説明

露光装置

【課題】被露光体上を走査する光ビームの走査距離を短くして露光工程のタクトを短縮する。
【解決手段】一定方向に一定速度で搬送される被露光体4の搬送方向と交差する方向に一定の配列ピッチで一列に平行に並んだ複数のレーザビームに強度変調を与えて射出するパターンジェネレータ6と、パターンジェネレータ6から射出した複数のレーザビームを被露光体4上に一定間隔に並べて集光するfθレンズ7と、fθレンズ7を射出した複数のレーザビームを被露光体4の搬送方向と交差する方向に回折させて、互いに隣接するレーザビームの間の領域を同時に往復走査する音響光学素子8と、を備え、音響光学素子8は、レーザビームの回折方向の軸が光軸を中心に被露光体4の搬送方向と直交する方向に対して一定角度だけ回転した状態に配設され、音響光学素子4の光射出側には、複数のレーザビームの0次回折光を遮断する遮光マスク22が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被露光体を一定方向に搬送しながら該被露光体の搬送方向と交差する方向に光ビームを走査して露光する露光装置に関し、特に被露光体上を走査する光ビームの走査距離を短くして露光工程のタクトを短縮しようとする露光装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の露光装置は、被露光体を一定方向に搬送しながら、光スイッチによりオン・オフ変調されて射出する一本のレーザビームを、ポリゴンミラーにより被露光体の搬送方向と交差する方向に往復走査し、fθレンズにより被露光体上に集光して露光するものとなっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−317800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の露光装置においては、一本の光ビームが被露光体上の露光領域の全幅を往復走査するものであるので、光ビームの走査距離が長くなっていた。したがって、被露光体の搬送方向において未露光部が生じないようにするためには、被露光体の搬送速度を遅くしなければならず、露光工程のタクトが長くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、被露光体上を走査する光ビームの走査距離を短くして露光工程のタクトを短縮しようとする露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による露光装置は、一定方向に一定速度で搬送される被露光体の搬送方向と交差する方向に一定の配列ピッチで一列に平行に並んだ複数のレーザビームに強度変調を与えて射出するパターンジェネレータと、前記パターンジェネレータから射出した前記複数のレーザビームを前記被露光体上に一定間隔に並べて集光するfθレンズと、前記fθレンズを射出した前記複数のレーザビームを前記被露光体の搬送方向と交差する方向に回折させて、互いに隣接する前記レーザビームの間の領域を同時に往復走査する音響光学素子と、を備え、前記音響光学素子は、前記レーザビームの回折方向の軸が光軸を中心に前記被露光体の搬送方向と直交する方向に対して一定角度だけ回転した状態に配設され、前記音響光学素子の光射出側には、前記複数のレーザビームの0次回折光を遮断する遮光マスクが設けられたものである。
【0007】
このような構成により、被露光体を一定方向に一定速度で搬送しながら、パターンジェネレータで被露光体の搬送方向と交差する方向に一定の配列ピッチで一列に平行に並んだ複数のレーザビームに強度変調を与えて射出し、fθレンズでパターンジェネレータから射出した複数のレーザビームを被露光体上に一定間隔に並べて集光する。その際、レーザビームの回折方向の軸が光軸を中心に被露光体の搬送方向と直交する方向に対して一定角度だけ回転した状態に配設された音響光学素子で、fθレンズを射出した複数のレーザビームを被露光体の搬送方向と交差する方向に回折させて、互いに隣接するレーザビームの間の領域を同時に往復走査する。このとき、音響光学素子の光射出側に設けられた遮光マスクにより、複数のレーザビームの0次回折光を遮断して1次回折光のみを走査する。
【0008】
また、前記パターンジェネレータは、前記被露光体の搬送方向と交差する方向に一定の配列ピッチで一列に並べて複数の光スイッチを設けたものである。これにより、被露光体の搬送方向と交差する方向に一定の配列ピッチで一列に並べて設けた複数の光スイッチにより複数のレーザビームに強度変調を与えて射出する。
【0009】
