説明

CMP方法及び半導体装置の製造方法

【課題】酸化珪素砥粒を含む研磨剤により酸化珪素膜の平坦化を行う場合に、酸化珪素膜と研磨停止膜としての窒化珪素膜との研磨選択比を確保する。
【解決手段】実施形態に係わるCMP方法は、酸化珪素砥粒を含む研磨剤を用い、かつ、研磨停止膜として窒化珪素膜を用いて、被研磨膜としての酸化珪素膜の平坦化を行う場合において、研磨剤に、50000以上、5000000以下の重量平均分子量を持つ第1の水溶性高分子と、1000以上、10000以下の重量平均分子量を持つ第2の水溶性高分子とを含ませた状態で、酸化珪素膜の研磨を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、CMP方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)による酸化珪素膜(被研磨膜)の平坦化において、被研磨膜の表面上に研磨傷が入りやすいという問題を解消するため、研磨剤中の砥粒として、酸化セリウム砥粒に代えて酸化珪素砥粒を用いる技術がある。
【0003】
この技術では、さらに研磨剤中に水溶性高分子を導入することにより、酸化珪素砥粒を用いることによる酸化珪素膜の研磨速度の低下を防ぐことができる。
【0004】
しかし、以上の技術を用いた場合、被研磨膜としての酸化珪素膜と研磨停止膜としての窒化珪素膜との研磨選択比を確保することは難しい。
【0005】
例えば、研磨剤中にポリカルボン酸塩を導入することにより、酸化珪素膜と窒化珪素膜との研磨選択比を大きくする技術が知られているが、この技術は、酸化セリウム砥粒を用いる場合に有効であり、酸化珪素砥粒を用いる場合には十分な効果を発揮することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−28075号公報
【特許文献2】特許第3278532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、酸化珪素砥粒を含む研磨剤により酸化珪素膜の平坦化を行う場合に、酸化珪素膜の研磨速度の向上及び研磨傷の低減と共に、酸化珪素膜と研磨停止膜としての窒化珪素膜との研磨選択比の確保を図る技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係わるCMP方法は、酸化珪素砥粒を含む研磨剤を用い、かつ、研磨停止膜として窒化珪素膜を用いて、被研磨膜としての酸化珪素膜の平坦化を行う場合において、前記研磨剤に、50000以上、5000000以下の重量平均分子量を持つ第1の水溶性高分子と、1000以上、10000以下の重量平均分子量を持つ第2の水溶性高分子とを含ませた状態で、前記酸化珪素膜の研磨を行う。
【0009】
実施形態に係わる半導体装置の製造方法は、半導体基板上に研磨停止膜としての窒化珪素膜を形成する工程と、前記窒化珪素膜及び前記半導体基板に溝を形成する工程と、前記窒化珪素膜上に前記溝を埋め込む酸化珪素膜を形成する工程と、酸化珪素砥粒、50000以上、5000000以下の重量平均分子量を持つ第1の水溶性高分子、及び、1000以上、10000以下の重量平均分子量を持つ第2の水溶性高分子を含む研磨剤を用いて、前記窒化珪素膜が露出するまで、CMPにより前記酸化珪素膜を研磨する工程とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】CMP装置を示す図。
【図2】CMP装置を示す図。
【図3】被研磨物を示す図。
【図4】トルク電流値の変化を示す図。
【図5】第1の実施例を示すフローチャート。
【図6】CMP方法を示す図。
【図7】CMP方法を示す図。
【図8】CMP方法を示す図。
【図9】研磨選択比の向上を示す図。
【図10】研磨傷数の低減を示す図。
【図11】第2の実施例を示すフローチャート。
【図12】CMP方法を示す図。
【図13】CMP方法を示す図。
【図14】CMP方法を示す図。
【図15】平坦性の向上を示す図。
【図16】平坦性の向上を示す図。
【図17】半導体装置の製造方法を示す図。
【図18】半導体装置の製造方法を示す図。
【図19】半導体装置の製造方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
