きく相違したりする。
【0014】
こうした点に鑑み、上記発明では、複数の制御回路のそれぞれに入力された検出手段の検出値同士の比較、及び複数の制御回路のそれぞれによって生成された時比率信号同士の比較のうち少なくとも1つに基づき、電源システムに異常が生じているか否かを適切に判断することができる。これにより、電源システムに異常が生じる場合であっても、その後の対応を適切にとることなどができる。
【0015】
なお、上記発明において、上記検出手段の検出値同士の比較に基づく異常判断手法としては、例えば、上記検出手段の検出値同士の差の絶対値が第1の規定値を上回ることに基づき、電源システムに異常が生じている旨判断する手法を採用することができる。また、上記生成された時比率信号同士の比較に基づく異常判断手法としては、例えば、上記生成された時比率信号同士の差の絶対値が第2の規定値を上回ることに基づき、電源システムに異常が生じている旨判断する手法を採用することができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記異常判断手段によって当該電源システムに異常が生じている旨判断された場合、複数の前記制御回路のそれぞれによって生成された前記時比率信号のうち前記オン時間が最短となる時比率信号を選択する選択手段と、前記選択手段によって選択された時比率信号の前記オン時間を長くするオン時間伸長手段と、前記オン時間伸長手段によって前記オン時間が長くされた時比率信号によって前記スイッチング素子をオンオフ操作する異常時操作手段とを更に備えることを特徴とする。
【0017】
上記発明では、電源システムに異常が生じている旨判断された場合、複数の制御回路のそれぞれによって生成された時比率信号のうちオン時間が最短となる時比率信号を選択する。そして、選択された時比率信号のオン時間を長くしてかつ、オン時間が長くされた時比率信号によってスイッチング素子をオンオフ操作する。こうした構成によれば、DCDCコンバータの出力電圧が想定した電圧よりも過度に高くなる事態の発生を抑制することができ、また、電源システムの給電先に対する電力供給不足の発生を抑制することもできる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記制御回路は、1つの前記DCDCコンバータに3つ以上備えられ、前記異常判断手段によって当該電源システムに異常が生じている旨判断された場合、前記3つ以上の制御回路のそれぞれによって生成された前記時比率信号のうち互いに同一である前記オン時間の数が最も多い時比率信号を選択する選択手段と、前記選択手段によって選択された時比率信号の前記オン時間を長くするオン時間伸長手段と、前記オン時間伸長手段によって前記オン時間が長くされた時比率信号によって前記スイッチング素子をオンオフ操作する異常時多数決操作手段とを更に備えることを特徴とする。
【0019】
上記発明では、電源システムに異常が生じている旨判断された場合、3つ以上の制御回路のそれぞれによって生成された時比率信号のうち互いに同一であるオン時間の数が最も多い時比率信号を選択する。そして、選択された時比率信号のオン時間を長くしてかつ、オン時間が長くされた時比率信号によってスイッチング素子をオンオフ操作する。こうした上記発明によれば、電源システムに異常が生じる場合であっても、正常である蓋然性の高い時比率信号によってスイッチング素子をオンオフ操作することができる。これにより、電源システムの信頼性の低下を好適に抑制することができ、また、電源システムの給電先に対する電力供給不足の発生を抑制することもできる。
【0020】
なお、上記発明において、上記3つ以上の制御回路には、時比率信号を生成した後、スイッチング素子に時比率信号を伝達可能な回路構成の制御回路に限らず、スイッチング素子に時比率信号を伝達不可能な回路構成の制御回路も含まれ得る。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記3つ以上の制御回路のうち一部であってかつ少なくとも2つは前記時比率信号を前記スイッチング素子に伝達可能とされ、残余は前記時比率信号を前記スイッチング素子に伝達不可能とされ、前記異常判断手段によって前記3つ以上の制御回路のうち前記時比率信号を前記スイッチング素子に伝達不可能な制御回路のみに異常が生じている旨判断された場合、前記オン時間伸長手段によって前記時比率信号の前記オン時間を長くすることなく、前記時比率信号を前記スイッチング素子に伝達可能な制御回路のそれぞれから前記スイッチング素子への前記時比率信号の伝達を継続させる継続操作手段を更に備えることを特徴とする。
【0022】
上記発明では、3つ以上の制御回路に時比率信号をスイッチング素子に伝達不可能とされる制御回路が含まれている。ここで、電源システムの異常として上記伝達不可能とされる制御回路の異常が生じることがある。この場合、3つ以上の制御回路のそれぞれによって生成された時比率信号のうち互いに同一であるオン時間の数が最も多い時比率信号は、上記伝達可能とされる制御回路のそれぞれによって生成された時比率信号である。すなわち、上記伝達可能とされる制御回路によって生成された時比率信号は、正常である蓋然性が高い。この点に鑑み、上記発明では、上記伝達不可能な制御回路のみに異常が生じている旨判断された場合、上記伝達可能な制御回路のそれぞれによって生成された正常である蓋然性の高い時比率信号のスイッチング素子への伝達を継続させる。
【0023】
請求項6記載の発明は、請求項3〜5のいずれか1項に記載の発明において、複数の前記制御回路のうち前記選択手段によって選択された時比率信号を生成する制御回路以外の制御回路から前記スイッチング素子への前記時比率信号の伝達を遮断する信号遮断手段を更に備え、前記オン時間伸長手段は、前記信号遮断手段によって前記時比率信号の伝達が遮断されることによって低下すると想定される前記DCDCコンバータの供給電力を補償可能なように前記オン時間を長くすることを特徴とする。
【0024】
上記発明では、上記態様でオン時間を長くすることで、電源システムに異常が生じる場合であっても、電源システムの給電先に対する電力供給不足を好適に回避することができる。
【0025】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記電源システムは、車両に搭載され、前記車両には、高圧側車載負荷と、該高圧側車載負荷及び前記DCDCコンバータの電力供給源となる高圧バッテリとが備えられることを特徴とする。
【0026】
上記発明では、高圧側車載負荷(例えば主機回転機や、空調装置の備える電動式の圧縮機)及びDCDCコンバータの双方の電力供給源が高圧バッテリとなっている。ここで、高圧側車載負荷の要求電力が変動すると、高圧バッテリの電圧が変動し、DCDCコンバータの出力電圧が変動することが懸念される。特に、高圧側車載負荷の要求電力の急変時においては、高圧バッテリの電圧の変動が顕著となることで、DCDCコンバータの出力電圧の変動が大きくなることが懸念される。このため、上記出力電圧の変動が顕著となり得る上記発明は、時比率信号の更新周期の短縮によって出力電圧の調節精度を高めることが可能な請求項1記載の発明の発明特定事項を備えるメリットが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態にかかる電源システムの構成図。
【図2】同実施形態にかかるDCDCコンバータの制御処理に関する機能ブロック図。
【図3】同実施形態にかかる異常判断処理の手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態にかかる異常判断処理の一例を示すタイムチャート。
【図5】第2の実施形態にかかる電源システムの構成図。
【図6】同実施形態にかかる異常判断処理の一例を示すタイムチャート。
【図7】同実施形態にかかる異常判断処理の一例を示すタイムチャート。
【図8】第3の実施形態にかかる電源システムの構成図。
【図9】同実施形態にかかる異常判断処理の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電源システムをハイブリッド車両に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。
【0030】