さらに、前記各光スイッチは、電気光学結晶材料からなる角柱状のスイッチング素子の長軸に平行な対向面に夫々電極を設けると共に、前記スイッチング素子の長軸方向の両端面側に一対の偏光素子をクロスニコルに配置して構成したものである。これにより、電気光学結晶材料からなる角柱状のスイッチング素子の長軸に平行な対向面に夫々電極を設けると共に、スイッチング素子の長軸方向の両端面側に一対の偏光素子をクロスニコルに配置して構成した各光スイッチで各レーザビームの射出をオン・オフする。
【0010】
さらにまた、前記一対の偏光素子は、偏光ビームスプリッタである。これにより、一対の偏光ビームスプリッタで被露光体に照射するレーザビームを制限する。
【0011】
そして、前記fθレンズは、前記被露光体と対向配置された第1のfθレンズと、前記パターンジェネレータの光射出側に前記第1のfθレンズとミラー対称に設けられた第2のfθレンズとを備えて構成したものである。これにより、被露光体と対向配置された第1のfθレンズと、パターンジェネレータの光射出側に第1のfθレンズとミラー対称に設けられた第2のfθレンズとを備えて構成したfθレンズにより、複数のレーザビームを被露光体上に一定間隔に並べて集光する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、一列に並んだ複数のレーザビームを音響光学素子で同時に往復走査し、被露光体の露光領域の全幅を露光するようにしているので、1本当たりのレーザビームの走査距離を短くすることができる。したがって、レーザビームの走査周期を短縮することができ、被露光体の搬送速度を速くして、露光工程のタクトを短縮することができる。この場合、音響光学素子によるレーザビームの回折光のうち0次回折光を遮光マスクにより遮断しているので、走査されない0次回折光によって被露光体が露光されるのを防止することができる。これにより、露光パターンを適切に形成することができる。また、レーザビームの走査を音響光学素子によって行っているので、経時的変化が少なくレーザビームを長時間安定して走査することができる。したがって、露光装置の信頼性を向上することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、複数の光スイッチで被露光体の搬送方向と交差する方向に一定の配列ピッチで一列に平行に並んだ複数のレーザビームに分割すると同時に、各レーザビームに強度変調を与えることができる。
【0014】
さらに、請求項3に係る発明によれば、各光スイッチを電気光学結晶材料で形成しているので、エネルギーの高いレーザ光を使用することができる。したがって、レーザビームの走査速度をより速くして露光工程のタクトをより短縮することができる。
【0015】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、偏光膜を無機材料で形成することができ、レーザビームに対する耐性を向上することができる。
【0016】
そして、請求項5に係る発明によれば、パターンジェネレータから一定の配列ピッチで一列に平行に並んで射出する複数のレーザビームを被露光体上に一定間隔に並べて集光することができる。したがって、露光パターンを精度よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による露光装置の実施形態を示す概要図である。
【図2】本発明の露光装置に使用する光スイッチの構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の露光装置に使用する音響光学素子の配置を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図4】上記音響光学素子の駆動信号を示す説明図である。
【図5】上記音響光学素子によるレーザビームの走査を示す説明図である。
【図6】上記音響光学素子と一緒に使用する遮光マスクを示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図7】本発明の露光装置の制御手段の概略構成を示すブロック図である。
【図8】上記光スイッチのオン・オフ駆動を説明する図であり、(a)はオン状態を示し、(b)はオフ状態を示す。
【図9】本発明の露光装置における1つのレーザビームの往復走査による露光を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による露光装置の実施形態を示す概要図である。この露光装置は、被露光体を一定方向に搬送しながら該被露光体の搬送方向と交差する方向に光ビームを走査して露光するもので、搬送手段1と、露光光学系2と、制御手段3と、を備えてなる。