【0012】
実施形態のCMP方法は、酸化珪素砥粒を含む研磨剤を用い、かつ、研磨停止膜として窒化珪素膜を用いて、酸化珪素膜(被研磨膜)の平坦化を行うプロセスに適用される。例えば、半導体装置の製造方法においては、半導体基板の溝内に酸化珪素膜を埋め込むプロセスが知られているが、このようなプロセスに実施形態のCMP方法が使用される。
【0013】
この場合、実施形態では、CMPの研磨剤中に、さらに、異なる分子量を持つ第1及び第2の水溶性高分子を含有させる。
【0014】
第1の水溶性高分子は、50000以上、5000000以下の重量平均分子量を持ち、第2の水溶性高分子は、1000以上、10000以下の重量平均分子量を持つ。第1及び第2の水溶性高分子は、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスルホン酸及びそれらの塩のグループから選択される。
【0015】
以上の構成によれば、酸化珪素砥粒により、酸化珪素膜(被研磨膜)の表面上の研磨傷を低減できる。また、第1の水溶性高分子を研磨剤に含めることにより、酸化珪素膜の研磨速度を向上できる。さらに、第2の水溶性高分子を研磨剤に含めることにより、酸化珪素膜と研磨停止膜としての窒化珪素膜との研磨選択比を確保できる。
【0016】
[CMP装置]
まず、実施形態のCMP方法を実施するためのCMP装置を説明する。
【0017】
図1及び図2は、CMP装置を示している。
図1は、CMP装置の斜視図であり、図2は、図1のCMP装置の側面図である。
【0018】
台座部(例えば、回転台)11は、例えば、回転駆動(右回り/左回り)される。研磨パッド12は、台座部11上に搭載される。
【0019】
保持部13は、被研磨物(例えば、半導体ウェハー)14を保持し、かつ、被研磨物14を保持した状態で被研磨物14を研磨パッド12の表面部に接触させる。保持部13は、例えば、回転駆動(右回り/左回り)される。
【0020】
台座部11及び保持部13は、被研磨物14の研磨量のむらをなくす観点から共に回転駆動されているのが望ましい。両者が回転駆動されるとき、保持部13の回転方向と台座部11の回転方向とは同じであるのが望ましい。
【0021】
ここで、被研磨物14の研磨圧力は、例えば、100 hPa (hectopascal)以上、500 hPa以下であるのが望ましい。また、台座部11及び保持部13の回転速度は、例えば、30 rpm (revolutions par minute)以上、120 rpm以下であるのが望ましい。
【0022】
被研磨物14は、例えば、図3に示すように、半導体ウェハー(半導体装置)である。ここでは、半導体基板14aと、半導体基板14a上の研磨停止膜としての窒化珪素膜14bと、半導体基板14aの溝内に埋め込まれた被研磨膜としての酸化珪素膜14cとを備える半導体装置を、被研磨物14の例として示す。
【0023】
供給部15は、台座部11の上方、例えば、台座部11が円柱形のとき、円の中央部の上方に配置され、研磨パッド12の表面部にスラリーを供給する。スラリーは、例えば、研磨剤としての薬液、水などを含む。
【0024】
表面調整部16は、被研磨物14の研磨により、磨耗した、又は、研磨剤中に含まれる酸化珪素砥粒により目詰まりした研磨パッド12の表面部を、被研磨物14の研磨前の初期状態に戻す機能を有する。表面調整部16は、例えば、研磨パッド12の表面部を一定量だけ切削することにより、研磨パッド12の表面部を初期状態に戻す。
【0025】
尚、表面調整部16は、1回のCMP工程が終了する度に、研磨パッド12の表面部を初期状態に戻してもよいし、複数回のCMP工程を実行した後に、研磨パッド12の表面部を初期状態に戻してもよい。
【0026】
温度設定部17は、研磨パッド12の表面部に配置され、研磨パッド12の表面部の温度、即ち、被研磨物14の研磨面の温度を設定する。温度設定部17は、例えば、研磨パッド12の表面部に接触する熱交換体(接触機構)や、研磨パッド12の表面部に不活性気体(熱交換気体)を供給する非接触機構などを備える。
【0027】