図示される高圧バッテリ10は、車載主機としての図示しない回転機(モータジェネレータ)、及び図示しない空調装置の備える電動式圧縮機等の電力供給源であり、例えば数百V以上の所定の高電圧を有する蓄電池である。ちなみに、高圧バッテリ10としては、例えば、リチウムイオン蓄電池や、ニッケル水素蓄電池を採用することができる。
【0031】
高圧バッテリ10は、DCDCコンバータ12に接続可能とされている。DCDCコンバータ12は、一対のスイッチング素子Sp1,Sn1の直列接続体と一対のスイッチング素子Sp2,Sn2の直列接続体との並列接続体(フルブリッジ回路)、トランス14及び複数の制御回路(第1の制御回路16及び第2の制御回路18)を備えて構成されている。詳しくは、DCDCコンバータ12は、これら部品が回路基板(例えば単一の回路基板)上に実装されて且つ上記回路基板が筐体(ケース)に収容されてなり、高圧バッテリ10の電圧を降圧して出力する絶縁型コンバータである。ここで、本実施形態において、単一のDCDCコンバータ12に複数の制御回路が備えられているのは、電源システムの信頼性の向上を図るためである。また、本実施形態では、上記スイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2として、NチャネルMOSトランジスタを想定している。
【0032】
高電位側のスイッチング素子Sp1,Sp2の入力端子(ドレイン)は、高圧バッテリ10の正極側に接続され、低電位側のスイッチング素子Sn1,Sn2の出力端子(ソース)は、高圧バッテリ10の負極側に接続されている。なお、スイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2の入出力端子間のそれぞれには、図示しないフリーホイールダイオードが接続されている。
【0033】
一対のスイッチング素子Sp1,Sn1の接続点、及び一対のスイッチング素子Sp2,Sn2の接続点のそれぞれには、トランス14の1次側コイル14aの両端のそれぞれが接続されている。
【0034】
トランス14の2次側コイル14bの両端のそれぞれは、ダイオードRD1,RD2のアノード側に接続され、これらダイオードRD1,RD2のカソード側は短絡されている。そして、ダイオードRD1,RD2は、リアクトル20a及びコンデンサ20bからなる平滑回路20(LCフィルタ)に接続されている。
【0035】
上記高圧バッテリ10やDCDCコンバータ12の1次側は、車載高圧システムを構成し、DCDCコンバータ12の上記ケースに接続されたグランドラインGLから絶縁されている。これに対し、DCDCコンバータ12の2次側は、グランドラインGLを基準電位として動作する車載低圧システムを構成する。
【0036】
このため、本実施形態では、トランス14の2次側コイル14bの中点タップmtがグランドラインGLに接続されている。こうした構成によれば、ダイオードRD1,RD2は、高電位側のスイッチング素子Sp1及び低電位側のスイッチング素子Sn2がオン状態とされるか、高電位側のスイッチング素子Sp2及び低電位側のスイッチング素子Sn1がオン状態とされるかに応じて、2次側コイル14bの両端の電圧の「1/2」の電圧を交互に出力することとなる。なお、中点タップmtとは、トランス14の2次側コイル14bの中央(両端子から等距離にある点である中点)に接続された端子のことである。
【0037】
DCDCコンバータ12の1次側には、上記フルブリッジ回路の入力電圧VHを検出する入力側電圧センサ22、及びトランス14の1次側コイル14aを流れる入力電流IHを検出する入力側電流センサ24が備えられている。また、DCDCコンバータ12の2次側には、DCDCコンバータ12の出力電圧(平滑回路20からの出力電圧)を検出する出力側電圧センサ26が備えられている。
【0038】
DCDCコンバータ12の一対の出力側は、低圧バッテリ28、車両ECU30、及び車載負荷32(車両ECU30を除く)の並列接続体に接続されている。低圧バッテリ28は、低圧システムの一部を構成し、高圧バッテリ10の電圧よりも低い所定の低電圧(例えば12V)を出力する蓄電池(例えば鉛蓄電池)である。なお、上記車載負荷32は、例えば、空調装置(より詳しくは、空調装置の送風用のファンや暖房用のヒータ等)や、ヘッドライト、更には車載主機としてのエンジン駆動用のアクチュエータ(燃料噴射弁等)を含むものである。
【0039】
車両ECU30は、第1の制御回路16及び第2の制御回路18よりも上位(アクセルペダル等のユーザインターフェースから入力されるユーザの要求を最上流とした場合の上流側)の制御回路を備える制御装置であり、低圧バッテリ28を電力供給源としつつ、車両の制御を統括する機能を有する。なお、車両ECU30や、第1の制御回路16、第2の制御回路18の基準電位は、グランドラインGLの電位である。また、車両ECU30には、DCDCコンバータ12の出力電圧を検出する電圧センサ30aが内蔵されている。
【0040】
車両ECU30は、車両の走行がユーザによって許可されたと判断されることで低圧バッテリ28から電力が供給されて且つ、DCDCコンバータ12及び車載負荷32に対して共通の動作信号を出力する。ここで、本実施形態では、車両の走行がユーザによって許可されたか否かを、ユーザによってイグニッションスイッチ34がオンされたか否かで判断する。
【0041】
第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれは、低圧バッテリ28を電力供給源としつつ、同バッテリや、車両ECU30、車載負荷32に電力を供給すべく、スイッチング回路36を介してスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2を操作する機能を有する。詳しくは、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれは、アナログ信号としての入力側電圧センサ22や、入力側電流センサ24、更には出力側電圧センサ26の検出値を所定周期でデジタル信号に変換するAD変換部16a,18a、スイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2の操作に関する種々の演算処理を行う演算処理部16b,18b、タイマ回路16c,18c、演算処理部16b,18bの演算結果を外部に出力する出力ポート16d,18d、及び第1,第2の制御回路16,18間で情報をやり取りするためのインターフェース16e,18eを備えて構成されている。
【0042】
なお、高圧システムと、低圧システムとは、図示しない絶縁素子(例えば、光絶縁素子としてのフォトカプラや、磁気絶縁素子としてのパルストランス)によって絶縁されており、スイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2をオンオフ操作するための時比率信号(Duty信号)は、スイッチング回路36内の上記絶縁素子を介してこれらスイッチング素子に伝達される。また、入力側電圧センサ22や、入力側電流センサ24の検出値は、上記絶縁素子を介してAD変換部16a,18aに入力される。
【0043】
次に、図2を用いて、演算処理部16b,18bによって実行されるDCDCコンバータ12の制御処理について説明する。詳しくは、図2は、本実施形態にかかるDCDCコンバータ12の制御処理の機能ブロック図である。
【0044】
電圧偏差算出部B1は、出力側電圧センサ26によって検出されるDCDCコンバータ12の出力電圧VLと目標電圧VREFとの偏差ΔVLを算出する。詳しくは、目標電圧VREFから上記出力電圧VLを減算した値として上記偏差ΔVLを算出する。ちなみに、上記処理において、出力側電圧センサ26の検出値に代えて、低圧バッテリ28や車載負荷32の両端の電圧を検出するセンサを備え、このセンサの検出値を用いてもよい。
【0045】
電圧フィードバック制御部B2は、上記偏差ΔVLに基づく比例積分制御(PI制御)によってDCDCコンバータ12の出力電圧VLを目標電圧VREFにフィードバック制御するための操作量(Duty)を算出する。ここで、Dutyは、スイッチング素子のオン状態及びオフ状態の1周期Tαに対するスイッチング素子のオン時間Tonの比率「Ton/Tα」である。すなわち、Dutyが大きいほど、スイッチング素子のオン時間Tonが長くなる。
【0046】