【0019】
上記搬送手段1は、被露光体4を一定方向に一定速度で搬送するものであり、ステージ5の上面5aにエアの噴出口及び吸引口を備え、エアの噴出力及び吸引力を調整して被露光体4をステージ5の上面5aに一定量だけ浮上させた状態で図示省略の搬送機構により被露光体4の両端縁部を保持して搬送するようになっている。なお、図1において被露光体4の搬送方向は、同図に正対して手前から奥に向かう方向(X方向)である。
【0020】
上記搬送手段1の上方には、露光光学系2が配設されている。この露光光学系2は、レーザビームLbを被露光体4の搬送方向と交差する方向(Y方向)に走査してX方向に移動中の被露光体4の表面に照射し、被露光体4面に塗布された感光材を露光するもので、レーザビームLbの進行方向上流から下流に向かってパターンジェネレータ6と、fθレンズ7と、音響光学素子8と、遮光マスク22とをこの順に配置して備えたものである。
【0021】
ここで、パターンジェネレータ6は、被露光体4の搬送方向と交差する方向に一定の配列ピッチで一列に並べられた複数の光スイッチ9(図2参照)により、一方向に拡幅されたレーザ光Lを一定の配列ピッチで一列に平行に並んだ複数のレーザビームLbに分割して射出するものであり、図2に示すように、各光スイッチ9は、電気光学結晶材料からなる角柱状の複数のスイッチング素子10の長軸に平行な対向面に夫々電極11a,11bを設けると共に、複数のスイッチング素子10の長軸方向の両端面側に一対の偏光素子をクロスニコルに配置して構成されている。そして、上記複数のスイッチング素子10は、図1に示すように、それらの長軸方向を光の通路とし、透明な配線基板12上に上記一対の電極11a,11bが配線基板12の各配線に接続された状態で一列に並べて形成されて、スイッチング素子組立体13を構成している。
【0022】
なお、本実施形態においては、上記一対の偏光素子は、図2に示すように、一例として電気光学結晶材料の光入射端面10a側に配置された第1の偏光ビームスプリッタ14と、光射出端面10b側に配置された第2の偏光ビームスプリッタ15とを、互いに光軸を中心に90°回転した関係に設けたもので示しているが、一対の偏光素子は一対の偏光板であってもよい。また、第1及び第2の偏光ビームスプリッタ14,15は、スイッチング素子組立体13の全体に亘って共通したものであってもよい。さらに、本実施形態においては、第1の偏光ビームスプリッタ14とスイッチング素子組立体13との間に、複数のマイクロレンズを上記複数のスイッチング素子10の配列ピッチと同じピッチで一列に並べて設けたレンズアレイ16を配置し、拡幅されたレーザ光Lを複数のマイクロレンズにより複数のレーザビームLbに分割し、上記各スイッチング素子10上に集光させている。これにより、光利用効率を向上させることができる。図1においては、レンズアレイ16がパターンジェネレータ6に組み込まれた状態で示されているが、レンズアレイ16はパターンジェネレータ6の光入射側前方に設けてもよく、又はレンズアレイ16はなくてもよい。
【0023】
上記パターンジェネレータ6に入射するレーザ光Lは、レーザ光源17から放射され、光ファイバ18によって板状のロッドレンズ19まで導かれ、このロッドレンズ19により光強度分布が均一化された後、ビームエキスパンダ20によりロッドレンズ19の端面の長軸方向に拡幅されるようになっている。したがって、上記レンズアレイ16の各マイクロレンズの配列方向及び複数の光スイッチ9の配列方向がレーザ光Lの拡幅方向に一致するようにパターンジェネレータ6は、配置されることになる。
【0024】
上記fθレンズ7は、パターンジェネレータ6から射出した複数のレーザビームLbを被露光体4上に一定間隔に並べて集光するものであり、像面側焦点位置を被露光体4の表面に略合致させて被露光体4と対向配置された第1のfθレンズ7Aと、物体面側焦点位置を第1のfθレンズ7Aの物体面側焦点位置と略合致させた状態でパターンジェネレータ6の光射出側に第1のfθレンズ7Aとミラー対称に設けられた第2のfθレンズ7Bとを備えて構成されている。なお、図1において符号21は、光路を折り曲げる全反射ミラーである。
【0025】
上記音響光学素子8は、fθレンズ7を射出した複数のレーザビームLbを被露光体4の搬送方向と交差する方向に回折させて互いに隣接するレーザビームLbの間の領域を往復走査するもので、被露光体4の搬送方向と交差する方向に長軸を有する角柱状の部材からなり、図3(a)に拡大して示すようにブラッグの回折条件に適合するように長軸が被露光体4の面に対して角度θだけ傾いた状態で設けられ、且つ同図(b)に示すように長軸(レーザビームLbの回折方向の軸に相当)が光軸を中心に被露光体4の搬送方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に対して一定角度φだけ回転した状態で設けられている。これにより、レーザビームLbは、音響光学素子8で回折され、同図(a)に示すように、音響光学素子8からレーザビームLbの0次回折光Dr0と1次回折光Dr1とが射出する。