温度設定部17が熱交換体から構成される場合、制御可能な研磨パッドの表面部の温度範囲を広く確保できる。また、温度設定部17が非接触機構により構成される場合、研磨パッド12に傷やむらが発生することがないため、結果として、被研磨物14の研磨傷を低減できる。
【0028】
また、温度設定部17は、温度センサを有していてもよい。また、温度センサを温度設定部17以外の部分に設け、温度設定部17は、温度センサを有していなくてもよい。
【0029】
さらに、温度設定部17に代えて、台座部11又は保持部13の温度を制御することにより、研磨パッド12の表面部の温度又は被研磨物14の研磨面の温度を間接的に制御する手段を設けてもよい。
【0030】
制御部18は、台座部11、保持部13、供給部15、表面調整部16及び温度設定部17の動作を制御する。制御部18は、トルク電流モニター部19を有する。
【0031】
トルク電流モニター部19は、台座部11又は保持部13を回転駆動するトルク電流値をモニターする。即ち、台座部11及び保持部13がそれぞれ一定回転で駆動されるとき、そのトルク電流値をモニターすることにより、研磨停止膜としての窒化珪素膜が露出した時点(研磨の終了時点)を判断することができる。
【0032】
なぜなら、例えば、被研磨物14が図3に示す半導体装置のとき、酸化珪素膜14cの凹凸が存在する状態では、研磨パッド12と酸化珪素膜14cとの接触抵抗が小さく、酸化珪素膜14cの凹凸が無くなった状態では、研磨パッド12と酸化珪素膜14cとの接触抵抗が大きく、さらに、研磨パッド12及び酸化珪素膜14cの接触抵抗と、研磨パッド12及び窒化珪素膜14bの接触抵抗とが異なるからである。
【0033】
具体的には、図4に示すように、酸化珪素膜14cの凹凸が小さくなるに従い、研磨パッド12と酸化珪素膜14cとの接触抵抗が次第に大きくなるため、トルク電流値も次第に大きくなる。そして、トルク電流値は、酸化珪素膜14cの凹凸が無くなった後に、一定になる。
【0034】
また、この後、窒化珪素膜14bが露出すると、研磨パッド12と窒化珪素膜14bとの接触抵抗が、研磨パッド12と酸化珪素膜14cとの接触抵抗よりも大きいため、トルク電流値は、少し大きくなる。
【0035】
尚、このトルク挙動は、一例であって、スラリーや研磨パッドなどの組み合わせによっては、上述とは異なるトルク挙動を示す場合もある。
【0036】
このように、トルク電流値の変化点P1(時刻t1),P2(時刻t2)を検出することにより、研磨の終了時点を判断することが可能である。
【0037】
但し、トルク電流モニター部19を設けることなく、研磨の終了時点を判断することも可能である。例えば、経験則に従い、CMP工程における研磨時間をモニターすることにより、研磨の終了時点を判断してもよい。
【0038】
[CMP方法]
図1及び図2のCMP装置を用いたCMP方法を説明する。
【0039】
図5は、CMP方法の第1の実施例を示している。
【0040】
このフローチャートは、図1の制御部18により実行される。
【0041】
まず、保持部13に被研磨物14をセッティングする(ステップST1)。
このセッティングは、被研磨物14を保持部13に保持する動作と、保持部13を台座部11上の所定位置に移動させる動作を含む。
【0042】
ここで、被研磨物14は、酸化珪素膜を被研磨膜とし、かつ、窒化珪素膜を研磨停止膜とする。例えば、被研磨物14は、図3に示す半導体装置である。
【0043】
次に、台座部11の回転を開始する(ステップST2)。
台座部11の回転と共に保持部13を回転させてもよい。但し、保持部13の回転時期は、台座部11の回転時期と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
次に、台座部11上の研磨パッド12上にスラリーを供給する(ステップST3)。
スラリーは、遠心力により研磨パッド12上の全体にまんべんなく塗布される。
【0045】
ここで、スラリーは、酸化珪素砥粒を含む研磨剤を含む。また、研磨剤は、50000以上、5000000以下の重量平均分子量を持つ第1の水溶性高分子と、1000以上、10000以下の重量平均分子量を持つ第2の水溶性高分子とを含む。
【0046】