入力電圧操作量算出部B3は、入力側電圧センサ22によって検出される入力電圧VHに基づき、Dutyの上限値(ガード値)のベース値DBを算出する。詳しくは、入力電圧VHが高いほど上記ベース値DBを小さく算出する。
【0047】
電圧変化算出部B4は、上記入力電圧VHの変化量(入力電圧変化量ΔVH)を算出する。詳しくは、今回の処理周期においてAD変換された入力側電圧センサ22の検出値から前回の処理周期においてAD変換された入力側電圧センサ22の検出値を減算した値として入力電圧変化量ΔVHを算出すればよい。
【0048】
補正量算出部B5は、入力電圧変化量ΔVHに基づき、入力電圧操作量算出部B3から出力されるベース値DBの補正量ΔDutyを算出する。詳しくは、入力電圧変化量ΔVHが0よりも大きいほど入力電圧操作量算出部B3から出力されるベース値DBを小さくするような補正量ΔDutyを算出し、入力電圧変化量ΔVHが0よりも小さいほど入力電圧操作量算出部B3から出力されるベース値DBを大きくするような補正量ΔDutyを算出する。この処理は、演算処理部16b,18bの演算タイミング間において入力電圧VHが大きく上昇することに起因して、後述するDUTY選択部B10から出力されるDutyが適切な値に対して過度に大きくなることを回避するための処理である。つまり、入力電圧VHが大きく上昇する状況下、前回の演算タイミングで上記入力電圧操作量算出部B3によって算出されたガード値は、前回の演算タイミングからの時間経過とともに適切なガード値から大きい側にずれることが懸念される。このため、こうした懸念を払拭すべく、入力電圧操作量算出部B3によって算出されたベース値DBの補正量ΔDutyを上記態様にて算出する。
【0049】
加算部B6は、入力電圧操作量算出部B3から出力されるベース値DBと、上記補正量ΔDutyとの加算値としてガード値を算出する。
【0050】
出力電流算出部B7は、入力側電流センサ24によって検出される入力電流IHに基づき、DCDCコンバータ12の出力電流ILを算出する。
【0051】
電流偏差算出部B8は、上記出力電流ILと電流制限値IREFとの偏差ΔILを算出する。詳しくは、電流制限値IREFから上記出力電流ILを減算した値として上記偏差ΔILを算出する。なお、電流制限値IREFは、DCDCコンバータ12(より詳しくは、DCDCコンバータ12内の電流流通経路の素子等)の信頼性を維持可能な電流の上限値に設定すればよい。
【0052】
定電流制御部B9は、上記偏差ΔILに基づくPI制御によってDCDCコンバータ12の出力電流ILを電流制限値IREFにフィードバック制御するためのDutyを算出する。
【0053】
DUTY選択部B10は、電圧フィードバック制御部B2及び定電流制御部B9から出力されるDutyのうち最小値を選択して出力ポート16d,18dからDuty信号として出力させる処理を行う。なお、上記最小値が加算部B6から出力されるガード値よりも大きい場合、出力ポート16d,18dから上記ガード値を出力させる処理を行う。
【0054】
こうした構成によれば、DCDCコンバータ12の出力電流ILが電流制限値IREFを超えるまでは、電圧フィードバック制御によって出力電圧VLが高いほどDutyが小さくされる(スイッチング素子のオン時間Tonが短くされる)こととなる。一方、DCDCコンバータ12の出力電流ILが電流制限値IREFを超える場合には、定電流制御によってDCDCコンバータ12の出力電流ILが電流制限値IREFで制限されるため、上記出力電圧VLが低下される。すなわち、DCDCコンバータ12は、定電流垂下特性を有する。
【0055】
続いて、先の図1を用いて、第1の制御回路16の出力ポート16d及び第2の制御回路18の出力ポート16dと上記スイッチング回路36とを接続する論理回路について説明する。
【0056】
第1の制御回路16の演算処理部16bで算出されるスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対応するDuty信号のそれぞれは、出力ポート16dを介してAND回路38p1,38n1,38p2,38n2のそれぞれに入力される。また、上記AND回路38p1,38n1,38p2,38n2のそれぞれには、第2の制御回路18の出力ポート18dから出力される第1の判断信号が入力される。
【0057】
第2の制御回路18の演算処理部18bで算出されるスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対応するDuty信号のそれぞれは、出力ポート18dを介してAND回路40p1,40n1,40p2,40n2のそれぞれに入力される。また、上記AND回路40p1,40n1,40p2,40n2のそれぞれには、第1の制御回路16の出力ポート16dから出力される第2の判断信号が入力される。
【0058】
上記AND回路38p1,38n1,38p2,38n2のそれぞれの出力信号と、上記AND回路40p1,40n1,40p2,40n2のそれぞれの出力信号とは、OR回路42p1,42n1,42p2,42n2のそれぞれに入力される。
【0059】
上記OR回路42p1,42n1,42p2,42n2の出力信号のそれぞれは、スイッチング回路36を介してスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2のそれぞれの開閉制御端子(ゲート)に伝達される。
【0060】
こうした構成において、第1の判断信号の論理が「L」とされることで、第1の制御回路16からスイッチング回路36へのDuty信号の伝達が遮断される。また、第2の判断信号の論理が「L」とされることで、第2の制御回路18からスイッチング回路36へのDuty信号の伝達が遮断される。
【0061】
ここで、こうした論理回路を採用するのは、Duty信号の更新周期を短くし、また、電源システムに異常が生じる場合にスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2の操作態様を切り替えてフェールセーフを行うためである。
【0062】
詳しくは、まず、スイッチング素子のDutyの更新周期を短くすることについて説明すると、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれから出力されるDuty信号によってスイッチング素子のオン状態とされる期間が互いに重ならないように、これら制御回路16,18のそれぞれによってDuty信号を生成する制御ロジックを採用する。こうした制御ロジックにより、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれから交互にスイッチング素子をオン状態とさせるDuty信号が出力されることとなる。これにより、Dutyの更新周期を短くすることができる。
【0063】
次に、図3を用いて、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理について説明する。詳しくは、図3は、本実施形態にかかる上記異常判断処理を含むDCDCコンバータ12の制御処理の手順である。この処理は、車両ECU30から動作信号がタイマ回路16c,18cに入力されることをトリガとして、タイマ回路16c,18cのカウント値に基づき、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれによって同一処理周期で繰り返し実行される。
【0064】
なお、本実施形態において、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれによって実行されるDCDCコンバータ12の一連の制御処理(後述するAD変換処理、演算処理、出力設定処理、通信処理及び異常判断処理)内容が同一である。このため、図3では、第1の制御回路16を主体として説明する。
【0065】
この一連の処理では、まず、ステップS10において、AD変換部16aにてアナログ信号としての上記入力電圧VH、入力電流IH及び出力電圧VLをデジタル信号に変換するAD変換処理を行う。なお、以降、デジタル信号に変換された入力電圧VH、入力電流IH及び出力電圧VLをAD変換値と称すこととする。
【0066】
続くステップS12では、AD変換値に基づき、スイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対応するDuty(オン時間Ton)を算出する演算処理(先の図2の処理)を行う。