【0026】
上記音響光学素子8は、次のように動作する。即ち、例えばf0=40MHzの周波数を基準周波数として音響光学素子8に与えて振動させると、素子内には、音波の進行方向(長軸方向)に光弾性効果により周期的な屈折率変化が生じて回折格子と同等の働きをし、入射するレーザビームLbを回折して射出する。このとき、音響光学素子8に与える周波数を、図4に示すように周波数f0を基準とする一定の周波数範囲(Δf)内で鋸歯状に変化させると、1次回折光Dr1の回折角度が変化して図5に示すようにレーザビームLb(1次回折光Dr1)が一定の範囲W内を矢印A,B方向に往復走査することになる。なお、1次回折光Dr1以外の高次の回折光は、光強度が小さいために無視してもよい。
【0027】
上記音響光学素子8の光射出側に、図6(a)に示すように、レーザビームLbの回折光のうち0次回折光Dr0を遮断する遮光マスク22が設けられている。これにより、1次回折光Dr1のみを被露光体4に照射させることができ、露光を適切に行なうことができる。この遮光マスク22は、例えば透明な基板23の一面23aに、同図(b)に示すように、上記0次回折光Dr0の通過位置に対応させて所定形状のクロム(Cr)等の遮光膜24を設けて形成されている。
【0028】
上記搬送手段1と、パターンジェネレータ6と、音響光学素子8と、レーザ光源17と、に電気的に接続して制御手段3が設けられている。この制御手段3は、パターンジェネレータ6の複数の光スイッチ9のオン・オフ駆動を制御すると共に、音響光学素子8を駆動してレーザビームLbを往復走査させるものであり、図7に示すように、搬送手段駆動部25と、パターンジェネレータ駆動部26と、音響光学素子駆動部27と、レーザ光源駆動部28と、演算部29と、メモリ30と、制御部31と、を備えている。
【0029】
ここで、上記搬送手段駆動部25は、搬送手段1の駆動を制御して図示省略の搬送機構を一定速度で移動させるものである。また、パターンジェネレータ駆動部26は、後述のメモリ30に予め記憶されたCADデータに基づいてパターンジェネレータ6の各光スイッチ9のオン・オフ駆動を制御するものであり、往復走査するレーザビームLbの往路において各光スイッチ9をオン・オフ駆動し、復路においては常にオフ駆動するように制御する。さらに、音響光学素子駆動部27は、基準周波数f0を基準として一定の周波数範囲(Δf)内を一定周期で鋸歯状に繰り返し変化する音響信号を音響光学素子8に与えて振動させるものであり、例えば図4に示すようにレーザビームLbの往路走査時間に相当する時間T内に周波数を周波数f0から周波数(f0+Δf)まで変化させるようになっている。また、レーザ光源駆動部28は、レーザ光源17を予め設定された出力で駆動させるものである。さらに、演算部29は、予め設定された初期設定値に基づいて例えば被露光体4の搬送速度Vや、光スイッチ9の切換周波数Fs等を演算するものである。また、メモリ30は、各要素の初期設定値を記憶すると共に露光パターンのCADデータを記憶するものである。そして、制御部31は、各要素が適切に駆動するように装置全体を統合して制御するものである。
【0030】
次に、このように構成された露光装置の動作について説明する。
先ず、被露光体4の搬送方向(X方向)の露光ピッチP1、レーザビームLbの走査方向の露光ピッチP2、音響光学素子8に与える音響信号の繰り返し周期(レーザビームLbの走査周期に相当)T、レーザビームLbの走査幅W、レーザ光源17のパワー等の初期設定値、及び露光パターンのCADデータをメモリ30に記憶する。
【0031】
この場合、被露光体4の搬送速度Vは、演算部29において次のようにして算出することができる。即ち、被露光体4の搬送方向(X方向)の露光ピッチがP1であるので、レーザビームLbの往復走査終了時の照射位置は、先の照射位置からX方向後方に距離P1だけずれた位置となる必要がある(図9参照)。なお、本実施形態においては、復路の走査時間が図4に示すように瞬時であり無視できるため、レーザビームLbの往復走査時間は、往路の走査時間に相当し走査周期Tに等しい。したがって、レーザビームLbが往復走査する時間T内に被露光体4は、距離P1だけ移動しなければならない。それ故、被露光体4の搬送速度は、V=P1/Tとなる。