第1及び第2の水溶性高分子は、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスルホン酸及びそれらの塩のグループから選択される。
【0047】
ここで、本例のスラリーの供給方法は特に制限されない。
【0048】
例えば、酸化珪素砥粒と第1及び第2の水溶性高分子とを含む溶液を、一度に供給してもよいし、酸化珪素砥粒を含む溶液の供給と、第1及び第2の水溶性高分子とを含む溶液の供給とを、別々に行ってもよい。
【0049】
尚、第1及び第2の水溶性高分子の分子量は、重合度により制御可能である。分子量が上述の範囲内にあれば、第1の水溶性高分子の種類と第2の水溶性高分子の種類とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
ステップST1〜ST3を終えた状態を図6に示す。
【0051】
次に、保持部13に保持された被研磨物14を研磨パッド12に接触させ、被研磨物14の研磨、即ち、酸化珪素膜の研磨を開始する(ステップST4)。
研磨の開始は、例えば、保持部13を下降させることにより行うことができる。
【0052】
ステップST4の状態を図7に示す。
【0053】
次に、研磨停止膜としての窒化珪素膜が露出した時点で研磨を終了する(ステップST5)。
研磨の終了は、例えば、保持部13を上昇させることにより行うことができる。
【0054】
尚、窒化珪素膜が露出した時点については、既に説明したように、台座部11又は保持部13のトルク電流値をモニターすることにより判断してもよいし、経験則に従い、研磨時間をモニターすることにより判断してもよい。
【0055】
ステップST5の状態を図8に示す。
【0056】
最後に、台座部11の回転を停止させる(ステップST6)。
【0057】
以上のCMP方法によれば、酸化珪素砥粒により、酸化珪素膜(被研磨膜)の表面上の研磨傷を低減できる。また、第1の水溶性高分子を研磨剤に含めることにより、酸化珪素膜の研磨速度を向上できる。さらに、第2の水溶性高分子を研磨剤に含めることにより、酸化珪素膜と研磨停止膜としての窒化珪素膜との研磨選択比を確保できる。
【0058】
図9は、第1の実施例による研磨選択比の向上の効果を示している。
【0059】
研磨選択比は、酸化珪素膜の研磨レートを窒化珪素膜の研磨レートで割った値で定義する。また、比較例は、上述のCMP方法の実施例で用いた研磨剤から第2の水溶性高分子を除いた場合の結果である。
【0060】
同図から明らかなように、実施例による研磨選択比は、約11.5であるのに対し、比較例による研磨選択比は、約2.5である。即ち、実施例によれば、比較例に比べて、約4.5倍以上の研磨選択比を確保できる。
【0061】
この効果は、第2の水溶性高分子により、研磨停止膜としての窒化珪素膜の表面が保護され、酸化珪素砥粒が窒化珪素膜の表面に接触する確率が減少するためと考えられる。
【0062】
図10は、第1の実施例による研磨傷の低減の効果を示している。
【0063】
研磨傷数は、実施例を1としたときの比較例の値で比較する。比較例は、上述のCMP方法の実施例で用いた研磨剤中の酸化珪素砥粒に代えて酸化セリウム砥粒を用いた場合の結果である。
【0064】
同図から明らかなように、実施例による研磨傷数を1とすると、比較例による研磨傷数は約13である。即ち、実施例によれば、比較例に比べて、被研磨膜である酸化珪素膜の表面に形成される研磨傷数を大幅に減らすことができる。
【0065】
図11は、CMP方法の第2の実施例を示している。
【0066】
本例は、上述の第1の実施例の変形例である。従って、第1の実施例と同じステップについては、その詳細な説明を省略する。
【0067】
このフローチャートは、図1の制御部18により実行される。
【0068】
まず、保持部13に被研磨物14をセッティングする(ステップST1)。
被研磨物14は、第1の実施例と同様に、酸化珪素膜を被研磨膜とし、かつ、窒化珪素膜を研磨停止膜とする。例えば、被研磨物14は、図3に示す半導体装置である。
【0069】
次に、温度設定を行う(ステップST2)。
このステップは、本例で新たに加わったステップである。
【0070】