【0067】
続くステップS14では、スイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2のそれぞれに対応したDuty信号を出力ポート16dから出力させるための出力設定処理を行う。この処理は、タイマ回路16cの有する機能であるPWM機能(所定周期及び所定のDutyのパルスを出力する機能)を用いて、今回の処理周期において生成されたDuty信号を、次回の処理周期において出力させるための処理である。
【0068】
続くステップS16では、今回の処理周期に対応する異常判断用パラメータPをインターフェース16eを介して第2の制御回路18に送信して且つ、第2の制御回路18における直近の過去の異常判断用パラメータPを第2の制御回路18からインターフェース16eを介して受信する通信処理を行う。ここで、本実施形態では、異常判断用パラメータPとして、入力電圧VH、入力電流IH及び出力電圧VLのAD変換値を用いる。
【0069】
続くステップS18では、第1の制御回路16に対応する異常判断用パラメータP及び第2の制御回路18に対応する異常判断用パラメータP同士の差の絶対値が閾値γよりも大きいか否かを判断する異常判断処理を行う。
【0070】
具体的には、出力電圧VL同士の差に基づく異常判断処理を例にして説明すると、第1の制御回路16でAD変換された出力電圧VLと第2の制御回路18でAD変換された出力電圧VLとの差の絶対値が閾値γよりも大きいと判断された場合、出力側電圧センサ26の異常や、出力側電圧センサ26及びAD変換部16aを接続する信号経路の異常(例えば断線)、AD変換部16aの異常、AD変換部16a及び演算処理部16bを接続する信号経路の異常(例えば断線)、更には演算処理部16bの異常を含む電源システムの異常が生じている旨判断する。
【0071】
なお、電源システムの異常としては、上述したものの他に、電源システムに一時的に生じる異常もある。この一時的な異常としては、例えば、外部からのノイズ(電磁波等)に起因して、制御回路の備えるメモリ(RAM)のデータが変化する(化ける)異常がある。
【0072】
また、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれの異常判断処理の実行開始タイミングが同期されていないことから、上記閾値γは、第1の制御回路16に対応する異常判断用パラメータP及び第2の制御回路18に対応する異常判断用パラメータP同士が実質的に同一であるか否かを判断可能な観点から設定される。以下、閾値γの設定について説明する。
【0073】
DCDCコンバータ12の入力電圧VHや入力電流IHは、高圧バッテリ10を電力供給源とするモータジェネレータ等の要求電力の変動によって変動する。これに応じて、DCDCコンバータ12の出力電圧VLや出力電流ILも変動する。このため、上記閾値γは、例えば、各制御回路のAD変換処理の実行間隔において想定されるAD変換値の最大変動量に基づき設定し、より具体的には、上記最大変動量よりもやや大きい値として設定すればよい。ちなみに、上記最大変動量を、例えば、凍結路面上で駆動輪が一時的にスリップした直後にスリップが解消される状況等、モータジェネレータの駆動中に駆動輪に作用する負荷トルクが急変する状況におけるAD変換値の変動量に設定することが考えられる。
【0074】
ステップS18において肯定判断された場合には、電源システムに異常が生じている旨判断し、ステップS20に進む。ステップS20では、上記ステップS14で算出された第1の制御回路16に対応するオン時間Tonが第2の制御回路18に対応するオン時間Tonよりも短いか否かを判断する。ここで、第2の制御回路18に対応するオン時間Tonは、第2の制御回路18から受信したAD変換値に基づき算出してもよいし、第2の制御回路18で算出されたオン時間Tonの受信値であってもよい。
【0075】
ステップS20において肯定判断された場合には、ステップS22に進み、第2の判断信号の論理を「H」から「L」に反転させる処理と、上記ステップS12の演算処理によって算出されたDuty信号のオン時間Tonを長くする処理とを行う。まず、第2の判断信号の論理の反転処理について説明すると、この処理によれば、AND回路40p1,40n1,40p2,40n2の出力信号の論理が強制的に「L」とされ、第2の制御回路18からスイッチング回路36へのDuty信号の伝達が遮断される。すなわち、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のうちスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2を操作するための制御回路として第1の制御回路16が選択されることとなる。
【0076】
また、オン時間Tonを長くする処理について説明すると、この処理は、第2の制御回路18からスイッチング回路36へのDuty信号の伝達が遮断されることによって低下すると想定されるDCDCコンバータ12の供給電力を補償するための処理である。本実施形態では、上記ステップS12の演算処理によって算出されたDuty信号のオン時間Tonを2倍にする処理を行う。
【0077】
ちなみに、本実施形態では、第2の判断信号の論理が「L」に反転される旨の情報が第1の制御回路16からインターフェース16e,18eを介して第2の制御回路18へと伝達されることで、第2の制御回路18においても、この制御回路の演算処理によって算出されるDutyのオン時間Tonが2倍とされる処理が行われる。また、第1,第2の制御回路16,18におけるオン時間Tonの伸長は、第2の判断信号の論理が「H」に反転されると判断されるまで継続される。
【0078】
また、本ステップにおいて、電源システムに異常が生じている旨を車両ECU30に通知する処理を行うことが望ましい。そして、電源システムに異常が生じている旨の通知を受けた車両ECU30において、例えば、上記異常が生じている旨をユーザに報知する報知処理を行ったり、低圧バッテリ28の電力の使用を制限する処理を行ったりすればよい。
【0079】
なお、上記ステップS18、S20において否定判断された場合や、ステップS22の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0080】
図4に、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理の一例を示す。詳しくは、図4(a)に、車両ECU30からの動作信号の出力状態の推移を示し、図4(b−1)〜図4(b−4)に第1の制御回路16の動作状態の推移を示し、図4(c−1)〜図4(c−4)に第2の制御回路18の動作状態の推移を示し、図4(d)に、スイッチング回路36からスイッチング素子に伝達されるDuty信号の推移を示す。より詳しくは、図4(b−1)に、タイマ回路16cのカウンタ値の推移を示し、図4(b−2)に、第1の制御回路16の処理内容の推移を示し、図4(b−3)に、第1の制御回路16(出力ポート16d)からのDuty信号の出力状態の推移を示し、図4(b−4)に、第2の判断信号の出力状態の推移を示す。また、図4(c−1)〜図4(c−3)は、同図(b−1)〜同図(b−3)に対応しており、図4(c−4)は、第1の判断信号の出力状態の推移を示す。なお、図4では、Duty信号の推移として、DCDCコンバータ12に4つ備えられるスイッチング素子のうち1つに対応するものの推移を示している。
【0081】
図示される例では、第2の制御回路18によるDCDCコンバータ12の一連の制御処理の開始タイミングが第1の制御回路16による上記一連の制御処理の開始タイミングから半処理周期遅れるものとなっている。こうした構成によれば、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれから交互に論理「H」のDuty信号が出力されることとなる。これにより、図4(d)に示すように、DCDCコンバータ12のスイッチング周期Tswは、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれに対応するオン状態及びオフ状態の1周期Tαの半分となる。すなわち、上述したように、Duty信号の更新周期が短くされ、スイッチング周波数が高周波数とされている。
【0082】