【0032】
また、光スイッチ9の切換周波数をFsとすると、レーザビームLbの往路走査時間T内に光スイッチ9が切り替わる回数nは、n=(Fs・T)となる。一方、レーザビームLbの走査方向(Y方向)の露光ピッチは、P2であるから、光スイッチ9がn回切り替わる間にレーザビームLbが移動する距離は、n・P2=Fs・T・P2となる。そして、これは、レーザビームLbの走査幅Wに等しいから、W=Fs・T・P2として表わすことができる。したがって、光スイッチ9の切換周波数Fsは、初期設定値であるレーザビームLbの走査方向の露光ピッチP2、レーザビームLbの往路走査時間(音響光学素子8に与える音響信号の繰り返し周期)T及びレーザビームLbの走査幅Wに基づいて演算部29においてFs=W/(P2・T)の関係式を演算することによって算出される。なお、被露光体4の搬送速度V及び光スイッチ9の切換周波数Fsを初期設定値として直接入力してもよい。
【0033】
次に、搬送手段1上に被露光体4が載置される。そして、露光開始スイッチが投入されると、搬送手段1のステージ5の上面5aと被露光体4との間に空気層が形成され、被露光体4が一定量だけ浮上された状態で図示省略の搬送機構によって両端縁部が保持されて速度VでX方向に搬送される。
【0034】
また、レーザ光源17からはレーザ光Lが放射され、光ファイバ18によってパターンジェネレータ6側に導かれる。そして、ロッドレンズ19によって光強度分布が均一化された後、ビームエキスパンダ20によって一定方向(被露光体4の搬送方向と交差する方向)に拡幅されてパターンジェネレータ6に入射する。
【0035】
パターンジェネレータ6においては、入射したレーザ光Lは、先ず第1の偏光ビームスプリッタ14によって偏光面14a(図2参照)を透過するP偏光と偏光面14aで反射されるS偏光に分離される。なお、以下の説明においては、P偏光を露光に使用する場合について述べるが、S偏光を使用してもよい。
【0036】
第1の偏光ビームスプリッタ14の偏光面14aを透過したP偏光のレーザ光Lは、レンズアレイ16の複数のマイクロレンズによって複数のレーザビームLbに分割されて、それぞれ後段のスイッチング素子組立体13の対応するスイッチング素子10に入射する。
【0037】
各スイッチング素子10は、パターンジェネレータ駆動部26によりCADデータに基づいて切換周波数Fsでオン・オフ駆動される。そして、各スイッチング素子10を通過したレーザビームLbは、第2の偏光ビームスプリッタ15によって偏光面15a(図2参照)の透過が制限される。例えば、図8(a)に示すように、スイッチング素子10がオン駆動されている場合には、スイッチング素子10に入射したP偏光のレーザビームLbは、スイッチング素子10内を通過中に偏波面が90°回転されてS偏光となる。このとき、第1の偏光ビームスプリッタ14と第2の偏光ビームスプリッタ15とは、光軸を中心に互いに90°回転した状態に配置されているため、スイッチング素子10を射出したS偏光は、第2の偏光ビームスプリッタ15の偏光面15aに対してはP偏光の関係となり、この偏光面15aを透過して被露光体4上に到達することができる。
【0038】
一方、図8(b)に示すように、スイッチング素子10がオフ駆動されている場合には、スイッチング素子10に入射したP偏光のレーザビームLbは、スイッチング素子10内で偏波面が回転されずP偏光のままである。したがって、このP偏光は、第2の偏光ビームスプリッタ15の偏光面15aに対してはS偏光の関係となり、この偏光面15aで反射されて被露光体4上に到達することができない。
【0039】
パターンジェネレータ6を射出した複数のレーザビームLbは、第2のfθレンズ7Bにより光軸側に絞られた後、発散して第1のfθレンズ7Aに入射する。そして、複数のレーザビームLbの被露光体4上の集光位置が一定間隔で一列に並ぶように第1のfθレンズ7Aから射出する。
【0040】
第1のfθレンズ7Aを射出した複数のレーザビームLbは、音響光学素子8に入射する。この音響光学素子8は、音響光学素子駆動部27から供給される基準周波数f0を基準として周波数範囲Δf内を鋸歯状に周期Tで変化する音響信号により振動している。したがって、音響光学素子8に入射する複数のレーザビームLbは、音響光学素子8内で回折されて射出し、回折光のうち1次回折光Dr1が被露光体4上を走査幅Wで被露光体4の搬送方向(X方向)と交差するY方向に往復走査される。このとき、音響光学素子8を透過する0次回折光は、音響光学素子8の光射出側に設けられた遮光マスク22によって遮断されて被露光体4に到達しない。これにより、0次回折光Dr0によって被露光体4が露光されるのが防止される。