温度設定は、被研磨膜の研磨面の平坦性を向上させることを目的とする。具体的には、研磨パッド12の表面部の温度又は被研磨物14の研磨面の温度を40℃以下に設定する。
【0071】
次に、台座部11の回転を開始し、台座部11上の研磨パッド12上にスラリーを供給する(ステップST3〜ST4)。
【0072】
スラリーは、第1の実施例と同様に、酸化珪素砥粒を含む研磨剤を含む。また、研磨剤は、50000以上、5000000以下の重量平均分子量を持つ第1の水溶性高分子と、1000以上、10000以下の重量平均分子量を持つ第2の水溶性高分子とを含む。
【0073】
第1及び第2の水溶性高分子は、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスルホン酸及びそれらの塩のグループから選択される。
【0074】
ステップST1〜ST4を終えた状態を図12に示す。
【0075】
尚、温度設定は、後述する研磨開始(ステップST5)の直前までに、研磨パッド12の表面部の温度又は被研磨物14の研磨面の温度を40℃以下に設定すればよい。即ち、温度設定は、ステップST1とステップST2との間に完了することが条件とはならない。
【0076】
また、研磨を開始した後においても、研磨が終了するまで、研磨パッド12の表面部の温度又は被研磨物14の研磨面の温度が40℃以下の範囲内にあるように管理することは、被研磨膜の研磨面の平坦性を向上させるために望ましいことである。
【0077】
次に、保持部13に保持された被研磨物14を研磨パッド12に接触させ、被研磨物14の研磨、即ち、酸化珪素膜の研磨を開始する(ステップST5)。
研磨の開始は、例えば、保持部13を下降させることにより行うことができる。
【0078】
ステップST5の状態を図13に示す。
【0079】
次に、研磨停止膜としての窒化珪素膜が露出した時点で研磨を終了する(ステップST6)。
研磨の終了は、例えば、保持部13を上昇させることにより行うことができる。
ステップST6の状態を図14に示す。
【0080】
最後に、台座部11の回転を停止させる(ステップST7)。
【0081】
以上のCMP方法によれば、酸化珪素砥粒により、酸化珪素膜(被研磨膜)の表面上の研磨傷を低減できる。また、第1の水溶性高分子を研磨剤に含めることにより、酸化珪素膜の研磨速度を向上できる。さらに、第2の水溶性高分子を研磨剤に含めることにより、酸化珪素膜と研磨停止膜としての窒化珪素膜との研磨選択比を確保できる。
【0082】
また、研磨中(ステップST5〜ST6)における研磨パッド12の表面部の温度又は被研磨物14の研磨面の温度を40℃以下に維持することにより、被研磨膜の研磨面の平坦性を向上させることができる。
【0083】
図15及び図16は、第2の実施例による平坦性の向上の効果を示している。
平坦性は、被研磨膜の研磨面の最も低い点と最も高い点との差のことである。即ち、平坦性は、その値が零に近づくほど向上することを意味する。
【0084】
本例では、凹部線幅5μm、温度45℃のときの平坦性を1として規格化している。
【0085】
まず、図15によれば、研磨パッド12の表面部の温度又は被研磨物14の研磨面の温度が35℃のときの被研磨膜の平坦性は、研磨面の温度が45℃のときの平坦性よりも向上することが分かる。尚、同図において、横軸の凹部線幅は、例えば、図3の半導体基板14aの溝の幅のことである。
【0086】
次に、図16によれば、被研磨膜の平坦性は、研磨パッド12の表面部の温度又は被研磨物14の研磨面の温度が40℃を境に顕著に変化することが分かる。尚、同図は、凹部線幅を5μmに固定したときの結果であるが、その他の凹部線幅(測定データ=0.16μm、0.2μm、0.3μm、1μm、2μm、10μm、35μm、70μm)でも同様の結果が得られる。
【0087】
[半導体装置の製造方法]
図17乃至図19は、半導体装置の製造方法を示している。
【0088】
上述のCMP方法を半導体装置の製造方法における溝の埋め込み工程に適用すれば、平坦性の向上により、半導体装置の特性や製造歩留りなどの向上を実現できる。
【0089】
以下、具体的に説明する。
【0090】