こうした構成を実現すべく、車両ECU30から動作信号が出力される時刻t1において、第1の制御回路16のタイマ回路16c及び第2の制御回路18のタイマ回路18cのそれぞれによるカウントアップが開始される。その後、タイマ回路16cがリセットされる時間間隔を第1の制御回路16における1処理周期(時刻t1〜t3、t3〜t5、t5〜t7、t7〜t9等)として第1の制御回路16にてDCDCコンバータ12の一連の制御処理が行われる。また、タイマ回路18cがリセットされる時間間隔を第2の制御回路18における1処理周期(時刻t2〜t4、t4〜t6、t6〜t8等)として第2の制御回路18にてDCDCコンバータ12の一連の制御処理が行われる。
【0083】
詳しくは、時刻t1〜t3までの第1の制御回路16の処理周期において、第2の制御回路18のAD変換値を受信した第1の制御回路16によって異常判断処理が行われる。この結果、電源システムに異常が生じていない旨判断され、次回の処理周期t3〜t5において第1の制御回路16から出力されたDuty信号がスイッチング回路36に伝達される。なお、その後、第1の制御回路16の各処理周期(時刻t3〜t5、t5〜t7、t7〜t9)においても、異常判断処理によって電源システムに異常が生じている旨判断されない。
【0084】
一方、時刻t2〜t4までの第2の制御回路18の処理周期において、第1の制御回路16のAD変換値を受信した第2の制御回路18によって異常判断処理が行われる。この結果、電源システムに異常が生じていない旨判断され、次回の処理周期t4〜t6において第2の制御回路18から出力されたDuty信号がスイッチング回路36に伝達される。
【0085】
その後、時刻t4〜t6までの第2の制御回路18の処理周期において、電源システムに一時的な異常が生じることで、第1の制御回路16から受信した直近の過去のAD変換値と第2の制御回路18のAD変換値との差の絶対値が閾値γを上回ると第2の制御回路18において判断される。これにより、電源システムに異常が生じる旨判断される。
【0086】
また、第1の制御回路16の直近のオン時間Tonよりも第2の制御回路18のオン時間Tonの方が短いと判断される。このため、時刻t6において、第1の判断信号の論理が「H」から「L」に反転され、これにより、第1の制御回路16からスイッチング回路36へのDuty信号の伝達が遮断される。
【0087】
さらに、時刻t4〜t6における第2の制御回路18の演算処理によって算出されたDuty信号のオン時間Tonが2倍とされる処理が行われる。これにより、時刻t6以降において、スイッチング周期Tswが2倍とされるものの、第2の制御回路18から出力されるDuty信号のオン時間Tonが2倍とされる。なお、図中、一点鎖線にてオン時間Tonが伸長される前のオン時間Tonを示している。
【0088】
ちなみに、時刻t7以降、第1の制御回路16の演算処理によって算出されたDuty信号のオン時間Tonも2倍とされる。また、時刻t10において車両ECU30からの動作信号の出力が停止されることで、その後、第1の制御回路16及び第2の制御回路18の処理が停止される。
【0089】
このように、本実施形態では、DCDCコンバータ12に第1の制御回路16及び第2の制御回路18を備え、これら制御回路16,18においてDCDCコンバータ12の上述した一連の制御処理を行った。これにより、Duty信号の更新周期を短くすることができる。また、電源システムの異常が生じる場合であっても、電源システムの信頼性の低下を抑制しつつ車載負荷32等への電力供給が不足することを抑制する等、適切なフェールセーフを行うことができる。
【0090】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0091】
(1)第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれから出力されるDuty信号によってスイッチング素子のオン状態とされる期間が互いに重ならないように、これら制御回路16,18のそれぞれによってDuty信号を生成した。こうした構成によれば、Duty信号の更新周期を短くすることができ、スイッチング周波数を高周波数とすることができる。これにより、DCDCコンバータ12の出力電圧VLの応答性を高め、また、DCDCコンバータ12を構成する部品(トランス14やスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2等)の小型化を図ることができる。
【0092】
さらに、上記出力電圧VLの応答性を高めることができるため、先の図2の電圧変化算出部B4、補正量算出部B5及び加算部B6を廃止することなども期待できる。
【0093】
なお、単一の制御回路によってスイッチング素子に対するDuty信号を生成する場合には、制御回路の演算速度の制約や従来の制御回路を流用するなどの都合上、Duty信号の更新周期を短くすることが困難となり、複数スイッチング周期(例えば5スイッチング周期)に渡ってDuty信号を更新できないことも考えられる。ここで、上述した出力電圧VLの応答性の向上によれば、高圧バッテリ10を電力供給源とする高圧システム側の機器の要求電力が変動する場合であっても、この変動が出力電圧VLに及ぼす影響を抑制することができる。これにより、例えば、車載負荷32(ヘッドライト)の印加電圧の変動を抑制することができ、ヘッドライトのちらつきに起因してユーザに違和感を与える事態を回避することなどもできる。
【0094】
(2)DCDCコンバータ12の入力電圧VH、入力電流IH及び出力電圧VLを異常判断用パラメータPとし、第1の制御回路16に対応する異常判断用パラメータP及び第2の制御回路18に対応する異常判断用パラメータP同士の差の絶対値が上記閾値γよりも大きいと判断された場合、電源システムに異常が生じている旨判断した。これにより、電源システムの異常の有無を適切に判断することができる。
【0095】
(3)電源システムに異常が生じている旨判断される状況下、第1の制御回路16及び第2の制御回路18によって生成されるDuty信号のうちオン時間Tonが短い方のDuty信号のオン時間Tonを2倍としてかつ、オン時間Tonが長い方のDuty信号のスイッチング回路36への伝達を遮断した。これにより、電源システムに異常が生じる場合であっても、車載負荷32等に対する電力供給不足の発生を回避することができ、低圧バッテリ28上がりの発生を回避することができる。また、DCDCコンバータ12の出力電圧が過度に高くなることに起因する電源システムの信頼性の低下を好適に回避することもできる。
【0096】
(第2の実施形態)
以下、第2実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0097】
図5に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。なお、本実施形態では、電源システムのうち第1,第2の制御回路16,18から出力されるDuty信号をスイッチング回路36まで伝達する論理回路及び第3の制御回路(以下、監視回路44)以外の構成は、基本的には上記第1の実施形態と同一である。このため、図5では主に、上記論理回路及び監視回路44について説明する。また、本実施形態において、先の第1の実施形態の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0098】
図示されるように、本実施形態では、第1の制御回路16及び第2の制御回路18に加えて上記監視回路44をDCDCコンバータ12に備えている。
【0099】
監視回路44は、第1の制御回路16及び第2の制御回路18と同様に、AD変換部44a、演算処理部44b、タイマ回路44c、出力ポート44d及びインターフェース44eを備えて構成されている。監視回路44には、インターフェース44eを介して第1の制御回路16や第2の制御回路18の情報が入力される。そして、監視回路44は、DCDCコンバータ12の上述した一連の制御処理のうち出力設定処理以外の処理を行う。すなわち、監視回路44は、Duty信号をスイッチング回路36に伝達不可能な回路構成とされている。
【0100】
また、監視回路44からは、判断信号A及び判断信号Bが出力される。これら判断信号A,Bが論理反転された信号は、AND回路46に入力される。
【0101】