【0041】
こうして、図9に示すように、X方向に速度Vで搬送中の被露光体4上をレーザビームLbの1次回折光Dr1が矢印A方向に走査されている間にスイッチング素子10が切換周波数Fsでオン・オフ駆動される。したがって、被露光体4の搬送方向と交差するY方向に露光ピッチP2で1ライン分の露光が実行される。また、レーザビームLbの1次回折光Dr1が矢印B方向へ走査されている間は、スイッチング素子10は全てオフ駆動されるため、この間の露光は停止される。そして、レーザビームLbの1回目の往復走査が終了すると、レーザビームLbの照射位置は、被露光体4がX方向に速度Vで搬送されているため、先の照射位置から露光ピッチP1だけ後方にずれた位置となる。これにより、レーザビームLbの2回目の往復走査中に上記先の1ライン分の露光に続いて、次の1ライン分の露光が実行される。以下、同様にしてレーザビームLbを往復走査しながら、未露光部を生じさせることなく、被露光体4上の露光領域内を均一に露光することができる。この場合、光スイッチ9をCADデータに基づいて適切に駆動すると、被露光体4上に緻密な露光パターンを形成することができる。なお、同図において、破線は、隣接するレーザビームLbによる隣接露光領域の露光を示している。
【0042】
以上の説明においては、光スイッチ9が電気光学結晶材料を用いたものである場合について述べたが、本発明はこれに限られず、光スイッチ9は、オン・オフ駆動するマイクロミラーであってもよい。したがって、パターンジェネレータ6は、複数のマイクロミラーを一定の配列ピッチで一列に並べたマイクロミラーアレイであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
4…被露光体
6…パターンジェネレータ
7…fθレンズ
7A…第1のfθレンズ
7B…第2のfθレンズ
8…音響光学素子
9…光スイッチ
10…スイッチング素子
11a,11b…電極
14…第1の偏光ビームスプリッタ(偏光素子)
15…第2の偏光ビームスプリッタ(偏光素子)
22…遮光マスク
Lb…レーザビーム
Dr0…0次回折光
Dr1…1次回折光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向に一定速度で搬送される被露光体の搬送方向と交差する方向に一定の配列ピッチで一列に平行に並んだ複数のレーザビームに強度変調を与えて射出するパターンジェネレータと、
前記パターンジェネレータから射出した前記複数のレーザビームを前記被露光体上に一定間隔に並べて集光するfθレンズと、
前記fθレンズを射出した前記複数のレーザビームを前記被露光体の搬送方向と交差する方向に回折させて、互いに隣接する前記レーザビームの間の領域を同時に往復走査する音響光学素子と、を備え、
前記音響光学素子は、前記レーザビームの回折方向の軸が光軸を中心に前記被露光体の搬送方向と直交する方向に対して一定角度だけ回転した状態に配設され、
前記音響光学素子の光射出側には、前記複数のレーザビームの0次回折光を遮断する遮光マスクが設けられたことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記パターンジェネレータは、前記被露光体の搬送方向と交差する方向に一定の配列ピッチで一列に並べて複数の光スイッチを設けたものであることを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記各光スイッチは、電気光学結晶材料からなる角柱状のスイッチング素子の長軸に平行な対向面に夫々電極を設けると共に、前記スイッチング素子の長軸方向の両端面側に一対の偏光素子をクロスニコルに配置して構成したものであることを特徴とする請求項2記載の露光装置。
【請求項4】
前記一対の偏光素子は、偏光ビームスプリッタであることを特徴とする請求項3記載の露光装置。
【請求項5】
前記fθレンズは、前記被露光体と対向配置された第1のfθレンズと、前記パターンジェネレータの光射出側に前記第1のfθレンズとミラー対称に設けられた第2のfθレンズとを備えて構成したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−145613(P2012−145613A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1612(P2011−1612)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】