まず、図17に示すように、半導体基板14a上に研磨停止膜としての窒化珪素膜14bを形成する。また、例えば、PEP (photo engraving process)により、窒化珪素膜14b上にレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクに、例えば、RIE (reactive ion etching)により、窒化珪素膜14b及び半導体基板14aに溝(凹部)を形成する。この後、レジストパターンを除去する。
【0091】
また、例えば、CVD (chemical vapor deposition)により、窒化珪素膜14b上に溝を埋め込む酸化珪素膜14cを形成する。
【0092】
次に、図18及び図19に示すように、CMPにより、酸化珪素膜14cを研磨し、酸化珪素膜14cを、半導体基板14aの溝内のみに残存させる。酸化珪素膜14cは、研磨停止膜としての窒化珪素膜14bが露出するまで、CMPにより研磨される。
【0093】
CMPで用いる研磨剤は、上述したように、酸化珪素砥粒、50000以上、5000000以下の重量平均分子量を持つ第1の水溶性高分子、及び、1000以上、10000以下の重量平均分子量を持つ第2の水溶性高分子を含む。
【0094】
以上の工程により、本例に係わる半導体装置が完成する。
【0095】
尚、半導体基板14aの溝に残存した酸化珪素膜14cは、例えば、素子分離のための絶縁層(STI: shallow trench isolation)として使用される。
【0096】
実施形態によれば、酸化珪素砥粒を含む研磨剤により酸化珪素膜の平坦化を行う場合に、酸化珪素膜の研磨速度の向上及び研磨傷の低減と共に、酸化珪素膜と研磨停止膜としての窒化珪素膜との研磨選択比の確保を図ることができる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
11: 台座部、 12: 研磨パッド、 13: 保持部、 14: 被研磨物、 14a: 半導体基板、 14b: 窒化珪素膜(研磨停止膜)、 14c: 酸化珪素膜(被研磨膜)、 15: 供給部、 16: 表面調整部、 17: 温度設定部、 18: 制御部、 19: トルク電流モニター部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化珪素砥粒を含む研磨剤を用い、かつ、研磨停止膜として窒化珪素膜を用いて、被研磨膜としての酸化珪素膜の平坦化を行うCMP方法において、前記研磨剤に、50000以上、5000000以下の重量平均分子量を持つ第1の水溶性高分子と、1000以上、10000以下の重量平均分子量を持つ第2の水溶性高分子とを含ませた状態で、前記酸化珪素膜の研磨を行うCMP方法。
【請求項2】
第1の水溶性高分子は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスルホン酸及びそれらの塩のグループから選択される請求項1に記載のCMP方法。
【請求項3】
第2の水溶性高分子は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスルホン酸及びそれらの塩のグループから選択される請求項1に記載のCMP方法。
【請求項4】
前記酸化珪素膜の研磨面の温度は、40℃以下である請求項1に記載のCMP方法。
【請求項5】
半導体基板上に研磨停止膜としての窒化珪素膜を形成する工程と、
前記窒化珪素膜及び前記半導体基板に溝を形成する工程と、
前記窒化珪素膜上に前記溝を埋め込む酸化珪素膜を形成する工程と、
酸化珪素砥粒、50000以上、5000000以下の重量平均分子量を持つ第1の水溶性高分子、及び、1000以上、10000以下の重量平均分子量を持つ第2の水溶性高分子を含む研磨剤を用いて、前記窒化珪素膜が露出するまで、CMPにより前記酸化珪素膜を研磨する工程と
を具備する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−84836(P2013−84836A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224757(P2011−224757)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】