AND回路46の出力信号は、第3の判断信号として第1の制御回路16に入力される。また、AND回路46の出力信号に加えて、第1の制御回路16から出力される第2の判断信号、及び第2の制御回路18から出力される第1の判断信号は、AND回路48に入力される。そして、AND回路48の出力信号と、上記判断信号Aとは、OR回路50に入力される。
【0102】
上記AND回路38p1,38n1,38p2,38n2のそれぞれには、OR回路50の出力信号が入力される。また、上記AND回路40p1,40n1,40p2,40n2のそれぞれには、判断信号Bが入力される。
【0103】
次に、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理について説明する。
【0104】
本実施形態では、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44同士で相互に電源システムに異常が生じているか否かを判断する。ここで、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44のそれぞれが主体となる異常判断処理は、先の図3に示した手順に準ずる。
【0105】
詳しくは、第1の制御回路16及び第2の制御回路18同士の異常判断処理であってかつ第1の制御回路16が主体となる異常判断処理によって電源システムに異常が生じている旨判断された場合、第1の制御回路16は、第2の判断信号の論理を「H」から「L」に反転させてかつ、演算処理によって算出されたオン時間Tonを2倍とする処理を行う。一方、第1の制御回路16及び第2の制御回路18同士の異常判断処理であってかつ第2の制御回路18が主体となる異常判断処理によって電源システムに異常が生じている旨判断された場合、第2の制御回路18は、第1の判断信号の論理を「H」から「L」に反転させてかつ、演算処理によって算出されたオン時間Tonを2倍とする処理を行う。
【0106】
また、第1の制御回路16及び監視回路44同士の異常判断処理であってかつ監視回路44が主体となる異常判断処理によって電源システムに異常が生じている旨判断された場合、監視回路44は、判断信号Aの論理を「H」から「L」に反転させる。一方、第2の制御回路18及び監視回路44同士の異常判断処理であってかつ監視回路44が主体となる異常判断処理によって電源システムに異常が生じている旨判断された場合、監視回路44は、判断信号Bの論理を「H」から「L」に反転させる。
【0107】
続いて、本実施形態にかかる電源システムの異常判断後におけるスイッチング素子の操作に関するフェールセーフについて説明する。
【0108】
本実施形態では、電源システムに異常が生じている旨判断された場合、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44のそれぞれによって生成されたDuty信号のうち互いに同一となるオン時間Tonの数が最も多いものに対応するDuty信号によってスイッチング素子をオンオフ操作する処理を行う。
【0109】
図6及び図7に、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理及び異常判断後のフェールセーフ処理の一例を示す。
【0110】
まず、図6に、電源システムの異常として第1の制御回路16に関する異常が生じる場合を示す。詳しくは、図6(a)、図6(b−1)〜図6(b−4)、図6(c−1)〜図6(c−4)及び図6(e)は、先の図4(a)、図4(b−1)〜図4(b−4)、図4(c−1)〜図4(c−4)及び図4(d)に対応している。また、図6(b−5)に、第1の制御回路16からの第3の判断信号の出力状態の推移を示し、図6(d−1)に、タイマ回路44cのカウンタ値の推移を示し、図6(d−2)に、監視回路44の処理内容の推移を示し、図6(d−3)に、監視回路44において生成されるDuty信号の推移を示し、図6(d−4)に、監視回路44(出力ポート44d)からの判断信号Aの出力状態の推移を示し、図6(d−5)に、監視回路44からの判断信号Bの出力状態の推移を示す。
【0111】
なお、本実施形態では、監視回路44においてDCDCコンバータ12の一連の制御処理を所定の処理周期(第1の制御回路16又は第2の制御回路18の半処理周期)内に完了することが要求されることから、監視回路44では複数の処理が並行して実行される。
【0112】
図示される例では、第2の制御回路18による一連の制御処理の開始タイミングが第1の制御回路16による一連の制御処理の開始タイミングよりも遅いものとなっており、監視回路44による一連の制御処理の開始タイミングが第2の制御回路18による一連の制御処理の開始タイミングよりも遅いものとなっている。
【0113】
ここで、時刻t2〜t3において、受信された第1の制御回路16のAD変換値と、監視回路44のAD変換値とに基づき、監視回路44において電源システムに異常が生じていない旨判断される。このため、判断信号Aの論理が「H」に維持され、時刻t3までに第1の制御回路16にて生成されたDuty信号が時刻t3〜t5の処理周期においてスイッチング回路36に伝達される。
【0114】
続く時刻t3〜t4において、受信された第2の制御回路18のAD変換値と、監視回路44のAD変換値とに基づき、監視回路44において電源システムに異常が生じていない旨判断される。このため、判断信号Bの論理が「H」に維持され、時刻t2〜t4において第2の制御回路18にて生成されたDuty信号が時刻t4〜t6の処理周期においてスイッチング回路36に伝達される。
【0115】
続く時刻t4〜t5において、電源システムに一時的な異常が生じることで、受信された第1の制御回路16のAD変換値と、監視回路44のAD変換値とに基づき、監視回路44において電源システムに異常が生じている旨判断される。これにより、時刻t5において、判断信号Aの論理が「H」から「L」に反転される。また、第1の制御回路16のAD変換値と、受信された第2の制御回路18のAD変換値とに基づき、第1の制御回路16において電源システムに異常が生じている旨判断される。これにより、時刻t5において、第2の判断信号の論理が「H」から「L」に反転されてかつ、Duty信号のオン時間Tonが2倍とされる。さらに、時刻t4〜t6において、第2の制御回路18のAD変換値と、受信された第1の制御回路16のAD変換値とに基づき、第2の制御回路18において電源システムに異常が生じている旨判断される。これにより、時刻t6において、第1の判断信号の論理が「L」に反転されてかつ、Duty信号のオン時間Tonが2倍とされる。
【0116】
すなわち、第1の制御回路16及び第2の制御回路18同士の異常判断処理において電源システムに異常が生じている旨判断されると、先の図5に示すように、第1の制御回路16から出力される第2の判断信号の論理と、第2の制御回路18から出力される第1の判断信号の論理とが「L」に反転され、AND回路48の出力信号の論理が「L」とされる。また、第1の制御回路16及び監視回路44同士の異常判断処理とで電源システムに異常が生じている旨判断されると、監視回路44から出力される判断信号Aの論理が「L」に反転される。この結果、OR回路50の出力信号の論理が「L」とされる。
【0117】
したがって、次回の処理周期である時刻t6以降において、第1の制御回路16からスイッチング回路36へのDuty信号の伝達が遮断されてかつ、第2の制御回路18によって生成されたDuty信号がスイッチング回路36に伝達される。ここで、第2の制御回路18及び監視回路44にて生成されたDuty信号は、第1,第2の制御回路16,18及び監視回路44のそれぞれによって生成されたDuty信号のうち互いに同一となるオン時間Tonが最も多いDuty信号であり、正常である蓋然性が高い信号である。
【0118】
なお、その後、時刻t7〜t8において、第1の制御回路16のAD変換値と、受信された第2の制御回路18のAD変換値とに基づき、第1の制御回路16において電源システムに異常が生じていない旨判断されることで、時刻t8において第2の判断信号の論理が「H」に反転される。
【0119】
続いて、図7に、電源システムの異常として監視回路44に関する異常が生じる場合を示す。詳しくは、図7(a)〜図7(e)は、先の図6(a)〜図6(e)に対応している。
【0120】
図示される例では、車両ECU30から動作信号が入力された後、時刻t1〜t2において、受信された第1の制御回路16のAD変換値と、監視回路44のAD変換値とに基づき、監視回路44において電源システムに異常が生じている旨判断される。このため、時刻t2において判断信号Aの論理が「L」に反転される。
【0121】
その後、時刻t2〜t3において、受信された第2の制御回路18のAD変換値と、監視回路44のAD変換値とに基づき、監視回路44において電源システムに異常が生じている旨判断される。このため、時刻t2において判断信号Bの論理が「L」に反転される。
【0122】
すなわち、第2の制御回路18及び監視回路44同士の異常判断処理において電源システムに異常が生じている旨判断されると、監視回路44から出力される判断信号Bの論理が「L」に反転される。また、第1の制御回路16及び監視回路44同士の異常判断処理において電源システムに異常が生じている旨判断されると、監視回路44から出力される判断信号Aの論理が「L」に反転される。この結果、AND回路46,48の出力信号の論理が「H」に維持され、OR回路50の出力信号の論理が「H」とされる。
【0123】
したがって、第1の制御回路16にて生成されるDuty信号がスイッチング回路36に伝達されてかつ、第2の制御回路18にて生成されるDuty信号のスイッチング回路36への伝達が遮断される。ここで、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれによって生成されたDuty信号は、第1,第2の制御回路16,18及び監視回路44のそれぞれによって生成されたDuty信号のうち互いに同一であるオン時間Tonが最も多いDuty信号であり、正常である蓋然性が高い信号である。
【0124】
そして、第1の制御回路16によってAND回路46の出力信号(第3の判断信号)の論理が「L」から「H」に反転されると判断される時刻t4以降において、第1の制御回路16によって生成されるDuty信号のオン時間Tonが2倍とされる処理が行われる。
【0125】
このように、本実施形態では、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44のそれぞれによって生成されたDuty信号のうち互いに同一であるオン時間Tonの数が最も多いDuty信号によってスイッチング素子をオンオフ操作した。こうした構成によれば、電源システムの信頼性の低下を好適に抑制しつつ、車載負荷32等に対する電力供給不足の発生を好適に回避することができる。
【0126】
(第3の実施形態)
以下、第3実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0127】
上記第2の実施形態では、第1の制御回路16及び監視回路44同士の異常判断処理と、第2の制御回路18及び監視回路44同士の異常判断処理とで電源システムに異常が生じている旨判断された場合、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のうち第1の制御回路16によって生成されるDuty信号をスイッチング回路36に伝達させる構成とした。本実施形態では、上記異常が生じている旨判断された場合、第1,第2の制御回路16,18の双方からのDuty信号のオン時間Tonを2倍とすることなく、これら制御回路16,18の双方からのDuty信号のスイッチング回路36への伝達を継続させる構成とする。
【0128】
図8に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。なお、本実施形態において、先の第1の実施形態の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0129】
AND回路48の出力信号は、監視回路44の出力ポート44dから出力される判断信号Aとともに、第4の判断信号としてOR回路50に入力される。なお、本実施形態では、AND回路46の出力信号(第3の判断信号)が、第1の制御回路16に入力されない。
【0130】
監視回路44の出力ポート44dから出力される判断信号Bと、AND回路48から出力される第4の判断信号とは、OR回路52に入力される。そして、OR回路52の出力信号は、AND回路40p1,40n1,40p2,40n2のそれぞれに入力される。
【0131】
次に、図9を用いて、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理について説明する。詳しくは、図9は、電源システムの異常として監視回路44に関する異常が生じる場合を示す。なお、図9(e)は、AND回路48からの第4の判断信号の出力状態の推移を示し、図9(a)〜図9(b−4)、図9(c−1)〜図9(d−5)及び図9(f)は、先の図6(a)〜図6(b−4)、図6(c−1)〜図6(d−5)及び図6(e)に対応している。
【0132】
図示される例では、車両ECU30から動作信号が入力された後、時刻t1〜t2において、受信された第1の制御回路16のAD変換値と、監視回路44のAD変換値とに基づき、監視回路44において電源システムに異常が生じている旨判断される。このため、時刻t2において判断信号Aの論理が「L」に反転される。
【0133】
続く時刻t2〜t3において、受信された第2の制御回路18のAD変換値と、監視回路44のAD変換値とに基づき、監視回路44において電源システムに異常が生じている旨判断される。このため、時刻t3において判断信号Bの論理が「L」に反転される。これにより、AND回路48から出力される第4の判断信号の論理が「L」から「H」に反転されることで、OR回路50,52の出力信号の論理が「H」に維持される。この結果、第1,第2の制御回路16,18からのDuty信号のスイッチング回路36への伝達が継続されることとなる。なお、上述したように、第1の制御回路16及び第2の制御回路18にて生成されるDuty信号のオン時間Tonを2倍とする処理は行われない。
【0134】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0135】
・電源システムの異常判断処理に用いる異常判断用パラメータPとしては、上記入力電圧VH、入力電流IH及び出力電圧VLのAD変換値の全てに限らず、例えば、これらのうち1つ又は2つを用いてもよい。また、異常判断用パラメータPとしては、上記AD変換値に加えて又は代えて、Duty信号のオン時間Tonを用いてもよい。この場合の異常判断手法について説明すると、具体的には例えば、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のうち一方の直近の過去のAD変換値を他方に送信する。そして、上記直近のAD変換値を受信した他方の制御回路において、受信したAD変換値から算出されたオン時間Tonと、自身のAD変換値から算出されたオン時間Tonとの差の絶対値が所定の閾値よりも大きいと判断された場合、電源システムに異常が生じている旨判断する。
【0136】
ちなみに、上記所定の閾値の設定手法について説明すると、AD変換処理に起因した入力電圧VH、入力電流IH及び出力電圧VLの真値からのずれ(サンプリング誤差)を含んだAD変換値に基づきオン時間Tonが算出され得る。このため、オン時間Tonに対応する上記所定の閾値は、例えば、サンプリング誤差によるAD変換値の変動幅に対応したオン時間Tonの変動幅に基づき設定すればよい。
【0137】
・上記第2の実施形態では、第1の制御回路16及び監視回路44同士の異常判断処理と、第2の制御回路18及び監視回路44同士の異常判断処理とで電源システムに異常が生じている旨判断された場合、第1の制御回路16のDuty信号をスイッチング回路36に伝達させる構成としたがこれに限らない。例えば、第1の制御回路16に代えて、第2の制御回路18のDuty信号をスイッチング回路36に伝達させる構成としてもよい。
【0138】
・上記第1の実施形態では、電源システムに異常が生じると判断される状況下、Duty信号のオン時間Tonを2倍する処理を行ったがこれに限らない。例えば、オン時間Tonを1よりも大きいβ倍(例えば、1<β<2)してもよい。この場合であっても、Duty信号のスイッチング回路36への伝達が遮断されることに起因するDCDCコンバータ12の供給電力の想定低下分を超えないようにしつつ、車載負荷32等への供給電力の不足度合いを抑制することはできる。
【0139】
・上記各実施形態では、1つのDCDCコンバータが電源システムに備えられたがこれに限らず、複数のDCDCコンバータの並列接続体が備えられていてもよい。こうした構成は、車載負荷32等への供給電流の最大値を増大させること等を目的としたものである。こうした電源システムにおいては、DCDCコンバータのうちいずれかの異常によって電源システムの給電先に電力を適切に供給することができなくなる等の不都合が生じる懸念がある。例えば、複数のDCDCコンバータのうち1つの出力電流が低くなる場合、残余のDCDCコンバータの供給可能な最大電流値が小さいと、出力電圧が低下する懸念がある。このため、こうした電源システムにおいても、電源システムの異常判断処理等の適用が有効である。
【0140】
・1つのDCDCコンバータに備えられる制御回路の数としては、2つや3つに限らず、4つ以上であってもよい。ここで、Duty信号をスイッチング回路36に伝達可能な構成を有する制御回路が3つ備えられる場合、これら制御回路のそれぞれによって、これら制御回路のそれぞれから出力されるDuty信号に対応するスイッチング素子のオン状態とされる期間が互いに重ならないようにDuty信号が生成されることとなる。
【0141】
なお、こうした構成において、上記第1の実施形態において、電源システムに異常が生じる旨判断されたとき、例えば、4つの制御回路のそれぞれによって生成されたDuty信号のうちオン時間Tonが最短となるDuty信号のオン時間Tonを3倍にしてかつ、オン時間Tonが3倍とされたDuty信号によってスイッチング素子を操作するフェールセーフを行えばよい。
【0142】
・上記第1の実施形態では、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれに共通の入力側電圧センサ22等の検出値が入力される構成としたがこれに限らない。例えば、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれに対応した入力側電圧センサ等を各別に備え、これら制御回路16,18のそれぞれに対応したセンサの検出値を用いて異常判断処理を行ってもよい。
【0143】
・上記各実施形態では、DCDCコンバータ12の備える制御回路によって異常判断処理を行ったがこれに限らない。例えば、これら制御回路及び車両ECU30の間で情報をやり取りする手段(信号線)を備え、制御回路のAD変換値等を入力して車両ECU30によって異常判断処理を行ってもよい。
【0144】
・上記各実施形態では、DCDCコンバータ12に備えられたセンサ(出力側電圧センサ26等)の検出値を用いて異常判断処理を行ったがこれに限らない。例えば、電源システム内であって且つDCDCコンバータ12外にDCDCコンバータ12の出力電圧や出力電流を検出するセンサを備え、上記センサの検出値に基づき異常判断処理を行ってもよい。
【0145】
・DCDCコンバータが備えるスイッチング素子としては、上記各実施形態に例示したものに限らず、例えば、バイポーラトランジスタやIGBT等であってもよい。
【0146】
・DCDCコンバータとしては、降圧コンバータに限らず、昇圧コンバータであってもよい。また、電力変換装置としては、絶縁型のものに限らず、非絶縁型のものであってもよい。
【0147】
・本願発明が適用される車両としては、ハイブリッド車両に限らず、例えば、車載主機として回転機のみを備える電気自動車であってもよい。また、本願発明の適用対象としては、車両に限らない。
【符号の説明】
【0148】
10…高圧バッテリ、12…DCDCコンバータ、16…第1の制御回路、18…第2の制御回路、22…入力側電圧センサ、24…入力側電流センサ、26…出力側電圧センサ、Sp1,Sn1,Sp2,Sn2…スイッチング素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子のオン状態及びオフ状態の1周期に対するオン時間の比率を規定する時比率信号を生成する制御回路を有して且つ、前記生成される時比率信号に基づく前記スイッチング素子のオンオフ操作によって出力電圧が制御されるDCDCコンバータを備える電源システムにおいて、
前記制御回路は、1つの前記DCDCコンバータに複数備えられ、
複数の前記制御回路のそれぞれは、これら制御回路のそれぞれから出力される前記時比率信号に基づき前記スイッチング素子のオン状態とされる期間が互いに重ならないように前記時比率信号を生成することを特徴とする電源システム。
【請求項2】
当該電源システムの電流流通経路の電圧又は電流を検出する検出手段を更に備え、
複数の前記制御回路のそれぞれは、前記検出手段の検出値を入力として前記時比率信号を生成し、
複数の前記制御回路のそれぞれに入力された前記検出手段の検出値同士の比較、及び複数の前記制御回路のそれぞれによって生成された前記時比率信号同士の比較のうち少なくとも1つに基づき、当該電源システムに異常が生じているか否かを判断する異常判断手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の電源システム。
【請求項3】
前記異常判断手段によって当該電源システムに異常が生じている旨判断された場合、複数の前記制御回路のそれぞれによって生成された前記時比率信号のうち前記オン時間が最短となる時比率信号を選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された時比率信号の前記オン時間を長くするオン時間伸長手段と、
前記オン時間伸長手段によって前記オン時間が長くされた時比率信号によって前記スイッチング素子をオンオフ操作する異常時操作手段とを更に備えることを特徴とする請求項2記載の電源システム。
【請求項4】
前記制御回路は、1つの前記DCDCコンバータに3つ以上備えられ、
前記異常判断手段によって当該電源システムに異常が生じている旨判断された場合、前記3つ以上の制御回路のそれぞれによって生成された前記時比率信号のうち互いに同一である前記オン時間の数が最も多い時比率信号を選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された時比率信号の前記オン時間を長くするオン時間伸長手段と、
前記オン時間伸長手段によって前記オン時間が長くされた時比率信号によって前記スイッチング素子をオンオフ操作する異常時多数決操作手段とを更に備えることを特徴とする請求項2記載の電源システム。
【請求項5】
前記3つ以上の制御回路のうち一部であってかつ少なくとも2つは前記時比率信号を前記スイッチング素子に伝達可能とされ、残余は前記時比率信号を前記スイッチング素子に伝達不可能とされ、
前記異常判断手段によって前記3つ以上の制御回路のうち前記時比率信号を前記スイッチング素子に伝達不可能な制御回路のみに異常が生じている旨判断された場合、前記オン時間伸長手段によって前記時比率信号の前記オン時間を長くすることなく、前記時比率信号を前記スイッチング素子に伝達可能な制御回路のそれぞれから前記スイッチング素子への前記時比率信号の伝達を継続させる継続操作手段を更に備えることを特徴とする請求項4記載の電源システム。
【請求項6】
複数の前記制御回路のうち前記選択手段によって選択された時比率信号を生成する制御回路以外の制御回路から前記スイッチング素子への前記時比率信号の伝達を遮断する信号遮断手段を更に備え、
前記オン時間伸長手段は、前記信号遮断手段によって前記時比率信号の伝達が遮断されることによって低下すると想定される前記DCDCコンバータの供給電力を補償可能なように前記オン時間を長くすることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項7】
前記電源システムは、車両に搭載され、
前記車両には、高圧側車載負荷と、該高圧側車載負荷及び前記DCDCコンバータの電力供給源となる高圧バッテリとが備えられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−110837(P2013−110837A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253544(P2011−253544)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】